メインコンテンツへスキップ
       

令和8年度司法試験公法系第1問の模範解答と予想される評価項目―出題の趣旨・採点実感の公表前に問題文と判例から予想した37項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)

本記事の評価項目,重み付け,解説及び模範解答は,山中弁護士ブログが問題文と判例から独自に作成した予想であり,法務省とは関係がない。法務省が公表した資料や,今後公表される出題の趣旨,採点実感,採点基準及び配点を示すものでもない。

本記事は,令和8年司法試験の論文式試験のうち,公法系科目第1問(憲法)を対象として,答案に求められると本記事が独自に予想した評価項目を問題文と判例から抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。

令和8年の「出題の趣旨」及び「採点実感」は,本記事の作成時点(令和8年9月28日)では公表されておらず,本記事はこれらを読まずに作成している。評価項目と重みは,いずれも本記事の予想であり,法務省の資料に基づくものではない。

本問は,A市の中心部にある市立公園(本件公園)で,住宅費高騰への抗議として寝袋や段ボールで一夜を過ごす活動をするための夜間の独占使用の申請(本件申請)について,市長が,①条例5条3項5号の「管理に支障がある」ことを根拠として,②条例8条2項の「夜間の独占使用を認めるべき特別な理由」がないことを根拠として,それぞれ不許可処分をすることが憲法上許されるかを,市の法曹資格者の立場で論じさせるものである。

本記事が独自に予想した評価項目は37項目であり,重み5(設問又は会話が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項)に当たるのは,泉佐野市民会館事件判決の判断枠組みと危険の程度,上尾市福祉会館事件判決の「管理上支障」の限定解釈と敵意ある聴衆の法理,代替手段論への反論,金沢市庁舎前広場事件判決の「外見上の政治的中立性」の論理とその射程,及び新幹線延長の催しの許可から導かれる見解差別の8項目である。

第5の模範解答は,①②のいずれについても不許可処分は憲法上許されないとの結論を採り,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で示した。その後に,本記事独自の予想に基づく解説を付けている。

第2 本記事独自の評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,設問の指示,甲と乙の会話で検討が求められた事項,問題文に置かれた具体的な事実,及び参照すべきと考えられる最高裁判所の判例から抜き出し,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形にした。

各項目には,手掛かりとなる問題文の箇所を問題冊子の頁(公法系科目の問題冊子の第1問部分の頁番号)で示し,関係する判例・条文を示した。判例名は,泉佐野市民会館事件判決(最判平成7年3月7日),上尾市福祉会館事件判決(最判平成8年3月15日),金沢市庁舎前広場事件判決(最判令和5年2月21日),皇居外苑事件判決(最大判昭和28年12月23日),呉市立中学校事件判決(最判平成18年2月7日)及び吉祥寺駅事件判決(最判昭和59年12月18日)の略称である。

2 5段階の重み付けの基準

重みは,問題文と判例から本記事が予想したものであり,法務省の配点ではない。出題の趣旨及び採点実感が公表された後には,これらと照合して見直す必要がある。

①重み5:設問又は甲・乙の会話が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項
②重み4:会話が示唆する事項,又は最も近い判例の中核の命題に当たる事項
③重み3:問題文の具体的な事実から導かれる中核の理由付け
④重み2:補強の事項,又は典型的な誤りになると予想される事項
⑤重み1:設問の除外指示の遵守など,控えめな事項

第3 本問の概要

本件公園は,A市が都市公園法に基づいて設置した60メートル四方の市立公園であり,同規模の市立公園のうち市の中心部にあるのは本件公園だけで,南側の中央大通りは昼夜を問わず通行人が多い。公園の一部又は全部の独占使用には市長の許可が必要であり(本件条例5条1項),これまで国際交流団体の行事や原水爆禁止を訴える集会が開かれたことがある。

夜間の暴走族の集会や未成年者の飲酒への陳情を受けて,本件条例8条1項は本件公園の夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の利用を禁止し,A市は公園を柵で囲んで夜間は施錠している。ただし,同条2項により,特別な理由があるときは夜間の独占使用が許可され,星座鑑賞会や盆踊り等,例年10~20件が許可されている。新幹線延長を訴える無料ビアガーデンも許可され,市議会で政治的中立性を問題とする質問を受けた市長は,新幹線延長は自身の公約で市の基本政策であるから批判は当たらないと答弁した。

