その他裁判所関係

判事補基礎研究会の資料

目次
1 判事補基礎研究会の資料
2 関連記事

1 判事補基礎研究会の資料
(1) 判事補基礎研究会の資料を以下のとおり掲載しています(「令和6年度判事補基礎研究会の日程表,参加者名簿及び配布資料目次」といったファイル名です。)。
(令和時代)
令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度
令和5年度令和6年度令和7年度
(平成時代)
平成26年度平成27年度平成28年度
平成29年度平成30年度
(2) 判事補基礎研究会は,任官3年目の判事補を対象に実施されており,令和元年度の場合,69期判事補が対象でした。


司法研修所別館の案内図(左上が裁判所職員総合研修所の宿泊棟であり,左下が司法研修所別館のなごみ寮です。)

2 関連記事
・ 裁判官研修実施計画
・ 裁判官の合同研修に関する説明文書
・ 裁判所職員総合研修所の研修実施計画等
・ 新任判事補研修の資料
・ 判事任官者研究会の資料
・ 弁護士任官者研究会の資料
・ 判事補及び検事の弁護士職務経験制度
・ 裁判官の民間企業長期研修等の名簿

判事任官者研究会の資料

目次
1 判事任官者研究会の資料
2 関連記事その他

1 判事任官者研究会の資料
(1) 判事任官者研究会の資料を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和元年度令和3年度令和4年度令和5年度
令和6年度
(平成時代)
平成26年度平成27年度平成28年度
平成29年度平成30年度
(2) 判事任官者研究会は,新任判事(11年目の裁判官)を対象に実施されており,平成30年度の場合,61期の裁判官が対象でした。
(3) 平成28年度までは「判事任官者実務研究会」という名称でした。


2 関連記事その他
(1) 自由と正義2019年7月号94頁及び95頁に載ってある「弁護士しています~弁護士職務経験の声~《第20回》本多久美子判事(鳥取地・家裁所長)・熊野祐介弁護士(あさひ法律事務所)インタビュー」には,39期の本多久美子裁判官(弁護士任官者)が神戸地裁民事部の部装活をしていたときの体験談として,「私が他の裁判官と比べて判事補の「指導」において不利だと思うのは、自分に判事補の経験がないことですね。右陪席に「ここまで言っていいかな。」と聞いたりしていました。」と書いてあります。
(2) 「座談会 民事訴訟のプラクティス(上)」別紙1には以下の記載があります(判例タイムズ1368号(2012年6月1日号)24頁)。
4 証拠のない主張は無限
    準備書面を求めず,証拠を求める。証拠収集(送付嘱託,調査嘱託)は早期(第1,2回期日)に積極的に,書面尋問も証拠収集手段のひとつ。
7 争点整理は3期日をめどに

    準備なき期日は時間の無駄。期日間準備に十分な時間を取れば,多くの単独事件は3期日で争点整理の目処は立つ。ただし,当事者に強要することはしない。延びれば延びてもよいという大らかな気持ちで。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官研修実施計画
 裁判官の合同研修に関する説明文書
・ 裁判所職員総合研修所の研修実施計画等
 新任判事補研修の資料
・ 判事補基礎研究会の資料
・ 弁護士任官者研究会の資料
・ 判事補及び検事の弁護士職務経験制度
 裁判官の民間企業長期研修等の名簿

報道されずに幕引きされた高松高裁長官(昭和42年4月28日依願退官,昭和46年9月5日勲二等旭日重光章)の,暴力金融業者からの金品受領

目次
1 事件の内容
2 裁判官弾劾法の条文等
3 引用元の文献の記載
4 死後叙勲を受けたこと
5 関連記事その他

1 事件の内容
(1) 汚れた法衣-ドキュメント司法記者(昭和59年4月25日初版)88頁ないし110頁には,「暴力金融業者と交友・収賄した高裁長官」というタイトルで,暴力金融業者Sからの金品受領(民事・刑事の法律相談,及び刑事事件への介入等の謝礼として,高級腕時計,朝鮮人形,高級ブランデー及び現金40万円を受領したこと。)を問題視されて,昭和42年4月28日(金)に依願退官したX高松高裁長官のことが詳しく書いてあります。
   これによれば,大阪地検特捜部は,昭和41年5月末頃からの捜査の結果として,高裁長官としての職務権限との関係であっせん収賄罪で立件することは難しいものの,検事総長に報告した上で最高裁判所長官の訴追請求により弾劾裁判にかけるべきであると判断したり,読売新聞が報道しようとしたりしたものの,4月27日,関根小郷 大阪高裁長官が読売新聞社の最高幹部に電話をして報道を待ってほしいと頼み,万歳規矩楼 前大阪高裁長官(昭和42年3月20日限り定年退官)が読売新聞社を訪問してX高松高裁長官の退職が明日発令されるから報道を待ってほしいと頼み,その翌日にX高松高裁長官が依願退官したため,同人の金品受領は報道されませんでした。
イ 大阪地検特捜部の捜査が開始した当時,X裁判官は神戸地裁所長をしていましたが,昭和41年7月22日,高松高裁長官に任命されました。
(2) 汚れた法衣-ドキュメント司法記者99頁ないし101頁には,大阪地検特捜部の捜査結果を引用する形で,X高松高裁長官の金品受領の具体的内容が書いてあります。

汚れた法衣-ドキュメント司法記者の表紙です。

2 裁判官弾劾法の条文等
(1)ア 昭和42年4月当時の条文である,裁判官弾劾法の一部を改正する法律(昭和23年7月5日法律第93号)による改正後の裁判官弾劾法15条は以下のとおりです。
① 何人も、裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる。
② 高等裁判所長官及び地方裁判所長は、その勤務する裁判所及びその管轄区域内の下級裁判所の裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、最高裁判所長官に対し、その事由を通知しなければならない。
③ 最高裁判所長官は、裁判官について、前項の通知があつたとき又は弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し罷免の訴追をすべきことを求めなければならない。
④ 第一項及び前項の規定による訴追の請求をするには、その事由の簡単な説明を添えなければならない。但し、その証拠は、これを要しない。
イ 現在の裁判官弾劾法15条3項では,訴追請求を行うのは最高裁判所です。
(2) 高裁長官について裁判官弾劾法2条所定の弾劾事由まではないものの,裁判所法49条所定の分限事由がある場合,当該高裁の申立て(裁判官分限法6条)により,最高裁大法廷(裁判官分限法4条)が第一審かつ終審として分限裁判を行うこととなります(裁判官分限法3条2項1号)。

3 引用元の文献の記載
   汚れた法衣-ドキュメント司法記者には以下の記載があります(引用元にはS及びXの実名が書いてあります。また,文中の「シャッポ」はフランス語で「帽子」のことです。)。
(88頁の記載)
   私(山中注:読売新聞の記者をしていた,「汚れた法衣」の著者のこと。以下同じ。)は現役の記者時代に幾度か新聞が裁判所に頼まれて報道を取りやめ、汚職、非行を働いた”大魚”が辞職により法網を切って追及をのがれ、弾劾にかけられるのは”雑魚”ばかりなのを実際に体験した。そこでその度に、確証があっても活字にできない自分の非力に、歯ぎしりをする思いだった。
(95頁の記載)
 特捜部(山中注:大阪地検特捜部)は四十二年四月(山中注:昭和42年4月)初めまでに暴力金融関係で五一人を調べ、前掲の罪名(山中注:恐喝及び窃盗)などで一〇名を起訴し、司法書士ら五人を起訴猶予、顧問弁護士一人を不起訴とした。Sは四月末に一二〇〇万円を積んで保釈されたが、起訴状によると高利で運転資金などを貸し付け、返済が遅れると暴力団を背景に、あるいはX判事を”義理のおやじ”などと言って相手を脅して取り立て、会社を乗っ取ったケースもあった。こうした起訴事実が、X判事が神戸の所長時代に行われたことに注目したい。
 ある裁判官(現在高裁裁判長)の両親で、Sに事業資金を借り、暴力取立ての被害に逢った夫婦の証言がある。四十年の末に、この夫婦がSの事務所へ借金の返済に行ったところ、Sが歳暮の山を指し、得意になって、
「こうして歳暮を捜査員に届ける。神戸地裁のX所長は特別な関係で顧問みないなもんや。電話一本で何でも教えてくれる。X判事さんは最高級のウイスキーや」
と言ったという。
 その時は夫婦も信じなかったが,Sの取り立て方に堪りかねた挙句、まもなく神戸地裁をたずね、所長室のドアを叩いて窮状を訴え、救済を求めた。するとX判事は「私とSの付き合いをどうして・・・」と警戒したが、説明を聞くと夫妻の目の前でSに電話し「私の親しい裁判官のご両親だ。借金を返し、利息も余分に取られたのに、まだ追い回されると嘆いておられる。この人には、きつい取り立ては止めなさい」と伝え、「安心なさい。Sは大阪の裁判所で実刑になるところを、私が弁護士を紹介して執行猶予にしてやったものです。これからお困りの時は、私の名前を言ってその弁護士に相談しなさい」と親切に教えて夫妻を帰した。
 自宅などへ押しかけていたS側の取立屋は姿を消し、鳴り続けた電話は静まり、Sの態度も和らいだが、それまでに受けた大損害はそのまま残ったという。
(99頁の記載)
 四月(山中注:昭和42年4月)になるとまもなく”X長官が大変な剣幕だ”と伝わってきた。私を名指しして「あいつは必ずクビにしてやる。あの新聞社(山中注:読売新聞社)も俺のことを書くなら、必ず潰してやる」と息巻いているという。「俺をやるならやって見ろ。やれなかったらどうする」など、検察への挑発的な言動もひどいと聞いた。
 平たく言えば、裁判官が独立して職権を行うのは裁判の公正を守るためで、職権の範囲は裁判所の事務分配ルールなどによって客観的に決められている。所長、長官が行なう司法行政は裁判官会議の運営によるから、高裁長官と言っても権力の構造から見ればいわば”高裁のシャッポ”ではないか。「床の間の柱」と言った人もいる。
 そのシャッポが思うままに個人や新聞社に危害を加えると公言し、正当な職務を遂行する検察を罵るとは、一体どういうことか。しかも「俺は必ず近く大阪の長官として帰る。帰ればあの連中をこのままでは済まさない」と豪語しているとも言う。裁判官歴四〇年のベテランが、十分に承知しているはずの数々のルールを乗り越えた”法外”の状態を放置できるものではない。
(101頁の記載)
   三十六年(山中注:昭和36年)末に、Sは六〇〇万円貸している男(前科一一犯、四十年十月死亡)に「前から大変親しくしている判事を紹介しようといわれ、その案内で大阪高裁の判事室へ行き、X判事に会った。その日の夕方、Sは一人で吹田市のX判事の自宅をたずね、大いに意気投合した。交際はそれからで、この点は後にX判事の述懐で確認された。だが、Sを紹介した男をX判事がいつどうして知り、なぜ親交を重ねたかは分からない。また当時、神戸の所長官舎には、大阪などから裁判官が集まり、時には”裁判官会議”を開いたようで、検察陣は部内に強い影響力を持つX判事の意外なボスぶりに驚き、いろんな角度からその”実力”を調査した。その中にはX判事に世話になった弁護士が大阪からタクシーでお礼に虎の皮を届けに行ったが、「ここには前から虎の皮がある。それは吹田の自宅へ放り込んでもらえまいか。」と言われて、いま来た道を通って吹田の松本判事宅へ運んだ、などと言う話もあった。
(104頁の記載)
 高松には初めからこの事件にタッチして来たQ記者を派遣した。彼が高松高裁を訪ねるとX長官は週日ゴルフで留守。やがて帰ったX判事の日焼けして元気そうな表情には、反省の色もない。Qは予定通りに、言うことだけ聞くと引き揚げて来た。
(109頁の記載)
 大阪地検はまもなくXを「刑事責任なし」で不問とし、訴追を求めるための「報告書」も出さずじまいにしたようだ。しかし、法曹の一部には「もっと踏み込んで調べて、処分の公正を期すべきだった」とする有力な意見があった。
(176頁の記載)
 裁判官という職務柄、手厚い身分保障と、慎重な制裁制度が必要なことは分かる。だが、国民が予想もしないような”不埒な裁判官”がいれば、法律で定められた通りの制裁を加えるべきだ。裁判所が制裁のルールを無視してかばい立てたのは、国民の信頼に対する”裏切り”ではないか。「本官を免ずる」と発令されてしまえば、裁判官はタダの人で、もう弾劾や分限では責任が問えなくなる。
(177頁の記載)
 X長官の辞任の際には、閣議で辞任の理由を聞いた佐藤栄作首相が、非行内容と裁判所の態度に激怒したと伝えられる。
(237頁及び238頁の記載)

 この原稿は雑誌『月刊サーチ』五十八年7月号から”闇に葬られた司法界のスキャンダル”として連載されるに至り、始めて日の目を見た。大きな反響はあったが、関係者からの苦情はなかった。そして今年四月号で連載が完結するとともに、同社と現代評論社のご好意によって、これを刊行することになった。

4 死後叙勲を受けたこと
(1) X高松高裁長官は,弁護士登録をしないまま昭和46年9月5日に胃がんで死亡し,同日付で勲二等旭日重光章を授けられました。
(2) 汚れた法衣-ドキュメント司法記者110頁には以下の記載がありました。
 彼(山中注:X元高松高裁長官)を無事”辞職”に導いた万歳元長官が葬儀委員長を務めた。普通の叙勲手続きによってこの日付けでX元長官は従三位勲二等に叙せられ、旭日重光章を授けられた。故人を誹謗するのは慎みたいが、このとき、国の栄典制度とは一体なんだろうかと思った。ただ生前のポスト、経歴、勤続年数などを「規準」に当てはめ、最後に勤めた役所が自動的に叙勲を申請するだけでよいのか。”減点”はどうする。そうした配慮を欠く扱いは公正な栄典の授与を台なしにする。「実体的真実の追求」が生命の裁判所なら、弾力的な方法を考えて、こんな場合には妥当な規準によるべきだろう。法曹の間でもこの”栄誉”には驚いた人が多いのだ。

5 関連記事その他
(1)ア 外務省HPの「外交記録公開」には「平成22(2010)年5月,外交記録公開の透明性を確保しつつ円滑に推進するために,「外交記録公開に関する規則(PDF)別ウィンドウで開く」を制定し,作成・取得から30年が経過した行政文書は公開するとの原則を明記しました。」と書いてあります。
    そして,外務省HPの「戦後外交記録公開目録・史料概要」には極秘限定配布の外交記録も公表されていますし,「極秘限定配布 site:www.mofa.go.jp」でグーグル検索すれば,作成・取得から30年が経過したということで外務省HPで公開されている,極秘限定配布の外交記録を入手できます。
イ 中央公論HPの「鳩山イラン訪問の大失態」には「極秘・限定配布(極秘の中でも特に秘密度が高く、限られた人しか閲覧できない公電)」と書いてあります。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)
・ 性犯罪を犯した裁判官の一覧
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
・ 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)

最高裁判所事務総局人事局の任用課長及び参事官

目次
1 総論
2 最高裁判所事務総局人事局任用課にある係の事務分掌
3 裁判官人事に関する例規
4 最高裁判所事務総局人事局任用課長に関する外部資料の記載
5 歴代の最高裁判所事務総局人事局任用課長(新しい順)
6 最高裁判所事務総局人事局任用課長を経験した現職裁判官のその後
7 最高裁判所事務総局人事局任用課長を経験した元裁判官のその後
8 最高裁判所事務総局人事局参事官
9 最高裁判所事務総局人事局任用課にある係の事務分掌(平成28年3月31日以前のもの)
10 関連記事その他

1 総論
(1) 最高裁判所事務総局人事局任用課長は現在,裁判官人事に特化したポストです。
(2) 最高裁判所事務総局人事局任用課長は最高裁判所事務総局の局の課長であって(最高裁判所事務総局規則5条1項),秘書課長,広報課長及び情報政策課長という最高裁判所事務総局の課長(最高裁判所事務総局規則4条1項)とは異なります。
(3) 最高裁判所事務総局人事局任用課長は本来,裁判所事務官である(最高裁判所事務総局規則5条1項)ものの,司法行政上の職務に関する規則(昭和25年1月17日最高裁判所規則第3号)1項に基づき,常に判事をもって充てられています。

2 最高裁判所事務総局人事局任用課にある係の事務分掌
(1) 平成28年3月2日最高裁判所規程第2号に基づき,平成28年4月1日に人事局総務課が新設された結果,人事局任用課は裁判官人事に特化した部署となりました(最高裁判所事務総局分課規程11条参照)。
(2) 平成28年4月1日に新設された人事局総務課は,廃止された人事局給与課の業務のほか,人事局任用課の業務のうち,一般職に関する業務を引き継いでいます。
(3) 平成31年4月1日現在,最高裁判所事務総局人事局任用課にある係の事務分掌は以下のとおりです(「最高裁判所事務総局人事局の事務分掌(平成31年4月1日現在)」参照)。
ア 企画係
① 裁判官の指名,補職等の制度に関する事項
② 裁判官の人事評価に関する事項
③ 裁判官の法科大学院への派遣に関する事項
イ 実施係
① 裁判官の任免,補職等の立案,発令等に関する事項
② 裁判官の報酬の決定に関する事項
③ 裁判官の履歴書等に関する事項
④ 裁判官の服務に関する事項
⑤ 民事調停官,家事調停官,倫理監督官,再就職等監察官及びその他の最高裁判所に設置された各種委員会等の委員等の任免等に関する事項(分限及び懲戒に関する事項を除く。)
ウ 試験係
① 司法修習生の採用,罷免,考試等に関する事項
② 司法修習委員会の庶務に関する事項
③ 裁判所法(昭和22年法律第59号)第45条第1項の選考に関する事項

最高裁判所事務総局人事局の職員配置図(令和2年4月1日現在)

3 裁判官人事に関する例規
・ 下級裁判所事務処理規則の運用について(平成6年7月22日付の最高裁判所事務総長依命通達)
・ 部の事務を総括する裁判官の指名上申について(平成6年12月9日付の最高裁判所人事局長通達)
・ 裁判官の人事評価に関する規則(平成16年1月7日最高裁判所規則第1号)
・ 裁判官の人事評価に関する規則の運用について(平成16年3月26日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)
・ 裁判官に関する人事事務の資料の作成等について(平成16年5月31日付の最高裁判所人事局長の依命通達)
・ 裁判官の再任等に関する事務について(平成16年6月17日付の最高裁判所人事局長通達)

4 最高裁判所事務総局人事局任用課長に関する外部資料の記載
(1) 14期の安倍晴彦裁判官が著した「犬になれなかった裁判官―司法官僚統制に抗して36年 」(平成13年5月1日出版)220頁及び221頁には以下の記載があります。
   所長を経験した、ある裁判官に聞いたところによると、昇給のシステムは、次のようになっているようである。
   まず、地・家裁所長が、それまでの号俸において一定年限がたった管内の裁判官に順番をつけて、昇給候補者のリストを作成する。次に高裁長官が管内の地・家裁から上がってきたリストを総合して順番をつけて最高裁に提出する。それを最高裁が全国分を総合して順番をつけ、順次昇給させる、ということである。
   普通、高裁までは極端な差別をつけることはなく、極端に問題になる差別処遇は、最高裁の段階でなされるのだそうである。場合によっては、現場の意見も無視することもある、最高裁の人事政策なので、言ってみれば、「高度の政治的判断」である。そう思わざるを得ない例が、いくつもある。宮本再任拒否についても理由を一切いわない最高裁のこと、そのような状態で、完全に「ほしいままに」給与の差別がなされてきたのである。
(2) 司法権力の内幕(平成25年12月10日出版。著者は42期の森炎 元裁判官)には以下の記載があります。
・ 42頁の記載
    裁判所で、厳密な意味でラインと言えるのは、一つだけである。
    それは、「最高裁事務総局(官房局)付-最高裁事務総局人事局任用課長-最高裁事務総局人事局長-最高裁事務総長-東京高裁長官-最高裁判事」という路線だけである。
    最高裁事務総局の人事局任用課長のポストに就くと、後は、一直線で最高裁判事まで行く(そして、五〇パーセントぐらいの確率で最高裁長官となる)。
    しかし、そんな人は五年に一人である。人事局任用課長のポストに就く時期は四〇歳ころになるが、二〇代に始まる裁判官生活の中で、そこを目指す非現実的な人はいない。そこを目指しての競争もない。
・ 46頁の記載
    実質的に人事をおこなっているのは、例の人事局任用課長である。一人ですべてをやっているので、忙しすぎるのかもしれない。
(3) 31期の瀬木比呂志裁判官が著した絶望の裁判所には以下の記載があります。
(87頁の記載)
 事務総局の外、つまり現場の裁判官たちとの関係では、事務総局の権力と権威は、そのトップについてはもちろん、総体としても決定的に強大である。
 その結果、先にも記したとおり、傲慢な局長であれば地家裁所長、東京地裁所長代行クラスの先輩裁判官たちにさえ命令口調で接することがありうるし、課長たちの地家裁裁判長たちに対する関係についても、同様のことがいえる。
(91頁の記載)
    事務総局は、裁判官が犯した、事務総局からみての「間違い」であるような裁判、研究、公私にわたる行動については詳細に記録していて、決して忘れない。

    たとえば、その「間違い」から長い時間が経った後に、地方の所長になっている裁判官に対して、「あなたはもう絶対に関東には戻しません。定年まで地方を回っていなさい。でも、公証人にならしてあげますよ」と引導を渡すなどといった形で、いつか必ず報復する。このように、事務総局は、気に入らない者については、かなりヒエラルキーの階段を上ってからでも、簡単に切り捨てることができる。なお、右の例は、単なるたとえではなく、実際にあった一つのケースである。窮鼠が猫を噛まないように、後のポストがちゃんと用意されているところに注目していただきたい。実に用意周到なのである。

