弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(平成29年10月11日付)

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目次
1 東京弁護士会の綱紀・懲戒の手続
2 アディーレと東京弁護士会との関係等
3 アディーレの景品表示法違反(有利誤認)
4 アディーレに対する懲戒処分
5 東京弁護士会の会長談話及び懲戒処分の公表
6 アディーレの説明書面
7 日弁連懲戒委員会の裁決
8 2020年6月11日付の酒井将弁護士の陳述書の記載
9 参考となる外部HP

1 東京弁護士会の綱紀・懲戒の手続
(1)ア   東京弁護士会の綱紀・懲戒の手続については,東弁リブラ2010年7月号「綱紀・懲戒-綱紀委員会から7つのメッセージ- 総論:綱紀・懲戒制度の概要」が非常に参考になります。
イ 7つのメッセージは以下のとおりです。
① 委任契約書の作成など-形で伝え合うことの大切さ
② 預り金に関して
③ 準備書面等を書くにあたって
④ 「自力救済」-意識してますか
⑤ 利益相反・中立義務違反について
⑥ 債務整理事件の処理について
⑦ 刑事弁護を巡るトラブルについて
(2)   平成22年7月現在,東京弁護士会の綱紀委員会は弁護士委員が100人,外部委員が9人の合計109人であり,懲戒委員会は弁護士委員8人,外部委員7人の合計15人です。
   綱紀委員会では,弁護士委員は原則として3名1組の調査部を構成していますし,弁護士委員には若手も多数います。
   懲戒委員会の弁護士委員はベテランがほとんどです。
(3) 東弁リブラ2010年7月号「綱紀・懲戒-綱紀委員会から7つのメッセージ- 総論:綱紀・懲戒制度の概要」1頁目には以下の記載があります。
   弁護士を懲戒することができるのは,当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会のみです。
   弁護士の懲戒制度における大きな特長であり,いわゆる弁護士自治の中核をなすものです。このように他に類例のない制度であるだけに,しばしば「かばいあい」「なれあい」などのいわれのない非難が寄せられますが,実際には厳正に運用されており,この点は綱紀委員会(以下,東京弁護士会綱紀委員会のことを「当委員会」といいます。一般に綱紀委員会を指すときは「綱紀委員会」といいます。)や懲戒委員会の外部委員(裁判官,検察官,学識経験者から選出された委員)からも評価されているところです。

2 アディーレと東京弁護士会との関係等
(1) アディーレの代表弁護士であった石丸幸人弁護士(56期)は,平成21年度東京弁護士会会長選挙に立候補したものの,落選しました。
(2) 東京弁護士会は,アディーレに対し,平成22年10月5日,破産手続の申立て遅滞等を理由に戒告の懲戒処分を出しました(弁護士自治を考える会HPの「弁護士法人アデーレ法律事務所の懲戒処分の要旨」参照)。
(3)ア アディーレ所属の弁護士であった赤瀬康明弁護士(新64期)は,平成27年度東京弁護士会副会長選挙,及び平成28年度東京弁護士会副会長選挙に立候補したものの,落選しました(外部HPの「「任意加入制」提案,東弁副会長候補出馬という「始まり」」,及び外部ブログの「東京弁護士会会長選挙における「理念なき立候補者」へ」参照)。
イ 赤瀬康明弁護士は,平成28年度副会長選挙の選挙公報で以下のとおり記載していたみたいです(外部ブログの「東京弁護士会会長選挙における「理念なき立候補者」へ」参照)。

   昨年度の副会長選挙では私が掲げたマニフェスト以前に、私の立候補には「理念がない」とのお声をいただきました。
   その声がいう「理念」とはなんでしょうか?
   「理念」という言葉をひとり歩きさせ、何も動かないことでしょうか?
   その声がいう「理念」が、東京弁護士会の会員の方を満足させたのでしょうか?
   私に「理念」があるとしたら、ただひとつ。それは、「実際に決断・実行し、東京弁護士会の会員にとって東京弁護士会をより魅力的な会にすること」です。
   東京弁護士会にとってお客様はだれでしょうか?
   誰のお金によって運営できているのでしょうか?
   いうまでもなく、東京弁護士会に所属する会員こそが「お客様」であるはずです。
   他の誰でもなく、会員の方こそが会費を支払っているのです。
   もう一度、皆様にお尋ねします。
   今の弁護士会のあり方や活動に本当に満足していますか?

