第1 盛岡修習を把握する際の前提
盛岡修習については,①司法修習全体の日程,②司法研修所のクラス,③集合修習等の実施順序を定める班,④盛岡に配属された修習生の人数,⑤盛岡内部の分野別ローテーションを区別する必要がある。これらは同じ表で一括公表されているものではなく,資料の作成時期も異なる。
本記事では,第79期の日程及び班を令和8年の資料で確認し,配属人数は第76期から第78期までの各期の配属現員表,盛岡内部のローテーションは入手できた第77期の日程表に基づいて記載する。したがって,第77期のローテーションを第79期にもそのまま当てはめることはできない。また,家賃等の変動する情報は令和8年8月15日時点の掲載情報に基づく。
第2 第79期の修習日程
1 全体日程
第79期の導入修習及び分野別実務修習の日程は,次のとおりである。
| 区分 | 期間 |
|---|---|
| 導入修習 | 令和8年3月19日~4月10日 |
| 分野別実務修習第1クール | 令和8年4月14日~6月9日 |
| 分野別実務修習第2クール | 令和8年6月10日~8月2日 |
| 分野別実務修習第3クール | 令和8年8月3日~9月28日 |
| 分野別実務修習第4クール | 令和8年9月29日~11月20日 |
これは全国共通のクール日程であり,各クールに民事裁判,刑事裁判,検察又は弁護のどの分野を履修するかは,修習地内部のグループごとに異なる。
2 盛岡修習はB班
第79期に盛岡へ配属された修習生はB班であり,分野別実務修習後の日程は,選択型実務修習が令和8年11月24日から令和9年1月8日まで,集合修習が令和9年1月13日から2月25日までである。したがって,盛岡修習では,分野別実務修習,選択型実務修習,集合修習の順に進む。
第79期盛岡修習について,各人が四つの分野をどの順番で回るかを示す公開資料は,本記事作成時点では確認できなかった。
第3 クラス分け,配属人数及び分野別ローテーション
1 クラス,班及び盛岡内部のグループは別の区分であること
司法研修所の「クラス」は,導入修習及び集合修習における教育単位であり,司法修習ハンドブックによれば,1クラスはおおむね60人で,民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護の教官が指導を担当する。これに対し,「班」は,選択型実務修習と集合修習の実施順序を区分するものであり,盛岡内部の「グループ」は,四つの分野別実務修習を回る順序を区分するものである。
第78期については,盛岡は仙台,秋田及び青森とともにB班2組であったことを確認できる。
もっとも,第79期の盛岡がB班であることは確認できるものの,第78期と同じ「B班2組」であると確認できる公開資料は見当たらなかった。
2 近年の盛岡への配属人数
各期の配属現員表に記載された盛岡への配属人数は,次のとおりである。
| 司法修習期 | 盛岡への配属人数 | 全国の配属人数 |
|---|---|---|
| 第76期 | 7人 | 1394人 |
| 第77期 | 10人 | 1830人 |
| 第78期 | 8人 | 1556人 |
この3期だけを見ても,盛岡への配属人数は固定ではない。第79期については,盛岡を含む実務修習地別の配属現員表を本記事作成時点で確認できなかったため,人数を記載しない。
3 第77期盛岡修習のローテーション
第77期盛岡修習の日程表では,修習生は三つのグループに分かれ,次の順序で四分野を履修した。
| グループ | 第1クール | 第2クール | 第3クール | 第4クール |
|---|---|---|---|---|
| 第1グループ | 検察 | 民事裁判 | 弁護 | 刑事裁判 |
| 第2グループ | 刑事裁判 | 弁護 | 検察 | 民事裁判 |
| 第3グループ | 検察 | 刑事裁判 | 民事裁判 | 弁護 |
同じ修習地でも,全員が同時に同じ分野を履修するわけではないことが分かる。もっとも,この表は第77期の実績であり,第79期のローテーションを示すものではない。
第4 実務修習の内容
1 実務修習の基本構造
