黒川弘務元東京高検検事長の賭け麻雀問題について、不祥事の発覚、訓告、辞職及び刑事手続の経緯を整理し、関連する国会答弁・行政資料を掲載する。令和2年当時の発言・資料の記載と、その後の手続の結果を区別して読む必要がある。
賭博罪の一般的な判断は賭け麻雀と賭博罪、退職手当の試算と返納制度は黒川弘務元検事長の退職金で整理している。「テンピンなら適法」という一般的な基準はない。
第1 不祥事発覚から略式命令までの経緯の骨子
(1) 黒川弘務 東京高検検事長は,令和2年5月20日,緊急事態宣言下で賭け麻雀をしていたことが週刊文春によって報道されたため,同月21日に訓告処分を受け,同月22日の閣議で辞職を承認されました。
(2) 黒川弘務 元東京高検検事長は,令和2年7月10日,単純賭博罪について起訴猶予となったものの,同年12月8日付の東京第六検察審査会において「起訴相当」議決が出ました。
(3) 東京地検特捜部は,令和3年3月18日,黒川弘務 元東京高検検事長について東京簡易裁判所に略式請求をした結果,同月25日,罰金20万円の略式命令が出ました。
令和3年4月2日の法務省刑事局の国会答弁資料(黒川弘務 元東京高検検事長の起訴状は提供できないこと)を添付しています。 pic.twitter.com/dCh5XKesbL
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) May 25, 2021
第2 黒川弘務東京高検検事長の引責辞任
(1)ア 黒川弘務東京高検検事長は,令和2年1月31日付の閣議決定により,国家公務員法81条の3第1項に基づき同年8月7日まで勤務を延長することとなりましたところ,その理由は下記のとおりです。
記
東京高等検察庁管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するためには,同高等検察庁検事長黒川弘務の検察官としての豊富な経験・知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が不可欠であり,同人には,当分の間,引き続き同検事長の職務を遂行させる必要がある。
イ 詳細については,「東京高検検事長の勤務延長問題」を参照してください。

(2) 黒川弘務東京高検検事長は,産経新聞の記者2人及び朝日新聞の元検察担当記者と,緊急事態宣言下の令和2年5月1日から翌日及び同月13日,産経新聞の記者の自宅マンションにおいて賭け麻雀をしていたことが同月20日の週刊文春電子版「黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”「接待賭けマージャン」」に報じられるなどした結果,同月21日に辞表を提出し,同月22日の閣議で辞職を承認されました。
(3) 令和2年5月22日発表の法務省の調査結果には以下の記載があります。
黒川検事長が、記者A、記者B及び記者Cとともに、約3年前から、月1、2回程度、前記各事実同様のレート(山中注:いわゆる点ピン(1000点を100円換算とするもの)と呼ばれるレート)で金銭を賭けたマージャンを行っていたことや、記者が帰宅するハイヤーに同乗したことが認められるが、その具体的な日付を特定しての事実の認定には至らなかった。
第3 森まさこ法務大臣の記者会見における説明
(1)ア 森まさこ法務大臣は,令和2年5月22日の記者会見において以下の説明をしています。
① 黒川検事長は,令和2年5月,自ら検察官でありながら,そして,自ら東京高検検事長として,東京高検管内の検察官を含め検察庁職員を指揮監督する立場にありながら,東京都内において,記者らとともに,金銭を賭けた麻雀を行ったものでございます。そして,その行為が行われた時期が,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために,政府による緊急事態宣言が行われ,広く国民の皆様に外出自粛が呼び掛けられた時期であり,かつ,私の下で,法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針を定め,ゴールデンウィークに入る直前に,私から,法務・検察職員において,これらを踏まえた活動をとるように強く指示をしていた時期でございます。
そのような中での黒川検事長の今回の行動は,甚だ不適切であり,強い遺憾の意を覚えるものでございます。一報を聞いた時は,耳を疑いました。国民の皆様に憤りや御不安を与えたこと,検察や行政に対する信頼を損ねたことに対して,法務大臣として,お詫びを申し上げるものでございます。
