第1 国会同意人事の意味と法的性質
1 国会同意人事という呼称が指すもの
国会同意人事とは,行政機関等の構成員の任命について,各機関の根拠法に基づき,内閣又は主任の大臣が両議院の事前の同意又は事後の承認を求めるものをいう。参議院事務局は,これを「一定の独立性,中立性が求められる機関の構成員の任命について,各機関の根拠法に基づき,内閣が両議院の事前の同意又は事後の承認を求めるもの」と説明している(参議院事務局企画調整室編集発行「立法と調査」2013年7月No.342・107頁)。任命権者の意向だけでは任命することができない仕組みとすることにより,任命権者からの独立性が要求される職について国会が民主的統制を及ぼす点に,制度の中核がある。
本記事は,令和8年8月8日現在で有効な条文を確認した上で,対象となる機関,条文の書き分け,例外任命と事後同意の効果,罷免及び身分保障,国会における審査手続,運用上問題となった事例並びに裁判例における位置付けを整理するものである。内閣が衆参両院の議院運営委員会に実際に提示した人事案の原資料(平成4年分から令和7年分まで)は,衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案に掲載している。
2 憲法上の制度ではなく,法律上の制度であること
憲法典には,国会同意人事についての一般規定が存在しない。憲法が国会の関与を定める人事は,内閣総理大臣の指名(憲法67条1項)と裁判官弾劾裁判所の設置(憲法64条1項)であり,いずれも「両議院の同意を要する任命」ではない。会計検査院についてすら,憲法は「会計検査院の組織及び権限は,法律でこれを定める」(憲法90条2項)と定めるにとどまり,検査官の任命に両議院の同意を要求しているのは会計検査院法4条1項である。東京高等裁判所昭和29年11月9日判決(昭和27年(行ナ)第32号)も,公務員の選定罷免の方式が憲法及び法律によって多様であることを説明する文脈で,「会計検査院の検査官は両議院の同意を経て内閣がこれを任命する(憲法第九十条第二項 会計検査院法第四条第一項)」と摘示している。
国会同意人事が全面的に法律事項であることは,国会でも共有されている。参議院憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会(平成17年2月4日)において,荒井正吾委員は,重要な公務員等の任命について参議院の同意を要するものとする案を「新規の提案」と位置付け,現行憲法上そのような規定はないこと,「憲法上の同意か法上の同意か」という問題があることを述べている。
3 衆議院の優越規定がないこと
法律案(憲法59条2項),予算(憲法60条2項),条約の承認(憲法61条)及び内閣総理大臣の指名(憲法67条2項)については衆議院の優越が定められているのに対し,国会同意人事にはこれに相当する規定がない。したがって,一院が不同意の議決をすれば任命はできず,内閣は人選をやり直さざるを得ない。参議院事務局が「両院が同じ権能を有しているがゆえに,参議院の動きが注目を浴びてきました」と述べるのは,この構造による。同事務局は,第1回国会から平成25年当時までに参議院で不同意となったのは17件32名であり,そのうち1件1名を除くすべてが,参議院において与野党が逆転した平成19年の第168回国会以降のものであるとしている。
第2 対象となる機関
1 現行法令上の対象を機械的に抽出した結果
本記事では,e-Gov法令検索の全法令を対象として「両議院の同意」の語を含む条文を抽出し,改正附則からの引用を除いた上で,該当条文の本文を1件ずつ確認して次の表を作成した。その結果,該当する現行法令は38本であり,対象となる機関は39である。国家公務員法が人事院(人事官)と再就職等監視委員会の2機関に係るため,法律数と機関数は一致しない。
| 機関 | 根拠条文 | 任命権者 |
|---|---|---|
| 人事院(人事官) | 国家公務員法5条1項 | 内閣 |
| 会計検査院(検査官) | 会計検査院法4条1項 | 内閣 |
| 公正取引委員会 | 独占禁止法29条2項 | 内閣総理大臣 |
| 国家公安委員会 | 警察法7条1項 | 内閣総理大臣 |
| 公安審査委員会 | 公安審査委員会設置法5条1項 | 内閣総理大臣 |
| 公害等調整委員会 | 公害等調整委員会設置法7条1項 | 内閣総理大臣 |
| 個人情報保護委員会 | 個人情報保護法134条3項 | 内閣総理大臣 |
| 運輸安全委員会 | 運輸安全委員会設置法8条1項 | 国土交通大臣 |
| 原子力規制委員会 | 原子力規制委員会設置法7条1項 | 内閣総理大臣 |
| 原子力委員会 | 原子力委員会設置法5条1項 | 内閣総理大臣 |
| カジノ管理委員会 | 特定複合観光施設区域整備法217条3項 | 内閣総理大臣 |
| サイバー通信情報監理委員会 | 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律50条3項 | 内閣総理大臣 |
| 再就職等監視委員会 | 国家公務員法106条の8第1項 | 内閣総理大臣 |
| 国家公務員倫理審査会 | 国家公務員倫理法14条1項 | 内閣 |
| 情報公開・個人情報保護審査会 | 情報公開・個人情報保護審査会設置法4条1項 | 内閣総理大臣 |
| 行政不服審査会 | 行政不服審査法69条1項 | 総務大臣 |
| 公益認定等委員会 | 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律35条1項 | 内閣総理大臣 |
| 中央労働委員会(公益委員) | 労働組合法19条の3第2項 | 内閣総理大臣 |
| 中央社会保険医療協議会(公益代表委員) | 社会保険医療協議会法3条6項 | 厚生労働大臣 |
| 社会保険審査会 | 社会保険審査官及び社会保険審査会法22条1項 | 厚生労働大臣 |
| 労働保険審査会 | 労働保険審査官及び労働保険審査会法27条1項 | 厚生労働大臣 |