分野別実務修習は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の四分野を,それぞれ約2か月ずつ履修するものである。司法修習ハンドブックは,実際の事件を素材とし,法曹として必要な事実認定,法的分析,手続の選択,書面作成及び当事者等との対応を学ぶものとして各分野を説明している。修習生は秘密を扱う立場にあるため,修習で知った個別事件の内容を外部に出すことはできない。
2 四つの分野別実務修習
①民事裁判修習では,民事事件の記録を検討し,争点整理,事実認定及び法的判断の過程を学ぶほか,法廷を傍聴し,裁判官の指導を受けて裁判書面の起案等を行う。
②刑事裁判修習では,刑事事件の記録及び公判を素材として,訴訟手続,証拠の評価,事実認定,量刑及び裁判書の作成過程を学ぶ。
③検察修習では,捜査及び公判に関する検察実務を学び,事件記録の検討,被疑者・参考人の取調べ,事件処理方針の検討,起訴状・不起訴裁定書等の起案及び公判立証の検討等を行う。
④弁護修習では,配属先の法律事務所で指導担当弁護士の実務に接し,法律相談,依頼者との打合せ,調査,書面作成,裁判手続等を通じて民事弁護及び刑事弁護の実務を学ぶ。
具体的な担当事件及び修習方法は,事件の状況,配属先及び指導担当者によって異なる。
3 選択型実務修習と集合修習
選択型実務修習では,修習生が自己の関心及び進路に応じてプログラムを選択する。司法修習ハンドブックによれば,修習生は分野別実務修習の弁護修習で配属された法律事務所をホームグラウンドとして,個別修習プログラム等を履修する。
集合修習は司法研修所で行われ,実務修習の経験を踏まえて,民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護の各科目を体系的に学ぶ。
第79期の盛岡に固有の選択型実務修習プログラム一覧は,本記事作成時点で公開資料を確認できなかった。
第5 希望倍率と配属の見方
1 第69期の公表値
司法研修所が作成した第69期の一覧表では,盛岡について,第1希望者が2人,第2希望者が0人,配属予定人員が14人と記載され,第1希望者数を配属予定人員で割った数値は0.14であった。
この数値は,希望者が選考を通過する確率ではなく,第1希望者数と予定人員との比率である。
2 現在の倍率を算出できない理由
最高裁判所事務総長の平成29年7月18日付け理由説明書によれば,司法研修所は,第70期司法修習予定者の実務修習希望地調査について,第69期まで作成していた「実務修習地別の配属予定人員,第一希望者数及び第二希望者数が分かる文書」を作成しなかった。
また,第79期司法修習予定者の実務修習希望地調査表についても,最高裁判所事務総局秘書課長の令和8年3月18日付け通知書は,文書を「作成又は取得していない」としている。
したがって,第69期の0.14を現在の盛岡修習の希望倍率として表示することはできず,第79期の希望倍率も公開資料からは算出できない。
3 倍率から読み取れないこと
第69期の一覧表は古い一時点の資料であり,現在の希望動向を示すものではない。また,希望順位だけで配属が機械的に決まることを示す資料でもない。
司法研修所の過去の説明資料は,本人の希望のほか,健康状態,家族の状況その他の事情を考慮して実務修習地を決定すると説明しているが,現在の個別要素の重みや具体的な選考過程は公表資料からは分からない。このため,古い倍率を合格可能性又は配属可能性として扱うべきではない。
第6 住居と生活情報
1 住居は修習生が確保する
第79期司法修習生採用選考申込者向けの最高裁判所の手引は,実務修習期間中の住居について,司法修習生自身が確保するものとしている。盛岡で主に通うことになる機関の所在地は,盛岡地方裁判所が盛岡市内丸9番1号,盛岡地方検察庁が盛岡市内丸8番20号,岩手弁護士会が盛岡市大通一丁目2番1号岩手県産業会館本館2階である。
弁護修習の配属先法律事務所は別の場所になるため,裁判所だけでなく,バス路線及び盛岡駅への移動も考えて住居を選ぶ必要がある。
2 住む場所の考え方
次の整理は,裁判所等の所在地及び交通網からみた住居選びの目安であり,裁判所その他の機関が推奨する居住地域ではない。
| 地域の例 | 特徴 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 内丸,大通,中央通,菜園周辺 | 裁判所,検察庁及び弁護士会へ徒歩で移動しやすい | 物件数,家賃,夜間の環境及び駐車場代を個別に確認する |