市民団体Xは,住宅費高騰への抗議として世界各地の都市で同時刻に一夜を過ごす国際的なプロジェクトに呼応し,7月1日午後8時から翌2日午前6時まで本件公園を独占使用する申請をした。参加者は幹部6人と会員の約20名で,一般市民は立ち入らせない。幹部の一人Bは,外国人排斥デモに対するカウンターデモを行う団体Cの代表で,衝突の際に逮捕されたが不起訴となっている。

総務部長甲は,Bの存在による暴力の危険と警察官の配備の困難(管理上の支障),昼間の公園や公民館でも活動できることと市の政治的中立性(特別な理由がないこと)を理由に不許可にしたいと考え,法曹資格者の乙に相談した。設問は,乙の立場で①②の不許可処分が憲法上許されるかを論じさせ,参考とすべき判例や自己の見解と異なる立場への言及を求める一方,規定の文言の明確性は論じる必要がないとしている。

第4 本記事が独自に予想した評価項目と重み(法務省の資料ではない)

1 共通の前提

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
1本件活動(寝袋や段ボールで一夜を過ごす抗議活動)が集会の自由及び表現の自由として21条1項で保障されることを示す42頁・3頁(本件活動の内容,事務局長の発言)憲法21条1項
2本件公園が地方自治法244条の「公の施設」であり,その利用拒否が集会の自由の制約につながる構造を示す43頁(甲の発言:「公の施設」に該当)地方自治法244条,泉佐野市民会館事件判決,上尾市福祉会館事件判決
3①(管理上の支障)と②(特別な理由)を,別々の判断枠組み・当てはめ・結論で論じる45頁(設問が①②を分けて問う)本件条例5条3項5号,8条2項
4規定の文言の明確性を論じない15頁(設問が論じる必要はないとする)―
5条例自体の違憲ではなく,個別の不許可処分が憲法上許されるかとして論じる25頁(設問は「不許可処分をすることが憲法上許されるか」を問う)―

2 設問①(管理上の支障)

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
6泉佐野市民会館事件判決の判断枠組み(利用の希望が競合する場合のほかは,他の基本的人権が侵害され公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られ,精神的自由として厳格な基準で較量する)を示す54頁(乙:「関連する判例」を確認する必要)泉佐野市民会館事件判決
7同判決の「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されること」という危険の程度を示す54頁(甲:暴力沙汰の「可能性は否定できません」)泉佐野市民会館事件判決
8「管理上支障」を,許可権者の主観による予測でなく,客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に限る(上尾市福祉会館事件判決)55頁(本件条例5条3項5号の文言が同判決の条例と同じ「管理上支障」)上尾市福祉会館事件判決
9泉佐野市民会館事件判決に対する批判的な評価(主催者の性格による排除や,反対者の妨害を理由とする不許可につながる危険)に触れる44頁(乙:「それに対する学説の評価」を確認する必要)泉佐野市民会館事件判決(学説の評価は文献未確認)
10反対者の妨害のおそれを理由とする不許可は,警察の警備等によってもなお混乱を防止できない特別な事情がある場合に限られること(いわゆる敵意ある聴衆の法理)を示す53頁・4頁(排斥団体とCの小競り合い,警察官の配備)上尾市福祉会館事件判決,泉佐野市民会館事件判決
11泉佐野市民会館事件の事案(実質上の主催者自身が爆破事件を起こし,実力阻止の闘争方針を公言)との違いを具体的に示す43頁(Xの構成,活動の態様)泉佐野市民会館事件判決
12集会の目的や主催団体の性格そのものを理由とする不許可は許されないことと,Bが幹部であることとの関係を論じる33頁(Xの幹部6人の構成)泉佐野市民会館事件判決
13XとCを区別する(Xの幹部のうちCの活動に関わるのはBのみ)33頁―
14衝突が双方の暴力によるもので,Bが不起訴となったことを評価する33頁―
15本件活動の主題(住宅費高騰)と外国人排斥をめぐる対立との違い,参加者約20名・一般市民の立入りなし・静穏な態様を評価する32頁・3頁・4頁―
16BのSNS発信が本件活動に関する情報にとどまり,妨害の計画・予告を示す事実がないことを評価する33頁・4頁上尾市福祉会館事件判決
17警察官の配備が容易でないとの主張を,柵と施錠,参加人数,警察による制圧の実績から評価する32頁(高さ1.5メートルの柵,夜間の施錠),3頁(警察官の出動・制圧)上尾市福祉会館事件判決
18同じ日の夜の利用申請が他にないこと(利用の希望の競合がないこと)に触れる23頁(甲:他団体による申請はない)泉佐野市民会館事件判決
19夜間の独占使用にも5条3項各号が適用されること(8条2項)を踏まえ,夜間であることの位置付けを示す25頁(本件条例8条2項)本件条例8条2項
20A市側の主張(包括条項としての判断の余地,泉佐野市民会館事件判決の結論)を,規範と事実まで示した上で退ける33頁・4頁(甲の第一の根拠)泉佐野市民会館事件判決

