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令和8年度司法試験刑事系第1問の模範解答と予想される評価項目―出題の趣旨・採点実感の公表前に問題文と判例から予想した45項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)

本記事の評価項目,重み付け,解説及び模範解答は,山中弁護士ブログが問題文と判例から独自に作成した予想であり,法務省とは関係がない。
法務省が公表した資料や,今後公表される出題の趣旨,採点実感,採点基準及び配点を示すものでもない。

本記事は,令和8年司法試験の論文式試験のうち,刑事系科目第1問(刑法)を対象として,答案に求められると本記事が独自に予想した評価項目を問題文と判例から抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。

令和8年の「出題の趣旨」及び「採点実感」は,本記事の作成時点(令和8年9月28日)では公表されておらず,本記事はこれらを読まずに作成している。
評価項目と重みは,いずれも本記事の予想であり,法務省の資料に基づくものではない。

本問は,酒席で同僚Aに殺意を抱いた甲及び乙が,Aを殴打した①行為,甲が心神耗弱の状態で鉄製フライパンを用いてAを殴打した②行為,Aが死亡したと誤信してAをスーツケースに押し込み,A所有の自動車(A車)で運んだ③行為(Aは途中で窒息死)について甲乙の罪責を問い(設問1),さらに,港の駐車場でA車にAの死体を乗せたまま放火した行為について甲乙の罪責を問うもの(設問2)である。
設問1は,①行為と②行為の関係をどのように把握するかと,「行為と責任の同時存在の原則」の意義とその根拠に言及することを求めている。

本記事が独自に予想した評価項目は45項目であり,重み5(設問が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項)に当たるのは,①②の関係の問題の所在と判断基準,同時存在の原則の意義・根拠と実行途中の心神耗弱の処理,②行為と窒息死との因果関係の問題提起,並びに「公共の危険」の意義・当てはめ・認識の要否の9項目である。

第5の模範解答は,①②を一個の殺人の実行行為と捉えて甲に刑法39条2項を適用せず,窒息死を②行為の危険の現実化として甲乙に殺人罪の共同正犯を認め,設問2では甲乙に建造物等以外放火罪の共同正犯を認める結論を採り,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で示した。
その後に,本記事独自の予想に基づく解説を付けている。

第2 本記事独自の評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,設問の指示,問題文に置かれた具体的な事実,及び参照すべきと考えられる判例から抜き出し,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形にした。

各項目には,手掛かりとなる問題文の箇所を問題冊子の頁(刑事系科目の問題冊子の第1問部分の頁番号)で示し,関係する判例・条文を示した。
判例名は,裁判所名と裁判年月日で示し,事件番号等は第7の3に掲げた。

2 5段階の重み付けの基準

重みは,問題文と判例から本記事が予想したものであり,法務省の配点ではない。
出題の趣旨及び採点実感が公表された後には,これらと照合して見直す必要がある。

①重み5:設問が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項
②重み4:問題文が特に事実を置いて検討を促している事項,又は最も近い判例の中核の命題に当たる事項
③重み3:問題文の具体的な事実から導かれる中核の理由付け
④重み2:補強の事項,又は典型的な誤りになると予想される事項
⑤重み1:設問の除外指示の遵守など,控えめな事項

第3 本問の概要

甲,乙及びAは同じ会社の同僚であり,某年12月20日午後4時20分頃から,甲方(洋室と台所の1K)で焼酎を飲み始めた。
甲は,焼酎を3合以上飲むと他人を死亡させかねない程度の暴力を振るうことが度々あり,そのことを認識していたが,この日は体調が優れず,暴れるほど酩酊することはないだろうと思っていた。

甲及び乙は,会社からの独立を主張するAに殺意を覚え,暗黙のうちに共謀の上,午後7時頃から午後10時頃まで,断続的にAの頭部を殴打し,背部を足蹴りした(①行為)。
甲の飲酒量は①行為の開始時点で3合に達しており,甲もそのことを認識していた。
①行為による傷害は,致命傷になり得ないものであった。

Aは午後10時頃にトイレに逃げ込んで鍵を掛けた。
甲は,乙に「Aがトイレから出て来たら,Aを取り押さえてくれ。」「場合によっては死んでも構わねえ。」と言い,乙は「分かった。任せておけ。」と応じた。
二人は焼酎を飲みながら待つうちに居眠りを始めた。

午後11時頃,Aが逃げようとして台所で倒れた物音で目を覚ました甲は,敷居につまずいて冷蔵庫の扉に頭を強打し,一層激怒・興奮して,確定的な殺意をもってAの頭部等を踏み付け,重さ約1キログラムの鉄製フライパンで頭部を10数回殴打した(②行為)。
乙は,事前の打合せどおりAの両足を押さえ付けた。
Aは,放置すれば死に至る脳挫傷を負って意識を失った。
甲は,①行為の時期には完全責任能力を有していたが,②行為の開始時点で飲酒の影響により心神耗弱状態に至った。
乙は終始完全責任能力を有していた。

