第1 現在の結論と過去の相続の判定方法
1 現在は子の相続分に差がない
2 確認すべき二つの日付
第2 相続開始時期別の適用関係
1 時期別一覧
2 平成12年9月19日から平成13年6月30日までの空白
第3 明治民法から昭和22年改正まで
1 明治民法1004条
2 日本国憲法施行後の応急措置
3 昭和22年法律第222号
第4 合憲判断から違憲判断への転換
第1 現在の結論と過去の相続の判定方法
1 現在は子の相続分に差がない
2 確認すべき二つの日付
第2 相続開始時期別の適用関係
1 時期別一覧
2 平成12年9月19日から平成13年6月30日までの空白
第3 明治民法から昭和22年改正まで
1 明治民法1004条
2 日本国憲法施行後の応急措置
3 昭和22年法律第222号
第4 合憲判断から違憲判断への転換
目次
第1 使途不明金の時効を判断する順序
1 「使途不明金」は請求権の名称ではない
2 取引ごとに時計を分ける
第2 最初に旧法と現行法を分ける
1 令和2年4月1日前に生じた債権
2 施行日前の法律行為が原因となる債権
3 現行民法の5年・10年
第3 請求原因ごとの期間と起算点
1 不当利得返還請求
(1) 時効期間
(2) 善意・悪意と返還範囲
第1 この記事が扱うAppleアカウントの相続
1 対象と結論
2 一つの「相続」として扱えない理由
第2 故人アカウント管理連絡先が設定されている場合
1 アクセス申請に必要なもの
2 承認後のアカウントと3年間の期限
3 取得できるデータと対象外のデータ
第3 管理連絡先又はアクセスキーがない場合
1 日本で受け付けられる代替書類
2 Appleが示す裁判所命令の内容
3 拒否された場合の請求の絞り方
(続きを読む...)Appleアカウントの相続手続―故人アカウント管理連絡先,iCloudデータ及び端末の扱い(AI作成)
第1 対象範囲と結論
1 この記事の対象
2 アカウント,データ及び金銭を分けて考えること
3 パスワードは開示されないこと
第2 Googleが用意する三つの手続
1 三つの請求の違い
2 データ取得を先に検討する理由
3 処理期間,費用及び開示率
第3 申請前の確認と必要書類
1 低負担の初期確認
2 Googleフォームで求められる資料
3 データ取得と米国裁判所命令
第1 家庭用財産に相続税がかかる理由
1 原則は課税対象である
2 相続開始時の時価で評価する
第2 誰の家庭用財産かを先に確定する
1 自宅にある物が全て被相続人の財産とは限らない
2 名義よりも取得資金その他の実態が重要である
第3 5万円基準と家財一式の意味
1 原則は1個又は1組ごとの評価である
2 5万円以下の物は一世帯ごとに一括評価できる
3 5万円は非課税枠ではない
4 家財一式10万円という公的な一律基準はない
第4 家庭用財産の評価方法
1 売買実例価額又は精通者意見価格を先に調べる
2 市場資料がない場合に新品小売価額から減価する
3 ゼロ評価には客観的な根拠が必要である
第5 家庭用財産と分けて検討すべき物
第1 遺産確認の訴えが必要となる場面
1 「何を分けるか」を民事訴訟で確定する手続
2 判決で決まる事項と決まらない事項
第2 遺産分割その他の手続との区別
1 家庭裁判所の遺産分割との役割分担
2 別の訴訟物を選ぶべき争い
3 調停前置と管轄
第3 全共同相続人の参加と当事者の確定
1 固有必要的共同訴訟
2 相続分全部譲渡と一部当事者に対する取下げ
3 第三者が権利を主張する場合
第4 確認の利益を判断する基準
1 現実の争いと抜本的解決の必要性
第1 結論
1 二つの方法
2 通常の検討順序
第2 預貯金が遺産分割の対象となるまでの経緯
1 最高裁判例
2 平成30年相続法改正
第3 民法909条の2による金融機関での払戻し
1 払戻限度額
(1) 各預貯金債権についての計算
(2) 一金融機関当たり150万円の上限
2 計算例
3 金融機関に提出する資料
第1 相続回復請求権の基本構造
1 民法884条が定める特別の時効
2 独立した一つの訴えではないこと
3 遺産分割との区別
第2 誰が誰に対して問題となるか
1 真正相続人と包括受遺者
2 表見相続人と単なる無権利者
3 共同相続人に適用される条件
4 共同相続人から財産を取得した第三者
第3 5年と20年の消滅時効
1 侵害を知った時から5年
2 相続開始から20年
第1 訂正・破棄・隠匿を判断する順序
1 同じ外形でも主体によって法的効果が異なること
2 判断のために先に確定する事実
第2 自筆証書遺言の訂正方法と方式違反の効果
1 現行民法968条3項の訂正方法
2 方式違反があっても遺言全体が当然に無効となるわけではないこと
3 第三者による加筆は遺言の効力と相続欠格を分けて考えること
第3 遺言者本人による破棄と遺言の撤回
1 民法1024条の故意の破棄
2 文面全体への赤色斜線を破棄とした最高裁判例
3 公正証書遺言及び法務局保管遺言との違い
第1 この記事が扱う問題
1 遺言無効と相続欠格は別の問題である
2 最初に確認すべき結論
第2 遺言無効,相続欠格及び刑事責任の違い
1 偽造された自筆証書遺言はなぜ無効となるか
2 偽造者が相続欠格者となるための追加立証
3 刑事事件の成否及び有罪判決は別問題である
第3 民法891条5号の要件
1 偽造及び間接偽造
2 変造及び方式の補充
3 破棄及び隠匿
4 不当な相続利益を得る目的
第4 主要裁判例が示す判断の分岐
1 最高裁昭和56年4月3日判決――方式を補充した場合
2 最高裁平成9年1月28日判決――不当利益目的がない場合
3 広島高裁平成14年8月27日判決――間接偽造
4 さいたま地裁平成20年9月24日判決――日付の書込み
第1 秘密証書遺言の位置付け
1 内容を秘密にしたまま存在を明確にする遺言であること
2 利用件数が少ないこと
第2 現行法による作成方法
1 民法970条1項の4段階
2 本文の日付と訂正
3 口がきけない者及び成年被後見人の特則
第3 遺言本文の作成者である「筆者」
1 パソコンを実際に操作した者が筆者となること
2 専門家の指示で事務職員が入力した事案
第4 証人,費用及び保管
第1 現在は自筆証書遺言に押印が必要である
1 本記事の対象と結論
2 現行民法968条の三つの押印
3 令和8年改正は成立したが未施行である
第2 実印・認印・指印・花押の扱い
1 実印でなく認印でも足りる
2 指印は押印に当たる
3 花押やサイン様の略号は押印にならない
4 本人以外が物理的に押した場合
5 押印を全く欠く遺言の例外は極めて狭い
第3 押印の場所・複数枚・押印時期
1 氏名の直下が安全だが法定の場所ではない
第1 「相続させる」遺言と特定財産承継遺言の関係
1 結論――両者は重なるが,同じ意味ではない
2 法定の成立要件
3 「相続させる」という語だけでは決まらない
第2 最高裁平成3年判決が確立した直接承継の仕組み
1 遺産分割方法の指定と解する原則
2 相続開始時の直接承継
3 相続放棄及び遺言と異なる分配
第3 特定遺贈,相続分の指定及び包括遺贈との区別
1 特定遺贈との違い
2 相続分の指定との違い
3 包括遺贈との違い
第4 第三者対抗要件と相続登記
1 旧法下では登記なく第三者に対抗できた
2 現行民法899条の2
3 相続登記申請義務と登録免許税
第5 遺言執行者の権限は旧法と現行法で異なる
1 平穏な未登記事案を扱った最高裁平成7年判決
2 賃借権確認訴訟の被告適格を扱った最高裁平成10年判決
