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行政給付のスマホ限定と法の下の平等――東京アプリの本人確認・代理申請とデジタルデバイド(AI作成)

第1 行政のデジタル化で確認したいこと

行政給付の申請や受取方法をスマートフォンに集約すると,事務の効率化とともに,端末を持たない人や操作に支援を必要とする人の利用機会が問題となる。
東京アプリの生活応援事業を例に,制度の目的と対象要件,代理申請の範囲,法の下の平等及び合理的配慮を検討するときの視点を整理する。

本記事は令和8年11月1日を基準とする。
東京都の公表内容と,法令・政府の基本方針から導く検討上の視点を分け,個別の訴訟の適法性や勝敗を判断するものではない。

第2 東京アプリの生活応援事業と2つの目的

東京都の令和8年10月23日付け発表は,東京アプリの更なる普及促進と,物価高騰など社会情勢の変化を踏まえた都民の生活応援を,生活応援事業の目的として説明している。
利用促進という目的と生活支援という目的の双方が掲げられている点を,制度の検討の出発点としたい。

東京都の事業案内では,マイナンバーカードを持つ15歳以上の都内在住者を対象に,11,000ポイントの東京ポイントを付与する事業として案内している。
対象年齢,住民登録,本人確認,申請方法及び受取方法は,それぞれ別の条件として確認する必要がある。

アプリを利用しているかどうかだけで,制度から受ける利益と不利益の全体を判断することは難しい。
生活支援の対象をどのように設定したのか,本人確認や重複受給の防止にどのような方法を採ったのか,利用が難しい人にどのような支援を用意したのかを,制度資料に即して検討することになる。

第3 代理申請で解消する問題と残る条件

1 令和8年11月4日からの受付予定

東京都の10月23日付け発表は,10月30日の東京アプリのリニューアルと,11月4日午前10時からの代理申請の受付開始を案内している。
本記事の基準日には,代理申請の受付はまだ始まっていない。

代理申請は,障害や認知症等により自分でのスマートフォン操作が困難な人を対象とし,障害者手帳を持つこと,又は要介護・要支援認定を受けていることが要件とされている。
代理人となれるのは,法定代理人,配偶者,2親等以内の親族又は同一世帯の人であり,保佐人・補助人については付与された代理権の範囲を確認する必要がある。

2 代理人がいれば全ての条件を代替できるわけではない

発表は,申請者本人と代理人の双方のマイナンバーカードを必要とし,対象資格と本人・代理人の関係を確認する書類の提出を求めている。
ポイントの付与先は本人のアカウントであり,代理人自身に給付を移す制度として説明されているわけではない。

したがって,代理申請が用意されたという事実だけから,マイナンバーカードを持たない人や,対象資格・代理人の条件を満たさない人の問題まで解消されたとはいえない。
スマートフォンの操作が難しいことと,カードを持たないこと,代理を頼める相手がいないことを分けて確認する必要がある。

同発表は,代理申請で付与された東京ポイントを利用できる時期について,別途案内するとしている。
代理申請の受付開始と,その申請によるポイントの受取・利用ができる時期を混同してはならない。

第4 平等とデジタルデバイドをどう検討するか

1 関連法令が定める原則

憲法14条1項は法の下の平等を定める。
また,地方自治法10条2項は,住民が法律の定めるところにより,所属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有すると定めている。

デジタル社会形成基本法8条は,地理的な制約,年齢,障害の有無,経済的な状況等による情報通信技術の利用機会又は活用能力の格差の是正を図ることを,基本理念として掲げる。
行政サービスのデジタル化を検討するときには,この格差是正の視点も必要となる。

これらの条文だけから,個々の給付について全住民が無条件に同額の現金を受け取れる権利や,紙の手続を必ず選べる権利まで直ちに導かれるわけではない。
具体的な制度の根拠,目的,対象要件及び代替措置に即した検討が必要である。

