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検察権と管轄-捜査・公訴・事務取扱の区別(AIリライト)

第1 検察権の管轄を三つに分ける

検察権と管轄を検討するときは,①所属検察庁の対応裁判所と管轄区域,②捜査を行う権限,③公訴を提起する権限を分ける必要がある。
捜査をすることができる事件の範囲と,最終的にどの検察官がどの裁判所へ起訴できるかは同じではない。

裁判所の管轄も,事件の種類・軽重による事物管轄,犯罪地又は被告人の住所・居所・現在地等による土地管轄及び上訴関係による審級管轄に分かれる。
検察官の職務権限を検討する際には,刑事訴訟法の裁判所管轄と,検察庁法の所属・指揮監督・事務取扱を対応させる。

第2 所属検察庁と対応裁判所

検察庁法2条は,最高検察庁を最高裁判所に,高等検察庁を各高等裁判所に,地方検察庁を各地方裁判所に,区検察庁を各簡易裁判所に対応して置く。地方検察庁は各家庭裁判所にも対応する。

同法5条は,検察官が,原則として,所属検察庁の対応裁判所の管轄区域内で,その裁判所の管轄に属する事項について職務を行うと定める。
したがって,地方裁判所への公訴提起はその地方裁判所に対応する地方検察庁の検察官が行い,簡易裁判所への公訴提起は対応する区検察庁の検察官が行うのが基本である。

刑事訴訟法2条は,裁判所の土地管轄を,犯罪地又は被告人の住所,居所若しくは現在地によるとする。関連事件,管轄の競合,移送その他の修正規定があるため,犯罪地だけで起訴裁判所が一つに決まるとは限らない。

第3 捜査の管轄

1 事物管轄の制限を受けない

検察庁法6条1項は,「検察官は,いかなる犯罪についても捜査をすることができる」と定める。
捜査の開始時には最終的な罪名や起訴裁判所が確定していないことがあるため,区検察庁の検察官が地方裁判所の事物管轄に属する犯罪を捜査することも,地方検察庁の検察官が簡易裁判所の事物管轄に属する犯罪を捜査することもあり得る。

もっとも,検察庁法6条が捜査を認めることと,その所属検察庁の検察官がどの裁判所にも起訴できることは別である。
捜査の結果,事件が所属検察庁の対応裁判所の管轄に属しないと判断したときは,事件送致を検討する。

2 管轄区域外の捜査

刑事訴訟法195条は,検察官及び検察事務官が,捜査のため必要があるとき,管轄区域外で職務を行うことができると定める。
捜査対象,必要性,事件の受理・認知,令状請求その他の具体的手続を確認し,「検察官はいかなる犯罪も捜査できる」という一文だけで管轄区域外のあらゆる行為が許されると結論付けてはならない。

国内の管轄区域外で職務を行えることは,外国領域内で日本の公権力を当然に行使できることを意味しない。
国外の証拠収集では,相手国の主権,国際捜査共助,領事関係,任意提出及び取得証拠の適法性・証拠能力を別に検討する必要がある。

第4 公訴提起と事件送致

刑事訴訟法258条は,検察官が,事件が所属検察庁の対応裁判所の管轄に属しないと思料するとき,書類及び証拠物とともに,管轄裁判所に対応する検察庁の検察官へ事件を送致しなければならないと定める。

弁護人は,起訴状の検察官表示,所属検察庁,対応裁判所,事務取扱の発令及び起訴時点の管轄原因を確認する。
表示上の誤りと,権限を欠く検察官による公訴提起は同じではない。起訴状の記載,辞令・事務取扱,事件受理及び実際の公訴担当を資料に基づいて区別する。

第5 事務引取・事務移転と相互補助

検察庁法12条は,検事総長,検事長又は検事正が,その指揮監督する検察官の事務を自ら取り扱い,又はその指揮監督する他の検察官に取り扱わせることができると定める。
一般に事務引取・事務移転と呼ばれ,検察官の所属と個別事件を取り扱う権限を接続する重要な制度である。

同法31条は,検察庁の職員が,他の検察庁の職員と各自の取り扱うべき事務について互いに必要な補助をすると定める。
嘱託による補助と,12条に基づく事務移転は同じではない。誰の事務として,どの権限に基づき,どの範囲を取り扱ったかを確認する。

検察庁事務章程は,検察庁の組織,部・課の分掌その他の内部事務を定める法務省訓令である。
令和8年4月8日法務省訓令第1号による最終改正後の現行章程を確認し,旧版資料だけで現在の組織又は分掌を断定しない。

第6 弁護実務で確認する資料

管轄又は検察官の権限が問題となる事件では,次の資料を時系列で確認する。

① 犯罪地,被疑者・被告人の住所,居所及び現在地
② 事件の認知,告訴・告発,司法警察員からの送致及び検察庁の受理
③ 担当検察官の所属,役職及び事務取扱
④ 管轄区域外で行われた取調べ,捜索・差押えその他の捜査
⑤ 令状請求をした者,請求先裁判所及び発付裁判官
⑥ 他庁への送致,嘱託,応援又は事務移転
⑦ 起訴状の作成者,提出日,提出先及び罪名
⑧ 管轄違い又は権限の瑕疵に関する公判記録

単に「別の検察庁の検察官が関与した」と指摘するだけでは足りない。
各行為について,捜査か公訴か,国内の管轄区域外行為か,嘱託か事務移転か,行為時に権限を基礎付ける資料があったかを特定する必要がある。

第7 旧記事で引用していた裁判例の扱い

旧記事は,平成31年3月作成の法務総合研究所「七訂版 検察庁法」35頁ないし48頁を長く転載し,福岡地判昭和33年9月13日,東京高判昭和45年7月18日,東京高判昭和39年10月28日,東京地判昭和36年5月13日等を紹介していた。
これらは検討の手掛かりになるが,今回,裁判所ウェブサイト又は判例秘書で各判決全文を確認できていないため,本文の結論を支える直接の判例としては掲げていない。

法務総合研究所の研修資料は,管轄の考え方を理解する上で有用であるが,現行法令そのものではない。
本稿では,現行の検察庁法,刑事訴訟法及び検察庁事務章程を先に示し,旧裁判例の射程と現在の実務運用は,必要な事件で判決本文及び最新資料を追加確認する方針とした。

第8 一次資料

本稿の直接の根拠は,検察庁法,刑事訴訟法,現行の検察庁事務章程及び検察庁「関係法令等」である。
判例秘書は今回利用していない。法務省の令和4年司法試験「出題の趣旨」及び「採点実感」は閲覧していない。