3 設問②(特別な理由)―判断枠組みと代替手段

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
21夜間は利用禁止が原則であり,特別な理由は例外として市長の裁量に属するから,Xに夜間の利用を求める憲法上の権利はないという反対の立場を示す44頁(乙:「憲法上の理由があるか否かの検討が必要」)本件条例8条
228条1項の目的(暴走族の集会や未成年者の飲酒への対処という治安の維持)を特定し,本件活動との関係を評価する32頁(5年ほど前からの夜間の集会・飲酒と陳情)本件条例8条1項
23A市が例年10~20件の夜間の独占使用を許可し,夜間の本件公園を催しの場として開放している運用を評価する44頁(甲:例年10~20件)―
24公園が表現の場(パブリック・フォーラム)であること,公園の利用の許否が管理権者の単なる自由裁量でないことに触れる32頁(中心部の公園,中央大通りの通行人)吉祥寺駅事件判決の伊藤正己裁判官の補足意見,皇居外苑事件判決
25学校施設の目的外使用に関する裁量の判例をA市側の論拠として挙げ,施設の性格の違いと従前の運用の考慮に触れる24頁(夜間は禁止が原則との甲の説明)呉市立中学校事件判決
26誰に開放するかの判断は表現の内容・見解に中立でなければならないことを示す44頁(政治的中立性をめぐる甲・乙のやり取り)地方自治法244条3項,憲法14条1項
27昼間の公園や公民館という代替手段では,「一夜を過ごす」象徴的表現,世界同時の日時,中心部で通行人に見える場所という表現の実質が失われることを示す52頁・3頁(本件プロジェクト,事務局長の発言),4頁(甲:昼間・公民館で行える)金沢市庁舎前広場事件判決(他の場所の利用が妨げられないことによる制限の程度の評価)
28星座鑑賞会,盆踊り及び新幹線延長を訴えるビアガーデンと比べ,夜間の使用の必要性を評価する42頁・4頁―
29騒音の問題がなく,Xが午後9時以降の静穏確保の条件を受け入れていること(8条2項後段の条件付許可というより制限的でない手段)を評価する34頁・5頁本件条例8条2項後段

4 設問②(特別な理由)―政治的中立性

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
30金沢市庁舎前広場事件判決の「外見上の政治的中立性」の論理(及び条件の付加では支障を除去し難いとする点)を,A市側の論拠として示す54頁(甲:政治的中立性に対する市民の信頼),2頁(国際交流団体の行事・原水爆禁止の集会という同判決と重なる事実)金沢市庁舎前広場事件判決
31同判決自身が,主に公務の用に供する庁舎を道路や公園等と区別し,公の施設の利用まで妨げられないことを前提としている点を指摘する53頁(甲:都市公園・公の施設)金沢市庁舎前広場事件判決
32同判決の宇賀克也裁判官の反対意見(首長の政策は中立ではあり得ないこと,抽象的な誤解のおそれを理由とする不許可の不当性,見解による差別の危険)に触れる34頁金沢市庁舎前広場事件判決の宇賀克也裁判官の反対意見
33新幹線延長を訴える催しの許可と市長答弁から,中立性の主張が市政を批判する表現にだけ向けられる見解差別であることを示す54頁(甲:新幹線延長を求める市民の会,市長答弁)憲法21条1項,14条1項,地方自治法244条3項
34国際交流団体の行事や原水爆禁止の集会の許可実績を,使用の許可が市の支持と受け取られないことの根拠に使う32頁―

