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共謀共同正犯か幇助犯か-実行行為をしない関与者の正犯性,順次共謀及び共犯の錯誤(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

犯罪現場で直接の実行行為をしていない者でも,計画,見張り,逃走車両の運転,道具の調達又は利益分配への関与の仕方によって,共謀共同正犯となる場合がある。他方,他人の犯罪を容易にしたにとどまると評価されれば幇助犯となり,従犯として刑が必要的に減軽される。

判断の中心は,役割の名称ではない。①どの犯罪について意思を通じたか,②その犯罪を自分たちの犯罪として相互に利用し合って実現しようとしたか,③意思決定,計画,実行及び利益にどの程度関与したか,④実行者との情報共有又は遮断がどうであったかを,犯罪の前後を含む具体的事実から認定する。

本記事は,令和8年9月24日現在の刑法,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判例及び法務省の令和3年司法試験資料に基づく一般的な整理である。法務省資料は試験問題の分析対象を示す資料であり,裁判例と同じ拘束力を持つものとして扱っていない。

第2 条文と最高裁大法廷判決の出発点

刑法60条は,二人以上共同して犯罪を実行した者を共同正犯とする。同法62条1項は正犯を幇助した者を従犯とし,同法63条は従犯の刑を正犯の刑に比べて減軽すると定める。

最高裁昭和33年5月28日大法廷判決(昭和29年(あ)第1056号・刑集12巻8号1718頁)は,二人以上が特定の犯罪を行うため,共同意思の下に一体となり,互いの行為を利用して各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議があり,それに基づいて犯罪が実行された場合,謀議に加わった者が直接実行行為をしていなくても共同正犯となり得るとした。

もっとも,同判決は,共謀の認定を緩めてよいとしたものではない。実行行為をしない者について共同正犯を認めるには,特定の犯罪についての共同意思と相互利用関係を,具体的事実から厳格に認定する必要がある。

第3 共謀共同正犯か幇助犯かの判断順序

1 対象犯罪と合意内容を先に固定する

最初に,「犯罪に協力した」という抽象的な認定を避け,窃盗,強盗,詐欺等のどの犯罪について,どの日時,場所,対象,方法及び役割を合意したのかを具体化する。実行者が計画を変更した場合は,変更後の犯罪まで合意が及んだかを別に検討する。

2 正犯としての共同実行か,他人の犯罪への援助か

共謀共同正犯は,共同意思の下で相互に行為を利用し,自分たちの犯罪として実現する関係である。幇助犯は,正犯者の犯罪を認識し,その実行を容易にする援助をするが,正犯として共同実行したとは評価されない関係である。

「自己の犯罪として遂行する意思」,犯罪実現への重要な因果的寄与又は犯罪遂行に対する支配・影響力は,正犯性を説明するための有力な視点である。ただし,一つの抽象語だけで結論を出さず,次節の具体的事実に分解する必要がある。

3 規範と事実評価を対応させる

例えば,「利益を得るから正犯」「現場にいないから幇助」と単独事情で決めることはできない。採用する判断視点を示した上で,それを支える事実と弱める事実の双方を挙げ,反対方向の事情をなぜ乗り越えられるかまで説明する。

第4 正犯性を判断する主な事情

事情共謀共同正犯を支える方向幇助犯を支える方向
発案・計画犯行を提案し,対象,方法又は役割を具体化した既に決まった犯行を後から知らされ,限定的な援助だけを承諾した
意思決定への関与実行時期,対象又は方法を決め,変更・中止にも影響できた中核的な計画から除外され,決定権がなかった
役割の重要性その関与がなければ計画実現が困難になる重要な役割であった代替可能で従属的な便宜供与にとどまった
情報共有対象,方法,危険,実行状況を継続して共有した核心部分を知らされず,又は意図的に情報から外された
実行への影響力指示,監視,連絡等により実行を統制し,又は中止させ得た実行者の判断に従い,犯罪遂行を左右できなかった
利益・負担成果を共同分配し,失敗の危険又は費用も共同で負担した固定報酬又は好意による援助で,成果に応じた利害を共有しなかった
実行中・実行後連絡,見張り,運搬,隠匿又は利益分配まで一体として行った限定された一場面だけで援助し,その後の処理には関与しなかった

これらはチェック数で機械的に決める項目ではない。犯罪の性質と計画全体の中で,各事情がどの程度の重みを持つかを評価する。

第5 見張り,逃走車両及び道具の調達

見張り役,運転役又は道具の調達役という呼称だけで,共同正犯又は幇助犯が決まるわけではない。見張りが警察や被害者の動きを監視し,合図によって実行の開始・中止を左右する計画上不可欠な役割であれば,共同正犯を支えることがある。他方,実行計画の核心を知らず,その場限りの便宜を与えただけなら,幇助犯の方向に働く。

逃走車両についても,犯行計画の段階から移動経路,待機地点,連絡方法及び利益分配を共に決めていた場合と,犯行後に事情を知って運転した場合を区別する。後者では,実行終了時期との関係で,そもそも当該犯罪の幇助となるか,別の犯罪が問題となるかを検討する必要がある。

