裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等


目次
第1 国会答弁資料及び法律案審議録
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和 6年4月12日法律第14号)
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和 5年4月14日法律第10号)
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和 4年4月22日法律第30号)
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和 3年4月14日法律第20号)
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和 2年4月20日法律第20号)
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(平成31年4月26日法律第15号)
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(平成30年4月18日法律第14号)
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(平成29年4月21日法律第17号)
第2 裁判所職員の定員の推移
1 裁判所職員定員法(昭和26年3月30日法律第53号)に基づく定員の推移
2 沖特法63条に基づく別枠の定員
3 補足説明
第3 技能労務職員の削減に関する国会答弁
第4 令和3年3月12日の衆議院法務委員会の付帯決議,及び日本共産党の反対討論
1 令和3年3月12日の衆議院法務委員会の付帯決議
2 令和3年3月12日の日本共産党の反対討論
第5 定員をめぐる状況に関する最高裁の認識(令和3年6月時点)
第6 国政調査権と国会答弁義務
第7 最高裁判所長官代理者の場合,国会答弁資料が存在しない場合があること
第8 関連記事その他

*1 「衆議院の議案情報」を見れば,裁判所職員定員法の一部を改正する法律が分かります。
*2 ①裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和4年4月22日法律第30号)に関する国会答弁資料(令和4年3月4日の衆議院法務委員会),②令和4年の裁判所職員定員法の改正に関する法律案審議録(法務省開示分),及び③裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(第208回国会提出分)の説明資料(②の文書に含まれています。)といったファイル名で掲載しています。
*3 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等も参照してください。

第1 国会答弁資料及び法律案審議録
◯裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和 6年4月12日法律第14号)
(1) 国会答弁資料
・ 令和6年3月15日の衆議院法務委員会
・ 令和6年4月 4日の参議院法務委員会
(2) 法律案審議録(法務省開示分)
→ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 説明資料が含まれています。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和5年4月14日法律第10号)
(1) 国会答弁資料
・ 令和5年3月10日の衆議院法務委員会
・ 令和5年4月 6日の参議院法務委員会
(2) 法律案審議録(法務省開示分)
→ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 説明資料が含まれています。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和4年4月22日法律第30号)
(1) 国会答弁資料
・ 令和4年3月 4日の衆議院法務委員会
・ 令和4年4月14日の参議院法務委員会
(2) 法律案審議録(法務省開示分)
→ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 説明資料が含まれています。


裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和3年4月14日法律第20号)
(1) 国会答弁資料
・ 令和3年3月12日の衆議院法務委員会(法務省)
・ 令和3年3月12日の衆議院法務委員会(最高裁判所)
・ 令和3年4月 6日の参議院法務委員会
(2) 法律案審議録(法務省開示分)
→ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 説明資料が含まれています。

裁判所職員定員法の一部を改正する法律(令和2年4月20日法律第20号)
(1) 国会答弁資料
・ 令和2年3月31日の衆議院法務委員会
・ 令和2年4月16日の参議院法務委員会
(2) 法律案審議録(法務省開示分)
→ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 説明資料が含まれています。

裁判所職員定員法の一部を改正する法律(平成31年4月26日法律第15号)
(1) 国会答弁資料
・ 平成31年3月22日の衆議院法務委員会
→ 参議院法務委員会に関する分はなぜかないです。
(2) 法律案審議録(法務省開示分)
→ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 説明資料が含まれています。

裁判所職員定員法の一部を改正する法律(平成30年4月18日法律第14号)
(1) 国会答弁資料
・ 平成30年3月30日の衆議院法務委員会
→ 参議院法務委員会に関する分はなぜかないです。
(2) 法律案審議録(法務省開示分)
→ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 説明資料(平成29年12月)が含まれています。

