第1 立川修習の全体像
1 東京とは別の実務修習地であること
立川は,東京都内にあるものの,司法修習地の区分では東京と別の実務修習地である。第79期の採用選考資料にも「東京」と「立川」が別々に掲げられており,立川に配属された司法修習生は,東京地方・家庭裁判所立川支部,東京地方検察庁立川支部及び東京三弁護士会多摩支部を中心に分野別実務修習を行う。
最高裁判所の司法修習の概要によれば,分野別実務修習は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野について,それぞれ約2か月ずつ行われる。したがって,立川修習は,単に東京修習の一部を立川で受けるという位置付けではなく,約8か月の分野別実務修習を立川の実務機関で完結させる修習地である。
2 第79期の日程区分と住居
最高裁判所「令和7年度司法修習生採用選考申込手続の手引き」によれば,第79期は令和8年3月19日に採用され,同年4月14日から11月20日まで分野別実務修習を行う。立川は,分野別実務修習後に集合修習を先に行い,選択型実務修習を後に行う組に区分されている。
具体的には,第79期司法修習の日程に掲載した資料によれば,集合修習は令和8年11月24日から令和9年1月8日まで,選択型実務修習は令和9年1月12日から2月25日までである。もっとも,修習日程は変更されることがあるため,配属時に交付される最新の日程表を確認する必要がある。
司法研修所の寮は導入修習及び集合修習のための施設であり,実務修習地における住居は各自で確保する。立川を希望する場合には,配属後の通勤だけでなく,集合修習時の和光市への移動も考慮して住居を選ぶ必要がある。
第2 配属人数と過去の希望倍率
1 第78期までの配属人数
裁判所の司法行政文書として開示された各期の司法修習生配属現員表によれば,立川への配属人数は次のとおりである。新63期から第78期まで,18人ないし24人の範囲で推移している。
| 司法修習期 | 立川の配属人数 |
|---|---|
| 新63期 | 24人 |
| 新64期 | 24人 |
| 新65期 | 23人 |
| 第66期 | 24人 |
| 第67期 | 23人 |
| 第68期 | 23人 |
| 第69期 | 24人 |
| 第70期 | 22人 |
| 第71期 | 20人 |
| 第72期 | 21人 |
| 第73期 | 20人 |
| 第74期 | 23人 |
| 第75期 | 18人 |
| 第76期 | 20人 |
| 第77期 | 24人 |
| 第78期 | 22人 |
各期の原資料は,司法修習生配属現員表(48期以降)に掲載している。令和8年8月15日までに確認できた公開資料では,第79期について立川の配属人数を確定できなかったため,本表は第78期までとしている。
2 新63期から第69期までの希望倍率
次の希望倍率は,第1希望者数又は第1希望者数と第2希望者数の合計を,配属予定人数で除した数値である。倍率は選考結果そのものを示すものではなく,当時の希望状況を示す参考値である。
| 司法修習期 | 第1希望倍率 | 第1希望及び第2希望倍率 |
|---|---|---|
| 新63期 | 4.42倍 | 10.17倍 |
| 新64期 | 4.50倍 | 9.83倍 |
| 新65期 | 3.91倍 | 8.70倍 |
| 第66期 | 3.38倍 | 8.54倍 |
| 第67期 | 4.30倍 | 8.70倍 |
| 第68期 | 2.96倍 | 6.09倍 |
| 第69期 | 3.67倍 | 6.92倍 |
これらの数値は,司法修習の場所を選ぶ際の基礎データに掲載した裁判所開示文書に基づく。新63期から第69期までの歴史資料であり,第79期の希望動向を示すものではない。
3 第70期以降の倍率資料がない理由
