裁判官の兼職

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1 最高裁判所は,裁判官が他人の業務に従事する行為に限らず,自ら一定の業務の主体となる行為であっても,裁判所法52条2号の「報酬のあるほかの職務に従事すること」に該当するものとして許可申請の対象となることを前提に,その従事しようとする職務が裁判官としての職務の遂行に支障がないと認められる場合その他裁判所法の精神に反しないと認められる場合に限り,裁判所法52条2号の許可を出しています。

2 以下の文書を掲載しています。
・ 裁判官が他の職務に従事する場合の許可等について(平成3年12月27日付の最高裁判所事務総長通達)
→ 略称は「兼職通達」です。
・ 裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の兼業の許可等について(平成4年6月26日付の最高裁判所事務総長通達)
・ 下級裁判所の裁判官の倫理の保持に関する申合せ(平成12年6月15日付の高等裁判所長官申合せ)
・ 平成29年9月6日付の最高裁判所行政不服審査委員会平成29年度答申第1号(兼職許可申請不許可処分に関する件)
・ 平成29年10月25日付の最高裁判所の裁決書

3 最高裁が平成29年10月に不許可とした男性裁判官によるアパート経営(居室は12室)については,元々採算の合うものではなかったという指摘があります(楽待HP「【実践大家コラム】裁判官のアパート経営をシミュレーション!」参照)。

4 最高裁判所行政不服審査委員会が出した,平成29年度答申第1号(平成29年9月6日答申)「兼職許可申請不許可処分に関する件」には,裁判所法52条2号と3号の関係等に関する一般論として以下の記載があります(ナンバリング及び改行を行っています。)。
1(1) 本件不許可処分の適法性及び妥当性を検討するに当たっては,その前提として,裁判所法52条2号と3号の関係や,これと兼職通達との関係を整理する必要があるので,以下において検討を加えることとする。
   裁判所法52条は,裁判官が在任中することができない行為として,「最高裁判所の許可のある場合を除いて,報酬のある他の職務に従事すること」(同条2号),「商業を営み,その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと」(同条3号)を規定しているところ,処分庁は,裁判官の兼職許可の運用について,「他の職務に従事すること」(同条2号)とは他人の業務に従事する行為には限られず,裁判官が自ら一定の業務の主体となる行為も同号の許可申請の対象となると解した上で,そのように一定の業務の主体となる行為が「商業を営み,その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと」(同条3号)に該当する場合には,同条2号の規定に基づく兼職許可をすることができないという関係にあるものとして解釈運用しているものと認められる(審査庁の説明書面)。
(2)   そこで,このような処分庁の解釈運用につき検討する。
ア   処分庁の上記解釈運用は,裁判官が自ら一定の業務の主体となる行為の全てが直ちに禁止されることにはならず,在任中に行うことが許される業務行為もあり得るものとして,そのような業務行為も裁判所法52条2号が規定する「報酬のある他の職務に従事すること」に含まれ,同号の規定に基づく許可をすることがあり得るというものである。
イ   裁判所法52条2号及び3号の文言を見れば,「他の職務に従事すること」(2号)は他人の業務に従事する行為の意と解し,一方で裁判官が自ら一定の業務の主体となる行為は全て「商業を営み,その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと」(3号)に該当して全面的に禁止されるという解釈も採り得るところではある。
   しかし,このように解した場合には,裁判官が相続等により取得した賃貸不動産や転補により居住できなくなる自宅を維持・管理することを目的とする不動産賃貸などは全面的に禁止となり,あまりに厳しい結果となることが想定されるところである。
   そこで,第2の解釈として,裁判所法52条2号の定める「報酬のある他の職務」が,他人の業務に従事する行為に限られず,裁判官が自ら一定の業務の主体となる行為を含むと解釈することも,文理上許容できないとはいえないものである。このように解する場合には,上記のとおりの裁判官の不動産賃貸などについて,実情に応じて柔軟に対応することが可能となる。
   処分庁の上記解釈運用も,同様の観点から,裁判所法の文理及び趣旨に反しない範囲で,裁判官の一定の経済的活動の必要性にも配慮しようとするものとみることができる。
   つまり,処分庁による許可の処理状況を見ると,裁判官の兼職許可申請(ただし,兼職通達第1の2及び第2に掲げる場合の許可に係る申請を除く。以下同じ。)の件数が年間五十数件程度であり,そのうちのほとんどが,上記のとおりの裁判官による不動産賃貸の例であり,裁判官が自ら一定の業務の主体となる行為を対象とするものであるという実情(審査庁の説明書面(3項),審査庁の提出資料)が認められるところ,処分庁の上記解釈運用はこうした実情に配慮した対応を図るものということができる。
ウ   そうすると,処分庁の上記解釈運用は,一定の合理性があるものとして是認することができ,これを違法又は不当ということはできない。
2(1)   次に,兼職通達は,裁判所法52条2号の規定による許可は,その従事しようとする職務が裁判官としての職務の遂行に支障がないと認められる場合その他裁判所法の精神に反しないと認められる場合に限り行う旨を定めるところ,処分庁は,同条3号に該当するかどうかの判断においても,兼職通達の適用があるものとしているので(審査庁の説明書面),この点について検討を加える。
(2)   裁判所法52条3号の規定は,公務員は全体の奉仕者(憲法15条2項)として常に公共の利益のみを指針として行動しなければならないところ,特に裁判官は,各自独立して各種の争訟事件を審理し,法律を解釈適用して,国家としての判断を示すことをその職務とするものであるから,その職務の性質上,最も公正かつ廉潔であることが求められ,裁判官が私的利益にいざなわれているかのような印象を国民に与える行動があれば,その裁判官による裁判,ひいては裁判制度に対する国民の信頼を失わせることにもなりかねないため,このような事態を生じさせないように,同号が規定する業務を行うことを絶対的に禁止したものと解される。
   同号に該当するかどうかの判断において,従事しようとする職務が裁判官としての職務の遂行に支障がないと認められる場合その他裁判所法の精神に反しないと認められるかどうかを基準とする兼職通達を適用しても,同号が規定する業務を絶対的不許可事由とした法の趣旨を踏まえたものということができるから,同号の該当性の判断において兼職通達を適用することが違法であるとか,不当であるとは認められないものと考えられる。
(3)   なお,審査請求人は,前記のとおり,本件計画の内容を検討するに当たり,人事院規則14-8の規定ないし趣旨に違反しないように配慮したことがうかがわれるが(前記前提となる事実,審査請求書),裁判官には同人事院規則の適用はないことは審査請求人も認めるとおり(審査請求書)であるし,一般職員に比べ裁判官の職務に上記の特性があることからすれば,
   裁判所法52条の規定による許可の判断基準と同人事院規則の判断基準とを同一と解すべき理由も見当たらないものであり,上記判断を左右するものではない。

5 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の兼業・兼職の禁止
・ 司法修習生の兼業の状況

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