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遺言無効確認請求訴訟の確認の利益―生前提訴・特別縁故者・後の遺言・登記後の扱い

遺言無効確認請求訴訟を提起するためには、遺言が無効であるという主張だけでなく、その確認を判決によって求める法律上の利益が必要である。

確認の利益は、原告の現在の権利又は法律上の地位に現実の不安・危険があり、その除去のために当該確認判決が有効かつ適切であるかという観点から判断される。

第1 遺言無効確認請求が許される理由

最高裁昭和47年2月15日判決(昭和43年(オ)第627号)は、遺言無効確認の訴えを、遺言が有効であれば生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求める訴えと理解し、法律上の利益がある場合には適法となる旨を判示した。

したがって、訴状では、単に過去の遺言行為の無効を述べるだけでなく、当該遺言が有効であれば生ずる具体的な法律関係と、それによって原告に生じている不安・危険を示す必要がある。

第2 確認の利益が問題となる場面

1 遺言者の生前に提訴する場合

最高裁平成11年6月11日判決(平成7年(オ)第1631号)は、遺言者の生前に推定相続人が提起した遺言無効確認の訴えを不適法とした。

遺言者に意思能力がなく、事実上、遺言を撤回又は変更する可能性がないとしても、結論は変わらないとされた。

2 生前贈与によって原告の取得分がないとの反論

最高裁昭和56年9月11日判決(昭和54年(オ)第1208号)は、遺言無効確認の利益の判断に当たり、遺言が無効であっても生前贈与により原告の相続分がなくなるかどうかを考慮しない旨を判示した。

確認の利益の段階で、本案又は遺産分割に属する問題まで先取りして判断するものではない。

3 特別縁故者となる可能性がある者

最高裁平成6年10月13日判決(平成3年(オ)第424号)は、相続財産の分与の審判前にある特別縁故者候補について、遺言無効確認の利益を否定した。

同判決が対象としたのは当時の民法958条の3第1項であり、特別縁故者に対する相続財産の分与は現行民法958条の2に規定されている。

4 後の遺言がある場合

民法1023条は、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、抵触部分について後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなしている。

もっとも、後の遺言があるだけで確認の利益が当然に消滅するわけではない。

前後の遺言の抵触範囲、後の遺言自体の効力及び原告の現在の法律上の地位を確認する必要がある。

5 遺言に基づく登記が既にされた場合

遺言に基づく所有権移転登記等が既にされた場合、遺言無効確認だけでは登記を回復できないことがある。

最高裁昭和51年7月19日判決(昭和51年(オ)第17号)は、遺贈による登記の抹消登記手続を求める相手方は遺言執行者ではなく受遺者であるとした。

登記後は、遺言無効確認に加えて、又はこれに代えて、所有権確認若しくは登記抹消等の給付請求が必要かを検討すべきである。

第3 遺産確認の訴えとの違い

遺言が無効であるとしても、どの財産が遺産に属するかが別に争われることがある。

遺産の範囲を確定する必要がある場合は、遺言無効確認の訴えと遺産確認の訴えのどちらが現在の紛争解決に適切かを区別して検討する必要がある。

第4 提訴前の確認事項

①原告の現在の権利又は法律上の地位を特定する必要がある。

②被告が当該遺言を有効と主張しているかを確認する必要がある。

③確認対象となる遺言及び条項を特定する必要がある。

④後の遺言、生前処分又は登記の有無を確認する必要がある。

⑤確認判決だけで紛争が解決するか、給付請求も必要かを確認する必要がある。

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第6 出典

①民法1023条及び958条の2(e-Gov法令検索)

②最高裁昭和47年2月15日判決(昭和43年(オ)第627号)

③最高裁昭和56年9月11日判決(昭和54年(オ)第1208号)

④最高裁平成6年10月13日判決(平成3年(オ)第424号)

⑤最高裁平成11年6月11日判決(平成7年(オ)第1631号)

⑥最高裁昭和51年7月19日判決(昭和51年(オ)第17号)