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毎年4月1日付の裁判官人事と最高裁判所裁判官会議(AIリライト)

裁判官の異動の大部分は,裁判所長などの人事を除き,毎年4月期の定期異動として実施される。

異動案は主として各高等裁判所と最高裁判所事務総局人事局が作成し,本人への内示と承諾を経た上で,最高裁判所裁判官会議が決定する。

本記事では,平成25年度から令和7年度までの会議日時,令和8年4月1日付人事の確認資料,官報・裁判所時報への掲載方法,担当裁判官が交代した場合の民事訴訟手続を,原資料に基づいて整理する。

第1 4月1日付裁判官人事の決定過程

1 最高裁判所裁判官会議が決定すること

裁判所法12条1項は,最高裁判所の司法行政事務を裁判官会議の議によって行うと定めている。

最高裁判所の「裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」によれば,高裁管内の異動原案は主として各高裁,全国単位の異動原案は最高裁人事局が立案し,最高裁と各高裁の協議を経て異動計画案が作成される。

同資料によれば,異動の内示は原則として2か月以上前,離島などでは3か月以上前に行われ,承諾があれば裁判官会議の決定を経て発令される。

承諾がない場合には異動先の変更又は留任の取扱いがされると説明されており,これは,裁判官をその意思に反して転所させることができないとする裁判所法48条とも整合する。

2 異動案で考慮される事情と人事運用の沿革

最高裁判所の上記資料は,補充の必要性,任地・担当事務に関する本人の希望,本人及び家族の健康状態,家庭事情などを考慮し,適材適所と公平を旨として異動案を立案すると説明している。

一般の異動では,人事評価だけでなく,任地希望や家庭事情などが影響する度合いが高いとも説明されている。

人事運用の沿革について,判例時報2143号59頁の「司法行政について(中)」は,昭和30年頃から判事補に大・中・小規模の裁判所を経験させる運用が形成され,その後,おおむね3年周期の異動慣行が判事にも広がったと述べている。

また,岩瀬達哉『裁判官も人である―良心と組織の狭間で』108頁には,高裁間の調整と最高裁人事局による再調整に関する取材上の記述があるが,これは公的な制度説明ではなく,同書の取材に基づく記述として区別して読む必要がある。

3 近年の人事関係議題

令和5年3月1日,令和6年3月6日及び令和7年3月5日の議事録では,4月期人事に関する議題が次の9区分で整理されている。

  • ① 裁判官の退官

  • ② 裁判官の再任

  • ③ 裁判官の新規任命

  • ④ 裁判官の検事転官

  • ⑤ 判事の転補

  • ⑥ 判事補の転補

  • ⑦ 簡易裁判所判事の転補

  • ⑧ 判事補の弁護士職務経験等(裁判所事務官への転官を含む。)

  • ⑨ 裁判官の民間企業長期研修等

議題の区分と順序は年度により異なり,令和4年3月2日の議事録では「裁判官の判事任命等」が独立して掲げられているため,常に同じ区分であると一般化することはできない。

