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遺言・相続

遺留分減殺請求の訴額の算定―不動産の持分移転登記請求,土地の2分の1,建物,訴額と価額弁償額・弁護士費用の違い(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする訴訟2 結論第2 訴額算定の法令上の枠組み1 訴えで主張する利益によって算定する2 昭和31年の民事局長通知3 平成6年の民事局長通知と土地の2分の14 手数料額への当てはめ第3 遺留分減殺による持分移転登記請求の訴額1 基本の算式2 数値例3 手引が示す追加の2分の14 請求の趣旨と訴額の対応第4 訴状の訴額から評価額を逆算するときの注意1 固定資産税評価額の年度2 換地・分筆・合筆3 未知数を一つ置けば必ず一致する第5 訴額と区別すべき金額1 四つの金額の違い2 固定資産税評価額と時価3 訴額に相当する金銭を支払えば終わるわけではない4 弁護士費用の算定基礎第6 現行法の遺留分侵害額請求の訴額第7 訴状を作成し,又は受け取ったときの確認手順1 訴状を作成する側2 訴状を受け取った側第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする訴訟

本記事は,令和元年7月1日より前に開始した相続について,遺留分権利者が受遺者又は受贈者に対し,遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記手続を求める訴訟の「訴訟物の価額」(以下「訴額」という。)を扱う。
基準日は令和8年9月18日であり,条文は同日にe-Gov法令検索で確認した。

平成30年法律第72号附則2条は,同法の施行日前に開始した相続について,原則として従前の例によると定めている。
そのため,訴えの提起が令和8年であっても,相続開始が令和元年6月30日以前であれば,旧法の遺留分減殺請求として,金銭ではなく不動産の持分そのものが請求の対象になることがある。

2 結論

訴額の出発点は,昭和31年12月12日民事甲第412号民事局長通知の「所有権移転登記請求権 目的たる物の価格」であり,固定資産税評価額のある不動産はその価格による。
土地については,平成6年3月28日民二第79号民事局長通知により,受付事務の取扱いとして固定資産税評価額に2分の1を乗じた額を基準とする。
建物には,この土地の2分の1の取扱いはない。

遺留分減殺による持分移転登記請求では,こうして求めた目的物の価額に,各原告が求める持分割合を乗じ,原告が複数であれば合算するのが基本である。
もっとも,『三訂版 事例からみる訴額算定の手引』は,遺留分減殺による持分移転登記請求を「抹消に代わる移転登記」と位置付け,更に2分の1を乗じる計算を示している。
他方,判例タイムズ1345号のモデル訴状は,通常の所有権移転登記の形で請求の趣旨を示しており,受付実務が一つに定まっているとまではいえない。

訴額は,申立手数料を計算するための額である。
遺留分侵害額,価額弁償の額及び弁護士費用の算定基礎とは,基準も時点も異なる。
訴状の訴額に相当する金銭を支払えば紛争が終わるわけではない。

第2 訴額算定の法令上の枠組み
1 訴えで主張する利益によって算定する

民事訴訟法8条1項は,訴額を「訴えで主張する利益によって算定する」と定める。
民事訴訟費用等に関する法律4条1項は,手数料の算出の基礎となる訴額も,民事訴訟法8条1項及び9条により算定するとしている。

一つの訴えで数個の請求をする場合は,民事訴訟法9条1項本文により,その価額を合算する。
ただし,訴えで主張する利益が各請求について共通である場合は,同項ただし書により合算しない。

2 昭和31年の民事局長通知

昭和31年12月12日民事甲第412号民事局長通知「訴訟物の価額の算定基準について」は,所有権について「目的たる物の価格」とし,地方税法349条による固定資産税の課税標準となる価格があるものはその価格,その他のものは取引価格によるとしている。
同通知は,所有権移転登記請求権についても「目的たる物の価格」とし,所有権に基づく物の引渡(明渡)請求権については「目的たる物の価格の二分の一」としている。

同通知は,各裁判所の受付事務の取扱いが分かれていたことから参考資料として作成されたものであり,訴額に争いがあるとき等の基準となるものではないと明記している。
また,価格の認定については,固定資産税の課税標準となる価格を証明する書面を提出させる等の方法により当事者に証明させるとしている。

3 平成6年の民事局長通知と土地の2分の1

平成6年3月28日民二第79号民事局長通知「土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について」は,平成6年度の評価替えで宅地の固定資産税評価額が大きく上昇することを踏まえ,同年4月1日から当分の間,土地を目的とする訴訟の受付事務の取扱いとして,固定資産税評価額に2分の1を乗じて得た金額を基準とすることが妥当であるとした。

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小規模企業共済の共済金と相続―死亡時の受給権者の順位,相続放棄,相続税の非課税枠,生前受取の課税及び承継通算(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論の要旨第2 共済金の種類と支給事由1 法律上の共済金と解約手当金2 中小機構の案内上の「共済金A」「共済金B」「準共済金」第3 共済契約者が死亡したときの受給権者1 遺族の範囲と順位2 同順位の受給権者が複数いる場合3 受給権者がいない場合と欠格第4 共済金は相続財産か1 遺族に直接発生する権利2 相続放棄と共済金3 遺産分割・遺言執行との関係4 既に発生していた受給権と分割受取中の残額第5 相続税の取扱い1 みなし相続財産としての退職手当金等2 非課税限度額3 相続人以外の者や相続放棄者が受け取った場合4 所得税は課されない第6 生前に受け取る共済金等の所得税1 一括受取は退職所得2 分割受取は公的年金等の雑所得3 65歳未満の任意解約等は一時所得4 掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象第7 死亡した年の準確定申告1 期限と掛金控除2 死亡の年に生前受け取っていた共済金第8 共済金の請求手続と期限1 請求手続と添付書類2 時効と完成猶予第9 事業を承継する配偶者・子の承継通算1 承継通算の要件2 承継通算を選んだ場合の課税第10 出典1 法令2 所管行政機関の通達・解説・文書回答3 共済契約の運営機関の資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,小規模企業共済に加入していた個人事業主又は会社等の役員が死亡した場合に,誰が共済金を受け取り,それが相続財産や相続税とどう関係するかを,小規模企業共済法,所得税法,相続税法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という。)の公表資料に基づいて整理するものであり,AIを用いて作成した。
法令は令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文により,中小機構及び国税庁の資料は同日に各ウェブサイトで確認した内容による。
生前に共済金等を受け取った場合の所得税と,死亡した年の準確定申告との関係も,相続手続に関係する範囲で扱う。

2 結論の要旨

共済契約者の死亡による共済金は,民法の相続人ではなく,小規模企業共済法10条が定める順位の遺族が受け取る。
①第1順位は配偶者であり,届出をしていない事実上の配偶者を含む。
②共済金の請求権は遺族に直接発生する権利であり,中小機構は,相続財産に属さないため相続を放棄しても受給権者であれば請求できると説明している。
③相続税では,共済金は死亡退職金と同じ「退職手当金等」として相続又は遺贈により取得したものとみなされ,相続人が取得した分には,500万円に法定相続人の数を乗じた非課税限度額がある。
④相続人以外の者や相続を放棄した者が受け取った共済金には,この非課税限度額の適用がない。
⑤生前に一括で受け取った共済金は退職所得,分割で受け取った共済金は公的年金等の雑所得となり,65歳未満での任意解約による解約手当金は一時所得となる。
⑥事業の全部を相続した配偶者又は子は,相続開始から1年以内であれば,共済金を請求せずに掛金納付月数を引き継ぐ承継通算を選べる。

第2 共済金の種類と支給事由
1 法律上の共済金と解約手当金
(1) 共済金

小規模企業共済法9条1項は,共済契約者に事業の廃止等の事由が生じた場合であって掛金納付月数が6か月以上のときは,中小機構は「その者(第一号又は第二号に掲げる事由が死亡によるものであるときは、その遺族)に共済金を支給する。」と定めている。
支給事由は,個人事業の廃止(会社等の役員の場合は会社等の解散),会社等の役員の疾病,負傷若しくは死亡による退任又は65歳以上での退任,及び65歳以上で掛金納付月数が180か月以上の共済契約者の請求である。
共済金は一時金として支給するのが原則であり(同法9条の2),共済契約者の請求による分割払も認められているが,事業の廃止等の支給事由が生じた日に60歳未満であるときは分割払を選べない(同法9条の3第1項ただし書2号)。

(2) 解約手当金

共済契約者は,いつでも共済契約を解除することができ(小規模企業共済法7条3項),個人事業主が同一の事業を営む会社を設立するため事業を廃止したとき等は,共済契約が解除されたものとみなされる(同条4項)。
共済契約が解除された場合であって掛金納付月数が12か月以上のときは,中小機構は共済契約者に解約手当金を支給する(同法12条1項)。

2 中小機構の案内上の「共済金A」「共済金B」「準共済金」

中小機構は,請求事由に応じて,共済金等を「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」の4種類に分けて案内している。
これらは法律上の用語ではなく,中小機構の案内上の区分であり,受け取る金額の水準が区分ごとに異なる。

区分個人事業主の主な請求事由会社等の役員の主な請求事由共済金A個人事業の廃業,共済契約者の死亡会社等の解散共済金B65歳以上で180か月以上払い込んだ場合の老齢給付疾病・負傷又は65歳以上での退任,共済契約者の死亡,老齢給付準共済金法人成りの結果,加入資格がなくなった場合法人の解散や疾病・負傷によらない65歳未満での退任解約手当金任意解約,機構解約任意解約,機構解約

共済契約者の死亡は,個人事業主では共済金A,会社等の役員では共済金Bの請求事由として案内されている。
いずれも,死亡による共済金は遺族が請求し,分割受取や一括・分割併用受取は選べない。

第3 共済契約者が死亡したときの受給権者

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清算型遺言(財産を換金して分ける遺言)の実現方法―遺言執行者がいない場合・信託銀行が就職を辞退した場合の手続,登記及び課税(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論の要旨第2 清算型遺言の法的性質1 清算型遺言の典型的な文言2 特定遺贈・包括遺贈・相続分の指定のいずれと解されるか3 性質の違いが影響する場面第3 遺言執行者の権限と相続人の処分の制限1 遺言執行者がいる場合の換金と分配2 指定された者が就職を承諾する前の相続人の処分3 就職前の辞退と就職後の辞任第4 遺言執行者がいない場合の二つの方法1 家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる方法2 相続人と取得する人の全員で換金・分配する方法第5 金融機関での手続1 預金2 証券会社3 弁護士が取得者の一部の代理人となる場合第6 不動産を換金する場合の登記1 相続登記を経てから買主に移転する2 遺言執行者がいない場合の相続登記と贈与税3 売買契約の条項第7 換金と課税1 譲渡所得は誰の所得になるか2 被相続人の準確定申告との関係3 相続税第8 出典1 法令2 裁判例3 裁判所の手続案内4 国税庁の質疑応答事例・研究論文5 金融機関の公開資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,遺産の全部又は一部を売却・解約して金銭に換え,債務や費用を支払った残りを定めた割合で分けるよう定めた遺言(以下「清算型遺言」という。)を,遺言執行者がいない場合や,指定された信託銀行等が就職を辞退した場合にどう実現するかを,民法,家事事件手続法,不動産登記法,所得税法,国税庁の公表資料及び金融機関の公開資料に基づいて整理するものであり,AIを用いて作成した。
法令は令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文により,裁判例は裁判所ウェブサイトで個別ページ及び全文を確認したものに限って用いる。
金融機関の必要書類は同日に各社のウェブサイトで確認した内容であり,手続の細部は変更され得るため,実際には各社の最新の案内で確認する必要がある。

2 結論の要旨

清算型遺言は,遺言執行者が就職していれば遺言執行者が換金と分配を行う。
遺言執行者が指定されていない場合や,指定された者が就職を辞退した場合のように,遺言執行者がいない場合には,遺言で財産を取得する人だけでなく,遺贈を履行する義務を負う法定相続人全員(遺言で何も取得しない相続人を含む。)と取得者全員が協力することにより,換金・分配できる場合がある。
ただし,遺言執行者に指定された者がまだ就職を承諾していないだけの場合は,「遺言執行者がいない場合」と同じには扱えず,就職するか辞退するかを確認する必要がある。
①清算型遺言は,一律に特定遺贈又は包括遺贈と決まるものではなく,遺言の趣旨により,包括遺贈や,相続分の指定及び遺産分割方法の指定と解されることがある。
②遺言執行者に指定された者が就職を承諾する前でも,民法1013条の「遺言執行者がある場合」に当たるとした最高裁判例があるため,指定された者が就職を辞退したことを書面で確認してから相続人側の手続に移るのが安全である。
③遺言執行者がいない場合は,家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てるか,相続人全員と取得する人全員の書類で金融機関や登記の手続を進めるかを選ぶことになる。
④金融機関は,遺言書があって遺言執行者がいない場合の書類を別に定めていることが多いが,分ける割合や承継人が明確でない場合は,法定相続人全員の書類を求める扱いがある。
⑤遺言執行者が遺産を換金した場合の譲渡所得について,国税庁の質疑応答事例は,法定相続分に応じて各相続人が申告する必要があるとしているが,これは同事例の個別の事実関係を前提とした回答であり,すべての清算型遺言に当然に当てはまるものではなく,受遺者に帰属するとする研究論文の見解もある。

第2 清算型遺言の法的性質
1 清算型遺言の典型的な文言

清算型遺言は,例えば「遺言者の有する一切の財産を換価し,その換価金から遺言者の債務及び遺言執行に関する費用を弁済した残金を,Aに2分の1,B及びCに各4分の1の割合で取得させる。」という形で書かれる(本記事で作成した例である)。
遺産そのものではなく,換金した後の金銭を分けることを定めている点で,特定の不動産や預金を特定の人に承継させる遺言とは構造が異なる。
遺産の一部だけを換金の対象とし,自宅などの特定の財産は別の条項で特定の人に承継させる形の遺言もある。

2 特定遺贈・包括遺贈・相続分の指定のいずれと解されるか
(1) 民法の規定

民法964条は,「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。」と定め,民法990条は,「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」と定めている。
また,民法902条1項は遺言による相続分の指定を,民法908条1項は遺言による遺産の分割の方法の指定を認めている。

(2) 国税庁の研究論文の整理

国税庁税務大学校の研究論文である小柳誠「換価遺言が行われた場合の課税関係について」(税大論叢85号,平成28年6月30日)は,清算型遺言(同論文の用語では換価遺言)について,「一義的には、換価遺言の場合は、その目的物は、換価代金すなわち金銭と考えられるから、これは相続財産自体でなく、不特定物であり、この点のみで考えれば、換価遺言は、一応、不特定物遺贈と考えられる。」としている。
その上で,同論文は,「しかしながら、債務の清算に着目し、遺言の趣旨の解釈を行うと包括遺贈との性質決定にもなりうる。また、相続人に対する換価遺言の場合では、相続分の指定及び遺産分割の方法を指定したと解する場合があり得る。」とし,「結局、換価遺言も特定遺贈か、包括遺贈かなどと一義的に解するのではなく、個々の場面における遺言者の遺言の趣旨に照らし、相続人、受遺者に及ぼす法的効果として妥当する法的性質決定が必要である。」と結論付けている。
同論文は研究者個人の論文であり,国税庁の公式見解ではないが,清算型遺言の性質を一律に決められないことを確認する資料として参考になる。

3 性質の違いが影響する場面

清算型遺言をどう性質決定するかは,債務を誰が負担するか,取得者が相続人以外の者である場合に相続人と同一の権利義務を持つか(民法990条),遺言執行者の有無や権限の範囲をどう考えるかに影響する。

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遺言による生命保険金受取人の変更―保険法44条・73条の要件,保険会社への通知,遺言執行者の役割並びに遺留分及び特別受益(AI作成)

目次第1 結論の要旨と本記事の対象1 結論の要旨2 本記事の対象と基準日第2 保険法の条文1 保険金受取人の変更の原則(43条・72条)2 遺言による変更(44条・73条)3 被保険者の同意(45条・74条)第3 適用時期―平成22年4月1日以後に締結された契約1 施行日と経過措置の原則2 施行日前に締結された契約第4 遺言の要件と記載内容1 遺言の方式と効力発生時期2 契約と新受取人の特定3 遺言の撤回と生前の変更との関係第5 保険会社への通知(対抗要件)1 通知をする者2 遺言執行者による通知3 通知の前に旧受取人へ支払われた場合第6 遺留分・特別受益・相続税1 遺留分2 特別受益3 相続税第7 実務上の注意点1 生前の変更手続と遺言による変更の比較2 遺言の文案例3 遺言執行者を指定しておく意味4 受取人が先に死亡した場合5 期間制限6 相続放棄との関係第8 出典1 法令2 裁判例3 立法資料・所管行政機関の説明4 文献
第1 結論の要旨と本記事の対象
1 結論の要旨
(1) 遺言で変更できる場合と効力

生命保険の死亡保険金の受取人は,保険契約者が遺言で変更することができる(保険法44条1項)。
傷害疾病定額保険契約(死亡保険金を含む医療保険等)についても同じ規定がある(保険法73条1項)。
遺言による変更は,遺言が民法の方式を満たしていれば,遺言者の死亡の時に効力を生ずる(民法960条,985条1項)。
ただし,この規定が直接適用されるのは,保険法の施行日である平成22年4月1日以後に締結された保険契約である(保険法附則2条本文)。

(2) 保険会社への通知と遺言執行者

遺言による変更は,遺言の効力が生じた後に「保険契約者の相続人」が保険会社に通知しなければ,保険会社に対抗することができない(保険法44条2項)。
法務省の立案担当者の解説は,この通知は相続人の1人がすれば足り,遺言執行者が通知することもできるとしている。
通知の前に保険会社が旧受取人へ保険金を支払ってしまうと,新受取人は保険会社に支払を求めることができず,旧受取人との間で清算を求めることになると考えられる。

(3) 遺留分・特別受益・相続税

死亡保険金請求権は受取人の固有の権利であり,受取人の変更は遺留分減殺の対象となる遺贈又は贈与に当たらないとした最高裁判決がある。
特別受益についても,原則として持戻しの対象ではないが,著しい不公平がある特段の事情があれば民法903条の類推適用により持戻しの対象となる。
相続税では,新受取人が相続人であるか否かにより,非課税限度額の適用の有無が変わる(相続税法3条1項1号,12条1項6号)。

2 本記事の対象と基準日

本記事は,遺言で保険金受取人を変えたい保険契約者,変更後又は変更前の受取人となる人,他の相続人,遺言執行者を読者として想定し,遺言による保険金受取人の変更の要件,通知の方法,相続上の紛争及び税金の扱いを,法令,裁判例及び法務省の立案資料で確認できた範囲で整理したものである。
法令は,令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文を確認した。
遺言執行者が相続財産の目録にこの保険金を記載するかどうかは,姉妹記事の遺言執行者の財産目録で扱う。

第2 保険法の条文
1 保険金受取人の変更の原則(43条・72条)
(1) 保険法43条の条文

保険法43条は,生命保険契約について次のとおり定めている。
1項「保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。」
2項「保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。」
3項「前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない。」

(2) 変更の権限を持つ者

傷害疾病定額保険契約についての保険法72条も,「保険事故」を「給付事由」とするほかは同じ内容である。
変更する権限を持つのは「保険契約者」であり,被保険者や保険金受取人ではない。

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被保険者の死亡後に支払われる入院給付金・手術給付金は誰のものか―相続財産性,約款の請求者条項,指定代理請求人,相続放棄及び相続税(AI作成)

目次第1 結論と本記事の対象第2 入院給付金等の請求権は誰に帰属するか1 給付事由の発生により被保険者に生じる金銭債権2 死亡保険金との違い3 受取人が被保険者以外の者である場合第3 約款の被保険者死亡時の請求者条項1 日本生命の約款2 第一生命の約款と朝日生命の案内3 請求者・支払先の条項は請求権の帰属を変えるか第4 指定代理請求人は請求権の帰属を変えない1 指定代理請求制度の内容2 被保険者の死亡後の扱い第5 遺産分割と保険会社への請求手続1 金銭債権の当然分割と預貯金債権との区別2 保険会社への請求手続と必要書類第6 相続放棄との関係1 相続放棄をした者は給付金を取得しない2 受領と法定単純承認第7 税金の取扱い1 被保険者が生前に受け取る場合2 被保険者の死亡後に支払われる場合第8 請求期限と遺言執行者の財産目録1 消滅時効2 遺言執行者の財産目録への記載第9 出典1 法令2 裁判例3 国税庁の通達4 保険会社の約款・案内5 公益財団法人の資料
第1 結論と本記事の対象

入院・手術の後,給付金を請求しないまま被保険者が死亡した場合,その給付金は,原則として被保険者の相続財産となる。
給付金の請求権は,入院・手術という給付事由が生じた時点で受取人である被保険者に発生しており,死亡保険金のように受取人が自分の固有の権利として取得するものではないからである(民法896条)。

