弁護士以外の士業の懲戒制度


目次

0 総論
1 公認会計士及び監査法人の懲戒
2 行政書士及び行政書士法人の懲戒
3 公証人の懲戒
4 司法書士及び司法書士法人の懲戒
5 土地家屋調査士及び土地家屋調査士法人の懲戒
6 税理士及び税理士法人の懲戒
7 社会保険労務士及び社会保険労務士法人の懲戒
8 弁理士及び弁理士法人の懲戒
9 関連記事その他

0 総論
(1) 特許庁HPに「行政庁による士業の懲戒比較表」及び「士業団体による会員の処分比較表」が載っています。
(2) 弁護士の場合と異なり,他の士業の場合,行政庁が懲戒します。
(3) 公証人以外の士業について懲戒事由がある場合,何人でも懲戒請求をすることができます。

1 公認会計士及び監査法人の懲戒

(1) 以下の場合,金融庁長官は,公認会計士又は監査法人について,戒告,2年以内の業務の停止又は登録の抹消(監査法人の場合は解散)の処分を行います(公認会計士法29条各号)。
   また,審判手続を経た上で,公認会計士又は監査法人に対して課徴金納付命令を出すことがあります(公認会計士につき公認会計士法31条の2,監査法人につき公認会計士法34条の21の2)(権限の委任につき公認会計士法49条の4)。
① 公認会計士又は監査法人が虚偽,錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽,錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合(公認会計士法30条)
② 公認会計士が公認会計士法若しくは公認会計士法に基づく命令に違反した場合又は公認会計士法34条の2に基づく指示に従わない場合(公認会計士法31条1項)
③ 公認会計士が著しく不当と認められる業務の運営を行った場合(公認会計士法31条2項)
(2) 何人も,公認会計士に懲戒事由に該当する事実があると思料するときは,金融庁長官に対し,その事実を報告し,適当な措置をとるべきことを求めることができます(公認会計法32条1項)。
(3) 金融庁HPの「「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)について」(案)に対するパブリックコメントの結果等について」(平成26年3月14日以後の施行分)に処分期順が載っています。
(4)ア 金融庁HPに「課徴金制度について」が載っています。
イ   公認会計士及び監査法人に対する課徴金制度は平成20年4月に導入されました。
(5) 公認会計士ナビに「公認会計士・監査法人の懲戒処分」が載っています。
(6)ア 日本公認会計士協会HPの「懲戒処分の量定に関する考え方の制定について」に,「懲戒処分の量定に関するガイドライン」が含まれています。
イ 平成29年11月1日付の金融庁の行政文書不開示決定通知書によれば,公認会計士の懲戒の手続が書いてある訓令,通達その他の文書は存在しません。
(7) 公認会計士は,その業務を廃止した場合には,その届出に基づいて公認会計士協会が登録を抹消した時に,その地位を喪失します(最高裁昭和50年9月26日判決)。
(8) 計算書類等は各事業年度に係る会計帳簿に基づき作成されるものであり(会社計算規則59条3項),会計帳簿は取締役等の責任の下で正確に作成されるべきものです(会社法432条1項参照)(最高裁令和3年7月19日判決)。

2 行政書士及び行政書士法人の懲戒

(1) 行政書士が行政書士法若しくは行政書士法に基づく命令,規則その他都道府県知事の処分に違反した場合,又は行政書士たるにふさわしくない重大な飛行があった場合,都道府県知事は,当該行政書士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができます(行政書士法14条)。
行政書士法人が行政書士法又は行政書士法に基づく命令,規則その他都道府県知事の処分に違反した場合,又は運営が著しく不当と認められる場合,戒告,2年以内の業務の全部又は一部の停止,解散の処分をすることができます(行政書士法14条の2)。
(2) 何人も,行政書士又は行政書士法人について懲戒事由に該当する事実があると思料するときは,当該行政書士又は当該行政書士法人の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができます行政書士法14条の3第1項)。
(3) 日本行政書士会連合会HPの「綱紀事案の公表」に,都道府県知事による懲戒処分事例及び単位会長による処分事例が載っています。
(4) 総務省HPの「行政書士制度」に,行政書士法14条及び14条の2に基づく処分の状況(つまり,行政書士の懲戒処分の状況)が載っています。
(5) 日本行政書士会連合会HPに「職務上請求書の適正な使用及び取扱いに関する規則」が載っています。
(6) 大阪府行政書士会HP「内部統制」「職務上請求書の適正な使用について」及び「本会会員の広告に関する運用指針について」が載っています。
(7) 平成29年11月2日付の総務大臣の行政文書不開示決定通知書によれば,行政書士法第14条の3に基づく懲戒の手続が書いてある訓令,通達その他の文書は存在しません。
(8) 行政書士の懲戒に関する文書を以下のとおり掲載しています。
① 行政書士法14条及び14条の2に基づく処分の状況(昭和50年度から平成26年度まで)
② 行政書士法14条及び14条の2に基づく処分の状況(平成27年度)
(9) 攻めと実績の大村法律事務所HP「非弁行為をした行政書士を措置請求」が載っています。
(10)ア 弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為については,弁護士法72条違反の罪が成立します(最高裁平成22年7月20日決定)。
イ 大阪高裁平成26年6月12日判決は以下の判示をしています。
行政書士法一条の二第一項の「権利義務又は事実証明に関する書類」に該当するか否かは,他の法律との整合性を考慮して判断されるべき事柄であり,抽象的概念としては「権利義務又は事実証明に関する書類」と一応いえるものであっても,その作成が一般の法律事務に当たるもの(弁護士法三条一項参照)はそもそもこれに含まれないと解するのが相当である。

