メインコンテンツへスキップ

刑事・恩赦

刑事控訴審の未決勾留日数の算入―控訴棄却・原判決破棄の場合(AI作成)

目次第1 未決勾留日数算入の基本1 裁定算入と法定通算を区別する2 上訴申立後の日数が全部通算される場合第2 控訴棄却の場合1 「60日控除」ではなく,算入日数を確認する2 第二東京弁護士会の2020年資料3 2024年の裁判所公表例4 実務上の結論第3 原判決破棄の場合1 被告人側の控訴で原判決が破棄された場合2 差戻しの場合3 検察官控訴の場合第4 弁護側の確認事項1 日数表を作る2 判決主文と根拠条文を照合する3 審理経過を記録する4 他の刑の執行との重複を除く第5 根拠資料及び注意
第1 未決勾留日数算入の基本
1 裁定算入と法定通算を区別する

刑法21条は,未決勾留日数の全部又は一部を本刑に算入することが「できる」と定めている。これは,裁判所が判決で算入日数を定める裁定算入である。

刑事訴訟法495条は,これとは別に,一定の日数を当然に本刑へ通算する法定通算を定めている。同条1項によれば,上訴提起期間中の未決勾留日数は,上訴申立後の日数を除いて全部通算される。

2 上訴申立後の日数が全部通算される場合

刑事訴訟法495条2項によれば,上訴申立後の未決勾留日数が全部通算されるのは,①検察官が上訴を申し立てた場合,または②検察官以外の者が上訴を申し立て,その上訴審で原判決が破棄された場合である。

したがって,被告人だけが控訴し,控訴棄却となった場合は,同項による全部通算ではなく,刑法21条による裁定算入が問題となる。

第2 控訴棄却の場合
1 「60日控除」ではなく,算入日数を確認する

「60日控除」という言い方は,60日を本刑に算入するという意味なのか,控訴審の未決勾留の全期間から60日を差し引いた残りを算入するという意味なのかが曖昧である。

少なくとも,法令は「全期間から60日を控除する」という計算式を定めていない。判決主文も,通常は「当審における未決勾留日数中○日を原判決の刑に算入する」と,実際に算入する日数を示す。

2 第二東京弁護士会の2020年資料

第二東京弁護士会「上訴審弁護について」は,被告人控訴の棄却事案では60日前後,具体的には50日から70日程度が算入されることが多い旨を紹介している。

ただし,これは2020年時点の弁護士会広報誌に掲載された実務上の説明であって,法令上の基準でも,一律に適用される計算式でもない。

3 2024年の裁判所公表例

福岡高裁令和6年3月6日判決は,被告人の量刑不当の控訴を棄却し,当審における未決勾留日数中110日を原判決の刑に算入した。

札幌高裁令和6年7月16日判決は,訴訟手続の法令違反及び事実誤認を理由とする控訴を棄却し,当審における未決勾留日数中60日を原判決の刑に算入した。

いずれも裁判所ウェブサイトで公表された判決であるが,算入日数を60日または110日とした個別の理由までは判決文に記載されていない。また,裁判所ウェブサイトに掲載される裁判例は全件ではない。この2例からも,60日が固定された上限または標準日数ではないことが分かる一方,算入日数を予測する一般式までは導けない。

4 実務上の結論

被告人控訴の棄却事案については,「控訴申立てから判決前日までの全日数-60日」と機械的に計算すべきではない。まず,判決主文に記載された算入日数を確認し,法定通算となる日数と裁定算入の日数を分けて把握する必要がある。

第3 原判決破棄の場合
1 被告人側の控訴で原判決が破棄された場合

検察官以外の者が控訴を申し立て,控訴審で原判決が破棄された場合,上訴申立後の未決勾留日数は刑事訴訟法495条2項2号により全部通算される。破棄自判の場合だけでなく,条文上は「原判決が破棄されたとき」が要件である。

2 差戻しの場合

同条4項は,上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留について,上訴中の未決勾留日数に準じて通算すると定める。差戻し後も身柄拘束が続く場合は,この規定に加え,保釈及び勾留取消しの要否も別に検討する。

3 検察官控訴の場合

検察官が控訴を申し立てた場合は,結果が控訴棄却であるか原判決破棄であるかにかかわらず,上訴申立後の未決勾留日数が同条2項1号により全部通算される。

第4 弁護側の確認事項
1 日数表を作る

(続きを読む...)刑事控訴審の未決勾留日数の算入―控訴棄却・原判決破棄の場合(AI作成)

刑事控訴審で原判決を破棄した後の自判と差戻し―刑訴法400条と実務(AI作成)

目次第1 刑訴法400条の構造1 差戻し又は移送2 直ちに判決できる場合の自判第2 差戻しが必要となる事情1 第一審での審理が必要な場合2 二審制と防御権第3 自判が選ばれる場合1 記録から直ちに結論を出せる場合2 破棄理由との対応第4 統計の読み方1 過去の比率を現行実務と同一視しない2 近時の高裁資料第5 根拠資料及び関連記事
第1 刑訴法400条の構造
1 差戻し又は移送

