目次第1 司法試験の合格点と採点の全体像1 合格判定には三つの関門がある2 本記事の基準日第2 「足切り」と合格判定の法的な仕組み1 司法試験法2条2項の構造2 「足切り」は公式資料の用語ではない第3 短答式試験の合格に必要な成績1 二つの基準を同時に満たす必要がある2 令和8年は合計99点以上である3 短答式の得点は最終の総合点にも入る4 各問の配点と部分点第4 論文式試験の採点と最低ライン1 答案の評価区分と採点の目安2 素点と調整後の得点は異なる3 論文式の最低ラインは各科目の25%点である4 最低ラインの判定は素点平均で行う5 採点方針の共有と得点調整は役割が違う第5 総合点の計算と最終合格点1 短答式と論文式の比重は1対8である2 令和7年の最終合格点は770点である3 近年の最終合格点4 採点結果の人数を読むときの注意第6 成績通知の対象,内容及び時期1 全科目を受験した者が通知対象である2 短答式試験の通知内容3 論文式試験と総合評価の通知内容4 マイナポータルでの確認方法第7 成績通知書を読む際の注意点1 論文式合計得点と総合得点を区別する2 順位にはそれぞれ対象集団がある3 現行の通知事項を旧情報と混同しない4 模試・自己採点・外部評価を公式得点へ読み替えない第8 よくある質問1 短答式は各科目40%を取れば通過できるのか2 論文式の科目別得点が25%を超えていれば最低ラインを通過したと断定できるか3 総合点770点を取れば令和8年も合格できるのか4 不合格者にも順位は通知されるのか5 短答式の答案が採点されなければ成績通知もないのか第9 関連記事第10 出典
第1 司法試験の合格点と採点の全体像
合格点を調べるときの順序
①短答式は科目別の最低ラインと合計得点の必要点を併せて確認する。
②論文式は科目別の最低ラインを確認する。
③最終判定は,短答式と論文式を総合した得点及び当該年度の司法試験委員会決定による。
令和8年短答式の99点は最終合格点ではない。令和7年の最終合格点770点を,未公表の令和8年最終合格点として読まない。人数・割合の比較は司法試験の合格率・合格者数の推移,受験資格から合格後までの制度は司法試験とはで整理している。
1 合格判定には三つの関門がある
司法試験の合否を理解するためには,①短答式試験の合格に必要な成績,②論文式試験の科目別最低ライン,③短答式試験と論文式試験を合算した総合点の合格点を区別する必要がある。
令和8年司法試験では,短答式試験について,各科目で満点の40%点以上を取り,かつ,3科目の合計得点が99点以上でなければならない。
短答式試験の合格に必要な成績を得ても,論文式試験で1科目でも満点の25%点に達しなければ,それだけで不合格となる。
これら二つの関門を通過した者について,短答式試験と論文式試験の総合点を計算し,司法試験委員会がその年度の合格点を決定する。
2 本記事の基準日
本記事は,令和8年8月29日現在の法令,司法試験委員会決定及び法務省公表資料に基づく。令和8年10月4日,採点方針の根拠資料の名称,最低ラインの判定単位及び採点方針の共有と得点調整の違いを原典で再確認して補足した。
令和8年司法試験については短答式試験の結果まで公表されているが,最終合格発表は令和8年11月11日午後4時の予定であり,令和8年の総合点の合格点はまだ公表されていない。
第2 「足切り」と合格判定の法的な仕組み
1 司法試験法2条2項の構造
司法試験法2条2項は,司法試験の合格者の判定を,短答式試験の合格に必要な成績を得た者について,短答式試験及び論文式試験の成績を総合して行うものとしている。
したがって,短答式試験は単なる参考資料ではなく,論文式試験とともに最終の総合点へ組み込まれる一方,短答式試験の合格に必要な成績を得られなければ総合評価の対象にならない。
司法試験法8条によれば,司法試験の合格者は,司法試験考査委員の合議による判定に基づき,司法試験委員会が決定する。
合格者数は,この判定の結果として年ごとに決まる。
政府の法曹養成制度改革推進会議は,平成27年6月30日の決定で,当面,司法試験合格者として1,500人程度が輩出されるよう必要な取組を進め,更にこれにとどまらずより多くの質の高い法曹が輩出される状況を目指すとしたが(同決定2頁),令和3年の合格者は1,421人であった。
日本弁護士連合会の「法曹人口政策に関する当面の対処方針」(2022年3月17日)も,合否の判定は近年の合格者数の維持を所与の目標とすることなく,司法試験法1条に基づいて厳正に実施されるべきであるとしている(同方針3頁)。
この合議による判定と委員会による決定の関係,委員会のメンバー及び考査委員との違いは,司法試験委員会とは―メンバー・委員長,考査委員との違いと問い合わせ先(AI作成)で整理している。
本記事では,その決定に基づく合格点と,採点・成績通知の読み方を説明する。
2 「足切り」は公式資料の用語ではない
受験案内や受験指導では「足切り」という表現が広く用いられるが,令和8年司法試験の方式・内容等については,短答式試験について「合格に必要な成績」と「最低ライン」,論文式試験について「最低ライン」という用語を用いている。
本記事では検索上の分かりやすさから「足切り」に触れるものの,短答式試験の合計得点の基準と,短答式・論文式の科目別最低ラインを分けて記載する。