第1 相続放棄の「3か月」の意味
1 死亡日から一律に3か月ではない
2 本記事の対象
第2 原則的な起算点
1 死亡と自己の相続人性を知った時
2 後順位相続人
3 共同相続人ごとの個別計算
第3 3か月の計算方法
1 初日不算入と暦による計算
2 期限管理に必要な日付
第4 相続財産を後から知った場合
第1 限定承認の税務を理解するための基本構造
1 限定承認が制限するのは相続債務の責任である
2 税金を三つの層に分ける
第2 民法上の手続と税務申告の期限
1 限定承認は共同相続人全員で行う
2 3か月,4か月及び10か月を別々に管理する
第3 死亡時のみなし譲渡所得課税
1 課税対象は相続財産全部ではない
2 課税時点は限定承認申述の受理日ではなく相続開始時である
3 財産超過でもみなし譲渡課税は適用される
4 相続開始時の時価を相続税評価額で代用しない
第1 この記事が扱う未支給年金1 結論と対象2 未支給年金と遺族年金の違い第2 未支給年金が遺産分割の対象にならない理由1 相続ではなく法定遺族の固有の権利であること2 最高裁平成7年11月7日判決3 遺産分割協議書での扱い第3 誰が未支給年金を請求できるか1 親族の範囲と順位2 同順位者が複数いる場合3 法定の遺族がいない場合第4 生計同一をどのように判断するか1 同居だけで決まる要件ではないこと2 立証に用いる資料3 裁判例が示す判断の分かれ目(1) 別居していても生計同一が認められた例(2) 長期別居で生計同一が否定された例(3) 法律婚と事実婚が競合した例第5 死亡前入金,死亡後入金及び過払の区別1 死亡月分までの未払額2 口座への入金時点で結論が変わること3 支払対象月と受取額の具体例第6 相続放棄及び請求者死亡1 通常の未支給年金と相続放棄2 先順位者が請求前に死亡した場合第7 請求手続,時効及び税務1 請求書及び基本資料2 本人が生前に年金請求をしていなかった場合3 消滅時効4 相続税と所得税5 請求から受取までの目安第8 制度名によって結論が変わる例外1 旧共済年金の一部2 企業年金,確定拠出年金及び個人年金保険第9 実務上の確認順序第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政資料4 文献及び参考記事第1 この記事が扱う未支給年金
1 結論と対象
通常の国民年金及び厚生年金保険について,受給権者が死亡した時点で未払となっている死亡月分までの年金は,遺産分割の対象となる相続財産ではない。国民年金法19条及び厚生年金保険法37条が,死亡時に受給権者と生計を同じくしていた一定範囲の遺族に,自己の名で請求する固有の権利を与えているためである。
したがって,法定相続人であることだけでは請求できず,反対に,相続人でなくても法定の親族範囲,生計同一及び順位を満たせば請求できることがある。遺産分割協議によって,日本年金機構に対する受給順位を入れ替えたり,生計同一でなかった相続人を請求者にしたりすることはできない。
本記事は,令和8年8月9日現在の国民年金及び厚生年金保険を中心に扱う。
請求手続,受取時期及び税務の補足については,令和8年10月7日に日本年金機構及び国税庁の公開資料を確認した。
旧共済年金,企業年金,確定拠出年金及び個人年金保険は制度ごとに結論が異なるため,第8で別に説明する。
本記事は一般的な法制度及び手続の情報を提供するものであり,個別案件についての法律相談又は税務相談ではない。具体的な事情に即した相談は,「遺言・相続のお問い合わせ」から可能である。
2 未支給年金と遺族年金の違い
未支給年金は,死亡した受給権者に死亡月分まで支給されるべきであった年金について,支払時期又は手続の関係で未払となっている部分である。これに対し,遺族基礎年金及び遺族厚生年金は,被保険者等の死亡を支給事由として遺族に発生する別の給付であり,受給者の範囲,年齢要件,生計維持要件及び失権事由も異なる。
特に,未支給年金で必要なのは原則として「生計同一」であり,遺族年金で問題となる「生計維持」と同じではない。生計維持に関する年収850万円未満等の収入要件を,未支給年金の生計同一要件へそのまま当てはめることはできない。遺族厚生年金の生計維持要件そのもの(収入要件のライン,別居,内縁・重婚的内縁関係及びDVによる別居等の限界事例)については,「遺族厚生年金の生計維持要件——収入,別居,内縁及びDV別居の限界事例」で扱っている。
第2 未支給年金が遺産分割の対象にならない理由
1 相続ではなく法定遺族の固有の権利であること
民法896条は,被相続人の一身に専属するものを除き,相続人が被相続人の権利義務を承継すると定める。しかし,国民年金法19条及び厚生年金保険法37条は,この相続の一般原則とは別に,法定の遺族が自己の名で未支給年金を請求する仕組みを設けている。
この違いは,誰が受け取るかを決定する基準に表れる。遺産であれば相続人,遺言,法定相続分及び遺産分割が問題となるのに対し,未支給年金では親族範囲,死亡時の生計同一及び政令上の順位が問題となる。
2 最高裁平成7年11月7日判決
最高裁平成7年11月7日第三小法廷判決(平成3年(行ツ)第212号,民集49巻9号1829頁)は,昭和60年改正前の国民年金法19条1項が一定の遺族に未支給年金の支給を請求する固有の権利を与えたものであり,死亡した受給権者の未支給年金請求権が相続の対象になるものではないと判示した。本判決は,未支給年金を遺産分割から外す現在の実務の出発点である。
また,本判決は,法定遺族が行政庁への請求及び支給決定を経て具体的な支給を受ける仕組みを重視し,死亡した受給権者本人が提起していた年金支給請求訴訟を遺族が当然に承継することも否定した。受給権者に未払分があったという事実だけから,相続人が当然に金銭債権を承継するわけではない。
3 遺産分割協議書での扱い
遺産分割協議書では,通常の未支給年金を遺産目録に計上し,特定の相続人が相続するという書き方を避けるのが法的構造に合う。記載が必要であれば,「未支給年金は法令上の受給権者が別途請求する」旨を確認事項として置き,遺産そのものの分配条項と区別する方法が考えられる。
もっとも,受領者が家族関係への配慮から他の親族へ金銭を渡すことや,遺産全体の合意解決の中で別の財産配分を調整することまで禁止されるわけではない。ただし,それは未支給年金の受給権を遺産分割した結果ではなく,別個の合意又は金銭移転であるため,合意内容及び税務上の扱いを分けて検討する必要がある。
第3 誰が未支給年金を請求できるか
1 親族の範囲と順位
平成26年4月1日以後に受給権者が死亡した場合,請求できるのは,死亡時に受給権者と生計を同じくしていた①配偶者,②子,③父母,④孫,⑤祖父母,⑥兄弟姉妹,⑦これら以外の三親等内の親族である。
順位もこの順であり,死亡時の生計同一要件を満たす先順位者がいるときは,後順位者に請求権は生じない。
配偶者又は子が存在するというだけで判断せず,その者が生計同一要件を満たしていたかを確認する必要がある。
その他の三親等内の親族には,甥・姪,伯叔父母,曾孫等のほか,三親等内の姻族も含まれる。
具体的な続柄は,日本年金機構の請求書4頁の親族範囲図で確認できるが,図に含まれることだけで受給できるわけではなく,生計同一及び順位の要件も必要である。
