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検察修習の実際-捜査修習・終局処分起案と取調べ修習の適法性(AI作成)

検事を志望する司法修習生向けの採用手続と過去の提出書類・日程は,検事採用までの日程と手続を参照されたい。検察修習の履修と,検事としての採用は別の事項である。

検察修習の歴史的な体験像については,第53期司法修習生の体験記『司法修習生が見た裁判のウラ側』(現代人文社,2001年)を基にした司法修習生が見た裁判・検察・弁護の現場―第53期の体験記から現在の司法修習を考える(AI作成)も参照されたい。同書に記された事件配点,取調べ,供述調書作成及び検事任官選考の体験は,1999年から2000年当時のものであり,本記事が扱う法令・公式資料及び現在の制度とは区別して読む必要がある。

第1 検察修習の対象と検討の時点

検察修習は,司法修習(裁判所法66条以下)のうち,分野別実務修習の4分野(民事裁判・刑事裁判・検察・弁護)の一つとして,実務修習地の地方検察庁に配属されて行われる修習である。裁判所ホームページは,検察修習の内容を「証拠収集,被疑者や参考人に対する取調べなどの捜査について学び,体験し,起訴・不起訴の処分について意見を述べたり,検察官の公判立会を傍聴したりします」と説明している。本稿は,令和8年8月時点(第79期)の制度を対象に,検察修習で実際に何が行われるか,及び検察修習に固有の最大の論点である取調べ修習(司法修習生が指導検察官の下で被疑者・参考人に対する発問を体験する修習)の適法性について,法令,裁判所公式資料,国会会議録及び司法修習に関する書籍に基づいて整理する。個別の修習地ごとの配属人数や日程は本稿の対象としない。

第2 検察修習の法的根拠と期間の推移

1 裁判所法及び規則の定め

司法修習生の採用については,裁判所法66条が定めている。
同法67条1項は,少なくとも1年間修習をした後,試験に合格したときに修習を終える旨を定め,同条2項は,修習期間中,最高裁判所の定めるところにより修習に専念しなければならないと定める(修習専念義務)。

司法修習生の身分と修習専念義務は,区別して説明する必要がある。
裁判所の司法修習生の説明は,司法修習生が国家公務員ではなく,これに準じた身分にあるものとして取り扱われること,兼業・兼職の禁止,修習専念義務及び守秘義務を説明している。
修習専念義務の規定から,検察官又は検察事務官としての身分や取調べ権限が生じるわけではない。

修習の具体的な種類・期間は,最高裁判所規則である司法修習生に関する規則(昭和23年8月18日最高裁判所規則第15号)に委任されている(裁判所法67条3項)。同規則5条は,実務修習の期間のうち「少なくとも,四箇月は裁判所で,二箇月は検察庁で,二箇月は弁護士会で」修習しなければならないと定めており,このうち裁判所4か月分は,運用上,民事裁判修習2か月と刑事裁判修習2か月に分けられている。実務修習は,同規則7条により,司法研修所長が地方裁判所,地方検察庁又は弁護士会に委託して行われる。

2 期間の推移-4か月から2か月へ

検察修習の期間は,一貫して短縮されてきた。最高裁判所が公表している規則改正案要綱によれば,平成18年4月1日施行の司法修習生に関する規則の改正により,実務修習の期間配分は「六箇月は裁判所で,三箇月は検察庁で,三箇月は弁護士会で」(改正前)から「四箇月は裁判所で,二箇月は検察庁で,二箇月は弁護士会で」(改正後)へ変更された。この改正は,法科大学院制度の発足に伴い司法修習の期間を1年6月から1年へ短縮する改正(平成14年法律第138号,施行日は平成18年4月1日)と同時に行われたものである。

改正前の「三箇月」という期間は,平成11年施行の司法修習期間短縮(2年から1年6月へ)に対応するものであり,それ以前,52期までの検察修習は4か月であった。この点は,杉浦正健衆議院議員(元法務大臣)が国会審議で「私どものころは検察修習というのが四カ月ありました」と述べていることからも裏付けられる。以上を整理すると,検察修習の期間は,52期までが4か月,53期から59期までが3か月,60期以降の現行制度が2か月,という推移をたどってきたことになる。修習期間の短縮をめぐっては,平成10年の国会審議で,当時最高裁が主張していた1年制修習案が実現すれば検察修習が15日ずつの「検察見学」になりかねないとの懸念が示されたこともあったが,その後も期間短縮の流れは変わらず,現行の2か月制が定着している。

