裁判官の年収及び退職手当(推定計算)


目次
1 総論
1の2 裁判官・検察官の給与月額表
2 裁判官の初任給調整手当
3 裁判官の昇給
4 裁判官昇給候補者名簿の大部分は不開示情報であること
5 簡易裁判所判事としての給料を決める方法は不開示情報であること
6 裁判官の早期退職
7 裁判官の報酬等に関する規則及び通達,並びに関連資料
8 国家公務員退職手当法の改正関係資料
9 退職所得に関するメモ書き
10 退職手当と否認対象行為
11 関連記事その他


1 総論 
(1) 裁判官の年収及び退職手当に関して,以下のデータを掲載しています。ボーナス込みで税引き前の金額です(元データは「裁判官の号別在職状況」です。)。
・ 令和 2年7月1日時点
① 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)の総括表
② 地域手当20%の場合
③ 地域手当16%の場合
④ 地域手当15%の場合
⑤ 地域手当12%の場合
⑥ 地域手当10%の場合
⑦ 地域手当 6%の場合
⑧ 地域手当 3%の場合
⑨ 地域手当 0%の場合
・ 令和 元年7月1日時点
① 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)の総括表
② 地域手当20%の場合
③ 地域手当16%の場合
④ 地域手当15%の場合
⑤ 地域手当12%の場合
⑥ 地域手当10%の場合
 地域手当 6%の場合
⑧ 地域手当 3%の場合
⑨ 地域手当 0%の場合
イ 令和3年以降につき,総括表の更新予定は未定です。
(2) 裁判官の報酬の支給日は原則として毎月18日ですものの,18日が土日である場合,その直前の金曜日になります(令和2年3月16日最高裁判所規則第5号による改正後の,裁判官の報酬等に関する規則(平成29年3月17日最高裁判所規則第1号)1条の2第1項)。
(3) 預金保険機構(預金保険法に基づく認可法人)及び日本司法支援センター(総合法律支援法に基づく法人。愛称は「法テラス」)の職員は国家公務員ではありませんが,国家公務員法106条の2第3項・裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の退職管理に関する規則2条に基づく退職手当通算法人の使用人に該当します。
   そのため,裁判官としての退職手当を計算する場合,預金保険機構又は日本司法支援センターの職員であった期間も含まれることとなります。
(4)ア 人事院HPの「国家公務員の退職手当制度の概要」によれば,平成18年度ベースでいえば,判事1号棒と同じ給料をもらっている事務次官のモデル退職手当額は7594万円でした。
イ 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には以下の記載があります。
   憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。

1-2 裁判官・検察官の給与月額表
(1) 最高裁判所が作成した裁判官・検察官の給与月額表を以下のとおり掲載しています。
令和 6年1月17日現在
令和 5年1月 1日現在
令和 4年4月13日現在
令和 3年1月 1日現在
令和 2年1月 1日現在
平成31年4月 1日現在
平成30年1月 1日現在
(2) 裁判官の初任給調整手当,扶養手当,地域手当,広域異動手当,住居手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手当,特地勤務手当,裁判官特別勤務手当,期末手当,勤勉手当及び寒冷地手当は,「裁判官の報酬以外の給与に関する規則」で定められています。