刑事訴訟法400条本文は,原判決を破棄する場合に,事件を原裁判所へ差し戻し,又は原裁判所と同等の他の裁判所へ移送することを定める。

2 直ちに判決できる場合の自判

同条ただし書は,控訴裁判所が訴訟記録及び取り調べた証拠によって直ちに判決できる場合に自判を認める。自判の可否は,控訴審で追加の事実審理が必要かと関係する。

第2 差戻しが必要となる事情
1 第一審での審理が必要な場合

重要な証人尋問,争点整理又は裁判員裁判を含む第一審手続を改めて行う必要がある場合は,差戻しが問題となる。

2 二審制と防御権

控訴審が新たな重要事実を認定して直ちに有罪又は重い判断をすることが,当事者の防御機会や第一審の審判を受ける利益を害しないかを検討する。

第3 自判が選ばれる場合
1 記録から直ちに結論を出せる場合

量刑の変更,法令適用の訂正又は証拠関係が尽くされている場合には,自判が選ばれることがある。

2 破棄理由との対応

原判決のどの誤りを是正し,控訴審がどの証拠に基づいてどの主文を言い渡すかを判決理由で確認する。

第4 統計の読み方
1 過去の比率を現行実務と同一視しない

平成18年終局事件の集計では破棄後の自判が多数であったが,古い全国集計であり,現在の個別事件の見通しを直接示すものではない。
平成12年から令和7年までの全国の高等裁判所における破棄自判及び破棄差戻し・移送の人員は,判決要旨の取扱い及び刑事上訴審の事件統計に掲載している。

2 近時の高裁資料

東京高裁の令和7年途中集計では,破棄自判と破棄差戻し・移送の件数が示されている。母集団,期間及び終局区分を確認して用いる必要がある。

第5 根拠資料及び関連記事

刑事訴訟法400条(e-Gov法令検索)を確認した。
近時の数値は,東京高裁の刑事控訴―破棄率,審理期間,保釈抗告及び大型記録事件(令和7年度)を参照されたい。

裁判員裁判の控訴審―事実誤認・量刑不当の審査と第一審尊重(AI作成)

目次第1 裁判員裁判にも通常の上訴制度が適用される1 職業裁判官のみの控訴審が審査する2 国民参加の趣旨を踏まえる第2 事実誤認の審査1 論理則・経験則違反を具体的に示す2 別の心証を述べるだけでは足りない第3 量刑不当の審査1 量刑傾向と犯情2 職業裁判官の感覚への置換を避ける第4 控訴趣意書の実務1 第一審判決を基準にする2 新証拠の位置付け第5 根拠資料及び関連記事
第1 裁判員裁判にも通常の上訴制度が適用される
1 職業裁判官のみの控訴審が審査する

裁判員裁判であっても,事実誤認又は量刑不当があれば控訴審で破棄され得る。裁判員の判断を常に最終とする制度ではない。

2 国民参加の趣旨を踏まえる

もっとも,第一審で直接証拠調べを行い,裁判員と裁判官が共同で判断した意味を踏まえ,控訴審は事後審としての役割を徹底する必要がある。

第2 事実誤認の審査
1 論理則・経験則違反を具体的に示す

最高裁平成24年2月13日判決(平成23年(あ)第757号・刑集66巻4号482頁)は,第一審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを控訴審が具体的に示す必要があるとした。

2 別の心証を述べるだけでは足りない

控訴審が記録から異なる印象を持ったというだけで破棄することはできない。第一審の推認過程のどこに客観的な不合理があるかを示す。

第3 量刑不当の審査
1 量刑傾向と犯情

最高裁平成27年2月3日判決は,死刑選択の場面で先例の集積からうかがわれる傾向を検討し,その傾向と異なる判断をする場合は具体的で説得的な根拠を示す必要があるとした。

2 職業裁判官の感覚への置換を避ける

裁判員裁判の量刑を,控訴審裁判官の量刑感覚と異なるというだけで変更してはならない。他方,犯情評価の誤り又は量刑傾向からの説明できない乖離があれば審査対象となる。

第4 控訴趣意書の実務
1 第一審判決を基準にする

第一審の証拠評価又は量刑理由を正確に要約し,その具体的な不合理を示す。第一審弁論の再掲だけでは足りない。

2 新証拠の位置付け

新証拠がある場合は,第一審判断の不合理を明らかにするものか,判決後の情状に関するものかを区別する。

第5 根拠資料及び関連記事

刑事訴訟法(e-Gov法令検索),最高裁平成24年2月13日判決及び最高裁平成27年2月3日判決を確認した。
事実誤認は刑事控訴の事実誤認,量刑不当は刑事控訴の量刑不当を参照されたい。

刑事控訴の事実誤認―刑訴法382条の審査基準と論理則・経験則違反(AI作成)

目次第1 刑訴法382条の基準1 判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認2 控訴審は第一審の心証を作り直す場ではない第2 論理則・経験則違反の示し方1 推認過程を分解する2 供述信用性第3 控訴趣意書の組み立て1 争点ごとに六段階で書く2 「疑わしきは被告人の利益に」との関係第4 裁判員裁判1 直接主義・口頭主義の重み2 無条件の尊重ではない第5 根拠資料及び関連記事
第1 刑訴法382条の基準
1 判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認