第3 捜査修習の実際

1 事件配点とチーム修習

検察修習は,起訴前段階を扱う捜査修習と,起訴後の公判活動を学ぶ公判修習に分かれ,中心となるのは捜査修習である。
修習生には実際の事件が配点され,在宅事件(被疑者の身柄を拘束していない事件)が中心となるが,身柄事件を必ず1件担当させる実務修習地がある一方,身柄事件の担当を希望者のみに絞る実務修習地もあるなど,修習地による差がある。
東京地方検察庁における60期(平成19年度)の実務修習では,捜査で在宅事件2件・身柄事件1件を修習生3人1組のチームで担当する運用が取られていた。

この東京の例は平成19年度当時の運用であり,現在も3人1組又は同じ件数であることを示すものではない。
現在の組合せ,事件数,身柄事件の担当及び提出期限は,当該期の配属庁からの案内と指導係検察官の指示で確認する必要がある。

(1) 検察修習は必ずペアで行うか

本記事の過去の実施例だけから,現在の検察修習が必ず2人1組であるとはいえない。
チームの有無,人数及び事件の担当方法は,当該期・配属庁の運用として確認する必要がある。

(2) 東京の検察修習の場所は霞が関か

東京地検の本庁は霞が関にあるが,総務部司法修習課は九段庁舎に置かれている。
本庁の住所を自分の全修習日程の集合場所と取り違えず,指定された庁舎,部,集合時刻及び移動予定を確認する。
東京の所在地と住居の検討は,東京修習の情報を参照されたい。

2 補充捜査の指示

裁判所の司法修習の概要は,検察修習について,指導係検事等の下で実際の事件を担当し,証拠収集,被疑者や参考人の取調べなどを学び,体験すると説明している。
記録の不足や矛盾を見つけたときは,何を確かめる必要があるか,どの証拠を補充するかを指導担当検察官に相談して検討することが,修習で学ぶ重要な作業となる。
修習生が独立した捜査権限に基づいて警察官へ指示できると理解するのは適切でない。

記録検討を弁護活動に応用する場合には,検察官側の捜査上の権限と弁護士の資料取得手段を区別する必要がある。
要証事実,既存証拠の限界,矛盾する証拠,不足資料の所在,取得方法及び保存期限を整理する実務上の工夫については,検察終局処分起案の考え方を参照されたい。

3 終局処分起案と決裁

捜査を踏まえ,修習生は起訴又は不起訴の処分と,その判断に至る思考過程を検討する。
司法研修所検察教官室の検察終局処分起案の考え方(当ブログ掲載の令和6年版,本文5頁・6頁)は,①犯人性,②犯罪の成否等,③情状関係及び求刑意見を基本的な論述順序としている。
同版の本文2頁・3頁は,客観証拠の射程を見極めること,供述証拠の信用性を慎重に吟味すること,アリバイ等の消極証拠を無視又は軽視しないことを説明している。

令和6年版の「はしがき」は,令和元年版からの改訂として,犯人性の検討対象事実の認定とその過程の論述,客観的証拠がない場合の供述証拠の吟味に関する記述を補充したと説明している。
以前の説明が参照していた令和元年版と,現在リンク先で掲載している令和6年版は区別する必要がある。
令和6年版は当ブログで確認できる掲載版のうち最新版であり,現在の内部教材の最新版又は当該期の配布版とまでは断定できない。
教材が示す起案の論述事項・順序と実務の決裁資料には異なる点があり,個別の起案では配布された起案要領を確認することになる(同版本文1頁・5頁)。

修習生が作成した終局処分起案は,複数のベテラン検察官による決裁を経る。実務家の体験記でも,次席検察官等からの決裁を得る過程が検察修習で最も難しい局面の一つとして語られている。終局処分起案の実際の課題文や実施要領,各地の検察庁における決裁区分の詳細については,当ブログの別稿「全国一斉検察起案」及び「各地の検察庁の執務規程」で扱っているので,そちらを参照されたい。

第4 公判修習その他の体験

検察修習は,指導係検事講義,検事正講話,次席検事講話等の講義・講話から始まるのが通例であり,本格的な取調べ実務に入る前には模擬取調べ演習が行われる。公判修習では,検察官の公判立会を傍聴し,公判活動の実際を学ぶ。このほか,実務修習地によっては,警察の通信指令・交通管制センターや刑務所の見学,希望者を対象とした司法解剖の見学等が行われており,実務修習地ごとに体験の内容には幅がある。