   今の弁護士会の活動はあなたの意志を本当に反映していますか?

(4) アディーレは,司法修習生向けの合同就職説明会への参加を拒否されたことを理由に,東京弁護士会に対して損害賠償請求訴訟を提起していましたが,東京地裁平成29年2月10日判決で敗訴しました(弁護士自治を考える会HPの「アディーレ法律事務所が敗訴 東京地裁,就職説明会拒否は「合理的」」参照)。
(5) 東京弁護士会綱紀委員会は,平成29年4月3日までに,アディーレについて懲戒審査相当とする議決を出しました(産経ニュースHPの「「今だけ無料」処分…アディーレ法律事務所、代表弁護士ら「懲戒審査相当」 東京弁護士会などの綱紀委議決」参照)。

3 アディーレの景品表示法違反(有利誤認)
(1)   アディーレは,平成27年10月22日,新聞の広告欄及び自社のHPに掲載した「お詫びとお知らせ」において,「平成27年9月1日から返金保証キャンペーンを廃止し、着手金の返金保証などの上記各サービスを、期間を限定しないで実施する恒常的なサービスへと改めました。期間限定であると誤認されて返金保証キャンペーンにお申し込みをされた方で、ご依頼の解除を希望される場合には、契約を解除させていただいたうえで、無条件に着手金全額をお返しさせていただきます。」と表明しました(国民生活センターHPの「弁護士法人アディーレ法律事務所「債務整理に係る事務【誇大表示・広告に関するお知らせ・返金】」参照」)。
(2) 消費者庁は,アディーレに対し,平成28年2月16日,債務整理・過払い金返還請求に係る役務について,景品表示法に違反する行為(有利誤認)を行わないように命じる措置命令を出しました(消費者庁HPの「弁護士法人アディーレ法律事務所に対する景品表示法に基づく措置命令について」参照)。
(3)ア 消費者庁HPの「景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?」には以下の記載があります。
   景品表示法に違反する不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、当該行為を行っている事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られます。
   また、事業者が不当表示をする行為をした場合、景品表示法第5条第3号に係るものを除き、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じます(課徴金納付命令)。
イ アディーレに対する懲戒処分からすれば,弁護士法人の場合,消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けることは,弁護士法人の存亡に直結する大問題になる可能性がある気がします。
(4) 消費者庁HPの「景品表示法」「景品表示法に基づく法的措置件数の推移及び措置事件の概要の公表」(平成29年10月18日掲載)が載っています。
   これによれば,景品表示法7条に基づく措置命令(平成21年8月末日までは公正取引委員会による排除命令)の件数の推移は以下のとおりです。
平成19年度:56件,平成20年度:52件,平成21年度:12件
平成22年度:20件,平成23年度:28件,平成24年度:37件
平成25年度:45件,平成26年度:30件,平成27年度:13件
平成28年度:27件
(5) アディーレは,平成28年4月施行の改正景表法が定める課徴金相当額の約6億6500万円を公益財団法人に寄付しました(産経ニュースHPの「アディーレ「手段の悪質性際立つ」と認定 東京弁護士会の懲戒委員会 処分理由の詳細判明」参照)。
(6) 平成29年10月26日付の消費者庁の行政文書不開示通知書によれば,「消費者庁が景品表示法違反を理由に措置命令を出した結果,対象となった事業所が倒産した事例に関して消費者庁が作成し,又は取得した文書(直近のもの)」は存在しません。

