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検察事務官の仕事・権限・採用と検察官事務取扱(AIリライト)

第1 検察事務官の地位と三つの仕事領域

1 検察庁法上の地位

検察庁法27条は,検察庁に検察事務官を置き,検察事務官が上官の命を受けて検察庁の事務をつかさどるほか,検察官を補佐し,又はその指揮を受けて捜査を行うと定めている。検察事務官は,総務や会計だけを担当する職員ではなく,取調べ,逮捕,捜索・差押え等を法令に基づいて行うことがある国家公務員である。

もっとも,通常の検察事務官は検察官とは別の官職であり,検察官だけに認められた公訴提起や勾留請求を当然に行えるわけではない。本記事では,検察事務官の権限を,①個別の刑事訴訟法の条文から直接認められるもの,②検察官の指揮又は命令を要するもの,③検察官だけに認められるもの,④検察官事務取扱の発令によって検察官として行使するもの,という四つに分けて説明する。

2 捜査公判部門,検務部門及び事務局部門

検察庁の現行職務案内は,検察事務官の主な職場を三部門に分けている。①捜査公判部門では,検察官の取調べへの立会い,供述調書その他の書類作成,証拠・事件記録の検討及び裁判所・弁護人・被害者等との連絡調整を行う。②検務部門では,事件の受理・処理,令状,証拠品,拘禁刑等の執行,罰金等の徴収,犯歴及び記録の各事務を行い,③事務局部門では,人事・給与,文書,物品調達及び庁舎管理等を行う。

検察官と共に捜査・公判を担当する検察事務官は,実務上「立会事務官」と呼ばれる。庁の規模によって部課の名称や事務分担は異なるため,三部門は全国の職務を理解するための大分類であり,すべての検察庁に同名の独立部門が置かれているという意味ではない。

3 デジタルフォレンジック,被害者支援及び社会復帰支援

現在の職務は,従来型の書類作成や検務事務だけではない。厚生労働省の職業情報提供サイトは,押収したパソコン等やネットワーク上のデータを適正な手続で保全・解析するデジタルフォレンジック,被害者の相談対応や法廷への付添い,証拠品返還等の手続支援,福祉機関等と連携した社会復帰支援を,検察事務官の職務として挙げている。

被害者支援又は社会復帰支援は,捜査・公判と無関係な付随業務ではなく,刑事手続の過程で生じる被害者の負担を軽減し,再犯防止に必要な福祉的支援へつなぐ仕事である。ただし,社会福祉士等の専門職員が関与する場合もあり,すべてを検察事務官だけで行うものではない。

第2 通常の検察事務官が行う捜査

1 検察官の指揮と取調べ

刑事訴訟法191条2項は,検察事務官が検察官の指揮を受けて捜査をしなければならないと定めている。個別条文が検察事務官を処分主体として掲げる場合でも,通常の検察事務官は独立の捜査機関として事件処理を決定するのではなく,この指揮関係の下で職務を行う。

検察事務官は,同法198条1項により被疑者の出頭を求めて取り調べ,同法223条1項により被疑者以外の者の出頭を求めて取り調べることができる。在宅の被疑者及び参考人は原則として出頭を拒み,又は出頭後に退去できるため,任意取調べの限界は検察事務官の取調べにも及ぶ。

最高裁昭和28年3月13日判決(昭和26年(れ)第1590号強姦未遂被告事件・刑集7巻3号529頁)は,地方裁判所の合議事件についても,検察官の指揮を受けた検察事務官が被疑者その他の者を取り調べ,供述調書を作成する権限を有するとした。もっとも,作成された供述調書を公判で証拠にできるかは,取調べ権限とは別に,刑事訴訟法の伝聞法則,任意性及び個別の証拠要件によって判断される。

2 通常逮捕と緊急逮捕

検察事務官は,刑事訴訟法199条1項により,裁判官があらかじめ発した逮捕状を執行して被疑者を逮捕できる。しかし,通常逮捕の逮捕状を請求できる者を定める同条2項は,検察官と一定の司法警察員を掲げており,通常の検察事務官を掲げていない。検察事務官が逮捕状を執行したときは,同法202条により,直ちに被疑者を検察官へ引致する。

これに対し,同法210条1項の要件を満たす緊急逮捕では,検察事務官自身が逮捕主体となり,逮捕後は直ちに裁判官へ逮捕状を求める手続をしなければならない。したがって,「検察事務官は逮捕状を請求できない」という説明は通常逮捕については正しいが,緊急逮捕後の逮捕状請求まで一律に否定するなら誤りである。

3 捜索・差押え,電磁的記録及び鑑定

検察事務官は,刑事訴訟法218条1項に基づき,裁判官の令状による差押え,捜索,電磁的記録提供命令,検証及び身体検査を行うことができる。令和8年7月24日施行の現行法では,これらの令状を検察事務官が請求できる直接の根拠は同条5項であり,逮捕現場における無令状処分は同法220条,遺留物又は任意提出物の領置は同法221条に定められている。