第5 取調べ修習をめぐる適法性論争

1 法律上の根拠の不存在と昭和30年代の論争

刑事訴訟法198条1項は被疑者の取調べを,同法223条1項は参考人等の被疑者以外の者の取調べを定めており,両項が挙げる主体は検察官,検察事務官又は司法警察職員である。
司法修習生は,これらの条文が挙げる取調べの主体に含まれていない。
両条には,司法修習生自身に取調べ権限を与える規定はなく,この問題は司法研修所発足当初から議論の対象とされてきた。昭和30年代には,修習生自身から,権限のない修習生が取調べを行うことは刑事訴訟法198条及び憲法31条(法定手続の保障)に違反し,修習のための取調べは被疑者の人格権(憲法13条)を侵害するとの批判が示され,実際に取調修習を拒否する修習生も存在した。これに対し,当時の司法研修所長(安倍恕,相島一之)は,修習生が修習の目的で検察官の厳重な監督の下に取調べに先立って事情を聴取することまでは法が禁止していないとの立場を示した。

2 相島六原則

司法研修所事務局長であった相島一之は,昭和38年10月29日,同年度司法修習指導担当者協議会において,取調べ修習の運用指針として次の6原則を示した。

  • ①指導検察官が,あらかじめ個々の事件ごとに,事件の概要,問題点,発問の要領等を説明指導すること。
  • ②被疑者又は参考人の呼出しは,指導検察官の責任で,かつ,その名において行い,修習の目的とした捜査上不必要な呼出しをしないこと。
  • ③指導検察官から,被疑者又は参考人に対し司法修習生の身分を説明し,検察官の取調べに先立って司法修習生が発問を行うことを告げ,その自由な意思に基づく承諾を得た場合に限って行うこと。
  • ④指導検察官から被疑者に対し,あらかじめ供述拒否権の告知をすること。
  • ⑤司法修習生が発問するに当たっては,指導検察官が同室し,十分な指導監督を行うこと。
  • ⑥司法修習生が発問の結果作成した書面を,そのまま検察官調書として流用することなく,指導検察官が改めて取調べを行い,供述調書を作成すること。

相島六原則の骨子は,修習生の発問はあくまで指導検察官の取調べに先立つ事前的なものにとどめ,法的に意味を持つ供述調書は指導検察官が改めて作成することで,修習生を取調べの主体としないという構成にある。

3 最高裁判所の公式見解(昭和52年国会答弁)

相島六原則に基づく取調べ修習の位置づけについて,最高裁判所は国会審議でも見解を示している。昭和52年3月15日の衆議院法務委員会において,矢口洪一・最高裁判所事務総局総務局長事務取扱(後の最高裁判所長官)は,次のように述べた。

「相島六原則というのにのっとりまして,一人前の指導検事が取り調べをするのを,率直に申し上げれば,事実上補助するということでございまして」

すなわち,最高裁判所(司法研修所)の公式の立場は,取調べ修習における修習生を,法的には指導検察官の取調べを事実上補助する立場にすぎないと位置づけるものであり,これが取調べ修習を適法とする実務運用の基礎になっていると解される。

4 昭和46年司法修習生任官拒否問題との関連

取調べ修習をめぐる論争は,昭和46年(1971年)の23期司法修習生任官拒否問題とも関わりを持つ。同年,任官を希望した23期修習生のうち7名が任官を拒否され,同時に修習生1名(阪口徳雄)が司法研修所終了式における言動を理由に罷免される事態が生じた。この問題について東京弁護士会が独自に行った事情調査の結果を,同会司法制度臨時措置委員会委員長・井上峯亀弁護士が参議院法務委員会の参考人質疑(昭和46年5月20日)で証言している。

「その調査した事実の結果は,要するに,任官を拒否された七名はそれぞれ青法協の会員であり,あるいは分離修習,任官差別を許さぬ会の会員として積極的に活動しておると,それから検察の取り調べ修習を拒否したという事実もあります。」

この証言によれば,任官を拒否された修習生の一部が検察修習における取調べ修習を拒否していたことが,思想・団体加入と並んで,最高裁判所の統制に服さない者としての徴表の一つとして扱われた可能性がある。この事実は,最高裁判所事務総局人事局長(当時)矢口洪一自身の答弁には現れておらず,東京弁護士会側の参考人証言によって国会会議録上に残されたものである。任官拒否の決定的な理由が取調べ修習の拒否にあったとまでは会議録から断定できないが,取調べ修習の適法性論争が,制度論にとどまらず,現実の任官選考にまで影響し得る性質のものであったことをうかがわせる事実である。