3 公証人の懲戒

(1) 公証人が職務上の義務に違反し,又は品位を失墜すべき行為をした場合,法務大臣によって懲戒されます(公証人法79条)ところ,懲戒処分には,譴責,10万円以下の過料,1年以下の停職,転属及び免職があります(公証人法80条)。
(2) 法務大臣が譴責以外の懲戒処分を行う場合,検察官・公証人特別任用等審査会 公証人分科会の議決に基づく必要があります(公証人法81条)。
(3) 法務省HPの「公証制度について」には,「公証人は,取り扱った事件について守秘義務を負っているほか,法務大臣の監督を受けることとされ,職務上の義務に違反した場合には懲戒処分を受けることがあります。」と書いてあります。

4 司法書士及び司法書士法人の懲戒
(1)ア 司法書士が司法書士法又は司法書士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該司法書士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができます(司法書士法47条)。
   司法書士法人が司法書士法又は司法書士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該司法書士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は解散の処分をすることができます(司法書士法48条)。
イ   何人も,司法書士又は司法書士法人に司法書士法又は司法書士法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは,当該司法書士又は当該司法書士法人の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができます司法書士法49条1項)。
ウ 令和2年8月1日以降,司法書士及び司法書士法人の懲戒権者は法務大臣となりました(「令和元年の司法書士法及び土地家屋調査士法改正に関する法務省民事局の御説明資料」参照)。
(2)ア 日本司法書士会HPの「綱紀事案公表一覧」に,司法書士の懲戒処分事例が載っています。
イ 月報司法書士2021年4月号に「特集~倫理を学ぶ」が載っています。
(3) 平成29年11月9日付の法務省文書には以下のことが書いてあります。
① 司法書士若しくは司法書士法人又は土地家屋調査士若しくは土地家屋調査士法人(以下「司法書士等」という。)に対する懲戒処分は,司法書士法又は土地家屋調査士法の規定に基づき,法務局又は地方法務局の長が行うものであり,また,懲戒処分書は当該懲戒処分を行う法務局又は地方法務局の長が作成するものであることから,法務本省では,司法書士等に対する懲戒処分書は保有していません。
② 司法書士等の懲戒処分を行った場合,司法書士法又は土地家屋調査士法の規定に基づき,官報に,当該司法書士等の氏名,所属する司法書士会又は土地家屋調査士会,登録番号,事務所の所在地及び違反行為が掲載されることとなりますので,官報情報検索サービスの利用登録をされているか又は官報を購読されていれば,インターネットの「官報情報検索サービス」を利用して,景品表示法を理由に懲戒処分を受けた司法書士等がいるかどうかを確認することができます。
(4) 平成19年5月17日付の「司法書士等に対する懲戒処分に関する訓令」(法務省訓令)を掲載しています。
(5) 司法書士って,どうよ?HP「司法書士の懲戒処分申立」には,以下の記載があります。
    懲戒には3種類あり、軽い懲戒から順に「戒告」「2年以内の業務の停止」「業務禁止」(司法書士法47条)。業務禁止の場合、3年間は司法書士の欠格事由に該当し、司法書士の登録が取り消されます。3年経過後に改めて登録をうけなければならないのですが、難癖をつけられて登録拒否になることが多いらしいです。おかしな話しですが、業務禁止になったら、司法書士として再起できるのぞみは薄く、実質は資格剥奪に近いと聞きます。
(6) 日本司法書士会連合会HP「司法書士に対する苦情」が載っています。