平成26年3月31日以前の死亡では,その他の三親等内の親族への拡張前の規定が適用される。古い判例又は実務書に「兄弟姉妹まで」と記載されていても,現在の死亡事案へそのまま用いることはできない。平成26年4月に実施されたその他の年金・雇用保険・精神保健福祉法の改正と,施行日前の事案への適用関係は,平成26年4月の厚生労働省制度変更で整理している。
配偶者には,法律上の婚姻届がある者だけでなく,社会通念上夫婦としての共同生活が認められる事実婚の配偶者が含まれ得る。ただし,法律婚配偶者と事実婚の配偶者が競合する場合は,法律婚の実体,経済的援助,接触状況及び共同生活の実態を具体的に確認する必要がある。
2 同順位者が複数いる場合
同順位者が2人以上いる場合,その1人による請求は全員のために全額についてしたものとみなされ,その1人への支給は全員に対してしたものとみなされる。日本年金機構への請求及び支払は代表者1人にまとめられるが,早く請求した者が全額を終局的に取得するという意味ではない。
法令は,同順位者間の最終的な内部取得割合を明記していない。堀勝洋『年金保険法〔第5版〕』355頁~356頁は頭数による均等を説くが,この点を直接判断した公開裁判例は確認できないため,代表受領者は他の同順位者を確認し,分配方法を記録しておくことが安全である。
3 法定の遺族がいない場合
親族範囲,生計同一及び順位を満たす者がいない通常の国民年金・厚生年金では,未支給年金が相続人一般へ回る仕組みはない。相続人が存在しても,法定の未支給年金受給者に該当しなければ,その相続人は請求できない。
第1 調停と審判の管轄は異なる
1 基本的な区別
2 同じ裁判所で当然に続くわけではない
3 管轄を調べる前に手続類型を分ける
第2 遺産分割調停の管轄
1 相手方住所地と複数の相手方
2 住所がない場合又は住所が知れない場合
3 調停の合意管轄
4 相続開始地は調停の法定管轄ではない
第3 遺産分割審判の管轄
1 相続開始地の家庭裁判所
2 審判の合意管轄
第1 この記事でいう遺産管理人
1 家事事件手続法200条1項の財産の管理者
2 名称が似ている制度との違い
第2 遺産管理人の選任要件
1 遺産分割事件の係属と本案審判の蓋然性
2 財産管理の必要性
3 選任の必要性を基礎付ける例
(1) 保存・管理が行われていない例
(2) 中立的な管理が必要となる例
(3) 賃料の開示をめぐる紛争
第3 申立て,審理及び不服申立て
第1 この記事が扱う相続と,適用される法の決め方1 相続分は相続開始時の法によって定まる2 適用される法の時期区分第2 昭和55年改正が設けた分水嶺1 改正法附則の経過措置2 改正された条文の内容3 e-Gov法令検索で経過措置を確認するときの限界第3 昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの法定相続分1 配偶者と血族相続人の割合2 同順位の相続人が数人あるときの割合3 昭和37年改正が変えたものと変えなかったもの第4 応急措置法が適用される相続の相続分第5 旧民法の遺産相続における相続分1 遺産相続人の順位2 庶子及び私生子の相続分第6 代襲相続の範囲が三段階に変わること第7 嫡出でない子の相続分と違憲決定の射程第8 地域による適用法の違い第9 相続分の計算に連動する制度1 遺留分2 寄与分3 相続税法上の相続分と配偶者の税額軽減第10 計算の手順と誤りやすい点1 計算の手順2 誤りやすい点3 計算した相続分が争われた場合出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公文書・歴史資料4 文献
第1 この記事が扱う相続と,適用される法の決め方
1 相続分は相続開始時の法によって定まる
相続登記が長期間されないまま放置された不動産や,先代・先々代の名義のままになっている土地について遺産分割や相続登記を進めるときは,被相続人が死亡した日を基準として,その当時に施行されていた法律による法定相続分を計算しなければならない。現行の民法900条1号は,子及び配偶者が相続人であるときの相続分を各2分の1と定めているが,この割合が適用されるのは昭和56年1月1日以後に開始した相続に限られる。本記事は,昭和55年12月31日以前に開始した相続について,どの時期にどの割合が適用されるのかを,官報に掲載された公布時の条文にさかのぼって整理するものである。作成に当たっては,AIを用いて官報,国会会議録及び裁判所ウェブサイトの原資料を通読し,条文の文言と数値を原典と逐語で照合した。
この整理の出発点となる経過措置は二つある。一つは,民法及び家事審判法の一部を改正する法律(昭和55年法律第51号)附則第2項であり,「この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、第一条の規定による改正前の民法の規定を適用する」と定める。もう一つは,民法の一部を改正する法律(昭和22年法律第222号)附則第25条第1項であり,「応急措置法施行前に開始した相続に関しては、第二項の場合を除いて、なお、旧法を適用する」と定める。相続分は,相続人の範囲と同じく相続開始時に施行されていた法によって決まり,その後の改正によって遡って変わることはない。
本記事は,被相続人が日本人であり日本法が準拠法となる場合を対象とする。被相続人が外国人であるときは相続の準拠法は本国法であり,最高裁判所第二小法廷昭和37年8月10日判決は,大韓民国人について昭和31年当時に生じた遺産相続の相続人を,当時の同国の慣習によって認定している。在日韓国・朝鮮人が被相続人である事案の相続人調査については在日韓国・朝鮮人の相続人調査で扱っている。また,相続人の範囲そのもの,すなわち家督相続と遺産相続の区別,家督相続人が選定されなかった場合の処理及び家附の継子の相続権については旧民法が適用される相続の相続人の特定で扱っているため,本記事は相続人が確定した後の割合の計算に対象を絞る。
2 適用される法の時期区分
相続開始日によって適用される法は,次の5期に分かれる。境界となる日付は,いずれも各法律の施行期日に関する規定から導かれる。
相続開始日適用される法昭和22年5月2日以前旧民法(明治31年法律第9号として公布された民法第四編親族・第五編相続)。家督相続又は遺産相続昭和22年5月3日から同年12月31日まで日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第74号)及び旧民法の遺産相続に関する規定昭和23年1月1日から昭和37年6月30日まで民法(昭和22年法律第222号による改正後のもの)昭和37年7月1日から昭和55年12月31日まで民法(昭和37年法律第40号による改正後のもの)昭和56年1月1日以後民法(昭和55年法律第51号による改正後のもの)
各境界日の根拠は次のとおりである。応急措置法の附則は「この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。」と定めるから,同法は憲法施行日である昭和22年5月3日から適用される。昭和22年法律第222号附則第1条は「この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。」と定める。昭和37年法律第40号附則第1項は「この法律は、昭和三十七年七月一日から施行する。」と定め,昭和55年法律第51号附則第1項は「この法律は、昭和五十六年一月一日から施行する。」と定める。なお,応急措置法の附則には失効期日を定める規定が置かれておらず,同法及び同時期の関係法律の整理に関する法律にも同法を廃止する条項は見当たらないが,新民法の施行によって相続に関する規律が引き継がれた結果,昭和23年1月1日以後に開始した相続には新民法が適用される。