(4) 「司法の可能性と限界と-司法に役割を果たさせるために」(令和元年11月23日の第50回司法制度研究集会・基調報告②。講演者は31期の井戸謙一弁護士)には以下の記載があります(法と民主主義2019年12月号18頁)。
     青法協裁判官部会の裁判官たちは、支部から支部へという露骨な差別人事を受けていました。そういう扱いは現在では基本的には姿を消していると思います。しかし人事が裁判官を支配する現実はやはり非常に重要である。
     具体的には三〇期の藤山雅行裁判官の人事は影響が大きかったと思います。一時は裁判所の行政事件処理のエースでトップエリートだったあの方が、東京地裁の行政部の部総括として最高裁の意向に反する判決を繰り返すと、行政事件から外されて、出世コースからも外されてしまった。それを見ている若い裁判官たちは、「あんなトップエリートでも、やはり最高裁の意に反する判決をすると、こんな処遇を受けるのだ」と受け止めます。
     それ以外にも、たとえば高裁の陪席から長年動かないで(「塩漬け」と言います。)定年を迎える裁判官もいます。同期でも、途中から処遇の差がどんどんついていきます。私が直接知っているのでは、部がいくつもあり、部総括が数人いる大きな支部で、同期でありながら一方は支部長、一方は部総括ですらない平の裁判官という実例があります。こういう実例をみる若い裁判官たちは、こんな処遇は受けたくないと思うわけです。私は,裁判官には出世指向の人は多くないと思いますが、プライドは高いですから、人並み以下の処遇をされるのは耐えきれない。
(5) 現代ビジネスHPの「転勤を断ると出世できない…裁判官の世界はまるでサラリーマンのよう」には以下の記載があります。
    いわば、通り一遍の「評価書」を基本資料として、高裁長官案が作成され、最高裁事務総局人事局の任用課長が調整し、最高裁事務総長が承認する。それがそのまま最高裁長官案となり、裁判官の全国異動が始まるわけである。
    ただ、事務総長がチェックする最終段階で、人事案から外される裁判官もいる。
    「ある事務総長が、この裁判官は、事務総局には入れない。地方の裁判所に出せといって、高裁長官案を変更させたことがあります。
    かつて、その裁判官が、事務総局のトップに意見を言って、反感を買ったことがあった。その際、事務総局のトップは、俺の目の黒いうちは、こいつにはいい目をさせない、と言ったといいます。実に、その言葉通り、人事で冷遇したというわけです」(元裁判官)


5 歴代の最高裁判所事務総局人事局任用課長
(1) 新しい順に記載すると以下のとおりです。
・ 58期の中村修輔:令和 6年8月 9日~
・ 55期の高田公輝:令和 3年8月 2日~令和 6年8月8日
・ 53期の馬場俊宏:平成29年7月28日~令和3年8月1日
・ 50期の板津正道:平成27年4月 1日~平成29年7月27日
・ 48期の前澤達朗:平成25年4月11日~平成27年3月31日
・ 47期の徳岡 治:平成22年9月13日~平成25年4月10日
・ 45期の門田友昌:平成19年4月 1日~平成22年9月22日
・ 41期の堀田眞哉:平成14年4月 1日~平成19年3月31日
・ 35期の田中昌利:平成10年5月 6日~平成14年3月31日
・ 30期の金井康雄:平成 5年4月 6日~平成10年5月 5日
・ 27期の山崎敏充:昭和62年8月 1日~平成 5年4月25日
・ 21期の金築誠志:昭和58年8月 1日~昭和62年7月31日
・ 19期の堀籠幸男:昭和54年8月 1日~昭和58年7月31日
・ 15期の泉 徳治昭和50年8月 1日~昭和54年7月31日
・ 11期の櫻井文夫:昭和45年6月16日~昭和50年7月31日
・  7期の山木 寛:昭和41年5月25日~昭和45年6月15日
・  3期の草場良八:昭和38年6月20日~昭和41年5月24日
高輪2期の渡邉忠之:昭和33年12月24日~昭和38年6月19日
(2) 45期の門田友昌以降についていえば,それ以前の人と比べて,人事局任用課長の在任期間が短くなっています。


6 最高裁判所事務総局人事局任用課長を経験した現職裁判官のその後
(1) 最高裁判所事務総局人事局任用課長を経験した現職裁判官のその後の役職は以下のとおりです。
・ 55期の高田公輝:東京高裁判事
・ 53期の馬場俊宏:大阪高裁13民判事→最高裁事務総局参事官
・ 50期の板津正道:東京高裁 8刑判事→名古屋地裁5刑部総括→最高裁秘書課長
・ 48期の前澤達朗:東京高裁24民判事→東京地裁 1民判事→東京地裁11民部総括(労働部)
・ 47期の徳岡 治:東京地裁10民判事→東京地裁10民部総括→最高裁人事局長
・ 45期の門田友昌:東京高裁14民判事→東京地裁25民判事→最高裁審議官→東京地裁11民部総括→最高裁民事局長→前橋地裁所長
・ 41期の堀田眞哉:東京高裁 8刑判事→千葉地裁 2刑判事→東京地裁刑事部部総括→最高裁秘書課長→最高裁人事局長→千葉地裁所長→最高裁事務総長→東京高裁長官
(2) 41期の堀田眞哉,45期の門田友昌及び47期の徳岡治については,最高裁判所判事に就任する可能性が極めて高いと個人的に思います。

7 最高裁判所事務総局人事局任用課長を経験した元裁判官のその後
(1)  最高裁判所長官まで経験した人
ア 3期の草場良八は,最高裁判所長官を最後に定年退官しました。
(2) 最高裁判所判事まで経験した人
イ 15期の泉徳治,19期の堀籠幸男,21期の金築誠志及び27期の山崎敏充は,最高裁判所判事を最後に定年退官しました。
(3) 高等裁判所長官まで経験した人
ア 11期の櫻井文夫は,東京高裁長官を最後に定年退官し,30期の金井康雄は,札幌高裁長官を最後に定年退官しました。
イ 11期の櫻井文夫が東京高裁長官をしていた平成10年9月10日,11期の北川弘治福岡高裁長官が最高裁判所判事に就任しましたし,櫻井文夫は平成15年8月8日に69歳で死亡しましたから,健康面において,最高裁判所判事に就任することができなかったのかもしれません。
(4) 東京高裁部総括まで経験した人
ア 高輪2期の渡邉忠之は,東京高裁3民部総括を最後に60歳で依願退官しました。
イ 高輪2期の渡邉忠之は,昭和58年7月2日に62歳で死亡しましたから,健康面において,それ以上のポストに就任することができなかったのかもしれません。
(5) 地方裁判所所長又は家庭裁判所所長まで経験した人
ア 7期の山木寛は,京都家裁所長を最後に60歳で依願退官しました。
イ 7期の山木寛は,平成6年5月7日に65歳で死亡しましたから,健康面において,それ以上のポストに就任することができなかったのかもしれません。
(6) 幹部裁判官までは経験しなかった人
ア 35期の田中昌利は,知財高裁第4部判事を最後に49歳で依願退官しました。
イ 35期の田中昌利は依願退官後,長島・大野・常松法律事務所のパートナーに就任しました(長島・大野・常松法律事務所HPの「田中昌利」参照)。
(7) その後のポストの分析
ア 健康面で問題がなく,途中で依願退官しなかった人の場合,30期の金井康雄を除く全員が最高裁判所判事に就任しました。
イ 平成28年4月1日に新設された人事局総務課は,同日に廃止された人事局給与課の業務,及び従前の人事局任用課の業務のうち,一般職に関するものを担当しています。
   そのため,同日以降の人事局任用課長の経験者は,以前ほどは出世しなくなるかも知れません。


8 最高裁判所事務総局人事局参事官
(1) 最高裁判所事務総局の局及び課に置かれる参事官は,上司の命を受けて,その局又は課の事務のうち重要な事項の企画及び立案に参画します(最高裁判所事務総局規則6条の2)。
(2)ア 最高裁判所事務総局人事局には裁判官が就任する参事官ポストが常に一つ以上ありますところ,歴代の就任者は新しい順に以下のとおりです。
60期の冨田環志:令和 6年8月 9日~
58期の中村修輔:令和 4年8月 2日~令和6年8月8日
58期の郡司英明:令和 3年8月 2日~令和4年8月1日
55期の高田公輝:令和 2年4月 1日~令和3年8月1日
55期の長田雅之:平成29年7月28日~令和 2年3月31日
53期の馬場俊宏:平成27年4月 1日~平成29年7月27日
50期の板津正道:平成25年4月11日~平成27年3月31日
48期の前澤達朗:平成22年4月 1日~平成25年4月10日
47期の徳岡 治:平成21年4月20日~平成22年9月12日
46期の川田宏一:平成19年4月 1日~平成21年3月31日
45期の門田友昌:平成17年4月 1日~平成19年3月31日
44期の河本雅也:平成15年4月 1日~平成16年7月31日
30期の金井康雄:平成13年7月 1日~平成16年3月31日(なぜか人事局任用課長を経験した後の就任です。)
34期の戸倉三郎:平成 6年2月20日~平成 6年7月31日
34期の植村 稔:平成 5年11月1日~平成 8年5月31日
イ 少なくとも平成28年1月1日以降,最高裁判所事務総局人事局に参事官ポストが三つありますところ,そのうちの二つには裁判所書記官経験者が就任していると思います(「最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿」参照)。
(3)ア 直近5人の人事局任用課長(新しい順に,馬場,板津,前澤,徳岡及び門田)は全員,人事局参事官を経験した直後に就任しています。
イ 平成15年7月1日以降に人事局参事官を経験したのに人事局任用課長に就任しなかった裁判官は以下のとおりです。
・ 44期の河本雅也裁判官
・ 46期の川田宏一裁判官
・ 55期の長田雅之裁判官
(4)ア 令和2年8月3日現在,直近3人の人事局任用課長の在任期間からすれば,同年中に53期の馬場俊宏裁判官が転出する可能性が高いところ,前例からすれば,その後任は55期の長田雅之大阪高裁4民判事であると個人的に思っていました。
イ 令和3年8月2日,55期の高田公輝最高裁人事局参事官が人事局任用課長に就任しましたから,私の予想は外れました。

9 最高裁判所事務総局人事局任用課にある係の事務分掌(平成28年3月31日以前のもの)
(1) 平成28年3月31日以前の人事局任用課は,通常の組織の総務課に属するような事項も担当していました(平成25年4月当時の最高裁判所事務総局分課規程10条及び11条参照)。
(2) 平成26年4月1日現在の事務分掌は以下のとおりでした。
ア 総務係
① 局予算の編成及び執行に関する事項
② 局内各課係との連絡調整に関する事項
③ 裁判所職員の赴任旅費予算の管理及び運用に関する事項
イ 庶務係
① 局内文書の授受及び発送に関する事項
② 局内職員の人事,給与,福利厚生,服務及び勤務時間の管理に関する事項
③ 局内職員等の出張旅行命令に関する事項
④ 局内図書,文書及び各種資料の整理,保管及び貸出しに関する事項
⑤ 備品,消耗品等物品の請求,受入れ,配付及び管理に関する事項
⑥ 人事局刊行物の編集及び刊行に関する事項
⑦ 局長の秘書的事務及び公印の保管に関する事項
⑧ 局内の他の課係に属さない事項
ウ 任用第一企画係
① 裁判官の任用制度についての調査,研究,企画及び立案に関する事項
② 前号の事務を行うために必要な資料の収集及び調整並びにそれに関連する事項
エ 任用第一実施係
① 裁判官の任免,補職等の立案に関する事項
② 裁判官の任免,補職等の裁判官会議への付議及び発令に関する事項並びに内閣との連絡調整に関する事項
③ 裁判官の報酬の決定に関する事項
④ 裁判官の育児休業,休暇等に関する事項
⑤ 裁判官の海外渡航に関する事項
⑥ 高等裁判所長官等の管轄区域外出張の認可に関する事項
⑦ 裁判官の履歴書等の人事記録の作成,整備及び保管に関する事項
⑧ 裁判官の履歴等の証明に関する事項
⑨ 裁判官の兼職に関する事項
⑩ 各種委員会の委員,幹事及び書記の任免,推薦等に関する事項
⑪ 民事調停官及び家事調停官の任免に関する事項
オ 任用第二企画係
① 裁判官以外の裁判所職員(以下「一般職員」という。)のうち家庭裁判所調査官(補)及び医療職の技官(以下「家庭裁判所調査官等」という。)を除くものの任用制度についての調査,研究,企画及び立案に関する事項
② 前号の職員の人事異動に関連する事項の審査,実施の監査及び指導に関する事項
カ 任用第二実施係
① 最高裁判所勤務の一般職員及び下級裁判所勤務の最高裁判所が任免権を有する一般職員(家庭裁判所調査官等を除く。)の任免,補職等の人事異動に関する事項
② 人事記録,身上報告書,職員カード等に関する事項
③ 前歴又は在職に関する照会及びその他任用関係についての照会に関する事項
④ 各種職員録等名簿及び資料の作成等に関する事項
⑤ 最高裁判所勤務の一般職員(営繕技官を除く。)の採用選考及び昇任選考の企画,立案及び実施に関する事項
⑥ ⑤の選考における試験問題の作成並びに結果記録の作成及び保管に関する事項
キ 任用第三企画係
① 家庭裁判所調査官等の任用制度についての調査,研究,企画及び立案に関する事項
② 家庭裁判所調査官等の任免,補職等の人事異動に関する事項
③ 家庭裁判所調査官等の人事異動に関連する事項の審査,実施の監査及び指導に関する事項
④ 調停委員,専門委員及び労働審判員の任免等に関する事項
ク 試験第一係
① 司法修習生の採用及び罷免に関する事項
② 司法修習委員会に関する事項
③ 司法修習生考試の企画及び実施並びに司法修習生考試委員会に関する事項
④ 簡易裁判所判事の選考に関する事項
ケ 試験第二係
① 一般職員の試験計画の立案,実施計画の編成及びその実施並びに実施事務の総合調整に関する事項
② 試験実施事務の改善についての調査研究に関する事項
③ 試験問題の作成,試験の結果分析,総合基準の設定並びに結果記録の作成及び保管に関する事項
④ 研修所入所試験の実施事務の調整に関する事項
⑤ 試験に関する予算の要求及びその実行に関する事項
⑥ 裁判所書記官等試験委員会及び家庭裁判所調査官試験委員会に関する事項
⑦ 営繕技官の採用選考の企画,立案及び実施に関する事項

最高裁判所事務総局人事局の職員配置図(平成25年10月1日現在)

10 関連記事その他
(1) 裁判所HPの「最高裁判所事務総局に直接寄せられた裁判官の意見」に,裁判官の人事評価制度の在り方全般について裁判官から寄せられた意見が掲載されています。
(2) 現代新書HPの「『絶望の裁判所』著:瀬木比呂志—『絶望の裁判所』の裏側」(2014年3月9日付)には以下の記載があります。
    そういう人物(山中注:最高裁判所事務総局系の司法行政エリートと呼ばれる人々のこと。)が裁判長を務める裁判部における日常的な話題の最たるものは人事であり、「自分の人事ならいざ知らず、明けても暮れても、よくも飽きないで、裁判所トップを始めとする他人の人事について、うわさ話や予想ばかりしていられるものだ」と、そうした空気になじめない陪席裁判官から愚痴を聞いた経験は何回もある。『司法大観』という名称の、七、八年に一度くらい出る、裁判官や検察官の写真に添えて正確かつ詳細なその職歴を記した書物が彼らのバイブルであり、私は、それを眺めるのが何よりの趣味だという裁判官にさえ会ったことがある。

(3) 30期の金井康雄最高裁人事局任用課長は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成8年5月31日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第135号15頁)。
    ともすれば職務遂行の上で責任感等に問題なしとしない女性職員の存在、女性特有の横ならび意識の強さから来る適正な選抜の困難性、出産・育児や老親等の看護に専念する期間における適切な対応案をとることの困難性などの問題から、女性職員に対する管理職員の意識は、その積極的な登用には少なからず躊躇があるというのが現状のように思われます。
(4) 転勤族のバイブルブログに,「【傾向と対策】国家公務員の赴任旅費(移転料)が実費に!金額変わる」が載っています。
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 中長期的観点に立った職員制度に関する提言(平成8年3月1日付の最高裁判所人事局参事官室の提言)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官会議
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 毎年4月1日付の人事異動等に関する最高裁判所裁判官会議
・ 裁判官人事の辞令書
 最高裁判所事務総局会議の議事録
・ 
転勤した際,裁判所共済組合に提出する書類等

新型コロナウイルス感染症への対応に関する最高裁判所作成の文書

目次
1 裁判業務に関する新型コロナウイルス感染症への対応
2 最高裁判所裁判部の新型インフルエンザ等対応業務継続計画細則
3 司法修習に関する新型コロナウイルス感染症への対応
4 予防接種等に関する判例
5 関連資料
6 関連記事その他

1 裁判業務に関する新型コロナウイルス感染症への対応
・ 令和5年度裁判所職員採用試験(人物試験を除く。)における新型コロナウイルス感染症への対応等について(令和5年5月8日付の最高裁人事局総務課長の通知)
・ 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けの変更に伴う同感染症に係る特別休暇等の取扱いについて(令和5年4月28日付の最高裁人事局総務課長の事務連絡)
・ 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の裁判所における感染防止対策の取扱いについて(令和5年4月28日付の最高裁総務局参事官の事務連絡)
・ 裁判所におけるマスク着用の考え方の見直し等について(令和5年2月22日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和4年5月10日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(令和3年9月30日(木),すべての都道府県で緊急事態宣言が解除された。
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和3年8月31日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(8月25日(火),北海道,宮城県,岐阜県,愛知県,三重県,滋賀県,岡山県及び広島県について,8月27日からの緊急事態宣言が発令された。)
(8月17日(月),茨城県,栃木県,群馬県,静岡県,京都府,兵庫県及び福岡県について,8月20日からの緊急事態宣言が発令された。)
(7月30日(木),埼玉県,千葉県,神奈川県及び大阪府について,8月2日からの緊急事態宣言が発令された。)
(7月8日(水),東京都について,7月12日からの緊急事態宣言が発令された。)
(6月20日(日),沖縄県を除く9都道府県で緊急事態宣言が解除された。)


(5月21日(木),沖縄県について,5月23日からの緊急事態宣言が発令された。)
(5月14日(木),北海道,岡山県及び広島県について,5月16日からの緊急事態宣言が発令された。)
(5月7日(木),愛知県及び福岡県について,5月12日からの緊急事態宣言が発令された。)
(4月23日(金),東京都,大阪府,京都府及び兵庫県の4都府県について,4月25日からの緊急事態宣言が発令された。)
(3月21日(日),東京都,神奈川県,埼玉県及び千葉県に対する緊急事態宣言が解除された結果,緊急事態宣言の対象地域がいったん解消した。
(2月28日(日),大阪府,京都府,兵庫県,愛知県,岐阜県及び福岡県に対する緊急事態宣言が解除された。)


(2月7日(日),栃木県に対する緊急事態宣言が解除された。)
(1月13日(水),大阪府,京都府,兵庫県,愛知県,岐阜県,福岡県及び栃木県の7府県について,翌日からの緊急事態宣言が発令された。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和3年1月8日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
令和3年1月7日(木),東京都,神奈川県,埼玉県及び千葉県の1都3県について,翌日からの緊急事態宣言が発令された。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年12月4日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年10月26日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)


・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年7月30日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年5月26日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(5月25日(月),東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県及び北海道の緊急事態宣言が解除された。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年5月22日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(5月21日(木),兵庫県,大阪府及び京都府の緊急事態宣言が解除された。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年5月15日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(5月14日(木),全国39県の緊急事態宣言が解除された。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年5月5日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(5月4日(月),緊急事態宣言の5月31日までの延期が発表された。)

・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和元年5月1日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
→ 業務の再開に関するQ&Aが添付されています。
(4月16日(木),全都道府県に対して緊急事態宣言が発令されたほか,当初から宣言の対象とした7都府県に,北海道,茨城県,石川県,岐阜県,愛知県及び京都府の6道府県を加えた13の都道府県を,特に重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていく必要があるとして,「特定警戒都道府県」と位置づけた。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年4月7日付の最高裁判所総務局のお知らせ)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年4月7日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(4月7日(火),東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,大阪府,兵庫県及び福岡県の7都府県に対して緊急事態宣言が発令された。)
・ 裁判所における新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年3月31日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(3月24日(火),東京オリンピックの開催延期が発表された。)
・ 日弁連事務総長宛の,新型コロナウイルス感染症への対応に関する文書(令和2年3月6日付の最高裁判所総務局長の書簡)
(3月5日(木),中国の習近平国家主席の国賓としての来日延期が発表された。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年2月28日付の,最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(2月27日(木),3月2日(月)からの全国小中高校の臨時休校が安倍首相によって要請された。)
・ 裁判所における新型コロナウイルス感染症への当面の対応について(令和2年2月26日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(2月25日(火),新型コロナウイルス感染症対策の基本方針が発表された。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年2月18日付の,最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(2月14日(金),政令の改正により,新型コロナウィルス感染症については,無症状病原体保有者であっても患者とみなされることとなった。)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年2月3日付の,最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
(2月1日(土),新型コロナウィルス感染症が,政令の制定により,感染症法に基づく指定感染症,及び検疫法に基づく検疫感染症に指定された。)
令和2年1月15日(水),日本で初めて新型コロナウイルス感染症の患者が確認された。)
(令和元年12月31日(火),中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎の集団発生が報告された。)


2 最高裁判所裁判部の新型インフルエンザ等対応業務継続計画細則等
(1)ア 最高裁判所裁判部の新型インフルエンザ等対応業務継続計画細則は以下のとおりです。
・ 最高裁判所裁判部の新型インフルエンザ等対応業務継続計画細則(令和2年5月29日最終改正)
・ 最高裁判所裁判部の新型インフルエンザ等対応業務継続計画細則(令和2年5月7日最終改正)
イ 最高裁判所の裁判部とは,大法廷首席書記官等に関する規則(昭和29年最高裁判所規則第9号)に定める大法廷首席書記官が指導監督する職員が属する組織をいいます(司法行政文書の管理について(平成24年12月6日付の最高裁判所事務総長の通達)第1.2(3)参照)。
(2) 以下の資料も掲載しています。
・ 裁判所における新型コロナワクチンの職域接種に関する文書(令和3年7月の文書)