平成29年度(最情)答申第1号「実務修習希望地調査表の不開示判断(不存在)に関する件」によれば,希望地調査の集計表は,修習地の決定にほとんど利用されていなかったことなどから,第70期以降は作成又は取得されていない。したがって,第70期以降の倍率が公表されていないことは,倍率が低下したこと又は立川の人気がなくなったことを意味しない。
過去の倍率だけを根拠に,現在の配属可能性を予測することもできない。修習地の希望順位は,就職活動,家族関係,住居費,通勤及び希望する実務経験を総合して決めるべきである。
第3 主な修習先と管轄
1 裁判所
東京地方・家庭裁判所立川支部は,東京都立川市緑町10番4号にあり,多摩都市モノレール高松駅から徒歩5分,JR立川駅北口から徒歩約25分である。立川簡易裁判所及び立川検察審査会も同じ庁舎に置かれている。
東京都内の管轄区域表によれば,立川支部は,多摩地域の26市,3町及び1村を管轄する。裁判員裁判対象事件は東京地方裁判所本庁と立川支部で取り扱う一方,行政事件は本庁だけが取り扱い,支部では取り扱わない。
東京地方裁判所立川支部の担当裁判官一覧によれば,令和8年4月1日現在,地裁立川支部には民事第1部ないし第3部及び刑事第1部ないし第3部がある。平成21年の開庁時には地裁民事4部と説明されていたため,当時の部数を現在の組織として引用してはならない。
2 検察庁
東京地方検察庁立川支部は,東京都立川市緑町6番3号の立川第二法務総合庁舎にある。同支部の交通案内によれば,多摩都市モノレール高松駅から徒歩約5分,JR立川駅から徒歩約20分である。
東京地方検察庁立川支部の管轄は,多摩地域の東京地方・家庭裁判所立川支部の管轄に対応する。東京地方検察庁の管轄には,立川区検察庁のほか,八王子,武蔵野,青梅及び町田の各区検察庁に対応する区域も掲げられている。
3 東京三弁護士会多摩支部
東京三弁護士会多摩支部は,東京弁護士会,第一東京弁護士会及び第二東京弁護士会が共同して多摩地域で活動する拠点である。平成10年4月1日に設置され,司法修習の弁護実務修習は三会の多摩支部が協力して担当する。
多摩支部は,東京都立川市緑町7番1号の立飛ビル8号館2階にあり,多摩都市モノレール高松駅から徒歩3分である。裁判所,検察庁及び弁護士会多摩支部が高松駅周辺に集まっていることは,立川修習の移動面での特徴である。
第4 修習内容と公開された体験記
1 4分野の実務修習
裁判修習では,法廷傍聴,係属事件の記録検討,裁判官との意見交換及び起案の講評などが行われる。検察修習では,捜査,取調べ,起訴又は不起訴の処分意見及び公判立会などを学び,弁護修習では,法律相談,法廷への立会い,法律文書の起案及び弁護士会活動などを体験する。
この基本構造は全国共通であるが,具体的な事件,見学先,選択型実務修習のプログラム及び指導方法は,期,班,指導担当者及び事件状況によって変わる。公開された体験記は,制度の固定的な説明ではなく,特定の期の一例として読む必要がある。
2 第1期生の体験
東京弁護士会『LIBRA』平成30年5月号12頁~13頁の座談会では,立川修習第1期生が,当時の修習生は24人であり,裁判修習では1部当たり2人,検察修習では6人が同じ部屋で執務したと述べている。また,実務家との距離が近く,同期の半分ほどが多摩地域で弁護士をしているという趣旨の体験が語られている。
もっとも,これは平成21年11月に始まった第1期の体験である。令和8年4月1日現在の地裁立川支部は民事3部及び刑事3部であるから,「各部に2人」という第1期の配属方法を現在の運用として紹介することはできない。
3 第76期及び第78期の体験
第76期の立川修習体験記では,20人の修習生が5人ずつの4班に分かれて4分野を回ったこと,事件記録を十分に検討する機会があったこと及び多摩地域の実務家との交流が紹介されている。これは第76期の配属現員表にある20人と一致する。
第78期の立川修習体験記では,22人が各班おおむね6人で4分野を回ったこと,裁判員裁判,模擬裁判及び起案の講評を経験したこと,多摩支部の行事や見学に参加したことなどが紹介されている。選択型実務修習として民間企業での修習例も述べられているが,個人が選択又は開拓したプログラムの例であり,全員に同じ機会が保障されるものではない。