第2 昭和55年改正が設けた分水嶺
1 改正法附則の経過措置
民法及び家事審判法の一部を改正する法律は,昭和55年5月17日に公布され,官報同日付本紙第15994号5頁に掲載された。その附則は7項から成り,相続分の計算に直接かかわるのは次の2項である。
1 この法律は、昭和五十六年一月一日から施行する。
2 この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、第一条の規定による改正前の民法の規定を適用する。
この経過措置は,改正後の規定を施行前に開始した相続へは一切及ぼさないという完全な不遡及を定めるものである。したがって,被相続人が昭和55年12月31日に死亡した相続と,翌日である昭和56年1月1日に死亡した相続とでは,遺産分割や相続登記を現在行うとしても,適用される相続分の割合が異なる。
目次
第1 この記事が扱う対象
1 改正の特定と施行日
2 委任の構造
3 利用者が確認したい費用の基本事項
第2 改正の全体像
第3 法律行為に係る公正証書の作成手数料
第4 新設された3か条
1 死後事務委任に関する公正証書(18条の2)
2 信託に関する公正証書(22条の2)
3 電磁的記録の提供(40条の2)
第5 養育費に関する定期給付の上限
第6 個別の手数料額の改定
1 公正証書の作成に関するもの
2 執行文,送達,交付及び閲覧に関するもの
3 デジタル化に伴う技術的な改正
(続きを読む...)令和7年10月1日施行の公証人手数料令改正――公正証書作成手数料の新旧対照,引下げ項目及び経過措置(AI作成)
第1 この記事が扱う対象
1 検討の対象と時点
2 方式遵守の主張立証責任は遺言の有効を主張する側にある
3 遺言公正証書は公文書であること
第2 公証人と連絡が取れなくなる場面
1 公証人法上の身分の変動
2 記憶がない場合と証言を拒絶する場合
第3 原本及び附属書類の所在
1 封印と引継ぎ
2 保存期間
3 附属書類の範囲と7年の保存期間
4 原本の二重保存と滅失時の措置
第4 資料を取得する手順
1 遺言検索システムによる特定
2 閲覧,謄本及び正本の請求
3 訴訟上の証拠収集手段
第1 この記事が扱う対象
1 検討の対象と時点
2 主張立証責任の三層構造
第2 請求原因は訴訟要件を基礎付ける事実である
1 訴訟物と請求の趣旨
2 請求原因の4つの要件事実
3 遺言者の生存中は訴えを提起できない
第3 抗弁は遺言の成立要件である
1 立証責任が遺言の有効を主張する側にある
2 令和7年9月30日以前に作成された公正証書遺言
3 令和7年10月1日以後に作成された公正証書遺言
4 証人の立会い
5 口授
6 筆記,読み聞かせ及び署名押印
7 公正証書遺言が有効であるという抗弁の記載例
第4 再抗弁は遺言の無効事由である
1 遺言能力の欠如
2 民法総則の規定による無効及び取消し
◯山中弁護士への事件のご相談・ご依頼は「遺言・相続のお問い合わせ」から可能です。
第1 相続財産調査の目的と最初に管理する期限
1 全国一括検索だけでは調査は完結しない
2 3か月の熟慮期間を調査より先に管理する
第2 最初にそろえる権限資料と手掛かり
1 相続人と遺言を確定する
2 自宅,郵便物及び税務資料から候補表を作る
第3 財産・債務の種類ごとの調査方法
1 預貯金,貸金庫及び銀行取引
(1) 相続時預貯金口座照会で所在候補を探す
(2) 判明した金融機関へ残高と取引履歴を個別照会する
2 不動産
(1) 所有不動産記録証明で全国の登記記録を検索する
(2) 名寄帳と固定資産税資料を併用する
◯山中弁護士への事件のご相談・ご依頼は「遺言・相続のお問い合わせ」から可能です。
目次
第1 本記事の対象と結論の要点
1 アルツハイマー型の診断だけでは無効にならない
2 既存記事との役割分担
3 争点は作成時点の程度に絞り込まれる
第2 診断名と重症度を区別する
1 診断名は重症度を語らない
2 処方薬の適応範囲から重症度の上限を検討する
3 バイオマーカーは重症度の判定に用いない
4 生物学的な診断基準への移行がもたらす影響
第3 進行性を前提とした立証と反論
1 進行速度から作成時点の程度を推認する
2 「作成当日は状態が良かった」との反論への対応
3 入院中の出来事は重症度の裏付けとして弱い
第4 認知機能検査及び認定資料の限界
1 カットオフ値だけでは判断されない
2 合計点よりも遂行機能と言語性記憶に着目する
第1 死後事務委任契約の役割
1 死後の事務を生前に委ねる契約であること
2 契約が特に有用となる場面
第2 本人の死亡後も契約が存続するための法的根拠
1 民法653条は当事者の別段の合意を妨げないこと
2 相続人による解除には限界があり得ること
3 契約の有効性と対外的な実行可能性は異なること
第3 委任できる事務と権限上の限界
1 典型的な死後事務
2 死亡届,火葬及び埋葬
(1) 死亡届を提出できる者
(2) 火葬及び埋葬の手続
3 賃貸住宅の解約及び残置物の処理
(1) 解除事務と残置物処理事務を分ける
(2) 指定残置物と非指定残置物を区別する
(3) 換価代金,費用及び残額を精算する
(4) モデル条項の対象外となる場面
4 相続財産,税務,預貯金及びデジタル遺品
(1) 相続財産の処分
(2) 税務及び預貯金
(3) デジタル遺品
第4 遺言,任意後見及び祭祀承継との使い分け
第1 遺品整理業者に一つの包括免許はない
1 名称ではなく実際の作業で規制が決まる
2 許可・権限の早見表
3 民間資格は法令上の許可を代替しない
第2 家庭ごみの運搬には市町村の一般廃棄物許可が必要である
1 家庭の遺品は通常,一般廃棄物となる
2 依頼者と許可業者の直接契約を確認する
3 「全部買取」でも実態が不要物なら廃棄物になり得る
4 家電と内装撤去は別工程として扱う
第3 買取と訪問契約には別の消費者保護規制がある
1 買取には古物商許可と処分権限の確認が必要である
2 自宅での買取は訪問購入となり得る
3 見積りのための訪問と契約締結の依頼は同じではない
4 免責条項と解約料にも限界がある
第4 遺品を処分できる者と相続放棄のリスク
1 共同相続人の一人だけで全部を処分できるとは限らない
2 相続放棄を考える者は売却・持帰り・費用充当を止める
3 裁判例は物の価値と行為の範囲を個別に見ている
4 緊急時は保存と記録を優先する
第5 賃貸住宅の残置物を家主が直ちに処分することはできない
1 残置物条項があっても自力救済は許されない
2 モデル契約は入居者の生前の委任を前提とする
第6 特殊清掃は免許名より安全管理の実質を見る
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目次
第1 本記事の対象と結論の骨格
1 問われるのは診断名ではなく,遺言の内容と結果を弁識する能力である
2 公正証書であることは遺言能力を保証しない
3 令和5年改正後の条文構造
4 総論記事との役割分担
第2 レビー小体型認知症の医学的特徴
1 診断基準の構造
2 中核的特徴としての認知の変動
3 変動の実測値は秒単位から分単位である
4 変動するのは注意と覚醒であり,遺言能力の中身ではない
5 視空間認知障害と読み聞かせ・閲覧の限界
6 抗精神病薬に対する重篤な過敏性
7 せん妄との重畳