また,平成25年度から令和7年度までに確認できた4月期人事の会議はいずれも3月の第1水曜日に開かれているが,この日程を固定する法令又は公表規程は確認できない。

会議後に裁判官が異動予定を対外的に告げることができるとする一律の公表ルールも確認できないため,個別の裁判官による説明時期を一般化することはできない。

第2 平成25年度から令和8年度までの確認結果

1 平成25年度から令和7年度までの会議一覧

各年度の3月分は,最高裁判所裁判官会議の議事録から確認できる。

「原案どおり」には,退官についての報告を含む年度があるため,下表では人事関係議題の結論を簡潔に示した。

対象年度会議日開始終了人事関係議題の結論
平成25年度2013年3月6日10時30分11時22分再任候補者を指名せず,その余は原案どおり決定
平成26年度2014年3月5日10時30分11時03分再任候補者を指名せず,その余は原案どおり決定
平成27年度2015年3月4日10時30分11時53分原案どおり決定
平成28年度2016年3月2日10時30分11時50分再任候補者を指名せず,その余は原案どおり決定
平成29年度2017年3月1日10時30分11時16分再任候補者を指名せず,その余は原案どおり決定
平成30年度2018年3月7日14時00分14時21分原案どおり決定
平成31年度2019年3月6日10時30分10時53分原案どおり決定
令和2年度2020年3月4日10時30分11時13分再任候補者を指名せず,その余は原案どおり決定
令和3年度2021年3月3日10時30分11時22分原案どおり決定
令和4年度2022年3月2日10時30分11時12分原案どおり決定
令和5年度2023年3月1日10時30分10時50分原案どおり決定
令和6年度2024年3月6日10時30分11時06分原案どおり決定
令和7年度2025年3月5日10時30分10時52分再任候補者を指名せず,その余は原案どおり決定

2 再任候補者を指名しない決定があった年度

平成25年3月6日,平成26年3月5日,平成28年3月2日,平成29年3月1日,令和2年3月4日及び令和7年3月5日の各議事録は,再任候補者について,判事に任命されるべき者として指名しない旨の決定があったことを記録している。

したがって,この6年度について,人事関係事項がすべて原案どおり決定されたと記載するのは正確でない。

議事録の公開版には不再任名簿と理由の別紙があるが,本記事は4月期人事の決定過程と資料案内を目的とするため,個人の特定や理由の評価は扱わない。

3 令和8年度の人事と未掲載の議事録

令和8年4月1日付人事は,裁判所時報第1884号(令和8年4月15日付)と,令和8年4月1日付の人事異動の対象となった裁判官で確認できる。

一方,前掲の月別議事録索引には令和8年3月分が掲載されていないため,本記事では令和8年度人事を決定した裁判官会議の開催日,開始時刻及び終了時刻を推測していない。

第3 裁判官の異動情報が公表される資料

1 官報

裁判官の任免,転官及び転所などの発令事項は官報の人事異動欄で確認できる。

もっとも,官報だけでは,部の事務を総括する裁判官であるか,部配置がどこか,前後の職がどのようにつながるかを一覧しにくい場合がある。

個々の発令日を確認するときは官報を基礎資料とし,4月期の配置全体を確認するときは裁判所時報や裁判官の経歴資料を併用するのが分かりやすい。

2 4月15日付の裁判所時報

毎年4月15日付の裁判所時報には,原則として,同月1日付の人事異動がまとめて掲載される。

令和4年以降の号は,裁判所時報のバックナンバーから確認できる。

(1) 記載方法と配列

裁判官の通常の異動は,1行目に異動先の官職,2行目に異動前の官職と氏名を記載する形式が基本である。

行政機関などから裁判所へ戻る場合,弁護士職務経験から戻る場合又は弁護士から任官する場合には,異動先だけが記載されることがある。

配列は,おおむね,①最高裁勤務の裁判官,②高裁・地家裁の判事,③地家裁の判事補,④簡易裁判所判事,⑤一般職の順である。

判事,判事補及び簡易裁判所判事は,東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台,札幌,高松の各高裁管内の順に掲載される。

(2) 裁判所時報だけでは分からない人事

弁護士職務経験を開始する判事補,民間企業長期研修を開始する裁判官,行政機関などへ出向する裁判官は,4月15日付裁判所時報の人事異動欄だけでは把握できない。

同欄には,異動前後の官職が部総括であるか,同一庁内で部総括に指名されたかも通常は記載されない。

したがって,裁判所時報は4月期人事の重要な一覧資料であるが,すべての配置・出向・研修を収録する完全な人事台帳ではない。

3 裁判官カードと希望勤務地

最高裁判所の人事評価資料によれば,各裁判官は毎年,担当した事件の概況などを記載するカードと,家族の状況や希望勤務地などを記載するカードを提出する。

平成27年度(最情)答申第8号は,各裁判官のカードを個別に確認すれば足りるため,全国の裁判官の希望勤務地を集計した文書は作成していないとの説明を妥当とした。

任地希望は把握されているが,全国集計表が存在するわけではないという点を区別する必要がある。

裁判官カード転勤内示及び希望勤務地を取りまとめた文書も参照されたい。

第4 担当裁判官の異動と民事訴訟手続

1 裁判官が交代した場合の口頭弁論の更新

民事訴訟法249条1項は,判決を,その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がすると定める。

同条2項は,裁判官が代わった場合,当事者が従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならないと定めており,実務上は口頭弁論の更新と呼ばれる。