3 司法修習に関する新型コロナウイルス感染症への対応
    司法修習に関する新型コロナウイルス感染症への対応を定めた司法研修所作成の文書を以下のとおり掲載しています。
・ 考試期間中における食堂の利用について(令和2年9月15日付の司法研修所事務局総務課長のお知らせ)
・ 入寮申込みについて(令和2年9月15日付の司法研修所事務局総務課長のお知らせ)
・ 考試期間中の寮における新型コロナウイルス感染防止策について(令和2年9月15日付の司法研修所事務局総務課長のお知らせ)
・ 令和2年度考試時の司法研修所寮における感染防止対策について(令和2年8月25日付の司法研修所の文書)
・ 司法研修所での即日起案実施時(第73期集合修習A班)における新型コロナウイルス感染症の感染防止策について(令和2年8月3日付の司法研修所の文書)
・ 集合修習のオンライン方式による実施について(令和2年7月9日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 集合修習のオンライン方式による実施について(令和2年7月9日付の司法研修所事務局企画第二課長の事務連絡)
・ インターネット環境等アンケート(令和2年6月22日付の司法研修所の文書)
・ 選択型実務修習の取扱いについて(令和2年6月12日付の司法研修所企画第二課長の事務連絡)
・ 分野別実務修習及び選択型実務修習の取扱いについて(令和2年6月11日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 分野別実務修習の再開について(令和2年5月26日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 今後の分野別実務修習の取扱いについて(令和2年5月8日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 分野別実務修習の自宅学修への切替えについて(令和2年4月17日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 分野別実務修習において自宅学修に切り替えた実務修習庁会における第3クールの取扱いについて(令和2年4月10日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 感染拡大地域における分野別実務修習の自宅学修への切替えについて(令和2年4月8日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 分野別実務修習において自宅学習に切り替えた場合等に司法修習生に与える課題について(令和2年4月3日付の司法研修所の教官室の文書)
→ 民事裁判教官室刑事裁判教官室民事弁護教官室及び刑事弁護教官室(なぜか検察教官室がありません。)
・ 分野別実務修習において自宅学修に切り替えた場合等の課題について(令和2年4月3日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 司法修習における新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年3月30日付の司法研修所事務局長の事務連絡)
・ 実務修習における新型コロナウイルスの感染防止策について(令和2年3月10日付の司法研修所事務局長の事務連絡)


4 予防接種等に関する判例
(1) 国が予防接種を強制ないし勧奨するに当たり,厚生大臣は接種率を上げることに施策の重点を置き,副反応の問題にそれほど注意を払わず,禁忌に該当する者を識別除外するため適切な予診を行うにはほど遠い体制で予防接種を実施することを許容し,また接種を担当する医師や接種を受ける国民に対し予防接種の副反応や禁忌について周知を図らなかったといった事実関係の下においては,厚生大臣には予防接種の禁忌者に予防接種を実施させないための充分な措置をとることを怠った過失があることとなります(東京高裁平成4年12月18日判決)。
(2) 最高裁平成18年6月16日判決は,B型肝炎ウイルスに感染した患者が乳幼児期に受けた集団予防接種等とウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当とされた事例です。
(3) 医療用医薬品について製造物責任法2条2項にいう「通常有すべき安全性」が確保されるために必要な,その添付文書における副作用に係る情報の記載の適否は,当該医療用医薬品の引渡し時点で予見し得る副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む。),その効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力,上記添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して,上記予見し得る副作用の危険性が上記処方者等に十分明らかにされているといえるか否かという観点から判断されます(最高裁平成25年4月12日判決)。


5 関連資料
(1) 東京地裁の資料
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和2年7月15日開催の高等裁判所長官事務打合せにおける東京地方裁判所報告)
→ 例えば,以下の記載があります。
    今回の各申合せに当たっては, まず,所長と各代行が相談をして原案を策定し,民・刑・支部の全部総括と簡裁全室長に送付して検討を依頼した。各部総括等から提出された質問や意見を受けて,質問に回答し,意見を容れて改訂案を作成し, これを全部総括等に再度送付して,各部・各室内で陪席裁判官等への説明と部内議論を行うよう, その上で,各裁判官が賛成か否か聴取し,質問や意見があれば寄せるよう依頼した。全部総括等から全裁判官の賛否と,質問や意見が寄せられた後,全員が賛成であれば(今回,全ての申合せで,質問・意見はあったが,全員の賛成が得られた。 ) ,所長と代行とで,質問に応答し, 聞くべき意見を容れて成案を作成し, もう一度全部総括等に送付して, 同案を申合せとすることで全裁判官への確認を依頼し, これをもって申合せの成立とした。
(2) 内閣法制局の資料
・ 「中華人民共和国で感染が拡大している新型コロナウイルス感染症に関する政府の取組について」に関する内閣法制局の応接録(相談年月日は令和2年1月31日から3月9日まで)
(3) 内閣官房の資料
・ 新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案 説明資料(令和2年3月の,内閣官房新型コロナウイルス感染症対策法案準備室の文書)
・ 新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令の一部を改正する政令案 法制局説明資料(令和3年1月の内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室の文書)
(4) 厚生労働省の資料

・ 予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案 説明資料(令和2年10月の厚生労働省健康局の文書)
・ 新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令案 内閣法制局説明資料(令和2年1月の厚生労働省健康局結核感染症課の文書)
・ 新型コロナウイルス感染症発生国からの入国者に対する検疫対応に関する,厚生労働省健康局結核感染症課等の事務連絡(令和2年1月7日から同年5月25日までの分)


6 関連記事その他
(1) 内閣官房HPに「新型コロナウイルス感染症対策」が載っていて,厚生労働省HPに「新型コロナウイルス感染症について」が載っています。
(2) 自由と正義2021年6月号51頁には「2 コロナ禍の下での司法修習」として以下の記載があります。
    緊急事態宣言の発出で裁判・検察・弁護いずれも分野別実務修習の指導が中断され、自宅学修に切り替えられた。中小規模会では比較的短期間の影響で済んだ地域もあったが、大規模会はその影響を大きく受けた。弁護実務修習中に自宅学修を命じられた司法修習生には弁護士会が独自に作成した課題、日弁連のeラーニングを視聴させる課題、研修所教官室から提供された課題等の中から弁護士会が決定したものが与えられた。
    選択型実務修習では全国プログラムや自己開拓プログラムが中止された。外部委託プログラムを取りやめた弁護士会も多く、分野別実務修習の補完を図るプログラムを選択した司法修習生も多かった。集合修習はオンライン方式で実施された。日弁連は修習が十分でなかったとして不安に思う新入会員向けの研修を充実していかなければならない。
(3)  学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容や指導方法の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するのは,当該学校において生徒が受ける教育全体の中での当該教育内容や指導方法の位置付け,当該変更の程度,当該変更の必要性,合理性等の事情に照らし,当該変更が,学校設置者や教師に教育内容や指導方法の変更につき裁量が認められることを考慮してもなお,社会通念上是認することができないものである場合に限られます(最高裁平成21年12月10日判決)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 国家緊急権に関する内閣法制局長官の国会答弁
・ 新型コロナウィルス感染症に準用されている感染症法,感染症法施行令及び感染症法施行規則の条文
・ 新型コロナウイルス感染症に準用されている検疫法の条文
 国内感染期において緊急事態宣言がされた場合の政府行動計画(新型インフルエンザの場合)

吉川奈奈裁判官(47期)の経歴

生年月日 S45.7.7
出身大学 東大
退官時の年齢 35 歳
H18.3.31 依願退官
H17.4.12 ~ H18.3.30 東京地家裁八王子支部判事
H17.4.1 ~ H17.4.11 東京地家裁八王子支部判事補
H16.4.1 ~ H17.3.31 東京家地裁八王子支部判事補
H12.4.1 ~ H16.3.31 東京地裁判事補
H9.4.1 ~ H12.3.31 旭川地家裁判事補
H7.4.12 ~ H9.3.31 東京地裁判事補

下級裁判所の裁判官の定員配置

目次
1 下級裁判所の裁判官の定員配置に関する文書
2 定員・現在員等内訳に関する文書
3 裁判官の号別在職状況と異なる理由
4 関連記事その他

1 下級裁判所の裁判官の定員配置に関する文書
(1) 下級裁判所の裁判官の定員配置に関する文書を以下のとおり掲載しています。
① 下級裁判所の裁判官の定員配置について(平成27年3月26日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
② 以下の日付の改正通達
(令和時代)
令和2年3月17日令和3年3月19日令和4年3月25日
令和5年3月27日令和6年3月22日令和7年3月28日
(平成時代)
平成28年3月25日平成29年3月23日平成30年3月19日平成31年3月13日
* 「「下級裁判所の裁判官の定員配置について」の一部改正について(令和5年3月27日付の最高裁判所事務総長の通達)」といったファイル名です。
(2) 付加定員とは,未済事件の累積,特殊事件の係属その他の一時的な事由に基づき,暫定的に配置する定員をいいます(下級裁判所の裁判官の定員配置について(平成27年3月26日付の最高裁判所事務総長の依命通達))。

2 定員・現在員等内訳に関する文書
・ 下級裁判所の判事・判事補の定員・現在員等内訳(平成24年12月1日から令和4年1月16日まで)
・ 下級裁判所の判事・判事補の定員・現在員等内訳(平成23年12月1日から令和3年1月16日まで)
・ 下級裁判所の判事・判事補の定員・現在員等内訳(平成22年12月1日から令和2年1月16日まで)
・ 下級裁判所の判事・判事補の定員・現在員等内訳(平成21年度から平成30年1月16日まで)

3 裁判官の号別在職状況と異なる理由
(1) 令和元年10月18日付の答申書の「委員会の判断の理由」には,裁判官の配置定員と裁判官の号別在職状況の数字が異なる理由として以下の記載があります(改行を追加しました。)。
    当委員会庶務を通じて確認した結果によれば,平成30年度の高等裁判所裁判官及び地方・家庭裁判所裁判官の配置定員は, 当該年度において各庁の裁判事務に従事すべき判事等の数を定めたものであり,一方,裁判官の号別在職状況(平成30年7月1日現在)は,裁判事務に従事していない判事等を含め,当該基準日現在において判事等に発令されている者の数を表したものであるとのことである。
    このことを前提に検討すれば, 司法行政事務を遂行するに当たり,そもそも概念が異なる両者の合計数に差があることにつき,その理由を説明した文書や合計数の差の内訳を示した文書をあえて作成する必要性は乏しいと考えられるから,本件開示申出文書を作成し,又は取得していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。
    そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
(2) 令和4年12月1日現在,裁判実務に携わっていない裁判官数は,①最高裁判所事務総局の局長6人,審議官1人,課長等24人,局付等39人(判事が30人,判事補が9人),②研修所の所長・教官等45人,③高等裁判所事務局長8人の合計123人です。


4 関連記事その他
(1) 平成26年7月25日に閣議決定された「国家公務員の総人件費に関する基本方針」及び「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」は,内閣官房内閣人事局HPの「国家公務員の人件費と機構・定員に関する方針の策定」に載っています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁から国会への情報提供文書
・ 裁判官の号別在職状況
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 最高裁判所が作成している事件数データ
・ 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等

業務の再開に関するQ&A(令和2年5月1日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡添付の文書)

目次
第1 業務の再開に関するQ&A(令和2年5月1日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡添付の文書)
第2 関連記事その他

第1 業務の再開に関するQ&A(令和2年5月1日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡添付の文書)
・ 新型コロナウイルス感染症への対応について(令和元年5月1日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)添付の,業務の再開に関するQ&Aは以下のとおりです。

業務の再開に関するQ&A

   5月7日以降の情勢は現時点では明らかではないが,緊急事態宣言が延長される可能性もあるところ,緊急事態宣言の対象地域に存する裁判所は,国の一機関として,国民の命と健康を守るため,人の接触の機会を可能な限り減らし,感染拡大防止に最大限協力することを基本的な姿勢とするべきであり,裁判所利用者に一定の不便をおかけすることにはなるが,裁判官,裁判所職員としては,緊急事態宣言の趣旨に即した行動をとることが現時点における最大の責務といえる状況にあることに変わりはない。
   したがって,緊急事態宣言の対象地域にある裁判所は,新型インフルエンザ等対応業務継続計画(BCP)に基づいて,引き続き,継続業務だけを行う縮小態勢として,その業務に必要な人員が在庁して職務を行うことが原則となるが,事態が長期化してきている中での迅速な裁判の要請や早期の権利実現の必要性等を踏まえ,事件や手続の性質,早期に判断を示す必要性等を考慮した上,現状においては実施を見送っている裁判手続のうち一定程度を再開することが考えられるところ,現在の縮小態勢を維持しつつも,一部業務の再開を検討していく上で考慮すべき基本的な事項について, Q&Aを作成したので,参考にされたい(以下は,主として民事通常部を念頭においたものであるが,その他の部署についても,各担当事件の性質及び早期実施の必要性の異同を踏まえつつ, これらを参考にして,業務の再開について検討することが考えられる。)。
   
(総論)
問1 引き続き緊急事態宣言の対象地域にある裁判所において,現在の縮小態勢を維持したうえで,一部業務の再開を検討する場合に, どのような検討が必要となるのか。
答 緊急事態宣言及び外出自粛要請が現在のレベルで継続するような場合には,現在の執務態勢を維持することが基本となるが,その場合であっても,裁判官を含む庁全体の現在の登庁人数(多くの庁では8割ないし6割減少している。)を原則としては増加させないことを前提に,可能な範囲で,縮小していた事件を一部再開することが考えられる。
   まず,庁全体でどのような種類の事件を再開すべきかを検討すべきことになるが,執行事件や破産事件,新型コロナウイルスの影響に関連して緊急性が増している事件等の再開を検討し, そのうえで,BCP上第2順位である民事訴訟事件の一部再開を検討することになる。民事訴訟事件については,次回期日に判決言渡し,和解成立,弁論終結が予定あるいは見込まれる事件などのうち,緊急性の高い事件が考えられるが(被告への意思表示を含む訴状の送達なども緊急性の高い場合があろう。) ,裁判官を含む庁全体の現在の登庁人数を原則としては増加させないことを前提に, どのような形で民事訴訟事件の一部再開を行っていくかについては,庁規模等の実情により異なるところであり,様々な方法が想定される。例えば一つの例を挙げれば,単独事件については担当裁判官の週の登庁日を1日に固定したり,隔週で週に2日登庁することとしたりするなどし(担当書記官はその日に登庁し),各庁・各部内において各裁判官の登庁する曜日等を調整した上で,登庁日にのみ再開業務を行うとすることなどが考えられる。各裁判官は,複数事件の当事者が重なることのないよう,期日の枠を30分程度以上の刻みとなるよう期日を指定することなどが考えられるが,登庁日においては,期日を開くのみならず,今後実施する予定の期日における審理・協議等のために必要となる事前準備や釈明等の当事者に対する連絡等も完了できるよう計画的に業務を処理する必要がある。また,担当書記官の登庁頻度の増加を避ける観点から,期日指定した事件の処理に係る調書作成等の書記官事務を勤務時間内に処理できるようにしなければならず,期日の終了時間等に配慮することが必要であるし, 当該登庁日に期日を実施できる件数はかなり限定する必要があると考えられるが,その範囲の中で,登庁日に緊急性の高い事件の期日を指定ができるよう調整し,期日を開くことになる。
   合議事件については,受命裁判官を活用し,必要な裁判官(例えば,裁判長と左陪席)のみが登庁して期日を行うにとどめ,期日前合議には電話会議を活用するなどして,登庁する裁判官数を減らすための工夫を最大限行うことが必要である。また,複数の合議体がある部や合議事件の比率の高い専門部・集中部において, 口頭弁論期日を開く場合など合議体の全員が登庁する日を設ける場合には,同一日に,合議の弁論準備や和解の期日,合議や単独事件の相談又は部の運営等についての意見交換を行うなどして,裁判官全員が登庁する機会を有効に活用し,トータルで登庁する裁判官の数を最少とするよう工夫することが考えられる。
   各庁・各部・各裁判体において, これらの点を十分議論したうえで,再開する具体的な事件を検討し,具体的な執務態勢を検討することが必要である。
   簡裁民事訴訟及び民事調停事件についても概ね同様の考え方によることになるが,庁によって,事件数の規模も異なり,緊急性の高い事件の状況も様々であり,人的態勢も様々であるから,庁の実情に沿った検討が必要である。緊急事態宣言や外出自粛要請の趣旨を踏まえて,単独調停の積極的な活用が考えられ,調停委員の登庁頻度等にも配慮しつつ業務の再開を検討することが考えられる。
   


問2 引き続き緊急事態宣言の対象地域であるが,仮に平日の外出自粛要請が緩和される場合には, どのような検討が必要となるのか。
答 緊急事態宣言は継続するが,平日日中の外出自粛要請が緩和されるような場合には,部署ごとに少なくとも2班に分けて交替で登庁する執務態勢をとって,問1に記載した業務を再開していくことが考えられる(なお,司法行政事務についても,再開する裁判事務を継続するために必要な範囲の事務については再開することになる。)。この場合であっても,登庁日に期日を実施できる件数はかなり限定する必要があると考えられるのは,問1に記載したとおりであり,民事訴訟事件の期日指定は,その範囲の中で検討していくことになる。
   
問3 緊急事態宣言が解除されても,都道府県の知事が独自に平日日中の外出自粛要請を続けている場合には, どのような検討が必要となるのか。
答 緊急事態宣言が解除されても,都道府県独自の外出自粛要請が継続されている場合には, その趣旨に鑑みて,裁判所における業務再開も一定の範囲に抑えるのが相当であると考えられ, この場合には,問2を参考にして,再開を検討していくことになると考えられる。
   
問4 民事通常事件等において,再開する事件の期日指定数が限られているとすると,手持事件の中で優先順位を付けることになるが, どのようにして優先順位を付けるのか。
答 どの事件を優先的に再開するかについては,各裁判体において適切に判断されるべきものであるが, まずは,次回期日に判決言渡し,和解成立,弁論終結が予定あるいは見込まれる事件などのうち,長期化することを避けなければならない緊急性の高い事件が考えられる。その他の事件については,各裁判体において,前提となる人的態勢を十分に踏まえ, 当事者の意向(要望) も聞きながら,再開可能な事件数の範囲内で,事案の性質,手続段階等の種々の考慮要素を勘案して適切に判断し,順次期日を指定していくこととなると考えられる。
   
問5 期日指定ができない事件について当事者から理由を問われることが想定されるが, どのような説明をするのか。
答 再開する事件の選定についていかなる考え方を採るにせよ,早期の再開を望む当事者や代理人弁護士から,その理由を問われる可能性がある。人の接触の機会を可能な限り減らし,感染拡大防止に最大限協力する観点から,事件を順次再開していく必要があり,担当裁判官が慎重に緊急性の度合いを判断した結果であり,早期に期日指定ができない事件の当事者等においても理解をお願いしたい旨を丁寧に説明することとなると考えられるが,裁判官と書記官の間で再開する事件の選定方針について十分に相談しておくことが必要である。
   

問6 再開された事件の期日を開く際には, どのような点に留意すべきか。
答 特に,いわゆる3密を避けるための留意点として,これまで示したもののほか, 以下のようなことを積極的に行っていくのが相当と考えられる。
◯ 電話会議(ウェブ会議)を積極的に活用し(特に,他の都道府県からの移動を伴う場合), そのために必要があれば弁論準備手続や書面による準備手続に付することも検討する。
◯ 非公開手続においても,和解室,弁論準備室のような狭い閉ざされた部屋を用いるのではなく,ラウンドテーブル法廷等可能な限り大きな部屋の活用を積極的に検討する。
◯ 口頭弁論期日においては,同一時刻に期日を指定することは原則として避け,やむを得ず複数の事件の期日を同一時刻に指定することがあるとしても,極力その数を減らすことや,傍聴席で順番を待つ機会を減らせるよう臨時の待合スペースの設営も検討する(会議室の開放等が考えられる。)。
◯ 簡裁民事訴訟については,多数の当事者が一斉に来庁したり,集中したりすることを避けるため,簡裁の特則(陳述擬制や司法委員の積極的活用,和解に代わる決定等)を活用することが考えられる。
   
(裁判官)
問7 問1の場合の裁判官の執務態勢はどうなるのか。
答 問1の場合には,基本的には現在の縮小態勢を維持することになるので, トータルとして今より登庁回数が増えないよう工夫する必要がある。問1記載のとおり,裁判官は週1日に登庁日を固定したり,隔週で週2日登庁したりすることも考えられるし,合議事件については原則として必要となる最小限の人数の登庁を求めて処理すべきであり,在宅勤務中の裁判官との間では電話会議等を活用して合議を行ったり,受命裁判官を活用して期日を進めることが考えられる。それに加えて,複数の裁判官が登庁する場合には,同一裁判体の様々な期日を入れたり,合議や単独事件の相談の時間を入れたりなど,その機会を有効に活用することで,登庁回数を抑えるのに役立てることが可能になると思われる。
   
問8 問1の場合,再開した事件の記録や提出書面の検討のため登庁が必要なので,その分,裁判官の登庁は増えても差し支えないか。
答 問1の場合には,基本的には現在の縮小態勢を維持することになるので,期日を開かない日に登庁することは厳に慎むべきことに変わりはない。登庁日を限定していることから,前の登庁日までに提出されない書面等については,裁判官は目を通すことが出来ないことを当事者に明確にして協力を求めることが必要である。
   
問9 書記官に判決起案の点検等を求めてもいいのか。
答 判決言渡期日を指定した事件について,書記官に判決起案の点検等を求めることは差し支えないが,その場合には,書記官が記録を持ち帰れないことや担当書記官の登庁日においても残業を避けるべきことにも配意し,十分な時間的余裕を持って作業を依頼することが必要である。
   
