目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする訴訟2 結論第2 訴額算定の法令上の枠組み1 訴えで主張する利益によって算定する2 昭和31年の民事局長通知3 平成6年の民事局長通知と土地の2分の14 手数料額への当てはめ第3 遺留分減殺による持分移転登記請求の訴額1 基本の算式2 数値例3 手引が示す追加の2分の14 請求の趣旨と訴額の対応第4 訴状の訴額から評価額を逆算するときの注意1 固定資産税評価額の年度2 換地・分筆・合筆3 未知数を一つ置けば必ず一致する第5 訴額と区別すべき金額1 四つの金額の違い2 固定資産税評価額と時価3 訴額に相当する金銭を支払えば終わるわけではない4 弁護士費用の算定基礎第6 現行法の遺留分侵害額請求の訴額第7 訴状を作成し,又は受け取ったときの確認手順1 訴状を作成する側2 訴状を受け取った側第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする訴訟
本記事は,令和元年7月1日より前に開始した相続について,遺留分権利者が受遺者又は受贈者に対し,遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記手続を求める訴訟の「訴訟物の価額」(以下「訴額」という。)を扱う。
基準日は令和8年9月18日であり,条文は同日にe-Gov法令検索で確認した。
平成30年法律第72号附則2条は,同法の施行日前に開始した相続について,原則として従前の例によると定めている。
そのため,訴えの提起が令和8年であっても,相続開始が令和元年6月30日以前であれば,旧法の遺留分減殺請求として,金銭ではなく不動産の持分そのものが請求の対象になることがある。
2 結論
訴額の出発点は,昭和31年12月12日民事甲第412号民事局長通知の「所有権移転登記請求権 目的たる物の価格」であり,固定資産税評価額のある不動産はその価格による。
土地については,平成6年3月28日民二第79号民事局長通知により,受付事務の取扱いとして固定資産税評価額に2分の1を乗じた額を基準とする。
建物には,この土地の2分の1の取扱いはない。
遺留分減殺による持分移転登記請求では,こうして求めた目的物の価額に,各原告が求める持分割合を乗じ,原告が複数であれば合算するのが基本である。
もっとも,『三訂版 事例からみる訴額算定の手引』は,遺留分減殺による持分移転登記請求を「抹消に代わる移転登記」と位置付け,更に2分の1を乗じる計算を示している。
他方,判例タイムズ1345号のモデル訴状は,通常の所有権移転登記の形で請求の趣旨を示しており,受付実務が一つに定まっているとまではいえない。
訴額は,申立手数料を計算するための額である。
遺留分侵害額,価額弁償の額及び弁護士費用の算定基礎とは,基準も時点も異なる。
訴状の訴額に相当する金銭を支払えば紛争が終わるわけではない。
第2 訴額算定の法令上の枠組み
1 訴えで主張する利益によって算定する
民事訴訟法8条1項は,訴額を「訴えで主張する利益によって算定する」と定める。
民事訴訟費用等に関する法律4条1項は,手数料の算出の基礎となる訴額も,民事訴訟法8条1項及び9条により算定するとしている。
一つの訴えで数個の請求をする場合は,民事訴訟法9条1項本文により,その価額を合算する。
ただし,訴えで主張する利益が各請求について共通である場合は,同項ただし書により合算しない。
2 昭和31年の民事局長通知
昭和31年12月12日民事甲第412号民事局長通知「訴訟物の価額の算定基準について」は,所有権について「目的たる物の価格」とし,地方税法349条による固定資産税の課税標準となる価格があるものはその価格,その他のものは取引価格によるとしている。
同通知は,所有権移転登記請求権についても「目的たる物の価格」とし,所有権に基づく物の引渡(明渡)請求権については「目的たる物の価格の二分の一」としている。
同通知は,各裁判所の受付事務の取扱いが分かれていたことから参考資料として作成されたものであり,訴額に争いがあるとき等の基準となるものではないと明記している。
また,価格の認定については,固定資産税の課税標準となる価格を証明する書面を提出させる等の方法により当事者に証明させるとしている。
3 平成6年の民事局長通知と土地の2分の1
平成6年3月28日民二第79号民事局長通知「土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について」は,平成6年度の評価替えで宅地の固定資産税評価額が大きく上昇することを踏まえ,同年4月1日から当分の間,土地を目的とする訴訟の受付事務の取扱いとして,固定資産税評価額に2分の1を乗じて得た金額を基準とすることが妥当であるとした。
(続きを読む...)遺留分減殺請求の訴額の算定―不動産の持分移転登記請求,土地の2分の1,建物,訴額と価額弁償額・弁護士費用の違い(AI作成)