刑事訴訟法382条の事実誤認は,原判決の事実認定に誤りがあるだけでなく,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかな場合に問題となる。

2 控訴審は第一審の心証を作り直す場ではない

最高裁平成24年2月13日判決(平成23年(あ)第757号・刑集66巻4号482頁)は,控訴審が事実誤認をいうには,第一審判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要があるとした。

第2 論理則・経験則違反の示し方
1 推認過程を分解する

原判決が,間接事実から要証事実をどのように推認したかを分解する。前提事実の誤り,推認の飛躍,反対仮説の検討漏れ及び証拠相互の矛盾を指摘する。

2 供述信用性

供述の一部だけを取り出すのではなく,変遷,客観証拠との整合性,利害関係,誘導の可能性及び供述時の条件を示す。第一審が直接見聞した供述態度を,記録上の別評価だけで置き換える主張は慎重に構成する。

第3 控訴趣意書の組み立て
1 争点ごとに六段階で書く

①原判決の認定,②根拠証拠,③不合理な推認,④見落とされた証拠・事実,⑤合理的な認定,⑥主文への影響の順で書く。

2 「疑わしきは被告人の利益に」との関係

この原則を掲げるだけでは足りない。原判決のどの推認が合理的疑いを超えていないかを,証拠に即して示す。

第4 裁判員裁判
1 直接主義・口頭主義の重み

裁判員裁判では第一審の直接主義・口頭主義が徹底されるため,控訴審の事後審査は一層慎重であるべきとされる。

2 無条件の尊重ではない

第一審判断に論理則・経験則違反があれば破棄され得る。第一審尊重は,具体的な不合理を審査しないという意味ではない。

第5 根拠資料及び関連記事

刑事訴訟法382条(e-Gov法令検索)及び最高裁平成24年2月13日判決を確認した。
裁判員裁判については,裁判員裁判の控訴審を参照されたい。

刑事控訴の量刑不当―控訴趣意書に書く量刑事情と原判決への反論(AI作成)

目次第1 量刑不当の法的枠組み1 量刑不当を裏付ける事実を援用する2 第一審の量刑判断を出発点とする第2 控訴趣意書の構成1 原判決の量刑理由を要約する2 犯情と一般情状を区別する3 結論への影響を示す第3 原判決後の事情1 被害弁償・示談2 更生環境第4 裁判員裁判の量刑審査1 第一審判断の尊重2 具体的な評価誤りを示す第5 根拠資料及び関連記事
第1 量刑不当の法的枠組み
1 量刑不当を裏付ける事実を援用する

刑事訴訟法381条は,量刑不当を理由とする控訴趣意書に,訴訟記録及び原裁判所で取り調べた証拠に現れる事実であって,量刑不当を信ずるに足りるものを援用することを求める。
「甚しく不当」という文言は上告審の職権破棄を定める411条2号のものであり,381条の条文要件と混同しない。

原判決の量刑理由と証拠を対応させ,評価の誤りや考慮漏れが執行猶予の可否・刑期等にどう影響するかを具体的に示す。

2 第一審の量刑判断を出発点とする

控訴審は量刑を一から決め直す場ではない。原判決が重視した犯情及び一般情状を特定し,評価の誤り,考慮漏れ又は比重の不合理を指摘する。

第2 控訴趣意書の構成
1 原判決の量刑理由を要約する

罪質,結果,動機,計画性,役割,被害回復,前科,反省,更生環境など,原判決が挙げた事情を整理する。

2 犯情と一般情状を区別する

犯罪行為そのものに関わる犯情と,被告人の生活歴・反省・監督環境等の一般情状を区別する。主張する事情が量刑の中心を動かすものか,補充的なものかを明示する。

3 結論への影響を示す

各事情の指摘後に,執行猶予の可否,刑種又は刑期にどう影響するかを書く。比較事例を用いる場合は,罪名だけでなく犯情の共通点・相違点を示す。

第3 原判決後の事情
1 被害弁償・示談

第一審判決前の弁償を原判決が看過・過小評価したとの主張は,381条・397条1項による量刑不当として整理する。
第一審判決後に成立・履行された弁償や示談は,393条2項による情状の取調べと397条2項による破棄の問題となり,原判決を破棄しなければ明らかに正義に反するかが判断される。

提出資料には,判決日,合意成立日,各支払日,対象被害,充当額,残額,実際の受領,資金源及び被害者の意向を示す。
支払約束と履行済みの弁償,民事上の示談と宥恕を同一に扱わない。
財産犯で被害回復が執行猶予の可否を大きく左右し得ることと,弁償すれば必ず執行猶予になるという保証がないことの双方を説明する。
詳しくは,被害弁償は刑事処分・量刑にどう影響するかを参照されたい。

