選択型実務修習の運用ガイドライン


○以下の記載は,平成18年9月1日当時の選択型実務修習の運用ガイドラインを丸写ししたものです。

第1 定義
   司法修習生指導要綱(甲)に定めるもののほか,このガイドラインの用語については,次のとおりとする。
1 裁判所,検察庁,弁護士会等が,選択型実務修習の期間中,司法修習生に対し提供するプログラムを総称して,修習プログラムという。修習プログラムは,次の各プログラムからなる。
(1) 個別修習プログラム
   修習プログラムのうち,司法修習生が配属された修習地の裁判所,検察庁及び弁護士会が提供するものであって,当該配属修習地の司法修習生のみが修習できるものをいう。
(2) 全国プログラム
   修習プログラムのうち,司法修習生が,配属修習地にかかわらず修習できるものをいう。
(3) 自己開拓プログラム
   司法修習生が,自ら修習先を開拓して設定し,修習するものをいう。
2 ホームグラウンド
   選択型実務修習の期間中,司法修習生が,修習プログラムを修習しないときに,弁護修習を行う弁護士事務所を,「ホームグラウンド」という。

第2 修習地
   選択型実務修習は,原則として,分野別実務修習における配属修習地で行うものとする。ただし,一定の期間及び修習内容に限り,配属修習地外で修習することができる。
   なお,外国での修習は,当面これを認めない。
○ 配属修習地以外での修習の期間は3週間を限度とする。
○ 当面は,配属修習地では履修が不可能な修習内容に限り,配属修習地外で修習することができるものとする(第3の3,4参照)。

第3 修習先
1 (ホームグラウンド)
   ホームグラウンドは,原則として,分野別実務修習で配属された弁護士事務所とする。
(1) ホームグラウンドにおける弁護修習は,選択型実務修習の期間中,最低1週間は,継続して行わなければならない。
(2) 相当な理由があれば,選択型実務修習の2箇月間を通じてホームグラウンドでの弁護修習を行うことができる。
(3) 分野別実務修習で配属された弁護士事務所以外の弁護士事務所をホームグラウンドとしなければならない事情がある場合には,ホームグラウンドを当該弁護士事務所に変更することができる。
2 (個別修習プログラム)
   分野別実務修習の配属庁会は,その地の実情もふまえながら,個別修習プログラムを提供する。
   その内容は,分野別実務修習における成果を深化させ,あるいはその補完を図るものや,分野別実務修習では体験できないか,十分な修習を行うことが困難な専門的領域を修習するものを基本とする。例えば,別紙のようなものが考えられる。
○ 現行司法修習において社会修習として実施されている見学ないし体験を個別修習プログラムとする場合には,修習内容が法曹の業務と関連を有するものとなるよう配慮する。
3 (全国プログラム)
   知的財産権訴訟の専門部での裁判修習,法務省における法務行政に関する修習(検察修習),又はいわゆる渉外・知財事務所での弁護修習等その修習の性質上特定の地域の配属庁会にしか提供できないようなプログラムについては,全国の司法修習生に当該プログラムを提供する。
4 (自己開拓プログラム)
   司法修習生は,民間企業の法務部,地方自治体の法務関係部門等法曹の活動に密接な関係を有する分野の修習先を自ら開拓することができる。
○ 司法修習生指導連絡委員会(以下「指導連絡委員会」という。)は,司法修習生が自ら開拓した修習先での実務修習について,後記第5の3のとおり,選択型実務修習の趣旨に適ったものかどうか,その適否について審査する。判断が困難なものについては,司法研修所と協議する。
○ 指導連絡委員会により実務修習先として承認されると,司法修習生は当該修習先において,自己開拓プログラムとして修習することができる。
5 司法修習生が就職を予定している弁護士事務所を,修習プログラムとしての弁護修習先とすることはできないものとする。