5 答案全体

番号評価項目重み問題文の手掛かり判例・条文
35判断枠組みを,判例と事案の分析から理由を付けて設定し,基準の語を当てはめでも使う4――
36問題文の事実を写すだけで直ちに「危険がある」「合理的」等と結論付けない2――
37参照する判例を,どの判例か特定できる形で示す25頁(設問:参考とすべき判例に言及)―

6 重みの分布

37項目の内訳は,重み5が8項目,重み4が10項目,重み3が12項目,重み2が6項目,重み1が1項目であり,重みの合計は129点である。

重み5の8項目(番号6・7・8・10・27・30・31・33)は,設問①については会話で乙が「関連する判例とそれに対する学説の評価」の確認を求めた泉佐野市民会館事件判決及び上尾市福祉会館事件判決の各命題であり,設問②については甲が挙げた二つの理由(代替手段と政治的中立性)に対する反論の中核である。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下の答案は,第4の評価項目をすべて満たすように作成したものであり,乙の立場で,試験の実施時(令和8年7月)の法令と,それまでに言い渡された判例を前提にしている。

答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」「ア」の順に下げ,論点ごとに,問題提起(「〜が問題となる。」),規範の定立(「思うに,〜。よって,〜と解する。」),当てはめ(「本件では,〜といえる(①)。」)及び結論(「よって」「したがって」)の順に書き,反対の立場は「確かに,〜とも思える。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。

もっとも,現行の司法試験では事案の分析と結び付けた判断枠組みの設定や,基準と当てはめの一致が求められるため,規範の論証は争いの中心に絞り,問題文の事実を評価する当てはめに多くの字数を割いた。字数の配分は,おおむね問題提起が1割未満,規範が3割強,当てはめが4割である。

答案の括弧書きで示した判例は,裁判所ウェブサイトの判決全文で判示を確認したものに限った。
「判例同旨」は判例と同じ規範によるもの,「参照」は事案が異なるが判示の考え方を参考にしたものを示し,補足意見と反対意見は法廷意見と区別して示した。

字数は見出しを含めて約4,500字であり,段落は1文ごとに改めている。
なお,令和8年司法試験の論文式試験の答案はパソコンで入力する方式であり,入力できるのは必須科目1問につき8頁(1頁23行,1行最大30文字)までとされているから(司法試験委員会決定「司法試験の方式・内容等について」),上限は184行・5,520字となるところ,この答案は,段落ごとに改行して1行30字で折り返すとちょうど184行であり,改行した行の残りの字数を使えないとしても上限内に収まる。
そのため,重み5の評価項目(番号6・7・8・10・27・30・31・33)に対応する部分を残し,その他の論証と当てはめは簡潔にした。