結論を先に整理すると,次のとおりである。
①被保険者が受取人である入院給付金・手術給付金の請求権は,死亡前の入院・手術によって既に発生していれば,被保険者の相続財産となる。
②大手生命保険会社の約款には,被保険者の死亡後は法定相続人の1人が他の法定相続人を代理して請求すると定めるものがあり,請求の窓口を1人にまとめても,請求権が相続人に帰属することは変わらないと考えられる。
③指定代理請求人は,受取人に代わって請求する代理人にすぎず,給付金を自分のものとして取得する者ではない。
④相続放棄をした者は,この給付金を相続によって取得しない。
相続放棄を検討している者が受け取って使えば,法定単純承認(民法921条1号)が問題になり得る。
⑤被保険者が生前に受け取れば所得税は非課税であるが,死亡後に支払われたものは本来の相続財産として相続税の課税対象となり,死亡保険金の非課税限度額は使えない。
⑥請求権は,保険法及び約款により,行使できる時から3年で時効により消滅する。

本記事は,入院給付金等を受け取らないまま家族が亡くなった相続人,遺言執行者及びこれらから相談を受ける弁護士を対象とし,令和8年9月17日時点の法令,裁判例,国税庁の通達及び保険会社が公開している約款に基づいて整理する。
約款は保険会社・商品・契約時期ごとに異なるため,本記事で引用する約款は例であり,実際の請求では,手元の保険証券に対応する約款を確認することになる。

第2 入院給付金等の請求権は誰に帰属するか
1 給付事由の発生により被保険者に生じる金銭債権
(1) 保険法と約款上の位置付け

医療保険のように,人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行う契約は,保険法上「傷害疾病定額保険契約」に当たる(保険法2条9号)。
保険法は,保険給付を受ける者として契約で定めるものを「保険金受取人」と呼んでおり(同条5号),入院給付金・手術給付金の受取人は,約款で被保険者と定められているのが通常である。
例えば,第一生命の「総合医療一時金保険(無解約返還金)(2021)給付約款」6条2項は,「総合入院給付金の受取人を被保険者(第1項の規定が適用される場合には、保険契約者)以外の者に変更することはできません。」と定めている。

(2) 死亡前の入院・手術による請求権は相続される

入院給付金等の請求権は,約款所定の入院・手術という給付事由が生じた時点で,受取人である被保険者に金銭債権として発生する。
その後,請求しないまま被保険者が死亡した場合,既に発生していた請求権は,民法896条により,相続人が「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」対象に含まれる。
高度障害保険金,通院給付金等も,被保険者が受取人とされ,死亡前に支払事由が生じていたのであれば,同じように考えることになる。
国税庁の相続税法基本通達3-7(注)も,死亡を伴わない傷害疾病を保険事故として被保険者に支払われる保険金・給付金が死亡後に支払われた場合,「当該被保険者たる被相続人の本来の相続財産になる」としている。

2 死亡保険金との違い
(1) 受取人固有の権利となる死亡保険金

死亡保険金は,被保険者の死亡によって,契約で指定された受取人が自分の権利として取得する。
最高裁昭和40年2月2日第三小法廷判決(昭和36年(オ)第1028号,民集19巻1号1頁)は,受取人を「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定した養老保険について,特段の事情のない限り,保険金請求権は「右相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱している」とした。
これに対し,入院給付金等は,被保険者本人を受取人として生前に発生した請求権であるから,受取人の固有財産ではなく,被保険者の遺産に属する点で異なる。

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遺言執行者の財産目録には何を載せるか―死亡保険金・入院給付金・死亡退職金・未支給年金と特定財産に関する遺言(AI作成)

目次第1 結論と本記事の対象1 結論2 本記事の対象と基準日第2 遺言執行者の目録作成義務と他の義務との区別1 民法1011条の目録作成・交付義務2 遺言内容の通知義務及び報告義務との違い第3 目録に載せる範囲―相続財産と特定財産に関する遺言1 目録の対象は「相続財産」である2 特定財産に関する遺言では,その財産に限られる3 信託銀行の財産目録と全遺産は一致しないことがある第4 相続財産に当たるもの・当たらないもの1 一覧表2 死亡保険金3 入院給付金・手術給付金4 死亡退職金5 未支給年金と遺族年金6 確定拠出年金(iDeCoを含む)の死亡一時金第5 相続財産に属しないものを「参考」として記載する理由と記載例1 参考欄を設ける理由2 管理処分権が及ぶと誤解させない書き方3 記載例第6 目録の作り方の実務1 基準日と記載事項2 金額未確定の債権と債務の記載3 交付の方法と記録第7 目録が交付されない・内容が不十分な場合の相続人の手段1 報告請求と目録の作成方法の指定2 善管注意義務と解任請求第8 遺言で保険金受取人を変更している場合第9 出典1 法令2 裁判例3 行政機関の通達4 関連記事
第1 結論と本記事の対象
1 結論

遺言執行者が民法1011条1項に基づいて作成・交付する目録の対象は「相続財産」であり,相続人等が保険契約や支給規程に基づいて自己固有の権利として取得するものは,同条の目録に記載すべき財産ではない。
結論を先にまとめると,次のとおりである。
①特定の相続人を受取人とする生命保険の死亡保険金請求権は,受取人の固有の権利であり,相続財産の目録に載せる義務はない。
②被保険者本人が受け取るはずだった入院給付金・手術給付金の請求権は,本人が生前に取得していた権利として相続財産に属し,目録に載せる対象となる。
③死亡退職金,未支給年金,遺族年金及び確定拠出年金(iDeCoを含む)の死亡一時金は,支給規程又は法律が受給者の範囲を定めている限り,相続とは別に受給者が取得するものであり,相続財産の目録に載せる義務はない。
④遺言が相続財産のうち特定の財産に関するものである場合,目録を作成する義務はその財産についてだけ生じる(民法1014条1項)。
⑤相続財産に属しないものでも,相続税申告,特別受益及び遺留分の検討のため,「参考(相続財産に属しないもの)」として区分して記載しておくことは,実務上の工夫として考えられる。

2 本記事の対象と基準日

本記事は,遺言執行者に就いた弁護士,遺言執行者から目録を受け取る相続人及び受遺者を読者として,目録に何を載せ,何を載せないかを条文と最高裁判例に即して説明するものであり,AIを用いて作成した。
法令は令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文により,裁判例は裁判所ウェブサイトで個別ページ及び全文を確認したものに限って用いる。
遺言執行者が指定されている場合に相続人が受ける制約や解任手続の全体像は,遺言執行者が指定されている場合の相続人の注意点で扱っているため,本記事では目録に関係する範囲に絞る。

第2 遺言執行者の目録作成義務と他の義務との区別
1 民法1011条の目録作成・交付義務
(1) 遅滞なく作成して相続人に交付する義務

民法1011条1項は,「遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。」と定めている。
条文は「遅滞なく」とするだけで,何日以内という期限を定めていない。
交付の相手方は条文上「相続人」であるが,包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ため,包括受遺者にも交付しておくことが考えられる。

(2) 相続人の請求による立会い又は公証人による作成

民法1011条2項は,「遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。」と定めている。
遺言執行者が単独で作った目録の正確性に相続人が疑問を持つ場合,相続人は,この規定により,立会いの下での作成又は公証人による作成を求めることができる。
東京地裁平成25年2月27日判決(平成23年(ワ)第23673号)は,公証人に調製させた相続財産目録に記載のなかった特許権の共有持分について,遺言執行者がその後これを相続財産と認識した事案で,当初の目録作成時点での義務違反は否定しつつ,公正証書に新たな目録作成を予定する旨の陳述があったことにも照らして,「本件特許権を記載した相続財産目録を新たに作成する義務があったというべき」とした。
ただし,同判決は,遺言執行者としての一般的な義務違反から直ちに不法行為上の義務違反が導かれるものではないとして,遺言執行者に対する損害賠償請求を棄却している。

2 遺言内容の通知義務及び報告義務との違い

目録の交付は,遺言内容の通知や事務処理状況の報告とは根拠条文も内容も異なる。

義務根拠内容時期遺言内容の通知民法1007条2項遺言の内容を相続人に知らせる任務開始後,遅滞なく相続財産の目録の作成・交付民法1011条相続財産の目録を作成して相続人に交付する遅滞なく事務処理状況の報告民法1012条3項・645条請求があれば事務処理の状況を報告し,任務終了後は経過及び結果を報告する請求時及び任務終了後

民法1012条3項は,受任者の善管注意義務(同法644条),報告義務(同法645条),受取物の引渡し等(同法646条),金銭の消費についての責任(同法647条)及び費用償還請求等(同法650条)の規定を遺言執行者に準用している。
目録は執行開始時点の財産の全体を示す書面であるのに対し,報告は執行の途中経過や結果を示すものであるから,目録を交付した後も,払戻しや名義変更の進み具合は報告として別に伝えることになる。

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遺留分の計算で葬儀費用を差し引けるか-遺言・合意・相続税との違い(AI作成)

目次第1 葬儀費用を遺留分の計算から差し引けるか1 通常の葬儀費用は被相続人の債務ではない2 死亡後の預金残高から計算しない第2 遺留分額と遺留分侵害額の計算1 基礎財産の計算2 葬儀費用200万円を差し引いた場合の差額3 遺留分侵害額の計算第3 合意,生前契約又は遺言がある場合1 相続開始後の合意2 被相続人の生前契約3 遺産から葬儀費用を支弁する遺言4 遺言執行費用との区別第4 葬儀費用の負担者と遺留分計算の違い1 費用の最終負担は別の法律問題である2 確認できた費用負担に関する裁判例第5 相続税の葬式費用控除との違い1 相続税法は債務と葬式費用を分けている2 税務上の控除対象となる費用第6 紛争になった場合に確認する資料と期限1 最初に確認する資料2 遺留分侵害額請求の期間制限3 旧法の裁判例を参照する場合第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説4 職能団体の会員による解説及びその他の文献5 関連記事
第1 葬儀費用を遺留分の計算から差し引けるか
1 通常の葬儀費用は被相続人の債務ではない

本記事は,令和8年9月15日現在の日本法に基づき,死亡後に遺族が支出した葬儀費用を遺留分の計算へ反映できるかを扱うものである。
通常の葬儀費用については,被相続人が死亡時に負担していた債務として,遺留分の基礎財産から当然に控除することはできないと考えられる。

民法1043条1項は,相続開始時の財産に一定の贈与を加え,債務の全額を控除して遺留分の基礎財産を算定する仕組みを定めている。
相続は死亡によって開始し,相続人は被相続人の権利義務を承継するため,ここで確認すべき債務は,被相続人が死亡時に負っていた債務である(民法882条,896条及び1043条)。

遺族が死亡後に葬儀社と契約して負担した費用は,この意味での被相続人の債務とは区別される。
ただし,生前契約,関係者の合意又は遺言による支弁の指定がある場合には,後記第3のとおり別の検討が必要となる。

2 死亡後の預金残高から計算しない

死亡時に4000万円の預金があった場合,その後に葬儀費用200万円を払い出して残高が3800万円になっても,死亡時の財産額が当然に3800万円へ変わるわけではない。
遺留分の基礎財産は相続開始時を基準にするため,死亡後の口座残高だけから計算することはできない。

預金からの出金が認められるか,葬儀費用を最終的に誰が負担するか,その費用を当事者間で精算できるかは,遺留分の基礎財産とは分けて判断する問題である。
被相続人の債務一般の計算と主張立証については,遺留分侵害額請求の基礎財産から控除される「被相続人の債務」の効果的な主張立証方法(AI作成)で説明している。

第2 遺留分額と遺留分侵害額の計算
1 基礎財産の計算

遺留分の基礎財産は,「相続開始時の財産+算入対象となる贈与-被相続人の債務」によって求める(民法1043条1項)。
贈与の算入には期間等の制限があるため,死亡時の積極財産だけを確認して計算が完了するわけではない(民法1044条)。

基礎財産に総体的遺留分率と遺留分権利者の法定相続分を乗じると,その者の遺留分額が求められる(民法1042条)。
直系尊属だけが相続人である場合の総体的遺留分率は3分の1であり,それ以外の場合は2分の1である。

2 葬儀費用200万円を差し引いた場合の差額

死亡時の財産が4000万円で,被相続人の債務及び算入対象となる贈与がなく,相続人が子2人だけであるとする。
一方の子が遺言によって全財産を取得し,他方の子に遺贈,贈与その他の受益がなく,葬儀費用の控除を認める特別の事情もない場合,財産を取得しない子の遺留分割合は4分の1である。

葬儀費用を差し引かない計算は4000万円×4分の1=1000万円であり,200万円を差し引く計算は3800万円×4分の1=950万円である。
この設例における遺留分額の差は50万円であり,葬儀費用200万円がそのまま遺留分の請求額から控除されるわけではない。

3 遺留分侵害額の計算

実際の遺留分侵害額は,遺留分額から,請求する者が受けた遺贈又は一定の贈与及び遺産分割で取得すべき遺産の価額を控除し,その者が承継する被相続人の債務を加算して求める(民法1046条2項)。
基礎財産を求める段階の債務控除と,個別の侵害額を求める段階の債務加算を分ける必要がある。

死亡後の葬儀費用を支払った事実だけでは,その費用が民法1046条2項3号の加算対象になるわけではない。
費用負担に関する別の請求権が成立する場合も,遺留分の法定計算へ組み込むのか,最終的な支払額を別途精算するのかを区別することになる。

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証券口座の残高増加をどう検証するか-入出金・運用損益・為替・税を分ける財産分与・相続実務(AI作成)

目次第1 証券口座の残高増加について最初に確認すること1 期首残高と期末残高の差額は運用益とは限らない2 残高増加から直ちに推認できない事項第2 残高増加を構成要素に分ける1 基本となる考え方2 収益と資金移動を区別する3 総資産と純資産を区別する第3 最初に収集する資料1 基準日の残高資料2 取引及び入出金を示す資料3 口座外の資料第4 取引を復元する手順1 対象範囲と基準を固定する2 キャッシュフロー台帳を作る3 取引の連続性を確認する第5 収益率を使う場合の注意点1 入出金がなければ年率換算できる2 時間加重収益率3 金額加重収益率第6 財産分与における使い方1 基準時残高と評価時を区別する2 特有財産の原資を追跡する第7 相続及び使途不明金調査における使い方1 死亡日前後の取引を分ける2 説明できない差額を直ちに責任額としない第8 実務チェックリスト1 資料取得時2 計算及び評価時第9 出典1 運用成果の測定2 裁判所及び税務資料
第1 証券口座の残高増加について最初に確認すること
1 期首残高と期末残高の差額は運用益とは限らない

証券口座の残高が短期間に大きく増えていても,その増加額の全部が値上がり益又は運用成果であるとは限らない。
給与等からの追加入金,他の証券口座からの移管,配当等の再投資,借入金による買付け及び為替変動が残高を増加させる一方,出金,手数料及び税金は残高を減少させる。

したがって,財産分与,相続,使途不明金又は資産形成の経過を検討するときは,期首残高と期末残高だけでなく,その間の外部入出金及び取引を日付ごとに復元する必要がある。

2 残高増加から直ちに推認できない事項

現在残高だけから,①本人が高い運用能力を有していたこと,②夫婦共同財産から拠出された金額,③婚前財産又は相続財産が維持されている範囲,④第三者による使込み又は資産隠匿,⑤税引後の実現利益を確定することはできない。

口座残高は調査の出発点であり,法的評価又は責任の結論ではない。
残高の増減と,入出金の権限,資金の出所,取引時の意思能力及び対価の帰属は,それぞれ別に確認する必要がある。

第2 残高増加を構成要素に分ける
1 基本となる考え方

検証の基本は,期末純資産額を,①期首純資産額,②外部からの純入金額,③運用損益に分けることである。
概念上は,「期末純資産額-期首純資産額-外部純入金額」が,その期間の運用損益に対応する。

もっとも,この単純式を正確に使うためには,評価日時,外貨換算レート,未収配当,未払手数料,信用取引その他の負債及び口座間移管を同じ基準でそろえなければならない。
口座間の振替を外部入金と誤認すると,運用損益も財産の出所も二重に計上される。

2 収益と資金移動を区別する

運用損益には,売却済みの実現損益だけでなく,保有中の株式・投資信託等の評価損益,受領した配当・分配金及び為替差損益が含まれ得る。
どの範囲を収益に含めたかを明示しなければ,異なる資料の数字を比較することはできない。

外部入出金には,預金口座からの入金,預金口座への出金,現物株式等の入出庫及び他社口座との移管を含める。
入出庫された有価証券は,移管日の時価と取得価額のいずれを使ったかを区別し,資産総額の復元と税務上の取得費の検討を混同しないようにする。

財産調査のための円換算評価額と,所得税の所得計算で認識する損益は別である。
外貨を円へ換えていないことだけで,課税上の損益がすべて未実現であるとは判断できない。反対に,基準日の円換算残高が増えたことだけで,その増加額の全部を課税所得とすることもできない。

国税庁の質疑応答事例は,米ドル建預金の元本を同じ米ドルのまま別の銀行へ移す設例について,外貨の保有状態に実質的な変化がなく,その移動による為替差損益を認識しないとしている。
一方,別通貨への交換又は外貨を対価とする資産購入は,同一通貨の預金元本の移動と同じ扱いにせず,外貨の取得経過と取引内容を個別に確認する必要がある。預金利息の受領も元本移動とは区別する。

外国株式の売却に関する国税庁の質疑応答事例では,株式の保有期間中の為替相場変動による損益は円換算した株式譲渡損益に含まれ,別途,雑所得として計上する必要はないとされている。
株式購入に使用した外貨の購入前の値上がりと,株式購入後の保有期間中の為替変動は,発生した期間と対象資産が違う。株式譲渡損益に含めた同じ為替変動を,重ねて雑所得へ計上しない。

3 総資産と純資産を区別する

信用取引,証券担保ローンその他の借入れがある場合,保有有価証券の時価合計である総資産と,負債を差し引いた純資産は一致しない。
運用規模を示す総資産の増加を,そのまま本人に帰属する財産の増加と扱ってはならない。

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親が負担した建築資金は金銭贈与か建物贈与か―特別受益の認定・評価・証拠(AI作成)

目次第1 結論及び本記事の対象第2 贈与対象の認定を評価より先に行う1 特別受益に当たるための入口2 金銭又は代金債務の弁済による利益の贈与となる場合3 建物又は建物持分の贈与となる場合4 債務免除,持分及び使用利益を混同しない5 新築と増築・改築・リフォームを分ける第3 東京高裁令和6年12月18日決定1 判例秘書による一次資料確認の状況2 不動産そのものではなく購入資金の贈与としたこと3 資金の流れを認定した証拠4 消費者物価指数による換算第4 金銭贈与の評価1 相続開始時の貨幣価値への換算2 建物の老朽化を金銭贈与へ持ち込まない第5 建物贈与の評価1 相続開始時の客観的価値2 親が建築後に建物を贈与した裁判例3 民法904条と受益者による状態変更4 相続税評価額と民事上の評価額は目的が違う第6 認定及び評価に用いる証拠1 契約及び所有帰属に関する資料2 資金の流れに関する資料3 贈与又は貸付けの意思に関する資料第7 遺産分割及び遺留分との関係1 遺産分割における具体的相続分2 遺留分算定における贈与第8 受任時の確認手順1 認定表を先に作成する2 主張書面と証拠説明書を対応させる第9 まとめ第10 出典・参考資料1 法令及び公的資料2 裁判例3 関連記事
第1 結論及び本記事の対象

親が子の住宅の建築代金又は購入代金を負担した場合,特別受益の額を計算する前に,何が誰から誰へ贈与されたのかを認定する必要がある。
子が契約当事者となって住宅を取得し,親が代金を援助したのであれば,通常は金銭又は代金債務の弁済による利益が贈与対象となる。
これに対し,親が取得した建物を後に子へ贈与したのであれば,贈与対象は建物である。

両者は評価対象が違うため,贈与時に同額の支出がされていても,相続開始時に持ち戻す特別受益額が異なり得る。
親から施工業者へ直接送金されたという一事だけで,金銭贈与又は建物贈与のいずれかに決まるものではない。

本記事は,民法903条及び904条による遺産分割上の特別受益を中心に,遺留分算定への影響,東京高等裁判所令和6年12月18日決定及び実務で確認すべき証拠を整理する。
個別事件では,給付の法的性質,持戻し免除の意思表示,評価方法及び期間制限を別々に検討する必要がある。

第2 贈与対象の認定を評価より先に行う
1 特別受益に当たるための入口

民法903条1項は,共同相続人の中に,被相続人から遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者がある場合の具体的相続分を定めている。
住宅の取得又は建築のための多額の援助は「生計の資本」と評価されることが多いが,金額,被相続人の資力,援助の目的,通常の扶養の範囲,他の相続人への援助及び返済合意の有無を確認しなければならない。

贈与ではなく貸付けであれば特別受益ではない。
返済期限,利息,返済実績,催告,借用書及び会計・税務処理の有無は,贈与か貸付けかを区別する資料となる。

2 金銭又は代金債務の弁済による利益の贈与となる場合

子が建築請負契約又は売買契約の当事者であり,子が建物又は不動産を取得する一方,親が子へ資金を渡し,又は子に代わって施工業者若しくは売主へ代金を支払った場合は,金銭又は代金債務の弁済による利益が贈与されたと認定されることがある。