| 電波監理審議会 | 電波法99条の3第1項 | 総務大臣 |
| 電気通信紛争処理委員会 | 電気通信事業法147条1項 | 総務大臣 |
| 日本放送協会経営委員会 | 放送法31条1項 | 内閣総理大臣 |
| 中央更生保護審査会 | 更生保護法6条1項 | 法務大臣 |
| 運輸審議会 | 国土交通省設置法18条1項 | 国土交通大臣 |
| 土地鑑定委員会 | 地価公示法15条1項 | 国土交通大臣 |
| 公害健康被害補償不服審査会 | 公害健康被害の補償等に関する法律113条1項 | 環境大臣 |
| 日本銀行(総裁・副総裁・審議委員) | 日本銀行法23条1項・2項 | 内閣 |
| 預金保険機構(役員) | 預金保険法26条1項 | 内閣総理大臣 |
| 証券取引等監視委員会 | 金融庁設置法12条1項 | 内閣総理大臣 |
| 公認会計士・監査審査会 | 公認会計士法37条の2第1項 | 内閣総理大臣 |
| 食品安全委員会 | 食品安全基本法29条1項 | 内閣総理大臣 |
| 地方財政審議会 | 総務省設置法12条1項 | 総務大臣 |
| 国地方係争処理委員会 | 地方自治法250条の9第1項 | 総務大臣 |
| 総合科学技術・イノベーション会議(有識者議員) | 内閣府設置法30条1項 | 内閣総理大臣 |
| 衆議院議員選挙区画定審議会 | 衆議院議員選挙区画定審議会設置法6条2項 | 内閣総理大臣 |
| 調達価格等算定委員会 | 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法45条1項 | 経済産業大臣 |
| 国会等移転審議会 | 国会等の移転に関する法律15条2項 | 内閣総理大臣 |
なお,地方自治法251条の自治紛争処理委員及び同法252条の21の4の指定都市都道府県勧告調整委員は,いずれも同法250条の9を準用するが,準用に当たっての読替規定によって「両議院の同意を得て」の部分が明示的に外されている。したがって,地方自治法において国会同意人事に当たるのは国地方係争処理委員会の委員のみである。
2 公表されている機関数及び人数との関係
参議院事務局は,前掲「立法と調査」において,平成25年当時の対象を「人事官(3名)や検査官(3名)等36機関253名」としている。本記事の集計が39機関となるのは,抽出の基準を「両議院の同意」という文言に置いたことのほか,カジノ管理委員会(平成30年法律第80号による設置)及びサイバー通信情報監理委員会(令和7年法律第42号による設置)のように平成25年以後に新設された機関があることによる。人数については,条文上人数が明記されていない機関が多く,実際に在職する委員の数も提示のたびに変動するため,本記事では条文の定めを離れた人数を記載していない。
3 最高裁判所裁判官及び高等裁判所長官は対象ではないこと
最高裁判所の長たる裁判官は内閣の指名に基づいて天皇が任命し(憲法6条2項),その他の最高裁判所裁判官は内閣が任命する(憲法79条1項)。高等裁判所長官その他の下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命する(憲法80条1項)。いずれについても両議院の同意を要する旨の定めはなく,国会同意人事の対象ではない。最高裁判所裁判官の任命手続については最高裁判所裁判官とは|現職15人の一覧・任命・定年・国民審査及び最高裁判所長官の地位,権限及び選任―任命の仕組み,国民審査及び実務上の留意点で,高等裁判所長官の退官後の処遇については高等裁判所長官を退官した後の政府機関ポストの実例で整理している。
4 同意人事に近接する別の類型
第1に,公職選挙法5条の2の中央選挙管理会がある。委員は「国会議員以外の者で参議院議員の被選挙権を有する者の中から国会の議決による指名に基いて,内閣総理大臣が任命する」(同条2項)とされ,「同意」ではなく「指名」の形式を採る。罷免についても,心身の故障により職務を執行することができない場合及び職務上の義務に違反しその他委員たるに適しない非行があった場合には「国会の同意」を要する(同条4項ただし書)。
第2に,令和7年法律第3号による政治資金監視委員会がある。この委員会は「国会に」置かれるものとされ(同法2条),委員長及び委員は「両院合同協議会の推薦に基づき,両議院の議長が,両議院の承認を得て,これを任命する」(同法4条)。任命権者が内閣又は主任の大臣ではなく両議院の議長である点で,従来の国会同意人事とは構造が異なる。この点は第9で改めて取り上げる。
第3 条文の書き分けと任命権者
1 任命権者が3種類に分かれること
国会同意人事という呼称からは内閣が任命するように見えるが,条文上の任命権者は一様ではない。①内閣が任命するもの(国家公務員法5条1項の人事官,会計検査院法4条1項の検査官,日本銀行法23条1項・2項の総裁・副総裁・審議委員,国家公務員倫理法14条1項の国家公務員倫理審査会会長及び委員),②内閣総理大臣が任命するもの(独占禁止法29条2項の公正取引委員会委員長及び委員ほか多数),③主任の大臣が任命するもの(電波法99条の3第1項の電波監理審議会委員は総務大臣,運輸安全委員会設置法8条1項の委員長及び委員は国土交通大臣,更生保護法6条1項の中央更生保護審査会委員長及び委員は法務大臣,公害健康被害の補償等に関する法律113条1項の公害健康被害補償不服審査会委員は環境大臣,再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法45条1項の調達価格等算定委員会委員は経済産業大臣)の3種類がある。任命の効力を争う訴訟が問題となる場合には,この違いが被告の決定に直結するため,「国会同意人事だから内閣が任命する」という一般化はできない。
2 「同意を経て」と「同意を得て」
条文の文言も統一されていない。「両議院の同意を経て,内閣が任命する」という形を用いるのは国家公務員法5条1項(人事官)と会計検査院法4条1項(検査官)の2つだけであり,その他は「両議院の同意を得て」の形を用いる。もっとも,この文言の差異によって手続又は効果が異なるものとする規定はなく,条文上の効果の違いとして現れるのは,後述する事後の同意又は承認が得られなかった場合の処理である。
