目次第1 相続事件で最初に確認する事項1 事件を五つの箱に分ける2 起算日と基礎資料を固定する3 確認が終わるまで不用意な処分を止める第2 先に管理すべき主な期限1 相続放棄・限定承認の原則三か月2 準確定申告の原則四か月3 相続税の原則十か月4 遺留分侵害額請求の一年と十年5 遺産分割の十年ルール6 相続登記の三年7 相続回復請求権の五年と二十年8 特別寄与料の六か月と一年第3 相続人と遺言を確定する1 戸籍を連続して確認する2 遺言の有無と方式を確認する3 外国籍・国外財産がある事件第4 財産と債務を調査する1 費用の低い資料から範囲を絞る2 預貯金・証券・現金3 不動産相続開始後・遺産分割前の賃料4 生命保険金・未支給年金その他の固有権5 債務・保証・税金6 デジタル財産7 継続契約と口座振替第5 単純承認・相続放棄・限定承認を選ぶ1 法定単純承認に注意する2 相続放棄3 限定承認第6 遺産分割の争点と手続を整理する1 分割対象・相続分・評価・分割方法を分ける2 特別受益・寄与分3 協議・調停・審判4 遺産分割前の預貯金の払戻し第7 相続税と民事上の解決を分けて管理する1 未分割でも期限内に申告する2 未分割財産と税額軽減の手続3 評価と分割案の税務影響4 申告期限までに協議が終わらない場合の確認表第8 早期に専門家へ相談すべき場面第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判所・行政機関等
第1 相続事件で最初に確認する事項
相続事件では,遺産をどのように分けるかを考える前に,期限,相続人,遺言,財産及び債務を確認する必要がある。
特に,相続放棄等の熟慮期間は原則三か月,準確定申告は原則四か月,相続税の申告・納付は原則十か月であり,調査や協議が未了でも期限だけが先に到来することがある。
本記事は,相続開始後の実務を,期限の管理から遺産分割及び税務までの順に整理したものである。
個別事情によって結論が変わるため,重要な処分をする前に,使用する制度の要件と起算日を確認する必要がある。
法令及び行政情報の基準日は令和八年九月九日である。
1 事件を五つの箱に分ける
相続事件の初動では,次の五つを別々の一覧にすると,調査の抜けを減らしやすい。
①期限,②相続人,③遺言その他の承継原因,④財産及び債務,⑤協議・裁判・税務その他の手続である。
遺産分割の対象となる財産と,相続人が固有の権利として取得する死亡保険金等は同じではない。
また,民事上の遺産評価,相続税評価及び売却見込額も目的が異なるため,一つの数字にまとめない方が安全である。
2 起算日と基礎資料を固定する
最初に,被相続人の死亡日,相続人ごとに死亡及び自己が相続人となったことを知った日,被相続人の最後の住所,本籍,国籍並びに常居所を記録する。
相続放棄,相続税,相続登記及び遺留分侵害額請求では,期限の起算点が同じとは限らないからである。
死亡診断書又は除籍謄本,戸籍資料,住民票除票又は戸籍附票,遺言書,固定資産税通知書,通帳,証券・保険・借入れ・税金に関する郵便物を集める。
紙の資料だけでなく,スマートフォン,パソコン,メール及びクラウドの利用状況も,デジタル財産を調べる手掛かりとなる。
3 確認が終わるまで不用意な処分を止める
相続財産の売却,解約,払戻し,廃棄又は自己のための消費は,法定単純承認や証拠喪失の問題を生じ得る。
葬儀費用や保存費用として預金を動かす必要がある場合でも,金額,用途,支払先及び領収書を記録し,事前に相続放棄への影響を検討すべきである。
第2 先に管理すべき主な期限
1 相続放棄・限定承認の原則三か月
相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三か月以内に,単純承認,限定承認又は相続放棄を選択するのが原則である(民法九一五条)。
調査をしても判断資料がそろわないときは,期間満了前に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法がある(裁判所「相続の放棄の申述」)。
後から債務が判明しただけで,その判明時から当然に新たな三か月が始まるわけではない。
相続財産が全くないと信じたことに相当な理由があるなどの事情によって例外的な起算点が問題となるため,請求書が届いた日,それ以前の郵便物及び財産調査の経過を保存する必要がある(裁判所「家事事件Q&A」)。
2 準確定申告の原則四か月
確定申告を要する者が年の途中で死亡した場合,相続人は,相続の開始があったことを知った日の翌日から四か月以内に,死亡した者の所得税について準確定申告と納税をするのが原則である(国税庁タックスアンサーNo.2022)。
不動産所得,事業所得,譲渡所得又は多額の医療費がある場合は,早期に申告の要否を確認すべきである。
3 相続税の原則十か月
(続きを読む...)相続事件に関する実務メモ-期限・手続・財産調査(AIリライト)