弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例


目次

第1 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
第2 関連記事その他

第1 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
・ 日弁連調査室が作成した,弁護士業務ハンドブック(平成24年)45頁ないし48頁には,弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例として以下のものが記載されています。

1 母が差入営業を営む店舗の奥に法律事務所を置いたもの

2 酩酊して過激粗野な行為をしたもの

3 借金の手段方法を誤れば品位を失うべき非行となるとするもの

4 国選弁護人が任意的報酬を受領すること

5 実質的に同一事件ともいえる2つの事件について,同一事実につき相反する証明内容を有する2個の疎明資料を裁判所に提出したもの

6 被告人の利益のため内容虚偽の示談書を提出したこと

7 委任事項の範囲を超えて示談すること

8 訴訟代理人として,依頼者の意思に明らかに反する裁判上の和解を成立させたこと

9 依頼者が立替費用を弁償しないので預り中の書類を利用して不動産の登記名義を無断で変更したもの

10 あらかじめ報酬契約が締結されていない場合,報酬額について依頼者と何ら交渉することなく預り金品を抑留すること

11 弁済供託をしてこれを理由に請求異議の訴えを提起するとともに強制競売開始決定の取消しを得ておきながら,依頼者が供託金を取り戻すのに協力的処理をしたもの

12 依頼者から預託を受けた保証代用証券の横領,訴訟費用等の費消

13 委任の目的である債権の回収金を受領しながら,種々虚偽の事実を告げて依頼者に受領金の引渡しをしなかったこと

14 相続財産管理人としてなすべき義務の懈怠

15 弁護士である債務者会社の代表者が,他の債権者があるにもかかわらず,妻である一債権者を厚遇して他の債権者を無視する行為

16 相手方からの取立金及び還付を受けた保証金を依頼者に返還しなかったので,紛議調停の申立てがなされ,和解が成立したがその義務を履行しなかったもの

17 被冒用者から委任を受けないのに,他人から名義冒用の委任状を受領し,被冒用者の意思を確認せず,また被冒用者から委任状の追認を拒否された後もその委任状を用いて訴訟行為をなしたもの

18 受任している事件につき依頼者から事件処理に対する不満の表明とともに着手金の返還請求をうかがわせる内容の手紙を受け取っていながら,依頼者の真意を確認せず依頼者の代理人として新訴を提起したこと

19 報酬契約のない事件について,依頼者の方針に反する事件処理をしたり,その信頼を失うような不十分な事務処理をしたことを理由に委任契約を解除された後,話し合いをすることなく報酬請求の訴えを提起する行為

20 破産管財人に選任された後,破産財団に属する動産について無断搬出を放置したり,監査委員の同意を得ないで任意売却をなす行為

21 仮処分の保証金等として預かった金員につき,本来の趣旨に使用せずその全部又は一部を本人に返還しない行為

22 自己名義の法律事務所において非弁活動を行うことを放置した行為

23 相手方申請の証人に対して,証明妨害となる郵便を発送した行為

24 公判廷内へ写真機を携行する行為及び公判廷内で許可を受けずに写真を撮影する行為

25 破産管財人に選任された後,破産事件の担当裁判官に対して背広等を贈与した行為及び破産会社経営のゴルフ場を買い取るため会社を設立した行為

26 酒気帯びの疑いの濃い状態での信号無視,免許証の提示拒否,呼気検査拒否等の行為

27 相手方代理人の了解なく直接相手方本人と交渉した上,相手方代理人を誹謗,中傷して懲戒に陥れようとする行為

28 相手方当事者に対する訴状の送達につき,十分な調査をしないまま公示送達の申立てをして,相手方当事者欠席のまま勝訴判決を得た行為

29 会社の監査役の地位にありながら,当該会社の債権者の代理人として,当該会社所有の不動産に対して仮差押えを申し立てる行為

30 和解成立後,和解の依頼者を相手方とする事件を和解の相手方から受け,元依頼者に対する和解上の債務をなしくずし的に消滅させる弁護活動をする行為

31 刑事告訴手続を受任しながら放置し,依頼者に虚偽の報告をし続けた行為

32 契約解除時における室内遺留品を随意処分できる旨の自力救済をあらかじめ認める内容の賃貸借契約条項は公序良俗に反し無効であるのに,これを安易に有効であると考え,室内を一度も見ず,遺留品目録も作成せず,遺留品一切を処分した行為