この場合,取得した住宅の現在価値ではなく,贈与された金銭等を相続開始時の貨幣価値に換算することが出発点となる。
もっとも,親自身の持分取得に対応する支払,共同住宅の親使用部分に対応する負担又は親に対する反対給付があるときは,支払全額が子への贈与になるとは限らない。

3 建物又は建物持分の贈与となる場合

親が注文者又は買主となって建物を取得し,その後,子へ建物又は建物持分を贈与した場合は,贈与対象は建物又はその持分となる。
この場合,特別受益として評価するのは,原則として贈与時の建築費そのものではなく,相続開始時における贈与対象の客観的な交換価値である。

登記が子名義であることは重要な資料であるが,建物取得の経緯,契約当事者,代金負担,完成時の所有帰属及び引渡しを含む事情を総合して判断する必要がある。
土地と建物の名義又は負担者が異なる場合は,建物だけでなく,敷地利用権,土地持分の贈与又は使用利益も切り分けて検討する。

親が建築計画を主導し,又は建築費の一部を負担したとしても,それだけで親が完成建物を取得したことにはならない。
東京地裁平成29年1月13日判決(平成27年(ワ)第21869号,判例秘書L07232077,裁判所HP未掲載)は,父が当初の建築計画を主導し,一部費用も負担したものの,融資及び建築名義等を子へ切り替えた事案で,建物が当然に父の所有となるものではないとした一方,父が負担した設計料等は別個の特別受益となり得るとした。

したがって,「親が建てた建物」という表現から直ちに建物贈与と分類せず,建築請負契約の注文者,代金債務者,融資の債務者,建築確認上の建築主,引渡しを受けた者,完成時の登記名義人及び各当事者の出捐を区別して,完成時の所有帰属を認定する必要がある。

4 債務免除,持分及び使用利益を混同しない

親がいったん子へ住宅資金を貸し付け,後に返済を免除したのであれば,問題となる給付は当初の貸付金ではなく,免除時の債権又は免除による利益である可能性がある。
また,二世帯住宅では,親子それぞれの建物持分,建築費の負担,土地の使用利益及び親に対する生活支援等が併存し得るため,単純な床面積比又は負担額の差だけで贈与額を決めるべきではない。

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相続人に認知症・精神障害等で判断能力を欠く人がいる場合の遺産分割―協議の無効,代筆の危険,成年後見の申立て及び特別代理人(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論の要旨1 本記事の対象2 結論の要旨第2 判断能力を欠く相続人を含めた遺産分割協議の効力1 遺産分割協議は共同相続人全員でする2 意思能力を欠く者の法律行為は無効である3 認知症の診断があるだけで意思能力がないとは限らない4 家族が代わりに署名押印することはできない第3 遺産分割を進める三つの方法1 後見開始等の申立てをして成年後見人等と協議し,又は調停をする方法2 特別代理人の選任を求める方法3 遺産分割審判を最初から申し立てる方法第4 判断能力の程度による違い1 後見相当の場合2 保佐相当の場合3 補助相当の場合4 任意後見契約がある場合第5 後見開始等の申立ての進め方1 申立てができる親族2 申立てができる親族がいない場合の市町村長申立て3 申立先,鑑定及び本人の陳述聴取4 申立ての取下げの制限と費用5 成年後見人の選任と遺産分割への関与第6 手続中に注意すべき期限と資金1 相続税の申告期限2 預貯金の払戻し3 相続放棄を検討する場合第7 出頭が難しいだけの相続人との違い第8 令和8年成年後見制度改正の影響第9 出典1 法令2 裁判例3 裁判所及び行政機関の公表資料4 文献
第1 本記事の対象と結論の要旨
1 本記事の対象

本記事は,共同相続人の中に,認知症,精神疾患又は知的障害等のため判断能力を欠き,又は欠いている疑いがある人がいる場合に,遺産分割をどのように進めるかを,令和8年9月11日時点の法令,裁判例及び家庭裁判所の公表資料に基づいて整理するものである。
主な対象は,その相続人がまだ家庭裁判所から後見開始等の審判を受けていない場面である。
判断能力の程度や手続の段階によって取るべき方法が異なるため,協議の効力,手続の選び方,判断能力の程度による違い,後見開始等の申立て,手続中の期限及び令和8年成年後見制度改正の影響を順に扱う。

本記事は亡くなった人の遺産分割を扱うものであり,親が生存している間に,その親本人の預金から介護費や入院費を支払う場面とは区別する必要がある。
生存中の預金管理と銀行への相談については,認知症の親の預金は引き出せるか―介護費・入院費と銀行への相談(AI作成)を参照されたい。

2 結論の要旨

結論は次のとおりである。
①判断能力を欠く相続人を加えて遺産分割協議をしても,その相続人の意思表示は無効であり(民法3条の2),協議は有効に成立しないと考えられる。
②家族であっても,成年者を代理して遺産分割協議書に署名押印する権限は当然には生じず,権限なく本人名義で署名押印すれば私文書偽造罪(刑法159条)の成否が問題となり得る。
③遺産分割を進める本筋は,その相続人について後見開始等の申立てをし,家庭裁判所が選任した成年後見人等との間で協議又は調停をする方法である。
④家事事件手続法19条及び民事訴訟法35条の特別代理人は,文言上は未成年者又は成年被後見人を対象とする制度であり,後見開始の審判を受けていない人についても選任し得るとする解釈と高裁の決定はあるものの,遺産分割について家庭裁判所の公表資料が案内しているのは成年後見手続である。
⑤遺産分割審判を最初から申し立てることはできるが,それによって相続人の判断能力の問題が解消されるわけではない。
⑥後見開始等の申立ては,本人の配偶者や四親等内の親族等がすることができ,申立てをする親族がいない場合には市町村長による申立てが問題となる。

第2 判断能力を欠く相続人を含めた遺産分割協議の効力
1 遺産分割協議は共同相続人全員でする

民法907条1項は,共同相続人は,遺言で分割が禁じられた場合等を除き,いつでも,その協議で遺産の全部又は一部の分割をすることができると定めている。
遺産分割協議は共同相続人全員でしなければならず,家庭裁判所の遺産分割調停でも,申立人は他の共同相続人全員を相手方とする必要がある(裁判所職員総合研修所監修『家事事件手続法下における書記官事務の運用に関する実証的研究-家事調停事件及び別表第二審判事件を中心に-』253頁)。
したがって,判断能力を欠く相続人を除外して,残りの相続人だけで遺産分割協議を成立させることはできない。

民法907条2項は,「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。」と定めている。
判断能力を欠く相続人がいて協議ができない場合も家庭裁判所の手続を利用することになるが,後記第3の3のとおり,家庭裁判所の手続でもその相続人の能力の問題は残る。

2 意思能力を欠く者の法律行為は無効である

民法3条の2は,「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」と定めている。
遺産分割協議に加わる各相続人の合意は意思表示であるから,協議の時点で意思能力を欠いていた相続人の意思表示は無効となる。
その結果,共同相続人全員の有効な合意がないことになり,協議は有効に成立しないと考えられる。

このような協議に基づいて相続登記や預貯金の払戻しがされても,後に協議の無効が主張されれば,その前提が争われることになる。
遺産分割協議の効力が争われる場面としては,このほかに錯誤による取消しがあり,遺産分割協議における錯誤取消し―旧法の要素の錯誤,裁判例と実務対応で整理している。

3 認知症の診断があるだけで意思能力がないとは限らない

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大学の学費は特別受益になるか―きょうだいの一人だけが大学へ進学した場合と医学部・歯学部の裁判例(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論の見取図1 対象とする場面2 結論の見取図第2 学費が特別受益になるかを考える枠組み1 「生計の資本としての贈与」と扶養義務の関係2 学説の二つの見解3 家庭裁判所の実務書の説明4 大学進学の現状5 裁判例が示す基準第3 きょうだいの一人だけが大学へ進学した場合1 特別受益とされなかった例2 特別受益に当たることを前提に算定を求めた例3 二つの事案の違い第4 医学部・歯学部など学費が特に多額の場合1 歯学部の学費を特別受益とした例2 医学部・歯学部の学費を特別受益としなかった例3 高卒のきょうだいがいる場合への当てはめ4 学費以外の費用と,誰が負担したか第5 特別受益に当たり得ても持戻しが免除されることがある第6 孫の学費を祖父母が負担した場合第7 金額の算定,期限と確認する資料1 特別受益とされた場合の金額2 期限3 確認する資料第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 文献4 統計
第1 本記事の対象と結論の見取図
1 対象とする場面

本記事は,3人の子のうち2人は高校を卒業して就職し,1人だけが親に大学の学費を出してもらったという場合に,その学費が民法903条1項の特別受益として遺産分割で考慮されるかを,令和8年9月11日時点の法令と裁判例に基づいて整理するものである。
遺留分の計算でも,相続人に対する生計の資本としての贈与は基礎となる財産に算入されるため(民法1044条1項・3項),同じ問題が生じる。
子の人数が3人であること自体は結論に関係せず,判断を分けるのは,学費の額,親の資産や社会的地位,学費が支出された当時の事情,他の子との比較である。

2 結論の見取図

裁判例と実務書を踏まえると,結論は次のように整理できる。
①大学の学費は,親の資産や社会的地位からみてその程度の教育を受けさせるのが普通といえる範囲では親の扶養義務の履行とされ,本記事で確認した裁判例でも特別受益を否定したものが多い。
②きょうだいのうち一人だけが大学へ進学したという事実だけで,直ちに特別受益とされるわけではない。
③私立大学の医学部や歯学部のように学費が特に多額の場合には,特別受益とされた裁判例がある一方,家業の承継や他のきょうだいの学歴を理由に否定した裁判例もある。
④特別受益に当たり得る場合でも,親が持戻しを免除する意思を有していたと認められることがある。

第2 学費が特別受益になるかを考える枠組み
1 「生計の資本としての贈与」と扶養義務の関係

民法903条1項は,共同相続人のうち,被相続人から遺贈を受け,又は「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者」があるときは,その贈与の価額を相続財産に加えて相続分を計算すると定めている。
他方で,直系血族は互いに扶養をする義務を負う(民法877条1項)。
大学の学費は,卒業後の生活の基礎となる点で「生計の資本」に当たり得るが,親が子に教育を受けさせる費用は扶養の一内容でもあるため,どこまでが扶養でどこからが遺産の前渡しかが問題となる。

親が離婚した場合に子の大学の学費を養育費に加算できるかという別の問題は,私立学校・大学・留学の学費は養育費に加算できるか―標準教育費と超過分の計算で扱っている。

2 学説の二つの見解

松川正毅・窪田充見編『新基本法コンメンタール 相続』(日本評論社,2016年)の民法903条の解説(木村敦子執筆)は,教育費用として特別受益性が特に問題となるのは大学以上の高等教育であるとした上で,二つの見解を紹介している(同書71頁)。
一つは,高等教育の費用は生活費の源泉及び生活能力の取得のためのものであるから,常に生計の資本としての贈与に当たるとする見解である。
もう一つは,被相続人の資力や社会的地位,他の兄弟との比較から,具体的に被相続人の扶養義務に含まれるかどうかを判断した上で,通常の学資と考えられるものは特別受益に該当しないとする見解であり,同書はこちらが有力に主張されているとしている。

3 家庭裁判所の実務書の説明

片岡武・管野眞一編著『第4版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』(日本加除出版,2021年。以下「片岡・管野編著」という。)は,高等教育を受けるための学資とは基本的には入学金や授業料等をいい,その間の生活費や下宿代,留学時の渡航費用などを必ずしも含むものではないとしている(同書243頁~244頁)。
同書は,高校卒業後の専門学校,大学,留学等の学資は,私立の医科・薬科等の大学の入学金・授業料のように特別に多額なものでない限り,子の資質・能力等に応じた親の子に対する扶養義務の履行に基づく支出とみることができるとしている(同書244頁)。
また,扶養の範囲内とはいえないものの,相続人全員が大学教育を受け,ほぼ同額の受益を受けている場合には,「特別受益として考慮しない」とするのが相当であるとしている(同書244頁)。

田村洋三・小圷眞史編著『第3版 実務相続関係訴訟』(日本加除出版,2020年。以下「田村・小圷編著」という。)は,高等学校や大学の学費については,高学歴化の時代で多くの者が進学することから,扶養義務の履行にすぎないとして特別受益と見ない考え方が強くなっているようであるが,医学部など高額な費用を要する場合は特別受益と考える扱いが多いようであると説明している(同書27頁)。

4 大学進学の現状

文部科学省が令和7年12月26日に公表した学校基本統計(学校基本調査の結果)の確定値によれば,令和7年度の大学(学部)進学率(過年度卒を含む)は58.6%,大学・短期大学のほか高等専門学校4年次や専門学校を含む高等教育機関への進学率は85.4%である。
ここでいう大学(学部)進学率は,大学(学部)の入学者を3年前の中学校等の卒業者の数で割ったものである。

(続きを読む...)大学の学費は特別受益になるか―きょうだいの一人だけが大学へ進学した場合と医学部・歯学部の裁判例(AI作成)

公正証書遺言と異なる口約束は遺言の効力に影響するか―撤回の方式,生前処分との抵触及び口頭の死因贈与(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論の要旨1 本記事の対象2 結論の要旨3 遺言が効力を生ずるのは死亡の時である第2 口約束で公正証書遺言を撤回し,又は変更することはできない1 撤回は遺言の方式による2 「遺言は変えない」「書き換える」という約束の効力3 公正証書遺言の正本を破棄しても撤回にはならないと解されている4 口頭の遺言は原則として効力がない第3 遺言後の生前処分による撤回擬制1 民法1023条2項の定め2 「抵触」の意味――最高裁昭和56年11月13日判決3 確定的な法律効果が必要――最高裁昭和43年12月24日判決4 遺言者本人の行為であることが必要5 撤回されるのは抵触する部分に限られる第4 口約束の中身ごとの検討1 単なる希望や予定の表明にとどまる場合2 売買の約束をした場合3 生前贈与の約束をした場合4 「自分が死んだら譲る」という約束をした場合第5 口頭の死因贈与と公正証書遺言の優劣1 死因贈与は口頭でも成立するが,承諾が必要である2 遺言の後に口頭で死因贈与をした場合3 遺言の前に口頭で死因贈与をしていた場合4 負担付死因贈与で負担が履行されている場合――最高裁昭和57年4月30日判決5 裁判上の和解でされた死因贈与――最高裁昭和58年1月24日判決6 書面によらない死因贈与の解除第6 口約束の立証1 口頭の死因贈与の成立が否定された例――大阪地裁令和2年3月27日判決2 主張する側と争う側が確認する事項第7 約束を実現したい場合にとるべき方法第8 出典1 法令2 裁判例3 文献
第1 本記事の対象と結論の要旨
1 本記事の対象

本記事は,公正証書遺言を作成した人が,遺言の内容と異なる不動産の処分を口頭で約束していた場合に,その約束が公正証書遺言の効力に影響するかを,令和8年9月11日時点の民法と裁判例に基づいて整理するものである。
典型的には,「自宅は長男に相続させる」との公正証書遺言がある一方で,親が生前に次男へ「この家はお前にやる」と話していたという場面である。

2 結論の要旨

結論は,口約束の法的な中身と,遺言との先後関係によって次のように分かれる。
①口約束が「遺言をやめる」「遺言を書き直す」という意思の表明にとどまる場合は,遺言の方式によっていない以上,公正証書遺言は撤回されない。
②遺言の後に,売買,贈与又は死因贈与の契約が口頭で成立し,それが遺言と両立しない場合は,両立しない部分について遺言は撤回されたものとみなされる(民法1023条2項)。
③もっとも,意思が表明されただけで法律効果が確定的に生じていない場合は,撤回されたものとはみなされない。
④遺言の前に口頭の死因贈与が成立していた場合は,後の遺言が優先するのが原則であるが,負担付死因贈与で受贈者が負担を履行していた場合などは,後の遺言によって覆らないことがある。
⑤口約束は証拠が残りにくく,約束の成立そのものが認められないことがある。

3 遺言が効力を生ずるのは死亡の時である

遺言は,遺言者の死亡の時からその効力を生ずる(民法985条1項)。
そのため,公正証書遺言を作成した後も遺言者は生前に財産を処分することができ,その処分と遺言との関係を定めているのが民法1022条から1026条までの規定である。

第2 口約束で公正証書遺言を撤回し,又は変更することはできない
1 撤回は遺言の方式による

民法1022条は,「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と定めている。
遺言の撤回は遺言そのものではないが,遺言の方式によらなければならず,これは遺言の要式行為性を貫いたものと説明されている(松川正毅・窪田充見編『新基本法コンメンタール 相続』236頁〔久保野恵美子〕)。
したがって,遺言者が家族や受遺者に対して「あの遺言はなかったことにする」と口頭で述べても,それだけで公正証書遺言が撤回されることはない。

撤回に用いる方式は撤回される遺言と同じである必要はなく,公正証書遺言を自筆証書遺言の方式で撤回することもできる(同書236頁,田村洋三・小圷眞史編著『第3版 実務相続関係訴訟』244頁)。
遺言は民法に定める方式に従わなければすることができず(民法960条),普通の方式は自筆証書,公正証書又は秘密証書である(民法967条)。

2 「遺言は変えない」「書き換える」という約束の効力

民法1026条は,「遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。」と定めている。
注釈書は,遺言者が受遺者その他の者と撤回しない旨を約束しても,遺言者はこれに拘束されず,矛盾する遺言をしたり,遺贈の目的物を受遺者以外の者に譲渡したりして遺言を撤回することができると説明している(前掲『新基本法コンメンタール 相続』244頁~245頁)。
反対に,「遺言を書き換えて家はお前に渡す」と約束しただけでは,遺言が書き換えられたことにはならない。

3 公正証書遺言の正本を破棄しても撤回にはならないと解されている

遺言者が故意に遺言書を破棄したときは,破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる(民法1024条)。
しかし,公正証書遺言の原本は公証人が保管しており,遺言者が手元の正本を破棄しただけでは撤回事由にならないと解されている(前掲『新基本法コンメンタール 相続』241頁)。
約束の相手の前で正本を破ってみせたとしても,それだけでは公正証書遺言は撤回されないと考えられる。

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実家に独身のまま無償で住み続けた子は特別受益者になるか―同居・別居・土地利用で分かれる判断(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論の見取図1 対象とする場面2 判断を分ける四つの場面第2 無償居住で問題となる利益1 特別受益は「生計の資本としての贈与」に限られる2 使用借権と賃料相当額は区別される第3 親と同居していた場合は原則として特別受益にならない1 同居の子は占有補助者にとどまる2 使用借主の家族として同居していたにすぎない場合3 親の土地に建てた家で親と同居していた場合第4 特別受益に当たり得る場面1 親の住まいから独立した住戸を無償で使っていた場合2 親の土地に自分の家を建てて住んでいた場合3 家賃だけでなく生活費の援助も受けていた場合第5 特別受益に当たるとしても結論が動く事情1 持戻し免除の意思表示2 介護・扶養との関係と寄与分第6 親の死亡後も住み続ける場合第7 期限と主張立証の進め方1 遺産分割の10年と遺留分の期間2 特別受益を主張する側が確認する資料3 住み続けた側の反論第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 文献
第1 本記事の対象と結論の見取図
1 対象とする場面

本記事は,親(被相続人)名義の実家に,子が家賃を払わずに住み続けていた場合に,その居住の利益が民法903条1項の特別受益として遺産分割や遺留分の計算に反映されるかを,令和8年9月11日時点の法令と裁判例に基づいて整理するものである。
独身のまま実家に残った子が典型的な場面であるが,独身であること自体は法律上の要件ではなく,判断を分けるのは,親と同じ家で暮らしていたのか,親の住まいから独立した部分を独占していたのか,親の財産がどれだけ減ったのかという事情である。
配偶者の居住については配偶者短期居住権等の別の制度があるため,本記事は子の居住を対象とする。

2 判断を分ける四つの場面

裁判例と実務書を踏まえると,場面ごとの結論は次のように整理できる。
①親と同じ家で暮らしていた場合は,原則として特別受益にならない。
②親の住まいから独立した住戸を独占して無償で使い,親がその住戸を賃貸に出せた場合には,特別受益とされた裁判例がある。
③親の土地に自分名義の家を建てて住んでいた場合は,土地の使用借権が特別受益とされることがある。
④家賃を免れただけでなく生活費の援助も受けていた場合は,援助の額によって特別受益となることがある。

第2 無償居住で問題となる利益
1 特別受益は「生計の資本としての贈与」に限られる

民法903条1項は,共同相続人のうち,被相続人から遺贈を受け,又は「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者」がいるときに,その価額を相続財産に加えて相続分を計算すると定めている。
実家に住まわせることは,所有権を移すものではなく,無償で使用させる使用貸借(民法593条)の関係である。
そのため,無償居住が特別受益になるかは,親から子へ何が「贈与」されたといえるのか,すなわち使用借権そのものか,免れた家賃の累計かという形で問題になる。

