第1 この記事が扱う対象1 リスフラン関節とショパール関節2 射程と時点
第2 欠損障害――第7級8号及び第4級7号1 等級表の文言と保険金額2 認定基準による切断部位の画し方3 等級表の原型としての労働基準法施行規則別表第二
第3 ショパール関節における離断には明文がないこと1 認定基準の文言との関係2 他の公的障害認定制度との対比3 相当等級による構成とその限界
第4 可動域制限は等級評価の対象外であること1 認定基準の構造2 足関節の可動域制限として拾えるか
第5 神経症状による構成1 第12級13号と第14級9号2 立証資料
第6 裁判例1 リスフラン関節靱帯損傷につき第14級9号とされた事例2 裁判所ウェブサイトにおける掲載状況
第7 損害論1 労働能力喪失率2 後遺障害慰謝料3 労働能力喪失期間4 異議申立て及び紛争処理の見込み
出典・参考資料1 法令・告示・通達2 裁判例3 公的資料4 文献5 関連記事
第1 この記事が扱う対象
1 リスフラン関節とショパール関節
リスフラン関節は,足根中足関節ともいい,5本の中足骨と,足根骨の遠位列である内側・中間・外側の三つの楔状骨及び立方骨との間にある関節である。ショパール関節は,横足根関節ともいい,距舟関節と踵立方関節とを併せた関節複合体を指す。いずれも足の中央部にあって,足部のアーチを保ち,歩行時に足を剛にしたり柔らかくしたりする役割を担っており,交通事故では,足部の轢過,車内での足部の挟圧,バイク事故における足部の直達外力等によって,脱臼骨折又は靱帯損傷を生じる。
この二つの関節は,後遺障害等級の当てはめにおいて特異な位置にある。等級表には「リスフラン関節」という語が置かれているにもかかわらず,それは足を失った場合の欠損障害の基準としてのみ用いられており,関節としての動きが失われた場合の機能障害の項目は,リスフラン関節についてもショパール関節についても存在しない。本記事は,この構造を出発点として,欠損障害としてどこまでが第7級8号となるか,機能障害として拾えない場合にどの号で構成するか,そのためにどのような資料が必要かを整理する。本記事の内容は生成AIを用いて作成した一般的な情報提供であり,個別の事案に対する法的助言ではない。
2 射程と時点
等級の文言は,令和8年8月8日時点でe-Gov法令検索により確認した自動車損害賠償保障法施行令別表第二及び労働者災害補償保険法施行規則別表第一による。認定基準は,平成16年6月4日基発第0604003号「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」及びその別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」による。自賠責保険がこの労災の基準に準拠する根拠は,平成13年金融庁・国土交通省告示第1号(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)第3が,等級の認定は原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う旨を定めていることにある。
足関節の可動域制限による第12級7号の一般的な枠組み,踵骨骨折及び距骨骨折そのものの等級認定,距骨下関節を固定した場合の当てはめについては,それぞれ別の記事で扱っている。本記事は,これらと重複する説明を避け,リスフラン関節及びショパール関節という中足部の関節に固有の問題に絞る。
第2 欠損障害――第7級8号及び第4級7号
1 等級表の文言と保険金額
自動車損害賠償保障法施行令別表第二は,足部の欠損について二つの号を置いている。第7級8号は「一足をリスフラン関節以上で失つたもの」であり保険金額は1051万円,第4級7号は「両足をリスフラン関節以上で失つたもの」であり保険金額は1889万円である。より近位で失った場合の受け皿は,第5級5号「一下肢を足関節以上で失つたもの」(1574万円)及び第2級4号「両下肢を足関節以上で失つたもの」(2590万円)である。労働者災害補償保険法施行規則別表第一も同じ内容を定めているが,同表の第5級は,神経系統の機能又は精神の障害及び胸腹部臓器の機能の障害を「一の二」「一の三」という枝番号で掲げているため,以降の号がずれ,「一下肢を足関節以上で失つたもの」は第5級3号となる。第7級8号及び第4級7号は,自賠責と労災とで号が一致する。
両足をリスフラン関節以上で失った場合は,一足ずつを第7級8号として併合するのではなく,等級表があらかじめ定めた組合せ等級である第4級7号によることになる。認定基準は,この点を「右左の足をリスフラン関節以上で失った場合,右足をリスフラン関節以上で失ったもの(第7級の8)と左足をリスフラン関節以上で失ったもの(同前)とを併合するのではなく,障害等級表に定められた『両足をリスフラン関節以上で失ったもの』(第4級の7)となる」という例で示している。
2 認定基準による切断部位の画し方
認定基準は,「リスフラン関節以上で失ったもの」を,「足根骨(踵骨,距骨,舟状骨,立方骨及び3個の楔状骨からなる。)において切断したもの」又は「リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの」のいずれかに該当するものと定義している。これに対し,一段階上の「下肢を足関節以上で失ったもの」は,「ひざ関節と足関節との間において切断したもの」又は「足関節において,脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの」と定義されている。
したがって,等級の分水嶺は距骨にある。距骨を脛骨及び腓骨から切り離せば第5級(自賠責5級5号,労災5級3号)であり,距骨より遠位で足根骨を切るか,中足骨を足根骨から切り離せば第7級8号である。この境界は,実際の手術記録及び画像で切断レベルを確定しなければ判断できないため,労災の後遺障害診断書の作成手引も,欠損障害がある場合には切断部位又は欠損部位が明確に分かるように記載することを求めている。切断レベルの記載が「足部切断」「足部離断」等と抽象的にとどまっている場合には,主治医に対して,どの骨のどの高さで切断したのか,あるいはどの関節で離断したのかを特定した記載を求めることになる。
3 等級表の原型としての労働基準法施行規則別表第二
「リスフラン関節」という語がこの等級体系に入った起点は,労働基準法施行規則別表第二(昭和22年厚生省令第23号)である。同表は,労働基準法77条の障害補償の額を定めるものであり,第4級(平均賃金の920日分)の七に「両足をリスフラン関節以上で失つたもの」,第7級(平均賃金の560日分)の八に「一足をリスフラン関節以上で失つたもの」を掲げている。自賠責及び労災の等級表は,いずれもこの表を母型としており,号の並びも基本的に一致する。
同表の備考は五項目あるが,その内容は視力の測定方法並びに「指を失つたもの」「指の用を廃したもの」「趾を失つたもの」「趾の用を廃したもの」の定義に限られており,等級表に掲げられていない障害を近い等級として扱うための規定は置かれていない。この点は,後述する相当等級の根拠を考えるうえで意味を持つ。
第3 ショパール関節における離断には明文がないこと
(続きを読む...)交通事故によるリスフラン関節・ショパール関節損傷の後遺障害等級――第7級8号の欠損障害,可動域制限の評価対象外及び神経症状による構成(AI作成)