修習教材の電子データ化の弊害が分かる文書は存在しないこと


目次
1 修習教材のPDF化に伴う弊害が分かる文書は存在しないこと
2 司法研修所における,Microsoft365の各種機能の活用予定
3 総務省等の説明
4 インターネットFAX
5 関連記事その他

1 修習教材のPDF化に伴う弊害が分かる文書は存在しないこと
(1) 平成31年3月25日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,「最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
   修習記録,教材・資料等の紙媒体の配布物等の電子データ化は,司法修習生が取り扱う修習関連の情報をあらゆる脅威から守り,必要な情報セキュリティを確保するための対策として,情報の流出・拡散を防止する観点から禁止されているものであり,情報公開請求(裁判所における司法行政文書の開示)の制度により開示されるか否かとは観点が異なるものであるから,同制度との関係を検討する必要性はなく,検討は行っていない。
   したがって,本件開示申出にかかる文書は作成しておらず,取得もしていない。
(2) 本件開示申出にかかる文書は,「司法修習生が修習教材としての一般資料のうち,情報公開請求により開示される部分を個人使用目的でPDF化した場合,どのような弊害が発生すると司法研修所が考えているかが分かる文書(最新版)」です。


2 司法研修所における,Microsoft365の各種機能の活用予定
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)691頁には,「Microsoft365ライセンス経費」として以下の記載があります。
<要求要旨>
    民事事件を始めとする各種手続についてIT化が推進されている状況にあるところ,法曹養成を目的とする司法研修所においても,IT技術を取り入れながら,実効性の高い修習を実施し,IT化社会に対応可能なプロフェッションを養成していく必要がある。
    具体的には,Microsoft365の各種の機能を最大限活用することにより,司法研修所と司法修習生間における適時,適切な情報共有はもとより,コミュニケーションツールを利用したきめ細やかな指導等を行うことで,司法修習のさらなる充実化を図るとともに,これまで約1500人もの司法修習生に対し,都度行ってきた事務連絡や講義資料の印刷・発送等にかかる業務軽減や従前外注にて行ってきた修習のアンケート等の実施・結果集計を,外注することなく実施することが可能となる等,司法修習の充実化あるいは事務の適正,合理化に資する効果は極めて大きい。
    また,ITツールの活用にあたっては,適切な情報セキュリティ対策を施す趣旨から,ウイルス対策などのセキュリティソフトを導入する必要がある。
    そこで,Microsoft365の機能を利用できる環境を構築するために必要となる,ソフトウェアライセンスの経費を要求する。


3 総務省等の説明
(1) 総務省HPの情報通信統計データベースに掲載されている通信利用動向調査には,デジタルデータの収集状況のことも書いてあります。
(2) 「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」(平成30年6月7日付の各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)には以下の記載があります。
    インターネットとの接続の有無のみによって、情報システムの安全性を単純に判断してはいけない。情報セキュリティを重視して情報システムをインターネットから物理的に分離する場合は、物理分離を実施していることだけをもって十分な情報セキュリティ対策を講じているわけではないことを理解し、物理分離と従来型のセキュリティ対策に加え、最新技術の適切な組み合わせによる多重防御を実施することが望ましい。また、インターネットに接続されていることだけからクラウドサービスが危険だろうと思い込んではいけない。


4 インターネットFAX
1 eFax HPの「インターネットファックスとは」には以下の記載があります。
インターネットFAXとは、インターネットを通じてファックスのやり取りができるサービスです。
電話回線ではなく、インターネット回線を通じてFAXの送受信を行います。もちろん従来のファックス機を必要としません。
2 ワイマガHPに「eFAXの評判は悪い?口コミからメリット、デメリットを解説!」が載っています。

5 関連記事その他
(1)ア 東洋経済オンラインに「笑いごとじゃない!「PPAP」直ちに禁止すべき訳 セキュリティ面で懸念大、長年の慣習が崩れる」が載っています。
イ PPAPは,「Password付きZIPファイルを送ります、Passwordを送ります、Aん号化(暗号化)Protocol(プロトコル)」の略であって,最初に暗号化したパスワード付きZIPファイルを添付したメールを送り,その直後に解凍する際のパスワードを別のメールで送るという手順をいいます。
(2)ア 二弁フロンティア2021年7月号の「弁護士の新しい働き方」には「PC は、スタンドアローン、つまりネットワークにつながっていなければ意味がありません。」と書いてあります。
イ 二弁フロンティア2022年6月号に「「IT嫌い」「IT初心者」(!?)のための サイバーセキュリティ入門 ~14のQ&A~」が載っています。
(3) 刑事手続とIT(判例時報2490号(2021年10月1日号)及び2491号(2021年10月11日号))には,①証拠開示のデジタル化,②ビデオリンク尋問の拡大,その他の手続でのビデオの活用,③ビデオ接見(弁護人・家族)及び④令状のオンライン化の問題点について刑事事件に詳しい弁護士が解説しています。
(4) Blue Planet-worksの「企業は使用を禁止すべき? USBメモリの危険性」には以下の記載があります。
    USBメモリはコンパクトな記憶装置であるため、簡単に紛失したり盗難に遭ったりする危険性があります。会社のパソコンからデータをUSBメモリにコピーし、別の拠点や自宅に運ぶような場合、社外で紛失や盗難が発生すれば、すぐに情報漏えいの危機につながります。あるいは、本来あってはならないことですが、USBメモリは内部不正が行われる際にもデータ持ち出しのためにしばしば使用されます。便利であるがゆえに、危険度も高いアイテムだといえます。
(5) 以下の記事も参照して下さい。
・ 民事裁判手続のIT化
・ 裁判官の記録紛失に基づく分限裁判
・ 司法修習開始前に送付される資料
・ 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
・ 検察終局処分起案の考え方
・ 司法修習生の旅費に関する文書


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