② これ(山中注:黒川検事長に対する訓告処分)については,法務省内,任命権者であります内閣と様々協議を行いました。その過程でいろいろな意見も出ましたが,最終的には任命権者である内閣において,決定がなされたということでございます。
その際,賭け麻雀における過去の処分の例ですとか,刑法の賭博罪と人事院の規則の賭博についての定義の考え方ですとか,刑法の方は刑事処分が関連してまいりますので,人事院規則の方とは全く同じではないという説明も受けました。その中で刑法の賭博罪についても,立件される程度があるという説明もございました。様々なことを総合考慮した上で,内閣で決定したものを,私が検事総長にこういった処分が相当であるのではないかということを申し上げ,監督者である検事総長から訓告処分にするという知らせを受けたところでございます。
イ 検事長に対する訓告処分は検事総長が行うことになっています(法務省職員の訓告等に関する訓令(平成16年4月9日付の法務大臣訓令)参照)。
(2) 法務省の調査は5月21日に実施されただけと思いますが,菅義偉官房長官は,令和2年5月22日の記者会見において,黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀問題について再調査は不要という認識を示しました(gooニュースの「黒川氏の再調査は不要 菅官房長官、退職金「規定に基づき支給」」参照)。
職員の職責について(令和2年5月21日付の最高検察庁の文書)→黒川弘務東京高検検事長の訓告に関するもの
を添付しています。 pic.twitter.com/40oZAmoYid— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) July 31, 2020
上記は令和2年5月22日の会見時の説明である。その後の同年6月5日・同月30日付政府答弁書は、法務省が訓告相当と判断して検事総長に伝え、検事総長が訓告を決定したと説明している。会見の発言と後の政府答弁を同一の説明として扱わず、訓告処分に関する内閣答弁書を併せて参照されたい。
第4 東京高検のルールブックの記載
品位と誇りを胸に(三訂版)(平成25年9月に東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会が改訂した文書)には以下の記載があります(平成31年3月改訂の五訂版として,品位と誇りを胸に(五訂版)(平成31年3月に東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会が改訂した文書)も掲載しています。)。
(平成25年9月)→東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会.jpg)
(1) 末尾5頁(PDF11頁)の記載(服務規律に関する記載です。)
信用失墜行為の代表的なものは,収賄などの汚職ですが,職務との関連で整理すると次のとおりです。信用失墜行為については,刑事罰の対象となる事案が多く,そのほとんどは刑事罰に加え免職などの懲戒処分を受けることになります。
① 職務に直接関連するもの
業務上横領,職権濫用,運転業務中の交通違反・事故,カラ出張などの不正経理等
② 職務に関連するもの
職務遂行中の暴言,飲食物等の供応の受領,収賄,セクハラ等
③ 職務と関連しないもの
勤務時間外の交通違反・事故,麻雀等の常習賭博,わいせつ行為等の犯罪行為等
(平成25年9月)→東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会-scaled.jpg)
(2) 12頁(PDF18頁)の記載(国家公務員倫理法,同倫理規程に関する記載です。)
※ 以下の者については,「利害関係者に当たらない。」とされていますが,職務の公正さを疑われるような接触は厳に慎むべきであるとされています。
・ 被害者等の参考人
・ 告訴人,告発人又はその代理人
・ 人事訴訟の相手方等,検察官が公益の代表者として行動する場合の関係者及びその代理人
・ 裁判所職員
・ 警察その他の捜査機関や国税局の職員
・ マスコミ関係者
(平成25年9月)→東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会-scaled.jpg)
(3) 13頁(PDF19頁)の記載(国家公務員倫理法,同倫理規程に関する記載です。)
エ 利害関係者から,無償で役務の提供を受けてはならない。
※ 「無償で役務の提供を受ける」とは,ハイヤーによる送迎の提供を受けることなどがこれに該当します。
(中略)
カ 利害関係者から,供応接待(酒食等のもてなし)を受けてはならない。
※ 「酒食等のもてなし」とは,酒食のほか,「ゴルフ,観劇などによるもてなし」も含まれます。
