第1 二回試験の勉強で最初に整理すること
1 設問に答える起案を自分で再現できるようにする
二回試験の勉強では,教材を読んだ量だけでなく,事件記録を読み,設問が求める判断を,自分の言葉で時間内に答案にできるかを確認する必要がある。
何から始めればよいか迷った場合は,集合修習で提出した自分の起案,添削,講評及び使用した教材を科目別にそろえ,直された箇所から復習を始める方法が考えられる。
最高裁判所の司法修習の概要は,集合修習が5科目について修習記録を用いた起案を中心に行われ,教官の添削・講評や修習生相互の討論の素材になると説明している。
そこで,本記事では,その修習成果を学習に戻すための整理方法と,残り期間に応じた計画例を示す。
2 公式の指示と学習上の提案を区別する
本記事の復習表,時間の記録方法及び学習計画は,読者が自分の弱点を整理するための提案である。
司法研修所が指定する学習計画,非公表の採点基準又は合格を保証する方法ではない。
受験する期の起案要領,教官の指導及び応試心得を確認し,内容が異なる場合は当該期の指示に従うべきである。
司法修習生考試(二回試験)の制度,5科目,合否及び再受験の概要は「司法修習生考試(二回試験)の全体像」,公開資料の性質は二回試験の過去問・修習記録・教材の確認方法で整理する。
本記事の公開資料の確認日は令和8年10月5日である。
3 二回試験の勉強方法についてよくある質問
(1) 二回試験の勉強はいつから始めますか?
一律の開始日を定める公式の学習計画を示すものではないが,起案と講評を対応させる復習は,集合修習中から行う方法が考えられる。
直前期に初めて全科目を見直すより,自分が繰り返す誤りを早い段階で記録し,残り期間に応じて再起案する計画を立てやすい。
期間別の使い方は後記第4を参照されたい。
(2) 二回試験対策で何を優先しますか?
まず起案要領が求める立場と問いを確認し,集合修習で指摘された誤りのうち,法的構成や重要な証拠の評価に関わるものを確認する方法が考えられる。
知識の確認だけで終えず,資料を閉じて短い理由を書き直し,同じ誤りが再発するかを確かめる。
具体的な復習手順と5科目の確認表は後記第2及び第3に置いている。
(3) 過去問を解くだけで十分ですか?
資料の題名に「考試問題」とあっても,公開された問題本文が読めるとは限らない。
手元の正当に利用できる修習教材と自分の起案・講評を復習し,公開資料は読める範囲と作成目的を確認して使う必要がある。
本ブログに掲載した問題・記録の開示範囲は,二回試験の過去問・修習記録・教材の確認方法(AI作成)で説明する。
(4) 二回試験の時間配分はどのように決めますか?
他人の配分をそのまま採用する前に,自分が記録の読取り,構成及び執筆に要した時間を測り,起案要領に沿って最後まで書けるかを確認する方法が考えられる。
答案作成と綴り等の時間は別に確認し,受験する期の応試心得に従う。
測定と提出前確認の方法は後記第5を参照されたい。
第2 集合修習の起案を復習する手順
1 自分の答案と講評の差を四つに分ける
復習では,講評を読んで理解したつもりになることと,自分の答案を直せることを区別する。
まず,設問の要求と自分の答案を並べ,差が生じた段階を次のように整理すると,次に行う作業を選びやすい。
| 差が生じた段階 | 自分の起案で確認すること | 次の復習作業の例 |
|---|---|---|
| 設問の読み取り | 検討対象,立場,求められた文書又は判断を取り違えなかったか | 設問ごとに,答える対象と答案に必要な項目を書き出す |
| 法的分析 | 適用する法規範,要件,争点と具体的事実がつながっているか | 教材の該当箇所を読み,事案に必要な要件を整理し直す |
| 証拠・事実の評価 | 証拠の内容,認定する事実,評価及び結論の間が飛躍していないか | 結論を左右する証拠と反対方向の事情を選び,理由を書き直す |
| 答案化・時間管理 | 頭で考えた内容が答案に現れているか,書き残した設問がないか | 該当部分を資料を閉じて再起案し,所要時間も記録する |
例えば,講評では反対方向の事情も評価されているのに,自分の答案が結論に有利な事情だけを挙げている場合,教材全体の読み直しに直ちに戻るより,その判断部分を理由付きで書き直すことが考えられる。
他方,適用すべき法規範自体を取り違えた場合は,表現の修正だけでは足りず,法律構成から確認する必要がある。
2 起案要領に照らして直す
司法研修所民事裁判教官室の民事裁判起案の留意点(令和7年2月版)の2頁は,検討対象が起案要領で限定される場合があること,設問によって対象が異なる場合があること及び起案要領の指示を優先することを説明している。
同資料8頁は,重要な間接事実の意味を評価することを重視し,どの事案でも固定的な順番で事実を列挙するような起案を求めてはいない。
このため,復習の際も,書く分量を増やすことだけを目標にせず,「この設問で必要な検討は何か」「この事実が判断にどう関係するか」を確認することが重要である。