昭和46年の任官拒否を含む,昭和44年以降のいわゆる「司法の危機」の経過は,ブルーパージとは―昭和44年からの青法協会員裁判官への脱会勧告・再任拒否と「司法の危機」の全体像で整理している。

5 六原則の実施状況と現在の課題

相島六原則が発表された当時から,その実施状況には検察庁ごとのばらつきがあった。昭和45年に公刊された司法修習をめぐる論考は,六原則について「いまなお必ずしも満足させるものではない」と評しており,「ほとんどの検察庁は,修習生に検事の取調べをまったく傍聴させないか,させてもわずかな機会しか与えない」という実情を紹介している。

現代の修習生からも,取調べ修習の運用をめぐる指摘がある。修習生の体験談を集めた書籍では,検察修習の大部屋には衝立がなく,修習生が同時に取調べを行うと被疑者同士が互いの顔を見たり話を聞いたりできてしまう状況や,性犯罪関連の事件も扱うにもかかわらずプライバシーへの配慮が乏しいとの指摘が紹介されている。また,法定刑の軽い事件でも一律に勾留請求が行われ,身柄不拘束捜査を原則とする刑事訴訟法の建前と実務運用が逆転しているとの疑問も示されている。

刑事訴訟法301条の2第4項は,同条1項各号の事件について,逮捕又は勾留されている被疑者の取調べ等を録音・録画する義務を定めている。
同項には例外があり,すべての事件又はすべての参考人の取調べを一律に義務の対象とする規定ではない。

相島六原則⑥の調書作成に関する説明から,修習生が発問した部分が録音・録画の対象外になると結論付けることはできない。
個別の取調べ修習と同項の適用関係は,事件類型,身体拘束の有無,実際の取調べの経過及び適用される例外を踏まえて検討する必要がある。
六原則が示された歴史的経緯と,現在の録音・録画制度の適用は分けて考える必要がある。
制度の対象と弁護活動での記録の扱いについては,警察及び検察の取調べ-録音録画・苦情申入れ・検面調書・黙秘権を参照されたい。

第6 検察官任官と検察修習の関係

検察修習は,検事志望者以外の修習生にも共通して課される修習であると同時に,検察官任官者を確保する実務的な機能も併せ持つ。法務省は,検察修習を通じて「検事の職務内容や生身の検事の姿を知ることができ」るとし,修習期間中の12月ころに検事採用面接が実施される旨を公表している。検事任官者確保の観点から検察修習の意義を語った国会答弁も存在する。昭和62年8月27日の参議院法務委員会において,根來泰周・法務省大臣官房長は,次のように述べている。

「基本的には検察修習を通じて修習生に検察の仕事のやりがいとか社会的意義を感得させて,みずから検察に身を投じて社会正義のために働こうとする意欲を植えつけることしかないんじゃないかというふうに考えております。」

検事採用に至る選考過程の詳細,検察修習中の成績評価が採用にどう影響するかについては,当ブログの別稿「検事の採用面接と採用願―過去の志望者数と公式説明」で扱っている。

検察修習を含む司法修習全体の構成については,「司法修習とは―採用要件,1年間の流れ,修習内容,給付金及び二回試験」を参照されたい。

検察修習を含む分野別実務修習全体の共通構造(法的根拠,各分野の指導ガイドラインの発出主体の違い,実務修習地等)については,「実務修習とは―規則上の位置付け,分野別実務修習の4分野及び選択型実務修習との関係」に整理している。

出典

法令

裁判所・法務省公式資料

国会会議録(国立国会図書館 国会会議録検索システム)

文献

  • 伊藤建・國富さとみ著,西田陽子画『司法試験に受かったら 司法修習って何だろう?』現代人文社,2016年,173頁~185頁
  • 21世紀の司法修習を見つける会編『修習生って何だろう 司法試験に受かったら』現代人文社,2012年,139頁
  • 『岐路にたつ司法修習』日本評論社,1970年,82頁,109頁~112頁
  • 「司法の現実に驚いた修習生の会」編『司法修習生が見た裁判のウラ側-修習生もびっくり!司法の現場から-』現代人文社,2013年,87頁~91頁,175頁~180頁
  • 司法研修所検察教官室「検察終局処分起案の考え方」(令和元年版,最高裁判所司法行政文書開示資料)3頁~8頁