乙は,Aが死んだものと思い,A車ごとAの死体を燃やして焼身自殺に見せかけることを持ち掛け,心神耗弱状態の甲もこれに応じた。
二人はAを甲所有のスーツケースに押し込んでA車の後部座席に積み込み,乙が運転して約50キロメートル離れた港へ向かった(③行為)。
Aは,スーツケースの密閉性が高かったため,午後11時30分頃に窒息死した。
甲乙は,いずれもAが生きていることに気付かなかった。

翌日午前1時頃,港の駐車場で,完全責任能力を回復した甲と乙は,Aの死体を後部座席に横たえ,乙が灯油約2リットルを撒き,甲が点火して放火し,A車を全焼させた。
約3メートル離れたC所有の無人の自動車(C車)と,約2メートル離れたゴミ集積場の可燃性のゴミ約300キログラムに延焼の危険が及んだが,約25メートル離れた最寄りの建造物に延焼する危険は生じなかった。
甲は火がC車やゴミに燃え移るかもしれないと思っていたが,乙はそう思っていなかった。
駐車場には漁業関係者が深夜でも出入りする可能性があったが,甲乙はそのことを認識していなかった。

設問1・2はいずれも甲及び乙の罪責を問い,刑法104条の罪(証拠隠滅),同法190条の罪(死体遺棄・損壊)及び特別法違反を除外している。

第4 本記事が独自に予想した評価項目と重み(法務省の資料ではない)

1 共通の前提

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
1甲及び乙について,①行為から放火行為までの行為ごとに分けて検討し,各行為者の最終的な罪責と罪数まで示す44頁・5頁(設問1・2は甲及び乙の罪責を問う)刑法45条
2刑法104条・190条の罪及び特別法違反(証拠隠滅,死体遺棄・損壊,道路交通法違反等)を論じない14頁・5頁(設問の除外指示)刑法104条・190条
3設問1の二つの指示(①行為と②行為の関係の把握,「行為と責任の同時存在の原則」の意義と根拠)に,それぞれ明示に答える44頁(設問1のなお書き)―

2 設問1―①行為と②行為の関係及び責任能力

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
4①行為の時点で,殺人の未必の故意と,暗黙の意思連絡による共謀を認定する32頁(事例1の2)刑法199条・60条
5午後10時頃の甲乙の合意(出て来たら取り押さえる,死んでも構わない)を,②行為の共謀と役割分担として位置付ける42頁・3頁(事例1の3)刑法60条
6②行為の開始時に甲が心神耗弱に陥り,致命傷となる脳挫傷が②行為で生じたことから,①②を別個の行為とみると②行為に刑法39条2項が適用されるという問題の所在を示す53頁(事例1の4のなお書き)刑法39条2項
7①②を一個の実行行為とみるかの判断基準(時間的場所的近接性,被害者及び態様の同一性,犯意の同一性・連続性等)を示す54頁(設問1が①②の関係の把握を求める)長崎地裁平成4年1月14日判決
8分離に傾く事情(約1時間の間隔,居眠り,洋室から台所への移動,冷蔵庫への頭部強打による激昂,確定的殺意への変化,鉄製フライパンの使用)を正面から評価する42頁・3頁(事例1の2~4)―
9一体に傾く事情(Aのトイレ籠城による中断にすぎないこと,再攻撃の合意と待機,同じ1Kの室内,同一の被害者,殺意の継続と強まり)を評価する42頁・3頁(事例1の2~4)―
10①行為の傷害が「致命傷になり得ない」もので,②行為で態様が変わった点を,前半の暴行が優に致死的で態様も同じであった大阪地裁昭和58年3月18日判決の事案との違いとして意識する22頁(事例1の2)大阪地裁昭和58年3月18日判決
11行為と責任の同時存在の原則の意義(責任能力や故意等の責任要素は,非難の対象となる行為の時に存在しなければならないこと)を示す54頁(設問1のなお書き)刑法39条,高松高裁昭和44年11月27日判決
12同原則の根拠(責任主義。是非を弁識し行動を制御できたのに違法な行為を選んだことへの非難であること)を示す54頁(設問1のなお書き)―
13一個の実行行為の途中で心神耗弱に陥った場合に,開始時の完全責任能力とその意思決定の実現を理由に刑法39条2項を適用しないかを論じる53頁(事例1の4のなお書き)刑法39条2項,長崎地裁平成4年1月14日判決
14心神耗弱を自ら招いた事情(3合以上で他人を死亡させかねない暴力を振るうとの認識,①行為の開始時に3合に達したとの認識,攻撃中の飲酒の継続)を評価する42頁(事例1の1・2)―
15飲酒の開始時には暴れるほど酩酊するつもりがなかったことから,飲酒の開始を原因行為とする原因において自由な行為の構成は採りにくいことを指摘する32頁(事例1の1)高松高裁昭和44年11月27日判決
16①②を別個の行為とみた場合の処理(①行為は殺人未遂,②行為について原因において自由な行為の法理の成否)と,結論の違いの有無を示す32頁・3頁―
17甲の心神耗弱が乙の罪責に影響しないこと(責任の個別性)を示す33頁(乙は終始完全責任能力)刑法39条