第4 指導監督体制
   選択型実務修習は,各配属修習地の弁護士会に委託して行い,司法修習生に対する監督は,当該弁護士会長に委託する。

第5 修習プランの策定手続
(個別修習プラグラム等の提示)
1 指導連絡委員会は,提供される修習プログラムの内容が確定し次第,司法修習生に対し,各配属庁会を通じて全国プログラム及び個別修習プログラムを提示する。
○ 選択型実務修習が2班に分かれて実施される場合(選択型実務修習から始まる班と集合修習から始まる班に分かれる。)であっても,司法修習生の修習計画の立案と指導連絡委員会による修習計画の審査手続は,両班とも同時に行う。
(応募)
2(1) 全国プログラム
・ 司法修習生は,まず,全国プログラムにつき,応募期日までに各配属庁会の指導連絡委員会に応募する(全国プログラムの修習を希望しない司法修習生は,個別修習プログラムにのみ応募すれば足りる。)。
・ 司法修習生は,全選択型実務修習期間(2箇月)を通じて1つのプログラムにのみ応募することができる。
・ 全国プログラムへの応募があった場合には,当該配属庁会の指導連絡委員会は,司法研修所に対し,その旨連絡し,司法研修所は,各全国プログラムの提供者に対し,全国の応募状況を連絡する(なお,条件審査のために必要な関係資料の送付については,応募を受けた指導連絡委員会から,各提供者に直接送付する。)。
・ 各全国プログラムの提供者は,できる限り早期に修習対象者を決定する。この際,各全国プログラムの提供者は,特定の全国プログラムにつき,応募者の前提知識・経験等(例えば,法科大学院や分野別実務修習で一定の基礎知識を習得していることを条件とするなど)を受入れの適否や優先順位を決定する際の条件とすることができる。
・ 各全国プログラムの提供者は,受入決定の結果を,司法研修所を通じて,各配属庁会の指導連絡委員会に通知する。
・ 全国プログラムを修習する修習対象者の決定は,おおむね第2クール終了時に終えるようにする。
(2) 個別修習プログラム
・ 司法修習生は,次に,各配属庁会の指導連絡委員会が提示した個別修習プログラムにつき,遅くとも分野別実務修習の第4クールが開始して一定期間経過後(例えば,1週間経過後)までに各配属庁会の指導連絡委員会に応募する。
・ 指導連絡委員会は,募集に当たって,司法修習生に,個別修習プログラムを適切に実施するため,必要があるときは,複数のプログラムについて順位をつけて応募させることができる。
・ 指導連絡委員会は,当該配属庁会に配置される司法修習生数等に照らし,上記日程での事務処理が困難と予想されるときは,応募の開始を前倒し(例えば,第3クールの前半終了時等)することができる。
(司法修習生が修習先を自ら開拓する場合)
3 司法修習生が自ら開拓した修習先での実務修習を希望する場合には,応募時に,当該修習先の概要を記載した書面及び修習先の発する司法修習生を受け入れる旨の書面等を書く配属庁会の指導連絡委員会に提出する。
   指導連絡委員会は,提出された書面その他の資料に基づいて,選択型実務修習の目的に沿うものかどうか,その適否について審査し,その結果を司法修習生に速やかに通知する。
○ 指導連絡委員会は,司法研修所に対して,審査後直ちにその結果を報告する。
(個別修習プログラムの修習対象者の決定)
4 各配属庁会は,提供する特定の個別修習プログラムについて,応募者が定員を超えた場合には,速やかに抽選その他の公平な方法により修習対象者を決定し,すべての個別修習プログラムにつき,受入れの可否について一定期間以内(例えば,個別修習プログラムの募集から2週間以内)に司法修習生に通知する。
○ 各配属庁会は,特定の個別修習プログログラムにつき,応募者の前提知識・経験等(例えば,法科大学院や分野別実務修習で一定の基礎知識を修得していることを条件とするなど)を受入れの可否や優先順位を決定する際の条件とすることができる。
(個別修習プログラムの追加募集)
5 各配属庁会は,定員に達していない個別修習プログラムがある場合には,追加募集をするなどして,修習対象者を追加することができる。
(確定)
6 司法修習生は,2から5までの手続きを踏まえ,選択型実務修習期間全体の修習計画を,分野別実務修習の全クールが終了するおおむね2週間前までに,各配属庁会の指導連絡委員会に提出する。
   各配属庁会の指導連絡委員会は,修習計画について本ガイドラインに照らし不相当な点があれば,司法修習生に対し,これに適合するよう修習計画を是正させる。
   修習計画の内容が確定すると,司法修習生はこの計画に従って修習する。

