第1 この記事が扱う福岡修習の範囲
1 基準時点と対象
本記事は,令和8年8月15日現在の第79期司法修習を中心として,福岡修習の日程,配属人数,住居,生活情報,希望倍率及び実務修習の内容を整理するものである。第79期について公表されていない数値を過去の数値で補わず,過去の開示文書を使うときは対象期を明記する。
生成AIを用いて最高裁判所,司法研修所,福岡地方裁判所,福岡地方検察庁及び福岡県弁護士会の公表資料並びに情報公開により取得された文書を照合した。法令及び数値は原資料を確認し,福岡の運営に関する実務家の報告は公的統計と区別した。
2 確認できた情報と確認できない情報
第79期の全国日程,福岡がB班に属すること,第69期から第78期までの福岡配属人数,第69期の希望地調査表並びに第79期の基本給付金及び住居給付金は原本で確認できた。これに対し,第79期の福岡配属人数,現在の希望倍率,現在の支部別配属人数及び第79期福岡修習の日別カリキュラムは,確認できる公開原本がない。
したがって,本記事における現在の人数又は倍率の「不明」は,配属や希望が存在しないという意味ではなく,公開資料から数値を確定できないという意味である。
第2 第79期福岡修習の日程
1 福岡はB班であること
第79期の実務修習地のうち,東京,立川,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,奈良,大津及び和歌山はA班であり,それ以外はB班である。福岡はA班の列挙に含まれないためB班となり,分野別実務修習の後は,選択型実務修習を先に行い,集合修習を後に行う。
2 導入修習から集合修習までの日程
司法研修所事務局長令和7年4月30日付け「第79期司法修習生の修習日程」によれば,福岡修習の日程は次のとおりである。令和8年8月15日現在は第3クール中であるが,各修習生が民事裁判,刑事裁判,検察又は弁護のどの分野にいるかは個別のローテーションによる。
| 修習区分 | 期間 | 実日数又は移動日数 |
|---|---|---|
| 導入修習 | 令和8年3月19日~4月10日 | 16日 |
| 福岡への移動日 | 4月11日~4月13日 | 3日 |
| 第1クール | 4月14日~6月9日 | 37日 |
| 第2クール | 6月10日~8月2日 | 37日 |
| 第3クール | 8月3日~9月28日 | 37日 |
| 第4クール | 9月29日~11月20日 | 37日 |
| 選択型実務修習 | 11月24日~令和9年1月8日 | 30日 |
| 和光への移動日 | 1月9日~1月12日 | 4日 |
| 集合修習 | 1月13日~2月25日 | 30日 |
| 自由研究日 | 2月26日 | 1日 |
同日程は,B班の集合修習終了後に5科目の筆記試験を行う予定であると記載するが,科目別の試験日までは示していない。試験日を過去期の日程から推測して確定日として扱うことはできない。
第3 福岡の配属人数と希望倍率
1 第69期から第78期までの配属人数
各期の司法修習生配属現員表によれば,福岡の配属人数は次のとおりである。配属現員表は表題に記載された基準日の現員であり,採用決定時の人数と常に一致するとは限らない。
| 期 | 福岡配属人数 | 原表の基準日 |
|---|---|---|
| 第69期 | 74人 | 平成28年11月27日 |
| 第70期 | 64人 | 平成28年11月27日 |
| 第71期 | 64人 | 平成29年11月27日 |
| 第72期 | 66人 | 平成30年11月27日 |
| 第73期 | 66人 | 令和元年11月27日 |
| 第74期 | 66人 | 令和3年3月31日 |
| 第75期 | 60人 | 令和3年11月12日 |
| 第76期 | 63人 | 令和4年11月27日 |
| 第77期 | 83人 | 令和6年3月21日 |
| 第78期 | 71人 | 令和7年3月19日 |
第69期から第78期までの10期平均は67.7人であり,最少は第75期の60人,最多は第77期の83人である。もっとも,この平均は第79期の配属人数を推計する定員表ではない。
2 第69期の第1希望倍率は約1.57倍
平成27年10月9日付け「実務修習希望地調査表」の福岡欄は,第1希望116人,第2希望80人,第3希望17人,第4希望7人と記載する。第69期の福岡配属74人を分母にすると,第1希望者数に対する配属人数の比率は116÷74=約1.57である。本記事では,これを第69期の第1希望倍率とする。