33 民事事件の解決方を受任しながら長期にわたり処理を怠り,提訴していないにもかかわらず,虚偽の口頭弁論期日を報告するなど,約11か月にわたり依頼者を欺いた行為

34 代理人として株式の売却事務を処理する際,対向的当事者に対して仲介料を要求し,多額の金員を受領等した行為

35 弁護士が自己の顧問先を相手方として債権の取立てを行う行為

36 証拠が変造されたことを知りつつ,これを書証として提出する等した行為

37 法律家でない者に対して「審判」,「出頭命令」と題する書面を送付し,何ら法的根拠がないのに,あたかも法的手続きによるかの如く装った行為

38 接見禁止等がなされている被疑者に対し,接見の際,虚偽の供述をそそのかすような手紙を仕切り版越しに閲読させ,接見室において2度にわたり被疑者の母親と携帯電話で会話をさせた行為

39 養子縁組の証人となった弁護士が養親双方の意思の確認を怠った行為及び遺言執行者への就任を承諾し,任務遂行中でありながら,遺留分減殺請求事件において相続人の一部の代理人となる行為

40 訴訟提起していないのに依頼者に対し訴訟提起したと偽り,偽造した裁判所受付印が押捺してある訴状のコピーを送付した行為

41 テレビ番組制作者から依頼を受け,職務上の請求として,戸籍謄本,住民票等を交付請求して取得し,番組制作者に交付し,対価を得た行為

42 遺言執行者が,遺言執行終了後,遺言無効確認請求訴訟において特定の相続人の訴訟代理人として訴訟活動をする行為

43 民事再生法施行後約9か月経過した時期において,同法の調査を怠り,法定の期間内に受継の申立てをしなかった行為

44 国選弁護人である弁護士が,勾留中の被疑者への差し入れの手数料として10万円を受領した行為

45 マンションの一室の占有回復を依頼された事案で,期限までに明渡しのないときは鍵を変更する旨の内容証明郵便を出し,入口等に立入禁止の張り紙を張った上,玄関の鍵を取り換えた行為

46 株主構成に争いのある株式会社の代表取締役の職務執行者が,任務終了後,当該会社の株主権確認請求訴訟の当事者の一方の代理人に就任する行為

47 訴訟上の証拠として提出する目的で行った弁護士会照会の回答書を,目的外使用が禁止されていることを看過してシンポジウムで資料として配布し,目的外使用が禁止されていることを注意喚起された後も回収しなかった行為

48 共犯者の弁護人が,弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者に該当しないにもかかわらず,身体の拘束を受けている他の共犯者と立会人なくして接見した行為

49 成年後見人が,被後見人の死亡後,残余財産の引渡し未了のまま,一部相続人の代理人として遺産分割事件を担当した行為

50 法律相談等を通じて損害賠償請求訴訟の依頼を受けたが,速やかにその諾否を依頼者に通知しなかった行為

第2 関連記事その他
1 最高裁平成15年4月18日判決は以下の判示をしています。
    法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは,法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである。けだし,民事上の法律行為の効力は,特別の規定がない限り,行為当時の法令に照らして判定すべきものであるが(最高裁昭和29年(ク)第223号同35年4月18日大法廷決定・民集14巻6号905頁),この理は,公序が法律行為の後に変化した場合においても同様に考えるべきであり,法律行為の後の経緯によって公序の内容が変化した場合であっても,行為時に有効であった法律行為が無効になったり,無効であった法律行為が有効になったりすることは相当でないからである。
2 最高裁平成31年3月7日判決は,違法な仮差押命令の申立てと債務者がその後に債務者と第三債務者との間で新たな取引が行われなくなったことにより喪失したと主張する得べかりし利益の損害との間に相当因果関係がないとされた事例です。
3 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義
 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
・ 「弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
→ 令和元年の場合,審査請求の件数は30件であり,原処分取消は3件であり,原処分変更は1件です。
・ 弁護士会の懲戒手続
・ 弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名,並びに第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由
・ 弁護士の業務停止処分に関する取扱い
・ 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
・ 弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表


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