目次
1 総論
2 大阪弁護士会の会務活動に関する守秘義務を定める条文
3 委員会活動に関する守秘義務を定めた条文は原則としてないこと
4 日弁連の特別委員会の場合,守秘義務があること
5 関連記事その他
1 総論
・ 弁護士法23条及び弁護士職務基本規程23条の「職務上知り得た」とは,弁護士がその職務を行うについて知り得たという意味であり,弁護士が弁護士法3条の依頼者から依頼を受け,訴訟事件等その他一般的法律事務を処理する上で知り得た事項についての守秘義務が課せられ,また,将来依頼を受ける予定で知り得た事項にも及びます。
しかし,他方,そのような弁護士としての一般的法律事務を行うものではない,例えば,弁護士会の会務を行う際に知り得た事実については弁護士としての守秘義務は及びません(大阪高裁平成19年2月28日判決)。
ただし,会務を行う際に知り得た事実であっても,当該委員会にかかる会規等に秘密保持義務が定められていれば,当該会規等の違反となり,それが弁護士の非行に当たる場合,懲戒処分の対象となります。
2 大阪弁護士会の会務活動に関する守秘義務を定める条文
① 大阪弁護士会資格審査手続規程24条
→ 資格審査会の会長,委員,予備委員並びに大阪弁護士会の役員及び職員は,審査会の審査に関し職務上知ることのできた秘密を漏らしてはなりません。
② 大阪弁護士会綱紀調査手続規程10条
→ 綱紀委員会の委員,予備委員,鑑定人及び調査員並びに大阪弁護士会の会長,副会長及び職員は,綱紀委員会の調査及び議決に関し,職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
③ 大阪弁護士会懲戒手続規程8条
→ 懲戒委員会の委員,予備委員,鑑定人及び調査員並びに大阪弁護士会の会長,副会長及び職員は,綱紀委員会の調査及び議決に関し,職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
④ 大阪弁護士会紛議調停手続規程21条
→ 紛議調停委員会の委員長・副委員長又は委員並びに大阪弁護士会の会長・副会長及び職員は調停又は議事について,職務上知ることができた秘密を漏らしてはなりません。
⑤ 弁護士法第二十三条の二に基づく照会に係る嘱託に関する規則6条
→ 23条嘱託は,関与した案件その他について職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
⑥ 大阪弁護士会企画調査室規則7条
→ 企画調査室嘱託は,調査に関して知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。
⑦ 大阪弁護士会法規室規則6条
→ 法規室嘱託は,調査に関して知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。
⑧ 大阪弁護士会人権救済調査室規則7条
→ 人権救済調査室嘱託は,調査に関して知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。
⑨ 大阪弁護士会広報室規則7条
→ 広報室嘱託は,職務上知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。
3 委員会活動に関する守秘義務を定めた条文は原則としてないこと
・ ①大阪弁護士会委員会規程及び②大阪弁護士会特別委嘱委員に関する規程には,委員会活動に関する守秘義務を定めた条文はありません。
ただし,人権擁護委員会規則19条2項は,委員としての職務上知ることのできた秘密を漏らすことを禁じています。
4 日弁連の特別委員会の場合,守秘義務があること
・ 日弁連の特別委員会の場合,日弁連の委員,幹事及び職員は,日弁連会長の承認を経ない限り,委員会の議事の内容に関して外部に発表,その他情報を漏らしてはなりません(特別委員会規則12条)。
5 関連記事その他
(1) 弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は通常,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当しますから,文書提出命令によって提出を求めることもできません(最高裁平成23年10月11日決定参照)。
(2) 「文書提出命令」も参照してください。