4 アディーレに対する懲戒処分
(1)ア ライフアンドマガジン株式会社HP「アディーレ業務停止2か月の衝撃 大規模法人への業務停止で一体,何が起こったか!?」が載っています。
イ 東京弁護士会は,アディーレに対し,平成29年10月11日,景品表示法の有利誤認表示に該当する業務広告を約4年10か月間出していたことを理由に,業務停止2ヶ月の懲戒処分を出しました(NAVERまとめの「アディーレ法律事務所が懲戒処分&業務停止に 原因をまとめてみた ブラマヨのCMは中止か?」参照)。
ウ 景品表示法に違反する業務広告を出すことは,弁護士の業務広告に関する規程3条6号の「法令又は本会若しくは所属弁護士会の会則及び会規に違反する広告」に該当する結果,懲戒理由となります(東弁リブラ2017年3月号「若手セミナー 効果的な広告戦略と落とし穴」12頁(PDF11頁))。
(2) 弁護士自治を考える会HPの「弁護士法人アデーレ法律事務所 業務停止2月混乱する裁判所・東弁が事件を引き継ぎ、一弁、二弁、神奈川指くわえて見てるだけ! 」には以下の記載があります(業務停止1月の場合でも,顧問契約は解除する必要があります。)。
① 懲戒請求者はアデーレの支店がある全国の弁護士会に懲戒申し立てをしました。各弁護士会の綱紀委員会の多くは懲戒請求を棄却をしています。棄却の理由は地方ではテレビCMがあまり放送されていないから影響はないという理由です。
② 綱紀委員会が「懲戒相当」と議決したのは、「東京」「神奈川」「札幌」「兵庫」「愛知」です。東京弁護士会以外は現在、懲戒委員会で懲戒処分の審議をしています。
③ 業務停止1月と業務停止2月以上ではまったく違います。業務停止1月では、受任中の事件は辞任することはありません。
④ 神奈川県弁護士会は綱紀委員会で「懲戒相当」と議決しましたが懲戒委員会で「処分なし」にしました。
(3) アディーレは,「依頼者の皆さまに多大なご迷惑をおかけし深くおわび申し上げます。もっとも、事務所の存亡にかかわる業務停止処分を受けることは、行為と処分の均衡を欠くものと考えています」というコメントを出し,日本弁護士連合会に処分についての審査などを求めるとしています(NHK NEWS WEBの「アディーレ法律事務所に東京弁護士会が業務停止処分」(2017年10月11日20時53分)参照)。
(4)ア 寺林智栄弁護士のブログの「実はけっこう奥深い,弁護士業務広告の世界。」には以下の記載があります。
① 東弁での実情からすると、広告規程違反(いわゆる形式犯)の情報提供自体はあまりなくて、実質的な非行が伴っているケースの情報提供がほとんどとのことです(**センターの表示が、実際に非弁提携を伴うケースもあるようです)。
② いわゆる「形式犯」についての多くは、会の方から「ここまずいよ、直しなさい」という指示が飛んで来た場合にきちんと対応していれば、大事にはならないようで、そういう意味でいうと、広告規制について、あまり過度に恐怖心を感じる必要もないのかな、と思っています。
イ 私は,弁護士法人又は法律事務所のHPが広告規程に違反することだけを理由として,戒告等の懲戒処分がなされた前例は知りません。
   ただし,HPの広告記載が一因となった事例として,平成20年10月6日付で大阪弁護士会が戒告を行った事例(自由と正義2009年2月号135頁及び136頁)はあります。
(6) アディーレに対する懲戒請求は,弁護士自治を考える会が行ったみたいですが,懲戒請求者は,「大半が門前払いだったし、もともと戒告が出れば上出来だと思っていたのに、東京弁護士会が突然重い処分を下したのでびっくりした」と話しているそうです(東洋経済オンラインの「誰がアディーレを業務停止に追い込んだのか 懲戒請求者も驚愕,重すぎる「業務停止2ヶ月」」参照)。
(7) アディーレは,景表法違反の広告を中止した後の平成28年に山形支店,酒田支店,帯広支店及び一宮支店を開設し,平成29年に甲府支店,宮崎支店,秋田支店,高知支店,鳥取支店,松江支店,下関支店,豊中千里中央支店,枚方支店及び福井支店を開設しました。
   そのため,これらの支店は,アディーレの景表法違反とは何ら関係がないと思いますが,それにもかかわらず,これらの支店も含めて東京弁護士会によって業務停止処分が下されました。

5 東京弁護士会の会長談話及び懲戒処分の公表
(1) 会長談話
東京弁護士会HPに掲載されている「弁護士法人アディーレ法律事務所らに対する懲戒処分についての会長談話」(2017年10月11日付)は以下のとおりです。
   ただし,「消費者庁より広告禁止の措置命令を受けました」と書いてあるものの,消費者庁は,アディーレに対し,景表法に違反する広告を出すことを禁止したにすぎず,広告を出すこと自体は禁止していないと思います。