問10 再開した事件の期日を指定する場合の留意点
答 各庁において,庁としての一部再開すべき業務とその処理態勢を検討したうえで,各裁判官が,共通認識の下に,再開する事件の選択,その期日の調整や指定を行っていくことになるが,各裁判官において,十分に緊急性の度合いを検討し,前提となる人的態勢も踏まえて,期日の指定を行っていく必要がある。問1の場合はもちろん, 問2,問3の場合であっても,5月7日以降,各部における事務処理態勢の検討に相応の時間がかかることも想定されるし,再開した期日の指定や調整は,検討された事務処理態勢に応じて行われる必要があるので,いつからどのように期日の調整・指定を行うかは,庁全体で検討されるべきものと考えられる。
   庁としての方針が定まれば, ホームページ上に,必要な説明を掲載して,広く裁判所利用者に理解を求めることが相当と考えられる。
   
(書記官等)
問11 問1の場合の書記官等の執務態勢はどうなるのか。
答 問1の場合には,基本的には現在の縮小態勢を維持することになるが,期日のある日には,担当書記官が登庁することになり,現在の縮小態勢次第では,書記官の登庁する日数が増える場合もあろう.庁全体の現在の登庁人数を原則としては増加させないよう,庁全体をみて,実情に応じた態勢の構築を検討する必要がある。
   
問12 裁判官が事件処理をすれば,担当書記官が登庁しなければならないし,主任書記官に加重な負担がかかったりして,登庁人数が増えることにならないか。
答 1名の裁判官の単独事件を担当する書記官が2名いる場合には,両書記官の間で連携し, それぞれの登庁日を減らす工夫が求められる。主任書記官等のチェックが必要な和解調書等の作成については,それぞれがもともと予定している登庁日に無理なく作業を行い引継ぎができるようにしておくことが必要である。いずれにせよ,主任書記官や一部の書記官に負担が偏らないよう,公平なローテーションを構築する必要がある。
   
問13 来庁者が増えるので,書記官室での面前の対応が増え,感染リスクが増えるのではないか。
答 来庁者及び職員双方への感染拡大防止の観点から, これまで講じている感染防止措置の徹底を図るほか,特に事件受付や書記官室など近い距離で対応を行う部署においては,民間や地方公共団体で講じている感染防止のための様々な工夫について積極的に導入することなどを検討し,感染リスクの低減に努めてもらいたい。
以 上


最高裁判所の新型インフルエンザ等対応業務継続計画(平成28年6月1日付)別紙2


第2 関連記事その他
1 大阪高裁平成27年1月22日判決(裁判長は30期の森宏司裁判官)は,
   平成19年「5月24日」,兵庫県龍野高校のテニス部の練習中に発生した高校2年生の女子の熱中症事故(当日の最高気温は27度)について,
   兵庫県に対し,「元金だけで」約2億3000万円の支払を命じ,平成27年12月15日に兵庫県の上告が棄却されました(CHRISTIAN TODAY HP「龍野高校・部活で熱中症,当時高2が寝たきりに 兵庫県に2億3千万円賠償命令確定」参照)。
   その結果,兵庫県は,平成27年12月24日,3億3985万5520円を被害者代理人と思われる弁護士の預金口座に支払いました兵庫県の情報公開文書を見れば分かります。)。
2   大阪高裁平成27年1月22日判決を読む限り,高校側に何らかの法令違反があったわけではないにもかかわらず,過失相殺すら認められていません。
   また,厚生労働省HPの「職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況(平成24年)」によれば,熱中症による死亡災害の月別発生状況(平成22~平成24年)は,6月が7件,7月が41件,8月が35件,9月が3件であり,5月は1件も発生していないにもかかわらず,兵庫県龍野高校のテニス部事故では,5月に発生した熱中症について予見可能性があると認定されました。
   そして,30期の森宏司裁判官(平成29年4月19日定年退官発令)は平成28年3月7日頃,大阪高裁民事上席裁判官に就任したことからすれば,安全配慮義務について厳格に考える裁判例は今後も継続すると思われます。
3 以下の記事も参照してください。
・ 新型コロナウイルス感染症への対応に関する最高裁判所作成の文書
・ 新型コロナウィルス感染症に準用されている感染症法,感染症法施行令及び感染症法施行規則の条文
・ 新型コロナウイルス感染症に準用されている検疫法の条文
・ 国内感染期において緊急事態宣言がされた場合の政府行動計画(新型インフルエンザの場合)
・ 裁判所職員の病気休職

七訂版 検察庁法(平成31年3月の法務総合研究所の文書)

目次
第1 七訂版 検察庁法
第2 関連記事その他

第1 七訂版 検察庁法
・ 七訂版 検察庁法(平成31年3月の法務総合研究所の文書)
の本文につき,以下のリンク先でHTML化しています。

第1章 序説
第1節 検察庁法の意義及び法源
第2節 検察制度の沿革
第3節 検察制度の本質

第2章 検察権
第1節 検察権の意義及び内容
第2節 検察権の独立(行政権,立法権との関係)
第3節 検察権行使の機関(検察官の独任制官庁と検察官同一体の原則)
第4節 検察権と管轄

第3章 検察庁
第1節 検察庁の意義
第2節 検察庁の種類,位置,名称
第3節 検察庁の支部
第4節 検察庁の機構

第4章 検察庁の職員
第1節 検察官の種類等
第2節 検察官の身分保障
第3節 検察事務官
第4節 その他の職員

第2 関連記事その他
1 法務省HPの「法務・検察行政刷新会議」(令和2年7月16日から同年12月24日まで)に,法務・検察行政刷新会議報告書(令和2年12月)が載っています。
2 以下の資料を掲載しています。
・ 令和3年度検察事務官等全国一斉考試の実施について(令和3年7月12日付の法務総合研究所長の依頼)
→ 検事総長等に宛てたもの法務省刑事局長に宛てたもの
・ 検察事務官等全国一斉考試の得点別人員表(令和3年11月の法務総合研究所の開示文書)
3 検察事務官向けの法務総合研究所の研修教材を以下のとおり掲載しています。
・ 事件事務解説
・ 執行事務解説
・ 証拠品事務解説
・ 徴収事務解説
・ 記録事務解説
・ 犯歴事務解説
4 以下の記事も参照してください。
・ 検事総長,次長検事及び検事長が認証官となった経緯
・ 法務・検察幹部名簿(平成24年4月以降)
・ 法務省作成の検事期別名簿
・ 親任式及び認証官任命式
・ 東京高検検事長の勤務延長問題
・ 黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀問題
・ 百日裁判事件(公職選挙法違反)

高等裁判所長官を退官した後の政府機関ポストの実例

目次
第1 高裁長官を退官した後の政府機関ポストの実例
1 人事院のポスト
2 内閣府のポスト
3 国家公安委員会のポスト
4 総務省のポスト
5 法務省のポスト
6 厚生労働省のポスト
7 環境省のポスト
8 最高裁判所のポスト
第2 国会同意人事
第3 関連記事その他


第1 高裁長官を退官した後の政府機関ポストの実例

1 人事院のポスト
① 人事官→人事院総裁
・ 一宮なほみ裁判官(26期)
② 国家公務員倫理審査会会長
・ 吉本徹也裁判官(19期)
・ 池田修 裁判官(24期)
・ 秋吉淳一郎裁判官(34期)
→ 4年の任期は令和6年3月29日まで

2 内閣府のポスト
① 公正取引委員会委員
・ 浜崎恭生裁判官(16期)
・ 細川清 裁判官(21期)
・ 山崎恒 裁判官(26期)
・ 三村晶子裁判官(35期)
→ 5年の任期は令和8年2月21日まで
② 再就職等監視委員会委員→委員長
・ 大橋寛明裁判官(26期)
・ 井上弘通裁判官(29期)
→ 3年の任期は令和6年3月20日まで
③ 公益認定等委員会委員
・ 小林敬子裁判官(29期)
・ 生野考司裁判官(35期)
→ 3年の任期は令和7年4月21日まで

3 国家公安委員会のポスト
① 国家公安委員会委員
・ 安藤裕子裁判官(29期)

4 総務省のポスト
① 公害等調整委員会委員長
・ 勝見嘉美裁判官(  3期)
・ 西山俊彦裁判官(  4期)
・ 川嵜義徳裁判官(  8期)
・ 清水湛 裁判官(12期)
・ 加藤和夫裁判官(15期)
・ 大内捷司裁判官(19期)
・ 富越和厚裁判官(24期)
・ 荒井勉 裁判官(29期)
・ 永野厚郎裁判官(35期)
→ 5年の任期は令和9年6月30日まで
② 情報公開・個人情報保護審査会委員→委員長
・ 岡田雄一裁判官(27期)
・ 山名学 裁判官(30期)
→ 4年の任期は令和5年5月頃まで
・ 小泉博嗣裁判官(31期)
・ 小林昭彦裁判官(33期)
→ 4年の任期は令和6月5月頃まで
・ 合田悦三裁判官(34期)
→ 4年の任期は令和8年3月31日まで
③ 国地方係争処理委員会委員長
・ 増井和男裁判官(18期)
・ 富越和厚裁判官(24期)
・ 菊池洋一裁判官(30期)
→ 3年の任期は令和6年4月16日まで
④ 行政不服審査会会長
・ 市村陽典裁判官(28期)
・ 原 優 裁判官(31期)
→ 再任後の3年の任期は令和7年3月31日まで
⑤ 電気通信紛争処理委員会委員長
・ 中山隆夫裁判官(26期)
・ 田村幸一裁判官(30期)
→ 再任後の3年の任期は令和7年12月2日まで

5 法務省のポスト
① 公安審査委員会委員長
・ 藤田耕三裁判官(9期)
・ 田中康久裁判官(17期)
・ 房村精一裁判官(23期)
・ 貝阿彌誠裁判官(30期)
→ 4年の任期は令和7年1月11日まで
② 中央更生保護審査会委員
・ 野田愛子裁判官( 2期)
・ 櫻井文夫裁判官(11期)
③ 中央更生保護審査会委員長
・ 梅田晴亮裁判官( 8期)
・ 原田和徳裁判官(19期)
・ 安倍嘉人裁判官(23期)
・ 倉吉敬 裁判官(28期)
→ 3年の任期は令和5年6月26日まで


6 厚生労働省のポスト
① 社会保険審査会委員→委員長
・ 瀧澤泉裁判官(29期)
→ 3年の任期は令和5年3月13日まで
・ 高野伸裁判官(31期)
・ 遠藤真澄裁判官(38期)
→ 3年の任期は令和7年6月21日まで
・ 高橋譲裁判官(35期)
→ 令和5年1月23日付で提示されました。
② 労働保険審査会委員
・ 都筑民枝裁判官(32期)
・ 甲斐哲彦裁判官(35期)
→ 3年の任期は令和6年3月1日まで
・ 比佐和枝裁判官(37期)
→ 3年の任期は令和7年2月26日まで
③ 中央労働保険審査会公益委員
・ 畠山稔裁判官(36期)
→ 再任後の2年の任期は令和5年2月26日まで
・ 石井浩裁判官(37期)
→ 令和5年1月23日付で提示されました。

7 環境省のポスト
① 公害健康被害補償不服審査会委員
・ 阿部潤裁判官(35期)
→ 3年の任期は令和6年3月31日まで

8 最高裁判所のポスト
① 情報公開・個人情報保護審査委員会委員
・ 門口正人裁判官(23期)
→ 3期目の3年の任期は令和6年6月30日まで


第2 国会同意人事
1(1) 首相官邸HPに「国会同意人事機関の現状について 」(作成時期は平成16年3月ころ)が載っています。
(2) 審議会等の整理合理化に関する基本的計画(平成11年4月27日付の閣議決定)の別紙3「審議会等の運営に関する指針」には「2.委員の選任」として以下の記載があります。
(1) 委員の選任
  ① 府省出身者
 府省出身者の委員への任命は、厳に抑制する。
 特に審議会等の所管府省出身者は、当該審議会等の不可欠の構成要素である場合、又は属人的な専門的知識経験から必要な場合を除き、委員に選任しない。
② 高齢者
 委員がその職責を十分果たし得るよう、高齢者については、原則として委員に選任しない。
③ 兼職
 委員がその職責を十分果たし得るよう、一の者が就任することができる審議会等の委員の総数は原則として最高3とし、特段の事情がある場合でも4を上限とする。
(2) 任期
  委員の任期については、原則として2年以内とする。
 再任は妨げないが、一の審議会等の委員に10年を超える期間継続して任命しない。
(3) 女性委員
 委員に占める女性の比率を府省編成時からおよそ10年以内に30%に高めるよう努める。
2 立憲民主党所属の吉川さおり参議院議員(全国比例)HP「国会同意人事とは」には以下の記載があります。
    国会同意人事とは、衆参両院の同意が必要な人事案件で、日本銀行総裁や日本放送協会経営委員、公正取引委員会委員長など、約40機関の250人以上が対象となるものです。
    流れとしては、内閣が衆参両院の議院運営委員会理事会に人事案を提示後、10日程度を経て議決するのが慣例となっています。ただ、最近は、各会派の賛否の議論が出揃うタイミングや議事日程との関係等により、内示後10日程度より後の議決が多くなっています。
    国会同意人事に関しては衆議院の優越がありませんので、参議院で否決されるとただちに不同意になる仕組みとなっています。


第3 関連記事
・ 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
・ 幹部裁判官の定年予定日
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
→ 8月上旬及び中旬に最高裁判所裁判官会議は開催されることはありません。
・ 親任式及び認証官任命式
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 高裁長官人事のスケジュール
・ 高等裁判所長官任命の閣議書
・ 裁判官の号別在職状況
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)


高等裁判所長官任命の閣議書

目次
1 高等裁判所長官任命の閣議書
2 関連記事その他

* 「最高裁判所判事任命の閣議書」及び「高裁長官人事のスケジュール」も参照してください。

1 高等裁判所長官任命の閣議書

・ 金子修 広島高裁長官任命の閣議書(令和7年11月14日付)

・ 伊藤雅人 札幌高裁長官任命の閣議書(令和7年10月3日付)

・ 永渕健一 仙台高裁長官任命の閣議書(令和7年7月29日付)

・ 小林宏司 広島高裁長官任命の閣議書(令和7年2月14日付)

・ 遠藤邦彦 高松高裁長官任命の閣議書(令和7年1月24日付)

・ 舘内比佐志 札幌高裁長官任命の閣議書(令和6年12月17日付)

・ 渡部勇次 名古屋高裁長官任命の閣議書(令和6年12月6日付)

・ 矢尾和子 福岡高等裁判所長官任命の閣議書(令和6年8月2日付)

・ 堀田真哉 東京高等裁判所長官及び小野瀬厚 仙台高等裁判所長官任命の閣議書(令和6年7月19日付)

・ 近藤宏子 札幌高等裁判所長官任命の閣議書(令和5年7月21日付)

・ 中山孝雄 広島高等裁判所長官及び菅野雅之 仙台高等裁判所長官任命の閣議書(令和5年4月21日付)

・ 平木正洋 大阪高等裁判所長官及び八木一洋 名古屋高等裁判所長官任命の閣議書(令和5年3月24日付)

・ 岩井伸晃 高松高等裁判所長官任命の閣議書(令和4年12月9日付)

・ 森純子 仙台高等裁判所長官任命の閣議書(令和4年7月22日付)

・ 中村慎 東京高等裁判所長官任命の閣議書(令和4年5月27日付)

・ 中里智美 福岡高等裁判所長官任命の閣議書(令和4年5月27日付)

・ 笠井之彦 広島高等裁判所長官任命の閣議書(令和4年4月22日付)

・ 団藤丈士 名古屋高等裁判所長官任命の閣議書(令和4年3月25日付)

・ 後藤博 福岡高等裁判所長官任命の閣議書(令和3年9月17日付)

・ 秋吉仁美 高松高等裁判所長官任命の閣議書(令和3年7月30日付)

 白石史子 札幌高等裁判所長官任命の閣議書(令和3年7月2日付)

・ 尾島明 大阪高等裁判所長官任命の閣議書(令和3年6月11日付)

・ 古財英明 仙台高等裁判所長官任命の閣議書(令和3年4月9日付)

・ 白井幸夫 名古屋高等裁判所長官任命の閣議書(令和3年3月5日付)

・ 髙部眞規子 高松高等裁判所長官及び小川秀樹 広島高等裁判所長官任命の閣議書(令和2年9月11日付)

・ 合田悦三 札幌高等裁判所長官任命の閣議書(令和2年6月26日付)

・ 永野厚郎 名古屋高等裁判所長官任命の閣議書(令和2年4月17日付)

・ 青柳勤 仙台高等裁判所長官任命の閣議書(令和2年3月3日付)

・ 小野憲一 福岡高等裁判所長官任命の閣議書(令和2年1月10日付)

・ 今崎幸彦 東京高等裁判所長官任命の閣議書(令和元年8月8日付)

・ 安浪亮介 大阪高等裁判所長官任命の閣議書(平成30年11月20日付)

・ 植村稔 札幌高等裁判所長官任命の閣議書(平成30年8月3日付)

・ 林道晴 東京高等裁判所長官任命の閣議書(平成29年12月19日付)


・ 動画の6分54秒から7分7秒にかけて,「官記を受け取ったら,本当は頭より上に掲げて降ろさないようにお辞儀をすることになっています。検事総長は恐らく初めての認証式ではないので上に掲げていたから中身が見えるんです。」というナレーションが流れます。

2 関連記事その他
(1) 31期の瀬木比呂志裁判官が著した絶望の裁判所54頁には以下の記載があります。
     私の知る限り、やはり、良識派は、ほとんどが地家裁所長、高裁裁判長止まりであり、高裁長官になる人はごくわずか、絶対に事務総長にはならない(最高裁判所事務総局のトップであるこのポストは、最高裁長官の言うことなら何でも聴く、その靴の裏でも舐めるといった骨の髄からの司法官僚、役人でなければ、到底務まらない)し、最高裁判事になる人は稀有、ということで間違いがないと思う。
(2) 以下の資料を掲載しています。
・ 最高裁判所裁判官任命に関する裁可書(令和元年9月2日から令和4年7月5日までの分)
・ 高等裁判所長官任命に関する裁可書(令和元年5月1日から令和4年9月2日までの分)


(3) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所判事任命の閣議書
・ 高輪1期以降の,裁判官出身の最高裁判所判事
 最高裁判所第一小法廷(着任順)
 最高裁判所第二小法廷(長官以外は着任順)
 最高裁判所第三小法廷(着任順)
 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
・ 親任式及び認証官任命式
・ 内閣法制局長官任命の閣議書
・ 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
・ 各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書

・ 高裁長官人事のスケジュール
・ 報道されずに幕引きされた高松高裁長官(昭和42年4月28日依願退官,昭和46年9月5日勲二等旭日重光章)の,暴力金融業者からの金品受領
・ 閣議

昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)

目次
第1 荒木辰生名古屋地裁判事の依願退官及び在宅起訴
第2 昭和27年7月当時の,国会への報告内容
第3 荒木辰生 元裁判官の収賄事件に関する名古屋地裁昭和29年7月23日判決
第4 荒木辰生 元裁判官等のその後
第5 荒木辰生 元裁判官の収賄事件については判決原本しか保存されなかったこと
第6 裁判官に罷免の事由がある場合,最高裁判所に対する通知義務があること
第7 関連記事その他

第1 荒木辰生名古屋地裁判事の依願退官及び在宅起訴
1(1)ア 荒木辰生(昭和27年4月2日依願退官)は,名古屋地裁の刑事単独部で刑事事件を担当していた際,自分が担当する労働基準法違反,強盗,関税法違反被告事件について,それぞれ被告人の親族など縁故者から有利寛大な処分をされたい旨の請託を受け,現金及び飲食合計3万円相当の賄賂を収受した疑いにより,昭和27年7月16日,収賄事件として在宅起訴されました。
イ 名古屋地裁は,荒木辰生 元裁判官に対し,昭和29年7月23日,懲役1年執行猶予3年,追徴金1万2031円の判決を下し,当該判決は同年8月7日に確定しました。
(2) 名古屋地検の捜査が進んでいることを察知した荒木辰生裁判官は,昭和27年3月27日に辞表を提出し,当時の名古屋地裁所長は,裁判官会議に付することもなく,収賄容疑について最高裁判所に伝えることもなく,荒木辰生裁判官の辞表を最高裁判所に伝達しましたから,同年4月2日付で依願退官が発令されました。
 ただし,荒木辰生裁判官は,依願退官を伝えられた昭和27年4月4日まで刑事裁判官としての職務を続けていましたから,同月2日から同月4日までに言い渡した判決については,その後,名古屋高裁が,裁判官でない者の行為として無効であるとして破棄差戻しとしました。
(3) 汚れた法衣111頁ないし138頁に詳しい経緯が書いてあります。