ただし,同じ行の希望順位別人数を合計すると220人となるのに対し,原表の合計欄は212人であり,8人の不一致がある。この不一致を解消する原資料は確認できないため,全希望順位を通じた倍率は示さない。約1.57倍という数値は,第1希望116人と配属74人だけを用いた計算である。
3 現在の希望倍率を確定できない理由
第70期以降については,第69期と同じ形式の希望地調査表が継続的に公表されていない。第78期及び第79期の希望地調査表を対象とした司法行政文書開示申出についても,最高裁判所は対象文書を「作成し,又は取得していない」ことを理由として不開示としている。
この不開示理由から,福岡の希望者が少ないこと又は希望順位が低いことを導くことはできない。また,配属人数と民間の体験談だけから現在の倍率を逆算することもできない。公開原本から確定できる直近値は第69期の約1.57倍であり,現在の倍率は不明である。
第4 住居と福岡での生活
1 住居の確保と修習給付金
最高裁判所の第79期採用選考申込手続の手引は,指定された実務修習地における住居を各自で確保するとしている。福岡市内の住居が裁判所又は弁護士会から一律に提供される制度は,公開資料では確認できない。
第79期の基本給付金は一の給付期間につき13万5000円,住居給付金は同3万5000円である。住居給付金を受けるには,①自ら居住するための住宅を借り受けていること,②現に居住していること,③家賃又は使用料を支払っていること,④住居届と賃貸借契約書等を提出することが必要である。フリーレント期間,光熱水費だけの負担及び住宅ローン返済は家賃負担に当たらない。
配偶者,父母又は配偶者の父母が所有し,又は借り受けて居住している住宅等を修習生が借りて居住する場合は,住居給付金の対象外である。新たに要件を満たした場合の住居届は,要件を満たした日から7日以内に提出する必要があり,期限後の届出は原則として遡及支給を受けられない。賃貸借契約書が間に合わないときも,住居届を先に期限内提出する取扱いが案内されている。
2 本庁三機関は六本松に隣接していること
福岡地方・家庭裁判所本庁は福岡市中央区六本松四丁目2番4号,福岡地方検察庁は同4番3号,福岡県弁護士会館は同4番5号にある。三機関は隣接街区にあり,裁判所及び弁護士会館は福岡市地下鉄七隈線六本松駅1番出口から徒歩約3分と案内されている。
本庁を中心に移動する限り,六本松又は七隈線沿線は通修習上の利便性が高い。福岡県弁護士会の案内では,地下鉄の所要時間は六本松から天神南まで約8分,博多まで約12分である。ただし,住居を六本松周辺に定めるべきかは,後記の支部配属の有無によって変わる。
3 支部配属を考慮した住居選び
日本弁護士連合会『自由と正義』令和8年6月号の福岡修習に関する実務家報告は,令和2年から令和5年頃には約80人のうち約20人が北九州,筑後又は筑豊の支部地域に配属されたとする。これは現行の第79期支部別人数を示す公的統計ではないが,福岡修習が福岡市中央区だけで完結するとは限らないことを示す資料である。
住居契約を急ぐ場合でも,可能であれば弁護修習の本庁・支部の個別配属を確認し,確認前であれば中途解約条件,短期契約の可否及び鉄道の乗換えを検討する必要がある。令和8年8月現在,修習生向け住居の地域別成約賃料を示す即時性のある公的統計は確認できず,民間ポータルの掲載賃料も成約賃料とは限らないため,本記事では家賃相場を金額で断定しない。
第5 実務修習の内容
1 全国共通の四分野
分野別実務修習は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の四分野を各約2か月行う。法廷を傍聴するだけの期間ではなく,事件記録の検討,事実認定,法律適用,起案,模擬手続及び指導担当者との討論を通じて,法律知識を事件処理へ結び付ける期間である。
| 分野 | 主な修習内容 |
|---|---|
| 民事裁判 | 訴訟物と主張構造,争点整理,証拠評価,事実認定,和解及び判決起案 |
| 刑事裁判 | 公判前整理手続,証拠能力,証拠評価,事実認定,量刑,裁判員裁判及び判決起案 |
| 検察 | 事件受理,証拠収集,取調べ,補充捜査,処分判断及び公判立証 |
| 弁護 | 法律相談,依頼者との面談,方針検討,書面作成,証拠収集,法廷活動,弁護士会活動及び弁護士倫理 |
2 福岡の裁判修習と検察修習
福岡地裁配属の第69期裁判修習日程には,民事・刑事の研究課題と講評,争点整理に関する講義,家裁修習,弁護士会との共同修習,執行・保全及び破産に関する修習等が記載されている。裁判修習は民事裁判と刑事裁判だけに閉じず,家事,倒産及び執行分野にも接する構成であった。