裁判所職員定員法の一部を改正する法律(平成29年4月21日法律第17号)
(1) 法務省作成の説明文書
① 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の概要
② 判事の増員と判事補の減員の理由について
(2) 衆議院での国会答弁資料
ア 平成29年3月31日の階猛衆議院議員(民進党)の以下の質問に対するもの
① 最高裁判所は,判事補の欠員が増えた理由について,司法修習生の質が低下したからではなく,弁護士業界との競争激化により,任官者を確保しにくいからであると説明しているが,このような説明を裏付けるデータはなく,不合理ではないか,法務大臣の見解を問う。
② 判事補の欠員が増えたのは,司法修習生の質が低下したからではないか,法務大臣の所見を問う。
③ 判事補の定員の充足に努めるとの昨年の付帯決議があったにもかかわらず,判事補の欠員が拡大していることからすれば,判事補の定員を更に削減すべきではないか,法務大臣の所見を問う。
(3) 参議院での国会答弁資料
ア 平成29年4月11日の佐々木さやか参議院議員(公明党)の以下の質問に対するもの
① 家事紛争の解決を含め,認証ADRの利用促進に向けた取組について,法務大臣に問う。
イ 平成29年4月11日の仁比聡平参議院議員(共産党)の以下の質問に対するもの
① 本年1月,長崎市において,元夫からのストーカー被害を訴えていた女性が,元夫との離婚時の取り決めに従って,息子と面会させるために元夫を訪ねたところ,元夫に殺害され,元夫も自殺したという事件が発生したが,これについて法務大臣の所見を問う。
② 家事事件の複雑困難化や事件の増加により,家庭裁判所の役割や家庭裁判所調査官による専門的な調査の必要性が増大しており,家庭裁判所調査官の抜本的な増員が必要ではないか,法務大臣の所見を問う。
ウ 平成29年4月11日の山口和之参議院議員(無所属)の以下の質問に対するもの
① 速記官のいない裁判所が存在する状況は,「各裁判所に裁判所速記官を置く。」と定める裁判所法第60条の2第1項に反するのではないか,法務当局に問う。
② 政府は,速記官制度の存続について,どのような方針か,近い将来,裁判所法第60条の2第1項を変更する予定があるのか,法務当局に問う。
③ 弁護士強制制度が採られている場合とそうでない場合のそれぞれのメリット・デメリットについて,法務当局に問う。
④ 民事訴訟の事件数が増加しないことについて,政府として,どのような問題があると考えているのか。また,民事訴訟の事件数を増加させるために,政府として,どのような対策を行っているのか,法務当局に問う。

第2 裁判所職員の定員の推移
1 裁判所職員定員法(昭和26年3月30日法律第53号)に基づく定員の推移
* 裁判所職員の予算定員の推移と対応しています。
(1) 判事の定員の推移
令和 2年度以降:2155人
平成31年度:2125人
平成30年度:2085人
平成29年度:2035人 平成28年度:1985人
平成27年度:1953人 平成26年度:1921人
平成25年度:1889人 平成24年度:1857人
平成23年度:1827人 平成22年度:1782人
平成21年度:1717人 平成20年度:1677人
平成19年度:1637人 平成18年度:1597人
平成17年度:1557人 平成16年度:1517人
平成15年度:1450人 平成14年度:1420人
平成13年度:1390人
昭和62年度ないし平成12年度:1360人
(2) 判事補の定員の推移
令和 5年度以降:842人
令和 4年度:857人
令和 2年度ないし令和3年度:897人
平成31年度:927人 平成30年度:952人
平成29年度:977人
平成22年度ないし平成28年度:1000人
平成21年度:1020人
平成20年度:985人 平成19年度:950人
平成18年度:915人 平成17年度:880人
平成16年度:845人 平成15年度:829人
平成14年度:814人
平成12年度ないし平成13年度:799人
平成11年度:729人 平成10年度:699人
平成 9年度:679人 平成 8年度:659人
平成 7年度:644人 平成 6年度:632人
平成 5年度:622人 平成 4年度:615人
平成 3年度:608人
昭和53年度ないし平成2年度:603人
(3) 簡易裁判所判事の定員の推移
平成16年度以降:806人
平成2年度ないし平成15年度:794人
平成元年度:789人 昭和63年度:784人
昭和50年度ないし昭和62年度:779人
(4) 裁判官以外の裁判所職員の定員の推移
令和 5年度以降:2万1744人
令和 4年度:2万1775人
令和 3年度:2万1801人
令和 2年度:2万1818人 平成31年度:2万1835人
平成30年度:2万1848人 平成29年度:2万1883人
平成28年度:2万1918人 平成27年度:2万1954人
平成26年度:2万1990人 平成25年度:2万2026人
平成24年度:2万2059人
平成21年度ないし平成23年度:2万2089人
平成18年度ないし平成20年度:2万2086人
平成17年度:2万2083人 平成16年度:2万2073人
平成15年度:2万1673人 平成14年度:2万1664人
平成13年度:2万1657人 平成12年度:2万1648人
平成11年度:2万1632人 平成10年度:2万1613人
平成 9年度:2万1592人 平成 8年度:2万1571人
平成 7年度:2万1550人 平成 6年度:2万1526人
平成 5年度:2万1501人 平成 4年度:2万1477人
平成 3年度:2万1454人 平成 2年度:2万1426人
平成 元年度:2万1401人 昭和63年度:2万1376人
昭和62年度:2万1351人 昭和61年度:2万1344人
昭和60年度:2万1343人
2 沖特法63条に基づく別枠の定員
(1) 昭和47年度から平成15年度までの間,裁判所職員定員放屁基づく定員とは別枠の定員として,沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律(略称は「沖特法」です。)63条に基づく定員がありました。
(2) 沖特法63条に基づく予算定員につき,昭和47年度の場合,判事補20人,判事補が21人,簡裁判事が12人であり,平成15年度の場合,判事が25人,判事補が6人,簡裁判事が12人でした。
3 補足説明
(1) 法務省HPの「国会提出主要法律案」に,裁判所職員定員法の改正案が載っています。
(2)ア 判事補の定員のピークは平成21年度ないし平成28年度ですから,10年後の令和8年度までに判事の定員の減少が開始するかもしれません。
イ 判事補の現在員は定員を全く充足していませんから,判事補の定員の減少は裁判所の人員構成に影響を及ぼすものではありません。
(3)ア 判事補の採用者数のピークは58期の124人(平成17年度採用)でした(41期ないし71期の採用者につき日弁連HPの「司法修習終了者の進路別人数」参照)。
イ 判事補採用者数につき,69期が78人,70期が65人,71期が82人,72期が75人,73期が66人です。