この説明は民事裁判の公開指導資料に基づくものであり,他科目の答案形式や現在の二回試験の採点基準を一律に示したものではない。
3 資料を閉じて再起案し,再発を確認する
一度直した部分は,講評や修正答案を閉じ,自分で理由を組み立てて書けるかを確認する。
その際,結論を覚えて再現するだけになっていないか,証拠又は事実から結論に至る説明を自分で示せるかを点検する。
理解が曖昧な点が残る場合は,「どの設問の,どの判断段階で,何が分からないか」を整理して教官に質問する。
修習記録や起案を外部のサービス等に提供して質問する場合は,秘密保持義務及び資料の取扱いに関する指示を確認し,提供できることを確認していない資料を送信してはならない。
第3 5科目の弱点を記録する
1 科目別の確認表を作る
5科目は,共通して記録を検討する場面がある一方,求められる立場,判断又は処理が異なる。
次の表は復習を振り返るための問いであり,実際の設問で求められていない事項まで答案に書くことを勧めるものではない。
| 科目 | 起案を振り返る問い |
|---|---|
| 民事裁判 | 請求と当事者の主張を整理し,認定対象,証拠及び判断理由を対応させたか |
| 民事弁護 | 指定された立場と依頼内容に沿って,法律構成,主張立証又は実務上の処理を検討したか |
| 刑事裁判 | 設問の判断対象について,証拠の評価と結論に至る理由を示したか |
| 検察 | 指定された処理の検討に必要な事実・法的要件・証拠を対応させたか |
| 刑事弁護 | 被告人等のために検討するよう求められた問題を捉え,具体的な対応と理由を示したか |
民事系2教官室の法的分析能力及び事実認定能力について(令和6年3月)は,裁判官と弁護士の役割の違いを踏まえつつ,両能力の共通の基礎を説明している。
同じ記録を扱っても,指定された立場に応じて何を判断し,何を行う必要があるかを意識するための資料として参照できる。
(1) 民事裁判では主張整理から認定対象を絞る
民事裁判起案の留意点(令和7年2月版)の3頁・5~8頁及び民事系の法的分析能力・事実認定能力に関する資料を踏まえると,次の順に自分の起案を点検することが考えられる。これは復習の手順の提案であり,すべての設問に同じ見出しや文章量を当てはめるという意味ではない。
①設問が対象とする請求を特定し,請求原因・抗弁・再抗弁の関係を具体的な事実で整理する。②認否を対応させ,事実認定が必要な争いのある主要事実を絞る。③その事実について重要書証の成立・内容や供述の信用性を検討し,認定できる重要な間接事実と根拠を選ぶ。④各事実が結論を支える理由と,反対方向の事実の意味を説明し,立証責任を踏まえて総合判断を示す。
復習メモには「重要な事実を挙げたか」だけでなく,「何を認定するためにその事実を使うのか」「なぜその結論に結び付くのか」を書く。同留意点8頁は,どの事案も機械的に事前・当時・事後の順で書くことや,事実を多く拾うこと自体を求めてはいない。配属庁で受ける指導とのつながりは,民事裁判修習の実際も参照できる。
主張整理から弁済の証拠評価までを自分で書く短い練習には,二回試験の民事裁判対策―模擬記録で学ぶ主張整理と事実認定(AI作成)を利用できる。
架空の記録,設問,解答例及び確認表をそろえた独自演習である。
(2) 刑事裁判では信用性と推認力を分ける
新プロシーディングス刑事裁判(令和8年2月)の本文38~41頁(PDF49~52頁)は,信用性,直接証拠・間接証拠,推認力及び反対仮説を区別して説明している。この区別を使うと,自分の答案がどの判断段階を省いていたかを確認しやすい。
①設問の主要事実と,検察官がそれを立証する証拠構造を特定する。②直接証拠は,信用性を肯定できればその主要事実を直接認定できる証拠かを確認する。③間接証拠では,信用性の検討を経て認定する間接事実と,そこから主要事実を推認する理由を分ける。④その間接事実があっても主要事実が存在しない反対仮説が,記録に照らしてどの程度成り立つかを検討する。⑤必要な事実を総合し,弁護側の主張も踏まえて,合理的な疑いを容れない程度の立証があるかを判断する。
「犯行が可能だった」「証拠が多い」と書くだけでは,主要事実への推認過程の説明にならない。供述を信用できる理由と,認定した間接事実が持つ推認力を分け,自己の結論に不利な事情を省いていないかを点検する。証明の程度については,合理的な疑いの意義も参照できる。
2 復習メモは次の行動まで書く
復習メモには,「民事裁判が苦手」という科目名だけでなく,誤りが生じた箇所と次の作業を記載する。
記録例は次のとおりである。資料の内容や事件を特定する情報は,指示に従って管理する必要がある。
| 記録する項目 | 記載例 |
|---|---|
| 起案・設問 | 使用が認められた教材名と設問番号 |
| 自分の問題点 | 反対方向の事情を答案で検討していなかった |