5 土地家屋調査士及び土地家屋調査士法人の懲戒

(1)ア 土地家屋調査士が土地家屋調査士法又は土地家屋調査士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該土地家屋調査士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができます(土地家屋調査士法42条)。
   土地家屋調査士法人が土地家屋調査士法又は土地家屋調査士法に基づく命令に違反した場合,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該土地家屋調査士に対し,戒告,2年以内の業務の停止又は解散の処分をすることができます(土地家屋調査士法43条)。
イ   何人も,土地家屋調査士又は土地家屋調査士法人に土地家屋調査士法又は土地家屋調査士法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは,当該土地家屋調査士又は当該土地家屋調査士法人の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができます土地家屋調査士法44条1項)。
ウ 令和2年8月1日以降,土地家屋調査士及び土地家屋調査士法人の懲戒権者は法務大臣となりました(「令和元年の司法書士法及び土地家屋調査士法改正に関する法務省民事局の御説明資料」参照)。
(2) 日本土地家屋調査士会連合会HPの「懲戒処分情報の公開」に,以下の懲戒情報が載っています。
① 過去6か月以内の,戒告の処分
② 処分期間終了の日から1年以内の,業務停止処分
③ 処分の日から5年以内の,業務の禁止又は解散の処分
(3) 平成19年5月17日付の「土地家屋調査士等に対する懲戒処分に関する訓令」(法務省訓令)を掲載しています。
(4) 平成27年5月15日付の大阪法務局長の懲戒処分(土地家屋調査士 大阪 第328号(平成30年1月)36頁及び37頁)には,以下の記載があります(誤記と思われる部分を訂正しました。)。
   司法書士法第73条は,司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は,司法書士法第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行ってはならない旨規定している。
   これによれば,非司法書士法人が,司法書士業務に従事させる目的で,司法書士会に入会している司法書士を常時雇い入れて,司法書士法第3条の業務を行わせ,報酬を同法人自らの収入とし,被雇用者たる司法書士にはその者の実績による業務収入額とは関係なく同法人又はこれと密接に関連する者から定額の給与を支払っている場合は,司法書士法第73条に抵触すると解すべきである。

6 税理士及び税理士法人の懲戒
(1) 以下の場合,財務大臣は,税理士又は税理士法人について,戒告,2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止(税理士法人の場合は解散)の処分を行います(税理士につき税理士法44条,税理士法人につき税理士法48条の20第1項)。
① 故意に,真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をした場合(税理士法45条1項)
② 不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ,又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき,指示をし,相談に応じ,その他これらに類似する行為をした場合(税理士法45条1項・36条)
③ 税理士法33条の2に基づき,計算事項,審査事項等を記載した書面に虚偽の記載をした場合(税理士法46条前段)
④ 税理士法又は国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反した場合(税理士法46条後段)
⑤ 税理士法人の運営が著しく不当と認められる場合(税理士法48条の20第1項)
(2) 何人も,税理士について,懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは,財務大臣に対し,当該税理士の氏名及びその行為又は事実を通知し,適当な措置をとるべきことを求めることができます税理士法47条3項)。
(3)ア 国税庁HPに「税理士等に対する懲戒処分等」が載っています。
イ 国税庁HPの「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方(平成27年4月1日以後にした不正行為に係る懲戒処分等に適用)」には,具体的な懲戒処分の基準が書いてあります。
ウ 国税庁HPの「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等」に懲戒処分の対象となった税理士及び税理士法人があいうえお順に掲載されています。
(4) 国税庁HPに「税理士が遵守すべき税理士法上の義務等と懲戒処分」が載っています。
通知弁護士(税理士法51条2項)は,税理士業務を行う範囲において税理士とみなされて,税理士に準じて,税理士法上の義務等の規定が適用されます。
(5) 平成25年7月時点の,税理士法事務取扱規程税理士懲戒処分等事務取扱規程及び税理士法聴聞事務取扱規程を掲載しています。
(6)ア 平成29年11月14日付の行政文書不開示決定通知書によれば,景品表示法違反を理由とする税理士法に基づく税理士懲戒処分通知書(過去5年分)は存在しません。
イ 平成29年11月14日付の行政文書不開示決定通知書によれば,景品表示法違反を理由とする税理士法に基づく税理士法人処分通知書(過去5年分)は存在しません。