下級裁判所の判事・判事補の定員・現在員等内訳(平成23年度から令和3年1月までの分)です。

第3 技能労務職員の削減に関する国会答弁
1 裁判官以外の裁判所職員において削減される定員は,以下のような技能労務職員です(「全司法本部の中央執行委員長が裁判所職員の定員に関して国会で述べた意見」参照)。
① 庁舎清掃などを担当する庁務員
② 庁舎管理などを担当する守衛
③ 裁判所の声の窓口となる電話交換手
④ 庁外の尋問や検証、少年事件における身柄押送などを担当する自動車運転手
2 42期の村田斉志最高裁判所総務局長は,令和3年3月12日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 技能労務職員は、庁舎の清掃や警備、電話交換といった庁舎管理等の業務や、自動車の運転等の業務を行っている職員でございまして、この技能労務職員の定員の合理化は、定年になったというような場合の退職に際しまして、裁判所の事務への支障の有無を考慮しつつ、外注化による合理化等が可能かを判断して、その後任者を不補充とするようなことによって生じた欠員、これを削減するという形で定員の合理化を図っているものでございます。
② この際の事務の合理化につきましては、例えば、庁舎の清掃というようなことであれば外部委託等を行うということで代替をするということがございます。また、電話交換であればダイヤルイン化をするというようなことによって、なるべく人手がかからないようにするといった形で合理化をしてございます。
 そのため、技能労務職員の定員を合理化しても、裁判所の業務に支障が生じることはないというふうに考えております。
③ 裁判所におきましては、以前から、裁判部門以外の部門に限定して政府の定員合理化の方針に協力をして、技能労務職員等の定員を合理化してきております。
かつ、その技能労務職員等の定員の合理化を行うに当たっては、既存業務の見直しや事務統合による業務の最適化等により業務の合理化を行っているところでございます。
 技能労務職員等の定員の合理化は、定年等による退職に際して、裁判所の事務への支障の有無を考慮しつつ、外注化による合理化等が可能かを判断して、お辞めになる方の後任を不補充とすることによって生じた欠員を合理化するという形で行ってきておりますので、現時点では、基本的に、裁判所の事務に支障は生じていないというふうに認識をしておりますけれども、引き続き、外注化等の代替措置の裁判所の事務への影響の有無を含めまして、職場にどのような影響を及ぼしているかというような現場の実情については的確な把握に努めてまいりたいというふうに考えております。