検察庁の職務権限ページは令和8年6月18日を最終更新日とし,捜索・差押え等の令状請求を「刑事訴訟法218条1項等」と説明している。しかし,その後の同年7月24日に施行された現行条文では,処分権限を定める同条1項と,令状請求者を定める同条5項を区別する必要があり,電磁的記録提供命令も明記されている。

鑑定のために被疑者を病院等へ留置する処分の請求は刑事訴訟法224条1項に基づき,身体の検査,死体の解剖,墳墓の発掘又は物の破壊を伴う鑑定処分の許可請求は同法225条2項に基づく。いずれも,鑑定の嘱託を受けた者が無条件に強制処分を行えるという制度ではなく,裁判官の判断を経る必要がある。

4 検視

刑事訴訟法229条1項は,変死者又は変死の疑いのある死体について,その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官が検視をしなければならないと定める。同条2項により,検察官は検察事務官又は司法警察員に検視をさせることができるため,検察事務官による検視は,検察官の命令に基づく権限である。

第3 通常の検察事務官の権限の限界

1 公訴提起,勾留請求及び通常逮捕状の請求

刑事訴訟法247条は公訴を検察官が行うと定め,同法204条及び205条は逮捕された被疑者の勾留を検察官が請求する手続を定めている。通常の検察事務官は,捜査や書類作成に深く関与しても,自己の名で公訴を提起し,又は勾留を請求する権限を持たない。通常逮捕状の請求権も前記のとおり同法199条2項の主体に含まれず,令状の請求と発付済み令状の執行を区別しなければならない。

2 告訴・告発の法定受理と庁内の受付

刑事訴訟法241条は,告訴又は告発を書面又は口頭で検察官又は司法警察員に対して行い,口頭の場合はその者が調書を作ると定めている。通常の検察事務官は法定の相手方に含まれないため,口頭告訴を法的に受理して告訴調書を作成する権限を有しない。

もっとも,検察庁の窓口で検察事務官が告訴状等の書面を物理的に受け取り,検察官へ回付する庁内事務と,刑事訴訟法上の告訴受理は同じではない。告訴の効力がいつ生じたかを判断するときは,建物内の誰が書面を手にしたかだけでなく,権限を有する検察官に対する提出と評価できる事実があるかを確認する必要がある。

大阪高裁昭和26年2月5日判決(昭和25年(う)第2350号住居侵入強姦未遂被告事件・高裁刑集4巻2号100頁)は,同一人が地方検察庁の検察事務官と区検察庁の検察官事務取扱を兼ねていた事案で,地方検察庁の検察事務官として口頭告訴を受けた行為を適法な受理とは認めなかった。この判決は,同じ人物が複数の資格を有するときも,どの庁のどの資格で行為したかを区別すべきことを示している。

3 庁外で職務を行う場合の証票

検察庁事務章程25条1項は,検察官及び検察事務官が庁外で職務を行う場合,相手方の請求があったときは,所属庁,官職及び氏名を記載した証票を示さなければならないと定めている。同条2項は証票の様式を別に定めるとしているが,公表された現行章程だけから,過去の個別通達に掲載された様式が現在も変更なく用いられているとまでは確認できない。

第4 検察官事務取扱検察事務官

1 現行の検察庁法附則2条

現行の検察庁法附則2条は,法務大臣が,当分の間,検察官が足りないため必要と認めるときは,区検察庁の検察事務官にその庁の検察官の事務を取り扱わせることができると定めている。この発令を受けた検察事務官が「検察官事務取扱検察事務官」であり,実務上は「検取」と略称される。

古い裁判例及び文献は,この制度の根拠を「検察庁法附則36条」と記載しているが,これは当時の条番号である。現行のe-Gov法令検索では附則2条として表示されるため,過去の裁判例を紹介するときは当時の引用を改変せず,現在の条番号との関係を併記するのが正確である。

2 検察官としての権限と行為資格

最高裁昭和28年7月14日決定(昭和27年(あ)第796号住居侵入・窃盗被告事件・刑集7巻7号1529頁)は,当時の検察庁法附則36条に基づき検察官の事務を取り扱う区検察庁の検察事務官による公訴提起を有効とした。最高裁昭和31年6月19日判決(昭和29年(あ)第2705号覚醒剤取締法違反被告事件・刑集10巻6号853頁)も,検察官事務取扱を命ぜられた検察事務官は,その範囲で検察官としての権限を有し,その資格で作成した供述調書は検察官作成の供述調書に当たるとした。