汚れた法衣-ドキュメント司法記者の表紙です。

第2 昭和27年7月当時の,国会への報告内容
・ 伊藤修 参議院法務委員会理事は,昭和27年7月28日の参議院法務委員会において以下の報告をしています(ナンバリングを追加したり,事件関係者の氏名を匿名にしたりしています。)。
① 名古屋地裁荒木元判事の汚職容疑事件について、第一に、その調査の経過を御報告申上げます。
 本年四月十九日付中部日本新聞紙上に、名古屋地方裁判所荒木辰生判事の汚職容疑に関する記事が大きく掲載せられ、世人の注目を惹いたところであるが、当委員会においても、問題の重大性に鑑み、これを重視し、五月九日の委員会において伊藤委員より最高裁判所事務総局鈴木人事局長に対し、本件について質疑が行われた。
 委員会においては、本件について更に詳細にこれを調査し、その真相を究明するために、現地に委員を派遣することを決定した。
 かくて五月十四日伊藤、中山の両委員は名古屋に赴き、名古屋高等裁判所、同地方裁判所において、それぞれ長官並に所長より、名古屋高等検察庁、同地方検察庁において検事長及び検事正より詳細に事情を聽取した。
 当時本件は名古屋地方検察庁において捜査中で同庁では、荒木元判事の汚職容疑について、すでに相当程度の確証を挙げてはいたのであるが、なおまだこれを起訴すべきや否やについては決定を見ていなかつた。よつてこの処分が決定するまでは、本件についての報告を留保するのが妥当なりと認め、これを留保してきたのであるが、法務府よりの通知によれば、名古屋地方検察庁は去る七月十六日、荒木辰生を收賄被疑によつて起訴したことが明らかとなつた。よつてここに本件について報告に及ぶものである。
② 二、事件の概要
 名古屋地方裁判所元判事荒木辰生は、昭和四年高文司法科試験に合格、同五年千葉弁護士会に登録、弁護士を開業、同十年判事に任ぜられ、以来、東京、金沢、安濃津、名古屋各地方裁判所に勤務し、昭和十九年に至り陸軍司政官としてスマトラに赴き、以来昭和二十一年十月帰国するまで南方各地に在勤し、同月帰国と同時に判事に任ぜられ、名古屋地方裁判所岡崎支部に勤務、昭和二十二年十一月名古屋地方裁判所に転勤、昭和二十七年四月二日依願退官するまで、同庁刑事単独部において判事として勤務したものである。
 荒木は別添名古屋高等検察庁検事長藤原末作より木村法務総裁宛の昭和二十七年七月十日付日記秘第一八四号写記載の通り
 (一)昭和二十五年十一月十七日名古屋地方裁判所刑事単独部に係属中の◯◯◯株式会社名古屋工場の工場長Aに対する労働基準法違反被告事件審理に関し、同事件の当初担当判事が、同二十六年三月十五日同裁判所刑事会議部に転出したるため、同事件の配填替えを受け、その審理を担当するに至るとともに、同事件の被告人Aが自己に対する裁判について、有利寛大なる判決を受けたいという趣旨のもとに行うものであることを知り乍ら、同年三月以降六月頃までの間に、名古屋市所在の旅館◯◯◯において、二十一回に亘り酒食の饗応を受け、同年六月二十五日言渡したる判決においては、右Aに無罪を言渡し、更に判決言渡当日たる六月二十五日及び同月二十九日頃の二回に亘つて、同じく◯◯◯において、Aより酒食の饗応を受け
 (二)昭和二十六年十二月から翌二十七年一月にかけて、名古屋市において検挙されたB、C及びDの集団強盗被告事件について、これらの者の検挙が別々であつたために、先づBは、昭和二十七年一月八日名古屋地方裁判所に起訴され、事件は刑事単独部澁谷判事のもとに配填せられ、次いで同月十七日起訴されたC及びDに関する被告事件は、同一強盗事件に関する共犯関係であるから、さきに起訴されたBの事件に併合審理されるべきことが明かにされたため、澁谷刑事のもとに併合せらるべきに拘わらす、その起訴に先だち一月十四日Cの実兄及び養父の両名が、荒木の居宅に赴き右強盗事件が起訴された場合には、荒木判事のもとにおいて同事件を担当し、Cのため有利寛大な審判をせられたい旨、荒木に対し請託したところ、荒木は、この請託を容れて、Cのために有利な執行猶予を付したる判決をなすべきことを約束して、右両人が持参した菓子折一箱と現金二千円を受領し、その後、前記各被告人の事件を一括して自己の担任に移し、Cに対しては同年二月六日に懲役三年、五年間執行猶予の判決を言渡し
 (三)昭和二十六年十二月三十日、名古屋地方裁判所に係属したるEに対する関税法違反被告事件が、荒木に配填せられたところ、被告人の義弟F等より名古屋市所在◯◯◯において、一月十五日酒食の饗応を受け、その請託に応じて二月二十日右Eに対し寛大なる判決を言渡し、更に三月三日頃周の知人Gより◯◯◯外一カ所において、酒食の饗応を受けたものである。
 以上の事実によつて、荒木は去る七月十六日、名古屋地方検察庁によつて名古屋地方裁判所に起訴せられたのである。これらの事実がすべて真実なりや否やは、勿論裁判によつて、確定せらるべきことであつて、今これについて深く言及することは避けることとする。併し、右のごとき事実によつて起訴されたということ及び検察当局がこれについて相当の確信を持つていることは特に注意すべきことである。
③ 次に、検察当局の捜査の端緒及び荒木判事退官までの経緯を略述すれば次の通りである。
 昭和二十七年二月二十七日、前記B、C、Dの強盗被害事件の主任平田判事の許にBの雇主Xが来訪し、同事件について先般判決があつたが、Bは懲役五年の実刑を科されたが、他の二人は執行猶予となつて、これには不服である。執行猶予となつたCの親族が荒木判事を訪れ、菓子折と金一封を贈つたということなので、私も訪ねて行つたが、私のほうは駄目で返されたという趣旨のことを同検事に語つた。
 同検事の報告に基き、名古屋地方検察庁安井検事正は、検事長の指揮を受け捜査を開始したところ、贈賄者二名が詳細に自白するに至り、検察庁は更に荒木判事の素行行動などについて追求するに至つたのである。その結果として同判事の担当刑事事件について、特に検事控訴となる事件が多いこと、同検察庁の調べによれば、昭和二十六年四月一日から同二十七年三月二日までの間において同庁で検事控訴した事件九十一件のうち、二十九件が荒木判事の担当した事件である。麻雀が好きで、料亭等に頻々と出入していること等が判明するに至つた。
 三月二十日頃に至り、安井検事正は、名古屋地方裁判所村田所長及び同高等裁判所下飯坂長官に右荒木判事の事件について話したのであるが、一方、荒木本人も検察庁の捜査を察知したもののごとく、三月二十六日に至り、村田所長に辞意を洩らし、翌二十七日遂に辞表を提出した。そこで村田所長は、下飯坂長官と相談の上、裁判官会議に附することなしに、最高裁判所に伝達したのである。なおこの際荒木判事について、前記のごとき汚職容疑事件が発覚している事実については、最高裁判所に通知しなかつたのである。故に、最高裁判所は、右の事実について何等知るところなく、四月二日附を以て荒木に対し、依願免官の発令をなしたのであつた。
 なお、この間の事情について、下飯坂長官及び村田所長は、彈劾裁判ということについても十分心得てはいたのであるが、自分等としては、本件をそこまでもつて行くことには耐えられなかつたし、又、荒木判事が現職のまま拘束された場合における世間に及ぼす影響及び裁判官全体のための名誉保持の点等を考慮し、自分等両名の責任において最善の方法と認められる措置をとつたものと考えると言明している。
 この間検察庁側は着々として荒木についての捜査を継続し、犯罪の確証を握るに及んで、遂に同人を起訴するに至つたものである。
 以上が事件の概要であり、その詳細は別添参考資料聴取書等によつてこれを参照せられたい。
④ 三、結論
 先ず本件において、荒木元判事本人の行為については、それが目下刑事事件として裁判所に係属中であるため、ここにこれを批判することは、暫らく差し控えることとする。
 次に本件において問題となるのは、裁判官の弾劾裁判制度との関連において、荒木元判事の辞職について、裁判所側、殊に名古屋高等裁判所長官及び名古屋地方裁判所長のとりたる措置並びに最高裁判所の人事行政全般に関する問題である。すでに、事件の概要中において述べた通り、荒木元判事は、自己の身辺に検察庁の捜査の手が伸びたことを察知するや、三月二十七日附その辞表を提出したのであつた。名古屋高等裁判所下飯坂長官及び名古屋地方裁判所村田所長は、これに先だち、三月二十日前後に、名古屋地方検察庁安井検事正より、荒木元判事の汚職容疑について、報告を聽いているのである。即ち下飯坂長官及び村田所長は、荒木元判事について、かかる事情が存することを知りながら、なお且つその辞表を受理し、而もこれを裁判官会議に諮ることなく、長官及び所長の意思と責任において、最高裁判所にその伝達をなすと共に、これを至急決裁あらんことを具申したのであつた。なおこの際最高裁判所に対しては、荒木元判事について前述のごとき汚職容疑事件が発生したことについては、何等報告しなかつのである。
 このような取扱いをした理由として、下飯坂長官及び村田所長は、荒木元判事が現職のまま、身柄拘束されるようなことがあつた場合においては、それが国民一般の裁判官全体に対する不信の念を招来するがごとき結果を生ずることを虞れて、荒木を一刻も早く辞職せしむることが、裁判所及び裁判官全体の名誉を守るゆえんであると考えたというのである。
 名古屋高等裁判所裁判官会議規程及び名古屋地方裁判所裁判官会議規程を見るに、裁判官の身分に関する意見、具申等については、いづれも裁判官会議若しくはその常置又は常任委員会に諮り、その決議によつて処理することになつているのであつて、長官又は所長の独断的専行は許されないところである。
 のみならず、荒木元判事の行為は、明らかに裁判官弾劾法第二條の規程に該当する罷免の事由たり得る非行であつて、下飯坂長官及び村田所長は、同法第十五條によつて、当然荒木元判事について弾劾による罷免事由を最高裁判所長官に通知すべきであつたのである。
 然るに下飯坂長官及び村田所長は、右の処置をとることなく、むしろ反対に荒木元判事の非行については何等報告することなく、又その辞表については、至急決裁せらるべく具申して、これを伝達したことは前述の通りである。
 下飯坂長官及び村田所長が、本件の世間に及ぼす影響と、裁判官全体の名誉と威信を保持するために苦慮を重ねたであろうことは、本件の調査に当り、長官等が委員に対し、その心境を吐露したる言葉の節々によつても、十分にこれを推察することができるのである。
 長官及び所長が右のごとき措置をとるに至つたその心境は同情に値するものであり、その措置は気持の上では諒とせられるものではあるが、併し、法の維持を任務とする裁判官としては、飽くまでも法令の命ずるところに従つて事に処することが正しい態度と言うべく、かかる態度を堅持することこそが、裁判官全体のための名誉と、威信を保持するゆえんであると思料されるのである。
 本件の場合において、下飯坂長官及び村田所長が、荒木元判事の辞表を裁判官会議に附することなく、最高裁判所に伝達して、その結果において荒木元判事の彈劾裁判を免れしめるような処置をとつたことは妥当を欠くものと言うべく、遺憾に堪えないところである。そもそも裁判官彈劾裁判制度は、裁判官の身分保障を前提として、裁判官が濫りに罷免されることのないように、これを保障するために設けられた制度であつて、それ故にこそ、特に刑事訴訟手続にも似た嚴格なる手続によつて行われるのである。
 裁判官が法に触れる非行をなした場合において、一般の刑事裁判に付されるほかに、更に弾劾裁判にも付されるということは、一見二重にその責を問われるもののごとくみられないこともないが、これはその身分を強く保障するための制度よりまする当然の結果であつて、かかる制度が裁判官のために、ひとり裁判官のみのために設けられている事実こそ、まさに裁判官の職務遂行を独立不覊のものたらしめるものであると同時に、その名誉と威信とを示すものである。故に裁判官の弾劾裁判制度は裁判官の名誉と威信とを保持するためにも、これを守らなければならないし、又それが憲法の精神にも副うものである。
 本件については荒木元判事の依願退官の手続はすでに完了し、その弾劾のための訴追については最早とるべき手段はない。併しながら、将来においてはひとり下飯坂長官及び村田所長のみに限らず、裁判官全体の問題として、かかることを再び繰返すことのなきよう嚴に自戒すべきことを要望して止まない。然らざる限り、裁判官の弾劾裁判制度は全く有名無実の制度と化するであろうとことを虞れるのである。次に最高裁判所は荒木元判事の辞表の伝達を受けたときに、同人の非行については何の報告も受けておらなかつたために、これを知ることなくして、その免官を発令したのであつて、その手続において欠くるところはなかつた。併しながら本件のごとき問題が、将来において再び発生することがないとは言えないのであるから、将来の問題として、裁判官の辞任の申出があつた場合においては、少くともその理由について万遺漏なきような措置を講ずることが必要であると思料するのである。最高裁判所においては、終戰後住宅その他主として経済上の理由により、裁判官を適材適所に配置することができなかつたことは誠に止むを得ないところであつたが、我が国が独立を回復したる今日は、当時と社会一般の情勢も異り、経済事情も相当好転しているのであるから、裁判官についも適材適所主義をとり、慎重なら人事行政を行うことによつて再び本件のごとき事件が発生することのなきよう十分なる対策を講ずべきである。
 以上簡單でありますが、両件の報告(山中注:もう1件は,島根県安来町(現在の島根県安来市(やすぎし))におけるところの自治体警察の存廃問題に関する件でした。)を終ります。

第3 荒木辰生 元裁判官の収賄事件に関する名古屋地裁昭和29年7月23日判決
1 汚れた法衣ードキュメント司法記者132頁によれば,荒木辰生 元裁判官の収賄事件に関する名古屋地裁昭和29年7月23日の判決理由の骨子は以下のようなものでした。
 審理の結果,荒木被告の職務の公正を疑う証拠は十分あったが,そのため(法に反して)裁判に手心を加えたと断定する証拠はなかった。また,検事の公訴事実全部が収賄罪を構成するとは考えられない。つまり,荒木被告が直接,自分が担当した事件の被告人や関係者から,酒食の供応を受けたり現金を収受したりした部分は有罪だが,人を介して受けた12回の供応(1万9014円)は判決を寛大との主旨ではなかろう。また,起訴事実①を無罪にした後で関係者,被告人らと会食した2回の供応は,収賄とみなす根拠が薄いから無罪で,これは追徴金から除外する。
2 汚れた法衣-ドキュメント司法記者134頁によれば,荒木辰生 元裁判官の収賄事件に関する名古屋地裁昭和29年7月23日が執行猶予をつけた理由は以下の3点でした。
① 荒木は起訴の3ヶ月以上も前に責任をとって,裁判官を退職した。
② 各事件の処理を見ると,収賄して故意に判決に手を加えた形跡は認められない。
③ 現在,右側臀部全般及び大転子部にわたる結核性痔瘻で歩行時に疼痛を感じ,分泌物のため長時間の座位を取り難く,症状が深化拡大していて外科的手術が不可能で,安静加療を要する。
3 汚れた法衣-ドキュメント司法記者には以下の記載があります。
(135頁の記載)
 判決文を読み進むと起訴状、公判経過からは考えられない事ばかり、なんと荒木被告にとって至れり、尽くせりの判決だろう。事実や経験則に反する事でも被告の主張は気前よく認めた上で、「責任をとった」、「賄賂で判決を曲げなかった」、「動かぬほどの病人」として執行猶予にしたが、許されぬ退職事情と高裁の判決是正などに触れていない。また病気のことについて言えば、刑務所には医官がおり、刑の執行停止もある。判決は「善良で世の中を知らず、悪への抗体がなく、気の良い裁判官をダメにしたのは外部の悪党で、これに荒木は迂闊にも丸め込まれた」と、旅館の支配人の”義務違反”までを責めた。これでは裁判官はもう”ばか殿”扱いである。「放胆で細心を欠き、開けっ放しで迂闊」、「人を見る目に欠けた」とは”教育的”な配慮に聞こえるが、そうとするなら遅過ぎる。この判決は”まず結論を出し、二年がかりで理屈をつけた”もの、との世の批判は当然だ。
136頁の記載)
 荒木被告は判決がすむと、真っ赤な顔をして発言を求め、裁判長に、
「私の行為を収賄と認定した判決に疑義がある。金品はいずれも返却、または返却しようとしていたのに、収賄とは実に心外だ。」
 と抗議し、睨みつけた。たまりかねた裁判長は、
「その点も慎重に検討したが、被告が職責上求められる細心の注意を欠いたからこの事態を招いたので、この結果はやむを得ない」
 と突き放して答え、一五分ほどで閉廷した。
 裁判所が苦労して書き上げた”結構ずくめ”の判決も、被告席に座る荒木元判事にはまったく通じなかったわけだ。閉廷後、彼は記者団に、
「こんな判決は絶対に承服しない。私個人の問題ではなく、全司法の権威に関わる重大問題だから、控訴して身の潔白を証明する」
 と宣言した。
「供応」の大部分を削り取られた中嶋検事は、
「検事控訴はよく上司と相談して・・・」
 と足早に法廷を去った。双方とも高裁で争う構えだったが、後でどんな思惑が働いたか、双方とも控訴をやめたので「吉村判決」は確定した。


第4 荒木辰生 元裁判官等のその後
1 荒木辰生 元裁判官は執行猶予期間が満了した直後の昭和32年10月3日,名古屋弁護士会に入会しました。
2 下飯坂潤夫(しもいいざかますお)名古屋高裁長官は,昭和31年11月に最高裁判所判事となりました。

第5 荒木辰生 元裁判官の収賄事件については判決原本しか保存されなかったこと
・ 汚れた法衣-ドキュメント司法記者には以下の記載があります。
(112頁及び113頁の記載)
 この事件は、先に挙げたような裁判官の汚職や非行が発覚すると新聞やテレビが必ず戦後初の収賄起訴事件として記事や解説で紹介する、いわば”古典的な”裁判官の犯罪なのに、その紹介がいつもピントはずれで、事件の重大な性質・内容が不正確のまま伝えられ、その意味が減殺されている。私は責任の一半を最高裁当局が負うべきだと思う。
 名古屋の裁判所にいる知人の裁判官と話をした時も、「過去にあった裁判官の汚職・非行は後輩が十分に承知して、同じ過ちを繰り返さない心掛けが必要だが、裁判所はひたすらに隠すだけで、内容を知らせない。あえて真相を知ろうとするととがめられ、変な目で見られる。ずっと名古屋にいる裁判官がここで発生した汚職事件の輪郭さえ知らないのは、常識的にもおかしいことだ。一般裁判官のためにも過去の汚職・非行を明らかにして欲しい。」
 と、困惑の表情で感想を語っていた。
 ”古典的”な事件だからこそ、それを繰り返し反芻し、現在の時点で見据えるところに深い意義がある。最高裁の『沿革誌』に掲載されていなくても、この種事件の確定記録は、地元の検察庁が保存期間を過ぎても「永久保存」するのが通例だから、必要ならそれを見れば具体的に詳細が分かる。そこで名古屋地検に照会してみたが、なぜか名古屋地検はこれを焼却してしまい、厳重に保管しているのは薄い「判決原本」だけ、ここでも、事件の詳細を知るのが困難だった。
(137頁の記載)
 最高裁当局は裁判制度の根幹を揺るがしたこの”現職判事の汚職とその背景”に「吉村判決」でケリをつけ,O裁判長を転出させて一掃したつもりだから、同じような重大な犯罪の再発を絶とうとか、自戒の手掛かりにする危機意識や使命感がまったくない。しかも、公証人の任命には部内のルールがあるのに、それを超える吉村・名古屋地裁所長の公証人任命は、論功行賞のニオイが強い。

第6 裁判官に罷免の事由がある場合,最高裁判所に対する通知義務があること
1 裁判官弾劾法の一部を改正する法律(昭和23年7月5日法律第93号)による改正後の裁判官弾劾法15条は以下のとおりです。
① 何人も、裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる。
② 高等裁判所長官及び地方裁判所長は、その勤務する裁判所及びその管轄区域内の下級裁判所の裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、最高裁判所長官に対し、その事由を通知しなければならない。
③ 最高裁判所長官は、裁判官について、前項の通知があつたとき又は弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し罷免の訴追をすべきことを求めなければならない。
④ 第一項及び前項の規定による訴追の請求をするには、その事由の簡単な説明を添えなければならない。但し、その証拠は、これを要しない。
2 裁判官弾劾法の一部を改正する法律(昭和56年6月5日法律第66号)による改正後の裁判官弾劾法15条は以下のとおりです。
① 何人も、裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる。
② 高等裁判所長官はその勤務する裁判所及びその管轄区域内の下級裁判所の裁判官について、地方裁判所長はその勤務する裁判所及びその管轄区域内の簡易裁判所の裁判官について、家庭裁判所長はその勤務する裁判所の裁判官について、弾劾による罷免の事由があると思料するときは、最高裁判所に対し、その旨を報告しなければならない。
③ 最高裁判所は、裁判官について、弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し罷免の訴追をすべきことを求めなければならない。
④ 第一項及び前項の規定による訴追の請求をするには、その事由の簡単な説明を添えなければならない。但し、その証拠は、これを要しない。

第7 関連記事その他
1 福岡高裁判事妻ストーカー事件に関する,平成13年3月14日付の最高裁判所調査委員会の調査報告書も参照してください。
2 以下の記事も参照してください。
・ 性犯罪を犯した裁判官の一覧
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
・ 報道されずに幕引きされた高松高裁長官(昭和42年4月28日依願退官,昭和46年9月5日勲二等旭日重光章)の,暴力金融業者からの金品受領
・ 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)

昭和20年8月15日,長崎控訴院が福岡に移転して福岡控訴院となり,高松控訴院が設置されたこと等

目次
1 時系列の経緯
2 裁判所構成法戦時特例中改正法律に関する政府答弁(昭和20年6月9日)
3 地方行政協議会及び地方総監府
4 長崎市への原子爆弾の投下
5 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する政府答弁(昭和22年3月28日)
6 関連記事その他

1 時系列の経緯
(1) 明治憲法時代でも,裁判所の設立,廃止及び管轄区域並びにその変更は法律事項でした(裁判所構成法4条)。
   しかし,裁判所構成法戦時特例中改正法律(昭和20年6月20日公布の法律第36号)による改正後の裁判所構成法戦時特例(昭和17年2月24日公布の法律第62号)1条ノ2により,昭和20年6月20日以降,裁判所の設立,廃止及び管轄区域並びにその変更は勅令事項となりました。
(2)ア 高松控訴院ノ設立等ニ関スル件(昭和20年8月1日公布の勅令第443号)の内容は以下のとおりであり,昭和20年8月15日に施行されました。
① 高松市に高松控訴院を設置し,高松地裁,徳島地裁,高知地裁及び松山地裁を高松控訴院の管轄区域に属させること。
② 長崎控訴院を福岡市に移転させて,福岡控訴院とすること。
③ 静岡地裁を名古屋控訴院の管轄区域に属させること。
④ 福井地裁を大阪控訴院の管轄区域に属させること。
イ 昭和20年8月15日正午,大東亜戦争終結ノ詔書(昭和20年8月14日付)の音読放送(いわゆる玉音放送です。)が実施されて終戦となりました。
(3) 裁判所構成法戦時特例廃止法律(昭和20年12月20日公布の法律第45号)に基づき,裁判所構成法戦時特例は廃止されたものの,高松控訴院ノ設立等ニ関スル件(昭和20年8月1日公布の勅令第443号)の効力は維持されました(同法附則2項)。
(4)ア 高松控訴院ノ廃止等ニ関スル件(昭和21年1月9日公布の勅令第3号)の内容は以下のとおりであり,昭和21年1月10日に施行されました。
① 高松控訴院を廃止すること。
② 福井地裁を名古屋控訴院の管轄区域に属させること。
③ 静岡地裁を東京控訴院の管轄区域に属させること。
④ 徳島地裁,高松地裁及び高知地裁を高松控訴院に属させ,松山地裁を廣島控訴院に属させること。
イ 長崎市への原子爆弾投下が影響したと思いますが,高松控訴院ノ設立等ニ関スル件(昭和20年8月1日公布の勅令第443号)のうち,長崎市にあった控訴院が福岡市に移転した部分については元に戻りませんでした。
(5) 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律(昭和22年4月17日公布の法律第63号)に基づき,日本国憲法及び裁判所法が施行された昭和22年5月3日,従前の7控訴院が7高裁に移行するとともに,高松市に高松高裁が設置されました。