8 診断バイオマーカーとその精度
9 改訂長谷川式及びMMSEは本症の障害を過小評価する
第3 遺言能力に関する裁判例の判断枠組み
1 医学的判断と法的判断の二層構造
2 認知機能検査の点数の扱い
目次
第1 本記事の対象と結論の要旨
1 問題の所在
2 結論の要旨——「相続放棄の脚」と「生前贈与の脚」
3 前提となる制度の骨格
第2 相続放棄それ自体は債権者に覆されにくい
1 相続放棄は詐害行為取消権の対象とならない
2 相続放棄の効力は登記なくして生ずる
3 遺産分割協議との違い
第3 攻撃はもっぱら生前贈与に向かう
1 詐害行為取消権
2 破産手続における否認権
3 国税徴収法39条の第二次納税義務
4 贈与が完成していないという問題(名義預金)
第4 負担からの解放という目的の限界
1 占有する相続放棄者には保存義務が残る
2 相続人不存在後の清算と費用
相続又は遺贈により取得した不要な土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度が令和5年4月27日に施行され,制度の利用は年々増えている。もっとも,弁護士が依頼者に助言する際に見落とされがちなのは,土地が国庫に帰属した「その後」に何が起きるのか,という点である。本記事は,不動産が国庫に帰属した後の管理・処分の法的枠組みと実際を整理し,弁護士が手続の選択及び依頼者への説明を行う際の検討事項を示すものである。個別の事案では,土地の物理的状況及び権利関係により結論が異なる。
目次
第1 国庫帰属した不動産をめぐる二つの系統と本記事の射程
1 相続土地国庫帰属法による帰属と民法959条による帰属の区別
2 帰属後はいずれも「普通財産」として管理・処分される
第2 相続土地国庫帰属法により帰属した不動産のその後
1 帰属の時期と管理機関
2 帰属後に残る法的リスク──承認の取消しと損害賠償責任
3 帰属した不動産の管理・処分の実際と評価方法
(1) 売却実績と帰属地の性質
(2) 簡易な評価手法と段階的な価格の見直し
第3 普通財産としての管理・処分の法的枠組み
1 処分の手段と貸付・交換・譲与・信託
2 適正な対価の原則と競争入札・随意契約
(続きを読む...)国庫帰属した不動産のその後──相続土地国庫帰属法と民法959条による帰属後の管理・処分の実務(AI作成)
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目次
第1 旧民法が適用される相続と本記事の射程
1 相続人の特定に適用する法は相続開始時の法である
2 旧民法・応急措置法・新民法の時代区分
第2 旧民法における相続の二本立て
1 家督相続
2 遺産相続
3 二本立ての区別が相続登記に与える影響
第3 昭和22年5月3日以後の相続と現行法附則の経過措置
1 応急措置法期の相続の位置づけ
2 家督相続人が選定されなかった場合の処理
3 応急措置法施行中に開始した相続と分配請求権
第4 家附の継子の相続権
1 嫡出子と同一の権利義務を有するための要件
2 分配請求権と適用除外
(続きを読む...)旧民法が適用される相続の相続人の特定 ― 家督相続・遺産相続の区別と新民法附則の経過措置(AI作成)
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目次
第1 法定単純承認の意義と本記事の検討範囲
1 3類型と単純承認の効果
2 実務上の意味と本記事の範囲
第2 相続財産の処分(921条1号)
1 処分に当たるための主観的要件
2 「処分」の範囲と保存行為・短期賃貸借の除外
3 実務上問題となる支出・行為
(1) 葬儀費用・墓石・仏壇の負担
(2) 預貯金の払戻しと相続債務の弁済
(3) 遺産分割協議への関与
第3 熟慮期間の徒過(921条2号)
1 熟慮期間の起算点と繰下げ
2 再転相続における起算点
3 徒過後の錯誤による救済
第1 別荘地が「負動産」となる仕組みと本記事の対象
第2 別荘地の管理費をめぐる法律関係
1 管理費を請求する法律構成
ア 管理契約に基づく請求
イ 不当利得に基づく請求
ウ 区分所有法に基づく請求
2 最高裁令和7年6月30日判決
3 リゾートマンションの管理費・修繕積立金
4 更地の別荘地と区分所有法の「団地」規定
第3 別荘の保有に伴う固定資産税
1 別荘は住宅用地特例の対象外である
2 別荘とセカンドハウスの区別
3 別荘等所有税(法定外普通税)
第4 別荘地を手放す手続の選択
1 相続放棄と放棄後の管理責任
2 相続土地国庫帰属制度
3 売却・寄付・有料の引取り
4 譲渡及び相続税務上の留意点
第5 管理不全と空家等対策特別措置法
第6 事情聴取・立証・相手方の反論と判断手順
1 依頼者からの事情聴取事項
2 管理費請求事件の主張・立証と想定される反論
3 手続選択と追加確認を要する事項
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◯「日本の証券会社経由で米国株式を保有していた場合の相続手続(AI作成)」も参照してください。
◯日本に居住する個人が,国内の証券会社の外国株式取引口座を通じて米国株式を保有したまま死亡した場合,日本の相続税だけでなく,米国連邦遺産税(federal estate tax)の適用が問題となる。
米国連邦遺産税は,米国の市民でも居住者でもない者(nonresident alien。以下「NRA」という。)については,米国に所在する財産に限って課される。
そこで,同じ「米国株式に関係する資産」であっても,個別株式,米国籍の上場投資信託(ETF),米国外を設立地とするファンド,米国債,現金のいずれであるかによって,課税範囲が分かれることになる。
本稿は,この課税範囲の判定,日米相続税条約による軽減の内容と限界,並びに配偶者が承継する場合及び生前における対応という,資産設計に関わる論点を扱う。
これに対し,相続人の確定,日本の相続税の納税義務者の判定と「住所」の認定,国外財産の評価と邦貨換算,証券会社における名義書換えの手続,及びIRS移転証明書(Transfer Certificate)制度の具体的な構造については,別稿「日本の証券会社経由で米国株式を保有していた場合の相続手続」で扱っており,本稿ではこれらの手続面には立ち入らない。
検討の対象は,被相続人及び相続人がいずれも日本に住所を有する日本人が,国内の証券会社を通じて米国法人が発行する株式等を保有していた場合とし,米国の証券会社に直接口座がある場合,米国不動産を保有する場合,及び米国の市民権又は居住歴を有する者に固有の論点は扱わない。
目次
第1 米国連邦遺産税の課税範囲
1 課税の基本構造
2 米国株式・ETF・投資信託の所在
(1) 個別株式の所在
(2) ETF・投資信託の所在——米国籍と外国籍の分岐
3 米国所在とされない財産
第2 基礎控除・税率と日米相続税条約による軽減
1 条約を用いない場合の控除と税率
2 条約による統一控除の按分と計算例
(続きを読む...)日本の証券会社で米国株式を保有する人の相続と米国連邦遺産税――課税範囲・条約による軽減・配偶者と生前対策(AI作成)
本記事は,人の死亡後に行われる葬儀・火葬・埋葬・改葬をめぐって弁護士が扱う法律問題を,行政法(墓地埋葬法),民法(祭祀財産の承継・費用),社会保障法(生活保護の葬祭扶助)及び公衆衛生(感染症法)の各領域にわたって整理するものである。火葬・埋葬の許可手続,遺骨の帰属と引渡し,葬儀費用の負担,引き取り手のない遺体への対応,散骨などの新しい弔い方を対象とする。個別の宗教的作法や葬祭サービスの内容そのものは扱わないが,葬儀社との契約の当事者,クーリング・オフの可否及び契約をめぐる裁判例は第4の5で扱う。