2 目的・必要性・代替措置を資料で確かめる

以下は,前記の法令を踏まえた検討上の視点である。
特定の裁判所が東京アプリについて示した判断基準を紹介するものではない。

まず,アプリの普及促進と生活応援という目的をそれぞれ確認し,問題となる要件がどの目的のために設けられたのかを整理する。
次に,その要件によって実際に利用できない人の範囲と不利益を確認し,本人確認などの目的を達成するために他の方法が採れないかを検討する。

東京都知事は令和8年10月30日の記者会見で,デジタルが難しい人に対し,同年7月から対面サポートを実施しており,11月から代理申請を開始すると説明している。
こうした対面サポートや代理申請については,制度の名称だけでなく,誰が利用できるか,何を代わりに行ってもらえるか,残る条件は何かを調べたい。
事務費用,人員,安全性及び重複受給の防止も資料に基づいて比較し,「デジタル化だから適法」「使えない人がいるから違法」と結論を急がないことが大切である。

第5 合理的配慮と過重な負担

1 障害に伴う利用上の障壁を個別に確認する

障害者差別解消法7条2項・8条2項は,行政機関等と事業者に対し,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があり,実施に伴う負担が過重でないとき,必要かつ合理的な配慮を行う義務を定めている。
単にスマートフォンを持たない人と,障害により操作や本人確認に具体的な困難がある人を,当然に同じ法律上の問題として扱うことはできない。

政府の基本方針「第2の3」は,合理的配慮を,個々の場面に応じて社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組とし,事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないと説明している。
希望された方法を実施することが難しい場合にも,建設的対話を通じて代替措置を検討することが重要である。

2 人手不足という抽象論だけで結論を出さない

基本方針は,過重な負担について,個別の事案ごとに,事務・事業への影響の程度,実現可能性の程度,費用・負担の程度,事務・事業規模,財政・財務状況等の要素を考慮し,具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するとしている。
人的・体制上の制約も実現可能性の検討に含まれるが,一般的な人手不足だけで全ての配慮を拒むという整理ではない。

負担が過重と判断した場合には,その理由を説明し,理解を得るよう努めることが基本方針に示されている。
対応する側の安全や業務継続を確保しながら,実施できる別の方法を具体的に探ることが,配慮を求める側と提供する側の双方にとって重要となる。

第6 配慮の申出とカスハラを混同しない

厚生労働省のカスタマーハラスメント対策の解説は,障害者が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや,社会的障壁の除去を求める意思を示すこと自体は,カスタマーハラスメントに当たらないと説明している。
申出の内容と,暴力・脅迫等の言動や対応方法の相当性は,分けて検討する必要がある。

具体的な配慮を検討することと,職員を危険な作業や暴力から守ることは,いずれも対応方針に組み込むべき事項である。
一般的な事業主の措置は令和8年10月1日施行のカスハラ対策義務化―全事業主が整える10項目(AI作成)で,法律事務所での対応は弁護士に対する業務妨害と対策――日弁連の宣言,濫用的懲戒請求,国選弁護人の解任及び法律事務所のカスハラ対策(AI作成)で扱っている。

第7 相談を受けたときに集めたい資料

行政給付の利用が難しいという相談では,制度の実施要綱・規約,対象要件,申請期限,本人確認の方法,利用を妨げている具体的な事情,問い合わせに対する回答を確認したい。
代理申請や窓口支援の利用を検討した場合は,満たせる条件と満たせない条件,求めた対応,提示された代替案及びその理由を記録する。

東京都の説明,利用者の申出,報道やSNS上の評価は,それぞれ発言者と資料の性質を明らかにして整理する。
実際にどのような不利益が生じ,どの措置なら利用できるのかを具体化することが,制度の検討と個別の相談対応の双方に役立つ。

第8 出典・参考資料

①東京都「東京アプリ生活応援事業」発表(令和8年10月23日)
②東京アプリ生活応援事業の案内
③東京都知事記者会見(令和8年10月30日)
④e-Gov法令検索「日本国憲法」14条1項
⑤e-Gov法令検索「地方自治法」10条2項
⑥e-Gov法令検索「デジタル社会形成基本法」8条
⑦e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」7条2項,8条2項
⑧障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針第2の3
⑨厚生労働省「カスタマーハラスメント対策の解説」(令和8年8月20日)