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目次第1 靱帯損傷の診断名だけでは等級は決まらない1 認定までの四つの段階2 動揺,可動域及び疼痛は別の評価経路である3 本記事の対象第2 ACL・PCL・MCL・LCL損傷と不安定性1 前十字靱帯(ACL)2 後十字靱帯(PCL)3 内側側副靱帯(MCL)4 外側側副靱帯(LCL)及び複合靱帯損傷第3 動揺関節の第8級・第10級・第12級1 自賠責の等級表2 硬性補装具の必要性による三段階3 筋力低下,可動域制限及び疼痛第4 MRI・徒手検査・ストレス撮影の役割1 MRIが示すのは主として靱帯の形態である2 MRI上の連続性と正常機能は同じではない3 徒手検査は検査名だけでなく条件を残す4 ストレス撮影は動揺を可視化する証拠方法である第5 事故との因果関係をどのように検討するか1 事故による損傷を支持する事情2 因果関係を弱める事情3 既往損傷と事故による悪化第6 症状固定までに確保する資料の優先順位1 低負担で先に確保する資料2 中間評価で不足を特定する3 高負担手段へ進む条件と停止基準第7 想定される反論と再検討事項1 「MRIで断裂がない又は連続している」という反論2 「装具は本人が念のため使用しているだけである」という反論3 「仕事を続けており減収もない」という反論第8 裁判例及び紛争処理事例から分かること1 常時硬性補装具を必要として第8級相当とした事例2 第12級の動揺性と労働能力喪失率を判断した事例3 紛争処理事例に一律のミリ数基準はない4 裁判例調査の限界第9 出典・参考資料1 法令・行政資料2 裁判例及び実務書3 診療ガイドライン及び医学文献
第1 靱帯損傷の診断名だけでは等級は決まらない
1 認定までの四つの段階
交通事故で前十字靱帯(ACL),後十字靱帯(PCL),内側側副靱帯(MCL)又は外側側副靱帯(LCL)を損傷しても,診断名やMRIの断裂像だけで後遺障害等級が決まるわけではない。
動揺関節として第8級,第10級又は第12級の認定を検討するときは,①解剖学的な靱帯損傷があること,②その損傷又は既往病変の悪化が事故によって生じたこと,③症状固定時にも機械的不安定性が残っていること,④その不安定性のために硬性補装具を必要とする場面及び頻度が等級基準に対応することを,順に検討する必要がある。
この四段階のどこが争われているかによって,集めるべき資料は異なる。MRIは主として第1段階,事故直後の症状及び受傷機転は第2段階,徒手検査・ストレス撮影・関節弛緩性の機器計測は第3段階,装具処方及び日常生活・就労状況は第4段階を支える。
サイベックス等の等速性筋力測定は,膝屈曲筋群及び伸展筋群が発揮するトルク等を測る検査であり,靱帯の弛緩又は脛骨の移動量を直接測るものではない。
筋力低下,リハビリテーションの到達度及び機能上の支障を補足する資料にはなるが,機械的不安定性を立証する検査とは区別する必要がある。
2 動揺,可動域及び疼痛は別の評価経路である
膝の靱帯損傷後には,動揺関節だけでなく,可動域制限又は疼痛・しびれが残ることがある。これらは同じ診断名から生じ得るが,等級認定上の要件は別であり,一つの所見から他の障害を当然に推定することはできない。
屈曲又は伸展の制限が中心である場合は,膝関節の可動域制限と後遺障害12級7号で説明する測定方法及び器質的原因の検討が中心となる。動揺性が等級に届かなくても,画像所見及び一貫した症状経過によって局部の神経症状として第12級13号又は第14級9号が問題となる場合がある。
3 本記事の対象
本記事は,交通事故による十字靱帯・側副靱帯損傷について,自賠責保険における動揺関節の等級,MRI及び動的検査の役割,事故との因果関係並びに証拠収集の優先順位を整理するものである。
具体的な等級は,事故態様,既往歴,治療経過,症状固定時の所見及び就労内容によって異なる。
第2 ACL・PCL・MCL・LCL損傷と不安定性
1 前十字靱帯(ACL)
ACLは,脛骨の前方移動及び回旋を抑える。損傷後には,方向転換,急停止,階段下降又は不整地歩行で膝崩れが生じることがあり,Lachman test,前方引き出しテスト,pivot shift test及びKT-1000等による前方移動量の機器計測が用いられる。
もっとも,診察時の疼痛,腫脹,防御性筋収縮,受傷からの時期及び検者の手技によって結果は変わる。したがって,「ACL断裂」という診断名,徒手検査の一回の陰性又は健患差の一つの数値だけで,症状固定時の機能を決めることはできない。
2 後十字靱帯(PCL)
PCLは,脛骨の後方移動を抑える。PCL損傷では,posterior sag sign,後方引き出しテスト,重力位・跪座位・器械負荷によるストレス撮影等によって後方不安定性を評価する。
PCLは断裂後に連続性を回復して見える場合があるが,靱帯が弛緩した位置で治癒し,後方動揺が残ることがある。したがって,MRI上の連続性と正常な制動機能は区別しなければならない。
(続きを読む...)交通事故による十字靱帯・側副靱帯損傷の後遺障害――動揺関節,MRI及び等級認定(AI作成)