2 更生環境

就労先,住居,引受人,治療,依存症対策及び監督計画は,実行可能性を裏付ける資料を付ける。抽象的な誓約だけでは評価されにくい。

第4 裁判員裁判の量刑審査
1 第一審判断の尊重

裁判員裁判も控訴審の審査を受ける。
最高裁平成27年2月3日第二小法廷決定(平成25年(あ)第1729号)は,死刑選択について,先例の集積から考慮要素と重みの根拠を検討し,具体的・説得的な理由を示す必要と,控訴審が判断の合理性を審査することを説明した。

同決定の補足意見は,職業裁判官の感覚と異なるというだけで裁判員裁判の判断を安易に変更しないという視点を示す。

(続きを読む...)刑事控訴の量刑不当―控訴趣意書に書く量刑事情と原判決への反論(AI作成)

東京高裁の刑事控訴-破棄率,審理期間,保釈抗告及び大型記録事件(令和7年度)(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料の読み方1 対象となる資料2 破棄率を読む際の注意第2 刑事控訴事件の終局内訳1 令和7年1月から9月まで2 破棄事件数と破棄率第3 審理期間1 既済事件の審理期間2 長期未済事件3 全国の刑事控訴審との比較第4 大型記録事件1 50キログラム以上の記録2 実務上の意味第5 保釈に関する抗告審1 令和7年9月末までの数値2 個別事件への使用上の限界第6 弁護士実務への示唆1 控訴相談及び控訴理由作成2 記録及び進行の管理第7 出典及び関連記事1 一次資料2 関連記事
第1 この記事の対象と資料の読み方
1 対象となる資料

1 この記事は,東京高裁刑事部が作成した「令和7年度刑事事件概況説明資料」(以下「本資料」といいます。)のうち,刑事控訴事件の終局区分,破棄率,審理期間,大型記録事件及び保釈に関する抗告審の状況を整理したものです。
2 本資料の令和7年の事件数及び割合は,特に記載のない限り,同年1月から9月まで又は同年9月末現在の数値です。大型記録事件及び長期未済事件には,同年11月現在の資料も含まれます。
3 以下で「資料記載」とした部分は本資料の記載又は表から直接確認できる事項,「計算値」とした部分は本資料の数値から私が計算した事項です。

2 破棄率を読む際の注意

1 本資料の破棄率は,東京高裁の全刑事控訴事件数に対する破棄事件数の割合です。個別事件で控訴が認められる確率を示すものではありません。
2 刑事訴訟法397条1項による破棄と同条2項による破棄の理由は,一つの事件に複数ある場合には重複して計上されています。そのため,各理由の件数又は割合を単純に合計しても,破棄事件数又は破棄率にはなりません。
3 全国の高等裁判所及び最高裁判所における刑事訴訟事件の終局区分別既済人員(平成12年から令和7年まで)は,判決要旨の取扱い及び刑事上訴審の事件統計に掲載しています。

第2 刑事控訴事件の終局内訳
1 令和7年1月から9月まで

1 本資料7頁の第5表によれば,令和7年1月から9月までに終局した刑事控訴事件は1523人でした。
2 主な内訳は,破棄自判のうち有罪90人(5.9%),破棄差戻し・移送7人(0.5%),控訴棄却1194人(78.4%),取下げ226人(14.8%),その他6人(0.4%)でした。
3 破棄自判の有罪90人には,執行猶予を付したもの33人及び保護観察に付したもの2人が含まれます。割合の分母又は包含関係を無視して数字を並べないことが重要です。

2 破棄事件数と破棄率

1 本資料8頁の第7表によれば,令和7年9月末現在の破棄事件数は97件,破棄率は6.4%でした。
2 刑事訴訟法397条1項による破棄は22件(1.4%)であり,そのうち事実誤認によるものは10件(0.7%)でした。同条2項による破棄は76件(5.0%)でした。
3 破棄理由が複数ある場合には重複して計上されるため,22件と76件の合計が97件にならないことは矛盾ではありません。
4 破棄率は,昭和55年18.5%,平成7年16.1%,平成22年12.0%,平成27年10.1%,令和2年9.4%,令和7年9月末6.4%と推移しています。ただし,離れた時点の値を比較する際は,事件構成,法制度及び運用環境の変化を考慮する必要があります。

第3 審理期間
1 既済事件の審理期間

1 本資料7頁の第6表によれば,令和7年1月から9月までに終局した1523人のうち,1か月以内は141人(9.3%),1か月を超え2か月以内は80人(5.3%),2か月を超え3か月以内は364人(23.9%),3か月を超え6か月以内は772人(50.7%)でした。
2 累積では,3か月以内が38.4%,6か月以内が89.1%,1年以内が98.8%でした。
3 これは対象期間内に終局した事件の分布であり,現在係属中の特定事件がいつ終局するかを示すものではありません。

2 長期未済事件

1 本資料10頁の第9表は,令和7年11月現在,受理から2年を超える刑事控訴未済事件を3件掲載しています。
2 本資料の説明上,これらは事件が停滞しているものではないとされています。係属期間が長いという事実だけから,裁判所又は当事者の不合理な遅延を推認することはできません。
3 長期化の分析には,公判回数,争点,証拠量,鑑定,証人尋問,健康事情その他の事件固有の進行を確認する必要があります。