3 天皇の認証を要するもの
国会同意人事のうち,任免について天皇の認証を要するものが4つある。①人事官(国家公務員法5条2項),②検査官(会計検査院法4条4項),③公正取引委員会委員長(独占禁止法29条3項),④原子力規制委員会委員長(原子力規制委員会設置法7条2項)である。認証官の任命式の実際については親任式及び認証官任命式で整理している。
第4 国会の閉会中及び衆議院の解散中の例外
1 例外任命の要件
多くの法律は,委員の任期が満了し又は欠員を生じた場合において,国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは,同意を得ないで任命することができる旨を定める。会計検査院法4条2項,日本銀行法23条5項,放送法31条2項前段,警察法7条2項,電波法99条の3第2項前段などがこれに当たる。これに対し,人事官については国家公務員法にこの種の例外規定が置かれておらず,常に事前の同意を要する。会計検査院法が例外を置くのと対照的である。
2 事後の同意又は承認が得られなかった場合の効果が4通りに分かれること
例外任命がされた場合,任命後最初の国会において事後の同意又は承認を求めることになるが,これが得られなかった場合の効果は法律ごとに異なる。①会計検査院法4条3項後段は「両議院の承認が得られなかつたときは,その検査官は,当然退官する」と定め,法律上当然に地位を失わせる。②日本銀行法23条6項後段は「内閣は,直ちにその総裁,副総裁又は審議委員を解任しなければならない」と定め,警察法7条3項後段,原子力規制委員会設置法7条4項後段,食品安全基本法29条3項後段,金融庁設置法12条3項後段,情報公開・個人情報保護審査会設置法4条3項後段,行政不服審査法69条3項後段,地方自治法250条の9第4項後段など多数の規定が同様に罷免又は解任の義務を課す。③独占禁止法は,同法30条4項の事後承認が得られなかったことを,同法31条6号において「意に反して罷免されることがない」原則の例外事由として掲げるにとどめ,罷免を義務付ける文言を用いていない。④放送法31条2項後段及び電波法99条の3第2項後段は「任命後最初の国会において,両議院の同意を得なければならない」と定めるだけで,同意が得られなかった場合の効果を規定していない。
②の類型の中でも細部は揃っていない。預金保険法26条3項後段は「罷免」ではなく「解任」の語を用い,労働組合法19条の3第4項前段及び労働保険審査官及び労働保険審査会法27条3項前段は事後の承認を「得なければならない」ではなく「求めなければならない」と定める。国会同意人事について一般論を述べる際には,当該機関の根拠条文に当たる必要がある。
3 放送法及び電波法に効果の定めがないこと
日本放送協会経営委員会委員と電波監理審議会委員という,放送行政の中核に位置する2つの職について,事後の同意が得られなかった場合の効果が規定されていない点は,条文上の空白として残っている。文理上は地位が当然には失われないと読む余地がある一方,国会による民主的統制という制度趣旨からは罷免の義務を導く見解もあり得る。もっとも,会計検査院法4条3項後段が「当然退官する」と明記していることの反対解釈からは,事後の同意が得られなかったことのみによって当然に地位を失うと解することは難しいと考えられる。この点を正面から扱った裁判例又は政府解釈は,本記事の調査では確認できなかった。
4 原子力規制委員会設置法の10日ルール
原子力規制委員会設置法7条3項は,国会同意人事の中で唯一,みなし同意に相当する仕組みを置いている。すなわち,国会の会期中に原子力緊急事態宣言がされている場合その他の特に緊急を要する事情がある場合であり,かつ,委員長及び委員長の職務を代理する委員のいずれもが欠員である場合において,両議院又はいずれかの議院が緊急任命が必要な場合である旨の文書を添えた同意の求めがあった日から国会又は各議院の休会中の期間を除いて10日以内に当該同意に係る議決をしないときは,内閣総理大臣は,同意を得ないで委員長を任命することができる。同条4項は,緊急を要する事情がなくなったときは速やかに両議院の事後の承認を得なければならず,承認が得られないときは内閣総理大臣が直ちに委員長を罷免しなければならないと定める。議決をしないことに効果を結び付ける点で,内閣総理大臣の指名に関する憲法67条2項と同種の設計である。
第5 罷免,身分保障及び公務員法上の地位
1 罷免にも両議院の同意を要する例
任命だけでなく罷免についても両議院の同意を要求する立法例がある。放送法36条1項は,内閣総理大臣が経営委員会委員を心身の故障又は非行を理由として罷免するには両議院の同意を要するものとし,各議院はその院の定めるところにより当該委員に弁明の機会を与えなければならないと定める。原子力規制委員会設置法9条2項は,あらかじめ原子力規制委員会の意見を聴いた上で両議院の同意を得て罷免することができると定める。情報公開・個人情報保護審査会設置法4条7項,行政不服審査法69条7項及び地方自治法250条の9第11項も同様である。任命が国会同意人事であることに対応して,恣意的な罷免を防ぐために罷免についても国会の関与を求める構造といえる。
会計検査院検査官については,罷免ではなく退官という形を採る。会計検査院法6条は,他の検査官の合議により心身の故障のため職務の執行ができないと決定され,又は職務上の義務に違反する事実があると決定された場合において,両議院の議決があったときに退官するものと定める。同法7条は拘禁刑以上の刑に処せられたときに官を失うものとし,同法8条は,これらと同法4条3項後段の場合を除いては意に反して官を失うことがないと定める。なお,同法5条3項により,検査官は満70歳に達したときに退官する。
2 人事官の弾劾裁判