2 裁判所構成法戦時特例中改正法律に関する政府答弁(昭和20年6月9日)
(1) 松阪廣政司法大臣は,昭和20年6月9日の貴族院裁判所構成法戦時特例中改正法律案特別委員会において以下の答弁をしています(現代語訳にするなどしています。)。
① 裁判所構成法第4条の規定によれば,裁判所の設立,廃止及び管轄区域並びにその変更は法律を以て定めるべきものとされていますが,戦局の進展に伴い交通,通信,人口状況の変化等に応じて,これを急速に変更する方法を設けるために,これらの事項を勅令に委任することを適当と考えますので,この点の改正をするものであります。
② 現在,地方行政協議会がございますが,近くそれが地方総監府の設置を見るのではないかと思うのでありますが,左様にいたしますと,四国は香川県に現在でも一つの協議会がございますが,その場所を中心に四国を一つのブロックとして,すべてのものを国内体制を整えることになっておりますので,どうしても控訴院を協議会のある場所に一致させ,また,管轄区域を一致させておく必要があるのではないかということを考えております。
   また,管轄区域も,例えば,静岡県のごとき,現在,東京控訴院の管轄に属しておりますが,あるいはこれを名古屋控訴院管内にも移転する必要がありはしないか,これは戦時情勢に応じて,あるいは管轄区域の変更が急速に必要を生じる場合があるのではないかということを実は考えております。
③ 九州方面の空爆を受ける場所から見ましても,あるいは区裁判所あたりの廃止,設立,管轄区域の変更等の必要な場合を生じるのではないかと考えます。
④ 長崎の控訴院を福岡に移転するかどうかは,敵の九州に対する攻撃の状況等によって判断しなければならないのであります。
   少なくとも,検事局は管内の治安を確保するという立場から,大体において行政協議会の所在地,あるいは軍司令部等の所在地と一致させる必要が痛切にあると思いますから,戦時であるがゆえに,長崎の控訴院を福岡に移転させる必要が出てくるのではないかということを考えております。
   しかし,まだ事態がそこまでに至っておりませぬから,いつどうするということを今あらかじめお約束することは無論できません。
(2) 斎藤直一司法省民事局長は,昭和20年6月9日の貴族院裁判所構成法戦時特例中改正法律案特別委員会において以下の答弁をしています(現代語訳にするなどしています。)。
① 裁判所構成法戦時特例第1条の戦時におけるという一般規定が適用されます結果,改正案第1条ノ2に基づく勅令(山中注:高松控訴院ノ設立等ニ関スル件(昭和20年8月1日公布の勅令第443号)のこと。)によりまして,例えば,裁判所の設立や,管轄区域の変更がなされたとしても,やはり戦時終了の際には効力を失うことになります。
   しかし,裁判所構成法戦時特例の附則に,戦時終了の際において,必要な経過規定を勅令を以て定めるという規定がございますので,そのときの情勢によりまして,戦時中勅令に基づき行った裁判所の設立とか,管轄区域の変更とかが,そのまま,なお続けて行う必要があるような場合には,この附則の規定により,勅令でさらにそれを継続することとなり,その後の議会が開かれた機会に,なお必要であれば法律を以てそれをさらに続けていくことになります。
   そうでない限り,戦時終了とともに,また元の法律による設立,管轄区域等の昔の状態が復活する,このように解釈すべきものと存じております。
② 地方行政協議会のある場所がすべて地方の中心地になり,すべての政策なり施策なり政治がその場所で行われますから,もとより裁判所は行政の直接干渉をうけるものではありませぬが,同じ場所にあった方が何かと便利かと存じまして,そういう考え方もあるということを申し上げたのであります。

3 地方行政協議会及び地方総監府 
(1) 地方行政協議会は,地方行政の円滑化を目的とし,知事を主な構成員とした協議体であって,地方行政協議会令(昭和18年7月1日公布の勅令第548号)に基づき,同日,全国9箇所に設置され,その後,8箇所に設置された協議会です(四国における当初の設置場所は愛媛県でした。)。
(2)ア 地方総監府は, 本土決戦に伴う国土分断の危機を予想し,地方行政の統合と連絡調整を目的として設置された応急的な地方機関であって,地方総監府官制(昭和20年6月10日勅令第350号)に基づき,同日,全国8箇所に設置され,昭和20年11月6日に廃止されました。
イ Wikipediaの「地方総監府」には以下の記載があります。
   各総監府は所在地の地方官庁とは別個の行政組織とされ、またその長たる地方総監の権限は強大で、管内にある都道府県知事への指揮権(地方官庁の首長による命令・処分に対する取り消し・停止を含む)、管内における地方総監府令の公布権、非常事態に際しての当該地方の陸軍・海軍司令官に対する出兵要請権などを有していた。しかし現実には空襲の激化にともない、管内知事の会合を開くこともできず、中央と各府県を連絡する機関以上の役割を果たすことはなかった。敗戦直前の8月6日には、原爆投下により大塚惟精中国地方総監が被爆死したが、これが地方総監中唯一の戦災死者であった。

4 長崎市への原子爆弾投下
(1) 1945年7月24日,同年6月14日に除外された京都市の代わりに長崎市が原子爆弾投下目標に加えられ,7月25日,広島,小倉,新潟及び長崎が原子爆弾投下目標となりました(Wikipediaの「日本への原子爆弾投下」参照)。
(2)ア 長崎市への原子爆弾の投下目標は,市街地の中心を流れる中島川にかかる常盤橋(ときわばし)でしたが,1945年8月9日当日は長崎市内が雲に覆われていたためにこの場所への目視投下ができず,結果として午前11時2分,北西に3.4km離れた松山町にプルトニウム型原子爆弾ファットマンが投下され(Wikipediaの「長崎市への原子爆弾投下」参照),長崎控訴院及び長崎地裁の庁舎が全焼しました。
イ グーグル検索によれば,長崎地裁から常盤橋(長崎県)まで徒歩5分の距離です。
(3) 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(略称は「被爆者援護法」です。)の前文には,「昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず、たとい一命をとりとめた被爆者にも、生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し、不安の中での生活をもたらした。」と書いてあります。


5 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する政府答弁(昭和22年3月28日)
(1) 木村篤太郎司法大臣は,昭和22年3月28日の貴族院検察庁法案特別委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加したり,旧字体を新字体に変えたりしています。)。
① 「下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案」に付て御説明申上げます、高等裁判所及び地方裁判所の設立及び管轄区域に付きまして申上げますると、之を従前の控訴院及び地方裁判所と比較致しますれば、従前の控訴院所在地七箇所の外に、高松市にも高等裁判所を設けまして、四国四地方裁判所管内を統一して、其の管轄区域としたこと、大阪高等裁判所は、従前の大阪控訴院の管轄区域より、高松、徳島、高知の三裁判所の管内を失ひ、広島高等裁判所は従前の広島控訴院の管轄区域より松山地方裁判所の管内を失つたこと、東京民事、刑事の両地方裁判所が併合されまして一個の地方裁判所となつたのであります、
   又樺太、那覇の二つの地方裁判所が除かれたことが、從來と相違致して居りまするが、其の他は大体同じであります、
   高松市に高等裁判所を設けましたことは、従来四国が二控訴院の管下に二分されて居りまして、現地に諸種の不便を与えて居りましたので、此の度此の不便を除去する為に、同一状況下にある四国四県を統一致しまして、一高等裁判所の管下に置くことに致したのであります、
   尚今回設立することと致しました高等裁判所及び地方裁判所の名称は、総て所在地名を冠することと致しましたので、仙台市に設立される高等裁判所は仙台高等裁判所、津市に設立される地方裁判所は津地方裁判所となつて居ります、
② 簡易裁判所の設立及び管轄区域に關しましては、簡易裁判所が刑事訴訟法の改正に依りまして、治安の確保に極めて重要な任務を担当致しますることと、其の数も数百に及びまする関係から、慎重に現地の事情を調査して、之を檢討の上決定しなければなりませぬので此の度は此の法案の規定に基いて、之を暫定的に政令で規定することに致したのであります、
   新憲法施行後の最初の国会には必ず簡易裁判所の設立及び管轄区域を定めた改正法案を提出する積りであります
(2) 仙台高裁の前身は宮城控訴院であり,津地裁の前身は安濃津地裁です。
(3)ア 1879年4月4日設置の沖縄県を管轄区域とする那覇地裁は,那覇地方裁判所及那覇区裁判所設置法(明治24年12月26日公布の法律第5号)に基づき同日に設置され,1945年3月26日開始の沖縄戦によって消滅しました。
イ 日本がポーツマス条約(1905年9月5日調印)9条に基づき取得した北緯50度以南の南樺太(みなみからふと)を管轄区域とする樺太地裁は,樺太地方裁判所及同管内二区裁判所設置ニ関スル法律(明治40年3月29日公布の法律第28号)に基づき1907年4月1日に設置され,1945年8月9日開始のソ連対日参戦に伴う樺太の戦いによって消滅しました。
ウ 1945年2月11日のヤルタ会議で署名され,1946年2月11日にアメリカ国務省によって発表されたヤルタ協定には「2 1904年の日本国の背信的攻撃により侵害されたロシアの旧権利が次のとおり回復されること。(a) 樺太の南部及びこれに隣接するすべての諸島がソヴィエト連邦に返還されること。」とか,「3 千島列島がソヴィエト連邦に引き渡されること。 」などと書いてあります。
(4) 昭和22年7月18日法律第89号によって,下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律(昭和22年4月17日法律第63号)に,簡易裁判所の設立及び管轄区域に関する事項が追加されました。

6 関連記事その他
(1) 大正初期から長崎,福岡,熊本及び佐賀は長崎控訴院の移転問題を巡って争っていましたが,1921年11月,政府は長崎控訴院移転改築の保留を閣議決定したため,移転問題は一旦,立ち消えとなっていました(福岡市HPの「(2)「高等裁判所」の誘致合戦 (福岡,熊本,佐賀,長崎) 」参照)。
(2) 明治憲法時代,大阪控訴院管内の地裁は,京都地裁,大阪地裁,神戸地裁,大津地裁,奈良地裁,和歌山地裁,徳島地裁,高松地裁,高知地裁という順番で記載されていました(赤字部分が現代の順番と異なります。)
(3) 外務省HPに「核兵器使用の多方面における影響に関する調査研究について」(平成26年4月9日付)が載っています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 戦前の判事及び検事の定年
・ 裁判官及び検察官の定年が定められた経緯(日本国憲法の制定経緯を含む。)
 ポツダム宣言の発表から降伏文書調印までの経緯
・ 明治憲法時代の親任官,勅任官,控訴院及び検事局

百日裁判事件(公職選挙法違反)

目次
第1 百日裁判事件(公職選挙法違反)
第2 組織的選挙運動管理者
1 連座制
2 裁判例
第3 関連記事その他

第1 百日裁判事件(公職選挙法違反)
・ 「百日裁判事件処理に関する執務資料(平成13年度版 含,百日裁判事件概説)」の「第1部 百日裁判事件概説」には以下の記載があります。