第4 令和3年3月12日の衆議院法務委員会の付帯決議,及び日本共産党の反対討論
1 令和3年3月12日の衆議院法務委員会の付帯決議

・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和3年3月12日の衆議院法務委員会の付帯決議)の本文は以下のとおりです。
 一 民事訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理期間が長期化している近年の状況を検証し、審理の運用手法、制度の改善等に取り組み、その上で、目標達成に必要な範囲で削減を含め裁判官の定員管理を行うこと。
 二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにし、その定員が適正であることを明確にすること。
 三 平成二十五年三月二十六日平成二十八年三月十八日平成二十九年三月三十一日及び令和二年四月三日の当委員会における各附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、更なる削減等も含め検討していくこと。
 四 現在の法曹養成制度の下で法曹志望者の減少について顕著な改善傾向が見られないことを踏まえ、そのことが法曹の質や判事補任官者数に及ぼす影響につき必要な分析を行い、その結果を国会に示すとともに、法改正を踏まえた更なる法曹養成機能の向上、法曹志望者の増加等に向けた取組をより一層進めること。
 五 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小を含む必要な取組を進めること。
2 令和3年3月12日の日本共産党の反対討論
(1) 藤野保史衆議院議員(日本共産党)は,令和3年3月12日の衆議院法務委員会において以下のとおり反対討論をしています。
 私は、日本共産党を代表して、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 本案は、昨年に引き続き、十七人減という過去最大規模の減員を行うものです。これは、繁忙な司法職場の実態を更に悪化させるだけでなく、裁判所の使命である国民の裁判を受ける権利を保障することに逆行するものです。
 三権分立を規定した日本国憲法の下、司法権を担う裁判所には、政府から独立してその定員や予算を定める権限が与えられています。裁判所は、この間の定員合理化計画の結果を含め、独自の立場で裁判の実態を検証すべきであり、そうした検証もせずに政府の定員合理化計画にこれ以上協力すべきではありません。
 本案の提案理由には、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少する必要があるとありますが、質疑の中でその合理的な根拠を示されませんでした。
 むしろ、この間、児童福祉法二十八条事件、同三十三条事件など、児童の保護や一時保護を求める事案が増加しています。さらに、コロナ禍の下で、DVや性暴力の相談が急増していることも示されました。こうした現実は、いずれ裁判の現場に跳ね返ってくることは避けられません。今こそ、こうした問題の専門家である家裁調査官始め、裁判所職員の増員が求められています。本案は、こうした要請に真っ向から反するものです。
 最後に、今、最高裁に求められているのは、国民の期待に応える司法サービスを提供する機能を強化することです。予算の拡充とともに、裁判所職員などの人的体制、庁舎や設備などの物的拡充を行うことを強く求めて、討論を終わります。
(2) 日本共産党は裁判所職員の定員削減に批判的な立場を取っています。

第5 定員をめぐる状況に関する最高裁の認識(令和3年6月時点)
・ 裁判所をめぐる諸情勢について(令和3年6月の最高裁判所事務総局の文書)32頁には,「(2) 定員について」として以下の記載があります。
 裁判所においては,民事訴訟事件の審理充実や家事事件処理の充実強化などのため,継続的に裁判官の増員を行ってきたところである。 しかし,近時の新受事件数の動向を見ると,成年後見関係事件などの一部の事件を除いて,民事訴訟事件を含む事件類型の多くは減少又は横ばいで推移している。そのような状況の中,司法制度改革が始まった平成14年度から令和2年度までに合計740人の判事が増員されてきたが,令和3年度においては,判事の増員は行わないこととされ(令和3年度の裁判所職員定員法の一部を改正する法律の内容については,3月15日付け裁判所時報1762号を参照されたい。 ) ,国の厳しい財政状況下での国家公務員の定員をめぐる厳しい情勢や前述の事件動向等を踏まえると,今後,裁判所の定員をめぐる状況はより一層厳しくなるものと予想される。
 以上のような定員をめぐる厳しい状況の下では,各庁においては,現状の処理件数や事務分配を所与のものとしたり,十分な検討のないまま前例に従った事務処理方法を重んじたりすることなく,司法需要の顕在化等による処理件数の増加局面に加え,裁判手続のIT化の検討・準備が進む中で生じる事務処理の変容にも適切に対応できる態勢とするべく,事務分配の機動的な見直しや,事務改善の取組を継続して行っていかなければならない。各庁,各部署の人的態勢については,裁判事務の在り方を踏まえ,全国各地における司法機能の発揮・確保,部署間の繁忙度の平準化の観点から,裁判官,書記官等がそれぞれの行うべき職務や,相互の官職間の連携を意識しながら,適正・迅速な裁判を実現できる合理的な事務処理に向けて,不断の見直しを進めていく必要があるものと考えている。