人事官の罷免には,他に例のない仕組みが用意されている。国家公務員法8条1項は,人事官が意に反して罷免されない原則を定めた上で,その例外として,欠格事由に該当するに至った場合,国会の訴追に基づき公開の弾劾手続により罷免を可とすると決定された場合及び任期が満了して再任されない場合等を挙げる。同法9条1項は「人事官の弾劾の裁判は,最高裁判所においてこれを行う」と定め,国会が訴追の事由を記載した書面を最高裁判所に提出し(同条2項),最高裁判所は書面を受理した日から30日以上90日以内の間において裁判開始の日を定め(同条4項),裁判開始の日から100日以内に判決を行わなければならない(同条5項)。裁判官の弾劾が両議院の議員で組織する弾劾裁判所によって行われる(憲法64条1項)のとは異なり,人事官の弾劾は最高裁判所が行う点に特徴がある。また,同法8条3項は,人事官のうち2人以上が同一の政党に属することとなった場合には,内閣が両議院の同意を経てそのうち1人以外の者を罷免するものと定める。
3 国会同意人事の職は特別職となること
国家公務員法2条3項9号は,特別職として「就任について選挙によることを必要とし,あるいは国会の両院又は一院の議決又は同意によることを必要とする職員」を掲げる。同条5項により,国家公務員法の規定は,同法の改正法律により別段の定めがされない限り,特別職に属する職には適用されない。したがって,同一の審議会等であっても,国会同意人事とされている委員は特別職として国家公務員法の適用を受けず,それ以外の委員は一般職としてその適用を受けるという区別が生じる。宇賀克也「行政法概説Ⅲ〔第5版〕」(有斐閣・2019年)も同旨を述べる。
この区別は,守秘義務及びその違反に対する制裁において具体的な差となって現れる。一般職であれば国家公務員法100条1項の守秘義務と同法109条12号の罰則が適用されるのに対し,特別職についてはこれらが適用されないため,個別の設置法に守秘義務規定及び罰則を置かなければ制裁の空白が生じる。前掲書のコラム「JR福知山線脱線事故」は,旧航空・鉄道事故調査委員会の委員が国会同意人事であったことから同委員会の設置法に委員の秘密保持義務規定が置かれていたが,違反に対する罰則規定はなかったと指摘している。独立性を高めるための仕組みが,別の規律を外す方向に作用する場面があることになる。なお,特別職の給与水準の比較については判検事トップの月収―報酬・俸給月額と行政機関の主な特別職との比較で整理している。
第6 国会における審査手続
1 法規上の規定がなく,先例及び申合せによっていること
国会同意人事の審査手続について,国会法及び議院規則には規定がない。参議院事務局は,先例上「内閣から同意又は承認を求められたときは,まず議院運営委員会において内閣から説明を聴取し,同委員会の決定があった後,議院の会議において議決するのを例とする」とされているほか,衆参の議院運営委員長申合せに沿って審査されていると説明した上で,実際の流れを,①内閣官房副長官が各院の議院運営委員会理事会に内示(衆参同時),②各会派で賛否を検討,③議院運営委員会で関係副大臣等から説明を聴取した後に採決,④本会議で採決,⑤両院で同意の後,内閣において任命,と整理している。人事官,検査官,公正取引委員会委員長,原子力規制委員会委員長並びに日本銀行総裁及び副総裁については,各院の議院運営委員会で所信聴取及び質疑を行うものとされている。議院運営委員会の所管事項及び運営の実際については,同室発行「立法と調査」2016年8月No.379・173頁が整理している。
2 衆参議院運営委員長申合せの変遷
第168回国会において,衆参の議院運営委員長申合せにより,「政府の人事案件提示前に,人事が報道された場合は,原則として当該者の提示は受け付けない」といういわゆる事前報道ルールが定められ,併せて議院運営委員会両院合同代表者会議が設置された。このルールについては厳格に過ぎるとの指摘があり,平成25年2月,各会派間の議論を経て,これを廃止した上で,①内示までのあらゆる過程で情報管理の徹底を図ることを政府に求める,②内示前に報道された場合,内示後に政府に対し情報漏洩がなかったか否かを調査させ,各院の議院運営委員会理事会に報告させる,との新たな申合せが行われ,両院合同代表者会議も廃止された。
この平成25年の申合せが現在も現行のものであることは,松野博一内閣官房長官の衆議院予算委員会(令和5年2月3日)における答弁により確認できる。同答弁は,国会同意人事の手続が「衆参両院各会派の御議論を経て,平成二十五年に定められました衆参議院運営委員長申合せで定められて」おり,これに基づいて衆参議院運営委員会理事会において同時に提示が行われ,その後,日本銀行総裁候補者等については衆参議院運営委員会において所信聴取及び質疑が行われる旨を述べている。もっとも,申合せ自体は衆参いずれの議院のウェブサイトにも掲載されておらず,本記事の調査では申合せの本文を確認することができなかった。
3 内閣官房に手続マニュアルが存在しないこと
国会同意人事の運用が国会側の先例及び申合せによって支えられていることは,情報公開請求の結果からも裏付けられる。「国会同意人事案に関して国会の同意を得る際に使用しているマニュアルその他の文書(最新版)」の開示請求に対し,内閣官房内閣総務官は文書を保有していないとして不開示決定をし,審査請求を受けた情報公開・個人情報保護審査会は,令和4年12月15日,この決定を妥当と答申した(令和4年度(行情)答申第394号)。諮問庁は「内閣総務官室では,内閣総務官室が行う国会同意人事に係る事務に関して,マニュアル等を作成しておらず,取得もしていない」と説明し,探索の範囲は執務室内の机,書庫及びパソコン上の共有フォルダであったとしている。
もっとも,同答申は付言において,文書の不存在を理由とする不開示決定に際しては,単に対象文書を保有していないという事実を示すだけでは足りず,作成又は取得していないのか,作成又は取得した後に廃棄又は亡失したのかなど,なぜ当該文書が存在しないかについても理由として付記することが求められるとした上で,原処分における理由付記は行政手続法8条1項の趣旨に照らし適切さを欠くとして,処分庁に留意を求めている。情報公開請求及び審査会の手続一般については行政機関等に対する情報公開請求の基礎——対象外の書類,審査会,情報公開訴訟,公文書管理法で整理している。