第1 百日裁判の対象
   以下の記述は,公刊物等に登載された公職選挙法の解説のうち百日裁判に関する部分を当刑事局(山中注:最高裁判所事務総局刑事局)で取りまとめたものである。
1 百日裁判の意義
   公職選挙法(以下,単に「法」という。)は,法253条の2第1項において, 当選人や選挙運動の総括主宰者ら(いわゆる連座対象者)による一定の選挙犯罪事件については,訴訟の判決は,事件を受理した日から百日以内にこれをするように努めなければならないと定めている。これに基づいて行われる裁判を一般に百日裁判と呼んでいる。
   百日裁判の対象となる事件は,大きく分けると,
① 当選人の選挙犯罪
② 法251条の2第1項各号に掲げる総括主宰者,出納責任者,地域主宰者,公職の候補者等の親族,公職の候補者等の秘書の選挙犯罪
③ 法251条の3第1項に掲げる組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪
④ 法251条の4第1項各号に掲げる公務員等の選挙犯罪
の4つに分けられる。このうち②~④は,公職の候補者(以下,単に「候補者」という。)以外の者による選挙犯罪であり,その有罪判決の効果が当選無効(②,③は立候補制限も含む) という形で当該候補者に及びうるとされていることから,一般に連座対象者の選挙犯罪と呼ばれている(連座制)。
   百日裁判の規定が設けられた趣旨は, 当選無効等の効果を生じさせるこの種の事件については,できる限り速やかに裁判を終了して,選挙結果の早期安定を図るとともに, 当選無効等の効果に実効性をあらしめる点にあるとされている。
※ 法213条は,選挙等の効力に関する訴訟の判決【①選挙の効力に関する訴訟の裁判,②当選人の当選の効力に関する訴訟の裁判,③連座制の適用による当該候補者の当選無効及び立候補制限に関する訴訟の裁判(連座裁判)】についても事件を受理した日から百日以内に判決するように努めなければならないとしており, これについても百日裁判と呼ばれることがある。
2 百日裁判の対象となる事件
(1)  当選人の選挙犯罪
ア 百日裁判の対象となる選挙犯罪の種類
   当選人については,公職選挙法16章に掲げるすべての罪のうち次の条文に記載される罪を除き,百日裁判の対象となる。
・235条の6 (あいさつを目的とする有料広告の制限違反)
・245条(選挙期日後のあいさつ行為の制限違反)
・246条(選挙運動に関する収入及び支出の規制違反)第2~9号
・248条(寄附の制限違反)
・249条の2 (公職の候補者等の寄附の制限違反)第3~5項, 7項
・249条の3 (公職の候補者等の関係会社等の寄附の制限違反)
・249条の4 (公職の候補者等の氏名等を冠した団体の寄附の制限違反)
・249条の5 (後援団体に関する寄附等の制限違反)第1項, 3項
・252条の2 (推薦団体の選挙運動の規制違反)
・252条の3 (政党その他の政治活動を行う団体の政治活動の規制違反)
・253条(選挙人等の偽証罪)
イ 百日裁判の規定の適用除外の有無
   当選人の場合,公職選挙法に規定するすべての選挙(※1)におけるア記載の選挙犯罪につき百日裁判の規定の適用がある。
   これに対し,選挙犯罪を犯した当選人が起訴前に辞職した場合, あるいは,落選者についての選挙犯罪事件は百日裁判としては取り扱う必要はないと解されている。また,起訴後に当選人が辞職した場合には, それ以降百日裁判として処理する必要がないと解されている(※2)。これは,当選人本人の選挙犯罪の場合,百日裁判実施の目的は法251条に定める当選人の当選無効の効果を実効あらしめることにあり,既に当選人が辞職したり,あるいは候補者が落選している場合は,その実施目的が消滅していると考えられることが理由とされている(※3)。
※1 公職選挙法に規定されるすべての選挙とは,衆議院小選挙区選出議員選挙(衆議院小選挙区選挙),同比例代表選出議員選挙(衆議院比例区選挙),同小選挙区。比例代表選出議員並立選挙(衆議院重複立候補選挙),参議院選挙区選出議員選挙(参議院選挙区選挙),同比例代表選出議員選挙(参議院比例区選挙),地方公共団体の議会の議員及び長の選挙である。
※2 この場合も,当該審級限りにおいて,百日裁判の処理に関する調査票を作成する取扱いがなされている。
※3 百日裁判の規定の適用がなくなることにより,裁判が長引き,被告人が裁判中に次期選挙に立候補し, 当選するという事態が生じうることになる。しかし,一部の例外を除き当該選挙犯罪事件につき有罪判決が確定すれば,法252条により被選挙権が停止され,その確定時期が次期選挙の当選告知等により議員又は長の身分を取得する前であれば,法99条により当選失格となり,身分取得後であれば,国会法109条,地方自治法127条, 143条によりその身分を失う。
ウ 選挙犯罪事件の刑が確定した場合の効果
   法251条は, 当選人がアの対象選挙犯罪を犯し, 「刑に処せられたときは,その当選人の当選は,無効とする」として, 当選無効をその効果として規定している。ここでいう 「刑に処せられた」とは,刑が確定したことをいい.執行猶予が付された場合も含まれる。
※ 後述する連座対象者による選挙犯罪の場合とは異なり,当選人自らの選挙犯罪の場合には,立候補制限(同一選挙区の同一選挙における5年間の立候補の制限)は科せられない。これは,当選人の選挙犯罪について刑力職定すれば,法252条の規定によって,当選人は選挙権及び被選挙権を5年の期間停止(ただし,情状により停止免除,あるいは期間減縮となる場合がある。)され,事実上立候補制限と同様の効果が発生するからであろうと説明されている。
(2) 法251条の2第1項各号に掲げる総括主宰者,出納責任者,地域主宰者,候補者等の親族,候補者等の秘書の選挙犯罪
ア 意義
(ア) 総括主宰者(法251条の2第1項1号)
   特定の候補者を当選させる目的で, その選挙運動に関する諸般の事務を事実上総括指揮し,実質において選挙運動の中心的勢力を形成した者である。いわゆる選挙事務長,選挙参謀等と呼ばれているものがこれに当たることが多いと思われるが,総括主宰者は届出制ではないので,その者が総括主宰者に当たるかどうかは,現実に行われた選挙運動の実情に即して実質的に判断きれなければならない(最判昭43.4.3刑集22巻4号167頁参照)。
   なお,上記最高裁判決は, ここでいう選挙運動とは,当該候補者が正式の立候補届出又は推薦届出により候補者としての地位を有するにいたってから以後に行われたものを指称すると解するのが相当であるとしている。
(イ) 出納責任者(同2号)
   公職選挙法上,出納責任者とは,候補者によって選任された選挙運動に関する収入及び支出の責任者とされ, この者の氏名等は,選挙管理委員会に届け出なければならないものときれている(法180条)。出納責任者は,候補者によって選任される者であるから候補者の立候補届出前又は推薦届出前の段階では存在しない。
   また,本号では候補者又は届出のあった出納責任者と意思を通じて選挙運動費用の法定限度額の2分の1以上に相当する額を支出した者も連座対象者とされている。これは,届出のあった形式上の出納責任者の影に居て,選挙費用の収支に関する実権を握り,現実の収支をした事実上の出納責任者についても罰則(第16章)の関係では,出納責任者と同様に処罰する場合がある(法221条3項3号等参照)ことを受けたものである。
(ウ) 地域主宰者(同3号)
   3以内に分けられた選挙区(選挙区がないときは,選挙の行われる区域)の地域のうち1又は2の地域における選挙運動を主宰すべき者,すなわち,分けられた地域のうちの1又は2の地域内の全地域について,その候補者のための選挙運動に関する支配権を有すべき者として,候補者又は総括主宰者から定められ,当該地域における選挙運動を主宰した者をいう。
   「3以内」とは選挙区が2又は3に分けられていれば,原則として分けられた地域の広狭は問わない。
   「候補者又は総括主宰者から定められた」とは,文書による任命や委嘱という要式行為を必要とする趣旨ではない。口頭での依頼を受けて応諾した場合はもちろん,その者が候補者又は総括主宰者と意思を通じて, これと密接に連絡を取りつつ,動いているような客観的な事実があれば,地域主宰者に該当するとされている。
(エ) 候補者等の親族(同4号)
   候補者又は候補者になろうとする者(以下後者を「立候補予定者」といい,両者あわせて「候補者等」という。)の父母,配偶者,子又は兄弟姉妹で,候補者等,総括主宰者又は地域主宰者と意思を通じて選挙運動をした者をいう。養親子関係はここにいう親族に当たるが, 内縁関係は当たらない。また,姻族は含まれない。
   「意思を通じて」とは,選挙運動をすることについて意思を通じるという意味で,買収等の個々の選挙犯罪を行うことについてまで意思を通じる必要はない。また,明示の意思の疎通に限らず,黙示の意思の疎通も含まれる。
※ 法251条の2第1項4号の親族及び後述する5号の秘書は, _候補者が立候補する前の段階から生じている身分であり立候補予定者のための選挙運動に関する選挙犯罪も当然に想定されているから,法は, これらも連座制の適用犯罪(百日裁判の対象)に含めている。
   なお,後述する組織的選挙運動管理者等についても,立候補予定者のための選挙運動に関する選挙犯罪が連座制の適用犯罪(百日裁判の対象)とされている点については,親族らと同様である。
(オ) 候補者等の秘書(同5号)
   秘書(候補者等に使用される者で, 当該候補者等の政治活動を補佐する者)で,候補者等,総括主宰者又は地域主宰者と意思を通じて選挙運動をした者をいう。
   秘書に当たるかどうかは,その実態から判断すべき事項であり, 当該人と候補者等の間に雇用関係が存在している必要はない。例えば,政党職員の身分であっても,実質的に候補者等の意思を受けて行動していればこれに当たることになる。ただし,「補佐」するとあることから,単なる事務上の手足としての助力では足りず,一定程度の裁量をもって事務を遂行すること,あるいは, スタッフ的な助言をすることが必要になると解されている。
   なお, 当該候補者等の承諾又は容認のもとに候補者等の秘書という名称又はこれに類似する名称を使用する者については,連座制の適用につき秘書と推定される旨の規定がある(法251条の2第2項)。
イ 百日裁判の対象となる選挙犯罪の種類
   以下の選挙犯罪が百日裁判の対象となる。
・ 221条(買収及び利害誘導罪)
・ 222条(多数人買収及び多数人利害誘導罪)
・ 223条(公職の候補者及び当選人に対する買収及び利害誘導罪)
・ 223条の2 (新聞紙, 雑誌の不法利用罪)
   なお,出納責任者((事実上の出納責任者を除く) については, 247条(選挙費用の法定額違反) も百日裁判の対象となる。
※ 総括主宰者,出納責任者,地域主宰者は,法221条ないし223条の2の選挙犯罪については,その身分があることにより刑が加重されるいわゆる加重的身分となっている(法221条3項,222条3項, 223条3項, 223条の2第2項)。
ウ 百日裁判の規定の適用除外の有無
(ア) 衆議院比例区選挙における選挙犯罪については,百日裁判の規定の適用がない。
   衆議院比例区選挙については,法251条の2第5項に,連座制が適用されない旨の除外規定がある。比例区選挙は,政党選挙であり,選挙人は,候補者個人ではなく,政党に投票し,政党の獲得した議席数に従って,当選人が決まる。このような選挙では, 仮にある政党の選挙事務長(総括主宰者であるとする。)が買収罪を犯した場合, それがどの名簿登載者の当選に寄与したのか明確ではない。ここに,連座制を適用すると,考え方によっては, 当該政党が届出する衆議院名簿登載者すべてについて当選無効等の効果を及ぼさねばならないことにもなるが, これではあまりに選挙人の意思を不当に歪める結果となり,著しく妥当性を欠くと考えられることがその理由とされている。
   ところで,参議院比例区選挙については,従前は衆議院と同様に連座制が適用されず,同選挙における選挙犯罪も百日裁判の規定が適用されていなかったが,平成12年11月29日公布の同年法律第130号による公職選挙法の改正により,投票の方式が候補者の氏名と政党等の名称のいずれを記載してもよいことになった。そのため,連座制を適用すべき候補者の特定が可能となり,参議院比例区選挙が連座制の適用対象選挙に加えられ,その選挙犯罪は,百日裁判で行われることになった。
(イ)  当選人自身による選挙犯罪の場合と異なり,候補者が落選し,又は当選後に辞職した場合であっても,前記切に記載された選挙における選挙犯罪は,百日裁判として処理される。これは,法251条の2第1項各号の連座対象者の選挙犯罪にかかる連座制は,その効果として当選無効のみならず,立候補制限の効果もあるから,候補者が落選又は辞職した場合であっても,百日裁判を実施して,立候補制限の効果を早期に確定させ, 当該候補者の次期選挙における立候補,当選を防ぐ必要があることが理由とされている。
エ 選挙犯罪事件の刑が確定した場合の効果
   法251条の2第1項各号の連座対象者が所定の選挙犯罪を犯し,刑に処せられたとき(※1)には,連座訴訟(※2)の結果等を待って,①当該候補者等の当選無効,②同人の今後5年間の同一選挙区における同一選挙の立候補制限(※3 以下単に「立候補制限」という)の連座制の効果が発生する(法251条の2第1項)。
   さらに,衆議院重複立候補選挙において, 当該候補者等が小選挙区で落選したものの,比例区で当選し,かつ小選挙区選挙でその連座対象者が選挙犯罪を犯し刑に処せられた場合には, 当該候補者等につき,小選挙区選挙での立候補制限の効果が発生するほか,③比例区選挙の当選も無効となるという特別効(波及効※4)が発生する
(法251条の2第1項後段)。
※1 「刑に処せられた」とは,当選人の選挙犯罪の場合と同様,刑が確定した場合を指し,執行猶予付の判決が確定した場合も含む。総括主宰者,出納責任者及び地域主宰者については「罰金以上の刑」が確定した場合が,親族及び秘書については「禁鍜以上の刑」が確定した場合が,それぞれ連座制の効果の発生要件とされている。
※2 連座訴訟と免責
(ア) 連座訴訟とは,連座対象者が選挙犯罪を犯しその者につき有罪判決が確定した場合に, 当該候補者等に連座制の効果を発生させるために行われる行政事件訴訟である(法210条,211条)。候補者等は,連座訴訟の中で連座身分の不存在や免責事由を主張して連座制の効果の発生を争うことができる。
(イ) 免責
   法251条の2第1項各号の連座対象者の選挙犯罪が「おとり」又は「寝返り」によって行われた場合には,連座制の効果の一部を生じさせないと規定されている(同条第4項)。
   「おとり」とは,当該候補者等に対し,当選無効又は立候補制限の効果を生じさせることを目的として,他の候補者等の陣営と意思を通じて,当該候補者等の連座対象者を誘導し又はこれを挑発して,選挙犯罪を行わせることを指し, 「寝返り」とは, 当該候補者等に対し,当選無効又は立候補制限の効果を生じさせることを目的として,当該候補者等の連座対象者斌他の候補者等の陣営と意思を通じて,選挙犯罪を行うことを指す。
   連座制の効果のうち免責が認められるのは,当該候補者等に対する立候補制限の効果及び衆議院重複立候補選挙の場合における比例区選挙の当選を無効とする効果(波及効)についてのみであって, 当該候補者等の当該選挙の当選無効については免責されない。これは,法251条の2第1項各号の連座対象者の選挙犯罪によって当該候補者等が当選無効となるのは, このような選挙において主要な地位を占める者が買収罪等の悪質な選挙犯罪を犯した場合,その選挙全体が客観的には不公正な方法で行われたとの推認が成り立ちうるからであるところ, その制度目的に照らすと,たとえ「おとり」などの当該候補者等に帰責できない事由があっても,それらの者により買収等が行われた以上,同様の推認が成り立ち得るから当選無効の効果を発生させるべきであると考えられたことによるとされている。
※3 立候補制限の効力は,平成6年の公職選挙法の一部改正の際に盛り込まれたものである。それまでも連座制による当選無効の制度はあったが,裁判が遅延すると,任期満了等により当選無効は空振りになることが起こり得ること,及び連座対象者による選挙犯罪の場合252条に基づく被選挙権の停止の効力は,あくまで連座対象者自身について生じ,当該候補者等には事後の立候補に何らの制限も課せられていなかったことから,連座制の効果としての当選無効の制度の実効性を確保することを主な目的として,連座制の効力に,立候補制限の効力が付加されたとされている。
※4 波及効は,小選挙区選挙において行われた選挙犯罪の効果が,別選挙だからという理由で比例区選挙には及ばず,当該候補者が比例区選挙の当選人として議員等の地位にあり続けるという不都合を是正すべく,平成6年の改正の際に採り入れられた制度である。小選挙区での当選無効を補完するためのものとされており,比例区選挙についての立候補制限の効果までは含まれていない。
(3) 組織的選挙運動管理者等(法251条の3第1項)の選挙犯罪
ア 意義
   組織的選挙運動管理者等とは,候補者等と意思を通じて組織により行われる選挙運動において,
(ア) 選挙運動の計画の立案若しくは調整を行う者
(イ) 選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督を行う者
(ウ) その他選挙運動の管理を行う者
である(ただし,総括主宰者,出納責任者,地域主宰者を除く)。
   「組織」とは,特定の候補者等を当選させる目的をもって,複数の人が,役割を分担し,相互の力を利用し合い,協力し合って活動する実態をもった人の集合体及びその連合体をいうと解されており,例えば,政党,政党の支部,政党の青年部・婦人部,候補者等の後援会,系列の地方議員の後援会,協力支援関係にある首長の後援会,地元事務所,選挙事務所,政治支援団体,選挙支持母体等がこれに当たるほか,本来選挙活動以外の目的で存在する会社,労働組合,宗教団体,業界団体,青年団,同窓会,町内会等も,特定の候補者等を当選させる目的をもって,役割を分担し,協力し合って選挙運動を行う場合には,「組織」に当たると解されている。
   選挙運動が候補者等と意思を通じて組織として行われることが要件とされているが, その組織の総括的立場にある者と候補者等との間に選挙運動を行うことについての意思の連絡が認められれば足り,候補者等と組織的選挙運動管理者等との間には, そのような意思の連絡は不要ときれている。
イ 百日裁判の対象となる選挙犯罪の種類
   法251条の3第1項に規定されており,前記の法251条の2第1項各号の連座対象者と犯罪の種類は同様である(ただし,法247条の出納責任者による選挙費用の法定額違反は対象外となる。)。
ウ 百日裁判の規定の適用除外の有無
   法251条の2第1項各号の連座対象者の場合と同様である。
(ア) 衆議院比例区選挙における選挙犯罪については,百日裁判の規定の適用がない(法251条の3第3項参照)。
(イ) 候補者等が落選し,又は当選後に辞職した場合であっても百日裁判の規定が適用される。
エ 選挙犯罪事件の刑が確定した場合の効果
   その犯した選挙犯罪につき禁錮以上の刑(執行猶予の言渡しを受けた場合を含む。)が確定した場合に,連座訴訟の結果を待って,①当該候補者等の当選無効,②同人に対する立候補制限の効果が生じ(法251条の3第1項前段),③衆議院重複立候補選挙については,小選挙区選挙で連座制が適用された場合に比例区選挙の当選無効の効果(波及効)が生じる(同項後段)。
※ 免責
   組織的選挙運動管理者等に関しても,当該選挙犯罪が「おとり」又は「寝返り」によって行われた場合には候補者等は免責される旨の規定が設けられている(法251条の3第2項1号, 2号)。また,候補者等がその組織的選挙運動管理者等が選挙犯罪を犯すことを防止するための「相当の注意を怠らなかった」場合も免責の適用があると規定されている(法251条の3第2項3号)。
   組織的選挙運動管理者等にかかる連座制は,平成6年の公職選挙法の一部改正の際に,候補者等に対して選挙浄化に関する厳しい責任を負わせ,候補者等の自らの手で徹底的な選挙浄化を行わせることにより腐敗選挙の一掃を図ることを目的として導入された制度であり,それまでの連座制と異なる新しい類型であるとされているが, その目的との関連から,候補者等が選挙浄化に向けて相当な注意を怠らなかったときや,当該選挙犯罪が「おとり」, 「寝返り」によって行われたような場合には,連座制を適用させる必要はないと考えられたことによるものと思われる。
   なお,免責の効果については,法251条の2第1項各号の連座対象者の選挙犯罪の場合と異なり,組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪に関して免責が認められた場合には,連座制の効果のすべて,すなわち,立候補制限の効果と衆議院重複立候補選挙の場合の波及効の効果のみならず,候補者等の当該選挙の当選無効の効果についても発生しないと規定されている(法251条の3第2項)。
(4) 公務員等(法251条の4第1項各号)の選挙犯罪
ア 意義
   本条の連座対象者は,以前,国又は地方公共団体の公務員特定独立行政法人の役員又は職員及び公団等の役職員等(国会議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の職にある者を除く。)であった者が, その職を離れた日以後3年以内に行われた衆議院又は参議院議員選挙(国政選挙)のうち最初に立候補した選挙で当選した場合(※)に
① その当選人と, 同人が離職する前3年間に就いていた職の後任者,直系の上司又は部下の関係にあり, その当選人から当該選挙に関し,直接指示又は要請を受けた者
② その当選人と, 同人が離職する前3年間に就いていた職の直系の上司又は部下の関係にあり,①の者からその当選人の当該選挙に関し,指示又は要請を受けた者
③ その当選人と,同人が離職する前3年間に就いていた職と同種であり,かつ,その処理に関しこれと関係がある事務に従事する地方公共団体の公務員,特定独立行政法人の役員又は職員及び公団等の役職員等で, 当選人又は①及び②の者から当該選挙に関し,指示又は要請を受けた者
   である。
※ 離職後3年以内に2度の国政選挙に立候補して, 2度目に当選した場合は,本条の対象には含まれないが,国政選挙への立候補が初めてであれば,すでに国政選挙以外の選挙に立候補している場合であっても本条の対象となる。
イ 百日裁判の対象となる選挙犯罪の種類
法251条の4第1項に規定されており,前記組織的選挙運動管理者等で掲げた犯罪のほか,以下の選挙犯罪も百日裁判の対象となる。
・225条(選挙の自由妨害罪)
・226条(職権濫用による選挙の自由妨害罪)
・239条(事前運動,教育者の地位利用,戸別訪問等の制限違反) 1項1号, 3号,4号
・239条の2 (公務員等の選挙運動等の制限違反)
ウ 百日裁判の規定の適用除外の有無
(ア) 国政選挙における選挙犯罪のみが百日裁判の対象と.なるが,政党選挙である衆議院比例区選挙における選挙犯罪については,他の連座対象者の場合と同様,百日裁判の規定の適用はない(法251条の4第2項)。
(イ) 候補者が落選した場合を含まないことは条文から明らかであるが,連座制の効果が当選無効のみであることからすれば,当選人による選挙犯罪の場合と同様,辞職した場合には当該事件につき百日裁判として処理する必要はないと解される。
エ 選挙犯罪の刑力蠅定した場合の効果
   その犯した選挙犯罪につき罰金以上の刑(執行猶予の言渡しを受けた場合を含む。)が確定した場合に,連座訴訟の結果を待って,当該候補者の当選無効の効果が生ずる。他の連座対象者の場合と異なり,連座制の効果には立候補制限の効果は含まれておらず,衆議院重複立候補選挙における比例区選挙の当選無効(波及効)の規定もない。免責の規定も存在しない。

   別紙1「百日裁判対象範囲表」,別紙2「衆議院小選挙区・比例代表選出議員並立選挙における百日裁判対象範囲表」,別紙3「選挙犯罪の刑が確定した場合の効果と免責の有無及び免責事由」参照。


第2 組織的選挙運動管理者
1 連座制
・ 平成17年版犯罪白書の「2 連座制の適用状況」には以下の記載があります。
 連座制とは,選挙において,候補者本人以外の者による選挙違反行為を理由として,当選無効や立候補制限という効果を生じさせる制度をいう。公職選挙法は,昭和25年施行当時から連座制を導入しており,その後,27年,29年,37年,50年,56年及び平成6年に,いずれも連座制を強化する法改正が行われた。
 特に,平成6年における公職選挙法の改正は,[1]総括主宰者,地域主宰者,候補者の親族に加えて,新たに「秘書」及び「組織的選挙運動管理者等」を連座対象者に追加するなど,連座制の適用範囲・要件を拡張・緩和するとともに,[2]効果の面でも,新たに「5年間の立候補制限」を導入するなど,連座制を大幅に強化するものであった。
 当選無効及び立候補制限という連座制適用の効果は,一定の場合を除き,検察官が候補者等を被告として提起する行政訴訟を経て発生する。
2 裁判例
(1) 組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪による公職の候補者等であった者の当選無効及び立候補の禁止について定めた公職選挙法251条の3は憲法13条,14条,15条1項,31条,32条,43条1項及び93条2項に違反しません(最高裁平成9年3月13日判決及び最高裁平成9年7月15日判決)。
(2) 最高裁平成9年3月13日判決の裁判要旨は,「会社の代表取締役乙が、公職の候補者甲を当選させる目的の選挙運動を会社を挙げて行おうと企図し、従業員の朝礼及び下請業者との会食において甲にあいさつをさせ、投票及び投票の取りまとめを依頼するなどの選挙運動をする計画を会社の幹部らに表明した上、これを了承した右幹部らのうち丙及び丁に各人の役割等の概括的な指示をし、丙及び丁は、他の幹部や関係従業員に指示するなどして、朝礼及び会食の手配と設営、後援者名簿用紙の配布等の個々の選挙運動を実行させ、要請に応じた甲の出席した朝礼及び会食の席上、乙が会社として甲を応援する趣旨のあいさつをし、甲自らも同社の従業員又は下請業者らの応援を求める旨のあいさつをしたなど判示の事実関係の下においては、乙、丙及び丁は、公職選挙法二五一条の三第一項に規定する組織的選挙運動管理者等に当たる。」というものです。
(3) 仙台高裁平成7年10月9日判決の裁判要旨は,「公職選挙法二五一条の三第二項三号の「(買収等の罪に該当する)行為を行うことを防止するため相当の注意を怠らなかったとき」とは、組織的選挙運動管理者等が買収等の罪に該当する行為をしょうとしても容易にこれをなすことができないだけの選挙組織上の仕組を作り、維持すること、すなわち、右目的を達成するに足りる組織内の人的配置をして、同管理者等に役割・権限が過度に集中しないように留意し、選挙資金の管理・出納が適正明確に行われるよう十分に心がけるなどしていたことが認められる場合をいい、事務所内に買収等を禁ずるポスターを貼ったり、機会あるごとに選挙違反を犯さないよう訓示していたというだけでは、これに当たらない。」というものです。

第3 関連記事その他
1 刑事事件の処理について定める公職選挙法253条の2は以下のとおりです。
① 当選人に係るこの章に掲げる罪(第二百三十五条の六、第二百三十六条の二、第二百四十五条、第二百四十六条第二号から第九号まで、第二百四十八条、第二百四十九条の二第三項から第五項まで及び第七項、第二百四十九条の三、第二百四十九条の四、第二百四十九条の五第一項及び第三項、第二百五十二条の二、第二百五十二条の三並びに第二百五十三条の罪を除く。)、第二百五十一条の二第一項各号に掲げる者若しくは第二百五十一条の三第一項に規定する組織的選挙運動管理者等に係る第二百二十一条、第二百二十二条、第二百二十三条若しくは第二百二十三条の二の罪、出納責任者に係る第二百四十七条の罪又は第二百五十一条の四第一項各号に掲げる者に係る第二百二十一条から第二百二十三条の二まで、第二百二十五条、第二百二十六条、第二百三十九条第一項第一号、第三号若しくは第四号若しくは第二百三十九条の二の罪に関する刑事事件については、訴訟の判決は、事件を受理した日から百日以内にこれをするように努めなければならない。
② 前項の訴訟については、裁判長は、第一回の公判期日前に、審理に必要と見込まれる公判期日を、次に定めるところにより、一括して定めなければならない。
一 第一回の公判期日は、事件を受理した日から、第一審にあつては三十日以内、控訴審にあつては五十日以内の日を定めること。
二 第二回以降の公判期日は、第一回の公判期日の翌日から起算して七日を経過するごとに、その七日の期間ごとに一回以上となるように定めること。
③ 第一項の訴訟については、裁判所は、特別の事情がある場合のほかは、他の訴訟の順序にかかわらず速やかにその裁判をしなければならない。
2(1) 選挙ドットコム「知らなかったでは済まされない「運動員買収」を徹底解説!|選挙プランナーによる必勝講座【選挙ノウハウ】」に以下の記載があります。
    買収の対象は有権者だけでなく、選挙運動者(選挙運動を行う人)も含まれます。公職選挙法ではごく一部の例外を除き、選挙運動を行う人に対しての報酬の支払いや食事の提供を禁止しています。選挙運動を手伝う人は原則としてボランティアでなければならないのです。選挙運動のお礼に食事をご馳走したり日当を支払ったりすることは、買収と判断されますのでご注意ください。ボランティアという認識にも注意が必要です。
例えば、経営者の友人に応援を依頼し、社員を無料で派遣してもらうとします。その社員が選挙運動を手伝っていた期間の給料が選挙運動の報酬と認められる場合には運動買収になります。何らかの利益の供与が発生していれば買収とみなされる可能性があるのです。この場合は社員が休暇を取得するか、就業時間外に選挙運動を手伝うのであれば直ちに違反にはなりません。

(2) 経営者の友人Xが組織的選挙運動管理者に当たる場合においてXが選挙違反の罪で禁錮以上の刑(執行猶予を含む。)に処せられた場合,連座制に基づき,候補者についても当選無効及び立候補制限の効果が発生することとなります。
3 Wikipediaの「売春汚職事件」には以下の記載があります。
   立松記者逮捕事件(山中注:昭和32年10月24日,東京高検が立松和博 読売新聞社会部記者を名誉毀損容疑で逮捕した事件)の影響で、公安検察の首領・岸本(山中注:岸本義広東京高検検事長)は事実上失脚し、次期検事総長争いに敗れた。岸本は、馬場派(山中注:馬場義続法務事務次官を中心とする特捜検察派)への復讐を図るべく、1960年(昭和35年)11月に第29回衆議院議員総選挙に自民党公認候補として大阪5区から出馬し当選、法務大臣を目指す。
   報復を恐れた馬場は、これを迎え撃つ形で大阪地検特捜部に選挙違反に対する徹底的な捜査を命じ、戸別訪問等の軽微な公職選挙法違反を犯した末端運動員をも逮捕した末、遂には芋蔓式に岸本本人まで逮捕させた。この結果、岸本は議員辞職を余儀なくされ、失意の中で一審有罪判決の控訴中に1965年(昭和40年)に静養先で死亡した。
4 以下の通達を掲載しています。
・ 公職選挙法違反被告事件の処理について(昭和27年12月15日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 公職選挙法第二五三条の二関係事件の審理促進について(昭和28年5月13日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 選挙法違反事件のうち受理,結果通知及び判決書謄本の送付を要する事件に関する取扱について(昭和29年3月22日付の最高裁判所訟廷部長事務取扱の通達)
・ 公職選挙法第二五三条の二関係事件特に国会議員その他の当選人が被告人である事件の審理促進について(昭和30年4月23日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 公職選挙法第二五三条の二に該当する事件の記録の取扱について(昭和30年4月23日付の最高裁判所訟廷部長事務取扱通達)
・ 公職選挙法第二五三条の二関係事件の審理促進について(昭和33年7月18日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 公職選挙法第二五三条の二関係事件の審理促進について(昭和34年7月28日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 公職選挙法第二五三条の二関係事件の審理計画に関する試案について(昭和36年3月31日付の最高裁判所刑事局長通知)
・ 公職選挙法第二五三条の二関係事件の審理の促進について(昭和42年12月15日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 衆議院議員又は参議院議員の資格に影響する裁判が確定した場合における衆議院議長又は参議院議長に対する通知について(平成5年10月18日付の最高裁判所事務総長の通達)
・ 公職選挙法第253条の2関係事件に関する法曹三者の合意について(平成6年3月18日付の最高裁判所刑事局長通知)
・ 公職選挙法第254条の2第1項に基づく通知書のひな型について(平成7年1月12日付の最高裁判所刑事局長の通知)
4 以下の記事も参照して下さい。
・ 選挙違反者にとっての平成時代の恩赦
・ 政策担当秘書関係の文書
→ 公職選挙法違反事件の統計報告等を掲載しています。

