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委託販売・代理店契約でメーカーが販売価格を指定できる場合―令和8年7月改正指針と契約審査の実務(AI作成)

第1 結論と対象となる取引

メーカーが自社商品を販売店へ売り切り,販売店が在庫・販売費用を負担してユーザーへ再販売する場合,メーカーが販売価格を指定し,守らせる行為は原則として再販売価格の拘束として問題となる(独占禁止法2条9項4号・19条)。一方,販売店が単なる取次ぎとして機能し,実質的にメーカーがユーザーへ販売していると認められる場合には,メーカーによる価格指示は通常,違法とはならない。名称が「代理店」「委託販売」「売買」のどれであるかだけでは決まらない。

令和8年7月8日に改正された公正取引委員会の流通・取引慣行指針第1部第1の2(7)は,メーカーが販売店に商品を販売する形式でも,ユーザーへの販売までの危険と費用をメーカーが自ら負担し,実質的にメーカー自身が販売していると認められる場合を例示した。これは価格指定を一般に解禁する規則ではなく,取引実態を審査するための具体化である。

第2 令和8年7月改正指針の判断枠組み

指針が掲げる典型は,①委託者の危険負担と計算による委託販売,②メーカーがユーザーと直接価格を決め,卸売業者が物流・代金回収の手数料を得る取引,③形式上は販売店への売買でも,メーカーがユーザーへの販売に至るまでの危険と費用を負担する取引である。いずれも,取引先が単なる取次ぎとして機能し,実質的に誰が販売しているかを見る。

③は令和8年7月の改正公表資料で追加された場合である。販売店へ所有権を移したという形式や,基本契約を売買と呼ぶことは,それだけで排除理由にならない。逆に,メーカーが一部のリスクを負担するだけで③に該当すると決めることもできない。卸売業者を挟み,その卸売価格まで指示するなら,卸売段階に生じる危険と費用の負担も確認する(公取委Q&A・Q12-4)。

第3 危険と費用を誰が負担するか

指針第1部第1の2(7)③の注は,通常確認する危険として,売れ残り,契約不適合,在庫の滅失・毀損及び代金回収不能を挙げる。また,ユーザーへの販売に至るまでの在庫保管費用,輸送費用,広告宣伝費用その他の費用を挙げる。販売店の善良な管理者としての注意義務違反に起因する損失と,通常の事業上のリスクは分ける。

公取委Q&A・Q12-5は,荷造費用,見本費用,人件費,研修費用,保険料等も,取引の内容によって問題になると説明する。これらを一律の定額手数料で賄っていると主張する場合でも,どの費目が発生し,メーカーがどの算定方法で負担するかを確かめる。費目の不足を販売店が申し出て協議できる仕組みと,実際の精算記録が重要となる。

契約書には,返品できる時期・条件・返送費用,契約不適合品の代替又は返金,在庫事故の負担,売掛金の回収不能,広告・陳列・研修等の費用負担を具体的に置く。運用では,返品実績,事故処理,未回収代金の負担,請求書・精算書及び費用協議の記録を照合する。条項だけ整えても,販売店が実際に負担している費目が残れば,実質的な販売主体の判断に響く。

第4 公取委の家電メーカー相談事例

公取委の家電メーカーの相談事例では,基本契約上はメーカーから取引先への売買であった。それでも,売れ残り品を販売店が随時返品でき,メーカーが返品費用と代金を負担すること,契約不適合や善管注意義務違反によらない滅失等の危険をメーカーが負うこと,代金回収不能の危険を実質的に販売店が負わないこと,販売までの費用をメーカーが負担し不足費目を協議することなどから,取引先は単なる取次ぎであると評価された。

公取委は,その相談の前提でメーカーの価格指示が再販売価格の拘束として問題とならないと回答した。これは相談に示された契約・運用の組合せに対する回答であり,「返品条項があれば常に適法」という一般的な認定ではない。導入前には,自社の危険・費用の負担を同じ項目で比較する必要がある。

第5 契約書と運用資料の確認順序

弁護士が契約審査を行う際は,最初に,メーカー,卸売業者,販売店,ユーザーの間で,誰が誰に売り,誰が価格を決め,誰が代金を受け取るかを図示する。次に,基本契約,覚書,返品規程,価格通知,手数料規程,物流契約,販促費精算書を突き合わせ,商品・費用・危険の流れを確認する。

その後,①売れ残り品の返品可能性と実績,②契約不適合品と在庫事故の処理,③回収不能時の最終負担,④保管・輸送・広告・人件費等の負担,⑤販売店からの追加費目の申出・協議,⑥卸売業者を挟む場合の各段階の負担を一覧にする。未確定の項目は「メーカー負担」と推定せず,契約上の義務と実際の処理を区別して補足資料を求める。

価格指定を開始した後も,返品拒否,費用精算漏れ,販売店への損失転嫁などで前提が変わり得る。価格通知とリベート条件だけを監査するのでなく,返品・費用・代金回収の実績を定期的に確認することが必要である。

第6 売切りの代理店契約と価格指定

販売店が自ら在庫を抱え,販売に要する費用を負担し,顧客を開拓して価格を決める通常の売切り取引では,メーカーが希望小売価格を参考として示すことと,値引きに不利益を課して価格を守らせることを区別する。推奨価格に従わない販売店へのリベート不支給,供給停止,出荷遅延等は,価格拘束の実効性を裏付け得る。メーカーの市場シェアの数字だけで,再販売価格拘束を免れるわけではない。

保守品質の確保やブランド維持という目的があっても,それだけで販売店の価格決定権を制限できるわけではない。サービス方法の基準,研修,販売後の支援等で目的を達成できるかを検討し,顧客の代理店変更を妨げる手続は別に評価する。推奨価格,リベート及び顧客切替えの検討は「販売代理店の値引き・顧客切替えと独占禁止法(AI作成)」を参照されたい。

第7 相談・是正と関連する記事

価格指定を予定する事業者は,公取委の相談事例と指針を自社の条件に照らし,負担主体や運用が未確定なら,契約書・覚書・費用表を具体化した上で公取委への個別相談を検討する。すでに売切りの販売店へ価格遵守を求めている場合は,価格通知,リベート算定,警告,供給条件及び販売店の実際の価格行動を確認し,必要な是正を検討する。

不公正な取引方法の類型,行政措置,契約の効力,差止め及び損害賠償の入口は「不公正な取引方法に関する実務メモ(AIリライト)」に整理した。令和8年度司法試験経済法第1問の記事は売切り型代理店における推奨価格・リベート・顧客切替えの設例であり,本稿の「実質的な自社販売」の例が当然に妥当する事案ではない。

第8 一次資料と本稿の限界

①独占禁止法2条9項4号・19条
②公取委「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」第1部第1の2(7)(令和8年7月8日改正)
③公取委・同改正の公表資料
④公取委「よくある質問コーナー(独占禁止法)」Q12-4・Q12-5
⑤公取委「家電メーカーによる取引先事業者に対する一般消費者への販売価格の指示」

本稿は上記の公表資料に示された判断枠組みと相談事例を,契約審査の確認順序に置き換えたものである。個別の契約についての結論は,取引の全段階における危険・費用の実際の負担と価格指示の内容を調べた上で判断する。