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検察終局処分起案の考え方-令和6年版の改訂点と起案の構成(AIリライト)

第1 資料の位置付け

1 作成主体と目的

「検察終局処分起案の考え方」は,司法研修所検察教官室が司法修習生向けに作成した研修教材である。
捜査終了時に検察官が終局処分を行う際の思考過程を分析し,司法修習生がその考え方を修得するための一助とすることを目的としている。

本資料は,法令又は裁判例ではなく,検察官の公式な処分基準を示す文書でもない。
司法修習における終局処分起案の論述方法を説明した教材として利用する必要がある。

2 実務の決裁資料との違い

令和6年版は,教材が示す論述事項及びその順序について,検察実務における決裁資料とは異なる点があると明記している。
したがって,本資料の構成を,検察官が実際の事件で作成する決裁資料の書式と同一視することはできない。

第2 当ブログで掲載している版

1 令和6年版

当ブログで現在掲載している最新版は,検察終局処分起案の考え方(令和6年版)である。
全80頁であり,令和5年秋付けの「はしがき」は,令和元年版の基本的な考え方を維持しつつ,主に2点を補充又は改訂したと説明している。

2 令和元年版・平成28年版・平成24年版

過去版として,令和元年版,平成28年版及び平成24年版を掲載している。
頁数は,令和元年版が75頁,平成28年版が60頁,平成24年版が57頁である。

令和元年版の「はしがき」は,平成28年版からの主な改訂として,供述証拠も事実認定で重要であることの明記,犯人性検討の最後に置く総合評価及び共犯事件の論述に関する補充を挙げている。
平成28年版及び平成24年版は,当時の教材構成を確認するための過去版として掲載するものであり,本記事では両版の詳細な差分まで扱わない。

検察終局処分起案の考え方(令和元年版)の表紙

第3 令和6年版の主な改訂点

1 犯人性の検討対象事実

第1の改訂点は,犯人性検討の冒頭で「犯人性の検討対象事実」を認定することを明記し,その認定過程と記載例を補充したことである。
発生した事件の真犯人であるかを検討するには,まず,どの事件が犯人性検討の対象になるのかを証拠によって具体的に認定する必要があるという整理である。

令和6年版は,結論だけでなく,どの証拠に基づいて検討対象事実を認定したかという思考過程も論述するよう説明している。
この点が,令和元年版からの改訂として明示された。

2 客観証拠がない場合の事実認定

第2の改訂点は,犯罪の成否等の認定において,証拠評価の動かない客観的な証拠を柱とすることを基本としつつ,客観的証拠がない場合にも供述証拠の信用性を吟味して事実認定を行うべきことを明記したことである。
客観証拠が存在しないという理由だけで,直ちに事実認定ができないとするものではない。

もっとも,供述証拠には誤り又は虚偽が入り込む可能性がある。
令和6年版は,供述内容,他の証拠との整合性,供述過程及び供述人の立場等を踏まえ,事案に応じた立証方針を構築する必要があると説明している。

第4 終局処分起案の基本構成

1 終局処分の意味と論述順序

「終局処分」とは,必要な捜査を遂げた後に,公訴を提起するか否かを最終的に決める処分をいう。
刑事訴訟法247条及び248条は,公訴を検察官が行うこと及び所定の事情により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができることを定めている。

司法修習の検察終局処分起案では,検察修習記録に基づき,送致された被疑者について起訴又は不起訴の処分を決め,その処分に至る思考過程を論述する。
令和6年版が示す基本的な順序は,①犯人性,②犯罪の成否等,③情状関係及び求刑意見である。

2 犯人性

犯人性では,送致された被疑者が真犯人であるかを検討する。
令和6年版が示す全体像は,間接事実,被疑者・共犯者の供述を除く直接証拠,共犯者供述,被疑者供述及び総合評価という順序である。

間接事実は個別に評価するだけでなく,相互の関連性及び重なり合いが持つ意味を踏まえて総合評価する。
被疑者が自白している場合にも,その自白だけで安易に犯人性を認定せず,慎重に検討することとされている。