2 使用借権と賃料相当額は区別される

遺産分割の実務書である片岡武・管野眞一編著『第4版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』(以下「片岡・管野編著」という。)は,特別受益は遺産の前渡しを考慮する制度であるから,相続開始時の遺産の減少分である使用借権相当額が特別受益額であり,遺産の価値と関わらない地代相当額は特別受益額とはならないという見解に実務が立っていると説明している(同書258頁)。
東京地方裁判所平成15年11月17日判決(平成13年(ワ)第16810号,家月57巻4号67頁,判タ1152号241頁)も,土地を無償で使用していた相続人について,使用期間中の使用による利益は使用貸借権の価格に織り込まれているとして,使用貸借権とは別に使用料を加算することを否定した。

したがって,「何十年分の家賃相当額をそのまま足し戻す」という主張は,土地の使用については,上記の実務書と判決のいずれも採っていない。
他方,後記第4の1の東京地方裁判所平成30年12月27日判決は,建物の独立した住戸の無償使用について,使用期間の賃料相当額を基に特別受益の額を算定しており,土地の場合とは算定方法が異なる。
親に固定資産税相当額や相場より安い家賃を払っていた場合に,それが賃料といえるか,使用貸借にとどまるかは,使用貸借と賃貸借の区別-固定資産税程度の支払,相場より安い地代・家賃は賃料かで扱っている。

第3 親と同居していた場合は原則として特別受益にならない
1 同居の子は占有補助者にとどまる

片岡・管野編著は,相続人が被相続人の建物で被相続人と同居していたが,単なる占有補助者であって独立の占有権原があると認められない場合は,使用借権が認められないから特別受益にならないとしている(同書261頁)。

同書は,独立の占有が認められる場合でも,建物については賃料相当額が特別受益になる場合はないとの見解を示している(同書260頁~261頁)。
その理由として,建物の使用貸借は恩恵的要素が強く遺産の前渡しという性格が定型的に薄いこと,建物の使用借権は対抗力がなく明渡しも容易で経済的価値に乏しいこと,賃料相当額を合計すると遺産の総額と比べて過大になることなどを挙げている。

さらに同書は,被相続人の強い希望による同居,被相続人の療養看護や生活支援のための同居,家業従事の都合による同居は,単純に相続人の利益のためとは言い難く,特別受益に該当しないことがあるとしている(同書262頁)。

2 使用借主の家族として同居していたにすぎない場合

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証券口座の相続-共同相続人の一人だけで取引履歴を取得できるか(AI作成)

目次第1 結論1 共同相続人の一人による請求2 情報の取得と証券の処分は別である第2 単独請求を認める法的な考え方1 相続による契約上の地位の承継2 最高裁平成21年1月22日判決3 証券会社への適用は判例の射程を踏まえて判断する4 帳簿の保存義務と開示請求権は同じではない第3 どの資料をどこへ請求するか1 口座開設先を調べる資料2 残高証明書と取引履歴3 請求期間と対象口座を特定する4 残高証明書,取引履歴及び申告資料は役割が異なる第4 証券会社に対する実際の請求手続1 一般に準備する書類2 公表されている証券会社の取扱例3 相続手続依頼書とは分けて請求する4 「遺言執行者でなければ交付できない」と言われた場合第5 請求が制限され得る場面1 保存期間を経過した記録2 生前に口座契約が終了していた場合3 第三者の情報及び権利濫用4 相続資格に争いがある場合第6 個人情報保護法及び守秘義務との関係1 死亡した本人だけの情報2 生存する個人の情報が含まれる場合第7 取得した取引履歴の使い方1 相続財産及び取得費の確認2 資産移動に疑問がある場合3 関連する本ブログの記事第8 請求前の確認事項出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的機関の資料4 証券会社の公開資料5 参考文献
第1 結論
1 共同相続人の一人による請求

被相続人が証券会社に有していた口座については,共同相続人の一人が,被相続人の死亡及び自らが相続人であることを証明し,他の共同相続人全員の同意を得ずに,顧客勘定元帳その他の取引履歴を請求できるのが原則であると考えられる。
もっとも,最高裁判所が直接判断したのは預金口座の取引経過であり,証券会社に対する請求について同じ結論を示した最高裁判例は,令和8年9月10日現在,裁判所ウェブサイトでは確認できない。
そのため,法的な根拠と証券会社の公開手続を併せて確認し,会社ごとの書式,対象期間,手数料及び本人確認方法に従って請求する必要がある。

2 情報の取得と証券の処分は別である

取引履歴又は残高証明書を取得することと,被相続人名義の株式,投資信託,債券又は預り金を移管し,売却し,又は払い出すことは別の手続である。
共同相続された株式等は遺産分割前には準共有となるものが多く,共同相続人の一人が資料を単独で取得できるとしても,その者だけで口座内の資産全部を処分できるわけではない。
相続放棄又は限定承認を検討している場合も,財産調査と処分を区別する必要がある。

第2 単独請求を認める法的な考え方
1 相続による契約上の地位の承継

民法896条は,相続人が相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することを原則とし,同法898条は,相続人が数人あるときは相続財産が共同相続人の共有に属すると定めている。
所有権以外の財産権を数人で有する場合には共有に関する規定が準用され(民法264条),保存行為は各共有者が単独ですることができる(同法252条5項)。
被相続人が証券会社との取引契約に基づいて有していた報告請求の地位も共同相続人に承継され,取引状況を把握するための資料請求は,その地位を保存する行為として単独行使できると考える余地がある。

2 最高裁平成21年1月22日判決

最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決(平成19年(受)第1919号預金取引記録開示請求事件,民集63巻1号228頁)は,預金契約に含まれる委任事務又は準委任事務の処理状況を把握するため,金融機関は預金者に取引経過を開示する義務を負うとした。
同判決は,預金者の死亡後,共同相続人の一人が,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,他の共同相続人全員の同意なしに取引経過開示請求権を単独で行使できると判示した。
また,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,預金者のプライバシー又は金融機関の守秘義務の問題が生ずる余地はないとしつつ,請求の態様,対象又は範囲によっては権利濫用となり得ることも付言した。

3 証券会社への適用は判例の射程を踏まえて判断する

証券取引口座の契約関係にも,売買等の受託,保管,振替及び金銭の受払いに関する事務処理と,その結果を顧客へ報告する関係が含まれる。
そのため,取引状況の把握に必要な資料を相続人の一人が請求する場面では,前記最高裁判決の考え方が証券会社にも及ぶと解することができる。
もっとも,証券取引口座の契約内容及び金融商品の種類は預金契約と同一ではなく,証券会社に対する単独請求を直接認めた最高裁判例も確認できないため,本記事では「原則として単独請求できると考えられる」と整理する。

4 帳簿の保存義務と開示請求権は同じではない

金融商品取引法46条の2は,金融商品取引業者に帳簿書類の作成及び保存を義務付けている。
金融商品取引業等に関する内閣府令157条及び164条は,顧客勘定元帳を帳簿書類の一つとして掲げ,その記載事項と保存期間を定めている。
これらの規定は,証券会社が記録を作成し保存する根拠であるが,それだけで相続人に対する私法上の開示請求権を直接定めたものではないため,契約上の地位の承継及び各社の手続と区別して理解する必要がある。

第3 どの資料をどこへ請求するか
1 口座開設先を調べる資料

被相続人が利用していた証券会社が分からない場合,証券保管振替機構に登録済加入者情報の開示を請求できる。
同機構の公開案内は,法定相続人が複数いる場合でも,そのうち一人から請求できるとしている。
ただし,この開示で分かるのは開示時点の口座開設先であり,銘柄,保有数量,残高及び取引履歴は含まれないため,判明した各証券会社へ改めて照会する必要がある。

2 残高証明書と取引履歴

残高証明書は,死亡日その他の基準日に被相続人口座に存在した資産を把握する資料である。
これに対し,顧客勘定元帳,取引明細又は取引履歴は,売買,入出庫,入出金,配当,分配金,償還及び手数料等の経過を確認する資料であり,残高証明書だけでは分からない取得価額又は資金移動を調べる際に必要となる。
書類名,記載範囲及び交付形式は証券会社によって異なるため,「取引履歴一式」とだけ書かず,必要な資料名と項目を確認するのが適切である。

勧誘時の説明に疑問がある場合は,取引履歴に加え,取引当時の商品説明資料,契約締結前交付書面及び交付・閲覧の記録等についても,保存の有無と取得方法を照会する。
現在ウェブに掲載されている資料と,取引当時に提供された資料は区別し,商品名,契約日及び資料の版を対応させて整理する。

これらの資料について,取引履歴と同じ条件で当然にすべての開示を受けられると扱うことはできない。
資料ごとに保存の有無,任意交付の可否,請求の根拠及び必要な手続を確認する。

交付書面の役割や未受領時に確認する事項は,証券会社の契約締結前交付書面とは―交付義務・読むべき項目・電子交付と目論見書の違いを参照されたい。

3 請求期間と対象口座を特定する

請求書には,被相続人の氏名,生年月日,住所,支店名及び口座番号のほか,対象期間,金融商品の種類並びに必要な取引項目を具体的に記載する。
例えば,死亡日前後の資産移動を調べるのか,被相続人の取得費を調べるのかによって,必要な期間と資料は異なる。
複数の口座区分がある場合は,特定口座,一般口座,NISA口座,外国証券口座,信用取引口座及び預り金のいずれを対象とするかも確認する必要がある。

4 残高証明書,取引履歴及び申告資料は役割が異なる

残高証明書は,原則として基準日時点の預り残高を確認する資料であり,その時点の残高が零であっても,過去の取引や資金移動がなかったことまでは示さない。
受渡未了の取引,別口座,口座外管理の商品又は証明対象外サービスがないかも,証明書の注記と証券会社への照会で確認する。

(続きを読む...)証券口座の相続-共同相続人の一人だけで取引履歴を取得できるか(AI作成)

生命保険契約照会制度-死亡・認知判断能力低下・災害時の利用方法と注意点(AI作成)

目次

第1 生命保険契約照会制度の結論1 制度の役割2 令和8年9月10日現在の重要な運用状況第2 照会できる三つの場面1 死亡した場合2 認知判断能力が低下した場合3 災害で死亡又は行方不明になった場合第3 誰が申請できるか1 死亡照会の申請者2 認知判断能力低下時の申請者3 申請者の人数第4 調査対象となる契約と対象外の契約1 調査対象2 対象外の契約等3 本制度だけでは分からないこと第5 申請前に確認すべき手掛かり1 自宅及び取引履歴を確認する2 推測できる会社へ直接問い合わせる第6 申請方法,必要書類及び費用1 基準日現在の書面申請2 死亡照会の主な必要書類3 認知判断能力低下時の主な必要書類4 回答までの期間5 WEB申請が再開された場合第7 回答を受けた後の対応1 各生命保険会社へ連絡する2 請求権者と相続財産を区別する3 保険金請求権の消滅時効4 税務上の扱いを別に確認する第8 利用実績と利用料改定1 申請件数2 数値から分かることと分からないこと第9 令和8年7月公表のシステム事案第10 実務上のチェックリスト第11 出典1 法令2 生命保険協会の利用規約3 生命保険協会の運用案内・公表資料4 行政機関の解説5 独立行政法人・専門機関等の解説6 関連記事
第1 生命保険契約照会制度の結論
1 制度の役割

生命保険契約照会制度は,家族の死亡又は認知判断能力の低下などにより生命保険契約の手掛かりが失われた場合に,一般社団法人生命保険協会が会員会社へ一括照会し,対象者が契約者又は被保険者となっている契約の有無を回答する制度である。
東日本大震災後に設けられた災害地域生保契約照会制度を平時にも拡張し,令和3年7月1日に開始された。
本稿は令和8年9月10日を調査基準日とし,同日現在の申請要件及び運用状況,令和3年度から令和6年度までの利用実績並びに個別契約で別途確認すべき時効及び税務を扱う。

この制度は,生命保険協会が利用規約に基づいて会員会社へ照会する業界の仕組みである。
契約があるとの回答を受けても,保険金額,受取人,契約の効力又は請求権の有無まで確定するわけではなく,その後に各生命保険会社へ連絡する必要がある。

2 令和8年9月10日現在の重要な運用状況

生命保険協会は,システム上の不備について安全性を確認するため,令和8年7月27日から生命保険契約照会制度のWEB申請を停止している。
令和8年9月10日現在,平時の照会は書面申請を利用することになり,利用料は照会対象者1名につき7000円である。

書面申請は申込みが集中し,通常より時間を要すると案内されている。
WEB申請が再開された場合の利用料は照会対象者1名につき6000円であるが,再開時期を含む最新状況は,生命保険協会の案内で確認する必要がある。

第2 照会できる三つの場面
1 死亡した場合

家族が死亡し,生命保険会社が分からない場合に利用できる。
対象者が契約者又は被保険者である契約の有無が照会され,申請者が死亡保険金等を請求できる可能性があるときは,その旨も回答対象となる。

遺品から保険証券その他の手掛かりが見付かる場合や,契約先と考えられる生命保険会社が分かる場合は,まずその会社へ直接問い合わせるのが原則である。
本制度は契約先が分からない場合の一括照会を補う仕組みであり,既知の契約先への個別照会に代わるものではない。

2 認知判断能力が低下した場合

医師の診断により認知判断能力の低下が認められ,生命保険契約の有無が分からない場合に利用できる。
単に高齢であることや,家族が財産状況を把握したいという事情だけでは足りない。

法定代理人又は任意後見人のほか,一定の条件の下で三親等内の親族や代理人が申請できる。
後見人等がいない者による申請では,生命保険協会の利用規約上,緊急の資金需要があること,より先順位の推定相続人に結果を伝える意思があること,対象者の財産を管理する意思があることなどについて同意が求められる。

3 災害で死亡又は行方不明になった場合

災害救助法が適用された地域で家族等が被災して死亡又は行方不明となり,家屋等の流失又は焼失等により生命保険契約に関する請求が困難となった場合は,災害地域生保契約照会制度を利用できる。
この場合は電話で申し込み,利用料は無料である。

原則として,対象者の配偶者,親,子若しくは兄弟姉妹,又はこれらの法定代理人若しくは任意代理人が申請でき,特段の事情がある場合は生命保険協会がその他の者からの照会を受け付ける。
通常は書類の提出を要せず,生命保険協会は原則として受付日から14営業日以内に書面で回答するとしている。

第3 誰が申請できるか

(続きを読む...)生命保険契約照会制度-死亡・認知判断能力低下・災害時の利用方法と注意点(AI作成)

被相続人の死亡後もスマホを法定相続人が使い続ける方法(AI作成)

目次

第1 使い続けるために分けて考える三つの対象

1 端末・回線・アカウント
2 最初に相続放棄の可能性を確認する

第2 スマホ本体を取得する方法

1 被相続人所有の端末
2 共同相続人がいる場合

第3 携帯電話回線と電話番号を承継する方法

1 携帯電話会社の承継手続
2 主要事業者の手続の違い

第4 相続放棄とスマホの取扱い

1 三か月の熟慮期間
2 継続使用と法定単純承認

第5 端末ロックとデータの処理

1 iPhone

(続きを読む...)被相続人の死亡後もスマホを法定相続人が使い続ける方法(AI作成)

永代供養とは何か-「永代」の意味,費用,合祀,返金及び改葬の注意点(AI作成)

目次

第1 永代供養の意味とこの記事の対象

1 対象,基準日及び結論

2 永代供養は法律上の施設名ではない

第2 「永代」と個別安置・合祀の関係

1 「永代」は永久の個別安置を意味しない

2 直接合祀と一定期間後の合祀

3 合祀後の遺骨は取り戻せるとは限らない

第3 墓じまいから永代供養へ移る手続

1 改葬許可を受ける

2 行政手続と現在の墓地との契約を分ける

3 祭祀承継者との調整

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同居の配偶者が死亡した後1週間に相続人がすること-手続・生活・遺産保全の全チェックリスト(AI作成)

目次

第1 一週間の考え方と優先順位1 本記事の対象2 一週間で優先する六つの仕事3 一週間で結論を出さない方がよい事項第2 当日から死亡診断書等の受領まで1 死亡確認前と死亡確認後を分ける2 病院・施設等で受け取り,確認する物3 本人の意思を直ちに確認する場面(1)臓器・組織提供及び献体(2)葬送,宗教及び連絡の希望4 同居家族の生命と生活を先に守る第3 死亡届,火葬許可及び証明書1 死亡届の7日という法定期限2 届出先と添付書類3 火葬許可と24時間の規律4 提出後に残す記録第4 遺体の搬送,葬儀,連絡及び費用1 搬送と安置を先に決める2 葬儀契約は明細と総額で確認する3 支払と証拠を分けて残す4 訃報と個人情報を管理する第5 遺言,遺産,負債及び証拠の保全1 最初は動かさずに記録する(1)家の中と持出品(2)郵便物と取引の手掛かり2 相続放棄の可能性があれば避ける行為3 遺言書は探すが,封印された物を開けない4 銀行口座と当面の生活費(1)カード,暗証番号及びオンラインバンキングを使わない(2)遺産分割前の預貯金払戻し制度第6 住まい,家族,勤務先及び公的給付1 住まいを失わず,契約を止め過ぎない(1)持家,賃貸住宅及び公営住宅(2)住宅ローン,保険,公共料金及び防犯2 子ども,要介護者及びペット3 勤務先と事業関係4 健康保険,年金,生命保険及び固有の給付第7 スマートフォン,デジタル契約及び郵便物1 端末を初期化せず,電源と状態を保つ2 メール・SNS・クラウド・暗号資産を一斉解約しない3 郵便物は現住所で管理する第8 事情があるときだけ直ちに分岐する事項1 事故,犯罪,医療,労災又は第三者の関与2 個人事業,会社経営又は専門資格3 多額の負債,相続人間の対立又は家に危険物がある場合4 国外,外国籍又は家族関係が複雑な場合第9 一週間の実行チェックリストと後日の期限1 当日から翌日2 2日目から3日目3 4日目から7日目4 一週間後に管理する主な期限第10 出典・参考資料1 法令2 裁判所・法務省の手続案内3 行政機関・制度実施主体の案内4 制度実施団体・事業者の案内
第1 一週間の考え方と優先順位
1 本記事の対象

本記事は,令和8年9月8日現在,日本国内で同居の配偶者が死亡し,生存配偶者が相続人となる通常の場面を対象とする。
死亡直後から7日目までに全員が行う事項と,該当するときだけ行う事項を分け,法定期限,生活上の必要及び証拠・財産の保全を一つの時系列に整理する。

「死亡後1週間以内」の法定期限として最も重要なのは,原則として死亡の事実を知った日から7日以内の死亡届である。
健康保険,年金,相続放棄,税務,相続登記等には別の期限又は個別の手続があるため,一週間ですべてを終える必要はないが,窓口と必要資料を確認し,後日の期限を記録するところまでは進めておくとよい。

2 一週間で優先する六つの仕事

一週間の優先順位は,①死亡確認と死亡診断書又は死体検案書の受領,②死亡届と火葬許可,③遺体の搬送・安置と葬儀,④同居家族の生活維持,⑤遺言・財産・証拠の保全,⑥期限一覧と連絡先の作成,の順で考えると整理しやすい。
一人で抱えず,手続担当,葬儀担当,連絡担当及び記録担当を分け,同じ情報を共有できる一冊のノート又は表を作るのが実用的である。

記録には,日時,相手方,電話番号,担当者名,話した内容,提出物,受領物,支払額,支払者及び次の期限を残す。
死亡診断書等,請求書,領収書,名刺及び画面は,原本の所在を決めた上で写し又は写真も保存する。

3 一週間で結論を出さない方がよい事項

遺産分割,相続放棄の最終判断,不動産・自動車・株式の名義変更,故人の契約の一斉解約及び大量の遺品処分は,通常,一週間以内に完了させる事項ではない。
資産,負債,遺言及び他の相続人を確認しないまま財産を動かすと,後に相続放棄や遺産分割で問題となり得るため,最初の一週間は「処分」よりも「保全と一覧化」を優先する。

第2 当日から死亡診断書等の受領まで
1 死亡確認前と死亡確認後を分ける

反応や呼吸がなく,医師による死亡確認が済んでいない場合は,直ちに119番へ連絡し,通信指令員の指示に従う。
在宅療養中で主治医又は訪問看護の緊急連絡方法が決まっている場合でも,状況が判断できなければ救急へ連絡し,自己判断で遺体を動かさない。

病院,施設又は在宅で医師が死亡を確認した後は,死亡診断書又は死体検案書が作成される。
厚生労働省は,生前に診療していた傷病に関連する死亡と認められる場合に死亡診断書,それ以外の場合に死体検案書を交付するという区別を示しているが,いずれも死亡を医学的・法律的に証明する文書であり,効力に違いはない。

事故,自殺の疑い,死因不明,発見まで時間が経過した場合その他の異状が考えられるときは,医師又は警察の手続が優先する。
現場,衣類,薬,容器,端末,写真,防犯カメラ及び関係者との通信を片付けたり消去したりせず,警察や医師の指示を受ける。

2 病院・施設等で受け取り,確認する物

死亡診断書又は死体検案書は,氏名,生年月日,死亡日時,死亡場所及び作成医師の記載を確認し,死亡届へ提出する前に全面の鮮明な写しを複数確保する。
提出後の原本確保,記載事項証明書及び誤記訂正については,弁護士のための死亡診断書の実務で詳しく説明している。