新63期の華井俊樹裁判官に対する平成25年4月10日付の罷免判決

   平成25年4月12日付の官報(第6025号8頁ないし11頁)の「裁判官弾劾裁判所 終局裁判」で公示された,新63期の華井俊樹裁判官に対する平成25年4月10日付の罷免判決は以下のとおりです(着色,太字等の加工は加えています。)。
   弁護人の主張において華井俊樹裁判官に有利な事情が一通り主張されていると思いますが,すべて排斥されました。
   
平成24年(訴)第1号 罷免訴追事件
判決
本 籍  岐阜県(以下,本HPでは記載省略)
住 居  大阪府枚方市(以下,本HPでは記載省略)
大阪地方裁判所判事補
華井俊樹
昭和59年9月26日生
主文
被訴追者を罷免する。
理由
第1 認定した事実
1 被訴追者の経歴
   被訴追者は、平成23年1月16日、判事補に任命され、同日付けで大阪地方裁判所判事補に補せられ、今日に至っている者である。
2 罷免事由に当たる被訴追者の行為
   被訴追者は、大阪地方裁判所判事補として勤務していた平成24年8月29日午前8時30分頃、大阪府寝屋川市早子町16番11号所在の京阪電気鉄道株式会社京阪本線(以下「京阪本線」という。)寝屋川市駅から同市萱島本町198番1号所在の同線萱島駅までの間を走行中の電車内において、乗客のAに対し、録画状態にした携帯電話機を右手に持って同女の背後からそのスカートの下に差し入れ、同スカート内の下着を動画撮影し、もって、人を著しくしゅう恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような方法で、公共の乗物における衣服等で覆われている人の下着を撮影したものである。
第2 証拠の標目
(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける裁判官訴追委員会請求証拠の番号を示す。)
全部の事実について
1 被訴追者の当公判廷における供述
2 「被審査裁判官華井俊樹の事情聴取書」と題する書面(乙4)
第1の1の事実について
1 被訴追者の司法警察員に対する供述調書写し(乙1)
2 履歴書写し(乙5)
第1の2の事実について
1 被訴追者の検察官に対する供述調書写し(乙3)及び司法警察員に対する供述調書写し(乙2)
2 菅昭裕の司法警察員に対する供述調書写し(甲2)、Aの司法警察員に対する供述調書写し(甲5)
3 現行犯人逮捕手続書(乙)写し(甲1)、「犯行日時場所の特定について」と題する書面写し(甲3)、「逮捕者、被害者による被害状況等の再現について」と題する書面写し(甲4)、電話聴取報告書写し(甲6、7)、「携帯電話機の領置経過について」と題する書面写し(甲8)、「被疑者華井俊樹が盗撮した画像の写真撮影について」と題する書面写し(甲9)「被疑者華井俊樹による犯行状況の再現について」と題する書面写し(甲11)
4 起訴状等写し(甲12)、略式命令写し(甲13)、証明書(甲14)
第3 法律上の判断
1 裁判官弾劾法第2条第2号該当性について
(1) 前提となる事実
   関係各証拠によれば、前記第1の2で認定した事実のほか、以下のような事実が認められる。
ア 本件行為に至る経緯等
   被訴追者は、平成23年1月に大阪地方裁判所に裁判官として勤務するようになり、通勤で京阪本線を利用するうちに、満員電車の中で近くにいる女性の下着を盗撮してみたいと思うようになり、平成23年の春頃から盗撮行為をするようになった。盗撮方法としては、写真だとシャッター音がするので、事前に動画撮影状態にしておいた携帯電話機をポケット等に忍ばせておき、満員電車の中で撮影の機会を狙い、人目につかないように、スカート丈の短い女性の背後から数秒間携帯電話機をかざして撮影するというものであった。その後、被訴追者は、平成23年10月に結婚したこともあり、その前後半年程度は盗撮行為を中断していたが、平成24年の4月に刑事部から民事部へ異動してから再び盗撮を行い始め、いずれ盗撮行為が発覚すれば取り返しのつかないことになると理解しながらも、これをやめることができず、同年5月から6月にかけては週に1回程度の頻度で繰り返すようになり、本件行為に至るまでに20回程度の同様の盗撮を行った。
イ 本件行為の状況
   被訴追者は、平成24年8月29日午前8時頃、出勤のため家を出て最寄駅の京阪本線香里園駅のホームで電車を待っていたところ、そのホーム上で電車を待っているスカートをはいた本件Aを発見し、今日はこのAを盗撮しようと思い、そのままAが立っている列の後ろに並んだ。その時いつものように盗撮の事前準備として携帯電話機の動画撮影を開始し、ズボンの右ポケットに忍ばせておいた。続いて、電車の扉が開いてAが電車に乗り込んだので、被訴追者もその後について乗ったが、その時車内は、満員といえる状態ではなく、盗撮行為をするには人目につくと思ったため、すぐには盗撮を開始せず、持ってきていた小説を#から取り出し、左手で持ち読み始めた。その後、電車が次の寝屋川市駅に停車し、車内が混雑してきた頃を見計らって盗撮を開始することにし、電車が次の萱島駅に到着するまでの間に左手で小説を開いたままの状態で、やや膝を折り、身体を前かがみにして、右手をAのスカートの下に伸ばして盗撮を行った。その際、スカートの中に携帯電話機を差し入れたのはほんの数秒間であったが、撮影中はレンズの横に付いた照明が白色に点灯するので、その光が漏れないように人差し指で押さえ、数秒後、再び手を元の位置に戻し、また盗撮する機会を狙っていた。このような経緯で、本件被訴追者は、前記第1の2記載の事実の行為に及んだものである。
ウ 刑事事件の経緯
   被訴追者は、本件行為について、電車が萱島駅に到着した時、同じ電車内にいた男性に、大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下「迷惑防止条例」という。)違反の罪で現行犯逮捕され、平成24年8月30日に処分保留で釈放されたが、同年9月10日、大阪区検察庁が大阪簡易裁判所に対し、略式命令を請求し、同日、同裁判所は、被訴追者に対し、求刑どおりの罰金50万円の略式命令を発令し、同月25日、同命令は確定した。
(2) 「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」の意義
   次に、裁判官弾劾法第2条第2号に規定する「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」の意義について検討する。
   裁判とは、対等な私人間の社会関係上の紛争の解決や公権力を有する国家と国民との間の紛争を解決すること等を目的とする国家の権能であり、その基盤には一般国民の裁判に対する信頼を確保する必要があることは言うまでもない。
   日本国憲法は、三権分立を憲法上の大原則とすると共に、司法権の行使が兎角、行政権等の国家権力の干渉を受けやすいという人類共通の歴史的体験に鑑み、第76条第1、2項において、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」と規定して司法権の独立を謳い、その第3項において「すべて裁判官は、その良心に従ひ、独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」として裁判官の職務行使の独立性を明文化し、司法権の独立を保障する制度を設けている。
   さらに一歩進めて日本国憲法第78条は、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。」として裁判官の身分を厚く保障している。
   このように憲法上、裁判官の身分が厚く保障されている趣旨は、言うまでもなく、民主主義社会における人権保障の最後の砦としての司法権、ひいては、その職責を担う裁判官の国民に対する重い責任の現れであると同時に、裁判官という立場にある者は常に国民からの厚い尊敬と信頼を得ていなければならないという根拠でもある。近年の司法制度改革により制度に変更があったとしてもこの理念に変わるところはなく、裁判官に対する国民からの尊敬と信頼が揺らぐことはないと言うべきである。むしろ、裁判員制度の導入から3年を経て、国民が司法に参加することにより、裁判の進め方やその内容に国民の視点、感覚が反映されていくことになる結果、裁判全体に対する国民の理解が深まり、司法がより身近なものとしてその信頼も一層高まることが期待されている現状を踏まえると、今まで以上に国民から信頼される裁判所及び裁判官が必要とされているともいえよう。
   このため、裁判権を行使する裁判官は、単に事実認定や法律判断に関する高度な素養だけでなく、人格的にも、一般国民の尊敬と信頼を集めるに足りる品位を兼備しなければならないと言うべきであって、裁判官という地位には、もともと裁判官に望まれる品位を辱める行為をしてはならないという倫理規範が内在していると解すべきである。これは、既に述べたとおり、日本国憲法第76条第3項が「すべて裁判官は、その良心に従ひ」独立してその職権を行う旨を規定し、裁判官としての良心の保持を前提としていること、裁判所法第49条が懲戒事由として「品位を辱める行状があったとき」を挙げていることなどにも現れている。
   したがって、「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」とは、裁判官の特定の行為がその地位に内在する倫理的規範に背き、国民の尊敬と信頼に対する背反行為に該当すると評価される場合を言うと解すべきである。そして、その判断にあたっては、当該行為と裁判官という特殊な地位との関連性、当該行為を行うに至った経緯や当該行為が社会に及ぼす影響、裁判所又は裁判官制度の理念とその現状、国民の価値観や意識の動向等諸般の要素を総合考慮して、健全な社会常識に照らし、大多数の国民にとって納得できる妥当な結論を導かなければならない。
(3) 本件行為の評価
   以上を前提に、被訴追者の本件行為が「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に該当するかどうかについて検討する。
   本件行為は、電車内で女性のスカートの中を密かに撮影するという悪質卑劣な行為であり、女性の人権を著しく軽視するばかりか、迷惑防止条例の保護法益である「市民等の平穏な生活の保持」を害するという点で女性のみならず、通勤又は通学あるいは日常生活において電車を利用する全ての人に不安を与える性質の重大な犯罪であり、その社会的影響も少なくない。
   また、当該行為を行うに至った動機も、初めは「女性の下着を見てみたい。」という気持ちからこのような行為に及び、盗撮に成功した画像を後で見て楽しんでいたが、盗撮行為を続けているうちにこんなことを続けていては盗撮行為が発覚し、取り返しのつかないことになると理解しながらも、どうしてもやめることができない状態になっていたというように、自己の欲求を満たしたいという身勝手かつ一方的なものであり、被訴追者本人も認めているとおり、仮に仕事上のストレスがあったとしてもそれは社会人であれば誰もが乗り越えていかなければならない宿命であって、それを盗撮行為によって晴らすことは言語道断である。
   その行為態様も、あらかじめ駅のホームで盗撮の対象とする女性を見つけ、周囲から分からないようにするために撮影時のシャッター音がする写真機能ではなく、動画機能を利用し、事前にスイッチを入れてポケットの中に隠し持ち、かつ撮影時には携帯電話機のフラッシュ部分に指をあてて発覚を予防するなど、用意周到に準備されたものであり、明確な故意があるといえ、悪質である。
   他方、本件被害者の女性には、何の落ち度もなく、通勤途中の平穏な日常生活を送っていた中で突然、犯罪に巻き込まれ、直後の捜査に時間を割かれただけでなく、たまたま本件犯罪行為の被疑者が裁判官という特殊な職業にあったことから、広く報道され興味の対象とされることになり、被害者の名前は出ていないとしても、相当な精神的苦痛を強いられていること、それ故に本件犯行直後から一貫して被訴追者と示談等に応じず、厳しい処罰感情があることが認められる。特に被訴追者は、裁判官に任官直後の平成23年春頃からこのような犯罪行為に手を染め、一時中断していた時期はあったものの、本件行為が発覚するまでの間に既に同様の手口による盗撮行為を少なくとも20回程度行ったことを当公判廷においても認めている。すなわち、本件行為が発覚するまでの約1年半という長期の間に常習的に盗撮行為が繰り返され、少なくとも20人の女性の人権が侵害されている事実も忘れてはならない。
   これは、人を裁く立場、人権意識をしっかり持つことが不可欠とされている裁判官として、あるまじき行為であることは言うまでもない。しかも、本件は、前述のとおり、裁判員制度の導入から3年を経て、国民が司法に参加し、裁判の進め方やその内容に国民の視点、感覚が反映されていくことにより、裁判全体に対する国民の理解が深まり、司法がより身近なものとしてその信頼も一層高まることが期待されている中で起こった現職裁判官による犯罪である上、被訴追者は裁判員裁判を担当し、死刑判決を宣告するという重大な判断もしているのであるから、その職責の重さを自覚していれば、仮に当時、盗撮行為を自らの意思で制御できない状況に陥っていたとしても、家族や友人を始め、職場の先輩やカウンセラー等の専門家に相談することによって、このような卑劣な行為をやめることができた機会はいくらでもあったのに、そのような努力をせずに超えてはいけない一線を超えてしまったことに対する行為の違法性及び非難の程度は極めて高いと言える。
   そうすると、被訴追者の本件行為は、上記諸事情を考慮するだけでも、社会人として当然備えていなければならない倫理観が明らかに欠如している非行行為であると認められる。
   さらに、近時、スマートフォンを始めとする電子機器の急速な発展により、盗撮の方法も複雑かつ巧妙化し、このような犯罪が日常化しているという社会的現象もある今、仮に本件行為を不罷免とすれば裁判官でさえ盗撮をしても免職にならないのだからという誤った認識を与えかねない。そういう社会的問題があることも加味して、このような卑劣な犯罪行為に対しては、毅然とした態度で臨まなければならない。
   以上によれば、被訴追者の本件行為は、一般国民の尊敬と信頼を集めるに足りる品位を備えるべき裁判官としてあるまじき行為であり、被訴追者には、およそ裁判官として有するべき人権意識が欠如していると言わざるを得ず、裁判官の地位に内在する倫理規範に背き、常に国民から高い尊敬と信頼を受けるにふさわしい品位を保持すべき義務に違反していると認められるので、国民が裁判官に寄せる尊敬と信頼に対する背反行為に該当すると言うべきである。
   したがって、被訴追者の本件行為は、裁判官弾劾法第2条第2号の「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に該当する。
第4 弁護人らの主張に対する判断
1 本件行為の評価について
   これに対し、弁護人らは、過去の事件や弁護士に対する懲戒処分と比較して、本件は軽微な事案であり、罷免に値しない旨主張する。
   すなわち、第1に本件行為は条例違反に該当する行為であり、刑事罰の中でも軽微な部類に属する犯罪行為であること、第2に過去の弾劾裁判で罷免された事例(平成13年(訴)第1号罷免訴追事件、平成20年(訴)第1号罷免訴追事件)がそれぞれ経験豊かな現職裁判官による犯罪であり社会的に大きく報道され、懲役刑の判決が下されたこと、第3に過去に本件と同じ迷惑防止条例違反を犯した裁判官が直接女性と接触する痴漢行為をしたにもかかわらず、訴追されなかったこと、第4に同種犯罪行為を行った弁護士に対する弁護士会の懲戒処分と比較して、罷免という処分は過度に重い旨主張する。
   そこで検討すると、第1の主張については、条例違反といえども、条例は、憲法第94条に基づき地方公共団体が制定する自治立法であり、前述の「市民等の平穏な生活の保持」という保護法益も決して他の法律と比較して軽視されるべき性質のものではない。その中でも本件盗撮行為の6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という法定刑は、刑法の公然わいせつ罪やストーカー規制法に匹敵する罰則であることから、条例違反であるからというだけで、軽微な犯罪と即断することはできない。
   第2の主張については、本件行為は、弁護人らの主張する過去の2事例と比較し、正式裁判が開かれていないことから、事前に報道機関による過度の取材報道行為はなされていないともいえるが、裁判官が現行犯逮捕されたということもあり、各種マスコミが捜査段階から始まり、大阪高等裁判所による最高裁判所への報告、最高裁判所による訴追請求、裁判官訴追委員会による訴追決定までの経緯を注視していたことは当公判廷において取り調べた証拠(甲15・被訴追者訊問)からも明らかである。よって、これをもって当該行為が社会に及ぼす影響が少ないので軽微な事案であるとは到底いえない。また裁判官という職にある以上、経験の多少にかかわらず一人の責任ある専門家として、国民を裁く立場にあるという点には寸分の変わりもなく、国民がその裁判官に寄せる期待や信頼というものに差異が生じると考えるべきではない。
   第3に、直接女性と接触する痴漢行為に比べ、間接的な破廉恥行為である盗撮行為とでは、行為の違法性または女性に対する人権侵害の程度が異なるとの主張については、直接であろうと間接であろうと女性の立場からすれば、破廉恥行為をされたことによる不快感や不安感等の精神的影響は、一過性のものではなく、心に傷が深く残るということ、盗撮行為は特に盗撮した画像記録が残り、拡散される可能性があるという点において人権侵害の程度が大きいことに対する配慮に欠けており、到底受け入れられる理由とはいえない。加えて、指摘にかかる元判事の痴漢行為の事案は、個別具体的な内容が異なり、単純に本件との軽重を論じるのは妥当ではない。
   第4の弁護士会の懲戒処分との比較については、弁護士会の懲戒処分は、弁護士自治の原則に基づく弁護士会の中での自浄作用に過ぎず、同じ法曹といえども、憲法上の厚い身分保障を受け、国民の信頼に基づいて職務を行うことが必要不可欠な裁判官に対する弾劾裁判とは性質を異にするから、同種犯罪行為に対する弁護士会の懲戒処分の結果が当裁判所の判断に影響を及ぼすものではない。
   よって、この点に関する弁護人らの主張には合理的理由がない。
2 情状について
   また弁護人らは「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に該当するか否かの判断にあたっては、被訴追者の反省の程度や行為後の行動、平素の人格や人望等のいわゆる本件行為とは独立した情状についても考慮すべきである旨主張する。
   すなわち、弁護人らは、第1に被訴追者は、被害回復及び社会的信用の回復に努めていること、第2に被訴追者の具体的職務・地位、勤務状況、平素の人格等から罷免事由は認められないこと、第3に被訴追者が真摯に反省していること、第4に被訴追者を支援する者が多数存在すること、第5に被訴追者が既に十分な制裁を受けていることから、罷免判決という新たな制裁を加える必要のないこと等を述べ、被訴追者が既に受け、罷免によって被る不利益の重大性からすれば、罷免によらずとも、免官の手続によっても、司法に対する国民の信頼は十分回復できる旨を主張しているので、以下その主張の当否について検討する。
   この点、関係各証拠によれば、被訴追者は、逮捕直後から素直に事実を認め、その後の捜査機関における取調べや裁判所での事情聴取にも誠実に応じていること、弁護人及び検察官を通じて、本件被害者に対して謝罪及び被害弁償を速やかに申し入れたこと、日本司法支援センターに対して贖罪寄付を行っていること、大きな罪を犯してしまったことについて、裁判所関係者等に対する責任を感じ、事件後速やかに免官願を提出し、かつ事件後から現在に至るまで報酬及び賞与を返還していること、仮に退職金が支給されても、受領しない意思であることが認められる。このような事情は、自分が犯してしまった過去の大きな過ちに対して行為後に回復することができる最大限の努力であると評価できる。これは、被訴追者が犯してしまった過去の行為に対し内省を深めていることの一つの現れといえる。
   また、司法全体に対する信頼を失墜させてしまったことを深く後悔し、迷惑をかけた職場の上司や家族等に対して手紙を書いている。その内容及び当公判廷での被訴追者の陳述からすると、決して現実から逃避せずに真摯に自己に向き合っている姿勢が認められる。
   さらに、被訴追者は、法曹になって社会に貢献したいという強い志をもって日夜勉学に励み、司法試験合格後も後輩の指導に携わったこと、家族や先輩からの陳述書によれば、常に周囲に対する気配りをして、信頼されていたとの記載があること、総勢67名もの弁護人が選任されたこと、その他多数の嘆願書が寄せられたことも認められる。
   そして、弁護人らが主張するように仮に法曹資格を今回失わなかったとしても、少なくとも今後数年間は、弁護士会が弁護士登録を認めない可能性が極めて高く、事実上法曹界復帰は困難と予測されることや法曹以外の職業に就く際にも、同種の行為をした他の者よりも厳しい批判にさらされ、社会復帰するには極めて高い障壁があることは想像に難くない。加えて、本件では、衆議院の解散等、被訴追者の事情とは全く関係のない社会情勢により、被訴追者が事実上職を断たれ、生活の糧となるべき収入源を失ってから約半年間にも渡る長い月日が経過することとなったが、そのような想定外の苦境にも決して屈することなく、その間、ひたすら自らを鼓舞し、前途多難な今後の人生について、読書等をしながら思索し、何とか活路を見いだそうとしている点は特筆すべき事情といえよう。
   しかしながら、先に述べたとおり、本件行為は、女性の性的羞恥心を著しく害する悪質かつ卑劣な行為であり、一般国民の尊敬と信頼を集めるに足りる品位を備えるべき裁判官として、あるまじき行為であるとともに、被訴追者は、長期間、多数回にわたり同様の盗撮行為を繰り返しており、裁判官として有するべき人権意識、特に、女性の人権を尊重しようとする意識が欠如していると言わざるを得ず、その社会的影響も大きいことに照らせば、前述のような被訴追者に酌むべき事情を最大限に考慮したとしても、本件行為が強く非難されるべき性質の犯罪であり、幾星霜を経て多くの裁判官が築き上げてきた司法全体に対する国民の尊敬と信頼を大きく失墜させたという判断を覆すに足りる事情があるとは認められない。
   したがって、弁護人らが主張する諸事情は本件行為に関する上記判断を左右するものではない。
第5 結論
   よって、当裁判所は、裁判官弾劾法第2条第2号を適用して被訴追者を罷免することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官訴追委員会委員長 鳩山邦夫、同委員 三日月大造、同 今井雅人、同 谷博之、同 三原朝彦、同 椎名毅、同 荒木清寛 私選弁護人 木村雅一(主任)、同 田中宏岳、同 伊藤海大、同 井上彰、同 水津正臣、同 丸山秀平 各出席)
平成 25 年4月 10 日
裁判官弾劾裁判所
裁判長裁判員   谷川 秀善
裁判員   船田  元
裁判員   小川 敏夫
裁判員   中谷  元
裁判員   原田 義昭
裁判員   古本伸一郎
裁判員   西根 由佳
裁判員   漆原 良夫
裁判員   津村 啓介
裁判員   藤田 幸久
裁判員   関口 昌一
裁判員   藤井 基之
裁判員   白浜 一良
裁判員   水野 賢一