3 全国の刑事控訴審との比較

(続きを読む...)東京高裁の刑事控訴-破棄率,審理期間,保釈抗告及び大型記録事件(令和7年度)(AI作成)

刑事手続のデジタル化とは―令和7年法律第39号の施行日,電子令状,オンライン証拠開示及びLinKage(AI作成)

目次

第1 この記事の結論第2 改正法の三つの柱1 書類・証拠・令状の電子化2 ビデオリンク方式の拡大3 情報通信技術の進展に伴う犯罪への対応第3 施行時期を三段階で確認する1 令和7年6月12日に施行された規定2 令和8年5月21日に施行された規定3 令和9年3月31日までの政令日第4 電子令状と電磁的記録提供命令1 電子令状2 電磁的記録提供命令第5 オンライン証拠開示は一律ではない第6 個別事件への適用を決める事項第7 裁判所システムの公表名称と位置付け第8 弁護士事務所の準備1 事件ごとの入口を固定する2 送信と期限の証拠を残す3 証拠データの権限を絞る第9 公開資料で確認できることと確認できないこと第10 関連記事第11 出典
第1 この記事の結論

刑事手続のデジタル化を定める「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第39号)は,令和7年5月16日に成立し,同月23日に公布された。
同法は一度に全面施行されるのではなく,規定ごとに段階的に施行される。

令和8年9月15日現在,情報通信技術の進展等に伴う犯罪への対応に関する一部規定は令和7年6月12日に,電磁的記録提供命令,ビデオリンク方式による証人尋問及び特定電子移転財産権の没収等に関する一部規定は令和8年5月21日に施行されている。
書類の電子化,電子令状,オンラインによる書類・証拠の授受その他の主要規定は,令和9年3月31日までの間において政令で定める日に施行される。

もっとも,法令上の施行日と,個別事件で電子的な方法を利用できる日とは同じとは限らない。
経過措置,事件の係属時期,電子公訴提起の有無,対象地域・事件及び最高裁判所の指定等を確認する必要がある。

第2 改正法の三つの柱
1 書類・証拠・令状の電子化

第一の柱は,刑事手続で取り扱う書類を電磁的記録として作成・管理・発受するための規定である。
裁判所,検察官,司法警察職員及び弁護人等の間の申立て・通知・送達,令状の請求・発付・執行並びに証拠の閲覧・謄写等を電子的に行う法的基盤が整備される。

2 ビデオリンク方式の拡大

第二の柱は,勾留質問,弁解録取,裁判所の手続への出頭・出席及び証人尋問等について,映像と音声を相互に送受信する方法の利用範囲を広げることである。
遠隔化は移動負担を減らし得る一方,被疑者・被告人と弁護人の秘密交通,供述状況の把握及び防御権の実質的保障を損なわない運用が必要である。

3 情報通信技術の進展に伴う犯罪への対応

第三の柱は,電磁的記録による文書の信頼を害する行為に対する罰則,電子計算機損壊等公務執行妨害罪,暗号資産等に関する没収・没収保全及び通信傍受の対象犯罪の追加等である。
この部分は裁判手続のオンライン化と目的が異なるため,施行時期も分けて確認しなければならない。

第3 施行時期を三段階で確認する
1 令和7年6月12日に施行された規定

令和7年版犯罪白書は,情報通信技術の進展等に伴う犯罪事象へ対応する規定のうち,特定電子移転財産権の没収等を除く部分が令和7年6月12日に施行されたと整理している。

2 令和8年5月21日に施行された規定

電磁的記録を提供させる強制処分,ビデオリンク方式による証人尋問及び特定電子移転財産権の没収・没収保全等に関する規定は,令和8年5月21日に施行された。
この施行日は,令和8年政令第156号が,改正法附則1条3号に掲げる規定の施行期日として定めたものである。
この施行に対応する刑事訴訟規則等の改正も,最高裁判所の規則として公表されている。

3 令和9年3月31日までの政令日

書類の電子化,電子令状,電子的な申立て・通知・送達及び証拠のオンライン授受等の主要規定は,令和9年3月31日までの間において政令で定める日に施行される。
「令和8年度末までに全面運用」とだけ書くと,すべての事件・地域・システムが同日に一斉移行するように読まれかねないため,法令上の施行と実際の利用範囲を分けて説明する必要がある。

最高裁判所の令和7年8月26日の事務総局会議の資料は,令和9年3月からの段階的施行に向けて刑事手続のシステムを開発中としており,民事のTreeeSの全庁導入の時期を決めるに当たっても,令和9年3月の改正刑事訴訟法の一部施行の時期を避けるとしている。
もっとも,主要規定の施行日を定める政令は,令和8年10月10日時点でe-Gov法令検索では確認できない。

(続きを読む...)刑事手続のデジタル化とは―令和7年法律第39号の施行日,電子令状,オンライン証拠開示及びLinKage(AI作成)

逮捕状に代わるもの・勾留状に代わるもの-被害者の個人特定事項の秘匿と弁護人がとれる手段(AI作成)