診察券,預り品,現金,鍵,眼鏡,補聴器,義歯,携帯電話及び充電器等を受け取るときは,受領品をその場で照合する。
入院費,施設利用料,遺体搬送費その他の請求については,請求書と明細を分けて受け取り,誰が何を立て替えたかを記録する。

3 本人の意思を直ちに確認する場面
(1)臓器・組織提供及び献体

臓器・組織提供又は献体に関する意思表示カード,運転免許証,マイナンバーカード,登録証,大学への申込書等がある場合は,直ちに医療機関へ申し出る。
実施できる時間と条件が限られるため,後で検討する事項として先送りせず,本人の意思が不明な場合を含め,医療機関の担当者から説明を受ける。

(2)葬送,宗教及び連絡の希望

エンディングノート,葬儀の生前契約,墓地・納骨堂の契約,菩提寺,宗教上の希望,連絡してほしい人及び連絡を控えてほしい人を確認する。
本人の希望は重要であるが,法的拘束力の有無,費用負担及び家族間の合意は別問題であるため,見つけた資料を保全して関係者と共有する。

4 同居家族の生命と生活を先に守る

乳幼児,未成年者,要介護者,障害者,服薬中の家族及びペットについて,その日の食事,薬,通院,送迎,介護,預け先及び連絡先を確保する。
故人だけが担っていた世話,支払又は連絡を紙に書き出し,少なくとも一週間を乗り切る担当者を決める。

生存配偶者自身も,睡眠不足や強い動揺の中で運転,契約又は多額の支払をしないよう,可能であれば信頼できる人に同席を頼む。
急な胸痛,呼吸困難,自傷のおそれその他の緊急症状があれば,手続よりも救急又は医療機関への相談を優先する。

第3 死亡届,火葬許可及び証明書
1 死亡届の7日という法定期限

戸籍法86条1項により,死亡の届出は,届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内にしなければならない。
同居していた生存配偶者は同居の親族に当たり,戸籍法87条1項の第一順位の届出義務者となるが,同条は,順位にかかわらず届出をすることができるとも定めている。

届出人の資格,提出を他人に託す場合及び例外的な届出人については,死亡届の届出人で詳しく説明している。
葬儀社が書類提出を補助する場合でも,届出人欄に誰がどの資格で記載するかを確認し,控えを残す。

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弁護士が代理人として被相続人の銀行口座の相続手続をする方法(AI作成)

目次第1 結論1 弁護士への委任と預金を処分できる根拠は別である2 標準的な手順第2 受任時に確定する事項1 依頼者の地位と利益相反2 委任状で特定する事項3 遺言,相続放棄及び債務の確認第3 被相続人の銀行口座を探す方法1 個別資料から取引銀行を特定する2 相続時預貯金口座照会を利用する3 死亡通知による取引制限に備える第4 相続関係と提出書類を整える方法1 戸籍と法定相続情報一覧図2 銀行ごとに変わる共通書類3 原本管理第5 残高と取引履歴を確認する方法1 死亡日残高と現在残高を分ける2 共同相続人1人による取引履歴の請求3 取得範囲を目的に合わせる
4 取引履歴・残高証明・払戻請求書・印鑑届を区別する第6 払戻しの法的根拠を選ぶ方法1 選択肢の一覧2 相続人全員による共同請求と遺産分割協議3 遺言執行者による手続4 遺産分割前の単独払戻し第7 銀行へ提出して払戻しを受ける方法1 提出前照会をする2 銀行別提出セットを作る3 払戻金と完了書類を管理する第8 例外的な事案で追加確認する事項1 未成年者,判断能力及び海外居住者2 相続放棄,行方不明者及び相続人不存在3 借入金,貸金庫及び金融商品第9 代理人弁護士の実務チェックリスト第10 出典1 法令2 裁判例3 公的機関及び金融機関の資料
第1 結論

本記事は,2026年9月6日現在の日本法及び公開資料に基づき,国内の個人名義の預貯金について,相続人,受遺者又は遺言執行者等から委任を受けた弁護士が行う口座探索,残高・取引履歴の取得,解約,払戻し及び完了管理を扱う。
証券口座の移管・換価及び相続税の申告計算は対象外とし,各銀行の書式,手数料,証明書の有効期間及び取扱いは,提出時に改めて確認する必要がある。

親が生存している間の介護費・入院費の支払は,本記事で扱う死亡後の口座の相続手続とは別に考える。
親本人の意思確認や代理権,支払の目的を整理して銀行へ相談する場面については,認知症の親の預金は引き出せるか―介護費・入院費と銀行への相談(AI作成)を参照されたい。

1 弁護士への委任と預金を処分できる根拠は別である

弁護士が相続人等の代理人として被相続人名義の銀行口座を調査し,相続手続書類を提出することは可能である。
もっとも,委任状は弁護士が本人に代わって行動できる範囲を示す書面であり,依頼者が預金全額を単独で取得できることを証明する書面ではない。

銀行口座の相続手続では,①弁護士が誰を代理し,何を委任されたかという代理権,②相続人全員の共同請求,遺産分割協議,遺言,遺言執行者の権限,調停調書又は審判書,民法909条の2による単独払戻し等の預金を処分できる根拠,③銀行所定の相続届,本人確認書類,印鑑登録証明書等の受付要件を分けて確認する必要がある。
弁護士が1人の共同相続人から委任を受けただけの場合,その弁護士が相続人全員を代理したことにはならず,原則として預金全額の解約及び払戻しを単独で行うことはできない。

2 標準的な手順

標準的な手順は,①依頼者の地位と委任範囲を確定する,②遺言,相続人,債務及び相続放棄の方針を確認する,③口座を探索する,④各銀行へ死亡の事実を連絡して専用書式と必要書類一覧を取り寄せる,⑤法定相続情報一覧図等を整える,⑥死亡日残高及び必要な取引履歴を取得する,⑦相続人全員の共同請求,遺産分割協議,遺言執行,裁判手続又は遺産分割前の払戻しの中から根拠を選ぶ,⑧銀行ごとに一式を提出する,⑨払戻金,返却原本及び手続完了書類を管理して依頼者へ報告する,という順序である。

各銀行の必要書類及び有効期限は同じではない。
例えば,三菱UFJ銀行は遺言書及び遺産分割協議書の有無等によって必要書類をAからDに分け,三井住友銀行は遺言書も遺産分割協議書もない場合に原則として相続人全員の署名・実印及び印鑑登録証明書を求め,みずほ銀行は代理人による手続について委任状,代理人の実印及び印鑑登録証明書を案内している。
したがって,共通書類だけを先に完成させるのではなく,対象銀行の相続担当部署から当該事案用の案内を取得してから署名,押印及び証明書の取得を進めるのが安全である。

第2 受任時に確定する事項
1 依頼者の地位と利益相反

最初に,依頼者が相続人,受遺者,遺言執行者,相続財産清算人その他のいずれであるかを確定する。
共同相続人の1人からの依頼であるか,相続人全員からの共同依頼であるかによって,取得できる資料及び行える払戻しの範囲が異なるためである。

相続人全員から依頼を受ける場合でも,預金の帰属,生前又は死後の出金,特別受益,寄与分,遺言の有効性又は分割割合に争いがないかを確認する。
対立が現実化したときは,同じ弁護士が複数の相続人を代理し続けられるかを改めて検討する必要がある。

2 委任状で特定する事項

銀行所定の委任状があるときはその書式を用い,委任事項を抽象的な「相続手続一切」にとどめない方がよい。
委任状又は別紙では,必要に応じて,①死亡の届出及び相続手続の開始,②口座の有無,取引店,預貯金の種類及び口座番号の照会,③死亡日その他の基準日の残高証明書及び取引履歴の申請・受領,④相続手続書類の作成・提出・補正,⑤預貯金契約の解約及び払戻請求,⑥払戻金の受領及び振込先口座,⑦原本還付及び完了書類の受領,⑧銀行からの連絡の受領を特定する。

ゆうちょ銀行の相続用委任状の記載例も,書類の提出,完了後の書類等の受領,払戻金の受領,不備返却書類の受領及び電話連絡を別々の委任事項としている。
これは,窓口へ書類を持参する権限と,預金を解約して払戻金を受け取る権限とが同じではないことを示す実務例である。

3 遺言,相続放棄及び債務の確認

預金の全額払戻しを進める前に,公正証書遺言,法務局保管の自筆証書遺言及び家庭内保管の遺言書の有無を確認する。
自筆証書遺言については,法務局保管制度を利用したもの等を除き,家庭裁判所の検認を要する場合がある。

借入金,保証債務,未払税金その他の債務が不明であり,相続放棄又は限定承認を検討する余地があるときは,預金の払戻し及び費消を先行させない。
資産調査と相続放棄の熟慮期間の管理は並行して行い,期限が迫るときは期間伸長の申立ても検討する。

第3 被相続人の銀行口座を探す方法
1 個別資料から取引銀行を特定する

まず,通帳,キャッシュカード,銀行からの郵便物,電子メール,確定申告書,給与・年金の振込記録,公共料金・クレジットカード・家賃等の引落資料及び他口座の振込履歴から,金融機関名と取引店を特定する。
口座番号が分からなくても,金融機関と本人特定情報を示して名寄せ及び残高証明の可否を問い合わせる余地がある。

死亡後に被相続人のキャッシュカード,暗証番号又はインターネットバンキングの認証情報を使用して出金することは避けるべきである。
権限及び取得額をめぐる紛争を生じさせるだけでなく,死亡時残高と死亡後取引の証拠関係を不明確にするため,正式な相続手続又は法定の払戻制度を用いるのが原則である。

なお,相続開始前の準備としては,将来の被相続人となる親本人の了解を得ながら,取引銀行・支店,年金の入金口座,定期的な引落し及び資料の保管場所を確認しておくことが考えられる。
これは将来の調査の手掛かりを残すための準備であり,資料を保管する家族に預金の処分権限を与えるものではない。

2 相続時預貯金口座照会を利用する

令和7年度から開始された相続時預貯金口座照会では,相続人又は包括受遺者が,受付金融機関を通じて預金保険機構へ申込み,被相続人が生前にマイナンバーを付番し,制度の適用対象となる金融機関が管理する預貯金口座について,金融機関名,店舗名,預貯金の種類及び口座番号等の通知を受けることができる。
他の共同相続人の同意は不要であり,代理人が申し込む場合は,相続人本人と代理人の本人確認書類に加え,委任状その他の代理権確認資料を提出する。

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証券口座の相続手続を弁護士が代理する方法-口座調査,必要書類,移管・売却(AI作成)

目次

第1 弁護士代理による証券口座の相続手続の全体像1 本記事の対象2 手続は三種類の書類を分けて考える3 弁護士に委任しても相続人本人の対応が残る場合第2 証券口座と保有資産の調査1 口座の手掛かりがある場合2 証券保管振替機構による口座開設先の調査3 特別口座及び残高証明書第3 誰が取得するかを確定する書類1 共同相続された株式等は当然には人数割りされない2 遺言がない場合又は遺産分割協議による場合3 遺言又は家庭裁判所の手続による場合4 法定相続情報一覧図と原本返却第4 代理権と証券会社所定書類1 委任状に記載する権限2 相続手続依頼書と受入口座3 複数の相続人への配分と端数第5 移管後の売却と完了確認1 売却の時点と指示の記録2 相続税評価額,取得費及び売却代金は別の金額である3 手続完了を示す資料第6 先に別問題を確認すべき場合1 相続放棄又は限定承認を検討している場合2 NISA,外国証券及び非上場株式第7 弁護士へ依頼する際の確認事項1 初回に整理する情報2 手続を止めて法的判断を先に行う場面3 証券口座の相続についてよくある質問出典・参考資料1 法令・裁判例2 制度運営機関及び職能団体の運用資料3 証券会社の相続手続案内4 国税庁の解説
第1 弁護士代理による証券口座の相続手続の全体像

結論として,証券口座の相続は,①口座の所在,②死亡日残高,③取得者,④受入口座,⑤必要書類,⑥商品別の移管又は換金,⑦完了資料の順に確認する。
株式,投資信託,MRF,NISA口座内資産及び預り金では処理が異なるため,口座全体を一括して「名義変更」又は「現金化」と考えないことが重要である。

1 本記事の対象

本記事は,法定相続人又は遺産分割によって証券を取得する相続人から委任を受けた弁護士が,証券会社に対する口座調査,残高証明書の取得,相続手続書類の提出,証券の移管及び売却に関与する場合を対象とする。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,証券会社の必要書類及び受付方法は変更されるため,実際の手続では各社がその時点で交付する案内を確認する必要がある。

弁護士が遺言執行者として有価証券を換価して受遺者等へ分配する場合は,権限の根拠及び利益相反の検討が異なる。
その場合は,遺言執行者が相続株式・有価証券を売却して分配する際の実務上の問題点を参照されたい。

2 手続は三種類の書類を分けて考える

証券口座の相続手続で提出する資料は,①誰が証券を取得するかを示す相続資格・取得根拠の資料,②弁護士が誰を代理し,何を行うかを示す委任状及び本人確認資料,③証券会社が事務処理のために定める相続手続依頼書,移管先口座の届出その他の所定書類に分けて考えると整理しやすい。
戸籍がそろっていても取得者が確定していなければ移管できず,遺産分割協議書があっても代理権の範囲又は所定書類が不足すれば手続は止まる。

一般的な順序は,①口座の所在を調べる,②死亡日現在の残高を確定する,③証券の取得者を確定する,④取得者名義の受入口座を準備する,⑤委任状及び証券会社所定書類を提出する,⑥証券及び預り金の移管を確認する,⑦売却する場合は具体的な売却指示と完了資料を残す,というものである。

3 弁護士に委任しても相続人本人の対応が残る場合

弁護士は,委任状の範囲内で,証券会社への照会,必要書類の取り寄せ,残高証明書の請求,書類の作成補助・提出及び進行管理を行うことができる。
もっとも,証券会社はマネー・ローンダリング対策,税務上の届出及び適合性確認等のため,受入口座の開設時に取得者本人による本人確認,申告又は操作を求めることがある。
したがって,「弁護士へ依頼すれば相続人は一度も証券会社へ対応しなくてよい」とは限らない。

第2 証券口座と保有資産の調査
1 口座の手掛かりがある場合

証券会社名の手掛かりとしては,取引残高報告書,年間取引報告書,配当金計算書,株主総会関係書類,証券会社からの郵便物,登録メールアドレスの受信記録及び預貯金口座の入出金履歴がある。
証券会社が判明しているときは,死亡の連絡だけで終えず,①口座の有無,②死亡日現在の残高証明書の発行方法,③相続関係書類の一覧,④代理人による請求の可否と必要な委任状,⑤原本の返却方法を一度に確認するのが効率的である。

共同相続人の一人だけで顧客勘定元帳その他の取引履歴を請求できるかについては,証券口座の相続-共同相続人の一人だけで取引履歴を取得できるか(AI作成)を参照されたい。

代理人による口座情報の照会については,証券会社ごとに書類が異なる。
例えば,野村證券の相続手続案内は,弁護士等の代理人が口座の有無を確認する場合について,相続人の実印を押した委任状原本及び印鑑登録証明書原本等を案内している。

2 証券保管振替機構による口座開設先の調査

証券会社が分からないときは,証券保管振替機構の登録済加入者情報の開示請求を利用できる場合がある。
同機構の令和8年8月版案内によれば,法定相続人の任意代理人も請求でき,開示時点で振替株式等の口座が開設されている証券会社・信託銀行等の一覧を確認できる。

この開示で分かるのは口座管理機関の名称であり,銘柄,取引履歴及び保有残高ではない。
開示結果を得た後,各証券会社等へ個別に残高を照会する必要がある。

また,外国株式,国債,社債及び同機構の取扱対象でない非上場株式等は,この開示の対象外である。
そのため,開示結果に該当がないことだけで,被相続人に有価証券がなかったと結論付けることはできない。

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公正証書遺言の検索を弁護士が代理する方法-必要書類・委任状・謄本請求(AI作成)

目次第1 代理人弁護士による遺言検索の基本第2 依頼者の資格と必要書類1 誰を委任者とするか2 依頼者の資料と来所代理人の資料を分ける第3 委任状の書き方と職員が来所する場合1 検索と謄本の請求・受領を区別する2 職員が来所するときは権限のつながりを確認する第4 公証役場への申出と検索後の謄本取得1 最寄りの公証役場に連絡する2 判明した保管公証役場へ謄本等を請求する3 現行法の謄本等と正本等を区別する第5 費用と検索結果を受け取った後の注意1 無料の検索と有料の交付・閲覧を分ける2 該当なしと遺言の不存在・無効は同じではない3 相続手続の期限は検索と別に管理する第6 出典1 法令2 日本公証人連合会の制度Q&A3 各公証役場の手続案内・委任事項記載例4 裁判所の手続案内
第1 代理人弁護士による遺言検索の基本

相続人等から委任を受けた弁護士は,公証役場に公正証書遺言の検索を申し出ることができる。
準備する資料は,①遺言者の死亡と依頼者の資格を示す資料,②依頼者からの委任を示す資料,③来所する代理人の本人確認資料に分けると整理しやすい(世田谷公証役場「手続案内」)。

本記事は,令和8年9月4日現在の法令・公表資料に基づき,主として遺言者の死亡後に相続人を代理する場合の手順を説明するものである。
遺言の作成ではなく,既に作成された遺言の検索と,検索後の謄本等の取得を扱う。

日本公証人連合会の遺言検索Q&Aによれば,全国の公証役場で遺言公正証書の有無と保管公証役場を検索でき,最寄りの公証役場に申し出ることができる。
全国検索の対象は昭和64年1月1日以後に作成されたものであり,検索だけで遺言の内容まで分かるわけではない(銀座公証役場「FAQ」遺言検索)。

保存期間や検索制度全体については,公正証書遺言の保存期間及び検索方法を参照されたい。
以下では,代理利用で取り違えやすい委任者・来所者・請求先の違いに重点を置く。

第2 依頼者の資格と必要書類
1 誰を委任者とするか

遺言者の死亡後に検索を申し出ることができるのは,相続人等の利害関係人である。
弁護士が代理する場合も,まず依頼者がどの資格で申し出るのかを確認し,その資格を示す資料と委任状を準備する(日本公証人連合会のQ&A,世田谷公証役場の代理手続案内)。

相続人以外の者から依頼を受ける場合は,その者の利害関係を何によって示すかを,書類の取寄せに着手する前に申出先へ確認するのが適切である。
相続人向けの戸籍の案内を,受遺者等についてもそのまま当てはめることはできない。

遺言者の生存中は,遺言者本人が委任者となる場合に代理検索が認められる。
家族が将来の相続人になるという理由だけで,その家族から依頼を受けて検索する場合とは異なる(銀座公証役場「FAQ」,世田谷公証役場「検索等の委任状と必要書類等」)。

2 依頼者の資料と来所代理人の資料を分ける

次の表は,遺言者の死亡後に相続人を代理して来所する場合について,世田谷公証役場の案内に沿ってまとめた基本例である。
加古川公証役場の必要書類案内も,死亡・相続関係の資料に加え,委任状,依頼者の印鑑登録証明書,来所代理人の身分証明書類及び認印を挙げている。

確認すること準備する資料の基本例注意点遺言者の死亡死亡の記載がある除籍謄本等原本を準備し,別の死亡証明資料を使う場合は扱いを確認する依頼者の相続人資格相続関係が分かる戸籍謄本等必要な戸籍の範囲は相続関係によって異なる依頼者からの委任依頼者が実印を押した委任状遺言者と代理人を特定し,委任する手続を記載する委任者の印鑑依頼者の印鑑登録証明書原本世田谷の案内では来所日に発行後3か月以内来所する代理人の本人確認運転免許証・マイナンバーカード等依頼者ではなく,実際に来所する代理人の資料である来所代理人の押印認印世田谷の案内ではシャチハタでないもの

依頼者の印鑑登録証明書と,代理人の本人確認資料は,それぞれ確認する対象が異なる。
弁護士として来所する場合も,資格証明書による代替の可否を含め,利用する本人確認資料と委任状の取扱いを申出先へ確認しておく。

銀座公証役場のFAQは,相続人であることを示す資料として,戸籍謄本のほか法定相続情報一覧図も挙げている。
一覧図を利用する場合は,どの資料に代えることができるかを確認し,委任状や代理人の本人確認資料まで不要になったと扱わない。

戸籍の読み方と一覧図の作成方法は,法定相続情報一覧図の作成方法―戸籍謄本の読み方と相続人の確認で説明している。
検索のために必要な相続関係を,手元のどの資料で示せるかを確認してから,不足分を取得するとよい。

第3 委任状の書き方と職員が来所する場合
1 検索と謄本の請求・受領を区別する

世田谷公証役場の委任状案内は,検索する遺言者の氏名・ふりがな・生年月日を記載し,代理人の氏名・住所を本人確認書類どおりに記載するよう求めている。
遺言者の表示は戸籍等と照合し,依頼者自身の情報と取り違えないようにする。

銀座公証役場の委任事項記載例では,遺言検索と正本・謄本の交付請求について,別の例が示されている。
検索後の謄本取得まで依頼を受けるのであれば,検索だけでなく,謄本等の交付請求と受領を委任することも明示するのが確実である。