最高裁第一小法廷令和7年7月10日判決(令和7年(行ツ)第125号・年金額減額処分取消等請求事件)は,合議体の裁判官1人が交代したのに従前の口頭弁論の結果が陳述されないままされた原判決について,民事訴訟法312条2項1号の事由があるとして破棄差戻しをした。

担当裁判官の異動があっても,事件記録の引継ぎ時期や次回期日は事件ごとに異なるため,「4月は裁判期日が入りにくい」と一律に説明できる公的根拠は確認できない。

2 2026年5月21日前後で異なる判決書の取扱い

裁判所の「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」によれば,民事訴訟手続の全面デジタル化は2026年5月21日に施行され,同日前に提起された訴えは引き続き書面で審理・送達される。

このため,担当裁判官の異動と判決書の関係を説明するときは,訴えの提起日によって旧法適用事件と新法適用事件を分けなければならない。

(1) 2026年5月20日以前に提起された事件

旧法適用事件では紙の判決書が作成され,改正前の民事訴訟規則157条は,判決をした裁判官の署名押印を原則としていた。

合議体の裁判官に署名押印の支障があるときは,他の関与裁判官がその事由を付記して署名押印する仕組みであり,最高裁判所事務総局民事局監修『条解民事訴訟規則』327頁~328頁は,転任もこの「支障」に含まれると説明している。

(2) 2026年5月21日以後に提起された事件

新法適用事件では,民事訴訟法252条により,主文,事実,理由などを記録した電子判決書を作成する。

現行民事訴訟規則155条は,判決をした裁判官が,電子判決書が自己の作成に係ることを示し,改変防止に必要な措置を講じると定める。

合議体の裁判官がその措置を講じることに支障があるときは,他の裁判官が,措置に先立って電子判決書にその事由を記録する。

現行規則157条は判決言渡しの方法を定める条文であり,改正前と同じ「判決書への署名押印」の条文ではない。

3 電子判決書によらない言渡しの特則

民事訴訟法254条1項は,被告が原告主張の事実を争わず防御方法も提出しない場合などに,原告の請求を認容するとき,電子判決書に基づかずに判決を言い渡すことができると定める。

この場合でも,判決の基本となる口頭弁論に関与した裁判官が判決をするという同法249条1項の直接主義は適用される。

最高裁第二小法廷令和5年3月24日判決(令和4年(受)第324号・共有持分移転登記手続請求事件・民集77巻3号803頁)は,事件を審理していない裁判官が旧法下の同法254条1項によって判決書の原本に基づかず言い渡した事案について,全部勝訴した原告にも控訴を認めた。

同判決は旧法適用事件に関するものであるが,裁判官交代時にも直接主義を守る必要があることを示す裁判例である。

第5 原資料と関連資料の探し方

1 裁判官会議議事録と4月1日付人事の一覧

最高裁判所裁判官会議の議事録には,平成25年以降の月別議事録本文と裁判官会議付議人事関係事項が掲載されている。

毎年4月1日付の最高裁人事のバックナンバーには,昭和37年度以降の年度別人事へのリンクが整理されている。

会議の決定過程を確認するときは議事録を,個人別の異動先を確認するときはバックナンバー,官報及び裁判所時報を使い分けるとよい。

2 裁判官会議と人事辞令の関連資料

最高裁判所裁判官会議は,裁判官会議の構成と司法行政上の位置付けを整理している。

裁判官の人事辞令は,発令事項の表記を確認するための資料である。

人事運用の沿革に関する文献の著者である西理の経歴は,リンク先で確認できる。

第6 出典

1 法令・最高裁判所規則

2 裁判例

3 公文書・ウェブ資料

4 文献

  • ① 最高裁判所事務総局民事局監修『条解民事訴訟規則』(司法協会,1997年)327頁~328頁。

  • ② 西理「司法行政について(中)」判例時報2143号(2012年)59頁。

  • ③ 岩瀬達哉『裁判官も人である―良心と組織の狭間で』(講談社,2020年)108頁。