| 盛岡駅周辺 | 鉄道,高速バス及び路線バスを利用しやすい | 盛岡地方裁判所までは徒歩約30分であり,冬季の徒歩時間を見込む |
| バス沿線の住宅地 | 面積又は賃料の選択肢が広がることがある | 積雪時の運行,最終便及び乗換えを確認する |
盛岡地方裁判所の案内では,盛岡駅から裁判所までは徒歩約30分,又はバス約10分と徒歩約1分である。盛岡駅と中心市街地及び官公庁を結ぶ循環バス「でんでんむし」は,1周約35分で運行されている。
3 募集家賃の相場
LIFULL HOME'Sの令和8年8月15日時点の盛岡市の募集家賃情報では,ワンルームが5万2400円,1Kが4万8700円,1LDKが6万5500円である。これらは同サイトに掲載された賃貸物件の募集賃料から算出された数値であり,共益費,管理費,駐車場代等を含まない。実際の負担額は,所在地,築年数,設備,契約期間,短期解約違約金,更新料,保証料及び退去費用によって変わる。
4 修習給付金
最高裁判所の案内によれば,基本給付金は一給付期間当たり13万5000円である。自ら居住するための住宅を借り,家賃を支払い,所定の届出をする場合には,住居給付金として一給付期間当たり3万5000円が支給される。このほか,司法修習に伴って住所又は居所を移転する場合には,所定の要件の下で移転給付金が支給される。
住居給付金等には届出及び証明書類が必要であるため,賃貸借契約を締結する前後に最新の案内と提出期限を確認する必要がある。
5 冬の気候と交通
気象庁の平成3年から令和2年までの平年値によれば,盛岡の1月の平均気温は氷点下1.6度,日最高気温の平均は2.0度,日最低気温の平均は氷点下5.2度である。1月の降雪の深さの月合計は63センチメートル,日合計の最大は17センチメートル,最深積雪は27センチメートル,積雪1センチメートル以上の日数は13.3日である。
盛岡市も,路面に雪があるとき又は凍結しているときは自転車の利用を避けるよう案内している。住居選びでは,通常時の徒歩分数だけでなく,除雪状況,坂道,バス停までの経路及び冬季の代替交通を現地で確認することが重要である。また,水害及び土砂災害のリスクは,盛岡市が公開する各種ハザードマップで物件ごとに確認できる。
6 契約前の確認事項
盛岡での賃貸借契約に際しては,少なくとも次の事項を確認することが望ましい。
①実務修習の開始日及び退去予定日に契約期間を合わせられるか。
②短期解約違約金,更新料,原状回復費用及び退去予告期間はどうなっているか。
③共益費,駐車場代,保証料,火災保険料及びインターネット料金を含む総額はいくらか。
④暖房方式,断熱性能,水道管凍結防止設備及び冬季の光熱費を確認したか。
⑤裁判所,検察庁,弁護士会,盛岡駅及び最寄りのバス停まで,積雪時にも移動できるか。
⑥住居給付金の要件を満たす契約内容及び証明書類になっているか。
第7 出典・参考資料
1 裁判所及び司法研修所の資料
①最高裁判所「司法修習の概要」
②最高裁判所「司法修習生の修習給付金について」
③最高裁判所「第79期司法修習生採用選考申込者の方へ」
④司法研修所「司法修習ハンドブック」(令和7年1月)5頁~9頁・62頁~66頁
⑤盛岡地方裁判所「盛岡地方裁判所・盛岡家庭裁判所・盛岡簡易裁判所」
2 配属人数,希望状況及び日程の資料
①司法研修所事務局長「実務修習地等について(第79期司法修習生向け)」(令和8年)
②「第79期司法修習の日程」
⑦司法研修所「司法修習の場所ごとの倍率等の一覧表(第69期)」
⑧最高裁判所事務総長「理由説明書(司法修習予定者の実務修習希望地調査関係)」(平成29年7月18日付け)
⑨最高裁判所事務総局秘書課長「不開示通知書(第79期司法修習予定者の実務修習希望地調査表)」(令和8年3月18日付け)
⑩司法研修所事務局「第40期司法修習生の実務修習地の選定方法等」
⑪司法研修所「第78期教官担当表」(令和7年8月5日現在)
3 盛岡の住居・生活に関する資料
①法務省「検察庁の所在地等一覧」
②岩手県「岩手弁護士会」
③LIFULL HOME'S「盛岡市の家賃相場」
④気象庁「盛岡の平年値(年・月ごとの値)・気温」
⑤気象庁「盛岡の平年値(年・月ごとの値)・雪」
⑥盛岡市「冬の自転車利用について」
⑦盛岡市「盛岡都心循環バス『でんでんむし』について」
⑧盛岡市「各種ハザードマップ」