7 社会保険労務士及び社会保険労務士法人の懲戒

(1) 厚生労働大臣は,以下の場合,社会保険労務士又は社会保険労務士法人について,戒告,1年以内の業務の停止又は失格処分を行います(社会保険労務士法25条)。
① 社会保険労務士が,不正に労働社会保険諸法令に基づく保険給付を受けること,不正に労働社会保険諸法令に基づく保険料の賦課又は徴収を免れることその他労働社会保険諸法令に違反する行為について指示をし,相談に応じ,その他これらに類する行為をした場合(社会保険労務士法15条)
② 社会保険労務士が,故意に,真正の事実に反して申請書等の作成,事務代理若しくは紛争解決代理業務を行った場合(社会保険労務士法25条の2第1項)
③ 社会保険労務士が,相当の注意を怠り,真正の事実に反して申請書等の作成,事務代理若しくは紛争解決代理業務を行った場合(社会保険労務士法25条の2第2項)
④ 社会保険労務士が申請書等に添付する書面等に虚偽の記載をした場合(社会保険労務士法25条の3)
⑤ 社会保険労務士法及び社会保険労務士法に基づく命令又は労働社会保険諸法令の規定に違反した場合(社会保険労務士法25条の3)
⑥ 社会保険労務士たるにふさわしくない重大な飛行があった場合(社会保険労務士法25条の3)
⑦ 社会保険労務士法人の運営が著しく不当と認められる場合(社会保険労務士法25条の24)
(2) 何人も,社会保険労務士法人について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは,厚生労働大臣に対し,当該社会保険労務士の氏名及びその行為又は事実を通知し,適当な措置をとるべきことを求めることができます社会保険労務士法25条の3の2第2項)。
(3) 厚生労働省HPに「懲戒処分等の基準」及び「社会保険労務士法人の懲戒処分事案」が載っています。
(4) 平成25年3月29日付で厚生労働省労働基準局監督課社会保険労務士係が作成した,「社会保険労務士の懲戒処分等に関する事務手続マニュアル」を掲載しています。
(5) 平成29年10月30日付の厚生労働大臣の行政文書不開示決定通知書2通によれば,景品表示法違反を理由とする社会保険労務士及び社会保険労務士法人の懲戒処分書(過去5年分)は存在しません。
(6) 名古屋で就業規則作成するなら社会保険労務士川嶋事務所HP「炎上「元」社労士に下された社労士会の処分の詳細や、社労士法の懲戒との違いについて」が載っています。
(7) 名古屋地裁平成30年2月22日判決(凄腕社労士の首切りブログを運営していた社会保険労務士が原告です。)は,以下のとおり判示しました。
   ①社労士法その他の関係法令には,処分を受けたことを将来の処分の加重事由とするなどの不利益取扱いを認める規定は存在しないこと,②本件内部量定基準は,公表されていないため,行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準には該当しない上,その文言も,「なお,過去に懲戒事由に該当する不正行為を行っているなど別表に定める量定が適切でないと認められる特段の事情がある場合には,社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)に規定する懲戒処分の範囲を限度として,量定を決することができるものとする。」というものであり,処分を受けたことが将来の処分の加重事由とされる期間やその加重の程度について具体的に定めておらず,過去に懲戒処分を受けた場合を含めて,懲戒事由に該当する不正行為を行ったことが,情状として考慮されるという事実上の不利益を受ける可能性があることを注意的に定めたにとどまると解されることに照らすと,社労士法25条の3に基づく懲戒処分の効果が期間の経過によりなくなった後においては,当該処分を受けた者について,「処分・・・の取消しによって回復すべき法律上の利益」があるとはいえない(最高裁昭和53年(行ツ)第170号同55年1月25日第二小法廷判決・集民129号121頁最高裁昭和53年(行ツ)第32号同55年11月25日第三小法廷判決・民集34巻6号781頁最高裁昭和56年(行ツ)第119号同年12月18日第二小法廷判決・集民134号599頁最高裁平成26年(行ヒ)第225号同27年3月3日第三小法廷判決・民集69巻2号143頁参照)。