3 設問1―死亡結果と③行為

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
18Aの死因が②行為の脳挫傷ではなく③行為中のスーツケース内での窒息であることを捉え,②行為と死亡との因果関係を問題とする53頁・4頁(事例1の5)―
19因果関係の判断基準(行為の危険が結果に現実化したか)と,介在事情がある場合の考慮要素を示す4―最高裁平成2年11月20日決定
20②行為の危険性(鉄製フライパンで頭部を10数回殴打,放置すれば死に至る脳挫傷,意識の喪失)を評価する33頁(事例1の4)―
21介在した③行為が行為者自身の死亡誤信に基づく罪証隠滅の行為であり,異常とはいえず②行為に誘発されたものであることを評価する43頁(事例1の5)大審院大正12年4月30日判決
22意識を失っていたために,密閉性の高いスーツケースから脱出も救助の要請もできずに窒息したという,②行為と死因との結び付きを示す33頁・4頁(事例1の4・5)―
23認識した因果経過(②行為による死亡)と現実の因果経過のずれを因果関係の錯誤として扱い,故意が阻却されないことを示す44頁(甲乙ともAの生存に気付かず)刑法38条1項
24②行為と③行為を一連の行為として捉える構成(いわゆる概括的故意の問題)との関係に触れる23頁・4頁大審院大正12年4月30日判決
25③行為について,Aの死亡を誤信していたため,監禁罪や保護責任者遺棄罪等の故意がないことを示す24頁(事例1の5)刑法218条・220条
26③行為による過失致死罪を,殺人既遂罪と別の罪として成立させない24頁(事例1の5)刑法210条
27A車を無断で運転して持ち出した点について,Aの占有(Aが生存していたこと,死亡を誤信していても殺害直後の奪取であること)と窃盗罪の成否を論じる32頁・3頁(事例1の1・5)刑法235条,最高裁昭和41年4月8日判決
28A車を焼却する目的があっても,Aを運ぶ手段として運転した点から不法領得の意思を認めるかを論じる23頁(事例1の5)刑法235条
29A車の持出しの合意と実行が甲の心神耗弱中であったことから,窃盗罪について甲に刑法39条2項を適用する23頁(事例1の5)刑法39条2項
30乙が②行為の際にAの両足を押さえ付けた行為を,殺人の共同実行として評価する33頁(事例1の4)刑法60条
31乙の未必の殺意と甲の確定的殺意の違いが,殺人罪の共同正犯の成立を妨げないことを示す22頁・3頁刑法60条
32設問1の罪数(殺人罪と窃盗罪の併合罪)を示す2―刑法45条

4 設問2―放火

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
33A車が刑法110条1項の「前二条に規定する物以外の物」に当たり,後部座席のAの死体は「人」でないことを示す34頁(事例2の6・7)刑法110条1項
34A車がAの死亡により相続人に帰属し,甲乙の所有物でないから,同条2項ではなく1項が適用されることを示す22頁(Aが所有する自動車)刑法110条2項
35焼損(火が媒介物を離れて目的物が独立して燃焼を継続し得る状態)を,A車の全焼から認定する24頁(事例2の7・8)刑法110条1項
36「公共の危険」の意義を,建造物等への延焼の危険に限らず,不特定又は多数の人の生命,身体又は建造物等以外の財産に対する危険を含むと示す54頁(建造物に延焼する危険は生じなかった)最高裁平成15年4月14日決定
37C車(約3メートル),可燃性のゴミ約300キログラム(約2メートル),火炎の高さ約2メートル,最寄りの建造物まで約25メートル,漁業関係者の出入りの可能性を評価して,公共の危険の発生を認定する54頁(事例2の7・8)最高裁平成15年4月14日決定
38公共の危険の認識の要否について,判例(不要説)と必要説の対立を示し,自説を採る54頁(甲は認識,乙は不認識)最高裁昭和60年3月28日判決
39甲と乙の認識の違いを,共同正犯の成否と各人の罪名に反映させる(必要説を採れば乙は器物損壊罪の限度)44頁(事例2の8のなお書き)刑法261条・60条,最高裁昭和60年3月28日判決の谷口正孝裁判官の意見
40放火の合意は甲の心神耗弱中にされたが,実行時には完全責任能力を回復していたことから,刑法39条2項を適用しないことを示す43頁(事例1の5)・4頁(事例2の6)刑法39条2項
41灯油の散布と点火の分担を,共同実行として評価する34頁(事例2の7)刑法60条
42A車の器物損壊罪が建造物等以外放火罪に吸収されることを示す(死体の焼損は論じない)14頁(事例2の7)刑法261条
43設問2の罪と設問1の各罪との罪数(併合罪)を示す2―刑法45条

5 答案全体

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
44各論点で,規範を示してから問題文の具体的な事実を評価し,結論を示す3――
45明白な点は簡潔にし,①②の関係,同時存在の原則,因果関係及び公共の危険に字数を集中させる2――

6 重みの分布

45項目の内訳は,重み5が9項目,重み4が11項目,重み3が11項目,重み2が12項目,重み1が2項目であり,重みの合計は148点である。

重み5の9項目(番号6・7・11・12・13・18・36・37・38)は,設問1については設問が明示に言及を求めた①②の関係と同時存在の原則,及び問題文が死因をあえて③行為中の窒息とした因果関係の問題であり,設問2については,最高裁平成15年4月14日決定と事実関係がよく似た「公共の危険」の意義・当てはめと,甲乙の認識を書き分けた認識の要否である。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下の答案は,第4の評価項目をできるだけ満たすように作成したものであり,試験の実施時(令和8年7月)の法令と,それまでに言い渡された判例を前提にしている。
刑法は,令和8年5月21日施行の改正が試験日前の最後の改正であり,答案で用いた条文の文言は試験の実施時と現在とで同じである。