第7 運用上問題となった事例
1 平成20年の日本銀行総裁の空席
平成20年の日本銀行正副総裁の人事は,衆参の多数会派が異なる状況の下で参議院の同意が得られず,総裁が任期満了により空席となる事態に至った。参議院常任委員会調査室・特別調査室発行「立法と調査」2018年6月No.401・3頁以下が参議院本会議録等に基づいて整理した票数によれば,3月12日に武藤敏郎氏を総裁とする案が賛成106・反対129で,伊藤隆敏氏を副総裁とする案が賛成105・反対132でそれぞれ否決され,白川方明氏を副総裁とする案は賛成230・反対7で同意された。3月19日には田波耕治氏を総裁とする案が賛成112・反対125で否決され,西村淸彦氏を副総裁とする案は賛成232・反対7で同意された。4月9日に白川方明氏を総裁とする案が賛成231・反対7で同意される一方,渡辺博史氏を副総裁とする案は賛成115・反対121で否決された。
総裁が空席となる期間の受け皿は法定されていた。日本銀行法22条2項は「副総裁は,総裁の定めるところにより,日本銀行を代表し,総裁を補佐して日本銀行の業務を掌理し,総裁に事故があるときはその職務を代理し,総裁が欠員のときはその職務を行う」と定めており,総裁不在の間は白川副総裁がこの規定により総裁の職務を行った。前掲論文は,この経緯により正副総裁の任期の始期がずれることとなったこと,平成25年3月に新体制が任期開始日の違いによって機動的に始動できない事態を避けるため白川総裁が任期満了を待たずに辞任したこと,後任の黒田東彦氏が白川総裁の残任期間と次の5年間の任期についてそれぞれ両議院の同意を得て任命されたことを記録している。同意が得られない場合に生じるのは任命の遅延にとどまらず,任期の起算点のずれという形で後年まで影響が残る。
2 平成24年の原子力規制委員会の事後同意
平成24年9月19日に発足した原子力規制委員会の委員長及び委員は,国会閉会中であることを理由に,原子力規制委員会設置法7条5項に基づき内閣総理大臣が任命した。ところが,第181回国会において,政府は原子力緊急事態宣言が発令中であることを理由に事後の同意を求めない方針を閣議決定した。衆議院環境委員会(平成24年11月9日)において,江田康幸委員は,設置法はこのような場合であっても国会に事後同意を求めてはならないとは規定しておらず,例外規定は委員長等が不在で委員会が機能しない事態を避けるためのものであって政府・与党に裁量権を与えるために設けられたものではないと述べ,同日,斎藤やすのり委員は,緊急事態宣言を出し続ければ委員会の人事について国会の同意が不要となるのではないかと質した。
その後,政権交代を経て,菅義偉内閣官房長官は参議院本会議(平成25年2月1日)において,国会同意によって民主的コントロールを行うという設置法の趣旨に基づき,1月25日に事後承認を求める閣議決定を行った旨を答弁した。例外規定を適用するか否かの判断が条文上は内閣に委ねられている部分が大きく,同じ条文の下で運用が変わり得ることが表面化した事例である。
3 人事案の事前報道
平成20年5月27日付けの新聞朝刊に,一括して提示される予定であった9機関24人分の国会同意人事のうち日本銀行政策委員会審議委員及び預金保険機構理事長の2件が報道され,提示手続が滞った。この経緯について,衆議院議員鈴木宗男君提出国会同意人事を巡る政府の対応に関する再質問に対する答弁書(平成20年6月20日付け)は,政府案を議院運営委員会両院合同代表者会議に提示する前にその内容が報道された経緯等については承知していないとしつつ,今後かかる事態が生じないよう政府としては十分情報管理に注意する所存である旨を述べている。質問主意書及び答弁書の作成過程については質問主意書とは―提出手続,答弁期限及び答弁書の作成過程で整理している。
平成25年の申合せ後にも同種の事態は生じている。黒田東彦日本銀行総裁の後任人事案は令和5年2月14日に衆参両院の議院運営委員会に提示される予定であったが,同月10日に報道された。これを受けて内閣官房が作成した「日本銀行総裁・副総裁人事に係る報道に関する調査について」(令和5年2月16日付け)は,前記申合せ②の調査及び報告を実施した例に当たる。同文書は衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案に掲載している。
4 参議院の緊急集会で人事案件を処理した先例
憲法54条2項ただし書の参議院の緊急集会は,これまでに2回開かれているが,第1回(昭和27年8月31日)は人事案件のために開かれたものである。同日の参議院本会議(第14回国会閉会後第1号)において,佐藤尚武議長は,「去る二十八日,内閣総理大臣から,衆議院の解散に伴い,中央選挙管理会の委員の任命について緊急の必要があるため,本日参議院の緊急集会を求められました」と述べており,議事日程第2は「中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名」であった。同日の参議院議院運営委員会において,近藤英明事務総長は,内閣から憲法54条及び当時の国会法4条により緊急集会を求める旨の要求があった経緯を説明している。緊急集会の請求手続を定める規定は,現在は国会法99条以下に置かれている。
もっとも,この先例は公職選挙法5条の2第2項の「国会の議決による指名」の類型であって,「両議院の同意」の類型ではない。両議院の同意を要する案件を参議院単独の議決である緊急集会で処理することができるかについては,参議院憲法審査会(令和5年4月12日)において石川大我委員が,国会そのものの権能ではなく法律によって両議院に付与された権限である両議院同意案件については緊急集会の権能として処理できるというのが通説であると理解している旨を述べている。なお,第2回の緊急集会(昭和28年3月18日から同月20日まで)は暫定予算及び法律の期限延長を扱ったものであり,人事案件は含まれていない。