4 多摩支部を知るための連載
東京弁護士会『LIBRA』の連載「多摩支部ってどんなとこ?」は,全3回である。第1回は令和3年5月号30頁~31頁,第2回「多摩はよいとこ一度はおいで」は令和4年1・2月合併号40頁~41頁,第3回「多摩地区の法律相談センター」は令和4年4月号40頁~41頁に掲載されている。
第1回は多摩支部の組織及び立川支部の事件規模,第2回は多摩地域での生活,第3回は法律相談センターを扱っている。立川修習の直接的な運用資料ではないが,多摩地域の弁護士会活動及び生活環境を知るための補助資料となる。
第5 立川支部と立川修習の沿革
1 多摩地域から立川修習までの経過
立川修習の成立過程は,多摩地域の東京府編入,立川市の成立,弁護士会多摩支部の設置及び裁判所の移転という流れの中に位置付けることができる。主要な経過は次のとおりである。
| 年月日 | 出来事 |
|---|---|
| 明治26年4月1日 | 西多摩郡,南多摩郡及び北多摩郡が神奈川県から東京府へ移管された。 |
| 昭和15年12月1日 | 立川町が市制を施行し,立川市となった。 |
| 昭和24年 | 多摩地域の弁護士による任意団体の三多摩弁護士クラブが発足した。 |
| 平成10年4月1日 | 東京三弁護士会が多摩支部を設置した。 |
| 平成21年4月20日 | 東京地方・家庭裁判所八王子支部が立川市へ移転し,立川支部へ改称して開庁した。 |
| 平成21年11月27日 | 24人の司法修習生を迎え,立川での実務修習が始まった。 |
国立公文書館「三多摩を東京府に編入」は,明治26年の移管の経緯と法律を紹介している。また,立川市の概要は市制施行日を,東京三弁護士会多摩支部の沿革は平成10年の支部設置をそれぞれ確認できる。
2 八王子支部の移転と事件規模
東京地方裁判所委員会の平成21年7月10日付け議事概要2頁~3頁によれば,旧八王子支部庁舎は,多摩地域の事件増加に伴う増改築で複雑かつ手狭となり,老朽化も進んだため,立川市へ移転した。新庁舎は平成19年11月に着工し,平成21年2月に完成した後,同年4月4日から19日まで移転作業を行い,同月20日に開庁した。
同議事概要に記載された民事・刑事・家事・少年事件の全国順位及び部数は,平成21年当時の統計と組織である。平成25年2月20日の東京地方裁判所委員会では,オブザーバー弁護士から,管轄人口が400万人を超え,当時の民事・刑事事件数が本庁を含め全国10位以内に入る規模であり,支部で独立して司法修習を行う点に特色があるとの説明がされたが,これも同日時点の説明である。
したがって,「全国で唯一の支部修習地である」又は「現在も全国10位以内である」といった現在形の断定はしない。現在確認できる事実は,第79期の資料でも立川が東京とは別の実務修習地として存続していること,立川支部が多摩地域の広い管轄を有すること及び裁判員裁判を取り扱うことである。
3 裁判所支部の法的位置付け
最高裁昭和44年3月25日第三小法廷決定・昭和44年(し)第3号・刑集23巻3号212頁は,地方裁判所の支部は地方裁判所の事務の一部を取り扱うために設けられ,原則として独立の司法行政権を有せず,司法行政官庁としての本庁に包摂されると判示した。また,支部の権限及び管轄区域は,地方裁判所内部の事務分配の基準であるとした。
立川が独立した実務修習地として扱われることと,東京地方裁判所立川支部が東京地方裁判所本庁とは別個の司法行政官庁であることは,同じではない。この区別は,立川修習の運用上の独立性と裁判所支部の法的性質を混同しないために重要である。
第6 交通及び生活上の確認事項
1 高松駅周辺の三機関
主な修習先の所在地及び公表された徒歩時間は,次のとおりである。いずれも令和8年8月15日に各機関の公式ウェブサイトで確認した。
| 機関 | 所在地 | 公表された主なアクセス |
|---|---|---|