答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」「ア」「(ア)」の順に下げ,論点ごとに,問題提起(「〜が問題となる。」「〜が成立しないか。」),規範の定立(「思うに,〜。よって,〜と解する。」),当てはめ(「本問では,〜といえる(①)。」)及び結論(「よって」「したがって」「以上より」)の順に書き,反対の立場は「確かに,〜とも思える。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。

もっとも,現行の司法試験では事実の評価が重視されるため,規範の論証は争いの中心に絞り,問題文の事実を評価する当てはめに多くの字数を割いた。
字数の配分は,おおむね問題提起が1割,規範が2割弱,当てはめが5割強である。

答案の括弧書きで示した判例は,判決の本文で判示を確認したものに限った。
最高裁判所の判例は裁判所ウェブサイトの判決全文で,裁判所ウェブサイトに掲載されていない地方裁判所の判決と大審院の判決は判例秘書で確認した。
「判例同旨」は判例と同じ規範によるもの,「判例に結論同旨」は理由付けは本記事のものであるが結論が判例と同じであるもの,「参照」は事案が異なるが判示の考え方を参考にしたものを示す。

令和8年の司法試験はCBT方式で実施され,法務省の「令和8年司法試験に関するQ&A」(Q73)によれば,論文式試験の答案は,1頁が23行,1行当たり最大30文字であり,必須科目は1問につき8頁(最大184行)である。
以下の答案は,見出しの後と1文ごとに改行し(文頭は全角1字下げ),各行を1行30字で折り返す形で作成した。
見出しを含めて約4,200字であり,折返し後はちょうど184行(8頁)となり,この上限いっぱいに収まる。
文の途中で改行しない自然な改行とした分,1文を短くし,重み5の評価項目(番号6・7・11・12・13・18・36・37・38)に対応する部分以外を簡潔にした。