第6 国政調査権と国会答弁義務
1 衆議院議員松浦利尚君提出議院の国政調査権と公務員の守秘義務等との関係に関する質問に対する答弁書(昭和51年3月30日付)には以下の記載があります。
1 いわゆる国政調査権は、憲法第六十二条に由来するものであり、国政の全般にわたつてその適正な行使が保障されなければならないことはいうまでもないところである。
 一方、憲法第六十五条によつて内閣に属することとされている行政権に属する公務の民主的かつ能率的な運営を確保するために、国家公務員には守秘義務が課されている。
2 そこで、国政調査権と国家公務員の守秘義務との間において調整を必要とする場合が生ずる。国政調査権に基づいて政府に対して要請があつた場合、その要請にこたえて職務上の秘密を開披するかどうかは、守秘義務によつてまもられるべき公益と国政調査権の行使によつて得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較衡量することにより決定されるべきものと考える。
3 個々の事案について右の判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが、政府としては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。
(昭和四十九年十二月二十三日参議院予算委員会における三木内閣総理大臣答弁参照)
2 1期の味村治内閣法制局長官は,昭和63年3月24日の参議院予算委員会において以下の答弁をしています。
   憲法七十三条の規定によりまして、外交関係の処理が内閣の職務とされていることは先生の御指摘のとおりでございます。他方、憲法六十三条は、これは国務大臣の議院出席及び答弁義務を規定しているわけでございますが、内閣総理大臣その他の国務大臣が議院に出席した場合、議案について発言する権利がありますと同時に、答弁または説明を求められました場合には、これに応じて答弁をするという義務があるということをこれは当然の前提としているというふうに解されるわけでございまして、したがいまして、出席して答弁を求められました国務大臣がその義務を厳粛に考えてその義務を履行すべきであるということは、これは当然の憲法上の要請でございまして、外交関係の事項につきましても例外ではないというふうに考えております。
   ただ、先ほど先生が御引用になりました昭和五十年六月五日の吉國内閣法制局長官の答弁にもございますように、合理的な理由がありますときは、その理由を明らかにして答弁を差し控えるということも許されるんだということを申し上げているわけでございまして、そういう場合には憲法六十三条には違背しないんだというふうに解されるわけでございます。
   先ほど外務省の政府委員からも御説明がございましたが、条約とか協定の締結を目的といたします外交交渉の過程で行われます会談の具体的内容などにつきましては、これは国際的な外交慣行とかあるいは外国との信頼関係の維持とか、あるいは外交交渉を効果的に遂行するためとか、そういったようないろいろな事情から秘匿する必要性がある場合が通常であるということであろうかと思いまして、そういう場合には答弁を差し控えることも許されようかと存ずるわけでございます。


第7 最高裁判所長官代理者の場合,国会答弁資料が存在しない場合があること
1 令和元年10月18日答申(令和元年度(最情)答申第53号)には以下の記載があります。
 苦情申出人は,特定日の参議院法務委員会における国会答弁の内容及び参議院インターネット審議中継の動画からすれば,最高裁判所において本件開示申出文書を保有している旨主張する。 しかし, 当委員会において上記法務委員会の会議録を閲読し, 出席者である長官代理者がした説明の内容を確認したところ,その内容を踏まえて検討すれば,議員の質問事項について,裁判所の基本的な見解を概括的に述べたものであり,上記法務委員会に係る国会答弁においては司法行政文書として長官代理者の説明案を作成していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
 したがって,最高裁判所において本件開示申出文書を保有していないと認められる。
2 本件開示申出文書は,「平成30年11月22日の参議院法務委員会における国会答弁資料のうち,裁判所の所持品検査に関するもの」です。


第8 関連記事その他
1(1) 裁判所職員は特別職の国家公務員です(国家公務員法2条3項13号)。
(2) 裁判所職員定員法(昭和26年3月30日法律第53号)は,行政機関の職員の定員に関する法律(昭和44年5月16日法律第33号)とは別に存在する法律です。
(3) 裁判所HPの「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」には「裁判官から法務省等の行政省庁へ出向する場合は,検事に転官しているので,裁判官定員の枠外である。」と書いてあります。
2 法律案審議録については,内閣法制局で別途,文書が保管されています。
3(1) 国立国会図書館HPレファレンス「戦後主要政党の変遷と国会内勢力の推移」(平成26年6月号)が載っています。
(2) 国立国会図書館HP「調査と情報」「戦後の我が国における主要政党の変遷」(平成31年2月28日発行の1043号)が載っています。
4 国会法72条2項は「最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。」と定めています。
5 以下の記事も参照してください。
(概算要求から級別定数の配布まで)
 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について
・ 裁判所職員の予算定員の推移
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する衆議院法務委員会の附帯決議
・ 全司法本部の中央執行委員長が裁判所職員の定員に関して国会で述べた意見
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置
(その他)
・ 判事補の採用に関する国会答弁
・ 集合修習時志望者数(A班及びB班の合計数)と現実の判事補採用人数の推移
・ 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 平成28年度概算要求(増員関係)に関する最高裁の説明
・ 裁判官の号別在職状況
・ 国会制定法律の一覧へのリンク


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