目次
第1 本記事の対象と火葬・葬儀をめぐる紛争の全体像
第2 火葬・埋葬・改葬の手続と行政上の許可
1 「埋葬」「火葬」「改葬」の定義と火葬までの流れ
2 24時間以内の火葬禁止とその例外
3 改葬の許可と墓地・火葬場の管理者
第3 遺骨と祭祀財産の帰属
1 祭祀財産承継の枠組み(民法897条)
2 遺骨の帰属
3 祭祀承継者の決定基準と家庭裁判所の審判
4 遺骨引渡請求における主張立証と証拠
第4 葬儀費用の負担
1 負担者に関する明文の不存在と考え方の対立
2 名古屋高裁平成24年3月29日判決の考え方
3 香典・葬式費用の先取特権・相続税との関係
4 求償の法律構成と立証・相手方の反論
5 葬儀社との契約の当事者と契約トラブル
目次
第1 制度の骨格――NISA口座は名義人の死亡でどうなるか
1 NISAが非課税とするのは所得税等であり,相続税は非課税とならないこと
2 名義人の死亡によるNISA口座の廃止と,相続人のNISA口座への引継ぎ不可
第2 所得税の取扱い――みなし譲渡・非課税・取得価額
1 死亡は「払出し事由」であり,死亡日の価額で譲渡があったものとみなされること
2 死亡日までの含み益は非課税,含み損は切り捨てられること
3 相続人の取得価額は死亡日の終値となること――所得税法60条の例外
第3 相続税の取扱い――相続財産としての評価
1 相続財産としての評価方法
2 相続税評価額と所得税の取得価額との相違
3 取得費加算の特例と準確定申告の要否
第4 相続人が複数いる場合――遺産分割の要否と移管
1 上場株式・投資信託受益権は当然分割されないこと
2 移管先口座の選択と現物移管の実務
第5 手続と依頼者からの聴取事項
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目次
第1 証券口座内の資産の法的性質――当然分割か準共有か
1 可分債権の当然分割という原則
2 株式・投資信託受益権・個人向け国債は当然分割されない
(1) 株式
(2) 委託者指図型投資信託受益権及び外国投資信託受益権
(3) 個人向け国債
3 相続開始後に生じた元本償還金・収益分配金
4 共同相続された株式から生じた配当金支払請求権
5 預貯金に関する判例変更と到達点
第2 遺産分割前の権利行使・管理と手続選択
1 準共有物の管理・保存・変更
2 共有株式の議決権行使と権利行使者の指定
3 遺産分割前の単独払戻し(民法909条の2)の射程
4 手続選択の分岐
第3 証券会社における相続手続の実務
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目次
第1 はじめに
1 問題の所在――四つの法分野が交錯すること
2 本記事の対象と留保
第2 相続人の確定と相続税の納税義務者の判定
1 相続の準拠法
2 相続税の納税義務者の区分と「住所」の認定
(1) 無制限納税義務者と制限納税義務者の分岐
(2) 「住所」の認定が争われた最高裁判決とその考慮要素
第3 米国株式は相続税法上「国外財産」であること
1 財産の所在に関する規定
2 評価と邦貨換算の実務
第4 米国連邦遺産税(非居住外国人課税)の構造
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目次
第1 iDeCo死亡一時金の基本構造
1 死亡一時金が支給される仕組み
2 受給権者の範囲及び順位
3 請求期限と相続財産への転化
第2 民法上の取扱い
1 受取人固有の権利という性質
2 遺贈及び遺産分割との関係
3 遺留分及び特別受益との関係
4 相続放棄との関係
第3 税法上の取扱い
1 支給が確定した時期による3区分
(1) 死亡後3年以内に確定した場合
(2) 死亡後3年を経過して確定した場合
(3) 5年の経過により相続財産となった場合
2 退職手当金等の非課税枠
3 相続人以外の受取人及び相続放棄者の課税
目次
第1 本記事の対象と結論の要旨
1 対象と射程
2 結論の要旨——必要な機能と総費用で比較する
3 用語——「遺言信託」は信託法上の信託ではない
第2 信託銀行が遺言執行を担える法的根拠とその限界
1 兼営法1条1項4号による併営業務
2 弁護士法72条による限界——紛争になれば扱えない
3 就職辞退・辞任という帰結と依頼者の負担
第3 遺言執行者の職務・報酬・費用の枠組み
1 職務の内容と権限
2 報酬の決まり方(民法1018条)
3 費用の負担(民法1021条)と復任(民法1016条)
第4 「遺言信託」の手数料構造
1 署名時・保管中・執行時の三層と別途実費
2 最低報酬額と算定基礎
3 中途解約・辞退時の費用
第1 死亡診断書が弁護士実務で問題となる場面1 この記事の対象と基準時2 死亡診断書が関わる四つの場面第2 交付義務,記載事項及び死体検案書との使い分け1 医師法19条2項の交付義務と罰則の不存在2 記載事項及び様式3 死亡診断書と死体検案書の使い分け4 医師法20条ただし書の「24時間」の意味第3 死亡届,火葬許可証及び記載事項証明書1 届出期限,届出義務者及び届出地2 診断書又は検案書を得られないとき3 原本の確保と届書の内容を証明する書類4 死亡届の住所・配偶者・職業・届出人の欄第4 記載事項が紛争で持つ意味1 死亡時刻の記載と同時死亡の推定2 死因の記載構造3 死因の種類の区分4 保険金請求における主張立証責任5 証拠力と反証の方法6 手術・解剖・追加事項・署名欄の読み方第5 医師法21条の異状死体届出義務1 「検案」の意義と届出義務者の範囲2 自己負罪拒否特権との関係3 医療事故調査制度との関係第6 訂正,死因等の変更及び虚偽記載1 誤記の訂正と死因等の確定・変更報告2 虚偽記載の刑事責任3 情報通信機器を用いた死亡診断と電子的作成第7 依頼者からの聴取事項と資料収集出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政資料4 文献
死亡診断書・死体検案書と死亡届からは,死因,死亡時刻,死亡場所,届出人などを読み取ることができる。
ただし,記載された時刻や場所には推定・確認・発見に基づく場合があり,書類だけでは分からない事実もある。
本記事では,各欄の読み方を,交付義務,戸籍手続,保険金請求及び証拠収集の実務と併せて説明する。
第1 死亡診断書が弁護士実務で問題となる場面
1 この記事の対象と基準時
この記事は,弁護士が死亡診断書又は死体検案書に接する場面を想定し,交付義務,記載事項の意味,死亡届及び火葬許可との関係,医師法21条の届出義務並びに資料収集の方法を整理するものである。
医学的な死因判定の当否そのものではなく,法令上の枠組みと,事案の見通しを立てるために確認すべき事項に主眼を置く。
記載は,令和8年8月30日現在のe-Gov法令検索の条文,裁判所ウェブサイトに掲載された裁判例及び厚生労働省が公表している令和8年度版の記入マニュアルによる。
死亡診断書及び死亡届の各欄の読み方並びに証明書の取得方法については,令和8年9月4日現在の公表資料を反映している。
2 死亡診断書が関わる四つの場面
第1に,戸籍手続である。
戸籍法86条2項は,死亡の届書に死亡の年月日時分及び場所等を記載し,診断書又は検案書を添付しなければならないと定めている。