2 裁判官の初任給調整手当
(1) 30期の菊池洋一法務省大臣官房司法法制部長は,平成19年11月6日の衆議院法務委員会において以下のとおり答弁しています。
 初任給調整手当についてのお尋ねでございますけれども、これは、司法修習生の修習を終えた者の中から判事補、検事を採用するということが困難な状況になったことはございます。要するに、委員御指摘のとおり、弁護士さんの中で給料が高い方がいらっしゃるということが背景にあるんだろうと思います。
 そこで、判事補と検事の給与面での待遇を改善して、裁判官、検察官への任官希望者を増加させるという目的で、昭和四十六年四月に初任給調整手当という制度を設けたところでございます。その後、弁護士の給与と初任の判事補、検事の給与との格差が大きくなりましたので、日本弁護士連合会にお願いをいたしまして、弁護士さんの給与の実態調査をいたしまして、その結果を踏まえて、昭和六十一年と平成元年に初任給調整手当を増額したところでございます。
 そして、その増額の結果、ここ数年の任官者を見てみますと、毎年、司法修習生の中から、判事補については百十名前後、それから検事については八十名程度の任官者を得ることができておりまして、裁判官、検察官にふさわしい適材を確保することができているというふうに現時点では考えております。これは、初任給調整手当が任官者を確保するという効果を果たしているというふうに考えております。
 ただ、今後情勢がどうなるかわかりませんので、今後の任官者の状況等を見守っていくとともに、その支給額の改定を検討する際には、必要に応じて、また日弁連にお願いをいたしまして、弁護士さんの給与水準といったようなものを調査して、その結果を踏まえて対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
(2) 裁判官の初任給調整手当は現在,裁判官の報酬以外の給与に関する規則(平成29年3月17日最高裁判所規則第1号)2条で定められていますところ,別表第一によればその金額は以下のとおりであって,検察官の初任給調整手当に関する準則(昭和46年4月1日付の法務大臣訓令)記載の金額と同じです。
判事補 5号の場合,1万9000円
判事補 6号の場合,3万 900円
判事補 7号の場合,4万5100円
判事補 8号の場合,5万1100円
判事補 9号の場合,7万    円
判事補10号の場合,7万5100円
判事補11号の場合,8万3900円
判事補12号の場合,8万7800円


3 裁判官の昇給
(1)ア 最高裁HPにある,平成14年7月16日付の「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会報告書」「第2 裁判官の人事評価の現状と裁判官人事の概況」には,「任官後,判事4号まで(法曹資格取得後約20年間)は,長期病休等の特別な事情がない限り,昇給ペースに差を設けていない。」と書いてあります。
イ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成30年11月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
   裁判官の昇給の運用に当たりましては、裁判官に任官いたしました後、一定期間は、約二十年の間でございますが、同期がおおむね同時期に昇給する運用を行っているところでございます。
   その後は、それぞれの裁判官の経験年数のほか、ポストや勤務状況等を考慮いたしまして報酬を決定しているところでございます。
(2) 平成30年9月30日に依願退官した35期の元裁判官である弁護士森脇淳一HP「裁判官の身分保障について(2)」(平成30年12月31日付)には,以下の記載があります。
   「実際的」にも、私自身、記憶は定かでないが(捨ててはいないので実家に送った荷物をひっくり返せば、最高裁判所からの俸給辞令が出てくるとは思うが)、たしか、上野支部に着任した年であるから、多分、世間で言われているように任官18年目に判事4号俸を頂くようになってから、任官約35年半後に退官するまでずっと4号俸のままであったが、その給与額は、一番多かった時期で、月額額面90万6000円だったから(ご承知のように、裁判官の俸給額もいったん減額され、私が退官した時点では81万8000円。注1)、経営責任や、部下の不祥事について責任を負う必要がある管理職でもない(注2)、単なる「サラリーマン」としては破格の高給取りといえるであろう。
(3) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)87頁には以下の記載があります。
   裁判官の生活が世間一般とは異なった環境に置かれていることは否定できない。一般の企業人のように取引先と懇談するような機会は通常ないし、周囲の目があるから酒を飲むにも場所や相手は限られる。住まいは裁判官宿舎で、盆暮れの付け届けはないし、あったら送り返すのが夫人の仕事である。ともすると昇給や転勤といった話題ばかりがとびかう、一種の閉鎖社会が育つ可能性がある。
(4) 平成30年7月1日時点の裁判官の年収及び退職手当(推定計算)の総括表によれば,37期までが判事1号棒であり,38期ないし40期が判事2号棒であり,41期ないし45期が判事3号棒であり,46期ないし51期が判事4号棒です。


