検事採用願を提出した検事志望の司法修習生は二回試験に落ちない限り採用されると思われること


目次
1 検事任官者数の推移
2 検事の採用面接の位置付け
3 検察教官室の推薦に関する匿名ブログの記載,及び公式説明
4 初任行政研修「事務次官講話」における発言
5 関連記事その他
   
1 検事任官者数の推移
・ 検事任官者数の推移は以下のとおりです。
50期:73人,51期:72人,52期:69人,53期:74人,54期:76人
55期:75人,56期:75人,57期:77人,58期:96人,59期:87人
現行60期:71人,新60期:42人(合計113人)
現行61期:20人,新61期:73人(合計93人)
現行62期:11人,新62期:67人(合計78人)
現行63期:4人,新63期:66人(合計70人)
現行64期:1人,新64期:70人(合計71人)
65期:72人,66期:82人,67期:74人,68期:76人,69期:70人
70期:67人,71期:69人,72期:65人,73期:66人,74期:72人
75期:71人,76期:76人,


2 検事の採用面接の位置付け
(1)ア 集合修習時における65期の検事志望者数は2人+39人+31人=72人,66期の検事志望者数は39人+44人=83人,67期の検事志望者数は 43人+32人=75人,68期の検事志望者数は33人+43人=76人です。
   そのため,65期ないし68期でいえば,集合修習時に検事を志望していたにもかかわらず,結果として検事になれなかった司法修習生は66期に1人,67期に1人いるだけです。
   そして,66期及び67期で検事になれなかった司法修習生は二回試験に不合格となったことが原因であると思われることからすれば,検事採用願を提出した検事志望の司法修習生は二回試験に落ちない限り採用されると思われます。
イ 69期以降の司法修習生については,司法修習生組別志望等調査は実施されていません(平成29年度(最情)答申第3号(平成29年4月28日答申)参照)。
(2) 平成30年度(行情)答申第222号(平成30年9月12日答申)には,以上のデータと異なる公式説明として,以下の記載があります。
   審査請求人は,検事採用願を提出した司法修習生は,その後の考試に不合格とならない限り検事に採用されることが事実上決まっている以上,被面接者においてそもそも特別な対応策を採る必要はない旨主張するが,この点につき,諮問庁は,法務省においては,検事への採用に当たり,採用願を提出した検事志望の司法修習生に対して面接選考を行い,その採否を決している旨説明し,この説明を覆すに足りる事情は認められないから,審査請求人の上記の主張は,前提において採用できない。
(3) 日弁連HPに載ってある「森山法務大臣に対する検察官任命に関する要望書」(平成13年9月11日付)には以下の記載があります。
   現在の検察官の任命の基本的な制度・方法は、任命の基準も各期毎の全体の任命の予定人員数も明らかにされないまま、司法研修所検察教官室という密室の中で、主としてクラスの担任の検察教官の個人的評価に依存して採否が決められる制度・方法がとられている。クラスの担任の検察教官が採用推薦をしない司法修習生に対しては、種々の方法で「採用が難しい」旨が伝えられ、「自発的な辞退・志望の変更」が求められ、採用願いの志望書類を渡さないため、結果的に最終的な志望者数と採用者数は一致し、採用試験等は行われず、表向きは、任命拒否者・不採用者は表れない運用のしくみになっている。
   このような任命の制度・方法がとられている結果、司法修習生の間では、「検察官を志望するならば、司法研修所入所の当初から、クラス担任の検察教官に、目立つように強くアピールし、売り込む必要がある」「検察教官に嫌われたら、検察官にはなれない」等々の「検察官への進路情報」が伝えられており、成績や適性とは別の要素によって、検察官の採否が決められているのではないか、という疑問の声が出されている。