2 答案

1 設問1について
(1) 甲の罪責
ア 甲は,乙と共にAを殴打し(①行為),さらに鉄製フライパンでAの頭部を殴打して(②行為),Aを死亡させている。
 甲に殺人罪の共同正犯(199条・60条)が成立しないか。
 ①行為の時点で,甲乙は「場合によってはAが死んでしまっても構わない」と考え,暗黙のうちに意思を通じている。
 午後10時頃にも,甲がAを取り押さえるよう求めて乙が「任せておけ」と応じ,②行為は「事前の打合せどおり」行われた。
 甲も,②行為の最中に乙がAの両足を押さえていることに気付き,そのまま殴打を続けている。
 よって,殺人の未必の故意と共謀に基づく共同実行が認められる。
イ(ア) もっとも,甲は②行為の開始時に心神耗弱状態に至っており,致命傷の脳挫傷は②行為で生じている。
 そこで,①行為と②行為の関係が問題となる。
 思うに,刑法上の評価の対象となる行為は,身体の動作ごとではなく,結果の実現に向けた意思に基づく一連の行為として把握すべきである。
 よって,①時間的場所的近接性,②被害者及び態様の同一性,③犯意の連続性から,同一の機会に同一の意思の発動といえれば,一個の実行行為と解する。
 本問では確かに,両行為の間には約1時間の間隔があり,甲乙は居眠りをしている。
 また,①行為の傷害は「致命傷になり得ない」ものであったが,②行為は,冷蔵庫に頭を強打して一層激怒した甲が,確定的殺意をもって鉄製フライパンで頭部を10数回殴打したもので,格段に危険である。
 これらから,両行為は別個とも思える。
 しかし,この間隔は,Aがトイレに逃げ込んだために生じたにすぎない。
 甲乙は「出て来い,…ぶっ殺してやる。」と怒鳴り,Aが出て来たら取り押さえて殴り付けることを合意して待っており,攻撃の意思は途切れていない。
 場所も1Kの甲方の洋室から台所に移ったにすぎない(①)。
 被害者は同一のAであり,凶器の変化も同じ攻撃の激化にとどまる(②)。
 犯意も,午後7時頃の未必の殺意が午後10時頃の合意で再確認され,確定的殺意へ強まったもので,新たな犯意ではない(③)。
 よって,①②行為は一個の殺人の実行行為である。
(イ) では,実行行為の途中で甲が心神耗弱に陥った場合,39条2項により刑を減軽すべきか。
 行為と責任の同時存在の原則とは,責任能力等の責任要素が,非難の対象となる行為の時に存在しなければならないという原則をいう(39条が「心神耗弱者の行為」と規定するのもこの趣旨である)。
 その根拠は責任主義にある。
 刑罰は,是非を弁識しそれに従って行動を制御できたのに,あえて違法な行為を選んだことへの非難だからである。
 その能力を欠く状態での行為を,その前後の能力の存在を理由に非難することはできない。
 もっとも,この原則が求めるのは,行為全体を支配する意思決定が責任能力のある状態でなされていることであり,個々の動作ごとに完全な責任能力を求めるものではないと解する。
 その意思決定がそのまま実現された以上,途中で能力が低下しても,行為全体をその意思決定への非難の対象とできるからである。
 本問では確かに,甲は飲酒の開始時には暴れるほど酩酊するつもりはなく,飲酒の開始を原因行為とすることはできない。
 しかし,甲は,完全責任能力のある状態で①行為を開始し,午後10時頃に②行為の段取りを合意し,②行為はそのとおり実行された。
 しかも,甲は,3合以上飲むと他人を死亡させかねない暴力を振るうことを認識し,3合に達したことも認識しながら,飲酒を続けた。
 心神耗弱は自ら招いたものであり,非難可能性が減弱したとはいえないから,39条2項は適用されない(判例に結論同旨・長崎地判平成4年1月14日)。
 なお,両行為を別個とみても,②行為は午後10時頃の意思決定の実現であり,原因において自由な行為の法理により同項は適用されない。
 この場合,①行為は殺人未遂罪となるが,②行為の殺人罪に包括され,結論に差はない。
ウ 次に,Aの死因は③行為中のスーツケース内での窒息であり,②行為と死亡との因果関係が問題となる。
 思うに,因果関係は,行為の危険が結果へと現実化したかで判断すべきであり,行為の危険性,介在事情の異常性とその行為による誘発の有無,結果への寄与の程度を考慮すると解する。
 本問では,②行為は鉄製フライパンで頭部を激しく殴打する極めて危険なもので,Aは放置すれば死に至る脳挫傷を負い,意識を失った。
 ③行為は甲乙自身が死亡を誤信して罪証隠滅に及んだものであるが,被害者を意識不明にした犯人が死体の処分に及ぶことは異常ではなく,②行為に誘発されたといえる。
 また,Aが窒息したのは,意識を失い脱出も救助の要請もできなかったからである。
 よって,②行為の危険が現実化したといえ,因果関係が認められる(判例に結論同旨・大判大正12年4月30日)。
 もっとも,甲は②行為による死亡を認識しており,故意(38条1項)が阻却されないか。
 思うに,故意責任の本質は,規範に直面し反対動機を形成できたのにあえて行為に出たことへの非難にある。
 よって,認識した因果経過と現実の因果経過が,いずれも危険の現実化の範囲内で同一構成要件内において符合すれば,故意は阻却されないと解する。
 本問では,両者は殺人罪の構成要件内で符合するから,故意は阻却されない。
 なお,②③行為を一連の行為とみて殺人既遂とする構成もあり得るが,③行為は死体の処分という別個の意思に基づくから,因果関係の問題として処理すべきである。
 したがって,①②行為につき殺人罪の共同正犯が成立し,39条2項は適用されない。
エ ③行為については,甲乙はAの死亡を誤信しており,監禁等の故意はない。
 死亡確認を怠った点の過失致死罪(210条)も,Aの死亡が殺人罪で評価されている以上,別罪を構成しない。
 また,甲乙は,当時生存していたAが占有するA車を無断で持ち出している。
 死亡を誤信していても,殺害直後に被害者の財物を奪取すれば窃盗罪を構成するから(最判昭和41年4月8日参照),故意に欠けない。
 焼却目的があっても,約50キロメートルにわたりAを運ぶ手段としてA車を本来の用法に従い利用する意思があるから,不法領得の意思もある。
 よって,窃盗罪の共同正犯(235条・60条)が成立する。
 ただし,甲は心神耗弱下で持出しを合意し実行したから,39条2項により刑が減軽される。
オ 以上より,甲は殺人罪と窃盗罪の各共同正犯の罪責を負い,両者は併合罪(45条前段)となる。
(2) 乙の罪責
 乙は,①行為を共同し,午後10時頃の合意に基づき②行為の際にAの両足を押さえ付けている。
 殴打はしていないが,自ら「任せておけ」と応じて逃走を封じる不可欠な役割を引き受けており,実行を分担したといえる。
 乙の未必の殺意も,殺人の故意として甲の確定的殺意と重なり合う。
 因果関係及びその錯誤は甲と同様である。
 責任は各人ごとに判断されるから,甲の心神耗弱は乙に影響せず,完全責任能力を有していた乙に39条は適用されない。
 以上より,乙は殺人罪と窃盗罪の各共同正犯の罪責を負い,両者は併合罪となる。
2 設問2について
(1) 乙が灯油を撒き,甲が点火してA車を焼損した行為に,建造物等以外放火罪の共同正犯(110条1項・60条)が成立しないか。
ア A車は建造物等に当たらず,Aの死体も「人」ではないから,「前二条に規定する物以外の物」である。
 A車は相続人に帰属し,甲乙の所有物ではないから,1項が適用される。
 「焼損」とは,火が媒介物を離れて目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達したことをいうと解されるところ,A車は全焼しており,「焼損」がある。
イ 次に,C車やゴミへの延焼の危険が「公共の危険」に当たるか。
 思うに,放火罪は,火力により不特定又は多数の人の生命・身体・財産を危険にさらす公共危険犯である。
 よって,「公共の危険」は,建造物等への延焼の危険に限られず,不特定又は多数の人の生命,身体又は建造物等以外の財産に対する危険も含むと解する(判例同旨・最決平成15年4月14日)。
 本問では確かに,最寄りの建造物まで約25メートルあり,建造物への延焼の危険はない。
 深夜の港の駐車場には,A車とC車以外の車両もなかった。
 しかし,本件火災はA車を全焼させ,火炎は屋根上から高さ約2メートル,幅約50センチメートルに達し,約3メートル先のC所有の自動車と,約2メートル先の可燃性ゴミ約300キログラムに現に延焼の危険が及んでいる。
 ゴミに燃え移れば火勢は更に拡大し得るし,同駐車場には漁業関係者が深夜も出入りし得た。
 これらは甲乙と無関係の者の財産や身体に対する危険であるから,「公共の危険」が生じた。
ウ もっとも,乙は火がC車やゴミに燃え移るとは思っていなかった。
 110条1項の罪の成立に公共の危険の認識が必要か。
 確かに,同項の法定刑は器物損壊罪(261条)より格段に重く,責任主義から認識を要するとも思える。
 しかし,同項は「よって公共の危険を生じさせた」と規定し,結果的加重犯と同様の構造をとる。
 また,延焼の危険の認識を要求すると,108条・109条の放火の未必の故意との区別が困難となる。
 よって,公共の危険の認識は不要と解する(判例同旨・最判昭和60年3月28日)。
 もっとも,責任主義から予見可能性は要すると解すべきところ,乙は灯油約2リットルを撒いており,近くに他の車両やゴミ集積場があったから,予見可能であった。
 なお,認識必要説によれば,甲には同項の罪が成立するが,乙は器物損壊罪の限度で共同正犯となる。
エ 甲は心神耗弱状態で放火に同意したが,完全責任能力を回復した後に自ら点火しており,同時存在の原則に照らし39条2項は適用されない。
 灯油散布と点火を分担しているから,共同実行といえる。
 したがって,甲乙に建造物等以外放火罪の共同正犯が成立し,器物損壊罪はこれに吸収される。
(2) 以上より,甲及び乙は同罪の共同正犯の罪責を負い,設問1の各罪と併合罪(45条前段)となる。
以上