目次第1 本記事の範囲第2 秘匿の対象と各段階の措置1 対象となる者2 逮捕3 勾留と鑑定留置4 起訴第3 弁護人が知ることができる範囲1 勾留段階2 起訴後3 記録の閲覧・謄写と証拠開示第4 弁護人がとれる請求と不服申立て1 勾留段階の通知の請求2 起訴後の通知の請求3 不服申立ての制限と最高裁の判断4 防御上の不利益として主張する事情第5 弁護人に付される条件と違反第6 今後の改正第7 関連記事第8 出典
第1 本記事の範囲

刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年法律第28号)により,令和6年2月15日から,性犯罪の被害者等の個人特定事項(氏名及び住所その他の個人を特定させることとなる事項)を被疑者・被告人に知られないようにする措置が,逮捕,勾留及び起訴の各段階で設けられている。
本記事は,この措置がとられた事件で,弁護人に何が示され,弁護人が何を知ることができ,どのような請求や不服申立てができるかを,令和8年9月15日現在の刑事訴訟法及び刑事訴訟規則の条文と最高裁判所の決定を基に整理するものである。

制度の概要や,警察・被害者の側から見た運用は既存の記事で扱っているので(第7参照),本記事では弁護人の手続に絞る。

第2 秘匿の対象と各段階の措置
1 対象となる者
(1) 被害者

刑事訴訟法201条の2第1項1号は,秘匿の対象となる被害者を,次の事件の被害者としている。
① 刑法176条(不同意わいせつ),177条(不同意性交等),179条,181条若しくは182条の罪,同法225条等の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。)若しくは同法241条1項若しくは3項の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
② 児童福祉法60条1項の罪等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条から8条までの罪又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条から6条までの罪に係る事件
③ ①・②のほか,犯行の態様,被害の状況その他の事情により,被害者の個人特定事項が被疑者に知られることにより,名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ等があると認められる事件

(2) 被害者以外の者

同項2号は,被害者以外の者についても,個人特定事項が被疑者に知られることにより,「その者の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ」や,その者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる場合を対象としている。

2 逮捕
(1) 逮捕状に代わるもの

検察官又は司法警察員は,必要と認めるときは,通常逮捕の逮捕状の請求(刑事訴訟法199条2項本文)と同時に,被疑者に示すものとして,個人特定事項の記載がない逮捕状の抄本その他の逮捕状に代わるものの交付を請求することができる(同法201条の2第1項)。
裁判官は,逮捕状を発するときは,これと同時に逮捕状に代わるものを交付するものとされ,請求に係る者が対象者に該当しないことが明らかなときに限り交付しない(同条2項)。
逮捕の際には,逮捕状に代えて逮捕状に代わるものを被疑者に示すことができる(同条3項)。

(2) 緊急逮捕と不服申立て

請求は通常逮捕の逮捕状の請求と同時にするものとされているため,逮捕状によらない現行犯逮捕や,事後に逮捕状を請求する緊急逮捕には,逮捕状に代わるものの仕組みはない。
名古屋地裁・名古屋簡裁の「令状事務処理の手引(七訂版)」も,緊急逮捕状はこの秘匿措置の対象外であるとし,逮捕状に代わるものの交付請求の却下に対しては不服申立てができないとしている(手引25頁~26頁・33頁,PDF34頁~35頁・42頁)。
逮捕の段階には,後記の勾留段階のような通知の請求の規定もない。

3 勾留と鑑定留置

検察官は,必要と認めるときは,勾留の請求と同時に,被疑者に被疑事件を告げるに当たって個人特定事項を明らかにしない方法によること,及び被疑者に示すものとして勾留状の抄本その他の勾留状に代わるものを交付することを請求することができる(刑事訴訟法207条の2第1項)。
裁判官は,請求を受けたときは,個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事件を告げ,勾留状を発するときは勾留状に代わるものを交付するものとされている(同条2項)。
これらの規定は,鑑定留置の請求にも準用される(同法224条3項)。

4 起訴

検察官は,必要と認めるときは,公訴の提起において,起訴状とともに,被告人に送達するものとして,個人特定事項の記載がない起訴状抄本等を提出することができ(刑事訴訟法271条の2第1項・2項),この場合,裁判所は被告人に起訴状抄本等を送達する(同条4項)。
起訴状抄本等の公訴事実については,刑事訴訟法256条3項のうち「できる限り日時、場所及び方法を以て」特定する部分が読み替えられ,罪となるべき事実を特定して明示すれば足りるとされている(同条3項)。

(続きを読む...)逮捕状に代わるもの・勾留状に代わるもの-被害者の個人特定事項の秘匿と弁護人がとれる手段(AI作成)

令状の有効期間と公訴時効-有効期間の計算,令状の更新及び現行の公訴時効期間(AI作成)