ただし,発令を受けた者に検察官としての権限があることと,個別事件の公訴提起が適法であることは別問題である。最高裁令和6年3月7日判決(令和5年(さ)第24号道路交通法違反被告事件)は,益田区検察庁検察官事務取扱検察事務官が反則通告手続を経ずに公訴を提起した事案で,略式命令を破棄し,公訴を棄却した。この判決は検察官事務取扱の発令又は資格を否定したものではなく,道路交通法が定める公訴提起の前提手続を欠いたことを理由とする。

3 制度に対する日弁連の意見

日本弁護士連合会は平成25年7月18日付け意見書において,当時の検察庁法附則36条を削除し,検察官事務取扱制度を廃止するよう求めた。同意見書は,制定時から「当分の間」とされた制度が長期間利用されていること,検察官と同等の選考基準及び身分保障が法定されていないこと等を問題として挙げ,段階的な廃止を提案している。

これは,弁護士会が法務大臣及び検事総長に提出した制度改革に関する意見であり,現行法の内容又は裁判所の判断を示すものではない。令和8年7月30日現在,検察庁法附則2条は存続しており,前記最高裁判例も発令を受けた者が検察官として権限を行使し得ることを前提としているため,制度の法的な現状と制度に対する評価は区別する必要がある。

第5 採用,勤務条件,研修及びキャリア

1 採用と勤務条件

検察庁の採用案内によれば,検察事務官は,国家公務員採用一般職試験の大卒程度試験又は高卒者試験の合格者に対し,各検察庁が面接等を行った上で採用する。試験日程,官庁訪問及び採用予定は年度・地域ごとに変わるため,受験時には人事院と採用を希望する地方検察庁の当年度案内を確認する必要がある。

検察庁の勤務条件案内によれば,採用当初は一般の国家公務員と同じ行政職の俸給が支給され,大卒程度試験合格者はおおむね1年,高卒者試験合格者はおおむね5年の勤務経験後に公安職の俸給が支給される。勤務地,採用区分,学歴及び職歴によって額が異なるため,他職種を含む職業分類の平均年収を,検察事務官全体の固定的な年収として示すのは適切でない。

勤務時間は原則1日7時間45分であり,土曜日・日曜日及び祝日が休日とされるが,宿直又は休日勤務がある職場もある。その場合には代休措置又は宿直手当・休日給等の支給があり,年次休暇,特別休暇,病気休暇,介護休暇,育児休業及びフレックスタイム等の制度も設けられている。

2 研修とキャリア

検察事務官の研修制度には,採用直後の初等科研修,中堅職員を対象とする中等科研修,専門的知識・技能を学ぶ専修科研修,幹部職員を育成する高等科研修,捜査・公判に専従する志望者を対象とする特別専攻科研修がある。外国語,簿記及びデジタルフォレンジック等の実務研修も行われるため,採用時に法律学又は情報技術のすべてを修得していることが前提ではない。

昇進例には,捜査公判部門の主任捜査官・統括捜査官・首席捜査官,検務部門の検務専門官・統括検務官・検務監理官,事務局部門の係長・課長・事務局長等がある。また,一定の受験資格基準に達した後,試験に合格して副検事となり,さらに所定の特別考試を経て検事となる道もあるが,検察事務官,副検事及び検事はそれぞれ別の官職である。

3 検察事務官向け研修教材等の資料

次のリンクは,法務総合研究所の研修教材その他の資料を本サイト内で閲覧しやすく整理したものである。旧版の教材を含むため,制度の沿革又は当時の事務を調べる資料として利用し,現行法令又は現行運用はe-Gov法令検索及び検察庁の現行資料で別に確認する必要がある。

第6 出典・参考資料

1 法令及び公的資料

2 裁判例

3 実務書

  • ① 中山善房ほか編『大コンメンタール刑事訴訟法 第3版 第2巻〔57条―127条〕』(青林書院,2024年)118頁~123頁,294頁~295頁,445頁~455頁,531頁及び582頁~585頁
  • ② 城祐一郎『殺傷犯捜査全書』(立花書房,2018年)646頁及び690頁
  • ③ 城祐一郎『捜査・公判のための実務用語・略語・隠語辞典』(立花書房,2011年)43頁,46頁,98頁,101頁及び118頁
  • ④ 清野憲一・江見健一編著『実務必携 刑事手続』(立花書房,2025年)175頁,178頁,180頁,211頁,222頁,228頁~229頁,236頁,255頁及び363頁
  • ⑤ 阪井光平『条文でつなぐ警察と検察(上)』(立花書房,2025年)8頁,74頁,93頁及び111頁~115頁
  • ⑥ 三木祥史編著『〔改訂版〕最新 告訴状・告発状モデル文例集』(新日本法規出版,2019年)56頁
  • ⑦ 小林充原著『刑事訴訟法〔第5版〕』(立花書房,2015年)83頁
  • ⑧ 白取祐司『刑事訴訟法[第11版]』(日本評論社,2026年)212頁及び235頁