| 修正の根拠 | 講評の該当箇所と教材の該当頁 |
| 次の作業 | その判断部分を理由付きで再起案する |
| 再確認の結果 | 資料を閉じても理由を示せたか,時間内に終えられたか |
過去の不可答案に重なった問題の確認には,二回試験落ちにつながる答案も参照できる。
ただし,過去の資料に挙げられた一つの誤りが,現在の考試で直ちに不合格を意味するとは限らない。
第4 残り期間に合わせた学習計画
1 集合修習中から起案と講評を対応させる
修習開始前から実務修習・集合修習を通じて記録の読み方,起案及び講評の活用を学ぶ方法は,司法修習の勉強法を参照されたい。本記事は,考試前に自分の起案の弱点を整理し,5科目を点検する学習計画に重点を置く。
集合修習中は,提出した起案と講評を科目ごとに対応させ,理解が不足した点をその都度整理する。
新しい資料を集める時間と,既に取り組んだ起案を直す時間を分け,復習の対象が際限なく増えないようにする。
5科目すべてを確認しつつ,繰り返し同じ問題が出る箇所,又は基本的な法的分析に誤りがある箇所から優先して直す計画が考えられる。
一律に特定科目へ時間を集中させるのではなく,教官の指摘と自分の起案の状態を見て配分する。
2 直前2週間の計画例
次の計画は例であり,2週間の学習で足りるという意味ではない。
集合修習の日程,手元の課題,教官の指示及び自分の理解状況に合わせて調整すべきである。
| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 2週間前から | 各科目の復習メモを見直し,基本事項の誤りと未解決の疑問を整理する |
| 1週間前を目安に | 使用が認められた課題について,記録検討から答案作成までの時間を測り,残った問題を絞る |
| 数日前から | 解決済みの弱点を再確認し,当該期の応試心得,受験票,会場への移動及び持ち物を確認する |
| 前日 | 翌日の科目と集合時刻を確認し,持ち物を準備する。新しい教材を増やすことに固執せず,体調を整える |
当日の時間及び持ち物の過去の具体例は,第78期応試心得に基づく当日の流れにまとめている。
第78期の説明を,後の期にも同じ規則が適用されるという意味で用いてはならない。
第5 時間配分と提出前の確認
1 固定の配分を丸暗記する前に自分の所要時間を測る
練習では,記録を読む時間,構成を考える時間,実際に書く時間及び見直す時間を記録する方法が考えられる。
各設問の内容や記録の分量によって必要な時間は異なるため,全科目共通の最適な分数配分を決めつけることはできない。
答案が未完成となった場合は,記録の読み返し,構成の迷い又は記述量のいずれに時間を要したかを振り返る。
次回は,設問への回答を落とさず,判断に必要な理由を記載できるように修正する。
| 時間を要した場面 | 練習後に記録すること | 次回の修正例 |
|---|---|---|
| 記録の読み返し | 設問・証拠・頁の対応を見失った箇所 | 最初に設問ごとの検討対象と証拠の所在をメモする |
| 構成の迷い | 判断対象や法的枠組みが曖昧だった箇所 | 指定された立場・要件・争点を答案構成の前に確認する |
| 記述量の増加 | 結論に必要な理由と重複説明の区別 | 重要な判断理由を残し,設問外の説明や繰返しを削る |
| 見直し不足 | 未回答,理由と結論の不一致,形式の誤り | 練習でも提出前の確認に使った時間を別に記録する |
練習で決めた配分は,次の起案で実際に試して修正する。当期の試験時間,昼食中の起案の可否及び提出方法は,二回試験当日の流れと,自分が受領した応試心得を照合して確認する。
2 内容と形式を別々に点検する
内容面では,すべての設問に対応したか,指定された立場と対象に沿っているか,理由と結論が一致しているかを確認する。
形式面では,当該期の指示に従い,受験番号等の記載,答案用紙の扱い,綴り及び提出方法を確認する。
形式の確認は,内容の復習が終わってから思い出すのではなく,練習時から別の確認項目として用意しておくことが考えられる。
具体的な手順は,期別の司法修習生考試応試心得に掲載した原資料と,自分が受領した最新の案内で確認すべきである。
直前期に新しい教材を増やすか迷う場合は,未習得の判断部分を補うために必要かを確認する。既に指導を受けた起案で同じ誤りを繰り返す場合は,まずその部分を理由付きで再起案し,講評なしでも説明できるかを確かめる方法が考えられる。
第6 出典・参考資料
①最高裁判所・司法修習の概要(集合修習,起案・添削・講評及び秘密保持義務の説明)
②司法研修所民事裁判教官室・民事裁判起案の留意点(令和7年2月版)(PDF2~3頁,5~8頁)
③民事系科目における法的分析能力(主張分析能力)及び事実認定能力について(令和6年3月)
④司法研修所・新プロシーディングス刑事裁判(令和8年2月)(本文38~41頁,PDF49~52頁。信用性,直接・間接証拠,推認力,反対仮説及び証拠構造)