3 本記事独自の予想に基づく解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1(1)アからウまでは第4の番号4~24,同エは番号25~29,同オと1(2)の末尾は番号32,1(2)は番号30・31,2は番号33~43に対応し,番号1~3及び44・45は答案全体の構成と書き方で満たすようにした。
重み5の9項目は,1(1)イ(ア)の問題の所在と一体性の判断基準(番号6・7),同(イ)の同時存在の原則の意義・根拠と実行途中の心神耗弱の処理(番号11~13),同ウの因果関係の問題提起(番号18),並びに2(1)イ・ウの公共の危険の意義,当てはめ及び認識の要否(番号36~38)に当たる。

(2) ①行為と②行為の関係及び同時存在の原則

本問の②行為の場面は,長崎地裁平成4年1月14日判決の事案とよく似ている。
同判決の事案では,被告人が妻に暴行を加えた後,焼酎を飲んで酩酊の度を強めながら暴行を続け,敷居につまずいてガラス戸に頭を強打したことから一層激昂し,肩たたき棒で頭部等を滅多打ちにして,妻を死亡させた。
同判決は,被告人が犯行の途中から心神耗弱の状態になったと認めた上で,「同一の機会に同一の意思の発動にでたもので、実行行為は継続的あるいは断続的に行われたもの」であり,犯行開始時には責任能力に問題がなく,犯行開始後に自ら飲酒を継続したため実行行為の途中で心神耗弱に陥ったにすぎないとして,刑法39条2項を適用しなかった。

これに対し,本問は,同判決の事案と比べて,①行為と②行為の間に約1時間の間隔と居眠りを挟み,罪名が傷害致死ではなく殺人であり,乙との共同正犯である点が異なる。
また,大阪地裁昭和58年3月18日判決は,前半の暴行が「優に致死の結果をもたらしうる」ものであったことと,後半の暴行が前段階と「態様を異にするものでもない」ことを理由に,全体を一体として評価して刑法39条を適用しなかった。
本問は,①行為の傷害が致命傷になり得ないものであり,②行為で鉄製フライパンが使われているから,同判決が挙げた二つの理由はそのままでは当てはまらない。
問題文がこれらの分離に傾く事実をあえて置いていることから,一体とみる結論を採る場合も,これらの事実を正面から評価することが求められると予想される。

答案は,約1時間の間隔はAがトイレに逃げ込んだために生じたにすぎず,甲乙は午後10時頃に再攻撃を合意して待っていたこと,②行為がその合意どおりに行われたことを重視して,①②を一個の殺人の実行行為とした。
その上で,同時存在の原則が求めるのは行為全体を支配する意思決定が責任能力のある状態でされていることであるとして,刑法39条2項を適用しなかった。