キ 利害関係者と一緒に遊技又はゴルフをしてはならない。
※ 「遊技」としては,麻雀,パチンコ,ポーカーなどが該当します。
また,自分の費用を負担する場合でも,利害関係者と一緒にこれらの遊戯をすることはできません。
(平成25年9月)→東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会-scaled.jpg)
(4) 14頁(PDF20頁)の記載(国家公務員倫理法,同倫理規程に関する記載です。)
相手が利害関係者ではない場合でも,次の行為をすることは禁止されています。
◎ 供応接待を繰り返し受けるなど,社会通念上相当と認められる程度を超えるような行為
◎ つけ回し(飲食物の料金などを,その場に居合わせない者に支払わせる行為)
(中略)
違反行為を組織的に助長したり,真相の解明を妨害する行為を防止するため,次の行為をすることは禁止されています。
(中略)
◎ 部下に,国家公務員倫理法等に違反する行為を行った疑いがある場合に,管理職の立場にある職員がこれを黙認すること。
(5) 15頁(PDF21頁)の記載(国家公務員倫理法,同倫理規程に関する記載です。)
検察庁は社会の非違をただすべき責務を担う役所であり,そこに所属する私たち職員に対する国民の目は,一般の国家公務員に対するそれよりも当然に厳しいものとなることに思いを致せば,たとえ形式的には規制に抵触しないとされる行為であっても,国民に不審を抱かせるおそれのある行為は厳に慎まなければなりません。常に「瓜田に履を納れず」「李下に冠を正さず」の心構えを持って自らの行動を律することが大切です。
(6) 25頁(PDF31頁)の記載(国家公務員倫理法,同倫理規程に関する記載です。)
社会の正義と安全を守る役割を担う検察庁職員が上記のような非違行為事案を発生させれば,検察に対する国民の信頼と期待を大きく損なうばかりでなく,検察業務ひいては公務全体の円滑な運営に支障を来すことは言うまでもありません。
最も大切なのは,検察庁職員は他の公務員以上に高い倫理観を持たなければならないということであり,非違行為事案が発生すれば,個人の資質を断罪されるだけにとどまらず,検察庁全体が社会から厳しく糾弾され,著しく国民の信頼を損なうことになることを常に念頭に置き,自らを厳しく律していく必要があります。
(7) 33頁及び34頁(PDF37頁及び38頁)の記載(懲戒処分に関する記載です。)
最近,公務員の不祥事等に対する国民の目は厳しさを増してきており,懲戒処分についてもマスコミに取り上げられるケースが増えてきています。懲戒処分が組織や家族にどのような被害を与えるか考えてみましょう。
ア 組織
懲戒処分が公表された場合,あの組織は規律が緩んでいる,他にも同じようなことをしている職員がいるのではないかなどの疑念を生じさせるなど,その組織は国民からの信頼を失います。法秩序の維持を使命とする我々検察庁職員の場合は,より厳しい批判を受けることになるでしょう。
組織に対する信頼が一旦失われると,それを回復するには,多数の人の長年の努力を必要とします。
イ 家族
懲戒処分は,家族にも被害を与えることになります。配偶者や子供は,職員の経済上の損失の影響を受けるだけではなく,精神的に重大な被害を受けることもあります。
電車内の盗撮により罰金50万円の略式命令を受けた華井俊樹判事補(新64期)は,健全な社会常識に照らし,大多数の国民にとって納得できる結論が必要ということで,裁判官が行った盗撮であることにかんがみ,平成25年4月10日に罷免されました。https://t.co/CY3jETyOko https://t.co/WjGva3eBKw
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) May 22, 2020
1万円を着服した22歳の巡査が懲戒免職。黒川さんも懲戒免職が妥当では。
小中学生の兄弟が拾った現金、着服容疑の巡査を懲戒免職:朝日新聞デジタル https://t.co/iznrxnnYOA
— 白石草 (@hamemen) May 21, 2020
第5 黒川弘務東京高検検事長に関係する可能性がある懲戒処分の基準
(1) 品位と誇りを胸に(三訂版)(平成25年9月に東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会が改訂した文書)末尾29頁ないし32頁(PDF35頁ないし38頁)によれば,黒川弘務東京高検検事長に関係する可能性がある懲戒処分の基準は以下のとおりです。
① 賭博は減給又は戒告であり,常習賭博は停職です。