第6 修習成果の評価
1 司法修習生は,選択型実務修習終了時点において,修習の成果等を記載したレポートをホームグラウンドの修習指導担当弁護士を通じて弁護士会に提出する。
2 弁護士会長は,上記レポートのほか,修習指導担当弁護士及び各プログラムの修習先からの修習実績についてのコメントなどに基づいて,修習の成果を評価する。
○ 弁護士事務所以外の各プログラムの修習先の修習実績のコメントについては,司法修習生がプログラム提供先に所定の様式の報告書を持参し,プログラムの終了後に,当該提供先が報告書にコメントを記載し,弁護士会に送付する。
○ 修習の成果の評価については,修習内容に照らし,合否のみを判定することとし,立案した計画が履行されていれば合格とし,特に良好な成果を修めた者や,立案した計画の履行が不十分な者など,特記すべき事項があれば,報告書にその旨付記する。

第7 その他
    選択型実務修習が2班に分かれて実施される場合,修習地が東京及び大阪並びにそれら周辺の司法修習生については,集合修習から始まる班に,それ以外の修習地の修習生については,選択型実務修習から始まる班に分かれることを基本とする。

(別紙)
   各配属庁会が提供する標準的な修習プログラムの具体例
1 裁判所が提供するプログラム
(1) 通常事件修習   1箇月間程度
   分野別実務修習の深化を目的として,通常事件を扱う地方裁判所の民事部又は刑事部における修習
(2) 特殊事件修習   2週間程度
   特殊事件(保全,民事執行,倒産等の事件)を扱う地方裁判所の部において行う民事裁判修習
(3) 家庭裁判所修習   2週間程度
   家庭裁判所において行う家事・少年事件の修習
2 検察庁が提供するプログラム
(1) 捜査・公判補完修習(A)   1箇月間
   身柄事件の取調べ,事件処理,公判請求事件の立証計画や,公判提出書類の起案,証人尋問準備や,控訴審議の検討など,分野別事務修習の補完と深化を目的とする修習
(2) 捜査・公判補完修習(B)   2週間
   同上
(3) 刑事関連施設等見学修習   1週間
   分野別実務修習で実施しない刑事関連施設見学や矯正・保護の実情に関する知識を深化させることを目的とする修習
(4) その他
   (3)の見学修習の希望者が多いときには,2回に分けて実施することも必要で,その場合の予備の1週間に当てることができるほか,各地方検察庁の実情や所属する検察官の個人的な能力(簿記・会計,外国法,条例審査)を踏まえながら各地方検察庁で自由に設定できる(設定しなくてもよい。)プログラム
3 弁護士会が提供するプログラム
(1) 分野別実務修習の配属先弁護士事務所(ホームグラウンドとなる弁護士事務所)以外の弁護士事務所での修習   1週間から2週間
(2) 特殊事件(保全,民事執行,倒産,行政,労働,家事,少年等の事件)についての弁護修習   1週間から2週間
(3) 弁護士として関与すべき専門分野(消費者問題,サラ金・クレジット問題,民事介入暴力,交通事故,子どもの人権,高齢者・障害者問題,犯罪被害者支援など,ほとんどの弁護士会で対応可能な分野)や弁護士会活動,弁護士倫理等に関する修習   1週間以内
   講義・ゼミナールの実施,当該分野における法律相談の立会(弁護士会や担当弁護士事務所等),当該分野での事件処理(担当弁護士事務所等)等を集中的に研修させる。
(4) 法律相談センター,公設事務所(対応する地方裁判所の支部等がある場合には,そこでの修習も含む),あっせん仲裁センター,住宅紛争審査会等の公益的活動の修習   1週間以内
(5) 日本司法支援センター,新聞社,放送局(報道・社会部),銀行協会,商工会議所,民間企業(法務部門),国民生活センター,消費者センター,自治体の法律関係部門等における修習   1週間以内
※ (2)及び(3)については,登録制にしておき,適する時期,事件が判明したとき,弁護士会が修習生に担当弁護士を割りあてるという方法が考えられる。この場合,ほかの個別修習プログラムとの競合があれば,その調整を図るものとする。
4 各配属庁会が共同で提供するプログラム -模擬裁判-   1週間から2週間
   民事事件又は刑事事件の模擬裁判は,実演及び講評を3日間程度で行い,他の期間を模擬裁判の準備期間に充てる。


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