第8 裁判例における国会同意人事の位置付け
1 制度自体を正面の争点とする裁判例が見当たらないこと
裁判所ウェブサイトの裁判例検索を用いて令和8年8月8日に全文検索を行ったところ,「国会同意人事」及び「同意人事」の語ではいずれも該当がなく,「両議院の同意」で59件,「国会同意」で2件が該当した。すなわち,国会同意人事という制度そのものの要否,同意の議決の効力又は事後同意が得られなかった場合の効果を正面の争点とする裁判例は,裁判所ウェブサイトには掲載されていない。同サイトの掲載範囲は限られており,掲載がないことは裁判例が存在しないことを意味しないが,少なくとも公表された判断の中に,この制度の解釈を直接扱ったものを確認することはできなかった。
この点に関連して,最高裁判所大法廷昭和37年3月7日判決(昭和31年(オ)第61号,民集16巻3号445頁)は,裁判所の法令審査権は国会の両院における法律制定の議事手続の適否には及ばないと解すべきであると判示している。国会における同意の議決の手続に瑕疵があることを理由として任命の効力を争う構成を考えるに当たっては,この判断の考え方が前提となる。
2 機関の独立性又は準司法機関性を基礎付ける事情として摘示する裁判例
判決文に現れる用いられ方は,当該機関の委員が国会同意人事であることを,機関の独立性,中立性又は専門性を示す事情として摘示するというものが中心である。最高裁判所大法廷平成29年12月6日判決(平成26年(オ)第1130号,民集71巻10号1817頁)は,放送法の規定の合憲性を判断する前提として,日本放送協会の運営体制について,経営委員会の委員が公共の福祉に関し公正な判断をすることができ広い経験と知識を有する者のうちから両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することとされ,その選任について各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならないものとされ,政治的中立性及び特定の利害からの独立性を確保するための欠格事由が定められている(放送法31条)と摘示している。国会同意人事の趣旨を最高裁判所が明示的に述べた例として参照される。
下級審にも同様の用法が積み重なっている。東京地方裁判所平成13年6月13日判決(平成12年(行ウ)第35号)は,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づく観察処分について,処分を行う公安審査委員会が独立性の高い準司法機関であること,すなわち委員長及び委員が両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命し独立して職権を行うこととされていることを,同法7条2項が事前手続及び事後の救済手続を欠くとまではいえないとする理由の第一に挙げている。東京地方裁判所平成23年12月8日判決(平成21年(行ウ)第341号)及び東京地方裁判所平成29年9月25日判決(平成27年(行ウ)第444号)は,いずれも観察処分の期間更新処分に関する事案で,公安審査委員会について「委員長及び委員の任命は国会同意事項となっている」と摘示している。
証拠能力の判断に用いられた例もある。名古屋地方裁判所平成16年7月30日判決(平成14年(わ)第1091号)は,航空事故調査報告書について,科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者のうちから両議院の同意を得て運輸大臣が任命する委員長及び委員4名によって作成されたものであることなどを理由に,刑事訴訟法321条4項の鑑定書に準ずるものとして同項が準用されると判断している。
行政庁の裁量統制の場面でも用いられる。大阪高等裁判所令和2年1月30日判決(令和元年(行ケ)第7号)は,ふるさと納税に係る指定制度に関する総務大臣の告示について,地方財政審議会の意見聴取が義務付けられていることを裁量権行使に対する統制と歯止めの趣旨と解した上で,「同審議会が,その構成員の任命が両議院の同意を得て行われる重要な審議会と位置付けられていることも考慮すると(総務省設置法12条1項)」,法は一定の手続を履践させて慎重を期していると述べている。原告適格を否定する方向で用いられた例として,東京高等裁判所平成12年10月11日判決(平成11年(行コ)第217号)及びその原審である東京地方裁判所平成11年9月13日判決(平成10年(行ウ)第57号)は,運輸審議会が内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命する委員で構成されることを摘示した上で,鉄道の運賃変更認可について一般利用者の原告適格を否定している。
原子力規制委員会の委員長及び委員が両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命され独立して職権を行うことは,原子力発電所の運転差止め又は設置変更許可処分の取消しを求める多数の訴訟において,新規制基準の合理性及び専門技術的裁量の尊重を基礎付ける事情として摘示されている。水戸地方裁判所令和3年3月18日判決(平成24年(行ウ)第15号)がその例である。同様に,個人情報保護委員会の委員長及び委員が両議院の同意を得て任命されることは,行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく情報の管理の実効性を支える事情として,福岡地方裁判所令和2年6月15日判決(平成28年(ワ)第1123号)等で摘示されている。これらは,いずれも国会同意人事であることを独立した争点として扱ったものではなく,機関の性格を認定する一要素として用いたものである。
3 委員の任命処分を争う訴訟