② 利害関係者又は利害関係者の負担により,無償で役務の提供を受けることは,免職,停職,減給又は戒告です。
③ 利害関係者から供応接待(飲食物の提供に限る。)を受けることは,減給又は戒告です。
④ 利害関係者から遊技の接待を受けることは,減給又は戒告です。
⑤ 利害関係者に該当しない事業者等から社会通念上相当と認められる程度を超えて供応接待又は財産上の利益の供与を受けることは,減給又は戒告です。
(2)ア 黒川弘務東京高検検事長が受けた訓告は監督上の措置の一種です。
イ 監督上の措置とは,職員の一定の義務違反ないし非違行為について,懲戒処分を科するまでには至らないと認められる場合で,服務の厳正を保持し,又は当該職員の職務の履行に関して改善向上を図るため必要があると認められるときに,指揮監督権限を有する上級の職員が行う措置をいいます(法務省職員の訓告等に関する訓令(平成16年4月9日付の法務大臣訓令)参照)。
ウ 法務省職員の訓告等に関する訓令の運用について(平成16年4月9日付の法務省大臣官房人事課長の依命通達)を掲載しています。
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(3) 衆議院議員鈴木宗男君提出外務省職員による賭博に関する質問に対する答弁書(平成18年12月19日付)には以下の記載があります。
① 刑法(明治四十年法律第四十五号)において、「賭博」とは、偶然の事実によって財物の得喪を争うことをいう。
② 一時の娯楽に供する物を賭けた場合を除き、財物を賭けて麻雀又はいわゆるルーレット・ゲームを行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる。
③ 一般論として申し上げれば、一般職の国家公務員が賭博を行うことは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十九条に規定される信用失墜行為に該当する可能性があるものと考えられ、同条の規定は、外務公務員法(昭和二十七年法律第四十一号)第三条及び第四条第一項の規定により、外務省の在外職員にも適用又は準用される。なお、刑法の賭博罪には国外犯処罰規定がなく、日本国外において賭博を行うことが処罰の対象となるか否かについては、行為地の法令に則して判断されるべきものである。
(4)ア 人事院HPの「通報がきっかけとなって発覚した違反事案の例」には,以下の懲戒事案が掲載されています。
① 「厚生労働省の地方機関の長等幹部職員を含む4人の職員が、許認可、補助金交付等の相手方である団体の職員と、多数回にわたり飲食を共にしながら麻雀をしたもの。」につき,減給1月(俸給の月額の10分の1)、戒告(3人)
② 「厚生労働省の地方支分部局の職員2名が、立入検査・監査又は監察の相手方として利害関係者である事業者と共に、平成17年4月から平成19年3月までの間、月に2回から3回程度、麻雀を行ったもの。」につき,戒告(2人)
イ 人事院HPに「公務員倫理 基本事例集」(国家公務員倫理審査会が作成したもの)が載っています。
ウ 「岡口基一裁判官に対する分限裁判」も参照してください。
自分が関わっていない裁判についてコメント付き紹介ツイートした裁判官が「戒告処分」で、仕事を通じて知り合った人とお小遣い程度の賭けマージャンをした検察官は「訓告処分」。この辺りのバランスについて、日本国民は何を思うのだろうか?
— 木村草太 (@SotaKimura) May 21, 2020
「掛けマージャン」×「懲戒」で過去記事を探ると、17年3月、陸自の青野原駐屯地の自衛官9人が勤務時間外、生活隊舎で掛けマージャンに興じ、黒川氏より重い「懲戒処分」になっている。警務隊はこのうち3人を賭博容疑で書類送検。懲戒処分された31歳の3等陸曹は1度、加わっただけだったという。
— 上川あや 世田谷区議会議員 (@KamikawaAya) May 21, 2020
【黒川氏と同レートで麻雀 摘発】https://t.co/1oX7MjAbe6
岐阜市で賭けマージャン店が警察に摘発され、経営者や客ら6人が書類送検された。1000点100円の「点ピン」と呼ばれるレートで行われていたとみられるという。黒川弘務氏が新聞記者と興じた際のレートと同じ。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) June 18, 2020
だからこそ、検察官には麻雀愛好家が多く、彼らの中には元検事長を賭け麻雀で懲戒に処すべきと主張する者は殆どいない。そんなことをしたら、大部分の検察官を懲戒に処すべき事になり組織が崩壊する。検事総長、林検事長、検察OBの発言を注意深く観察すれば分かる。マスコミもこの事は百も承知。 https://t.co/RmSbPhjyvb