委任状を準備する際は,次の事項を申出先の様式と照合する。
①検索対象となる遺言者の氏名・ふりがな・生年月日
②委任者の氏名・住所と,遺言者との関係
③代理人の氏名・住所
④遺言検索,謄本等の交付請求及び受領のうち,委任する事項
⑤職員を復代理人として利用する場合の選任権限

検索前には証書番号や保管公証役場が分からない場合もある。
検索後の請求にも同じ委任状を使用できるか,判明した証書を特定する追加書類が必要かは,謄本を交付する公証役場へ確認する。

2 職員が来所するときは権限のつながりを確認する

銀座公証役場の遺言検索の委任事項例には,復代理人の選任に関する事項も含まれている。
弁護士が依頼者から委任を受け,事務所職員が復代理人として来所する場合には,依頼者から弁護士への委任と,弁護士から職員への権限付与をどの書類で示すかを確認する(同役場の委任事項記載例)。

職員が行うのが申出・受領なのか,単なる書類の持参なのかを明らかにし,職員の本人確認資料も含めて事前に役場と打ち合わせる。
弁護士を代理人とする委任状だけを職員に持たせれば足りると判断せず,実際に来所する人と,その人が行う手続に合わせて準備することが重要である。

第4 公証役場への申出と検索後の謄本取得
1 最寄りの公証役場に連絡する

まず,最寄りの公証役場へ,相続人の代理人弁護士として遺言検索を希望する旨を伝える。
その際,依頼者の資格,弁護士本人又は職員のどちらが来所するか,持参予定の資料を示し,予約の要否を確認する。

予約については,加古川公証役場は事前予約を求める一方,銀座公証役場のFAQは遺言検索の予約を不要としている。
全国一律の予約方法があるものとして準備せず,申出先の案内に従う。

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借地権付き建物の遺言と底地取得-混同後の効力と見直し(AI作成)

第1 底地取得後の遺言は見直すべきか第2 混同による借地権の消滅と例外1 地上権と賃借権では根拠条文が異なる2 抵当権との関係で消滅しない場合3 共同借地権と共有持分の取得4 未登記の底地取得後に第三者が登記した場合第3 誰がいつ底地を取得したか第4 以前の遺言は取得後の土地にも及ぶか1 建物・借地権の記載と土地所有権の関係2 残余財産条項によって承継先が分かれる問題3 遺贈の規定から土地や金銭への置換えを当然視しない第5 遺言条項の整え方1 取得済みの土地と建物を明記する2 将来の底地取得に備える条項3 旧遺言と残余財産条項を整える4 見直し時に確認する資料と配分第6 相続開始後に土地と建物の取得者が分かれた場合第7 出典1 法令2 裁判例3 実務資料・文献
第1 底地取得後の遺言は見直すべきか

借地権付き建物を特定の相続人に残す遺言をした後,遺言者が底地を買い取った場合には,土地所有権もその相続人に承継させる趣旨が明確か,遺言を見直すことを勧める。
借地権が混同によって消滅することと,買い取った土地が以前の遺言の対象に含まれることは,別の問題である。
底地取得だけから,土地も当然に同じ相続人へ移るとも,建物に関する条項を含めて遺言全体が効力を失うともいえない。

本記事の初稿は令和8年9月4日現在の法令を前提とし,未登記の底地取得後の二重譲渡に関する追記は同年10月2日に判例と現行法を確認した。
以下では,遺言者Tが「建物とその敷地の借地権を長男Aに相続させる」と定めた後の底地取得を扱う。
以下の条項案は,Aが相続開始時に相続人であることを前提とする。

借地権とは,建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権である(借地借家法2条1号)。
底地は,その借地権が設定された土地を地主の所有権の側から呼ぶものである。

第2 混同による借地権の消滅と例外
1 地上権と賃借権では根拠条文が異なる

借地権が地上権である場合,同じ土地の所有権と地上権が同一人に帰属すると,地上権は原則として消滅する(民法179条1項)。
土地所有者が,自分の土地を利用するための地上権を別に持ち続ける必要は通常ないためである。

借地権が賃借権である場合には,債権と債務が同一人に帰属する混同の規定が問題となる(民法520条)。
底地の取得に伴って賃貸人と賃借人の地位が同一人に帰属するかを確認するのであり,賃貸人の地位の移転・留保を定める民法605条の2や契約内容も点検する。
土地の所有権移転だけを見て,賃借権が必ず消滅したと判断することはできない。

2 抵当権との関係で消滅しない場合

最高裁昭和46年10月14日第一小法廷判決(昭和46年(オ)第582号,民集25巻7号933頁)は,土地賃借権が対抗要件を備え,その後に土地へ抵当権が設定されていた場合には,土地所有権と賃借権が同一人に帰属しても,民法179条1項ただし書の準用により賃借権は消滅しないとした。
抵当権があるという事実だけでなく,賃借権の対抗要件と抵当権設定の先後が重要である。

したがって,底地を購入するときは,土地の登記記録だけでなく,借地権の対抗要件をいつ備えたかも確認する。
借地権については,借地権者が土地上に登記された建物を所有することによる対抗力も認められている(借地借家法10条1項)。

3 共同借地権と共有持分の取得

借地借家法15条2項は,借地権が借地権設定者に帰した場合でも,他の者と共にその借地権を有するときは消滅しないと定める。
これは,土地の所有権と借地権の全部が一人に帰属する場合とは異なる。

また,底地の共有持分だけを購入した場合を,底地全部の取得と同じに扱うこともできない。
土地所有権の持分,借地権の持分及び建物の持分をそれぞれ分けて確認することが出発点となる。

4 未登記の底地取得後に第三者が登記した場合

借地人が地主から土地を買い受けても,所有権移転登記を得る前に地主が第三者へ重ねて譲渡し,第三者が登記を得る場合がある。最高裁昭和47年4月20日判決は,この場合,借地人の土地賃借権は混同で消滅したものとして第三者に対抗できなくなるわけではないとした。借地人の未登記所有権を第三者に対抗できるという判断ではなく,賃借権の存続を問題にする判例である。

第三者に土地賃借権を主張するには,その対抗要件も別途確認する。現行法では,借地上の建物に借地人名義の登記があるか等が重要である(借地借家法10条1項)。遺言の見直しでは,底地売買契約,所有権移転登記,建物登記及びその後の二重譲渡の有無を時系列で確認し,遺言者が相続開始時に土地を対抗できる地位にあるかを確かめる。

第3 誰がいつ底地を取得したか

遺言は原則として遺言者の死亡時から効力を生ずるため,底地取得がその前か後かで検討対象が変わる(民法985条)。
次の表は,停止条件等の特別な定めがなく,混同による消滅の例外にも当たらない通常の場面を,上記の条文と相続による承継の時期に沿って整理したものである。

底地を取得する者と時期
確認する問題

Tが生前に取得する
Tの借地権が消滅した後,死亡時に残る土地所有権と建物を,旧遺言がどの範囲で対象にしているか。

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相続した不動産を売却したときの譲渡所得-取得費・特例・遺産分割(AI作成)

目次

第1 相続後の売却で確認すること第2 譲渡所得と税率の基本1 売却代金から控除するもの2 被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐ3 令和8年分の基本税率第3 取得費と譲渡費用を確認する1 取得費が分からない場合の5%の取扱い2 建物の減価と相続登記費用3 売却費用と遺産分割の弁護士費用第4 相続税の取得費加算1 対象者と売却期限2 加算額の計算と上限3 申告における適用手続第5 相続した空き家の特別控除1 対象となる家屋と相続人2 売却期限と耐震改修・取壊し3 1億円の判定と他の特例との関係第6 特例を比較する計算例第7 遺産分割の方法による違い1 換価分割では誰の所得となるか2 代償分割の代償金は取得費となるか3 限定承認は通常の相続と区別する第8 売却時期と申告書類1 契約日と引渡日を分けて確認する2 特例の資料を売却前からそろえる第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例・裁決3 国税庁の通達・解説・質疑応答4 文献
第1 相続後の売却で確認すること

相続した土地や建物を売却するときは,相続税とは別に,売却による譲渡所得の計算が問題となる。
通常の相続では,被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐため,相続時の評価額より安く売れても譲渡益が生じることがあり,相続直後の売却でも長期譲渡所得となることがある(所得税法9条1項17号・33条・60条)。

本記事は,令和8年9月4日現在の法令を基準として,個人が相続した国内の土地・建物を令和8年中に売却する場合を説明する。
通常の相続を中心に,取得費の確認,相続税の取得費加算,空き家の特別控除及び遺産分割との関係を扱い,限定承認については通常の相続と異なる点を示す。
不動産業者の商品としての不動産や法人の取引は対象としない。

第2 譲渡所得と税率の基本
1 売却代金から控除するもの

土地・建物の譲渡所得は,給与所得などと分けて課税される。
基本となる計算は,売却収入から取得費と譲渡費用を差し引き,適用できる特別控除があれば更に控除するというものである(租税特別措置法31条・32条)。

課税譲渡所得金額=譲渡収入金額-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除額

土地・建物の分離課税では,総合課税の譲渡所得における50万円の特別控除や,長期譲渡所得の2分の1を所得に算入する計算をそのまま用いることはできない。
また,譲渡損失が生じても,居住用財産の一定の特例等を除き,給与所得など他の所得との損益通算はできない(同法31条・32条)。

2 被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐ

通常の相続では,被相続人が土地・建物を購入した際の取得費を引き継ぐ。
相続税の評価額や相続時の時価に置き換える制度ではなく,建物については被相続人の所有期間を含めた減価償却の調整も行う(所得税法38条・60条,国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。

長期・短期の区分でも,被相続人の取得時期を引き継ぎ,売却した年の1月1日における所有期間で判断する。
したがって,相続してから5年待つことが一律に必要となるわけではない。
反対に,被相続人が令和8年2月に購入した土地を相続人が売却する場合,令和13年1月1日における所有期間は5年以下であるから,令和13年中の売却は短期譲渡所得となり,令和14年以後の売却で長期譲渡所得となる(租税特別措置法31条2項・32条1項)。

借地権を有していた被相続人が底地を買い取っていた土地では,その土地の取得の日を,底地に相当する部分とその他の部分とで各別に判定する(所得税基本通達33-10)。
そのため,古くからの借地権に相当する部分は長期譲渡所得でも,相続開始の数年前に買い取った底地に相当する部分は短期譲渡所得となることがあり,収入金額と取得費も両部分に区分して計算する(所得税基本通達33-11の3・38-4の3)。

3 令和8年分の基本税率

売却年の1月1日における所有期間
区分
所得税
復興特別所得税
住民税
合計

5年を超える
長期譲渡所得
15%
所得税額の2.1%

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相続開始後の預貯金の払戻しと法定単純承認-相続放棄を検討するときの判断と対応(AI作成)

第1 預貯金を引き出した後でも相続放棄を検討できるか第2 払戻しが相続財産の「処分」になる場合1 債権を取り立てて自分のものとして受け取る行為2 死亡の認識と借金の認識は異なる第3 引き出した現金を使わず保管していた場合第4 葬儀費用と債務の支払をどう分けるか1 葬儀費用・仏壇・墓石に関する大阪高裁決定2 借金返済・生活費・立替金の取戻し第5 預貯金の仮払い制度と相続放棄1 銀行への単独払戻請求とATM出金の違い2 家庭裁判所による預貯金の仮取得第6 既に払戻しをした人が確認する資料と対応1 取引ごとに日付・原資・使途を記録する2 返金した場合と相続放棄後の保管第7 出典1 法令2 裁判例3 行政裁決4 裁判所の手続案内5 文献
第1 預貯金を引き出した後でも相続放棄を検討できるか

相続開始後に預貯金を払い戻した場合,相続放棄ができるかは,払戻しの方法,現金の保管・使途及び放棄との前後関係によって異なる。
相続財産を自分のものとして取得・処分したと評価されれば,民法921条の法定単純承認が問題となる一方,保存行為は除かれており,葬儀費用への支出について処分に当たらないとした裁判例もある。
本記事は,令和8年9月4日現在の法令を基準に,既に払戻しをした人が,相続放棄の可否を検討するための判断材料と初期対応を整理する。

先に確認するのは,承認・放棄を選ぶ熟慮期間である。
民法915条・938条によれば,相続放棄は,原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に,家庭裁判所へ申述して行う。
払戻しの評価や財産調査に時間を要し,期間内に判断できない場合は,期限前に相続の承認又は放棄の期間の伸長を検討する。

第2 払戻しが相続財産の「処分」になる場合
1 債権を取り立てて自分のものとして受け取る行為

民法921条1号は,相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときに,単純承認をしたものとみなす一方,保存行為等を除外している。
単純承認の効果は,引き出した金額だけに責任を負うというものではなく,被相続人の権利義務を無限に承継することである(民法920条)。

最高裁昭和37年6月21日第一小法廷判決(昭和36年(オ)第1029号,集民61号305頁)は,相続開始後,相続放棄前に,被相続人の売掛債権の一部3000円を取り立てて収受領得した行為を,相続財産の一部の処分に当たるとした(判決本文・PDF1頁)。
これは預金口座からの払戻しを直接判断した事件ではないが,相続した債権を回収して自分のものとして受け取る行為が問題となることを示している。
条文が「一部」の処分も対象とすることと併せると,少額であるというだけで当然に法定単純承認から除外されるとはいえない。

2 死亡の認識と借金の認識は異なる

最高裁昭和42年4月27日第一小法廷判決(昭和40年(オ)第1348号,民集21巻3号741頁)は,921条1号の適用には,相続人が自己のために相続が開始したことを知りながら処分したか,少なくとも被相続人が死亡した事実を確実に予想しながらあえて処分したことを要するとした(判決本文・PDF1頁~2頁)。
同判決は,行方不明中に財産を処分した後,死体の発見によってそれ以前の死亡が確認された事案を扱っている。ここでいう予想は,既に死亡した事実の認識についてのものであり,将来の死亡を予想していたというだけの話と混同してはならない。また,借金の存在を知らなければ処分してもよいとした判決でもない。

したがって,死亡と自己の相続開始を知って払戻しをした人について,「後から借金が見つかった」という事情だけで処分の問題が消えるとはいえない。
死亡を知った日,債務を知った日及び払戻日を分けることが,判例の要件に即した検討の出発点となる。

第3 引き出した現金を使わず保管していた場合

国税不服審判所令和2年4月17日裁決には,妻名義の口座に振り込まれた被相続人の報酬50万円について,妻が出金しても相続財産の処分に当たらないとした判断がある(公表裁決書抄4(3)ロ)。
入金は生前の契約に基づくもので,妻が故人名義の預金を解約して自分の口座に移した事案ではなかった。
裁決は,入金自体を妻による処分とはせず,出金後も現金を封筒に入れて保管し,一部でも費消した事実が認められないことを踏まえ,出金のみでは処分に当たらないとした。

この裁決は,国税の納付義務の承継をめぐる個別の行政判断であり,あらゆる預金払戻しについて「使わなければ単純承認にならない」とした最高裁判例ではない。
本記事では,入金の原因,誰の口座から出金したか,自己の財産への取込みや費消があったかを分けて確認するための参考事例と位置付ける。
未使用であると説明する場合も,残金の所在と保管経過を,取引履歴等と対応させて示すことが検討の助けとなる。

第4 葬儀費用と債務の支払をどう分けるか
1 葬儀費用・仏壇・墓石に関する大阪高裁決定

大阪高裁平成14年7月3日決定(平成14年(ラ)第408号,判例秘書の判例番号 L05720298)(裁判所HP未掲載)は,被相続人名義の貯金を解約し,葬儀費用や仏壇・墓石の購入費に充てた遺族の相続放棄申述を扱った。
同決定は,葬儀の社会的な必要性等を理由に,相続財産から葬儀費用を支出する行為は921条1号の処分に当たらないとした(理由第2・2(1)ア)。

仏壇・墓石については,葬儀費用の支払とはやや異なるとしつつ,相続債務を知らないまま購入した経緯,社会的に不相当に高額とは断定できないこと,費用の不足分を遺族が自己負担したこと等を考慮した。
その上で,貯金を解約して購入費の一部に充てた行為が,明白に相続財産の処分に当たるとは断定できないとした(理由第2・2(1)イ)。
したがって,葬儀・仏壇・墓石という使途を一括し,金額や経緯を問わず安全であると一般化することはできない。

また,同決定は,相続放棄の申述を却下した原審判を取り消して受理したものであり,受理によって放棄の有効性を確定するものではないことも明示している(理由第2・2(3))。
葬儀費用に関する領収書等は,申述時だけでなく,債権者が後の訴訟で放棄の効力を争う場合にも説明できるよう保管しておくのがよい。

この決定が判断したのは,相続人による葬儀費用等への支出が民法921条1号の処分に当たるかという点である。
元保佐人が本人の死亡後に支払う権限,病院の入院費を支払うこと又は債務超過の相続財産から特定の債権者だけへ弁済することを認めた裁判例ではない。
元保佐人の側の確認事項は被保佐人の死亡後に元保佐人は入院費・直葬費を支払えるかで扱っている。

2 借金返済・生活費・立替金の取戻し

故人の借金の返済や遺族の生活費への支出まで,前記決定によって一律に保存行為になるわけではない。
払戻金を自分の生活費として費消した場合は,相続財産の処分として問題になるため,支出目的の名称だけでなく,実際の支払先,内容及び原資を確認する。

遺族自身の資金で費用を立て替えた行為と,後から故人の預貯金を引き出して立替額を回収する行為も分けて検討する。
民法921条1号が対象とするのは相続財産の処分であり,後者については遺産からの支出が別に生じるからである。
本記事では,相続放棄を検討する人に対し,借金の返済や立替金の精算を新たに進める前に,債務の根拠と支出の原資を整理することを勧める。

第5 預貯金の仮払い制度と相続放棄
1 銀行への単独払戻請求とATM出金の違い

民法909条の2は,遺産分割前でも,各共同相続人が一定額の預貯金債権を単独で行使できる制度を定めている。
額は,対象となる預貯金の相続開始時の残高に3分の1と法定相続分を乗じて算定し,同一の金融機関に対する行使額の上限は法務省令による150万円である。
150万円は口座ごとに認められる上限ではない。

同条後段は,権利行使した預貯金債権について,その相続人が遺産の一部の分割によって取得したものとみなすと定めている。
この取得の効果もあるため,「仮払い」という呼び名や上限額だけから,相続放棄への影響がないと判断することはできない。

堂薗幹一郎ほか『逐条解説 改正相続法』(商事法務,2024年)85頁~86頁は,同条による権利行使である旨を金融機関に示すことを要し,死亡を秘してATMから預金を引き出す行為は同条による権利行使とはいえないと説明している。
したがって,単に150万円以内を引き出しただけで,法定の払戻制度を利用したことになるわけではない。

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遺言執行者が相続株式・有価証券を売却して分配する際の実務上の問題点(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 遺言の対象と遺言執行者の権限1 遺言全文から換価対象を確定すること2 通知,財産目録及び相続人による妨害の防止第3 証券口座及び保有商品の調査1 口座開設先と保有残高を分けて調べること2 証券会社から取得する資料第4 証券会社における換価経路1 相続人名義口座へ移管してから売却する取扱い2 遺言執行者による換金分割用の取扱い第5 換価時期及び注文方法1 善管注意義務と相場変動2 売却方針を先に記録すること3 信託銀行が遺言執行者である場合第6 相続税評価額,取得費及び譲渡所得1 四つの金額を区別すること2 換価による譲渡所得を誰が申告するか3 NISAと取得費加算の特例第7 商品別の例外と分配・報告1 非上場株式,外国証券及び信用取引2 配当金等と換価代金の範囲3 換価代金の管理と相続人への報告出典・参考資料1 法令2 所管行政機関の解説・質疑応答及び研究資料3 証券関係機関及び金融商品取引業者の手続資料4 文献5 裁判例・判決紹介

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和8年9月4日現在の法令及び公開資料に基づき,被相続人名義の株式,投資信託,債券その他の有価証券を遺言執行者が換価し,その代金を相続人に分配する遺言の執行を扱う。
相続人が現物のまま有価証券を取得する場合や,遺言がなく遺産分割協議によって換価する場合は,直接の対象ではない。

なお,本記事は相続開始後に遺言執行者が有価証券を換価する場面を扱う。
遺言者が生前に目的の有価証券を売却済みである場合は,その銘柄が遺産に存在しないこと,売却代金又は移転先口座に遺言の効力が及ぶかを先に検討し,本記事の換価手続と区別する。
財産変動を含む全体の確認順序は,「遺言書の執行とは―見つけた後の検認,遺言執行者,財産別の手続及び執行できない場合」を参照されたい。

相続人から委任を受けた弁護士が,証券口座の調査,必要書類の収集,受入口座への移管及び売却を代理する一般的な手順は,「証券口座の相続手続を弁護士が代理する方法-口座調査,必要書類,移管・売却(AI作成)」で説明している。

有価証券の換価分配では,遺言執行者に民法上の処分権限があることと,証券会社が被相続人名義の口座で直ちに売却注文を受け付けることとは別問題である。
実際には,①遺言の対象と権限,②口座及び保有商品の全体像,③証券会社所定の換価経路,④売却時期及び注文方法,⑤譲渡所得の帰属及び分配可能額を順に確定する必要がある。