同時存在の原則の意義については,責任能力等は「実行行為」の時に存在しなければならないとする考え方と,行為を支配する最終的な「意思決定」の時に存在すれば足りるとする考え方がある。
高松高裁昭和44年11月27日判決は,「行為と責任の同時存在」の原則を「近代刑法における基本原理」と述べ,心神耗弱の状態に陥った後で初めて運転を決意した事案について刑法39条2項を適用しており,同原則の意義を示す際の手掛かりになる。
設問が意義と根拠の両方を求めていることから,根拠である責任主義から,本問で刑法39条2項を適用しない理由を導く論理の一貫性が評価されると予想される。

問題文は,甲が飲酒の開始時には暴れるほど酩酊するつもりはなかったとしている。
このため,飲酒の開始を原因行為とする原因において自由な行為の構成は採りにくく,原因において自由な行為を使うのであれば,①行為の開始時に3合に達したことを認識しながら飲酒を続けた点や,午後10時頃の完全責任能力下での合意を原因となる意思決定として捉えることになる。
①②を別個の行為とみる答案では,①行為は殺人未遂罪となり,②行為について原因において自由な行為の法理によって刑法39条2項の適用を否定できるかが中心になると考えられる。

(3) ②行為と窒息死との因果関係

問題文は,②行為による脳挫傷が「そのまま放置すれば死に至る程度のもの」であったとしながら,実際の死因を③行為中のスーツケース内での窒息としている。
このため,②行為と死亡との因果関係と,甲乙が認識していた因果経過とのずれ(因果関係の錯誤)を論じることが求められると予想される。

大審院大正12年4月30日判決は,殺人の目的で被害者の頸部を麻縄で絞扼し,被害者が動かなくなったのを見て死亡したと思い,犯行の発覚を防ぐため縄を解かないまま屋内から砂上に運んで放置したところ,被害者が砂末を吸引して死亡した事案で,絞扼の行為と死亡との間に因果関係を認め,殺人罪が成立するとした(判決要旨)。
本問は,行為者自身が死亡を誤信して後続の行為に及び,その行為によって死亡したという点で同判決の事案と同じ型であり,答案は同判決を「判例に結論同旨」として示した。

これに対し,最高裁平成16年3月22日決定(いわゆるクロロホルム事件)は,予定していた第2行為の前に第1行為によって死亡した可能性がある事案(いわゆる早すぎた結果の発生)であり,予定よりも後の行為で死亡した本問とは型が逆である。
また,最高裁平成2年11月20日決定は第三者の暴行が介在した事案であり,行為者自身の行為が介在した本問とは事案を異にするため,答案では因果関係の判断基準を示すにとどめ,判例の括弧書きには付けていない。

(4) ③行為とA車

③行為の時点ではAは生存していたが,甲乙はAが死亡したと誤信していたから,監禁罪や保護責任者遺棄罪等の故意はなく,死体遺棄罪(刑法190条)は設問で除外されている。
死亡確認を怠った点で過失致死罪が問題になり得るが,Aの死亡は殺人既遂罪で評価されているから,別罪とする必要はない。

A車の持出しは,問題文が明示に論点として示しているわけではないが,A所有の自動車を無断で運転して約50キロメートル運んでおり,財産犯の成否を検討する余地がある。
最高裁昭和41年4月8日判決は,人を殺害した後に領得の意思を生じ,犯行直後にその現場で被害者が身に付けていた腕時計を奪取した行為を窃盗罪としており,本問のように甲乙がAの死亡を誤信していた場合でも,窃盗罪の故意に欠けるところはないと考えられる。
不法領得の意思については,最終的にA車を焼却する目的であった点をどう評価するかで結論が分かれ得るため,重みは控えめにした。

(5) 設問2―公共の危険とその認識

最高裁平成15年4月14日決定は,市街地の駐車場で自動車に放火し,約3.8メートル離れた自動車等と約3.4メートル離れたゴミ集積場(可燃性のゴミ約300キログラム)に延焼の危険が及んだ事案で,刑法110条1項の「公共の危険」は建造物等への延焼の危険に限られず,不特定又は多数の人の生命,身体又は建造物等以外の財産に対する危険も含まれるとした。
本問は,ゴミの量が同じ約300キログラムであるなど同決定の事案とよく似た事実を置く一方で,現場が市街地ではなく深夜の港の駐車場で,近くの車両がC車1台であり,建造物への延焼の危険は生じていない点が異なる。
このため,同決定の規範を示した上で,これらの違いを踏まえて公共の危険の発生を認定することが中心の評価項目になると予想される。

最高裁昭和60年3月28日判決は,刑法110条1項の罪の成立には公共の危険の発生の認識は必要でないとした。
他方,同判決の谷口正孝裁判官の意見は,同項の罪の成立には公共の危険の発生の認識を要するとした上で,仮定の事例を挙げて,公共の危険の発生を認識していなかった共謀者について成立する共謀の内容は器物損壊の限度にとどまると述べている。
問題文は,甲は延焼の可能性を認識していたが乙は認識していなかったと書き分けているから,認識の要否についての立場を示し,その立場から乙の罪責を導くことが求められると予想される。
答案は判例に従い不要説を採ったが,必要説を採った場合の乙の罪責(器物損壊罪の限度での共同正犯)も1文で示した。