— 北村晴男 (@kitamuraharuo) May 31, 2020
第6 検察の在り方検討会議,及び黒川弘務の略歴
(1)ア 検察の在り方検討会議が平成23年3月31日に発表した「検察の再生に向けて」には以下の記載があります。
前記のような重大な使命・役割(山中注:被疑者・被告人の権利保障と事案の真相解明に努めることにより,えん罪を防止し,真犯人の適切な処罰を実現するという使命・役割)を担う検察官には,他人の非違を糾す者として,一般の公務員以上に高い倫理性,廉潔性が求められている。それにもかかわらず,検察官には,国家公務員としての服務規律のほかに,職務上の行為の基準を明文化した独自の基本規程は存在していない。これは,そうした明文の規律を及ぼさなくても個々の検察官が自らを厳しく律しているとの信頼があったからであるとも考えられる。しかし,今般の事態は,そのような信頼を根本から裏切るものであって,個々の検察官に自らの使命・役割を再認識させ,日々の職務の指針とすることができるようにするため,検察官が遵守するべき基本規程を明文化することが求められるに至っている。
そこで,検察においては,検察官が職務の遂行に当たって従うべき基本規程を明文化し,これを公表することにより,改めて,検察官の使命・役割を内外に明確にするべきである。
イ 平成23年9月28日に開催された検察長官会同において検察の理念が策定され,同月30日,公表されました。
(2)ア 黒川弘務は,法務省大臣官房付(特命担当)として,検察の在り方検討会議(平成22年11月10日初会合)の事務局をしたり,平成28年9月から平成31年1月までの間,法務事務次官(法務省の倫理監督官です。)をしたりしました。
イ 倫理監督官は,その属する行政機関等の職員に対しその職務に係る倫理の保持に関し必要な指導及び助言を行うとともに,国家公務員倫理審査会の指示に従い,当該行政機関等の職員の職務に係る倫理の保持のための体制の整備を行います(国家公務員倫理法39条2項)。
ウ 特定複合観光施設区域整備推進会議(平成29年4月6日初会合)は,平成29年7月31日,「観光先進国の実現に向けて」を副題とする取りまとめを作成し,平成30年12月4日,「主な政令事項に係る基本的な考え方」を副題とする取りまとめを作成しましたところ,いずれの時期についても,黒川弘務が法務事務次官をしていました。
エ 「黒川弘務東京高検検事長の略歴(令和2年1月30日時点)」も参照してください。
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黒川さんの訓告処分は私たち地方行政も困ります。緊急事態宣言下で検察幹部が個人宅とは言え、賭け麻雀を複数回行い、かつ相手は記者。
この賭け麻雀+信用失墜行為でも懲戒処分を受けないのなら、今後私達が職員の信用失墜行為に合議の上で懲戒処分を下しても、不服申し立てをされることに繋がります— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) May 23, 2020
第7 賭博罪の条文と判断の整理
刑法185条・186条の現在の内容、テンピンと訓告の量定の区別、常習性の判断は賭け麻雀と賭博罪――テンピン・一時の娯楽・常習性の判断(AI作成)を参照されたい。以下の裁判例引用は、元記事に掲載していた各事件の補足資料であり、黒川氏についての判決ではない。
第8 賭博罪に関する裁判例
(1) 常習性の認定
ア 最高裁昭和24年1月11日判決(裁判所HP)の裁判要旨
賭博常習性の有無は専ら、各被告人個人の習癖の有無によつて決せられることであるから、本件賭博の共犯者中に賭博開帳罪に該當するものがなく、又同罪によつて處斷されたものがなかつたとしても、それによつて被告人兩名に對する常習賭博罪の成立が阻却される理由は少しも存しない。
イ 最高裁昭和24年2月24日判決(裁判所HP)の裁判要旨
刑法第一八六條第一項に所謂賭博常習者とは、賭博を反覆累行する習癖のあるものをいう立法趣旨であつて、必ずしも賭博を渡世とする博徒の類のみを指すものではない。又かかる習癖のあるものである以上たといそのものが正業を有しているとしてもその一事を以て直ちにこれを賭博常習者でないとはいい得ないのである。
ウ 最高裁昭和25年3月10日判決(裁判所HP)の判示(改行を追加。なお,令和2年5月26日の参議院法務委員会における川原隆司法務省刑事局長の答弁で言及されたもの)
賭博の常習とは犯人に反覆して賭博をする習癖があることをいうのであつて必ずしも賭博の前科のあることを要するものではない、そしてその習癖のあらわれた賭博行為であるか否やは現に行われた賭博の種類、賭金の多寡、賭博の行われた期間、度数、前科の有無等諸般の事情を斟酌して裁判所の判断すべき事項である。