2 答案

1 設問①について
(1) 本件活動は,共通の目的で一定の場所に集まる集会であり,屋外で「一夜を過ごす」行動自体により住まいを失う者の窮状を訴える表現でもあるから,21条1項により保障される。
 そして,本件公園は地方自治法244条の「公の施設」に当たるから(本件条例2条1号),A市は,正当な理由なく住民の利用を拒めず(同条2項),不当な差別的取扱いもできない(同条3項)。
 そのため,本件公園の利用拒否は,集会の自由の実質的な否定につながり得る。
 そこで,本件条例5条3項5号の管理上の支障を根拠とする不許可処分が,21条1項に照らして許されるかが問題となる。
(2) この点,泉佐野市民会館事件判決(最判平成7年3月7日)は,公の施設の利用を拒否し得るのは,利用の希望が競合する場合のほかは,他の基本的人権が侵害され公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られ,危険の程度は明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることを要するとしている。
 また,上尾市福祉会館事件判決(最判平成8年3月15日)は,「会館の管理上支障がある」とは客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合をいい,反対者の妨害のおそれを理由に利用を拒めるのは,警察の警備等によってもなお混乱を防止できないなど特別な事情がある場合に限られるとしている。
 確かに,泉佐野市民会館事件判決は主催者側と対立団体との抗争のおそれを理由とする不許可を是認したから,対立団体と衝突したBを幹部とするXについても不許可が許されるとも思える。
 しかし,同判決には,主催者側の過去の行動を根拠に危険を認めると,団体の性格による排除となり,反対者が騒げば集会が封じられる結果を招くとの批判がある。
 また,同判決自身,主催団体の性格そのものを理由とする不許可は許されないとし,主催者が爆破事件を起こし実力阻止の方針を公言していた事案で不許可を是認したにすぎない。
 思うに,集会の自由は自己実現及び自己統治の価値を有する精神的自由であり,不許可とされればその日時の集会は失われ,事後の回復も困難である。
 よって,5号により不許可とできるのは,人の生命,身体又は財産が侵害される明らかな差し迫った危険の発生が客観的な事実に照らして具体的に予見される場合に限られ(①),第三者の妨害のおそれを理由とするときは,警察の警備等によってもなお混乱を防止できない特別な事情を要する(②)と解する(判例同旨・上尾市福祉会館事件判決)。
 なお,8条2項は夜間の独占使用にも5条3項各号を適用するから,夜間であることは危険の程度や警備の難易の評価で考慮すれば足りる。
(3)ア まず,X自身による危険について見る。
 確かに,Xの幹部Bは,3月1日の外国人排斥デモとカウンターデモとの衝突で逮捕され,その後もCと排斥団体との小競り合いが繰り返されている。
 しかし,衝突はBが代表を務めるCの活動の場でのものであり,Xの幹部のうちCに関わるのは「Bのみ」である。
 また,衝突は双方が暴力を振るったもので,Bは不起訴となっているから,B自身の暴力すら客観的に明らかでない。
 さらに,本件活動は住宅費高騰を訴えるもので,外国人排斥をめぐる対立とは主題を異にする。
 参加者は幹部6人と会員の20名程度で一般市民を立ち入らせず,寝袋等で静かに一夜を過ごす態様であり,甲自身も騒音の問題は生じないと認めている。
 X自体が過去に集会の妨害や暴力に関わった事実は,問題文からはうかがわれない。
 泉佐野市民会館事件と異なり,Xが違法な実力行使の方針を採り,本件活動を対立団体との抗争の場と位置付けている事情もない。
 とすれば,Bの存在を理由とする不許可は,個人の過去をXに転嫁し,団体の性格そのものを理由とするに等しい。
 よって,X自身により明らかな差し迫った危険が生ずるとはいえない(①)。
イ 次に,第三者による妨害のおそれについて見る。
 甲は,BのSNS発信から暴力沙汰の「可能性は否定できない」とする。
 しかし,発信は本件活動の情報にとどまり,排斥団体が本件活動を妨害する計画や予告があるとの事実はない。
 事務局長の発言が報道され日時と場所が公になっていることも,表現活動として当然のことであり,妨害の具体的な動きを示すものではない。
 したがって,甲の懸念は許可権者の主観による予測にすぎない(①)。
 また,甲が懸念する相手方は外国人排斥を訴える諸団体であるところ,住宅費高騰を主題とする本件活動をこれらの団体が標的とする動機も直ちには認められない。
 仮に排斥団体がBの参加を理由に押し掛けても,それは平穏な本件活動を反対者が妨害する場合であるから,特別な事情が必要となる。
 確かに,本件活動は夜間約10時間に及び,警察官の配備は容易でないとされる。
 しかし,本件公園は高さ1.5メートルの柵で囲まれ出入口を施錠できるから,立入りを参加者と数名の報道関係者に限れば侵入を防ぎやすく,参加者も20名程度にすぎない。
 また,A市内の小競り合いに警察官が出動して制圧してきたことは,警備により混乱を防止できることをむしろ示している。
 配備の負担が大きいことは,警備によってもなお混乱を防止できないことと同じではない。
 危険への備えは,警察との協議による警備の依頼や,立入りの制限という不許可より制限的でない手段で足りる。