3 犯罪の成否等・情状関係・求刑意見

犯罪の成否等では,構成要件該当性,違法性,責任,訴訟条件,罪数関係その他の犯罪の成否を検討する。
情状関係では,被疑者に不利な事情だけでなく,有利な事情も検討し,起訴する場合には求刑意見を示す。

起案で決定した終局処分の内容と,そこに至る思考過程の論述内容は整合していなければならない。
検察庁の「刑事事件の手続について」も,検察官が証拠,犯罪の軽重及び処罰の必要性等を考慮して起訴又は不起訴を決めることを一般向けに説明している。

検察起案の基本的構成(令和2年3月31日付けで開示された文書)

第5 証拠評価の基本

1 客観証拠と供述証拠

令和6年版は,指掌紋,足跡及び血痕等の客観証拠を,事実認定の証拠構造の基礎に据えるべきであるとする。
他方で,客観証拠であるというだけで過信せず,その証拠から直接認定できる事実と,そこから推認できる事実の範囲を見極める必要がある。

供述証拠も事実認定で重要な役割を持つが,その信用性は慎重に判断する必要がある。
特に,共犯者供述には自己の責任を軽くするために他人を巻き込む危険が,被疑者供述には自己の責任を小さくし又は真犯人をかばう危険があることを踏まえる必要がある。

2 消極証拠と事案の全体像

一人の供述の一部に疑問を生じさせる事情がある場合に,認定に沿う別の供述部分だけを採用して,安易に信用性を肯定してはならない。
供述の一部の問題が供述全体の信用性へ及ぼす影響を検討する必要がある。

アリバイその他の消極証拠が存在するときも,自己の認定を妨げるものとして無視又は軽視してはならない。
個々の証拠を平面的又は時系列的に並べるだけでなく,証拠全体の中で各証拠が持つ意味を検討し,事案の全体像を把握することが重要である。

第6 起案に利用するときの注意

1 個別の起案要領が優先する

個々の起案で論述すべき事項は,起案実施時に配布される「起案要領」による。
令和6年版は,本資料の記載と起案要領の記載が抵触する場合には,起案要領の記載が優先するとしている。

したがって,本資料の一般的な構成だけを見て,個別の出題指示を省略又は変更することはできない。
実際の起案では,まず当該起案の起案要領を確認する必要がある。

2 掲載版と配布状況の範囲

令和6年版は,当ブログで確認できる公開版のうち最新版である。
令和6年版より後の版が司法研修所内部で作成されているかどうかは確認できていないため,司法研修所における最新作成版であるとまでは断定できない。

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の令和2年度(最情)答申第17号は,本資料が当時,導入修習開始時の事前配布資料であったと説明している。
同答申は現在の配布媒体又は配布時期を示す資料ではないため,現在も同じ方法で配布されているとは限らない。

第7 関連記事

1 終局処分起案に直接関係する記事

①全国一斉検察起案
②検察修習の実際-捜査修習・終局処分起案と取調べ修習の適法性(AI作成)

前者は全国一斉検察起案の実施資料を,後者は検察修習全体の中での終局処分起案を扱っている。
本記事は,原資料への入口,版比較及び令和6年版の要点に対象を限定している。

2 司法修習教材一般に関する記事

①司法修習開始前に送付される資料
②司法修習生の司法修習に関する事務便覧
③新65期以降の白表紙発送実績
④修習教材の電子データ化の弊害が分かる文書は存在しないこと

第8 出典・参考資料

1 法令・公的説明

①e-Gov法令検索「刑事訴訟法」247条・248条(令和8年9月23日確認)
②検察庁「刑事事件の手続について」(令和8年9月23日確認)
③最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会令和2年度(最情)答申第17号3頁

2 司法研修所検察教官室の研修教材

①検察終局処分起案の考え方(令和6年版)2頁及び本文1頁~6頁
②検察終局処分起案の考え方(令和元年版)3頁
③検察終局処分起案の考え方(平成28年版)
④検察終局処分起案の考え方(平成24年版)