第1 奈良修習について本記事が扱う範囲
1 「奈良修習」の意味
「奈良修習」は,司法修習生が奈良を実務修習地として指定され,奈良地方裁判所,奈良地方検察庁及び奈良弁護士会を中心に分野別実務修習と選択型実務修習を行うことをいう実務上の呼称である。奈良だけに独立した司法修習制度があるわけではなく,最高裁判所の司法修習制度のうち,実務修習地が奈良である場合を指す。
司法修習は,司法研修所で行う導入修習,全国の実務修習地で行う分野別実務修習,選択型実務修習及び司法研修所で行う集合修習から構成され,最後に司法修習生考試が実施される。奈良で行われる中心部分は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野を各2か月ずつ回る分野別実務修習である。
2 基準時点と資料上の限界
本記事は,令和8年8月15日現在の公開資料を基準とし,生成AIを用いて最高裁判所,奈良地方裁判所,奈良地方検察庁及び奈良弁護士会の公表資料並びに司法行政文書開示資料を照合して作成した。第79期の日程と修習の順序は確認できる一方,第79期の奈良配属人数,班ごとの4分野の回り方,支部修習の実施状況及び弁護修習先の割当ては,公開資料から確認できない。
過年度の奈良固有資料は,当時の実施内容を具体的に知るための資料価値があるが,現在も同じ日程又はプログラムが実施されていることを示すものではない。本記事では,現行資料で確認できる事項と過年度の実例を区別して記載する。
第2 第79期奈良修習の日程
1 導入修習から選択型実務修習まで
第79期司法修習生採用選考申込手続の手引きによれば,第79期は令和8年3月19日から同年4月10日まで導入修習を行い,同月14日から同年11月20日まで各実務修習地で分野別実務修習を行う。その後,集合修習と選択型実務修習を行う。
開示された司法研修所教官会議資料に基づく第79期司法修習の日程と照合すると,奈良修習の日程は次のとおりである。
| 課程 | 期間 |
|---|---|
| 導入修習 | 令和8年3月19日~4月10日 |
| 第1クール | 令和8年4月14日~6月9日 |
| 第2クール | 令和8年6月10日~8月2日 |
| 第3クール | 令和8年8月3日~9月28日 |
| 第4クール | 令和8年9月29日~11月20日 |
| 集合修習 | 令和8年11月24日~令和9年1月8日 |
| 選択型実務修習 | 令和9年1月12日~2月25日 |
2 奈良は集合修習を先に行う実務修習地であること
第79期の手引きは,実務修習地を二つのグループに分けている。奈良は,東京,立川,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,大津及び和歌山とともにグループ①に入り,分野別実務修習の後に集合修習,その後に選択型実務修習を行う。これ以外の実務修習地は,選択型実務修習を先に行い,集合修習を後に行う。
集合修習と選択型実務修習の順序は実務修習地単位で決まるが,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護のいずれを第1クールから第4クールのどこで行うかは班別のローテーションによる。第79期奈良の班別ローテーションを示す公表資料は確認できない。
3 司法修習生考試の日程
第79期の手引きは,修習期間の最後に司法修習生考試を行う制度を前提としているが,本記事で確認した最高裁判所の公表資料には正式な実施日程が掲載されていない。第79期司法修習の日程には推測日程も掲載されているため,確定日程と区別する必要がある。
第3 奈良の修習機関とアクセス
1 本庁及び弁護士会館の所在地
奈良の主要な修習機関はいずれも近鉄奈良駅の周辺にある。所在地と公表された交通案内は次のとおりである。
| 機関 | 所在地 | 交通案内 |
|---|---|---|
| 奈良地方裁判所・奈良家庭裁判所・奈良簡易裁判所 | 〒630-8213 奈良市登大路町35 | 近鉄奈良駅1番出口から東へ約200メートル |
| 奈良地方検察庁 | 〒630-8213 奈良市登大路町1番地1 | 近鉄奈良駅1番出口から徒歩約5分 |
| 奈良弁護士会館 | 〒630-8237 奈良市中筋町22番地の1 | 近鉄奈良駅から徒歩約3分 |