4 裁判官昇給候補者名簿の大部分は不開示情報であること
   平成28年度(最情)答申第13号(平成28年6月3日答申)には以下の記載があります(ナンバリングを置き換えて,改行を追加しています。)。
① 本件対象文書(山中注:平成27年9月16日の最高裁判所裁判官会議の議事録に添付された平成27年10月1日付けの裁判官昇給候補者名簿で,最高裁判所事務総局人事局が作成したものであり,表紙のほか3枚からなるもの)を見分したところ,本件不開示部分には,具体的な昇給候補者の氏名,期別,昇給号報,官職名等が記載されていることが認められるところ,これらの情報は,昇給候補者ごとに個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものであると認められるから,これらの情報は,法5条1号に規定する不開示情報に相当する情報であり,同号ただし書イ,ロ及びハのいずれにも相当せず,取扱要綱記第3の2による部分開示も相当でない。
②  また,本件対象文書を見分したところ,本件不開示部分に記載されている情報には,具体的に昇給する者の期別や昇給号報,その人数等の情報が含まれていることが認められるところ,そのような情報は,最高裁判所事務総長が説明するとおり,人事事務担当者等の一部の関係職員以外には知られることのない性質のものであると推測される。
 そうすると,これらが公になると,当該情報を知った者から不当な働き掛けがされたり,裁判官の職務遂行に無用の影響を与えたりすることがあり,今後の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとする最高裁判所事務総長の説明も,十分首肯できるものである。
 したがって,これらの情報については,法5条6号ニに規定する不開示情報に相当すると認められる。
苦情申出人は,様々な主張をするが,いずれも上記判断を左右するものではない。


5 簡易裁判所判事としての給料を決める方法は不開示情報であること
(1) 平成30年12月12日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には以下の記載があります。
ア 本件対象文書に記載されている情報は,簡易裁判所判事に任命された際の報酬の決定事務に関与するごく一部の職員にしか知られることのない極めて機密性の高い性質のものであるところ,文書の標題も含め, これを公にすると, この情報を知った者に無用な憶測を生じさせたり,職員の適正かつ円滑な職務遂行に好ましくない影響が及ぶなどして,裁判所の人事事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,全体として行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)第5条第6号二に定める不開示情報に相当する。
   さらに,本件対象文書には,簡易裁判所判事に任命された際の報酬の決定に関する情報が記載されており, これを明らかにすると,特定の者の報酬に関する情報が明らかになる可能性があり,同情報は法第5条第1号に定める不開示情報である個人識別情報に相当する。
イ よって,本件対象文書を不開示とした原判断は相当である。
(2) 本件対象文書は,「裁判所書記官又は裁判所事務官から簡易裁判所判事に任用された場合, どのような基準で簡易裁判所判事としての給料を決めることになっているかが分かる文書(最新版)」です。


6 裁判官の早期退職
(1) 以下の裁判官については定期的に,国家公務員退職手当法8条の2第1項1号に基づく早期退職希望者の募集が実施されています。
① 下級裁判所の裁判官(簡易裁判所判事を除く。)で,基準日現在の年齢が50歳以上65歳未満の者
② 簡易裁判所判事で,基準日現在の年齢が55歳以上70歳未満の者
(2) 早期退職に応募しようとする裁判官は,早期退職希望者の募集に係る応募申請書(国家公務員退職手当法の規定による早期退職希望者の募集及び認定の制度に係る書面の様式等を定める内閣官房令(平成25年総務省令第58号)別記様式第一)に必要事項を記入の上,募集の期間内に,地家裁所長又は高裁事務局長に提出します。
(3) 46期の岡口基一裁判官のように裁判官分限法に基づく懲戒処分(戒告又は1万円以下の過料)を受けたことがある場合,国家公務員法82条の規定による懲戒処分に準ずる処分を受けたこととなるため,早期退職に応募できません(国家公務員退職手当法8条の2第3項4号)。
(4) 早期退職の認定を受けて退職した場合,定年退職と同じ基準で退職手当を支給してもらえます(国家公務員退職手当法5条1項6号)から,35年以上勤務した後に早期退職した場合,定年退職と同じ退職手当をもらえます「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」参照)。
(5) 11年以上勤務した裁判官が,任期の終了に伴う裁判官の配置等の事務の都合により任期終了1年前に依願退官した場合,定年退官に準ずる支給率で退職手当を支給してもらえます(勤続期間25年未満の裁判官につき国家公務員退職手当法4条1項2号・国家公務員退職手当法施行令3条1号,勤続期間25年以上の裁判官につき国家公務員退職手当法5条1項5号・国家公務員退職手当法施行令4条・3条1号)。