国会同意人事そのものではないが,委員の任命処分の効力を訴訟で争うことができるかという点については,労働委員会の労働者委員の任命に関する一連の裁判例がある。東京高等裁判所平成10年9月29日判決(平成9年(行コ)第76号)は中央労働委員会の労働者委員の任命処分の取消し等を求めた事案であり,大阪地方裁判所昭和58年2月24日判決(昭和57年(行ウ)第31号)及びその控訴審である大阪高等裁判所昭和58年10月27日判決(昭和58年(行コ)第12号),札幌地方裁判所平成27年1月20日判決(平成25年(行ウ)第5号)並びに札幌地方裁判所平成28年7月11日判決(平成27年(行ウ)第13号)は地方労働委員会の労働者委員の任命に関する事案である。もっとも,中央労働委員会のうち国会同意人事の対象となるのは公益委員であり(労働組合法19条の3第2項),これらの裁判例が扱っているのは使用者団体又は労働組合の推薦に基づいて任命される労働者委員である。国会同意人事の対象となる委員の任命の効力を争った事案として公表されているものは,本記事の調査では確認できなかった。
なお,青森地方裁判所平成18年6月16日判決(平成3年(行ウ)第6号)は,廃棄物埋設事業許可処分の取消訴訟において,原告が審査に関与した委員の適格性を争ったのに対し,被告が原子力委員会の委員は両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命するものであるから各委員の適格性は十分に担保されていると反論した事案であるが,裁判所は,原子力委員会等の構成に関する主張は自己の法律上の利益に関係がないから審理の対象外であると判断している。国会同意人事であることを理由とする任命の適格性の主張が,行政事件訴訟法10条1項によって遮断された例といえる。
第9 近年の立法による新しい類型
1 政治資金監視委員会
令和7年法律第3号(令和7年1月8日公布・施行)は,政治資金の透明性を確保するため,別に法律で定めるところにより,国会に政治資金監視委員会を置くものとした(同法2条)。委員長及び委員は,委員会の職務の遂行に関し公正な判断をすることができ広い経験と知識を有する者のうちから,両院合同協議会の推薦に基づき,両議院の議長が,両議院の承認を得て任命するものとされ(同法4条),心身の故障のため職務の遂行ができないこと又は職務の執行上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があったことについて両議院の議決があったときを除いては罷免されない(同法5条)。両院合同協議会は,委員長及び委員の推薦並びにその要請を受けた国政調査を行うため,別に法律で定めるところにより国会に置かれる,両議院の議院運営委員会の合同協議会である(同法11条)。
従来の国会同意人事が,行政機関の構成員について内閣又は主任の大臣が任命し国会が同意するという構造であったのに対し,この委員会は国会に置かれ,両議院の議長が任命する。国会が行政機関の人事に関与する仕組みではなく,国会自身が設ける機関の人事を国会が完結して決める仕組みであり,権力分立上の位置付けが異なる。
2 サイバー通信情報監理委員会
令和7年法律第42号(重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律。令和7年5月23日公布,令和8年4月1日施行)は,内閣府設置法49条3項に基づき,内閣総理大臣の所轄に属する機関としてサイバー通信情報監理委員会を置いた(同法46条)。委員会の任務は,国等の重要な電子計算機等に対する不正な行為による被害の防止のための措置の適正な実施を確保するための審査及び検査であり(同法47条),委員長及び委員は独立してその職権を行う(同法49条)。委員長及び委員4人は,①裁判官であった者その他の法律に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者,又は②サイバーセキュリティ若しくは情報通信技術に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者であって,人格が高潔であるもののうちから,両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する(同法50条3項)。
通信情報の取得という強い権限の行使を統制する機関について,任命に両議院の同意を要するものとし,職権行使の独立性を定めた点は,公安審査委員会と同型の設計である。委員の資格として裁判官であった者を第一に掲げている点も,準司法的な役割を想定したものと読める。
出典・参考資料
1 法令
①日本国憲法6条2項・54条2項・59条2項・60条2項・61条・64条1項・67条・79条1項・80条1項・90条2項(e-Gov法令検索)
②国家公務員法(昭和22年法律第120号)2条・5条・8条・9条・100条・106条の8・109条(e-Gov法令検索)
③会計検査院法(昭和22年法律第73号)4条から8条まで(e-Gov法令検索)
④国会法(昭和22年法律第79号)99条(e-Gov法令検索)
⑤日本銀行法(平成9年法律第89号)22条・23条(e-Gov法令検索)
⑥私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)29条・30条・31条(e-Gov法令検索)
⑦放送法(昭和25年法律第132号)31条・36条(e-Gov法令検索)
⑧電波法(昭和25年法律第131号)99条の3(e-Gov法令検索)
⑨原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)7条・9条(e-Gov法令検索)
⑩警察法(昭和29年法律第162号)7条(e-Gov法令検索)
⑪公安審査委員会設置法(昭和27年法律第242号)5条(e-Gov法令検索)
⑫行政不服審査法(平成26年法律第68号)69条(e-Gov法令検索)
⑬情報公開・個人情報保護審査会設置法(平成15年法律第60号)4条(e-Gov法令検索)