8 弁理士及び弁理士法人の懲戒

(1)ア 令和4年4月1日時点で存続する特許業務法人は,同日から令和5年3月31日までの間に,弁理士法人に名称を変更しなければなりません。
イ 特許庁HPの「法人名称を「弁理士法人」とすることについて」には「1.法人制度導入の背景」として以下の記載があります。
    平成 12年の弁理士法改正において、それまで個人事務所として活動していた弁理士の事務所について、ユーザーへの継続的な対応と、大規模法人による総合的なサービスの提供を可能とするため、特許業務法人制度が導入された。
    本制度は、特許業務法人に対し、その名称中に「特許業務法人」の文字を使用することを義務づけている。これは、本制度の導入時には、弁理士の典型的な業務が特許に関する業務であったため、「特許業務法人」がより端的に法人の性格
を示すと考えられたことによるものである。なお、当時は他の士業名の法人(弁護士法人等)は存在しておらず、「弁理士法人」という名称は候補に挙がらなかった。
(2)ア 特許庁HPに「弁理士及び特許業務法人に対する経済産業大臣による懲戒処分に関する運用基準」(平成26年8月1日施行)が載っています。
イ 特許庁HPの「弁理士の懲戒制度等の在り方について」1頁には以下の記載があります。
   弁理士法では、弁理士が弁理士法や同法に基づく命令に違反した場合(特許業務法人は、それに加えて運営が著しく不当と認められる場合)には、行政処分として聴聞及び審議会における意見聴取を経て懲戒を行うことを定めており、懲戒の種類は、①戒告、②2 年以内の業務の停止(特許業務法人においては業務の全部若しくは一部の停止)、③業務の禁止(特許業務法人においては解散)の3種類である(弁理士法第32条及び第54 条第1項)。
   また、経済産業大臣は、弁理士に懲戒事由に該当する事実があると思料するときは、職権を持って必要な調査をすることができる(同法第33条第3 項)。
   なお、弁理士(特許業務法人)の懲戒については、何人も弁理士に懲戒事由に該当する事実があると思料するときは、経済産業大臣に対し、その事実を報告し、適当な措置(懲戒)をとるべきことを求めることができる(同法第33条第1項及び第54条第2項)。また、日本弁理士会は、その会員に懲戒事由に該当する事実があると認めたときは、経済産業大臣に対し、その事実を報告するものとする(同法第69条第1項)。

9 関連記事その他

(1)ア 近畿税理士会HPの「税理士登録をされる方へ」に載ってある「税理士登録申請の手続について」末尾6頁によれば, 一般的に「コワーキングスペース」「バーチャルオフィス」と呼ばれる場所は、事務所としての独立性及び継続性が担保できないため、事務所を設置できないとのことです。
イ 「所属税理士」とは、税理士事務所や税理士法人に雇用されて税理士業務を行う人であり,平成27年3月31日までは「補助税理士」という名称でした(関東信越税理士会HPの「税理士業務処理簿(税理士法第41条に規定する帳簿)の運用開始について」参照)。
ウ 税理士が依頼者に賠償すべき損害が消費税法に定める税制選択に必要な届出書の提出を怠ったという過誤により生じたものである場合における税理士職業賠償責任保険約款の免責条項は適用されません(最高裁平成15年7月18日判決及び最高裁平成15年9月9日判決)。
(2)ア 最高裁平成22年5月31日決定は, 虚偽記載半期報告書提出罪及び虚偽記載有価証券報告書提出罪について,当該会社と会計監査契約を締結していた監査法人に所属する公認会計士に会社代表取締役らとの各共同正犯の成立を認めた原判断が是認された事例です。
イ 金融庁HPに「「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)の改訂について」が載っています。
(3) 二弁フロンティア2023年6月号「シンポジウム「建替え問題と立退料」」が載っています。
(4)ア 以下の業務は税理士の付随業務ではないため,税理士が行うことはできません(ちからいし社会保険労務士事務所HP「業際について」参照)。
① 労働保険の年度更新ならびにその他の保険料の申告および納付の業務
② 社会保険の算定基礎届および月額変更届に関する業務
③ 雇用保険及び社会保険の被保険者資格の取得および喪失ならびに社会保険の被扶養者の届出に関する業務
④ 労働保険および社会保険の保険給付に関する業務
⑤ 雇用保険の2事業の給付金・助成金等に関する業務
⑥ 就業規則の作成・改正等に関する業務
イ 社会保険労務士による労働争議への介入については,社会保険労務士の業務について(平成28年3月11日付の厚生労働省労働基準局監督課長の通達)に以下の記載があります(1及び2を(ア)及び(イ)に変えています。)。
(ア) 労働争議時において,当事者の一方の行う争議行為の対策の検討,決定等に参与するような相談・指導の業務については,社会保険労務士法第2条第1項第3号の業務に該当することから,社会保険労務士の業務として行うことができること。
(イ) 社会保険労務士が,労働争議時の団体交渉において,①当事者の一方の代理人となって相手方との折衝にあたること,②当事者の間に立って交渉の妥結のためにあっせん等の関与をなすことはできないこと。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 司法書士資格の変遷
・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義
・ 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
・ 「弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
→ 令和元年の場合,審査請求の件数は30件であり,原処分取消は3件であり,原処分変更は1件です。
 弁護士会の懲戒手続
・ 弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名,並びに第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由
・ 弁護士の業務停止処分に関する取扱い
・ 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
 弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表


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