第69期福岡の検察修習日程には,検察情報システム,実務講義,全国一斉起案,事件受理,補充捜査,模擬録音録画,身柄事件の検討,刑事共同修習,福岡刑務所等の施設見学及び法医学解剖見学等が記載されている。もっとも,いずれも平成28年の開示文書であり,同じプログラムが第79期にも全部実施されると確認できる資料ではない。
3 福岡の弁護修習
弁護修習では,民事の法律相談,事実・証拠の把握,訴状等の作成,保全・執行,和解及び契約実務と,刑事の接見,勾留・保釈,証拠開示,尋問,弁論及び模擬裁判等が中心となる。具体的な経験は個別指導担当弁護士が扱う事件及び配属事務所によって異なる。
『自由と正義』令和8年6月号は,福岡の特色として,精神科救急における当番弁護士への同行,当番弁護士制度と刑事弁護修習との接続及び支部単位での修習支援を報告する。これらは現行に近い実務家報告であるが,第79期の公式カリキュラム原本ではないため,全員が同じ経験をするとは限らない。
4 選択型実務修習と集合修習
選択型実務修習では,配属庁会が提供するプログラムや自己開拓プログラムから,各自の関心と進路に応じた修習を行う。B班の福岡は令和8年11月24日から令和9年1月8日までが選択型実務修習である。
集合修習は,分野別実務修習の経験を補完し,民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護について,起案,講評,討論及び法曹倫理等を学ぶ総仕上げの段階である。福岡を含むB班は,令和9年1月13日から2月25日まで和光市の司法研修所で集合修習を行う。
第6 公開資料からは確定できない事項
1 第79期の人数,現在の倍率及び日別カリキュラム
本記事の調査で確認できなかった重要事項は,①第79期の福岡配属人数,②第70期以降の福岡の第1希望倍率,③第79期福岡の支部別配属人数,④第79期福岡の週別・日別カリキュラム,⑤地域別の修習生向け成約家賃である。第77期の83人又は第78期の71人を第79期の人数として流用せず,第69期の約1.57倍を現在の倍率として表示しないことが必要である。
福岡修習の配属,希望倍率,住居又はカリキュラム自体を直接争う裁判例は,令和8年8月15日の裁判所ウェブサイト検索及び確認した判例資料では見当たらなかった。裁判所ウェブサイトは全裁判例を収録するものではないため,これは裁判例の不存在を意味しない。
2 福岡修習を選ぶ際の資料の使い方
福岡を希望する段階では,第69期の倍率を過去の参考値として用い,第79期の配属結果を予測する数値には用いないことが適切である。配属後の住居選びでは,基本給付金と住居給付金を合算しただけで予算を決めず,税,社会保険,敷金等の初期費用,支部通修習及び令和9年1月の和光への移動を別に見積もる必要がある。
また,平成28年の日程表は福岡で実施され得る修習の幅を知る資料として有用であるが,現在の実施保証ではない。個々の修習生が実際に参加するプログラムは,配属後に交付される第79期の予定表及び配属庁会からの通知で確認する必要がある。
出典・参考資料
1 法令及び公的ウェブ資料
① e-Gov法令検索「裁判所法」(昭和22年法律第59号)67条・67条の2
② 最高裁判所「司法修習の概要」
③ 最高裁判所「令和7年度司法修習生採用選考申込手続の手引」2頁
④ 司法研修所事務局「修習給付金案内(第79期)」資料4頁・6頁~7頁・20頁(PDF8頁・10頁~11頁・24頁)
⑤ 福岡地方裁判所「福岡地方・家庭裁判所本庁の所在地」
⑥ 福岡地方検察庁「福岡地方検察庁の所在地・交通案内」
⑦ 福岡県弁護士会「福岡県弁護士会館へのアクセス」
⑧ 福岡市地下鉄「時刻表・運行情報」
2 開示文書及び文献
① 司法研修所事務局長令和7年4月30日付け「第79期司法修習生の修習日程」PDF2頁
② 最高裁判所「司法修習生配属現員表」第69期~第78期(各原本PDFへの掲載ページ)
③ 司法研修所平成27年10月9日付け「実務修習希望地調査表(第69期)」1頁
④ 最高裁判所令和8年1月19日付け「第78期司法修習予定者の実務修習希望地調査表に係る不開示通知書」1頁
⑤ 最高裁判所令和8年3月18日付け「第79期司法修習予定者の実務修習希望地調査表に係る不開示通知書」1頁
⑥ 福岡地方裁判所「福岡地裁配属の第69期裁判修習の日程」PDF1頁~14頁
⑦ 福岡地方検察庁「第69期福岡の検察修習」PDF1頁~8頁
⑧ 日本弁護士連合会『自由と正義』第77巻第6号(令和8年6月)「司法修習の今,回顧と展望」12頁~16頁・17頁~21頁・22頁~25頁・27頁~33頁