裁判官の民間企業長期研修等の名簿

Pocket

目次
1 総論
2 判事補の民間企業研修に関する国会答弁
3 民間企業で研修中の裁判官が死亡した事例があること
4 民間企業の安全配慮義務

1 総論
(1) 毎年3月の第1水曜日に開催される最高裁判所裁判官会議議事録に含まれている,裁判官の民間企業長期研修等の名簿を掲載しています。
・ 令和 2年度分
・ 平成31年度分
・ 平成30年度分
・ 平成29年度分
・ 平成27年度分
・ 平成20年度分ないし平成26年度分,及び平成28年度分
・ 平成11年度分ないし平成19年度分
・ 昭和62年度分ないし平成10年度分
(2) 平成25年度判事補の民間企業長期研修に関する覚書(平成25年3月26日付)を掲載しています。
(3) 日本の裁判所-司法行政の歴史的研究-170頁には以下の記載があります。
   判事補を対象とする国内特別研究としては,1987年から,任官後3~4年目の判事補を民間企業へ1年間派遣する民間企業長期コースが実施されている。同コースにおいては,毎年4社に各1名の判事補を派遣し,社員と同様の扱いで1年間の研修が行われている。


2 判事補の民間企業研修に関する国会答弁
・ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成27年5月14日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 判事補の外部経験といたしましては、民間企業等への派遣、弁護士職務経験、海外留学、行政官庁への出向等などを行ってきているところでございます。
 概要を申し上げますと、民間企業等は、毎年十五人程度を一年間派遣をしております。弁護士職務経験につきましては、毎年十人程度を二年間派遣をしております。また、海外留学は、毎年三十五人程度が一年又は二年間の期間派遣をされてきているところでございます。さらに、行政官庁等には、毎年三十五人程度が、これは行き先によっても期間、長短ございますが、原則として二年間出向をしております。
 今後も、より多くの若手の裁判官がこれらの外部での様々な経験を通じて幅広い視野あるいは柔軟でバランスの取れた考え方というものを身に付けることができるよう、新たな外部経験先の確保等も含めた充実というものを検討してまいりたいというふうに考えております。
② 民間企業研修の意義あるいは必要性について御理解をいただいております日本経団連加入の企業等の中から、毎年、業種あるいは業態のバランスなども勘案しながら研修先を選定しているというところでございます。
③ 委員御指摘のように、派遣先の企業等との関係で、公平性と申しますか中立性と申しますか、の担保が必要でございますので、そのようなことも配慮して、行き先を変えますとか、あるいは同一の業界の中で不均衡がないようにするとか、そういったようなことも検討しているところでございます。

3 民間企業で研修中の裁判官が死亡した事例があること
(1) 平成20年4月1日から民間企業長期研修として株式会社東芝で研修を行っていた58期の白石裕子裁判官は平成20年10月18日(土)午後2時頃,一人暮らしの官舎で死亡し,同月20日(月)の朝に発見されました「音萌の会会報」HPの「追悼文」参照)。
(2) 株式会社東芝での研修は平成20年度実施分が最後になりました。

4 民間企業の安全配慮義務
(1) 49期の石村智京都地裁判事が執筆した「労災民事訴訟に関する諸問題について」(-過労自殺に関する注意義務違反,安全配慮義務違反と相当因果関係を中心として-)を掲載している判例タイムズ1425号(平成28年7月25日発売)45頁には以下の記載があります。
   客観的業務過重性が認められる場合には,業務の過重性についての予見可能性と労働者の心身健康を損なう危険についての(抽象的)予見可能性さえあれば(使用者側は,客観的にみて過重な業務を課しているのであるから,通常は,これが否定されることはない。),義務違反及び相当因果関係が肯定される関係にあり,その意味で,この場合においては,精神障害の発症や自殺についての予見がないとの使用者側の主張については,ほぼ失当に近いことになる。しかも,電通事件最判や東芝事件最判の判示によれば,当事者側の事情が過失相殺ないしは素因減額とされる場面はかなり限定され,その適用範囲が審理の中心となるということになろう。
(2)ア ちなみに,大阪高裁平成27年1月22日判決(裁判長は30期の森宏司裁判官)は,
   平成19年「5月24日」,兵庫県龍野高校のテニス部の練習中に発生した高校2年生の女子の熱中症事故(当日の最高気温は27度)について,
   兵庫県に対し,「元金だけで」約2億3000万円の支払を命じ,平成27年12月15日に兵庫県の上告が棄却されました(CHRISTIAN TODAY HP「龍野高校・部活で熱中症,当時高2が寝たきりに 兵庫県に2億3千万円賠償命令確定」参照)。
   その結果,兵庫県は,平成27年12月24日,3億3985万5520円を被害者代理人と思われる弁護士の預金口座に支払いました(兵庫県の情報公開文書を見れば分かります。)。
イ   大阪高裁平成27年1月22日判決を読む限り,高校側に何らかの法令違反があったわけではないにもかかわらず,過失相殺すら認められていません。
   また,厚生労働省HPの「職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況(平成24年)」によれば,熱中症による死亡災害の月別発生状況(平成22~平成24年)は,6月が7件,7月が41件,8月が35件,9月が3件であり,5月は1件も発生していないにもかかわらず,兵庫県龍野高校のテニス部事故では,5月に発生した熱中症について予見可能性があると認定されました。
   そして,30期の森宏司裁判官(平成29年4月19日定年退官発令)は平成28年3月7日頃,大阪高裁民事上席裁判官に就任したことからすれば,安全配慮義務について厳格に考える裁判例は今後も継続すると思われます。
(3) 労災民事賠償マニュアルには以下の記載があります。
① 122頁の記載
   実は、我が国のように、労災補償制度と民事賠償請求を並存させる制度(荒木・労働法235頁)は、比較法的には多数派とはいえない。例えば、米国の多くの州や、フランスでは、労災に対して労災補償を受けられる場合には使用者に対する損害賠償請求を提起することができない(東大労研・注釈労基法931頁[岩村正彦])。そこで、使用者は、我が国における使用者側が労災認定を回避したがる傾向とは逆に、損害賠償からの免責を求めて、積極的に労災認定を受けるべく協力する行動に向かうことになる。
② 131頁の記載
   企業が従業員に対してなす法定内外の健康診断の充実により(安衛法66条以下、安衛則43条以下)、生活習慣病、精神疾患を含む様々な傷病が事前にチェックされるケースが増えているが、他方で、法令・判例により企業に課される健康配慮義務は、結果債務に近づきつつあるといわざるを得ないまでに高度化されつつあり、企業が労災認定や損害賠償責任を回避するためには(富国生命事件・東京地八王子支判平成12年11月9日労判805号95頁、富士電機E&C事件・名古屋地判平成18年1月18日労判918号65頁等)、診断結果のみならず、普段の業務遂行上から知り得た従業員の健康に関する情報に基づき相応な配慮が必要(石川島興業事件・神戸地姫路支判平成7年7月31日労判688号59頁、NTT東日本北海道支店事件・札幌高判平成18年7月20日労判922号5頁等)な状況となっている。

スポンサーリンク