原審は原判決挙示の証拠と判示賭博行為をした事跡によつて被告人等の常習の点を認定しているのであるが右証拠によれば、本件賭博の種類、態容、賭金の額等が判るのみならず被告人等は昭和二三年五、六月の頃本件賭博を数回に亘つて反覆していることが判るのであるから原審がこれらの事実によつて被告人等の本件賭博行為を常習と判断したことは正当で右判断をもつて常識に反するものということはできない。
エ 最高裁昭和25年10月6日(判例秘書)の判決要旨
① 昭和23年3月29日頃、同年6月1日頃及び同月12日頃の3回に亘り「カブ」外一種の賭博を反覆したという事実によつて、賭博の常習性を認定しても、実験則に反しない。
② 昭和19年9月10日賭博罪により罰金刑に処せられておりながら、さらに昭和23年10月14日麻雀賭博をしたことによつて、賭博の常習性を認定しても実験則に反しない。
オ 最高裁大法廷昭和26年8月1日判決(裁判所HP)の裁判要旨
賭博の前科のみによつて賭博の常習性を認定することは必らずしも違法ではなく、また所論の右最終前科と本件賭博との間にたとい四年の歳月を経過していればとて、右前科を賭博常習認定の一資料とすることに何等経験則上の違背も認めることはできない。
黒川前検事長の告発状郵送 弁護士ら「常習賭博罪に当たる」 – 毎日新聞 https://t.co/Ysd5riEpaY
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) May 25, 2020
黒川氏の危うさが次から次にって感じだが、最大の問題は、こんな人物を重用して違法定年延長を閣議決定し、更に法律改正まで企んで大混乱を生じさせた政府にある。
元雀荘店員が証言「多い時は週3回」 黒川前検事長は10年以上前から「賭博常習犯」だった https://t.co/WRFNt21s4N
— 清水 潔 (@NOSUKE0607) May 27, 2020
令和2年5月26日の衆議院法務委員会の国会答弁資料(過去,検察官も含めた法務省の職員について,賭け麻雀を含む賭博行為を理由に,懲戒処分又は監督上の措置を行った事例)を添付しています。 pic.twitter.com/BqcOZM46SL
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) August 6, 2020
(2) 処罰対象となった麻雀のレート
ア 京都地裁平成24年11月5日判決(担当裁判官は57期の宮端謙一)の認定事実
① 判示の「△△」(以下「本件麻雀店」という)は,全国に展開する「□□グループ」に属する麻雀店である。本件麻雀店では,各別に来店するいわゆるフリーの客に,「東南戦」と称する賭麻雀をさせており,1000点を100円として精算する「テンピン」と,1000点を50円として精算する「テンゴ」の2種類のレートを採用していた。
② 本件麻雀店では,上記のとおり,決して低廉とはいえない金銭のやり取りがされる賭麻雀を不特定多数の客にさせ,ゲームごとに相応の代金を徴収し,メンバーが足りない場合には従業員やアルバイト店員に参加させて客に待たせることなく賭麻雀ができるようにし,そのために従業員らに金銭を貸したり,給料支払時に勝ち負けを精算することまでしていたということになる。このような本件麻雀店で行われていた賭博開張図利行為をもって,違法性を欠くということはできない。
③ 弁護人らは,上記のとおりの賭麻雀をもって,低レートであるとか,賭金額が少ない等と主張するが,いずれも独自の主張であって採用することはできない。
また,現在競馬等の公営賭博が盛んに行われているとして,社会が賭博に対して寛容になり,賭博罪の違法性が弱まっているとも主張する。しかしながら,関係法令の規制下にある公営賭博とそれ以外の賭博とは一線を画しているのであり,公営賭博を巡る状況が賭博罪の違法性に影響を与えているとは認められない。また,パチンコに関する主張についても,それが本件行為の違法性に影響を与えるとはいえず,理由がない。
そのほか,弁護人らは,種々の事情を挙げて,違法性に関する主張をするが,いずれも理由がなく採用できない。
ヤクザ事案ですが、賭博場開帳図利罪においてテンピン(1000点100円)でも賭博性を認めた新潟地裁平成23年9月9日付判決。賭博罪の「賭博」と賭博場開帳図利罪の「賭博場」の「賭博」の解釈が違うのか、ヤクザと検事長では「悪性」が違うのか、組事務所と新聞記者の自宅では違いがあるのか、はたして。 pic.twitter.com/dc8KFLOlU2
— 冬弁 (@itbengo4) May 24, 2020
