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年金の不正受給調査とは―質問・資料提出・支給停止への対応(AI作成)

第1 調査の連絡を受けたときの確認事項

日本年金機構から受給資格について質問や資料提出を求められても,その連絡だけで不正受給が確定したわけではない。
最初に,対象となる年金,確認対象の期間と事実,書類の正式名称,提出期限及び法令上の根拠を確認する。
通常の届出,受給権者に対する調査,支給停止及び既払額の返還は,分けて検討する必要がある。

本記事は,令和8年11月1日に確認した国民年金法,厚生年金保険法及び日本年金機構の公表資料を基に,一般的な対応の順序を整理したものである。
平成22年の調査実施要領及び平成26年の不正受給対応手引きも参照するが,これらは当時の内部事務を知る資料であり,現在の内部運用全体を示すものとしては扱わない。

第2 通常の届出と受給資格の調査

1 書類の名称と確認目的を分ける

現況届,生計維持確認届及び障害状態確認届は,それぞれ確認する事項が異なる。
現況届等の提出を求める連絡と,特定の受給資格や過去の支給について説明を求める連絡を,同じものとして処理しない。
現況届の対象者や記入方法は,年金受給権者現況届の記事を参照されたい。

平成26年の手引きは,不正受給の疑いがある段階と,客観的資料によって事実を確認した段階を区別している。
この区別を踏まえると,回答を準備する際には,通報や推測の内容と,診断書,届出書,入出金記録等から確認できる事実を分けて整理することが有用である。
後半の整理方法は,本記事が提案する実務上の準備である。

2 連絡の内容を記録する

電話で連絡を受けた場合は,担当部署,担当者名,連絡日,提出を求められた資料及び期限を記録する。
対象期間や提出の趣旨が分からなければ,その点を問い合わせ,書面で届いた通知や封筒も残しておく。
連絡の真正性に疑問がある場合には,受け取った電話番号だけに頼らず,公式サイトで確認した年金事務所等の窓口へ確認する。

第3 質問・資料提出と任意の協力

1 法令に基づく受給権者への調査

国民年金法107条1項は,厚生労働大臣が必要と認めるとき,受給権者に対し,身分関係,障害の状態その他受給権の消滅,年金額の改定又は支給停止に関する書類等の提出を命じ,職員に質問させることができると定めている。
厚生年金保険法96条1項にも,実施機関による同種の調査の規定がある。

受給権者本人に対する調査でも,法令に基づく命令・質問と,任意の協力を求めるものとでは性質が異なる。
第三者への照会も,相手方の任意の協力を待つものである。
平成22年の実施要領も,受給権者本人に対する間接強制調査と,相手方の任意の協力を待つ任意調査を区別している。
平成26年の手引きは,任意調査の相手方に受給権者等も含めている。
したがって,「任意だからすべて放置してよい」「求められたものは内容に関係なくすべて提出義務がある」といった一括した理解を避け,個々の依頼の根拠と範囲を確認する。

2 期限までに回答できない場合

入院中である,古い取引記録の取得に時間がかかるなど,期限内の対応が難しい場合は,その事情と見通しを担当窓口へ具体的に伝える。
提出できる資料,取得中の資料及び手元に存在しない資料を分け,連絡した日時と内容を残すとよい。
この連絡によって期限の延長が当然に認められるという意味ではなく,延長の可否や代替資料は個別に確認する必要がある。

第4 回答しないと年金が止まるか

国民年金法72条及び厚生年金保険法77条は,一定の場合に年金の全部又は一部の支給を停止できると定めている。
受給権者への命令・質問に関する規定では,「正当な理由がなくて」という条件が置かれている。
単に連絡を一度受けたことだけで,これらの条文による支給停止が直ちに決まるわけではない。

支給停止に関する通知を受けたときは,根拠条文,対象となった命令・質問,求められた対応,停止する給付と期間を確認する。
対応が難しかった事情や,既に回答・提出した事実があれば,送付控え,配達記録,診療に関する資料等と照合する。
停止理由に疑問がある場合は,不服申立て等の案内と期間も確認し,早めに相談することが望ましい。

なお,現況届の未提出等による支払いの一時停止と,不正受給の認定や返還請求は同じではない。
どの手続に基づいて支払いが止まっているかを確かめることが先決である。

第5 事実確認書・聴取調書に記載する内容

平成22年の実施要領には,聴取調書や事実確認書を用いて本人の説明を確認する手順が記載されている。
書面の名称だけで判断せず,対象期間,記載された出来事,金額及び認識に関する表現を読む必要がある。

以下は,書面を確認する際の実務上の整理である。

①自分が直接知っている事実と,家族等から聞いた内容を分ける。
②記憶が曖昧な日付や金額を,確実な事実として記載しない。
③診断書,届出控え及び通帳の記録と食い違う箇所を確認する。
④「知っていた」「隠した」などの認識に関する記載が,実際の説明と一致しているか確認する。
⑤訂正を求めた内容,提出した書面及び受領した書面の控えを残す。

返還義務を認める文言や,不正を自認する文言を含む場合には,事実説明と法的評価を区別して確認する。
内容に疑問があれば,その箇所を明らかにし,署名・提出前に弁護士等へ相談することが考えられる。
事実を隠したり,関係資料を改変・廃棄したりするための対応を勧めるものではない。

第6 支給停止・返還・刑事手続を分ける

1 過払いと不正利得の徴収

国民年金法23条及び厚生年金保険法40条の2には,偽りその他不正の手段により給付を受けた場合の徴収の規定がある。
他方,過払いの返還が問題となる場面をすべて,これらの不正利得の徴収と同一視することはできない。
返還を求める通知では,対象月,計算方法,請求を受ける人及び根拠を確認する。

例えば,死亡後の口座への入金でも,死亡月分までか,その翌月分以後かで整理が異なる。
この点は,遺産分割と未支給年金の記事で説明している。
返還対象が一律に何年分になるか,利息が常に何%になるかは,本記事では一括して断定しない。

2 行政上の調査と刑事手続

平成26年の手引きは,年金給付を適正に行うための調査と,捜査機関による犯罪捜査を区別している。
年金事務所からの調査の連絡を受けたことだけで,逮捕や有罪判決が決まるわけではない。
ただし,行政上の調査と刑事手続が関連する事案もあるため,捜査機関から連絡を受けた場合や,不正を認める書面の提出を求められた場合には,個別の相談が特に重要となる。

第7 相談に持参する資料

相談時には,通知書と封筒,年金証書・支給額の通知,提出済みの請求書・届書の控え,関係する診断書,対象期間の入出金記録及び担当窓口との連絡記録を,関係する範囲で用意するとよい。
資料ごとに「いつの,何を示す記録か」を記し,不明な点は不明なまま明示する。
必要資料は争点によって変わるため,初回の相談の前に手元の資料を伝えておくと整理しやすい。

第8 出典

①e-Gov法令検索・国民年金法23条,72条及び107条。
②e-Gov法令検索・厚生年金保険法40条の2,77条及び96条。
③日本年金機構「受給権者・被保険者の年金受給資格に関する調査の実施要領」(平成22年8月13日付け)。
間接強制調査と任意調査,過払い調査及び関係様式を参照。
④日本年金機構本部給付企画部給付指導グループ「年金給付費を不正に受給した者に関する対応の手引き(第2版)」(平成26年8月18日)。
疑い段階と事実確認,調査及び刑事手続との関係を参照。

③及び④は当時の内部資料である。
本記事は刑事責任の成立や量刑を論じるものではない。