所在地の最新情報は,奈良県の裁判所の所在地,奈良地方検察庁の所在地・交通アクセス及び奈良弁護士会のアクセス案内で確認できる。奈良弁護士会館には来館者用駐車場がないと案内されている。
2 支部等と実際の修習場所
奈良地方裁判所には葛城支部及び五條支部があり,奈良地方検察庁にも同名の支部がある。しかし,支部が存在することと,奈良配属の司法修習生が支部で修習することは別の問題である。第79期について,支部へ行く班,期間又は回数を示す公表資料は確認できないため,配属後に交付される日程表又は配属庁会からの連絡で確認する必要がある。
第4 奈良修習で行われる実務修習
1 民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野
奈良弁護士会司法修習委員会は,司法修習生が班に分かれ,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の4分野を各2か月間修習すると説明している。最高裁判所も,分野別実務修習について,地方裁判所,地方検察庁及び弁護士会で実際の事件を素材とし,裁判官,検察官及び弁護士の個別的指導を受ける課程としている。
裁判修習では法廷傍聴,事件記録の検討,裁判官との意見交換及び文書による検討結果の報告等,検察修習では証拠収集,取調べ,起訴・不起訴処分の検討及び公判立会の傍聴等,弁護修習では法律相談・法廷への立会い,法律文書の起案及び弁護士会活動の体験等が制度上予定されている。具体的な事件,起案数及び行事は,班,配属先及び時期によって異なる。
2 第77期奈良地裁の日程表から分かること
奈良地方裁判所長が令和6年4月9日付けで司法研修所長へ報告した「第77期司法修習生実務修習日程表(第1クール)の変更について(報告)」は,第1クールの3班に関する具体的日程を示している。共通日程として,同月16日の開始式・オリエンテーション,同月19日の問研起案,同月26日のDVD講義事前課題提出期限,同年5月2日の自由研究日,同月8日のDVD講義並びに同月9日の問研講評及び教官面談が記載されている。
同資料では,裁判修習中は配属された部又は係の期日を原則として傍聴し,時期に応じて担当部又は係を交替する構成も確認できる。もっとも,これは第77期第1クールの一班に関する変更後の日程表であり,第79期奈良修習の日程表として使用することはできない。
3 第68期の選択型実務修習プログラム
平成27年11月26日付け「個別修習プログラム実施状況等報告書」は,第68期奈良の選択型実務修習について,①裁判所による模擬裁判,特別手続,事実認定,民事事件,執行・倒産・保全及び家事・少年事件,②検察庁による捜査公判補充,警察の科学捜査関係施設,更生保護施設・少年院及び関西国際空港の税関・出入国管理関係の講義・見学,③弁護士会による交通事故,高齢者・障害者,刑事弁護,消費者,子どもの権利,犯罪被害及び法テラス,④三庁会共同による刑事模擬裁判及び民事交互尋問,というプログラムを記録している。
この資料から,奈良でも通常の4分野を補完する多様な選択型プログラムが実施されたことは分かる。ただし,第68期の実績であり,第79期に同じ名称,実施機関,期間又は定員で提供されることまでは確認できない。
第5 奈良への配属人数
1 第68期から第78期までの配属現員
最高裁判所から開示された各期の「司法修習生配属現員表」に記載された奈良の現員は,次のとおりである。
| 期 | 奈良配属現員 |
|---|---|
| 第68期 | 19人 |
| 第69期 | 22人 |
| 第70期 | 18人 |
| 第71期 | 18人 |
| 第72期 | 12人 |
| 第73期 | 12人 |
| 第74期 | 12人 |
| 第75期 | 11人 |
| 第76期 | 12人 |
| 第77期 | 18人 |
| 第78期 | 14人 |
各期の原資料は,司法修習生配属現員表(48期以降)から確認できる。配属現員表は表題記載の基準日における現員を示す資料であり,採用予定数,実務修習地の固定定員又は最終的な修了者数を示すものではない。
2 人数の変動と第79期の未公表