2017年10月11日

東京弁護士会 会長 渕上 玲子
   本日、東京弁護士会は、弁護士法第56条に基づき、弁護士法人アディーレ法律事務所に対し業務停止2月、元代表社員の弁護士石丸幸人会員に対し業務停止3月の懲戒処分をそれぞれ言い渡しました。
   同弁護士法人は、広告表示が改正前不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)の有利誤認表示に該当したとの理由で、消費者庁より広告禁止の措置命令を受けましたところ、この度、当会は、同弁護士法人の広告行為が景表法に違反し、かつ日本弁護士連合会の弁護士等の業務広告に関する規程等にも抵触するものであり、弁護士法人として品位を失うべき非行であると判断し、上記のとおりの懲戒処分を申し渡しました。
   同弁護士法人の広告表示は、債務整理・過払金返還請求に係る役務を一般消費者に提供するにあたり、実際の取引条件よりも有利であると一般消費者を誤認させ、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある極めて悪質な行為であり、しかも、長期間にわたって多数回反復継続されている組織的な非行と言わざるを得ません。
   当会は、このような事態が生じたことを重く受け止め、今後も、市民の弁護士会に対する信頼を確保するために、弁護士や弁護士法人の非行の防止に努めるとともに、非行に対しては厳正に対処して参ります。
   なお、同弁護士法人の依頼者の方が多数おられることから、下記のとおり臨時電話相談窓口を設け、依頼者からのご相談に応じております。

臨時電話相談窓口 電話 03-6257-1007
(受付時間は午前9時から午後5時まで、土日祝日を除く)
(2) 懲戒処分の公表
   東京弁護士会HPに掲載されている「懲戒処分の公表」は以下のとおりです。
 本会は下記会員に対して,弁護士法第57条に定める懲戒処分をしたので,お知らせします。

被 懲 戒 者  石丸幸人(登録番号30934)
                         弁護士法人アディーレ法律事務所(届出番号167)
登録上の事務所   東京都豊島区東池袋3-1-1サンシャイン60
懲戒の種類   石丸 幸人                         業務停止3月
                         弁護士法人アディーレ法律事務所   業務停止2月
効力の生じた日   2017年10月11日

懲 戒 理 由 の 要 旨
   被懲戒者石丸幸人(以下「被懲戒者石丸」という。)は,被懲戒者弁護士法人アディーレ法律事務所(以下「被懲戒者法人」という。)の元代表社員である。
   被懲戒者法人は,被懲戒者石丸の指示を受けて,被懲戒者法人ウェブサイトにおいて,債務整理,過払金返還請求について,それぞれ,約1か月ごとの期間を限定して,
(1)平成22年10月6日から同25年7月31日まで,過払金返還請求の着手金を無料又は値引きする,
(2)平成25年8月1日から同26年11月3日まで,借入金の返済中は過払金診断を無料とする,過払金返還請求の着手金を無料又は値引きする,
(3)平成26年11月4日から同27年8月12日まで,契約から90日以内に契約の解除をした場合に着手金全額を返還する,借入金の返済中は過払金診断を無料とする,過払金返還請求の着手金を無料又は値引きする,との広告を継続して行い,改正前不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)第4条第1項第2号の有利誤認表示をした。
   これは,景表法,日本弁護士連合会の弁護士等の業務広告に関する規程等に違反するものであり,弁護士法第56条第1項の品位を失う非行に該当する。
2017年10月11日
東 京 弁 護 士 会
会 長 渕 上 玲 子
(3) その他
ア   東京弁護士会が最高裁判所に対して送付した,平成29年10月11日付の「懲戒処分の通知及び懲戒処分の公表について」を掲載しています。
イ 最高裁判所が,平成29年10月11日付で全国の高等裁判所事務局長に対して送付した,弁護士法人等の懲戒処分(業務停止)について(事務連絡)を掲載しています。


6 アディーレの説明書面
(1) アディーレは,依頼者に対し,平成29年10月13日付で以下の文面の書面を発送したみたいです(外部HPの「アディーレ法律事務所より書面が届きました!契約解除上等!委任契約解除上等!」及びツイッター画像参照)。
(以下引用)

弁護士会からの業務停止処分についてのお詫びと契約解除のお知らせ
謹啓
   皆様におかれましては,時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
   平素は格別のお引き立てを賜り,厚く御礼申し上げます。