3 検察教官室の推薦に関する匿名ブログの記載,及び公式説明
(1) 検察教官室の推薦をもらえなかった司法修習生は,検察教官に対して検事採用願を提出できないことになっているのかも知れません。
(2)ア 司法修習備忘録ブログ「導入修習6日目」(平成27年12月9日付)には,69期導入修習時の検察ガイダンスで以下の趣旨の説明があったと書いてあります。
・採用数は大体毎年70名程度
・検察修習での成績を最重要視する
・次に検察起案、刑裁起案、民裁起案の順で考慮する。
・各地各クールの検察修習1位と大規模庁の優秀者だけでも250人近くいるので、結局、決め手になるのは加点要素。
・司法試験の受験回数や順位も加点要素。
・年齢は、おおむね30歳を超えていれば減点要素。
・7月中旬までに、検察教官に対し志願表明をする。これを受けて、教官会議で被推薦者を決定する。
・全クラスの志願者データを持ち寄って検討するので、クラス割当枠はない。女性枠もない。
・被推薦者は、事実上の内定。その後一応、12月上旬に法務省で面接を受ける。
・どれほど優秀であっても、アピールしない者に対して声をかけるようなことは無い。
イ 個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって,おしなべて,閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限りません(最高裁平成22年3月15日決定参照)。
(3) 平成28年度(行情)答申第755号(平成29年2月27日答申)には以下の記載があるのであって,検察教官室の推薦なるものは公式説明では存在しないことになっています。
    一般に,司法修習生からの検事への採用に当たっては,法務省において,採用願いを提出した検事志望の司法修習生に対して面接選考を行い,その採否を決しているところ,審査請求人が述べる検事志望の司法修習生に対する「推薦」行為は行われておらず,法務省として「推薦」なるものに関与していない


4 初任行政研修「事務次官講話」における発言
(1) 平成21年度初任行政研修「事務次官講話」「国家がなすべきことと民間とのコラボレーション-裁判員制度からの示唆-」と題する講演(平成21年5月26日実施)において,小津博司法務事務次官は以下の発言をしています。
    私は今の立場で、採用される検事の皆さんについては、短い時間ですけれども、全員面接しているのですが、動機を聞くと八割ぐらいの人がそういう言い方をするのです。三つやってみたら検事が一番おもしろいと思いますと。これが一番オーソドックスな普通の答えであり、私もその答えであるわけです。
(2) 平成24年度初任行政研修「事務次官講話」「明日の行政を担う皆さんへ」と題する講演(平成24年5月15日実施)において,西川克行法務事務次官は以下の発言をしています(リンク先のPDF12頁)。
    私は大阪地検で新任検事になりました。当時、新任検事というのは十人いて五人・五人に分けられて、その上に副部長という、簡単にいうと鬼軍曹ですね、この副部長が一人ずつ付くという、こういう体制でした。毎日毎日、私を含めた五人は、とても恐ろしい頭のてっぺんから声が出るような決裁官の副部長が担当でした。ああ、すごいところに入ったなというふうに思いました。通過儀礼です。この上司、全国的にも極めて有名な人でございましたけれども、た終わるとしょっちゅう麻雀に誘ってくれて優しく接してくれました。本人なりに償っていたんだろうと思います。
    残念なことに、この十人の新任検事のうちから一人だけ自殺者が出ました。五人・五人に分けられた恐ろしいほうの我々の班ではなく、我々から見ると神様のように優しい副部長の班から一人自殺者が出て、我々五人のほうは、俺達の方がよっぽど死にたいよみたいな話をずっとしていました。今考えると、仲間がいて上司の悪口が言い合えたというのは、最初のころを切り抜けた理由の一つだったと思います。

5 関連記事
その他
(1) 平成31年4月16日付の理由説明書によれば,司法研修所の検察教官は,司法修習生に対し,検事として採用されるためには法律事務所又は弁護士法人の内定を得ておくことが有益であるというような指導はしていません。
(2) カッターナイフで同僚の男性弁護士に切り付けたとして,神奈川県警相模原署は平成29年9月16日,傷害の疑いで弁護士の◯◯◯◯容疑者を現行犯逮捕しました(弁護士自治を考える会ブログの「元検事の女性弁護士逮捕 カッターで同僚切り付けた疑い」参照)。
(3) 副検事になるための法律講座ブログには例えば,以下の記事があります。
・ 検察官記章
・ 検察事務官の副検事志望
・ 偉い副検事
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 司法修習生の組別(クラス別)志望状況
・ 69期以降の司法修習生組別志望等調査表は存在しないこと
・ 司法修習生の検事採用までの日程
→ 「検事への採用希望時の書類」(例えば,検事採用願)及び「検事志望者に対する面接選考の実施に関する文書」も掲載しています。
・ 現行60期以降の,検事任官者に関する法務省のプレスリリース
・ 53期まで存在していたかもしれない,新任検事の採用における女性枠
・ 集合修習時志望者数(A班及びB班の合計数)と現実の判事補採用人数の推移

72期新任検事に対する採用内定メール

70期新任検事辞令交付式終了後の集合写真


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