目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 「古物」の定義1 条文2 「使用」と「使用のために取引されたもの」3 「幾分の手入れ」第3 13の区分と原材料・化学薬品1 古物の区分2 原材料・化学薬品の扱い3 古物に当たる場合に生じる義務第4 犯罪収益移転防止法の「貴金属等」1 貴金属等売買業者2 金化合物への適用と行政解釈の確認3 取引時確認の対象第5 毒物及び劇物取締法の販売業登録と業務上取扱者1 販売目的の貯蔵・運搬には登録が必要である2 登録は店舗ごとに行われる3 売る側の登録4 営業登録と業務上取扱者の届出を分ける5 盗んだ毒物・劇物の無登録販売と窃盗罪の関係第6 工業用の貴金属含有物の買取りで問題になる点1 義務が品目ごとに異なる2 記録が残っているとは限らない3 個人からの継続的な買取り第7 出典・参考資料1 法令2 行政資料3 関連記事4 裁判例
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日
本記事は,古物営業法の「古物」がどこまでの物を含むかを,未使用品,原材料,化学薬品,工業用の貴金属含有物に即して整理し,あわせて,貴金属の買取業者に適用される犯罪収益移転防止法と毒物及び劇物取締法の規制範囲との違いを説明するものである。
基準日は令和8年9月18日であり,法令は同日にe-Gov法令検索で確認した現行条文による。
警察庁の解釈は,警察庁生活安全局長の通達「古物営業法等の解釈運用基準について」(令和8年5月14日。以下「解釈運用基準」という。)による。
2 結論
①「古物」には,一度使用された物品だけでなく,使用されない物品で使用のために取引されたもの(一度でも使用する目的で購入された未使用品)も含まれる。
②古物営業法施行規則2条は,古物を13の区分に分けているが,化学薬品や工業用の原材料に当たる区分はなく,これらが「古物」に当たるかは,解釈運用基準にも明示の記載がない。
③犯罪収益移転防止法施行令4条1項の「貴金属」は,「金、白金、銀及びこれらの合金」とされている。金化合物は金単体・合金とは異なるが,法の「これらの製品」への該当性と実際の取引の評価を含め,適用を断定する前に行政解釈を確認する必要がある。
④毒物に当たる工業薬品を販売目的で貯蔵・運搬するには,毒物劇物販売業の登録が必要であり,登録は店舗ごとに行われる(毒物及び劇物取締法3条3項,4条1項)。
⑤したがって,工業用の貴金属含有物の買取りでは,どの法律の義務がかかるかが品目ごとに異なり,本人確認や取引記録が当然に残っているとは限らない。
第2 「古物」の定義
1 条文
古物営業法2条1項は,「この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。」と定める。
古物は,①一度使用された物品,②使用されない物品で使用のために取引されたもの,③これらの物品に幾分の手入れをしたもの,の三つからなる。
2 「使用」と「使用のために取引されたもの」
解釈運用基準(第2の1(1))は,「使用」とは物品をその本来の用法に従って使用することをいうとし,衣類であれば着用すること,自動車であれば運行の用に供すること等を例に挙げている。
また,解釈運用基準(第2の1(2))は,「使用のために取引されたもの」とは,自己が使用し,又は他人に使用させる目的で購入等されたものをいい,小売店等から一度でも一般消費者の手に渡った物品は,未使用であっても「古物」に該当するとしている。
そのため,消費者が贈答目的で購入した商品券や食器セットのように,未開封・未使用の物品であっても,いったん使用目的で取引された後は古物として扱われる。
3 「幾分の手入れ」
解釈運用基準(第2の1(3))は,「幾分の手入れ」とは,物品の本来の性質,用途に変化を及ぼさない形で修理等を行うことをいうとし,絵画の表面の修補や刀の研ぎ直しを例に挙げている。
逆にいえば,物品の本来の性質や用途を変えてしまうほどの加工をした物は,この類型には当たらない。
第3 13の区分と原材料・化学薬品
1 古物の区分
古物商の許可申請書には,取り扱う古物の区分を記載する(古物営業法5条1項3号)。
古物営業法施行規則2条は,その区分を次の13としている。
①美術品類(書画,彫刻,工芸品等)
②衣類(和服類,洋服類,その他の衣料品)
③時計・宝飾品類(時計,眼鏡,宝石類,装身具類,貴金属類等)
(続きを読む...)古物営業法の「古物」の範囲―未使用品・原材料・工業用貴金属と犯罪収益移転防止法の「貴金属等」の違い(AI作成)