死亡診断書は死亡届の添付書類として戸籍への死亡の記載と火葬許可の前提になり,民法882条により相続が開始する時点を示す資料としても機能する。
第2に,相続である。
死亡時刻の記載は,複数人が死亡した事案において相続の先後を決する場面で意味を持つ。
第3に,給付請求である。
死因及び死因の種類の記載は,生命保険金の請求,労働者災害補償保険の業務起因性の判断,交通事故における損害賠償の各場面で,当事者の主張の出発点になる。
第4に,医師又は医療機関の責任である。
死体に異状があると認めたときの警察署への届出義務(医師法21条)と,死亡診断書の記載の当否は,医療事故の刑事責任と直接に結び付く。
【死亡診断書から、どこまで分かるか】
死亡診断書は重要な資料であるが、記載された死因から、個々の診療行為の適否や薬剤の影響まで一度に判断しようとしない。
疑問がある場合は、記載の意味と根拠を確かめ、診療録、看護記録、検査結果等と照合する。
記載事項追加して確認すること死亡の原因記載の根拠となった所見・検査と、死亡までの診療経過死因の種類この分類の記載と、具体的な治療行為の適否・死亡への影響を区別して検討する発病から死亡までの期間どの傷病についての期間か、どの資料に基づいて記載したか死亡したとき記載時刻の根拠、推定等の注記、死亡確認・発見・連絡に関する記録との関係
厚生労働省の令和8年度版記入マニュアルは、「死亡したとき」について、原則として死亡確認時刻ではなく死亡時刻を記載する扱いを示し、推定・不詳等の記載や救急搬送中の死亡の場合の取扱いも説明している。
時刻が分単位で記載されていることだけから、誰がその場にいたか、何時に家族へ連絡したかまで認定しない。
文書の読み方と資料の集め方は、カルテの読み方及び遺族のカルテ取得で説明している。
第2 交付義務,記載事項及び死体検案書との使い分け
1 医師法19条2項の交付義務と罰則の不存在
医師法19条2項は,「診察若しくは検案をし,又は出産に立ち会つた医師は,診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には,正当の事由がなければ,これを拒んではならない」と定めている。
死亡診断書の交付は,この規定に基づく医師の義務である。
(続きを読む...)弁護士のための死亡診断書の実務―交付義務,死因・死亡時刻の記載,異状死体の届出及び証拠収集(AI作成)
火葬許可証(AI作成)
本記事は,人の死亡後に火葬を行うために必要となる火葬許可証について,その根拠となる法令と手続の流れ,24時間規制とその例外,死産児の取扱い,身寄りのない方が死亡した場合の処理などを,弁護士が実務で用いることを想定して整理するものである。
火葬許可証は,日々の相続・成年後見・死後事務・葬送をめぐる相談の入口に位置するが,その法的な枠組みが正面から論じられる機会は多くない。本記事は,火葬という行為の許可がどのような要件と手続の下で与えられるのかを条文に即して確認し,紛争が生じ得る場面での確認事項を示す。
本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別の事案に対する法的助言ではない。具体的事件の処理に当たっては,最新の法令及び当該事案の事実関係に基づく個別の検討を要する。
目次
第1 火葬許可証をめぐる法的枠組みの全体像
1 本記事の対象と射程
2 「埋葬許可証」と「火葬許可証」——用語の混同に注意
第2 火葬許可証の根拠規定と交付の仕組み
1 許可制の趣旨(墓地埋葬法5条・8条)
2 交付権限を持つ市町村長(5条2項)
3 申請書の記載事項(施行規則1条)
4 火葬場・墓地・納骨堂における受理義務と火葬後の裏書
第3 24時間規制とその例外
1 24時間規制の趣旨(3条)
2 例外1——感染症に汚染された死体(感染症法30条)
3 例外2——妊娠7月未満の死産,船舶内の死亡
4 許可証の交付時期と火葬の実施時期は別である
◯本記事は,緊急性のない患者等の搬送を担う「民間救急車」(患者等搬送事業)について,事業を規律する法令及び行政上の基準,搬送中に行い得る行為の限界,並びに搬送に関する事故が生じた場合の責任と主張立証を,弁護士が実務で検討する順序に沿って整理するものである。個別の事案に対する法的助言ではなく,一般的な情報提供を目的とする。
目次
第1 民間救急車の位置づけ——「救急業務」との区別と二重の規制構造
1 「救急業務」は消防機関の役務であること
2 有償搬送を適法化する許可と品質を担保する認定の二重構造
3 民間救急車は緊急自動車になれないこと
第2 適用される法令と事業開始の要件
1 道路運送法上の許可——一般乗用旅客自動車運送事業と福祉輸送事業限定
2 自家用有償旅客運送(福祉有償運送)との区別
3 消防機関による患者等搬送事業者認定の基準
4 運賃及び料金の規制
第3 搬送中に実施し得る行為の範囲
1 無資格の乗務員による行為と医師法17条
2 救急救命士が同乗する場合
3 医師又は看護師が同乗する場合
4 感染症の患者の移送
第4 搬送をめぐる事故と主張立証
1 旅客運送契約に基づく責任と立証責任の転換
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目次
第1 死亡届の届出人の基本構造
1 届出義務者の順位(戸籍法87条1項)
2 届出資格者の拡大とその沿革(戸籍法87条2項)
3 添付書類・届出地・届出期間
4 高齢者等終身サポート事業者等が家屋管理人となる場合
第2 弁護士が関与する場面――手続選択の分岐
1 届出人が存在しない場合の対応
2 届出の誤りの是正――追完届と戸籍訂正の振り分け
第3 死亡届出資格と死後事務の権限との乖離
1 民法873条の2――成年後見人に限定された死後事務権限
2 任意後見人・任意後見受任者・保佐人・補助人の限界
第4 主張立証及び証拠収集
1 同居の事実及び後見人等の資格の立証
2 死後事務許可の要件の立証と収集すべき証拠
◯「日弁連と信託協会の協議会合意書(平成6年2月22日付)」も参照してください。
目次
第1 最初に区別すべき3つの制度
1 銀行サービスとしての「遺言信託」
2 信託法上の遺言による信託
3 遺言代用信託
4 制度選択の基準
第2 銀行サービスとしての遺言信託
1 法的根拠と提供業務
2 平成6年合意書が定めた紛争対応の限界
(1) 遺言書作成の相談
(2) 遺産整理業務
(3) 遺言執行者への就任
3 合意書の法的性質
4 契約と費用の確認
第3 信託法上の遺言による信託
1 設定方法と効力発生
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第1 自筆証書遺言に固有の無効事由と主張の交通整理
1 三つの無効事由と,その責任構造の違い
2 自書性と遺言能力は前提が逆である
3 作成時期による適用条文の確定
第2 方式違反に関する最高裁判例の射程
1 日付――「吉日」と誤記の分水嶺
2 押印――指印と花押の分水嶺
3 数葉にわたる遺言と契印
4 加除変更の方式違背
5 方式違反の実務上の位置付け
第3 自書性(偽造)に関する裁判例の到達点
1 自書性は五つの事情の総合考慮による
2 署名の酷似は透写の証明にならない
3 自書性が認められれば押印も本人と推認される
4 添え手に関する最高裁判例の正確な読み方
5 自書性を否定した事例
第4 筆跡鑑定の有効性をどう評価するか
目次