(3) 賭博罪の必要的判示事項
ア 最高裁昭和26年1月25日判決(裁判所HP)の裁判要旨
賭博罪は二人で偶然の事情により勝負を決しこれに財物を賭けることによつて成立するものであり、その相手方が特定の人物であること及びその員数の如きは必ずしも賭博罪成立の要件ではない。されば所論のように被告人等のなした各賭博行為毎にその相手方の員数及びその氏名を明確に判示しなかつたとしても違法はない。
イ 最高裁昭和37年6月26日決定(裁判所HP)の判示
原判決が、一審判決判示第一の事実について、その認定のように、金銭を賭けて麻雀遊技をした以上、勝敗を決するに至らず、また賭金の授受がなされるに至らなかつたとしても、賭博罪の成立に欠けるところはない旨判示したのは正当である。
ウ 最高裁昭和53年12月5日決定(裁判所HP)の判示
常習賭博罪の訴因における常習性については、常習性を示す具体的事実を起訴状に記載する必要はなく、単に「常習として」と記載すれば足りるものと解すべきであるから、これと同趣旨に出た原判断は相当である。
エ 最高裁昭和61年10月28日決定(裁判所HP)の判示事項
多数の賭博遊技機を設置した遊技場の経営者が、不特定多数の遊技客との賭博を反覆継続した事案につき、右遊技場の営業継続期間の全般にわたつて行われた各賭博行為を一個の常習賭博罪と認定する場合には、右遊技場の所在地、営業継続期間、遊技機の種類・台数、賭博の態様を摘示したうえ、「右期間中、常習として、甲ほか不特定多数の賭客を相手とし、多数回にわたり、右遊技機を使用して賭博をした」旨判示した程度であつても、常習賭博罪の罪となるべき事実の具体的摘示として欠けるところはない。
(4) 常習賭博罪の罪数
ア 最高裁昭和26年4月10日判決(裁判所HP)の裁判要旨
常習賭博罪における数個の賭博行為は、包括して単純な一罪を構成する。
(5) 賭博させる場所
ア 東京高裁昭和44年11月5日判決(判例秘書)の判示
賭博開張図利罪は、犯人が利益をえる目的で、自ら主宰者となり、賭博をさせる場所を開設することにより成立し、その場所はとくに賭博をさせる目的で設けられたものであることを必要とせず、その目的とする利益は賭博場開設の対価としての性格を有する限り、寺銭、入場料などその名義のいかんを問わないものであり、また、開張者自身が賭博行為に加わることも必要ではないと解すべきである
(6) 常習賭博罪は不真正身分犯であること
ア 最高裁大法廷昭和26年8月1日判決(裁判所HP)の裁判要旨
刑法第一八六条の常習賭博罪が同第一八五条の単純賭博罪に比し、賭博常習者という身分によつて刑を加重していることは所論のとおりである。そして右加重の理由は賭博を反覆する習癖にあるのであつて、即ち常習者賭博は単純賭博に比しその反社会性が顕著で、犯情が重いとされるからである。そして、賭博常習者というのは、賭博を反覆する習癖、即ち犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法第一四条にいわゆる社会的身分と解することはできない。されば刑法第一八六条の規定をもつて憲法第一四条に違反するものであるとの趣旨は到底これを採用することはできない。
18-00-08 罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員https://t.co/BUg4Yf1ccS
2018年の実績
賭博:総数465件→うち,公判請求1件,略式命令請求129件,起訴猶予253件,嫌疑不十分1件
常習賭博:総数123件→うち,公判請求68件,略式命令請求0件,起訴猶予30件,嫌疑不十分12件 https://t.co/YJ92QVxQeK— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) May 22, 2020
第9 公営賭博及びパチンコの合法性に関する国会答弁
公営競技が法律に基づいて認められる根拠と、風営法の範囲内で行われるパチンコ営業についての説明は異なる。平成14年3月28日及び平成30年6月14日の国会答弁、刑法35条・185条と風営法の関係は公営競技・パチンコと賭博罪―適法性の根拠と国会答弁の射程(AI作成)に整理した。
これらは私的な賭け麻雀の一般的な適法性を示すものではなく、少額なら適法という金額基準でもない。
第10 取材源の秘匿
民事裁判における取材源の証言拒絶と、取材方法そのものの適法性は別の問題である。最高裁平成18年10月3日決定及び西山事件の最高裁昭和53年5月31日決定は取材源の秘匿はどこまで保護されるか―証言拒絶と取材活動の限界(AI作成)を参照されたい。取材源の秘匿の保護は、公務員の守秘義務を解除するものではない。