 よって,警察の警備等によってもなお混乱を防止できない特別な事情があるとはいえない(②)。
(4) したがって,管理上の支障を根拠とする不許可処分は,21条1項に反し,憲法上許されない。
2 設問②について
(1) 本件条例8条2項の「夜間の独占使用を認めるべき特別な理由」がないことを根拠とする不許可処分が,21条1項に照らして許されるかが問題となる。
 確かに,夜間の利用は禁止が原則であり(同条1項),特別な理由の有無は市長の裁量判断であるから(学校施設の目的外使用につき,呉市立中学校事件判決・最判平成18年2月7日参照),不許可は集会の自由の制約に当たらないとも思える。
 しかし,A市は8条2項により例年10件から20件の夜間の独占使用を許可し,夜間の本件公園を催しの場として開放している。
 そして,公園は表現の場として役立つパブリック・フォーラムであり(最判昭和59年12月18日における伊藤正己裁判官の補足意見参照),その利用の許否は管理権者の単なる自由裁量に属さない(最大判昭和28年12月23日)。
 また,呉市立中学校事件判決は,学校施設が道路や公民館等と異なることを理由に裁量を認めたものであり,公の施設である本件公園に広い裁量を当然には認められない。
 思うに,A市が夜間の本件公園を許可制で開放している以上,誰に開放するかの判断は表現の内容に中立でなければならない(地方自治法244条3項参照)。
 よって,特別な理由の有無は,夜間閉鎖の目的と両立するか,及び夜間の使用がどれほど必要かという内容中立的な観点から判断すべきであり,表現の見解を理由とする不許可は,やむにやまれぬ利益のために必要不可欠な場合でなければ21条1項及び14条1項に反すると解する。
(2) では,本件活動は昼間の公園でも夜間の市立公民館でも行えるとの甲の理由はどうか。
 確かに,他の場所の利用が妨げられないときは制約の程度は限定的であるとも思える(金沢市庁舎前広場事件判決・最判令和5年2月21日参照)。
 本件活動は,市民の間で賛否が分かれる再開発と住宅費高騰という市政の重要な課題を訴える政治的表現であり,その価値は高い。
 しかし,本件活動は屋外で「一夜を過ごす」こと自体により住宅費高騰を訴える象徴的な表現であり,昼間では成り立たない。
 また,本件活動は,世界100以上の都市の市民が参加を表明し日本でも度々報道された,7月1日午後8時から翌2日午前6時までリレーのように継続する本件プロジェクトに呼応するもので,日時自体が表現の内容を成す。
 さらに,本件公園は再開発地区に近接し夜間も通行人の多い,同規模の市立公園のうちA市の中心部にある唯一のものであり,中央大通りから見える場所で行うことに意味があるから,屋内の公民館では訴えが届かない。
 したがって,昼間の公園や公民館は機能的な代替手段とはならず,不許可は本件活動を事実上禁止するに等しい。
 他方,8条1項の目的は暴走族の集会や未成年者の飲酒による夜間の治安悪化の防止にあると思われるところ,約20名が柵の中で静かに過ごす本件活動はこれと無関係である。
 また,騒音も生じず,Xは午後9時以降の静穏確保の条件も受け入れており,同日夜の競合する申請もない。
 しかも,A市は,星座鑑賞会や盆踊りのほか,帰宅途中の市民に新幹線延長を訴えるビアガーデンにも特別な理由を認めてきたのであり,夜間の必要性はXの方がむしろ高い。
 よって,内容中立的な観点からみて,代替手段の存在は特別な理由を否定する根拠とならない。
(3) 次に,政治的中立性に対する市民の信頼が損なわれるとの甲の理由はどうか。
 確かに,金沢市庁舎前広場事件判決は,庁舎等で特定の政策を訴える示威行為が行われると,市が特定の立場の者を利しているかのような外観が生じ,外見上の政治的中立性に疑義が生ずるとして,その禁止を合憲とし,この支障は条件の付加等では除去し難いとした。
 しかし,同判決は,庁舎が主に公務の用に供する施設で,主に一般公衆の共同使用に供する道路や公園等とは異なることを理由としており,集会等の用に供することが本来の目的に含まれる公の施設の利用まで妨げられないことを前提としている。
 そして,本件公園は一般市民の休息等のための都市公園であり,A市は国際交流団体の行事や原水爆禁止の集会も許可してきたから,使用の許可が市の支持と受け取られるとはいえない。
 同判決が条件の付加では支障を除去し難いとしたのも,庁舎での示威行為を前提とするものであり,都市公園の使用許可には及ばない。
 また,同判決の宇賀克也裁判官の反対意見が指摘するとおり,首長の政策は政治的に中立ではあり得ず,誤解の抽象的なおそれを理由に集会を制限することは許されない。
 とりわけ,A市は市長の公約である新幹線延長を訴える催しに夜間の独占使用を許可し,議会で中立性を問われても,市長は基本政策であるから批判は当たらないと答弁している。
 そうすると,A市の中立性の主張は,市の政策を支持する表現には向けられず,市政を批判する表現にだけ向けられることになり,見解に基づく差別にほかならない。
 かかる差別を正当化するやむにやまれぬ利益はなく,かえってXだけを不許可とすることこそが,A市の中立性に対する信頼を損なう。
 よって,政治的中立性も特別な理由を否定する根拠とならない。
(4) したがって,特別な理由がないことを根拠とする不許可処分は,21条1項及び14条1項に反し,憲法上許されない。
 市長は,午後9時以降の静穏確保等の条件(8条2項後段)を付して許可すべきである。
以上