第1 結論―遺言が無効でも死因贈与が成立する場合がある
1 「転換」と呼ぶ場合でも契約成立の認定が必要である
2 死因贈与としても救えない無効原因がある
3 遺贈と死因贈与の違い
第2 死因贈与の成立と撤回に関する法的枠組み
1 申込み,承諾及び目的物の特定が必要である
2 遺言の方式は死因贈与に準用されない
3 書面化と撤回の問題
4 先行する遺言との抵触
第3 形式不備の遺言と死因贈与に関する裁判例
1 日付を欠く自筆証書遺言について成立を認めた例
2 明示又は黙示の承諾を認めた広島高裁判決
第1 公正証書遺言が有効であるという抗弁の記載例
第2 必要的共同訴訟かどうか
第3 遺言執行者の当事者適格
第4 確認の利益
第5 平均審理期間と併合事件
第6 遺言無効確認請求訴訟における主張立証の組立て
第7 遺言無効に関する関連記事
1 訴訟手続・要件事実
2 公正証書遺言の方式と証拠取得
3 遺言能力と認知症
4 自筆証書遺言・秘密証書遺言・偽造
5 無効後の処理及び周辺論点
第8 出典
本記事は、山中弁護士ブログにある遺言無効確認請求訴訟及び遺言の無効主張に関する記事のリンク集である。
訴訟要件、当事者、審理期間、要件事実、証拠収集及び遺言書の種類ごとの論点は、それぞれの関連記事で詳しく説明している。
第1 公正証書遺言が有効であるという抗弁の記載例
公正証書遺言の有効を主張する側は、遺言作成時に適用される民法及び公証人法に従って成立要件を具体的に主張する必要がある。
令和7年9月30日までに作成された遺言と、同年10月1日以後に電磁的記録で作成された遺言の抗弁の記載例は、公正証書遺言に関する遺言無効確認請求訴訟の要件事実にまとめている。
第2 必要的共同訴訟かどうか
相続分及び遺産分割方法を指定した遺言の無効確認の訴えは、相続人全員を必ず当事者にしなければならない固有必要的共同訴訟ではない。
もっとも、誰との間で遺言の有効性を確定すれば紛争を一回的に解決できるかは別に検討する必要がある。
目次
第1 予備的遺言の意味と結論1 予備的遺言とは2 結論第2 受益者が先に死亡しても代襲相続になるとは限らない1 最高裁平成23年2月22日判決2 遺贈の場合第3 予備的遺言で想定する事由1 先死亡と同時死亡2 相続放棄3 遺贈放棄4 相続欠格と廃除第4 予備的受益者と財産の範囲を特定する1 相続人には「相続させる」,相続人以外には「遺贈する」と書く2 複数の予備的受益者の割合を定める3 目的財産と残余財産条項を対応させる第5 条項を作るときの確認事項1 発動条件を列挙する2 主位的受益者と予備的受益者の双方について次順位を考える3 遺言執行者と権限を定める第6 遺言執行時の確認第7 関連記事第8 出典1 法令及び公的資料2 裁判例及び文献
第1 予備的遺言の意味と結論
1 予備的遺言とは
予備的遺言とは,主として財産を取得する予定の者が先に死亡するなど,主位的な条項を実現できない事態に備え,次に財産を取得させる者と発動条件をあらかじめ定めておく遺言である。
例えば,「長男に自宅を相続させる」と定めるだけでなく,「長男が遺言者より先に,又は遺言者と同時に死亡したときは,長男の子に相続させる」と定める方法がある。
後の条項が予備的遺言である。
2 結論
①受益者が遺言者より先に死亡しても,その子が当然に遺言の利益を引き継ぐとは限らない。
②先死亡と同時死亡は予備的遺言で明記する必要性が高い。
③相続放棄,遺贈放棄,相続欠格及び廃除は先死亡と法的効果が異なるため,一つの短い条項で一律に処理しない方がよい。
④予備的な受益者が相続人でなければ,「相続させる」ではなく「遺贈する」と書く。
⑤主位的条項と予備的条項で,財産の範囲,代替財産,受益者の範囲及び割合を対応させる。
第2 受益者が先に死亡しても代襲相続になるとは限らない
1 最高裁平成23年2月22日判決
最高裁平成23年2月22日第三小法廷判決(平成21年(受)第1260号,民集65巻2号699頁)は,「相続させる」旨の遺言により財産を取得する予定であった推定相続人が遺言者より先に死亡した場合を扱った。
同判決は,遺言書の他の記載,作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況等から,その場合には代襲者その他の者に財産を相続させる意思を認めるべき特段の事情がない限り,その条項は効力を生じないとした。
法律上の代襲相続人が存在するというだけで,その者が遺言による受益者の地位を当然に承継するわけではない。
2 遺贈の場合
受遺者が遺言者より先に死亡したときは,遺贈は原則として効力を生じない(民法994条1項)。
停止条件付き遺贈について,条件成就前に受遺者が死亡した場合も,遺言に別段の意思が表示されていない限り同様である(同条2項)。
効力を生じなかった遺贈の目的財産は,遺言に別段の意思が表示されていない限り相続人に帰属する(民法995条)。
誰に帰属させたいかが明確であれば,別段の意思を予備的遺言として書いておく必要がある。
第3 予備的遺言で想定する事由
1 先死亡と同時死亡
先死亡は,主位的な受益者が遺言者より先に死亡する場合である。
同時死亡では,民法32条の2により互いに相続人とならないため,先死亡の場合と同様に主位的条項を実現できないことがある。
日本公証人連合会の説明も,長男が遺言者に先立って,又は同時に死亡したときは長男の子に相続させるという形の予備的遺言を紹介している。
先後不明の事故もあり得るため,「先に死亡したとき」だけでなく「同時に死亡したとき」も書くのが安全である。
2 相続放棄
相続放棄をした者は,その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法939条)。
目次
第1 遺言無効確認請求訴訟における公証人の証言
1 公証人の証言の信用性
2 公証人の証言拒絶権
3 公証人に具体的な記憶がない場合の証拠評価
第2 遺言無効確認請求訴訟における公証人の補助参加
1 補助参加の要件及び手続
2 公証人による補助参加の申出を却下した裁判例
3 国家賠償請求及び国から公証人に対する求償
4 公証人の身元保証金
第3 既判力と補助参加の効力を区別する
第4 出典
第5 関連記事
第1 遺言無効確認請求訴訟における公証人の証言
1 公証人の証言の信用性
遺言無効確認請求訴訟では、公正証書遺言を作成した公証人の証言又は回答書が、口授の有無、作成時の遺言者の状態及び作成手順を認定するための重要な証拠となることがある。
石田明彦ほか「遺言無効確認請求事件の研究(上)」(判例タイムズ1194号44頁、54頁~55頁)は、平成7年以降に大阪地裁民事部が受理し、判決に至った遺言無効確認請求事件等40件を検討している。
第1 この記事の対象と最初に確認する三つの分岐
1 相続開始が令和元年7月1日より前か
2 減殺された処分が特定財産型か割合型か
3 現物を取得したい者と資金を準備できる者は誰か
第2 改正前の遺留分減殺請求の効果
1 意思表示によって持分が当然に帰属する
2 減殺請求の1年と10年の期間
3 旧法の減殺順序と現行法の負担順序は同一ではない
第3 共有物分割と遺産分割の振分け
1 処分類型ごとの原則
2 特定財産承継遺言と共同相続人への減殺
3 相続分指定の減殺は遺産分割で処理する
4 遺産共有持分と物権共有持分が併存する場合
第4 共有物分割へ進む前の確認と証拠
1 協議,調停及び訴訟
2 不分割契約と権利濫用
3 低負担の資料から分割方法を絞る