目次第1 本記事の範囲第2 令状の有効期間1 原則は7日2 有効期間の計算3 令状の更新第3 現行の公訴時効期間1 人を死亡させた罪2 その他の罪3 性犯罪の特例4 期間の基準となる刑第4 時効の起算点と停止1 起算点2 科刑上一罪と併合罪3 時効の停止第5 改正の経過措置1 平成16年の改正2 平成22年の改正3 令和5年の改正第6 令状の有効期間と公訴時効の関係第7 関連記事第8 出典
第1 本記事の範囲

本記事は,逮捕状,捜索差押許可状等の令状の有効期間と,令状の請求や更新の際に確認される公訴時効について,令和8年9月15日現在の刑事訴訟法及び刑事訴訟規則の条文と最高裁判所の判例を基に整理するものである。
令状事務の実際の取扱いは,名古屋地方裁判所・名古屋簡易裁判所の刑事書記官室が作成した「令状事務処理の手引(七訂版)」(令和6年2月補訂)の記載によって紹介する。

手引は裁判所の内部の執務資料であり,法令の解釈を公式に示すものではない。
手引の資料「公訴時効について」の一覧表は,懲役・禁錮が拘禁刑に改められる前のものであり,令和5年の性犯罪の公訴時効期間の延長も反映していないため,本記事では現行条文から一覧を作り直している。
手引の頁は本文下部に印字された頁で示し,PDFの頁を併記する。

第2 令状の有効期間
1 原則は7日
(1) 刑事訴訟規則300条

刑事訴訟規則300条は,「令状の有効期間は、令状発付の日から七日とする。但し、裁判所又は裁判官は、相当と認めるときは、七日を超える期間を定めることができる。」と定めている。
逮捕状,差押え・捜索・電磁的記録提供命令・検証の令状及び鑑定処分許可状の請求書には,7日を超える有効期間を必要とするときは,その旨及び事由を記載する(同規則142条1項6号・155条1項5号・159条1項6号)。

(2) 令状への記載と返還

逮捕状には,有効期間と,その期間経過後は逮捕をすることができず令状を返還しなければならない旨が記載される(刑事訴訟法200条1項)。
差押え等の令状にも,有効期間と,その期間経過後は差押え,捜索若しくは検証に着手し,又は電磁的記録提供命令をすることができず令状を返還しなければならない旨が記載される(同法219条1項)。
さらに,逮捕状と同法218条1項の令状には,有効期間内であっても,その必要がなくなったときは直ちに返還しなければならない旨も記載される(刑事訴訟規則157条の2第1項)。

2 有効期間の計算
(1) 初日不算入と暦による計算

刑事訴訟法55条1項は,期間の計算について,「日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。」とし,同条2項は,「月及び年は、暦に従つてこれを計算する。」としている。
同条3項は,期間の末日が日曜日,土曜日,祝日等に当たるときはこれを期間に算入しないと定めている(時効期間を除く。)。
これに対し,手引の当直用チェック票は,令状の有効期間について,原則として発付日から7日とし,初日は算入せず,末日が祝休日でも算入するとしている(手引21頁,PDF30頁ほか)。
具体的な事件では,令状に記載された有効期間を確認することになる。

(2) 月末に発付された場合

期間を月で定めた場合について,手引は,民法143条2項(最後の月においてその起算日に応当する日の前日に満了し,応当する日がないときはその月の末日に満了する旨の規定)も根拠に挙げて,月末に発付された令状の満了日を一覧表にしている(手引108頁,PDF117頁)。
例えば,1月31日に発付された令状は,起算日が2月1日となり,有効期間が7日であれば2月7日,1か月であれば2月28日(うるう年は2月29日),2か月であれば3月31日,3か月であれば4月30日に満了するとされている(同頁)。

3 令状の更新
(1) 更新の意味と名古屋簡裁の運用

手引は,令状の更新を,被疑者の所在不明等により有効期間内に令状を執行できない場合に,令状を返還した上で同一内容の令状を請求することと説明している(手引13頁,PDF22頁)。
名古屋簡裁の原則的な取扱いとして,逮捕状の更新は1か月,3か月の順とし,海外逃亡の場合は例外的に6か月としている(同頁)。
捜索差押許可状の更新には決まった取扱いはなく,1か月で請求され,1回だけの更新を認める例が多いとされている(同頁)。

(続きを読む...)令状の有効期間と公訴時効-有効期間の計算,令状の更新及び現行の公訴時効期間(AI作成)

電磁的記録提供命令とは-記録命令付差押えとの違い,令状の記載事項,秘密保持命令及び罰則(AI作成)

目次第1 本記事の範囲第2 電磁的記録提供命令の仕組み1 定義と2つの提供方法2 捜査機関がする命令と裁判所がする命令3 施行日と経過措置第3 記録命令付差押えとの違い1 従前の記録命令付差押え2 主な違い3 行政手続では記録命令付差押えが残っていること第4 提供命令を受けた者に対する口止めの命令1 命令の内容と許可2 期間と取消し第5 罰則と不服申立て1 罰則2 不服申立て第6 提供の手続と関連する制度1 令状の提示と住居等への立入り2 通信履歴の保全要請3 個人情報への配慮と提供後の取扱い第7 国会審議で示された主な論点第8 関連記事第9 出典
第1 本記事の範囲