本記事では,換価方針を相場予測で決めるのではなく,遺言の文言,証券会社の手続,銘柄の流動性,税務上の取扱い及び相続人間の公平を確認した上で,判断時点の資料と理由を記録して執行することを基本形とする。
遺言執行者に関する一般的な相続人側の注意点は,「遺言執行者が指定されている場合の相続人の注意点」で説明している。

第2 遺言の対象と遺言執行者の権限

1 遺言全文から換価対象を確定すること

民法1012条1項は,遺言執行者が遺言の内容を実現するため,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると定めている。
一方,遺言が特定の財産に関する場合,遺言執行者の権限はその財産についてのみ及ぶ(同法1014条1項)ため,「有価証券を売却する」という一節だけでなく,遺言全文から対象と目的を確定する必要がある。

なお,民法1014条3項が遺言執行者の払戻し・解約の権限を明文で定めているのは預貯金債権についてだけであり,株式・投資信託の売却・解約の権限は,換価を命じる遺言の内容や遺言で付与された権限によって決まる。
立案担当者の解説も,預貯金以外の金融商品について遺言執行者に解約権限があるかは解釈に委ねられるが,遺言者が明示又は黙示に意思表示をして遺言執行者に解約権限等を付与することは当然に可能であるとしている(堂薗幹一郎・野口宣大編著『一問一答 新しい相続法』商事法務,2019年,118頁~119頁)。

確認する事項は,①すべての有価証券を対象とするのか,特定の証券会社,口座又は銘柄に限るのか,②株式分割,合併,償還,再投資等によって形を変えた資産を含むのか,③外貨預り金,未収配当金,分配金及び株主優待を含むのか,④換価費用,遺言執行者報酬,債務及び税金をどこまで控除するのか,⑤誰にどの割合で分配するのかである。

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信託銀行に遺言執行者を辞退・辞任してもらう方法-相続開始後のメリット・デメリット(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の対象

1 就任前は辞退の申入れ,就任後は家庭裁判所の許可が問題となること
2 調査基準日及び対象範囲
3 銀行サービスとしての「遺言信託」と信託法上の信託を区別すること

第2 辞退,辞任及び解任の違い

1 就職承諾前の「辞退」
2 就職承諾後の「辞任」
3 利害関係人による「解任」
4 遺言執行契約の精算と遺言上の指定は別問題であること

第3 信託銀行に辞退又は辞任してもらうメリット

1 未発生の遺言執行報酬を減らせる可能性があること
2 残る事務に適した担い手を選べること
3 既に大半の手続が終わっている場合に役割を絞れること

第4 信託銀行に辞退又は辞任してもらうデメリットとその限界

1 信託銀行でなければできない遺言執行は限られること
2 手続の遅延と二重費用は就職承諾後に問題となること

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家庭裁判所が選任した遺言執行者の報酬の目安-現行法と旧基準(AI作成)

目次

第1 結論と対象範囲第2 選任の審判と報酬付与の審判は別である1 家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合2 選任時に報酬額まで当然に決まるわけではない第3 報酬の決まり方1 遺言に報酬の定めがある場合2 家庭裁判所が考慮する事情第4 旧日弁連報酬等基準規程による歴史的な参考額1 旧基準の内容2 旧基準を単純計算した場合3 現在の目安として使う場合の限界第5 誰が,いつ報酬を支払うか1 原則として遺言執行後に支払う2 報酬は相続財産の負担となる3 合意により報酬を定めて払戻金から差し引く場合第6 報酬付与の申立てで示すべき資料第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁決3 裁判所及び法務省の資料4 職能団体の旧規程5 その他の文献

第1 結論と対象範囲

民法1018条は,家庭裁判所が選任した遺言執行者の報酬について,全国一律の金額表又は料率を定めていない。
家庭裁判所は,相続財産の状況その他の事情を考慮して報酬を定めるため,令和8年9月4日現在の法令及び確認できた公表資料からは,遺産額だけで個別の審判額を正確に予測することはできない。

実務書には,弁護士である遺言執行者について,平成16年4月に廃止された旧日弁連報酬等基準規程を参考にし,これを若干減額して決定していた時期があるとの記載がある。
旧基準を機械的に当てはめると,執行対象の価額が1000万円なら44万円,5000万円なら104万円,1億円なら154万円となるが,これは現在の家庭裁判所の基準額,最低額又は予測額ではない。

したがって,現在の報酬の見通しを立てる際は,遺産額に一定割合を掛けるだけでは足りない。
財産の種類及び評価額,執行した事務の内容,期間,難易度,紛争対応,支出した費用並びに執行結果を示す資料を準備するのが有用である。

本記事は,家庭裁判所が選任した遺言執行者に対する報酬付与を中心に扱う。
遺言で指定された専門家又は信託銀行の契約上の報酬は,家庭裁判所が定める報酬との違いを説明する範囲に限って取り上げる。

第2 選任の審判と報酬付与の審判は別である

1 家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合

遺言執行者がいないとき,又はいったん就任した遺言執行者が辞任,解任又は死亡等によっていなくなったときは,家庭裁判所は,利害関係人の請求により遺言執行者を選任することができる(民法1010条)。
裁判所ウェブサイトの「遺言執行者の選任」も,申立人は相続人,遺言者の債権者又は受遺者等の利害関係人であり,申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所であると案内している。

2 選任時に報酬額まで当然に決まるわけではない

遺言執行者の選任は,家事事件手続法別表第一の104の項の事件であり,遺言執行者に対する報酬の付与は,同表105の項の別事件である。
したがって,家庭裁判所が遺言執行者を選任したという事実だけから,報酬額が確定したことにはならない。

報酬付与事件の管轄は,相続を開始した地を管轄する家庭裁判所にある(家事事件手続法209条1項)。
相続開始地は,被相続人の住所である(民法883条)ため,通常は遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになる。

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遺言と異なる遺産分割をしたい場合の調停手続-受遺者がいる場合の選び方(AI作成)

目次

第1 結論及び本記事の対象第2 遺産分割調停を利用できる場合1 分割すべき遺産が存在すること2 包括受遺者がいる場合3 包括受遺者と養子縁組無効確認の訴えの利益第3 遺言によって取得者が確定している場合1 特定遺贈及び特定財産承継遺言2 特定遺贈を放棄した場合第4 一般調停を利用する場合1 遺産に関する紛争調整調停2 親族関係調整調停3 調停不成立後の違い第5 遺言執行者及び関係者全員の同意1 遺言執行者がいる場合2 関係者全員が同意する場合第6 申立て前の手続選択1 状況ごとの手続2 最初に集める資料及び停止基準第7 遺言の存在を知らずに協議した場合第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 裁判所及び所管行政機関の解説・質疑応答4 その他の文献
第1 結論及び本記事の対象

受遺者が遺言と異なる分け方を希望しているというだけで,遺産分割調停を利用できるわけではない。
最初に確認すべきことは,遺言によって対象財産の取得者が既に確定しているか,複数の共同相続人又は包括受遺者の間に分割すべき未分割遺産が残っているかである。

未分割遺産が残っている場合は遺産分割調停を利用する。
これに対し,遺言によって取得者が既に確定した財産を関係者全員の合意で組み替える場合は,遺産分割調停ではなく,一般調停である「遺産に関する紛争調整調停」を検討するのが基本となる。
親族間の感情的対立や関係修復が中心である場合には「親族関係調整調停」が候補になるが,遺産の帰属を組み替えること自体が目的であれば,「遺産に関する紛争調整調停」の方が事件の内容に即している。

本記事は,令和8年10月1日現在の民法,家事事件手続法,裁判所の手続案内,裁判例及び国税庁の質疑応答事例を基に,AIを用いて手続選択の分岐を整理したものである。
具体的な申立てでは,遺言の文言,受遺者の種類,遺贈の承認又は放棄,遺言執行者及び登記の状況によって結論が変わる。

第2 遺産分割調停を利用できる場合
1 分割すべき遺産が存在すること

民法907条は,共同相続人が,被相続人による遺産分割の禁止がない限り,協議によって遺産の全部又は一部を分割できることを定めている。
協議が調わない場合又は協議をすることができない場合には,各共同相続人は家庭裁判所に遺産分割を請求できる。

遺産分割の対象になるのは,取得者がまだ確定していない遺産である。
名古屋家庭裁判所の遺産分割調停の案内も,有効な遺言書がある場合は原則として遺言書の内容が優先され,遺言で遺産全部の取得者が指定されている場合には,一般に遺産分割の余地がないと説明している。
ただし,遺言の対象となっていない残余財産があれば,その部分は遺産分割の対象になり得る。

2 包括受遺者がいる場合

民法990条は,包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有することを定めている。
複数の共同相続人又は包括受遺者の間に未分割遺産が存在する場合,包括受遺者も遺産分割手続の当事者となる。

裁判所の手続案内は,遺産分割調停の申立人として共同相続人及び包括受遺者を挙げ,すべての共同相続人及び包括受遺者を相手方又は申立人として手続に参加させる必要があるとしている。
一部の共同相続人又は包括受遺者を除外した合意では,遺産全体の分割を確定できない。

包括受遺者がいることだけで,当然に遺産分割調停を選択できるわけではない。
例えば,遺産全部が1人の包括受遺者に帰属し,包括遺贈が有効なままである場合には,複数人の間で分割すべき遺産が存在しない可能性がある。

3 包括受遺者と養子縁組無効確認の訴えの利益

最高裁平成31年3月5日第三小法廷判決(平成30年(受)第1197号)は,養親の相続財産全部の包括受遺者であることから直ちに養子縁組無効確認の訴えの利益が生じるとはいえないと判断した。包括受遺者が養子から遺留分請求を受け得るとしても,養子縁組の無効によって影響を受けるのは財産上の権利義務にすぎず,自己の身分関係上の地位に直接影響を受けるものではないからである。

民法990条により包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有することと,身分訴訟の訴えの利益を有することは同じではない。他方,包括受遺者が別に法定相続人たる地位その他の身分上の地位を有し,縁組の無効がその地位へ直接影響する場合まで,一律に訴えの利益を否定した判決ではない。

そのため,相続・遺留分等の財産上の紛争と,身分関係の対世的確定を求める訴えを分け,求める最終結果に対応する手続を選択する必要がある。訴えの利益の判断順序,戸籍・遺言等の確認資料及び判例秘書の確認状況は,養子縁組無効確認の訴えの利益―包括受遺者・相続人と最高裁平成31年3月5日判決で整理している。

第3 遺言によって取得者が確定している場合
1 特定遺贈及び特定財産承継遺言

民法964条及び985条によれば,遺言者は遺言によって財産の全部又は一部を遺贈でき,遺言は原則として遺言者の死亡時に効力を生じる。

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相続放棄をしても受け取れる権利―保険金・年金・退職金の区別(AI作成)

第1 受け取れる権利と判断の基準
第2 生命保険金

1 受取人固有の死亡保険金
2 入院給付金・返戻金等との違い
3 人身傷害保険の死亡保険金

第3 死亡退職金
第4 未支給年金

1 国民年金・厚生年金
2 旧三共済・農林共済
3 故人口座への入金

第5 遺族年金・死亡一時金・労災給付

1 給付ごとの受給要件
2 死亡一時金と子の年金

第6 埋葬料・葬祭費・香典等
第7 慰謝料・祭祀財産・特定遺贈

1 遺族固有の慰謝料
2 祭祀財産
3 特定遺贈

第8 税金の取扱い
第9 受領前の確認と期限

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遺言書保管事実証明書・遺言書情報証明書の郵送請求―必要書類と手順(AI作成)

第1 どちらの証明書を請求するか

1 2種類の違いと郵送請求の基本

2 請求できる人と代理請求

第2 遺言書保管事実証明書の必要書類

1 基本となる添付書類

2 通知書などがある場合の省略

第3 遺言書情報証明書の必要書類

1 初回の請求と法定相続情報一覧図

2 関係遺言書保管通知と指定者通知の違い

3 数次相続・法人・法定代理人の追加書類

第4 請求書の作成から発送まで

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亡くなった家族の入通院先を調べる方法―遺族のレセプト開示とカルテの取得(AI作成)

第1 受診先が分からないときの調査順序

第2 当時加入していた医療保険を特定する

第3 遺族としてレセプトの開示を依頼する

1 請求できる遺族と必要書類

2 対象の指定,費用及び所要期間

第4 保存期間の「5年」をどう確認するか

第5 判明した病院・薬局から受診歴をたどる

1 病院・診療所の診療記録

代理人に依頼する場合の委任状
閉院・破産している場合

2 薬局の記録

3 介護の記録

第6 資料が出ない場合の確認と次の手段

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被相続人のスマホに関して,死亡直後に遺族がすべきこと(AI作成)

第1 死亡直後は端末の保管と携帯会社への連絡を並行する
第2 初期化と推測入力を避け,端末の状態を記録する
1 端末と関連資料の保管
2 ロック解除とデータ消去の違い

第3 回線の解約・承継と別契約の請求を分ける
1 携帯会社別の手続の入口
2 SMS認証,サブスク及び端末代金の確認

第4 Apple・Googleのデータ請求は端末解除とは別である
1 Appleの故人アカウント管理連絡先等
2 Googleのデータ請求と閉鎖の順序

第5 相続放棄を考えている場合とアクセス権限の注意点
1 財産調査,処分及び放棄後の保管
2 パスワードが分かっても利用権限は別に確認する

第6 スマホが開かない場合の調査と相談
1 郵便物・通帳・カード明細から調べる
2 専門的な調査へ進む条件

第7 出典
1 法令

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法定相続情報一覧図の作成方法―戸籍謄本の読み方と相続人の確認(AI作成)

第1 戸籍を読み終えてから提出用の一覧図を作る1 法定相続情報一覧図は自分で作成できるか2 無料の公式テンプレートを選び,取得後の用途も確認する3 必要書類は何を準備するか第2 戸籍謄本の種類と読む欄を区別する1 現在戸籍・除籍・改製原戸籍の違い2 本籍・筆頭者・戸籍事項・身分事項の読み分け第3 出生から死亡までの戸籍をつなぐ方法1 新しい戸籍から一つ前の戸籍へ戻る2 三つの戸籍を照合する架空の作業例3 死亡日・届出日・旧字体を照合する第4 戸籍から相続関係を確認する1 配偶者・子・親・兄弟姉妹の順序2 代襲相続と数次相続は死亡の先後で分ける3 兄弟姉妹相続では父母双方の関係を追う4 相続放棄と廃除の記載を混同しない第5 確認した情報を一覧図へ転記する1 書く情報と転記元を対応させる2 続柄は被相続人を基準にし,住所は利用先を考えて選ぶ3 代襲の線と複数枚のつながりを確認する4 前婚の子がいる場合は前配偶者を性別で表示する第6 必要書類をそろえ,不足や読めない部分を解消する1 申出用の書類と広域交付の範囲2 未取得・判読不能・廃棄を区別する第7 申出前の点検と他の相続手続の期限1 戸籍から図へ,図から戸籍へ照合する2 相続放棄と相続登記は別に期限を管理する第8 出典・参考資料1 法令2 法務省・法務局の手続案内と記載例3 裁判所の手続案内4 自治体の戸籍解説・実務資料

第1 戸籍を読み終えてから提出用の一覧図を作る

法定相続情報一覧図は,亡くなった人と,戸籍の記載から確認できる相続人との関係をまとめる書面である。
相続人等が一覧図を作成して戸籍等とともに申し出ると,登記官が記載内容を照合し,認証文を付した写しを交付するのであり,戸籍の束を持参すれば法務局が図を作成してくれる制度ではない(不動産登記規則247条)。

作業は,①被相続人の出生から死亡までの戸籍をつなぐ,②各人の身分事項から相続関係を確認する,③証明書に基づいて一覧図へ転記する,という順序で進める。
本記事は,令和8年9月25日現在の法令・公表資料を前提に,現在の相続法が適用される相続について,戸籍の読解と転記の方法を説明するものである。

本記事では,調査中の親族関係,取得済みの戸籍及び未確認事項を書き込む作業メモを,法務局へ提出する一覧図とは分けることを基本形とする。
法定相続分の計算,遺産分割の合意内容,調査上の疑問及び戸籍から確認できない推測は内部メモに置き,提出用の一覧図には,法定の記載事項と法務局の記載例に沿った情報を記載する。

もっとも,改製,転籍,複数回の婚姻,前婚の子又は代襲相続があり,戸籍束が厚い事案では,各戸籍の種類,本籍・筆頭者,確認期間,前後の戸籍とのつながり及び一覧図の該当箇所を記載した客観的な戸籍チェック表を,任意の審査参考資料として付ける方法がある。
付ける場合は「審査参考資料(法定の添付書面ではない)」と明示し,内部的な法律判断を記載せず,申出書・一覧図の後,戸籍束の直前に置いて,不要とされたときに外せるよう分けておく。

一覧図は,誰が最終的にどの財産を取得するかまで証明するものではなく,遺産分割協議書や相続放棄を証する書類が別途必要となる場合がある。
従来どおり戸籍の束で相続手続を行う方法も利用できるため,提出先が少ない場合には,一覧図を取得する手間も含めて選ぶことになる(法務省民事局「法定相続情報証明制度について」平成30年4月1日改訂,2頁・PDF3頁)。

遺言の有無や内容も,一覧図の記載だけでは確認できない。
公正証書遺言の存在を調べる場合は,「公正証書遺言の保存期間と検索方法」を参照されたい。

公正証書遺言の検索で相続人資格を示す資料と,弁護士への委任に必要な資料の区別は,「公正証書遺言の検索を弁護士が代理する方法」で説明している。

1 法定相続情報一覧図は自分で作成できるか

法定相続情報一覧図は,相続人自身が戸籍等を確認して作成し,保管・交付を申し出ることができる。
作成した図と申出書,必要書類を登記所へ提出し,登記官の確認を受けて,認証文付きの写しを取得するという順序である。

市区町村の窓口で集める戸籍等と,法務局で交付される一覧図の写しは別の書類である。
自分で入力・手書きした図だけでは,法務局の認証文付きの写しにはならない(不動産登記規則247条,法務局の手続案内)。

2 無料の公式テンプレートを選び,取得後の用途も確認する

法務局の様式・記載例ページでは,次のような相続関係に応じたExcel様式と記載例PDF等が公開されている。

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保管証書遺言とは―令和8年民法等改正で新設された第4の遺言方式,成立要件及び施行時期(AI作成)

第1 保管証書遺言の位置付けと本記事の範囲

1 新設された第4の遺言方式であること
2 本記事の基準日及び対象範囲

第2 保管証書遺言の法的根拠及び新設の経緯

1 根拠法令
2 法制審議会における審議経過
3 制度創設の背景となった課題

第3 保管証書遺言の成立要件

1 署名等・口述と保管による効力発生(改正民法968条の2)
2 電磁的記録による作成と署名に代わる措置
3 遺言書保管官の意義
4 口がきけない者の特則(民法968条の3)

第4 作成手続の具体的な流れ

1 保管申請とオンライン利用
2 本人確認とウェブ会議の利用
3 財産目録の口述省略

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自筆証書遺言書保管制度―法務局の保管手続と検認不要のメリット(AI作成)

第1 自筆証書遺言書保管制度の対象及び最大のメリット

1 本記事の対象及び結論
2 制度の目的及び根拠法令
3 検認が不要になる仕組み

第2 遺言者本人による保管の申請

1 保管の申請ができる遺言書保管所
2 保管の申請の要件―本人出頭の原則
3 保管する遺言書の様式
4 保管後に遺言者ができること

第3 遺言者の死亡後に相続人等ができる手続

1 遺言書情報証明書の交付請求
2 遺言書保管事実証明書の交付請求
3 閲覧請求及び非表示措置の申出

第4 手数料
第5 通知制度

1 関係遺言書保管通知
2 指定者通知

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遺言執行者が指定されている場合の相続人の注意点――処分禁止,通知請求権及び解任手続(AI作成)

第1 この記事の対象と全体像
第2 処分禁止の内容と違反行為の効力

1 遺言執行者の就任と任務開始
2 相続人による処分等の禁止
3 違反行為の無効と善意の第三者保護
3の2 特定遺贈後に相続人が第三者へ売却した場合
4 相続人の債権者による権利行使への影響

第3 相続人が遺言執行者から受けられる通知と説明

1 任務開始の通知
2 相続財産目録の作成及び交付
3 通知が来ないときの催告

第4 遺言執行者がいても相続人ができること

1 特定財産承継遺言の対抗要件具備
2 遺産分割前の預貯金の払戻し制度との関係
3 遺留分侵害額請求は遺言執行者に対してする請求ではない

第5 遺言執行者に問題があるときの手続

1 処分制限は放置によって当然には外れない
2 解任請求の要件と管轄

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遺族厚生年金の生計維持要件——収入,別居,内縁及びDV別居の限界事例(AI作成)