3 本記事独自の予想に基づく解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1は第4の番号1~20(共通の前提及び設問①),2は番号21~34(設問②)に対応し,番号35~37(答案全体)は各項目の規範と当てはめの書き方で満たすようにした。
重み5の8項目は,1(2)の泉佐野市民会館事件判決と上尾市福祉会館事件判決の判断枠組み(番号6~8・10),2(2)の代替手段論への反論(番号27),2(3)の金沢市庁舎前広場事件判決の論理とその射程及び新幹線延長の催しとの比較(番号30・31・33)に当たる。

(2) 設問①(管理上の支障)

本件条例5条3項5号の「その他市立公園の管理に支障があると認められる場合」は,上尾市福祉会館事件で問題となった条例の「会館の管理上支障があると認められるとき」とほぼ同じ文言である。同判決は,この文言を,支障の生ずる事態が客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に限ると解釈した上,反対者の妨害のおそれを理由とする不許可には,警察の警備等によってもなお混乱を防止できないなどの特別な事情を要するとした。本問の甲の第一の理由は,まさに対立団体による暴力の危険と警察官の配備の困難であるから,同判決がそのまま判断枠組みになると予想される。

他方,泉佐野市民会館事件判決は,実質上の主催者が対立する団体と暴力による抗争を続けていたことを理由とする不許可を是認しており,A市側の最も強い論拠となる。もっとも,同判決の事案では,主催者側が爆破事件を起こし,実力阻止の闘争方針を公言し,警察に依頼しても防止が不可能に近かったとされている。本問のXは,Cとは別の団体で,Cの活動に関わる幹部はBだけであり,Bも不起訴であるから,同判決の事案との違いを事実に即して示すことが求められると予想される。

乙が「学説の評価」の確認を求めていることから,泉佐野市民会館事件判決に対する批判的な評価(主催者の過去の行動や対立関係を根拠に危険を認めると,団体の性格による排除や,反対者が騒げば集会が封じられる結果につながるとの批判)に触れることも,評価の対象になると予想される。答案では,同判決自身が団体の性格そのものを理由とする不許可を否定していることと結び付けて示した。

(3) 設問②(特別な理由)

設問②では,夜間は利用禁止が原則であり,特別な理由は例外であるという条例の構造から,Xには夜間の利用を求める憲法上の権利がなく,許否は市長の裁量に属するというA市側の立場をどう扱うかが出発点になる。乙が「Xに対して特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由があるか否か」の検討を求めているのは,この点を意識させるためと考えられる。

答案は,A市が例年10~20件の夜間の独占使用を許可して夜間の本件公園を催しの場として開放していることを捉え,誰に開放するかの判断は表現の内容・見解に中立でなければならないとして判断枠組みを立てた。学校施設の目的外使用について管理者の裁量を認めた呉市立中学校事件判決は,A市側の論拠となり得るが,同判決自身が学校施設を一般公衆の共同使用に供する道路や公民館等と区別しており,従前の許可の運用を平等原則の観点から考慮すべき要素としている。

問題文は,本件公園での国際交流団体の行事と原水爆禁止を訴える集会,60メートル四方という広さなど,金沢市庁舎前広場事件判決の事案と重なる事実を置いている。甲の第二の理由(政治的中立性)は同判決の多数意見の論理そのものであり,同判決を想起し,その射程を検討することが求められると予想される(この点は本記事の推測である)。同判決の多数意見自身が,庁舎は主に公務の用に供する施設であって道路や公園等とは異なるとしているから,都市公園である本件公園にはその論理が及びにくい。

さらに,A市は市長の公約である新幹線延長を訴える催しには夜間の独占使用を許可しており,中立性の主張が市政を批判する表現にだけ向けられることになる。問題文がこの事実と市長答弁を具体的に置いていることから,見解に基づく差別の指摘は,設問②の中心的な評価項目になると予想される。