7 裁判官の報酬等に関する規則及び通達,並びに関係資料
(1) 規則及び通達
・ 裁判官の報酬以外の給与に関する規則(平成29年3月17日最高裁判所規則第1号)
・ 裁判官の報酬以外の給与に関する規則の運用について(平成29年3月28日付の最高裁判所長官の通達)
・ 裁判官の報酬以外の給与の支給について(平成29年3月28日付の最高裁判所事務総長の通達)
・ 裁判官の報酬等に関する規則の運用について(令和2年11月5日付の最高裁判所長官の通達)
・ 裁判官の報酬以外の給与の支給について(令和2年11月30日付けの最高裁判所事務総長の通達)
(2) 関連資料

・ 裁判官以外の裁判所職員の俸給等の支給に関する規則及び裁判官の報酬以外の給与に関する規則の一部を改正する規則並びに関連する議決(令和2年2月26日付)
・ 裁判官特別勤務手当等について(平成30年1月1日現在)


8 国家公務員退職手当法の改正関係資料
(1) 内閣官房HPの「国家公務員退職手当法等の改正について」には,平成17年以降の改正情報が載っています。
(2) 国家公務員退職手当法の改正関係資料を以下のとおり掲載しています。
・ 平成29年12月15日法律第79号(平成30年1月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案 御説明資料(平成29年9月の内閣人事局の文書)
・ 平成26年11月19日法律第107号(平成27年4月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案 説明資料(平成26年9月の内閣人事局の文書)
・ 平成24年11月26日法律第96号(平成25年1月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法等の一部改正法【解説】(退職手当関係)(平成24年10月16日の総務省人事・恩給局の文書)国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律案(国家公務員共済組合法関係)の逐条解説(平成24年10月の,財務省主計局給与共済課の文書)
・ 平成20年12月26日法律第95号(平成21年4月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案 逐条解説(平成20年10月の総務省人事・恩給局の文書)
・ 平成17年法律11月7日第115号(平成18年4月1日施行)
→ 国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案 逐条解説(平成17年9月の総務省人事・恩給局の文書)