第68期から第78期までの11期の奈良配属現員は合計168人であり,1期平均は15.3人,中央値は14人,最少は11人,最多は22人である。第72期から第78期までの7期に限ると,1期平均は13.0人である。これらは配属現員表の数値から本記事で算出した記述統計であり,最高裁判所が示した定員又は将来予測ではない。
第79期については,奈良の実際の配属現員を示す配属現員表を確認できない。過去11期の平均値を第79期の人数として扱うことも,全国の司法修習生採用見込数から奈良の人数を比例計算することもできない。
3 配属希望と現在の決定基準
過去の開示資料には,実務修習希望地の順位別人数を集計したものがあるが,特定の期の希望状況は現在の人気又は配属可能性を示さない。実務修習地の決定において,希望順位,受入能力その他の事情をどのような比重で評価するかについて,点数化された現行基準は確認できないため,古い倍率又はランクを第79期以降にそのまま当てはめるべきではない。
なお,実務修習地と司法研修所のクラスとの過年度の対応は,司法修習の場所とクラスの対応関係(67期以降)に整理されている。ただし,組数と組合せは期によって変わるため,自分の期の資料を確認する必要がある。
第6 住居と修習給付金
1 奈良での住居は各自で確保すること
第79期の手引きは,指定された実務修習地における住居を各自で確保すると明記している。奈良で司法修習生全員に宿舎が提供されることを示す資料は確認できないため,配属決定後は,契約開始日,短期解約条項,家具・家電の有無,主要修習機関への経路及び選択型実務修習終了時の退去時期を確認する必要がある。
2 基本給付金,住居給付金及び移転給付金
裁判所法67条の2に基づく修習給付金は,基本給付金,住居給付金及び移転給付金から成る。最高裁判所の修習給付金案内によれば,基本給付金は給付期間ごとに13万5000円であり,住居給付金は所定の要件を満たす場合に給付期間ごとに3万5000円である。移転給付金は,採用に伴い住所又は居所を移転する必要があると認められる場合に,移転距離等に応じて支給される。
給付期間は通常の暦月と完全には一致しないため,個別の支給対象期間,住居給付金の要件及び提出書類は,当該期に交付される案内で確認する必要がある。制度の沿革については,司法修習制度の改正経緯で整理している。
第7 今後確認を要する奈良固有情報
1 第79期について未公表の事項
令和8年8月15日現在,公開資料から確認できない奈良固有情報は,①第79期の奈良配属現員,②班別の4分野のローテーション,③葛城支部・五條支部等での修習の有無と期間,④弁護修習先の割当方法,⑤第79期に提供される選択型実務修習プログラム,⑥司法修習生考試の正式日程である。
これらは,過年度資料又は他の実務修習地の運用から補充できる事項ではない。配属後に交付される奈良の実務修習日程表,配属庁会の案内,司法研修所の通知又は新たに開示・公表される資料によって確認すべき事項である。
2 更新時に優先して確認する資料
記事を更新する際は,まず最高裁判所の第79期関係資料と配属現員表を確認し,次に奈良の実務修習日程表及び選択型実務修習プログラムを確認するのが適切である。過年度資料を追加するだけでは現行運用は確定しないため,資料の対象期,作成日及び対象班を明示した上で差し替える必要がある。
出典・参考資料
1 法令
①裁判所法(昭和22年法律第59号)67条の2(e-Gov法令検索)
2 最高裁判所及び奈良の関係機関
①最高裁判所「司法修習の概要」(司法研修所)
②最高裁判所「令和7年度司法修習生採用選考申込手続の手引き」2頁(PDF2頁),第79期司法修習生採用選考申込手続の手引きPDF
③最高裁判所「司法修習生の修習給付金について」
④奈良地方裁判所「奈良県の裁判所の所在地」
⑤奈良地方検察庁「所在地・交通アクセス」
3 司法行政文書開示資料
①奈良地方裁判所「奈良地家裁総第274号(令和6年4月9日)第77期司法修習生実務修習日程表(第1クール)の変更について(報告)」1頁~2頁(PDF1頁~2頁),同文書PDF
②「個別修習プログラム実施状況等報告書」(平成27年11月26日,修習地・奈良)1頁~7頁(PDF1頁~7頁),同文書PDF
③最高裁判所開示「司法修習生配属現員表」第68期ないし第78期,原資料一覧
④司法研修所「司法研修所の教官会議議題等及び議事録(令和7年4月25日開催分)」掲載の日程資料,第79期司法修習の日程