(4) 結論の許容幅と答案の弱点

設問①について,Bの逮捕歴,小競り合いの反復,SNSでの発信及び夜間の警備の負担を重く見て,不許可を許されるとする結論もあり得る。その場合も,上尾市福祉会館事件判決の「特別な事情」と泉佐野市民会館事件の事案との違いを検討した上で結論を導く必要があると考えられる。

設問②について,夜間閉鎖の原則と代替手段の存在を重く見て,不許可を許されるとする答案もあり得る。もっとも,その場合でも,新幹線延長の催しの許可との整合性と,金沢市庁舎前広場事件判決の射程を説明することが求められると考えられる。

答案の弱点は次の3点である。
第一に,表現の内容・見解を理由とする不許可に「やむにやまれぬ利益」の基準を当てはめることは,金沢市庁舎前広場事件判決の宇賀克也裁判官の反対意見が用いる考え方であり,最高裁判所の法廷意見として述べたものではない。
第二に,泉佐野市民会館事件判決に対する批判的な評価は,本記事では文献で確認しておらず,一般的な評価の整理として示したものである。
第三に,設問②で14条1項を併せて挙げたが,比較の対象(新幹線延長の催し)との違い(時間帯が午後7時から午後9時までであること等)をどう評価するかは,さらに検討の余地がある。

(5) 扱わなかった事項

設問が論じる必要がないとした規定の文言の明確性と,設問で問われていない8条1項(夜間の利用禁止)自体の合憲性,及び不許可処分後の訴訟(取消訴訟,国家賠償請求等)は,答案では扱っていない。

第6 関連記事

1 前年度の同じ科目の模範解答

①令和7年度司法試験公法系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した40項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①公園・広場で政治的集会を不許可にできるか―泉佐野市民会館・上尾市福祉会館・金沢市庁舎前広場事件(AI作成)
②公立図書館は少年の推知報道を載せた雑誌の閲覧を制限できるか―少年法61条,閲読の自由,公の施設の利用拒否をめぐる裁判例及び日本図書館協会の見解(AI作成)
③デモ参加者の顔面被覆と匿名表現の自由―内容中立規制・萎縮効果・代替手段(AI作成)
④行政裁量の司法審査―裁量権の逸脱・濫用と判断過程審査(AI作成)
⑤最高裁判所裁判官及び事務総局の各局課長が襲撃の対象となるおそれが高いとした大阪地裁判決等(AIリライト)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和8年司法試験の実施について」
②法務省「令和8年司法試験問題」
③令和8年司法試験論文式試験問題(公法系科目)

2 法令

①日本国憲法(e-Gov法令検索)
②地方自治法(e-Gov法令検索)
③都市公園法(e-Gov法令検索)

3 裁判例

①最高裁判所第三小法廷平成7年3月7日判決(平成元年(オ)第762号,民集49巻3号687頁)
②最高裁判所第二小法廷平成8年3月15日判決(平成5年(オ)第1285号,民集50巻3号549頁)
③最高裁判所第三小法廷令和5年2月21日判決(令和3年(オ)第1617号,民集77巻2号273頁)
④最高裁判所大法廷昭和28年12月23日判決(昭和27年(オ)第1150号,民集7巻13号1561頁)
⑤最高裁判所第三小法廷平成18年2月7日判決(平成15年(受)第2001号,民集60巻2号401頁)
⑥最高裁判所第三小法廷昭和59年12月18日判決(昭和59年(あ)第206号,刑集38巻12号3026頁)

4 確認状態

問題文は,法務省掲載の公法系科目の問題冊子(PDF)を取得し,第1問の全頁を読んだ。

令和8年の出題の趣旨及び採点実感は,本記事の作成時点で公表されておらず,読んでいない。第4の評価項目と重み及び第5の3の解説は,いずれも本記事の予想であり,公表後に照合して見直す必要がある。

裁判例は,いずれも裁判所ウェブサイトの判決全文で,答案と解説で用いた判示を確認した。
皇居外苑事件判決の該当部分は,訴えの利益がないとした判断に「なお,念のため」として付加された判示である。
判例秘書等の有料データベースは用いていない。

地方自治法244条は,e-Gov法令検索で試験の実施時(令和8年7月)の条文を確認した。

泉佐野市民会館事件判決に対する批判的な評価(第5の3(2))は,文献では確認していない。