第6 順次共謀-全員の直接連絡は必要か

前記最高裁昭和33年5月28日大法廷判決は,共謀共同正犯の成立について,関係者全員が一堂に会し,又は全員が直接意思連絡をすることを要しないとした。甲と乙が特定の犯罪を共謀し,乙がその同じ犯罪について丙と意思を通じるなど,順次の意思連絡によって全員に同一犯罪の共同意思が成立する場合がある。

しかし,「同じグループに属する」「共通の知人がいる」というだけで順次共謀を認めることはできない。誰が,いつ,誰に,どの犯罪計画を伝え,どの役割を承諾し,その内容が次の者へどう連結したかを,通信記録,面会状況,金銭移動,位置情報及び供述の変遷から認定する必要がある。

第7 共犯の錯誤は二段階で検討する

参加者間で予定した犯罪が一致しない場合は,①客観的にどの犯罪の共謀が成立したか,②各人の故意が実際に実行された犯罪をどこまで含むか,を分ける。

例えば,一人は強盗を予定していたが,他の実行者は窃盗の意思で財物を取得したという場合,まず,行為者間に窃盗という限度で共同意思を認められるかを検討する。その上で,刑法上重なり合う範囲の犯罪について責任を認める考え方や,行為の共同を重視する考え方等を踏まえ,個々の関与者の認識と実行事実が構成要件上どこまで符合するかを示す。

「重い犯罪を認識していたから,実際の軽い犯罪について当然に共同正犯になる」と短絡してはならない。実行者との間で共有された行為内容,法益侵害の態様,計画からの逸脱及び故意の符合を具体的に論証する。

第8 刑事弁護で収集する証拠

① 発案から実行までのメッセージ,通話,面会及び位置情報
② 対象,日時,方法,役割及び中止条件を決めた記録
③ 中核計画を知らされていなかったことを示す通信又は供述
④ 現場の視認可能性,連絡手段及び合図の有無
⑤ 道具,車両,資金及び報酬の調達者・負担者
⑥ 利益分配の有無,金額,時期及び成果との連動性
⑦ 計画変更を知った時点と,制止,離脱又は援助継続の行動
⑧ 供述ごとの開示時期,質問内容及び客観記録との符合

共謀の認定は,実行者の供述だけでなく,客観記録との整合性,供述者自身の利害,捜査段階からの変遷及び他の合理的説明を検討する。弁護側では,「関与があったか」だけでなく,「何を知り,何を決め,何を左右できたか」を時系列にする。

第9 令和3年司法試験問題から得られる学び

法務省の令和3年司法試験・論文式試験問題(刑事系科目)には,実行行為をしていない関与者について,見張り,逃走用車両,利益分配,中核計画からの除外,仲介者を通じた意思連絡及び予定した犯罪と実行犯罪のずれを評価する場面が含まれている。

公式「出題の趣旨」と「採点実感」は,正犯意思,重要な因果的寄与又は行為支配等,いずれの判断視点を採用する場合でも,事実評価との一貫性が重要であることを示している。中核計画から外されたことは幇助犯を支える一方,見張り,逃走車両の準備及び利益分配は正犯性を支え得る。さらに,仲介者を通じた順次共謀の成立と,各人の故意・錯誤を別々に検討する必要がある。

本記事の実務上の学びは,人物ごとに結論を先に置くのではなく,合意の連鎖図役割・意思決定表及び故意の対応表を作ることである。誰と誰が何を合意したか,犯罪実現への影響力がどこにあったか,各人の認識と実行事実がどこまで重なるかを別の資料として整理する。

共謀成立後に暴行内容が変化し,又は一部の者が離脱した場合の共同正犯の射程と刑法207条は,「共犯関係が途中で変わった場合の傷害責任-共謀の射程,共犯からの離脱及び刑法207条(AI作成)」で整理している。

第10 出典・確認範囲

① e-Gov法令検索「刑法」60条,62条及び63条(令和8年9月24日確認)。
② 最高裁昭和33年5月28日大法廷判決(昭和29年(あ)第1056号・刑集12巻8号1718頁)。
③ 最高裁令和4年5月20日第二小法廷判決(令和2年(あ)第1135号。実行行為をしない関与者の共謀認定について,第一審が用いた事情と控訴審の事実誤認審査を扱う。一般的な正犯性要件を新たに定式化した判例としては扱っていない。)。
④ 法務省「令和3年司法試験・論文式試験問題(刑事系科目)」全9頁。
⑤ 法務省「令和3年司法試験論文式試験出題の趣旨」(刑事系部分)。
⑥ 法務省「令和3年司法試験の採点実感(刑事系科目)」。

裁判所ウェブサイトは全裁判例を収録するデータベースではない。令和8年9月24日,判例秘書はログアウト状態で,検索を実行できなかったため,検索件数及び追加裁判例は未確認である。したがって,本記事は,同種事案に関する裁判例が上記以外に存在しないとはしていない。具体的事件では,公判前整理手続の争点,証拠構造及び個々の供述の信用性を踏まえた個別検討が必要である。