| 東京地方・家庭裁判所立川支部 | 立川市緑町10番4号 | 高松駅から徒歩5分,JR立川駅北口から徒歩約25分 |
| 東京地方検察庁立川支部 | 立川市緑町6番3号 | 高松駅から徒歩約5分,JR立川駅から徒歩約20分 |
| 東京三弁護士会多摩支部 | 立川市緑町7番1号 | 高松駅から徒歩3分 |
裁判所は駐車台数が限られるため,公式案内では公共交通機関の利用を求めている。多摩支部には来訪者用の駐車場がないため,日常の移動は徒歩又は公共交通機関を前提に考えるのが安全である。
2 体験談と現在の生活情報を区別すること
体験記にある飲食店,交流行事,見学先及び班の運用は,修習生活を具体的に知る手掛かりになる一方,店舗の営業状況や修習プログラムは変わり得る。住居,交通費,通勤時間及び日々の集合場所については,体験記だけで決めず,配属通知,担当機関の案内及び最新の交通情報で確認する必要がある。
立川修習の比較的安定した特徴は,少人数で推移してきたこと,裁判所,検察庁及び弁護士会多摩支部が高松駅周辺に集まること,多摩地域全体を対象とする実務に接することにある。個々の体験談にある親密さ,事件量又は行事の充実度は,その期の経験として評価すべきであり,将来の修習内容を保証するものではない。
第7 出典・参考資料
1 司法修習及び配属データ
① 最高裁判所「司法修習の概要」
② 最高裁判所「令和7年度司法修習生採用選考申込手続の手引き」2頁~3頁
③ 山中弁護士ブログ「第79期司法修習の日程」(令和7年11月2日公開,令和8年1月27日更新)
④ 山中弁護士ブログ「司法修習生配属現員表(48期以降)」及び同記事掲載の各期配属現員表
⑤ 山中弁護士ブログ「司法修習の場所を選ぶ際の基礎データ」及び同記事掲載の希望地調査一覧表
⑥ 情報公開・個人情報保護審査委員会「平成29年度(最情)答申第1号・実務修習希望地調査表の不開示判断(不存在)に関する件」2頁~3頁
2 裁判所及び裁判例
① 東京地方裁判所「東京地方裁判所立川支部・立川簡易裁判所」
② 裁判所「東京都内の管轄区域表」
③ 東京地方裁判所「東京地方裁判所立川支部担当裁判官一覧」(令和8年4月1日現在)
④ 東京地方裁判所委員会事務局「東京地方裁判所委員会(第19回)議事概要」(平成21年7月10日開催)2頁~3頁
⑤ 東京地方裁判所委員会事務局「東京地方裁判所委員会(第29回)議事概要」(平成25年2月20日開催)4頁~5頁
⑥ 裁判所「裁判例検索」掲載の最高裁昭和44年3月25日第三小法廷決定・昭和44年(し)第3号・刑集23巻3号212頁「事件を回付する決定に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件」
⑦ 有斐閣Online「最決昭和44年3月25日・刑集23巻3号212頁」
3 検察庁及び弁護士会
① 東京地方検察庁「東京地方検察庁立川支部・立川区検察庁等の交通案内」
② 東京地方検察庁「管轄」
③ 東京三弁護士会多摩支部「多摩支部について」及び「アクセス」
④ 東京弁護士会『LIBRA』平成21年11月号「担当業務の中間報告」19頁
⑤ 東京弁護士会『LIBRA』平成30年5月号「ご存知ですか?多摩支部20周年」4頁,12頁~13頁
⑥ 東京弁護士会『LIBRA』令和3年5月号「多摩支部ってどんなとこ?第1回」30頁~31頁
⑦ 東京弁護士会『LIBRA』令和4年1・2月合併号「多摩支部ってどんなとこ?第2回」40頁~41頁
⑧ 東京弁護士会『LIBRA』令和4年4月号「多摩支部ってどんなとこ?第3回」40頁~41頁
4 沿革資料
① 国立公文書館「三多摩を東京府に編入」
② 立川市「立川市の概要」
③ 東京三弁護士会多摩支部「多摩支部設立25周年記念式典支部長挨拶」(令和5年4月1日)
5 修習体験記
① 早稲田大学法務教育研究センター「司法修習ナビ第7回・立川修習」(令和5年11月6日)
② 早稲田大学法務教育研究センター「司法修習ナビ第20回・立川修習」(令和7年11月6日)