評議内容の事前報道と取材経過の聴取については愛媛玉串料訴訟最高裁判決の事前報道と漏えい疑惑で整理している。記者との交流の事実から、黒川氏による特定の情報漏えいを認定する趣旨ではない。
第11 東京地検特捜部の取材対応のあり方に関する内閣答弁書
平成22年1月26日付答弁書は、東京地検が報道機関への統一的な対応のため、部長・副部長以外の検察官等への接触を控えるよう依頼していると説明した。同年2月2日付答弁書は、質問に挙げられた捜査予定や供述内容等の取材には対応しないと説明した。
これは当時の政府説明であり、現在の全国一律の取材規則や、現実の全事案で漏えいがなかったことを示すものではない。守秘義務・倫理規程との関係は検察官と報道機関の接触―取材対応・守秘義務・国家公務員倫理(AI作成)に整理した。
第12 黒川弘務元東京高検検事長の退職手当
約5900万円という金額は試算であり、実際の支給額ではない。政府は令和2年6月5日付答弁書で支給額・支給日への回答を差し控えた。計算条件、定年退職を仮定した比較及び返納制度は黒川弘務元検事長の退職金――約5900万円の試算と返納制度(AI作成)に整理した。以下の給与表・国会答弁資料等は、当時の資料として掲載する。
裁判官・検察官の給与月額表(令和2年1月1日現在)
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令和2年5月26日の衆議院法務委員会の国会答弁資料(東京高検検事長が勤続37年で自己都合退職した場合の退職金は約5900万円)を添付しています。 pic.twitter.com/AkCIdwTbw6
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) August 6, 2020
現行第8条第2項第2号の改正(廃止)について(平成20年度の内閣人事局の文書)→懲戒処分を受けた国家公務員の退職手当の調整額の支給制限の廃止
を添付しています。 pic.twitter.com/PsGMqPP6aj— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) July 15, 2020
以下の第13・第14は、公務員の不祥事に関する別事件の補足資料である。本件の時系列・訓告・刑事手続については第1~第5及び上記の専用記事を参照されたい。
第13 補足資料:三井環事件(平成14年4月22日逮捕)に関する国会答弁及び政府見解
三井環元大阪高検公安部長の事件は,本件とは別の事件である。平成14年の逮捕・起訴及び懲戒処分の政府説明,調査活動費に関する国会での指摘と政府見解は,三井環事件に関する国会答弁―逮捕・懲戒処分と調査活動費への政府見解(AI作成)に整理した。
国会で告発の決意と逮捕との関係が質問され,政府が否定する見解を示したことは確認できる。しかし,質問や政府説明を,その因果関係を認定した刑事判決として紹介することはできない。本記事でも,外部資料で裏付けられない人事上の取引や逮捕目的を事実として記載しない。
第14 補足資料:外務省機密費流用事件の判決・会計管理
松尾克俊元要人外国訪問支援室長の事件について,裁判所掲載の東京地裁判決は,宿泊費差額に関する15回の詐欺,合計5億600万円余りの詐取,懲役7年6月を示している。調査報告書の嫌疑額・口座の計算と,判決認定額の違い,量刑,管理体制の問題は,外務省機密費流用事件―松尾克俊事件の判決・認定額・会計管理(AI作成)を参照されたい。
判決言渡し日は平成14年3月12日である。同日付の川口外務大臣コメントは,当日に懲役7年6か月の判決が下されたことを明記している。裁判所掲載PDF末尾の同月29日という日付は,判決言渡し日とは区別する必要がある。
本判決の詐取額は,純粋な私的流用額又は未回収額と同じではない。また,本判決を三井氏の逮捕や黒川氏の問題の原因を示す資料として扱うことはできない。
第15 関連記事
訓告の決定主体・量定に関する政府答弁、検察官の懲戒処分事例、賭け麻雀と賭博罪及び退職金の試算と返納制度を、調べたい論点に応じて参照されたい。以下の別事件の記事は比較資料であり、本件と同一の処分制度・認定事実を前提とするものではない。
・ 検察官の勤務延長をめぐる2020年の法解釈――政府説明と反対意見(AI作成)
・ 昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)
・ 性犯罪を犯した裁判官の一覧
・ 報道されずに幕引きされた高松高裁長官(昭和42年4月28日依願退官,昭和46年9月5日勲二等旭日重光章)の,暴力金融業者からの金品受領