⑭個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)134条(e-Gov法令検索)
⑮公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号)113条(e-Gov法令検索)
⑯労働組合法(昭和24年法律第174号)19条の3(e-Gov法令検索)
⑰国土交通省設置法(平成11年法律第100号)18条(e-Gov法令検索)
⑱総務省設置法(平成11年法律第91号)12条(e-Gov法令検索)
⑲公職選挙法(昭和25年法律第100号)5条の2(e-Gov法令検索)
⑳政治資金監視委員会等の設置その他の政治資金の透明性を確保するための措置等に関する法律(令和7年法律第3号)2条・4条・5条・11条(e-Gov法令検索)
㉑重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律(令和7年法律第42号)46条・47条・49条・50条(e-Gov法令検索)
㉒本記事第2の表に掲げたその他の法律の各条(e-Gov法令検索)
2 裁判例
①最高裁判所大法廷昭和37年3月7日判決(昭和31年(オ)第61号,民集16巻3号445頁,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所大法廷平成29年12月6日判決(平成26年(オ)第1130号,民集71巻10号1817頁,裁判所ウェブサイト)
③東京高等裁判所昭和29年11月9日判決(昭和27年(行ナ)第32号,裁判所ウェブサイト)
④東京地方裁判所平成13年6月13日判決(平成12年(行ウ)第35号,裁判所ウェブサイト)
⑤東京地方裁判所平成23年12月8日判決(平成21年(行ウ)第341号,裁判所ウェブサイト)
⑥東京地方裁判所平成29年9月25日判決(平成27年(行ウ)第444号,裁判所ウェブサイト)
⑦名古屋地方裁判所平成16年7月30日判決(平成14年(わ)第1091号,裁判所ウェブサイト)
⑧大阪高等裁判所令和2年1月30日判決(令和元年(行ケ)第7号,裁判所ウェブサイト)
⑨東京高等裁判所平成12年10月11日判決(平成11年(行コ)第217号,裁判所ウェブサイト)
⑩東京地方裁判所平成11年9月13日判決(平成10年(行ウ)第57号,裁判所ウェブサイト)
⑪水戸地方裁判所令和3年3月18日判決(平成24年(行ウ)第15号,裁判所ウェブサイト)
⑫福岡地方裁判所令和2年6月15日判決(平成28年(ワ)第1123号,裁判所ウェブサイト)
⑬東京高等裁判所平成10年9月29日判決(平成9年(行コ)第76号,裁判所ウェブサイト)
⑭大阪地方裁判所昭和58年2月24日判決(昭和57年(行ウ)第31号,裁判所ウェブサイト)
⑮大阪高等裁判所昭和58年10月27日判決(昭和58年(行コ)第12号,裁判所ウェブサイト)
⑯札幌地方裁判所平成27年1月20日判決(平成25年(行ウ)第5号,裁判所ウェブサイト)
⑰札幌地方裁判所平成28年7月11日判決(平成27年(行ウ)第13号,裁判所ウェブサイト)
⑱青森地方裁判所平成18年6月16日判決(平成3年(行ウ)第6号,裁判所ウェブサイト)
3 公文書・国会会議録
①情報公開・個人情報保護審査会令和4年12月15日答申(令和4年度(行情)答申第394号,令和4年(行情)諮問第328号「国会同意人事案に関して国会の同意を得る際に使用するマニュアルの不開示決定(不存在)に関する件」)
②衆議院議員鈴木宗男君提出国会同意人事を巡る政府の対応に関する再質問に対する答弁書(平成20年6月20日付け。衆議院)及び同再質問主意書(衆議院)
③内閣官房「日本銀行総裁・副総裁人事に係る報道に関する調査について」(令和5年2月16日付け)
④第14回国会参議院本会議会議録閉会後第1号(昭和27年8月31日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑤第14回国会参議院議院運営委員会会議録閉会後第1号(昭和27年8月31日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑥第162回国会参議院憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会会議録第1号(平成17年2月4日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑦第181回国会衆議院環境委員会議録第2号(平成24年11月9日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑧第183回国会参議院本会議会議録第3号(平成25年2月1日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑨第211回国会衆議院予算委員会議録第6号(令和5年2月3日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑩第211回国会参議院憲法審査会会議録第2号(令和5年4月12日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
4 文献
①西木戸一真「国会キーワード76 同意人事案件」立法と調査2013年7月No.342・107頁(参議院事務局企画調整室)
②小室敬「国会キーワード91 議院運営委員会」立法と調査2016年8月No.379・173頁(参議院事務局企画調整室)
③笠井彰吾「黒田日銀総裁再任の経緯と今後の金融政策の課題―日銀国会同意人事(2018年)の概要―」立法と調査2018年6月No.401・3頁~17頁(参議院常任委員会調査室・特別調査室)
④宇賀克也「行政法概説Ⅲ〔第5版〕行政組織法/公務員法/公物法」有斐閣(2019年)(審議会等の委員の任命に関する記述及びコラム「JR福知山線脱線事故」)
⑤宇賀克也「行政不服審査法の逐条解説〔第2版〕」有斐閣(2017年)(第69条「委員」及び第70条「会長」の解説)