目次
1 総論
2 法定5類型及び指定類型
3 一般指定及び特殊指定
4 関連記事その他
1 総論
(1) 事業者は不公正な取引方法を用いてはならない(独禁法19条)ところ,不公正な取引方法とは,独禁法2条9項のいずれかに該当する行為をいい,①同条項1号ないし5号に基づく法定5類型,及び②同条項6号に基づく指定類型があります。
(2) 不公正な取引方法がある場合,公正取引委員会は,事業者に対し,当該行為の差し止め,契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができます(独占禁止法20条1項)。
2 法定5類型及び指定類型
(1)ア 平成21年の独占禁止法改正以前につき,不公正な取引方法に関しては独禁法2条9項6号に相当する規定のみが置かれ,不公正な取引方法として禁止される行為類型はいずれも「公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」でした。
しかし,平成21年の独占禁止法改正で不公正な取引方法の一部に課徴金制度を導入したことに伴い,一般指定の中から,課徴金対象となる5つの行為類型(①共同の供給拒絶,②差別対価,③不当廉売,④再販売価格拘束及び⑤優越的地位の濫用)を切り出して,独禁法2条9項1号ないし5号に基づく法定5類型として規定されました。
イ 公正取引委員会HPに「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成29年6月16日改正)及び「優越的地位の濫用~知っておきたい取引ルール~」が載っています。
(2) 独禁法2条9項6号に基づく指定類型としての「不公正な取引方法」については,すべての事業者について適用される「一般指定」と,特定の事業分野についてだけ適用される「特殊指定」があります。
3 一般指定及び特殊指定
(1)ア 「一般指定」としての「不公正な取引方法」(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)では,15の行為類型(例えば,取引拒絶,排他条件付取引,拘束条件付取引,再販売価格維持行為,ぎまん的顧客誘引及び不当廉売)が,「公正な競争を阻害するおそれがあるもの」として指定されています。
イ 卸売業者等が小売業者に対して商品の販売に当たり顧客に商品の説明をすることを義務付けるなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは,それが当該商品の販売のためのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ,かつ,他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り,拘束条件付取引に当たりません(最高裁平成10年12月18日判決)。
(2) 「特殊指定」としては以下のものがあります。
① 大規模小売業者が行う特定の不公正な取引方法(いわゆる「大規模小売業告示」です。)
② 特定荷主が行う特定の不公正な取引方法(いわゆる「物流特殊指定」です。)
③ 新聞業における特定の不公正な取引方法(いわゆる「新聞特殊指定」です。)
4 関連記事その他
(1)ア 不公正な取引方法を禁止する独禁法19条に違反した契約の私法上の効力については,その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として,同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではありません(最高裁昭和52年6月20日判決)。
イ ビジネスローヤーズに独禁法違反行為の私法上の効力を巡る裁判例と契約書起案・審査における留意点 – BUSINESS LAWYERSが載っています。
(2) 優越的地位の濫用を含む不公正な取引方法に基づく損害賠償請求(独占禁止法25条)をするためには,独占禁止法49条に規定する排除措置命令が確定した後でなければ裁判上主張することはできない(独占禁止法26条1項)ものの,民法上の不法行為を主張する余地はあります(弁護士鈴木悠太HPの「優越的地位の濫用(独占禁止法)」参照)。
(3) 景品表示法及び下請法は独禁法の補完法となります。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 景品表示法に関するメモ書き
・ 下請法に関するメモ書き
【#IPO で初の注意】
みずほ証券が主幹事を務めるIPOの公開価格設定プロセスにおいて、公開価格が一方的に低く設定されることにつながり、新規上場会社に不当に不利益を与えるおそれがある行為がみられたので #優越的地位の濫用 につながるおそれがあるとして注意しました。https://t.co/YptO4DJ1Np pic.twitter.com/QFB8Lr1zIe— 公正取引委員会 (@jftc) April 13, 2023