   さて,既に報道等でご承知のことと存じますが,平成29年10月11日に,東京弁護士会より,当事務所および当事務所社員弁護士石丸幸人が,業務停止処分を受けております。折角ご依頼頂いたにもかかわらず,ご迷惑,ご心配をお掛けし,深くお詫び申し上げます。
   このたびの処分につきましては,平成28年2月16日に消費者庁より受けた,景品表示法違反による措置命令と同様の理由での処分となります。
   今回の業務停止により,平成29年10月11日から同年12月10日までの間,弁護士法人としての業務を停止しなければならなくなっています。
   そのため,大変申し訳ございませんが,本書面をもって,当事務所(契約書上に記入のある共同受任の個人受任弁護士,司法書士を含む)との委任契約を解除させていただきます。
   ご依頼者様には,順次,事件の内容及び進捗状況に応じたご案内書面を送付致しますので,今しばらくお待ちいただきますよう,お願い申し上げます。

   なお,当事務所との委任契約を解除した後のご来社様の委任事件に関するご対応については,下記のいずれかから選択して頂くこととなります。
① ご依頼者様ご本人で対応していただく。
② 他の事務所の弁護士の先生に新たに委任いただく。
③ 弊事務所の弁護士(弊事務所所属の弁護士のうち,責任のある弁護士とご契約いただくことを予定しております。)に個人として委任契約を締結していただく。

   上記①,②の場合には,当事務所より,ご依頼者様ないし新規受任の先生に案件及び資料等を引継がせていただきます。
   上記の③の場合には,ご依頼者様が個人の弁護士に依頼されるという意思を明らかにした書面をいただくことになりますので,予めご承知おきください。
   順次行わせて頂く個別のご連絡の際に,上記について詳細をご案内させていただき,意思確認をさせていただきたいと存じますので,何卒宜しくお願い致します。

   このたびは,ご依頼者様の皆さまに多大なるご迷惑をお掛けしますことを重ねてお詫び申し上げます。
謹白
(2)ア アディーレの平成29年10月13日付の書面には委任契約を解除すると書いてあるものの,支払済みの着手金,預り金及び概算実費の清算方法については言及されていません。
   そもそも,弁護士は,委任の終了に当たり,委任契約に従い,金銭を清算したうえ,預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければなりません(弁護士職務基本規程45条)。
イ   受任者であるアディーレは委任事務を履行しない限り報酬を請求できませんし(民法648条2項),委任契約の終了に帰責事由があるため履行の割合に応じた報酬請求権を有しないかもしれません(民法648条3項反対解釈)。
   そのため,アディーレが途中まで担当していた訴訟を別の弁護士が引き継いだ場合,アディーレは元依頼者に対し,履行の割合に応じた成功報酬金を請求することもできないかも知れません。

7 日弁連懲戒委員会の裁決
 自由と正義2018年5月号108頁に掲載された日弁連懲戒委員会の裁決(平成30年3月15日発効)の「理由の要旨」は以下のとおりであり,弁護士法人アディーレに対する業務停止2月は維持され,石丸幸人弁護士に対する業務停止3月は業務停止2月に変更されました。
(1) 審査請求人に係る本件懲戒請求事件につき、東京弁護士会(以下「原弁護士会」という。)の認定した事実及び判断は、原弁護士会懲戒委員会の議決書(以下「原議決書」という。)に記載のとおりであり、原弁護士会は前記認定と判断に基づき、審査請求人を業務停止3月の処分に付した。
(2) 日本弁護士連合会懲戒委員会(以下「当委員会」という。)が、審査請求人から当委員会に新たに提出された証拠も含め審査したところ、①本件広告は、その掲示期間が約4年10か月と長期間であり、広告対象地域も全国に及び、広告期間中の対象業務の売上高(弁護士報酬)も高額であることが認められ、本件広告の規模及び社会的影響は軽微とはいい難いこと、②本件広告が不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)に違反することは容易に認識し得たと考えられるところ、本件広告は効果があれば継続する意図の下で58回にわたって更新掲示されており、遵法意識の希薄さ及び不注意の程度は軽微とはいい難いこと、③本件広告により損害を受けた顧客の存在が顕在化しない場合でも、景表法の保護する公益(一般消費者の利益の保護)は大きく損なわれたと考えられること等を考慮すると、審査請求人が平成24年7月に弁護士法人アデイーレ法律事務所(以下「弁護士法人アデイーレ」という。)代表社員を退いていたこと及び弁護士法人アディーレが公益目的の高額寄付を行ったこと等を考慮しても、審査請求人と弁護士法人アデイーレに対し、それぞれ業務停止2月の処分はやむを得ないところである。原弁護士会は、本件において審査請求人に対し業務停止3月、弁護士法人アディーレに対し業務停止2月の処分をそれぞれ付している。しかし、当委員会は、本件における両者の責任の程度は同等と判断する。
(3) なお、審査請求人は、審査請求人の業務停止処分に伴う弁護士法人アデイーレからの法定脱退(弁護士法第30条の22第6号)による課税問題が危倶されるので、業務停止処分は著しく重い不当な処分であり、戒告に変更すべきであると主張する。この点は、処分の相当性の判断にあたって考慮されるべき事由の一つであるが、当委員会は、この点を考慮しても戒告は不相当であり、業務停止2月の処分はやむを得ないと判断する。
(4) 以上のとおり、審査請求人を業務停止3月とした原弁護士会の判断は重きに失し、これを業務停止2月に変更するのが相当である。