第1 この記事が扱う対象
第2 生計維持要件の基本構造

1 根拠条文
2 生計同一要件と収入要件への分解
3 形式的な基準を修正する例外条項

第3 収入が基準額を超えている場合の限界事例

1 収入要件の4類型
2 死亡当時までの収入変動が考慮された事例

第4 同居していない場合の限界事例

1 同居していなくても生計同一と認められる場合
2 高齢の夫婦が別々の施設に入所した事例
3 複数の扶養者がいる場合

第5 DVを理由に別居している場合の限界事例

1 判断枠組みの見直し
2 別居から約13年後に死亡した事案

第6 内縁関係が絡む場合の限界事例

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遺留分侵害額請求の期限と手続―内容証明・交渉・調停・訴訟・必要書類(AI作成)

第1 この記事の対象と最初に行うこと

1 令和元年7月1日以後に開始した相続が対象である

2 請求額の確定より先に期限を確認する

3 内容証明から訴訟までの標準的な順序

第2 1年と10年の期限

1 知った時から1年

2 相続開始から10年

3 発送日ではなく到達時が問題となる

4 権利行使後の金銭債権も別に管理する

第3 内容証明郵便による権利行使

1 内容証明と配達証明の役割は異なる

2 通知書で特定する事項

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遺留分侵害額請求の計算方法と請求を受けた側の対応―期限の許与・分割払い・遅延損害金(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担1 令和元年7月1日以後に開始した相続を扱うこと2 旧法と変わった点と変わらなかった点3 既存記事との役割分担第2 遺留分を算定するための財産1 条文と算式2 相続人に対する贈与が10年に限られたこと3 負担付贈与と不相当な対価第3 遺留分を請求できる人と割合1 遺留分を請求できる人2 総体的遺留分と個別的遺留分3 相続人の組合せごとの遺留分割合4 複数の子・直系尊属、代襲相続及び養子5 相続放棄、相続欠格及び廃除6 相続開始前の遺留分放棄第4 遺留分侵害額1 民法1046条2項の算定式2 寄与分が反映されないこと3 承継債務を加算すること
4 死亡保険金の取扱い第5 遺留分侵害額請求を受けた側の確認事項1 回答前に保存する資料2 請求額を検証する順序3 受遺者・受贈者の負担限度と負担順序4 遺留分権利者承継債務を弁済した場合5 裁判所による期限の許与6 分割払いの合意と事実上の分割払い第6 遅延損害金と期間制限1 権利行使と履行請求を区別する2 遅延損害金の利率3 民法1048条の期間と発生後の金銭債権の時効4 請求を受けた側の回答順序第7 現物で解決する場合の課税1 代物弁済と譲渡所得2 相続税の更正の請求と修正申告第8 新法の解釈を示した裁判例がほとんどないこと第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担

1 令和元年7月1日以後に開始した相続を扱うこと

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の附則第2条は「この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に開始した相続については、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。」と定める。
遺留分に関する改正規定は同法附則第1条ただし書の各号に掲げられておらず、法務省が公表する原則的な施行期日である2019年7月1日から施行された。
したがって、被相続人の死亡日が令和元年7月1日以後であれば、金銭の支払を求める遺留分侵害額請求として処理する。

判定の基準は相続開始日であって、判決の年でも権利行使の年でもない。
逆に、判決が令和6年や令和7年であっても、相続開始が施行日より前であれば旧法の遺留分減殺請求として処理される。

2 旧法と変わった点と変わらなかった点

改正の中心は、権利の性質が物権的効果から金銭債権へ変わったことである。
民法1046条1項は「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者…又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」と定める。
その結果、旧法で最も誤りが生じやすかった減殺率の分母の選択という問題は、計算の手順から消えた。

もっとも、変わらなかった部分も多い。
基礎財産の算式(1043条1項)は旧1029条とほぼ同文であり、負担の順序(1047条1項各号)も旧1033条から1035条までと同じ構造である。
遺留分の放棄に関する1049条は旧1043条と同文で、第2項の「共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない」という規律も維持されている。
実質的に変わったのは、後述する贈与の加算期間、負担の限度の条文化、価額弁償に代わる期限の許与の4点に整理できる。

3 既存記事との役割分担

旧法の計算方法そのものは旧法の遺留分減殺請求の計算方法―基礎財産・侵害額・減殺率と判例タイムズ1345号の計算シートで扱っている。
減殺の順序は旧法の遺留分減殺請求の順序―遺贈・死因贈与・生前贈与と通知の先後、遺産の評価時点は旧法事案の遺留分減殺請求における遺産の評価基準時で扱っている。
この記事は新法の金額の算定過程に絞り、旧法との違いが実務にどう表れるかを併せて示す。
1年・10年の期限,内容証明による通知,交渉,調停,訴訟及び必要書類は,遺留分侵害額請求の期限と手続―内容証明・交渉・調停・訴訟・必要書類で扱っている。

第2 遺留分を算定するための財産

1 条文と算式

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旧法の遺留分減殺請求の計算方法―基礎財産・侵害額・減殺率と判例タイムズ1345号の計算シート(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担1 令和元年7月1日より前に開始した相続を扱うこと2 この記事が扱う範囲3 既存記事との役割分担第2 算定式と計算シート1 最高裁が示した算定式2 東京地方裁判所プラクティス委員会が提案した計算シート3 計算シートが選択した説第3 遺留分算定の基礎となる財産1 式と入力欄の対応2 生前贈与を加算する範囲3 金銭の贈与を相続開始時の貨幣価値に引き直すこと4 相続債務の控除5 相続税の申告書から数値を転記するときの注意第4 個別的遺留分額1 総体的遺留分率に法定相続分を乗じること2 計算シートの模擬事案が前提とする法定相続分第5 遺留分侵害額1 計算シートの算定順序2 未処理遺産を分配する基準第6 減殺額と減殺率1 減殺の対象となるのは遺留分超過受遺額であること2 受遺額からみた減殺率3 判決が用いた分母には幅があること4 持分を分数にするときの乗算第7 計算シートの用語が判決の別紙に現れること1 判決文に現れる計算シート由来の用語2 計算過程を検算する際の着眼点第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献

第1 この記事の対象と既存記事との役割分担

1 令和元年7月1日より前に開始した相続を扱うこと

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の附則第2条は「この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に開始した相続については、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。」と定める。
遺留分に関する改正規定は同法附則第1条ただし書の各号に掲げられておらず、原則的な施行期日によることになる。
法務省は原則的な施行期日を2019年7月1日と公表しており、同法の公布日は平成30年7月13日である。
したがって、被相続人の死亡日が令和元年7月1日より前であれば、金銭債権化された遺留分侵害額請求ではなく、物権的効果を生ずる遺留分減殺請求として処理する。

判定の基準は相続開始日であって、判決の年でも権利行使の年でもない。
現に、判決日が令和6年や令和7年であっても、相続開始日が施行日前であるために旧法が適用される事案は珍しくない。

2 この記事が扱う範囲

この記事は、旧法の遺留分減殺請求において、基礎財産、個別的遺留分額、遺留分侵害額及び減殺率という四つの数値を、どの順序でどのように出すかという算定過程そのものを扱う。
個別の財産をどう評価するか、争点整理をどう進めるかといった問題は扱わない。

3 既存記事との役割分担

減殺の順序、すなわち遺贈・死因贈与・生前贈与のどれから先に減殺するかという問題は、旧法の遺留分減殺請求の順序―遺贈・死因贈与・生前贈与と通知の先後で扱っている。
遺産をいつの時点の価額で評価するかは旧法事案の遺留分減殺請求における遺産の評価基準時で、減殺の結果生じた共有関係をどう解消するかは改正前の遺留分減殺請求によって共有となった不動産の解消方法で扱っている。
相続開始後に遺留分減殺請求がされ,その後に換地処分があった土地の評価対象及び基準時は,相続後に遺留分減殺請求をし,その後に換地処分があった土地の評価基準時(AI作成)で扱っている。
この記事は、それらの前提となる金額の算出に絞る。
令和元年7月1日以後に開始した相続については権利の性質が金銭債権に変わっており、その計算方法は遺留分侵害額請求の計算方法―旧法の減殺請求と何が変わったかで扱っている。

葬儀費用を遺留分の計算から差し引けるかについては,通常の葬儀費用と被相続人の債務との区別,遺言・合意・生前契約及び相続税上の取扱いを,遺留分の計算で葬儀費用を差し引けるか-遺言・合意・相続税との違い(AI作成)で説明している。

第2 算定式と計算シート

1 最高裁が示した算定式

最高裁判所第三小法廷平成8年11月26日判決(民集第50巻10号2747頁)は、遺留分侵害額の算定について、被相続人が相続開始の時に有していた財産全体の価額に贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して基礎財産額を確定し、これに遺留分の割合と法定相続分の割合を乗じ、遺留分権利者が特別受益を得ているときはその価額を控除し、相続によって得た財産があるときはその額を控除して、負担すべき相続債務があるときはその額を加算するという順序を示している。
旧法の計算は、この四段階を順に踏むことに尽きる。

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旧法の遺留分減殺請求の順序―遺贈・死因贈与・生前贈与と通知の先後(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 令和元年7月1日より前に開始した相続を扱うこと
2 負担順序と通知順序は別の問題であること
3 既存記事との役割分担

第2 旧法が定める客観的な減殺順序

1 遺贈を生前贈与より先に減殺すること
2 複数の遺贈は目的価額に応じて減殺すること
3 相続人に対する遺贈の目的価額
4 複数の生前贈与は後の贈与から減殺すること
5 受贈者が共同相続人である場合の減殺額

第3 明文だけでは決まらない三つの論点

1 同時の贈与
2 贈与の先後を判断する基準時
3 死因贈与の位置付け

第4 相手方へ通知する時間的順序

1 客観的減殺額の範囲内では通知順を選べること
2 通知順によって負担を付け替えることはできないこと
3 複数の相手方へ早期に通知する実務上の理由

(続きを読む...)旧法の遺留分減殺請求の順序―遺贈・死因贈与・生前贈与と通知の先後(AI作成)

旧法事案の遺留分減殺請求における遺産の評価基準時

目次

第1 結論
第2 旧法事案となる相続開始日
第3 遺留分算定の基礎財産は相続開始時に評価する

1 旧民法1029条及び1044条
2 大審院大正7年12月25日判決
3 金銭の生前贈与は相続開始時の貨幣価値に換算する
4 評価時点と財産の状態は分けて考える

第4 旧民法1041条の価額弁償は別の時点で評価する

1 相続開始時評価と価額弁償時評価は目的が異なる
2 現実の弁償時と事実審口頭弁論終結時
3 金銭判決には二段階の意思表示が必要である

第5 減殺請求前に目的物が処分された場合

1 最高裁平成10年3月10日判決
2 処分の時期及び内容を先に確定する

第6 遺産分割及び税務上の評価との区別

1 遺産分割の評価基準時とは異なる
2 相続税評価額がそのまま民法上の時価になるとは限らない
3 相続税の申告書に載る財産の範囲は基礎財産と一致しない

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有料老人ホームの前払金―返還額,死亡時の相続及び施設への確認方法(AI作成)

第1 前払金を調べるときの結論と順序

1 最初に確認すべき五つの資料
2 「5年未満なら一部返金」という表示だけでは金額が決まらない

第2 前払金の返還計算

1 入居後3か月以内に終了した場合
2 入居後3か月を超え,想定居住期間内に終了した場合
3 初期償却は常に無効ではない

第3 死亡時の返還金と相続

1 入居者が前払金を負担した場合
2 返還金受取人の指定がある場合
3 相続人が複数いる場合

第4 前払金に関する裁判例の到達点

1 受取人指定より実質的な負担者を重視した裁判例
2 非返還部分を有効とした裁判例
3 住替え時の再度の初期償却を無効とした裁判例

第5 施設へ資料と支払状況を確認する方法

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遺言無効確認請求訴訟の確認の利益―生前提訴・特別縁故者・後の遺言・登記後の扱い(AI作成)

第1 遺言無効確認請求が許される理由

第2 確認の利益が問題となる場面

1 遺言者の生前に提訴する場合
2 生前贈与によって原告の取得分がないとの反論
3 特別縁故者となる可能性がある者
4 後の遺言がある場合
5 遺言に基づく登記が既にされた場合

第3 遺産確認の訴えとの違い

第4 提訴前の確認事項

第5 関連記事

第6 出典

遺言無効確認請求訴訟を提起するためには、遺言が無効であるという主張だけでなく、その確認を判決によって求める法律上の利益が必要である。

確認の利益は、原告の現在の権利又は法律上の地位に現実の不安・危険があり、その除去のために当該確認判決が有効かつ適切であるかという観点から判断される。

第1 遺言無効確認請求が許される理由

最高裁昭和47年2月15日判決(昭和43年(オ)第627号)は、遺言無効確認の訴えを、遺言が有効であれば生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求める訴えと理解し、法律上の利益がある場合には適法となる旨を判示した。

したがって、訴状では、単に過去の遺言行為の無効を述べるだけでなく、当該遺言が有効であれば生ずる具体的な法律関係と、それによって原告に生じている不安・危険を示す必要がある。

第2 確認の利益が問題となる場面
1 遺言者の生前に提訴する場合

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遺言無効確認請求訴訟では誰を被告にするか―相続人・受遺者・遺言執行者と必要的共同訴訟(AI作成)

第1 基本的な考え方
第2 相続人及び受遺者
第3 遺言執行者
第4 遺言執行後の登記を争う場合
第5 相続人全員を被告にする必要があるか
第6 被告を決める前の確認事項
第7 関連記事
第8 出典

遺言無効確認請求訴訟では、遺言によって利益を受ける相続人若しくは受遺者又は遺言執行者が被告の候補となる。

もっとも、誰を被告にすべきかは、遺言の内容、執行の進行状況及び遺言無効確認以外に求める請求から逆算して決める必要がある。
第1 基本的な考え方
被告とすべき者は、当該遺言の有効性について原告と対立し、確認判決によって原告の法律上の不安・危険を除去できる者である。

そのため、遺言書に名前がある者を機械的に全員被告とするのではなく、誰が遺言の有効性を主張し、誰に遺言による権利又は権限が帰属しているかを確認する必要がある。
第2 相続人及び受遺者
遺言によって法定相続分を超える財産を取得する相続人又は遺贈を受ける者は、遺言の有効性について直接の利害を有するため、通常、被告の候補となる。

ただし、確認判決だけで紛争が終わらず、既にされた登記の抹消又は金銭の返還を求める必要がある場合は、その給付義務を負う者を相手方とする必要がある。
第3 遺言執行者
民法1012条は、遺言執行者が遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると定めている。

最高裁昭和31年9月18日判決(昭和29年(オ)第875号)は、相続人が遺言執行者を被告として遺言の無効を主張し、相続財産について自己が持分権を有することの確認を求めることができる旨を判示した。

したがって、遺言執行が終わっておらず、遺言執行者の権限と原告の権利が対立する場合、遺言執行者は被告の候補となる。
第4 遺言執行後の登記を争う場合
最高裁昭和51年7月19日判決(昭和51年(オ)第17号)は、遺贈の目的不動産について受遺者名義の所有権移転登記等が既にされた場合、抹消登記手続請求の相手方は遺言執行者ではなく受遺者であるとした。

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遺言無効確認請求訴訟は何年かかるか―審理期間の資料・長期化要因・併合事件(AI作成)

第1 結論
第2 審理期間に関する過去の研究
第3 訴訟が長期化する主な要因

1 遺言能力に関する資料の収集
2 証人尋問及び事実関係の対立
3 当事者が多い事件
4 控訴及び上告受理申立て

第4 併合されることがある請求
第5 期間を見積もる際の確認事項
第6 関連記事
第7 出典

遺言無効確認請求訴訟の審理期間は、遺言書の種類、争点、証拠の量、証人尋問の有無及び併合する請求によって大きく異なる。

本記事で確認した公開資料の範囲では、遺言無効確認請求事件だけを対象とする最新の公的な平均審理期間は確認できなかった。

過去の研究では1年以上2年未満が最も多いとされているものの、これは平成18年に公表された研究に基づく数字であり、現在の事件についての平均又は見通しとしてそのまま用いることはできない。
第1 結論
遺言無効確認請求訴訟が何年かかるかは、一律には答えられない。

もっとも、提訴前の資料収集、当事者及び請求の整理並びに証人候補者の検討を早期に行うことは、無用な長期化を避けるために重要である。

また、第一審判決までの期間だけでなく、控訴の可能性及び判決後に必要となる登記、金銭返還又は遺産分割の手続まで含めて見通しを立てる必要がある。
第2 審理期間に関する過去の研究
遺言無効確認請求訴訟に関するリンク集で引用した石田明彦ほか「遺言無効確認請求事件の研究(下)」判例タイムズ1195号86頁は、当時の事件について、審理期間は1年以上2年未満が最も多く、次いで6か月以上1年未満が多かったとしている。

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相続放棄の手続きを自分でするには―必要書類・費用・申述書の書き方(AI作成)

第1 この記事の対象と手続の全体像

1 自分で進めやすい相続放棄

2 最初に確認する三つの事項

第2 3か月の期限と申述前にしてはいけないこと

1 死亡日から一律に3か月ではない

2 遺産の処分を止める

3 調査が終わらないときは期間伸長を申し立てる

第3 誰がどの家庭裁判所へ申述するか

1 申述人と未成年者の利益相反

2 提出先は被相続人の最後の住所地で決まる

第4 相続順位別の必要書類

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遺産分割と詐害行為取消権・無償行為否認―相続放棄との違い(AI作成)

第1 対象と結論

1 最初に押さえる結論

2 三つの制度を分ける必要

3 この記事の時点と適用法

第2 民法上の詐害行為取消請求

1 遺産分割が取消対象となり得る理由

2 現行民法上の要件

3 法定相続分との差額が直ちに取消額にならない理由

4 受益相続人の善意・悪意

5 取消しの方法・範囲・期間

第3 破産法上の否認権

1 詐害行為否認と無償行為否認

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遺産分割における代償分割―代償金・支払能力・分割払・税務(AI作成)

第1 代償分割の仕組みと本記事の範囲第2 協議・調停と審判の違い1 協議・調停では合意内容を柔軟に設計できる2 審判の直接の根拠は家事事件手続法195条である第3 審判で代償分割を選ぶための条件1 「特別の事情」は現在も条文上の要件である2 代償金の支払能力が必要である3 現物取得者を選ぶ事情を具体化する第4 代償金額と財産評価1 基本は具体的相続分と現物取得額との差額である2 遺産分割の評価額と相続税評価額を区別する3 高額な鑑定へ進む条件を絞る第5 支払能力の立証と資金計画1 支払期限に利用できる資金を示す2 将来の売却だけに依存する計画は弱い3 資金不足が明らかなら分割方法を再検討する第6 分割払・期限猶予と履行確保1 長期分割は相手方へ信用リスクを移す2 支払原因,金額及び期限を確定する3 担保・債務名義・引換給付を区別する第7 代償金が支払われない場合1 原則は解除ではなく代償金請求である2 再合意で税務を当然に巻き戻せるとは限らない第8 代償分割で確認する税金1 現金の代償金と相続税2 不動産の相続登記と不動産取得税3 取得不動産を後日売却するときの所得税4 固有不動産を代償として渡す場合第9 資産別の評価・税務・換価手続1 不動産は時価・正味換価額・税務評価を分ける2 上場株式等は評価基準日と口座所在を確認する3 非上場株式は評価と処分可能性を別に調べる4 退職金・死亡退職金は権利の帰属と支給時期を分ける第10 実務上の確認順序第11 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 裁判所・国税庁等の公表資料4 文献5 関連記事
第1 代償分割の仕組みと本記事の範囲

代償分割とは,共同相続人の一人又は数人が不動産,非上場株式その他の遺産を現物で取得し,取得額がその相続人の取り分を超える部分について,他の相続人に代償金を支払う分割方法である。自宅を売らずに配偶者が取得する場合,同族会社の株式を後継者へ集約する場合,事業用資産の一体性を保つ場合などに用いられる。

京都家庭裁判所の遺産分割調停案内は,遺産の分け方を現物分割,代償分割,共有分割及び換価分割の四つに整理し,代償分割には代償金を支払う相続人の資力が必要であると説明している。それぞれの特徴は次のとおりである。

分割方法
内容
主な注意点

現物分割
遺産そのものを各相続人へ分ける
財産ごとの価値に差があると公平な配分が難しい

代償分割
一部の相続人が現物を取得し,他の相続人へ代償金を支払う
評価額と支払能力が争点になりやすい

換価分割
遺産を売却し,手取金を分ける
売却時期,費用及び譲渡所得税を検討する必要がある

共有分割

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遺産分割協議における錯誤取消し―旧法の要素の錯誤,裁判例と実務対応(AI作成)

第1 この記事の対象と最初に確認すべきこと

1 現在は「錯誤無効」ではなく「錯誤取消し」である

2 結果が不満になっただけでは取り消せない

3 本記事の射程

第2 現行民法95条による判断の順序

1 錯誤には二つの類型がある

2 錯誤は重要なものでなければならない

3 基礎事情は他の共同相続人に表示されていなければならない

4 重大な過失があると原則として取り消せない

5 取消通知,期間及び第三者を別々に確認する

第3 誤認の類型別にみる裁判例

1 存在を知らなかった遺言

2 遺産目録から預貯金又は株式が漏れていた場合

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