9 退職所得に関するメモ書き
(1)ア 最高裁昭和58年9月9日判決は,以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    退職所得について、所得税の課税上、他の給与所得と異なる優遇措置が講ぜられているのは、一般に、退職手当等の名義で退職を原因として一時に支給される金員は、その内容において、退職者が長期間特定の事業所等において勤務してきたことに対する報償及び右期間中の就労に対する対価の一部分の累積たる性質をもつとともに、その機能において、受給者の退職後の生活を保障し、多くの場合いわゆる老後の生活の糧となるものであつて、他の一般の給与所得と同様に一律に累進税率による課税の対象とし、一時に高額の所得税を課することとしたのでは、公正を欠き、かつ社会政策的にも妥当でない結果を生ずることになることから、かかる結果を避ける趣旨に出たものと解される。
    従業員が退職に際して支給を受ける金員には、普通、退職手当又は退職金と呼ばれているもののほか、種々の名称のものがあるが、それが法にいう退職所得にあたるかどうかについては、その名称にかかわりなく、退職所得の意義について規定した前記法三〇条一項の規定の文理及び右に述べた退職所得に対する優遇課税についての立法趣旨に照らし、これを決するのが相当である。かかる観点から考察すると、ある金員が、右規定にいう「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」にあたるというためには、それが、(1) 退職すなわち勤務関係の終了という事実によつてはじめて給付されること、(2) 従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、(3) 一時金として支払われること、との要件を備えることが必要であり、また、右規定にいう「これらの性質を有する給与」にあたるというためには、それが、形式的には右の各要件のすべてを備えていなくても、実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、右「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであることを必要とすると解すべきである。
イ 所得税基本通達30-1ないし30-15は,所得税法30条の退職所得に関するものです。
ウ 税務署の見解を否定して退職所得に該当すると判断された事例として,国税不服審判所平成23年5月31日裁決があります。
(2)ア 課税退職所得金額は,(退職に基因する源泉徴収前の収入金額-退職所得控除額)×2分の1で計算します(1000円未満切り捨て)。
イ 「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合,課税退職所得金額から①所得税の源泉徴収(5%ないし45%),並びに②6%の市町村民税(東京都の場合,特別区民税)及び③4%の道府県民税(東京都の場合,都民税)の特別徴収をされた(①ないし③につき100円未満切り捨て)だけで課税関係が終了しますから,自分で確定申告をする必要はありません(国税庁HPの「退職金と税」参照)。
ウ 生活や実務に役立つ計算サイト「退職金の税金」を使えば,退職金から退職金手取額の計算ができます。

10 退職手当と否認対象行為
・ 最高裁平成2年7月19日判決は,国家公務員退職手当法に基づく退職手当に関して,以下の判示をしています。
    退職者に対し退職手当が支払われたことにより、退職手当請求債権は消滅し、既に支払われた金員について、債権に対する差押禁止を規定する民事執行法一五二条二項の適用はないから、その後右退職者が破産宣告(現在の破産手続開始決定に相当するもの)を受けたときは、右退職手当相当の金員は破産財団を構成するというべきであり、破産者が右退職手当をもって特定の債権者に対し債務を弁済した後破産宣告を受けた場合に、その金額が退職手当の四分の三の範囲内であっても、その弁済は破産法七二条二号(現在の破産法162条1項1号イ)の否認の対象となり得るものと解するのが相当である。

11 関連記事その他
(1) 酒居会計マネーブログ ~税金・転職・起業・株式投資・ふるさと納税~「年収別 手取り金額 一覧 (年収100万円~年収1億円まで対応)」が載っています。
(2) 民間労働者の場合,就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されます(最高裁平成28年2月19日判決)。
(3) 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には「憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。」と書いてあります。
(4)ア 以下の資料も参照してください。
・ 裁判官の報酬等に関する規則の運用について(令和3年8月19日付の最高裁判所長官の文書)
・ 一般職員に対する期末手当及び勤勉手当の一時差止処分に関する報告及び勤勉手当決定調書の作成等について(令和3年8月19日付の最高裁判所人事局長の文書)
・ 裁判所職員の退職手当の取扱いについて(平成18年3月31日付の最高裁人事局長通達)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 判検事トップの月収と,行政機関の主な特別職の月収との比較
・ 裁判官の号別在職状況
・ 裁判官の昇給
・ 裁判官の給料と他の国家公務員の給料との整合性に関する答弁例
・ 裁判官の兼職
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)
・ 裁判官の退官情報
・ 裁判官の早期退職
・ 50歳以上の裁判官の依願退官
・ 平成18年度以降の,公証人の任命状況
・ 裁判官の「報酬」,検察官の「俸給」及び国家公務員の「給与」の違い
・ 戦前の裁判官の報酬減額の適法性に関する国会答弁
・ 裁判官の報酬減額の合憲性に関する国会答弁

裁判所職員制度の概要-参考資料-
52頁です。


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