8 2020年6月11日付の酒井将弁護士の陳述書の記載
(1)ア 2020年6月11日付の酒井将弁護士の陳述書21頁及び22頁には以下の記載があります。
 2017年10月12日に、アディーレが景表法違反の件で業務停止2月の懲戒処分を受けて、数万人の依頼者の案件を全件解除させられるというニュースが流れました。また、友人の弁護士から、東弁懲戒委員長の◯◯◯弁護士(山中注:リンク先では実名です。)が、アディーレの量刑について、「アディーレが東京弁護士会を訴えたこと等、これまでにたくさんの『気に食わないこと』があった」ので、これらを他事考慮して業務停止2月を選択したと述べていたことなどを聞かされました(審乙14)。そして、前述のとおり、東弁の執行部は、当法人が新宿事務所から代理権超え案件を買い取ったことを前提にしており、当法人を一罰百戒に処す意図があると聞いていたことや、東弁の執行部の弁護士たちが「A(アディーレ)の次は、B(ベリーベスト)だ。」などと述べて、当法人が業務停止以上の重い処分を受けることがもはや既定路線であるかのような話がなされていると耳にしたのでした。
イ アディーレは,「所属弁護士会の秩序又は信用を害したとき」(弁護士法56条1項)に該当することをも考慮して,業務停止2月になったのかも知れません。
(3) 弁護士法人ベリーベスト法律事務所,弁護士酒井将及び弁護士浅野健太郎に対する懲戒処分(業務停止6月)の審査請求事件に関して開設された,「非弁提携を理由とする懲戒請求について」と題するHPに色々な資料が載っています。


9 参考となる外部HP
(1) アディーレHP
・   アディーレは,平成29年10月19日,「弁護士会からの業務停止処分についてのお詫びと契約解除の状況に関してのご案内」を自社HPに掲載しました。
(2) 東京弁護士会HP
 「弁護士法人アディーレ法律事務所に関してお寄せいただくご質問とその回答について」(平成29年10月20日付)が載っています。
(3) ネットメディア
・   ライブドアニュースの「アディーレ法律事務所が業務停止処分 数万人の依頼者はどうなる?」には,「依頼者はのべ5万人超、最大で10万人前後になる可能性」と書いてあります。
・ exciteニュースに「「アディーレ法律事務所」が大ピンチ 業務停止処分は妥当なのか?」が載っています。
・ ダイヤモンドオンラインに「「アディーレは弁護士ムラの掟を踏みにじった」懲戒処分の舞台裏」(平成29年12月7日)が載っています。
(4) 弁護士のHP
・ 福岡の家電弁護士のブログに「アディーレ法律事務所の法人が業務停止処分→依頼者が注意すべきこと」が載っています。
・   法律事務所ホームワンHPに「アディーレ法律事務所の業務停止についてのよくある質問」が載っています。
・ 古賀克重法律事務所ブログ(福岡県弁護士会所属)に「弁護士法人アディーレに関する無料電話相談を担当した雑感」が載っています。
・ 弁護士法人岩田法律事務所HPに「アディーレショック」が載っています。

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