(6) 結論の許容幅と答案の弱点

設問1について,①行為と②行為の間の間隔,居眠り,冷蔵庫への頭部強打による激昂,殺意の強まり及び凶器の変化を重く見て,両者を別個の行為とみる答案もあり得る。
その場合も,②行為について原因において自由な行為の法理により刑法39条2項の適用を否定するか,否定せずに同項を適用するかを,同時存在の原則の根拠と結び付けて論じる必要があると考えられる。

設問2について,責任主義を重視して公共の危険の認識を必要とし,乙には器物損壊罪の共同正犯が成立するにとどまるとする答案も十分にあり得る。

答案の弱点は次の3点である。
第一に,①②の一体性の判断基準は長崎地裁の判決等の下級審の裁判例を参考にしたもので,最高裁判所の判例として示されたものではない。
第二に,同時存在の原則について「行為全体を支配する意思決定」の時点で足りるとする理解は,答案独自の整理であり,実行行為の時点を厳格に要求する立場からは批判があり得る。
第三に,公共の危険の認識を不要としつつ予見可能性を要するとした部分は,最高裁昭和60年3月28日判決が述べていない本記事独自の限定である。

(7) 扱わなかった事項

設問が除外した刑法104条の罪(証拠隠滅),同法190条の罪(死体遺棄・損壊)及び特別法違反(乙の運転に関する道路交通法違反等)は,答案では扱っていない。
Aの死体を焼損した点も,死体損壊罪(刑法190条)の問題であるから扱っていない。

第6 関連記事

1 前年度の同じ科目の模範解答

①令和7年度司法試験刑事系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した59項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①令和8年度司法試験公法系第1問の模範解答と予想される評価項目―出題の趣旨・採点実感の公表前に問題文と判例から予想した37項目と5段階の重み付け(AI作成)
②実行途中で責任能力が低下した場合―行為と責任の同時存在,行為の一体性及び原因において自由な行為(AI作成)
③死亡したと誤信して証拠隠滅行為に及び,その行為で死亡させた場合―因果関係の錯誤・概括的故意・共同正犯(AI作成)
④自動車放火と「公共の危険」―最高裁平成15年4月14日決定・最高裁昭和60年3月28日判決(AI作成)
⑤共謀共同正犯か幇助犯か-実行行為をしない関与者の正犯性,順次共謀及び共犯の錯誤(AI作成)

3 同じ年度の主要7科目の模範解答

①令和8年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と予想される評価項目(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和8年司法試験の実施について」
②法務省「令和8年司法試験問題」
③令和8年司法試験論文式試験問題(刑事系科目)
④法務省「令和8年司法試験に関するQ&A」

2 法令

①刑法(e-Gov法令検索)

3 裁判例

①最高裁判所第三小法廷平成15年4月14日決定(平成13年(あ)第1317号,刑集57巻4号445頁)
②最高裁判所第一小法廷昭和60年3月28日判決(昭和58年(あ)第937号,刑集39巻2号75頁)
③最高裁判所第三小法廷平成2年11月20日決定(昭和63年(あ)第1124号,刑集44巻8号837頁)
④最高裁判所第二小法廷昭和41年4月8日判決(昭和40年(あ)第1573号,刑集20巻4号207頁)
⑤最高裁判所第一小法廷平成16年3月22日決定(平成15年(あ)第1625号,刑集58巻3号187頁)
⑥高松高等裁判所昭和44年11月27日判決(昭和43年(う)第402号,高刑集22巻6号901頁)
⑦長崎地方裁判所平成4年1月14日判決(平成2年(わ)第317号,判例秘書の判例番号 L04750002)
⑧大阪地方裁判所昭和58年3月18日判決(昭和57年(わ)第5714号,判例秘書の判例番号 L03850135)
⑨大審院大正12年4月30日判決(大正12年(れ)第517号,刑集2巻378頁)

4 確認状態

問題文は,法務省掲載の刑事系科目の問題冊子(PDF)を取得し,第1問の全頁を読んだ。
CBT方式の答案の字数・行数の上限は,法務省の「令和8年司法試験に関するQ&A」のQ73の原文で確認した。
答案の行数は,見出しの後と1文ごとに改行し,各行を1行30字で折り返した場合の行数を機械的に数えたものであり,CBTシステムの実際の画面での折返し(禁則処理の有無等)は確認していない。

令和8年の出題の趣旨及び採点実感は,本記事の作成時点で公表されておらず,読んでいない。
第4の評価項目と重み及び第5の3の解説は,いずれも本記事の予想であり,公表後に照合して見直す必要がある。

最高裁判所の判例と高松高裁の判決は,裁判所ウェブサイトの判決全文で,答案と解説で用いた判示を確認した。
最高裁昭和41年4月8日判決の該当部分は,上告趣意に対する判断の中の括弧書きの説示である。
長崎地裁と大阪地裁の判決は,裁判所ウェブサイトに掲載されておらず,判例秘書で判決本文の該当部分を確認した。
大審院大正12年4月30日判決は,判例秘書で大審院刑事判例集の判示事項と判決要旨を確認したが,判決理由の本文は読んでいない。

刑法の条文は,e-Gov法令検索で試験の実施時(令和8年7月)の条文と現在の条文が同じであることを確認した。