第1 本記事の対象と一覧の読み方第2 弁護士法人に対する懲戒の制度1 法人と個人は別の懲戒対象である2 処分の種類と支店への処分3 移転・解散と懲戒手続の関係第3 平成22年から平成29年までの事例1 アディーレ法律事務所――破産申立事件の処理2 かすが総合――依頼者に対する別事件の受任3 協立法律事務所――広告と事務職員の監督4 片山会――事務職員への対応の委任と事件紹介5 公尽会――事件放置と預り金の未清算6 ひいらぎ綜合法律事務所――面談・説明・和解の協議7 十枝内総合法律事務所――上告期限の徒過8 美咲総合法律税務事務所――職務上請求書の利用目的9 北斗――預り金の管理と破産事件の遅延10 菅谷法律事務所――遺産分割事件等の未清算11 アディーレ法律事務所――広告表示と後続の裁決12 クローザー法律事務所――非弁提携第4 令和2年以降の事例1 ベリーベスト法律事務所――業務停止期間の変更と裁判2 清源法律事務所――職場のセクシュアル・ハラスメント3 あゆみ共同法律事務所――2件の除名公告4 東京ミネルヴァ法律事務所――預り金の不正流用等5 フィード――動産の誤廃棄6 日本橋さくら法律事務所――事件紹介の対価7 フェニックス――官報で確認できる処分内容第5 処分情報を確認するときの留意点第6 出典1 法令2 懲戒処分・裁決・判決確定の公告3 裁判書
第1 本記事の対象と一覧の読み方
本記事は,弁護士法人に対する懲戒処分について,法人名,処分の効力発生日,処分内容及び理由の要旨を整理するものである。
『自由と正義』の懲戒公告を中心に,令和8年8月31日までに確認できた資料を用い,日弁連の裁決による変更・取消しや裁判の結果が確認できるものは,原処分と区別して示す。
以下は確認した事例を選んだ一覧であり,全国の全処分を網羅した統計ではない。
法人名・事務所の構成は原則として公告当時のものであり,過去の業務停止処分の掲載は,その法人が現在も業務停止中であることを意味しない。
法人名・詳細へのリンク原処分の効力発生日原処分の内容アディーレ法律事務所平成22年10月5日戒告かすが総合平成23年1月12日業務停止1月協立法律事務所平成23年3月7日戒告片山会平成23年7月6日業務停止1年公尽会平成23年11月8日除名ひいらぎ綜合法律事務所平成28年12月7日戒告十枝内総合法律事務所平成29年2月10日戒告美咲総合法律税務事務所平成29年3月28日戒告北斗平成29年8月31日業務停止1年6月菅谷法律事務所平成29年10月11日除名アディーレ法律事務所平成29年10月11日業務停止2月クローザー法律事務所平成29年12月26日業務停止1年ベリーベスト法律事務所令和2年3月12日業務停止6月。裁決で3月に変更清源法律事務所令和2年9月17日業務停止6月あゆみ共同法律事務所令和3年2月26日東京弁護士会による除名あゆみ共同法律事務所令和3年3月30日大阪弁護士会による除名東京ミネルヴァ法律事務所令和6年2月17日除名フィード令和6年7月17日戒告日本橋さくら法律事務所令和7年8月7日業務停止1月フェニックス令和8年7月9日業務停止2月
表の法人名はいずれも「弁護士法人」を省略している。
日付は雑誌の発行月や官報の掲載日ではなく,公告に記載された原処分の効力発生日であり,取消しとなった別処分などは各事例の本文で説明する。
第2 弁護士法人に対する懲戒の制度
1 法人と個人は別の懲戒対象である
弁護士法56条は,弁護士と弁護士法人の双方を懲戒の対象とし,原則として所属弁護士会が懲戒を行うと定めている。
したがって,代表弁護士個人の処分を確認しただけでは,法人に対する処分の有無や内容まで確認したことにはならない。
また,法人に対する懲戒と,社員である弁護士個人に対する懲戒では,法人への影響も異なる。
社員が業務停止・退会命令・除名の処分を受けた場合は法定脱退の事由となり,法人自身の除名や社員の欠亡は法人の解散事由となる(弁護士法30条の22第6号,30条の23第1項6号・7号)。
2 処分の種類と支店への処分
弁護士法人に対する懲戒は,次の4種類である(弁護士法57条2項)。
同じ「業務停止」という表示でも,法人全体の業務を停止する処分か,特定の法律事務所の業務を停止する処分かを確認する必要がある。