電磁的記録提供命令は,捜査機関又は裁判所が,電磁的記録を保管する者等に対し,必要な電磁的記録を指定した方法で提供するよう命ずる制度であり,令和8年5月21日に施行された。
本記事は,令和8年9月14日現在の刑事訴訟法及び刑事訴訟規則の条文を中心に,制度の仕組み,従前の記録命令付差押えとの違い,令状の記載事項,提供命令を受けた者に対する口止めの命令,罰則及び不服申立てを整理するものである。

条文のほか,法務省刑事局長の依命通達(令和8年3月23日付け法務省刑総第217号),衆議院調査局法務調査室の論文(RESEARCH BUREAU 論究22号),改正の経緯を示す法制審議会の資料及び国会会議録を参照している。
依命通達は検察庁に向けた運用上の指示であり,論究は国会審議の経過を紹介する資料であって,いずれも法令の解釈を確定させるものではない。

第2 電磁的記録提供命令の仕組み
1 定義と2つの提供方法
(1) 定義

刑事訴訟法102条の2第1項は,電磁的記録提供命令を「次の各号に掲げる者に対し、当該各号に定める方法により必要な電磁的記録を提供することを命ずる命令」と定義している。
電磁的記録提供命令は,「提供させるべき電磁的記録及び提供の方法を指定してするものとする。」とされている(同条2項)。

(2) 名宛人と提供の方法

提供の方法は,次の2つである(刑事訴訟法102条の2第1項1号)。
① 「電磁的記録を記録媒体に記録させ又は移転させて当該記録媒体を提出させる方法」
② 「電気通信回線を通じて電磁的記録を当該命令をする者の管理に係る記録媒体に記録させ又は移転させる方法」

電磁的記録を保管する者には,①・②のいずれの方法も,記録させる(写しを作らせる)形でも移転させる(元のデータを残さない)形でも命ずることができる。
これに対し,保管者以外で電磁的記録を利用する権限を有する者には,記録媒体に記録させる方法に限って命ずることができる(同項2号)。
従前の記録命令付差押えにあった「印刷させ」る方法は,電磁的記録提供命令の方法には含まれていない。

2 捜査機関がする命令と裁判所がする命令
(1) 捜査機関の命令と令状

検察官,検察事務官又は司法警察職員は,犯罪の捜査をするについて必要があるときは,裁判官の発する令状により,電磁的記録提供命令をすることができる(刑事訴訟法218条1項)。
令状は,検察官,検察事務官又は司法警察員の請求により発せられ(同条5項),令状には「提供させるべき電磁的記録、提供させるべき者及び提供の方法」等を記載しなければならない(同法219条1項)。
令状の請求書にも,提供させるべき電磁的記録,提供させるべき者及び提供の方法を記載する(刑事訴訟規則155条1項1号)。

(2) 裁判所の命令

裁判所も,必要があるときは電磁的記録提供命令をすることができる(刑事訴訟法102条の2第1項)。
依命通達は,裁判所がする電磁的記録提供命令は,裁判所が決定を告知してするものであり,公判廷外で検察事務官等が令状を執行するものではなく,同法106条(公判廷外の差押え・捜索には差押状又は捜索状を要するとする規定)には規定されていないと説明している(依命通達4頁)。

3 施行日と経過措置

電磁的記録提供命令は,情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和7年法律第39号,同年5月23日公布)により設けられた。
同法附則1条3号に掲げる規定の施行期日を定めた政令(令和8年政令第156号)により,電磁的記録提供命令に関する規定は令和8年5月21日に施行された。
刑事訴訟規則の対応する改正(令和7年12月26日最高裁判所規則第17号)も同日から施行されている(同規則附則)。

(続きを読む...)電磁的記録提供命令とは-記録命令付差押えとの違い,令状の記載事項,秘密保持命令及び罰則(AI作成)

強制採尿・強制採血・毛髪採取の令状-令状の組合せ,条件の記載及び最高裁の判断(AI作成)

目次第1 本記事の範囲第2 身体に関する令状の基本1 身体検査令状2 鑑定処分許可状3 捜索差押許可状と身体の捜索第3 強制採尿1 強制採尿が許される要件2 令状の種類と条件3 採尿場所への連行4 令状の発付が違法とされた例5 採尿の実施と有形力の行使第4 強制採血1 令状の組合せと目的2 条件と鑑定人の記載第5 毛髪の強制採取1 令状の組合せと目的2 条件の記載と採取する本数第6 飲み込んだ物の押収1 令状の組合せの理由2 条件の記載と連行3 CT検査による所在確認と異物の取出しの区別4 本人が承諾した場合5 最終的手段としての許容性6 体腔内の異物の採取が違法とされた例第7 令状の記載を確認するときの着眼点第8 関連記事第9 出典
第1 本記事の範囲

本記事は,捜査機関が被疑者の身体から尿,血液,毛髪又は飲み込んだ物を強制的に採取する場合に,どの令状が必要となり,令状にどのような条件が記載されるかを整理するものである。
令和8年9月14日現在の刑事訴訟法の条文,最高裁判所の判例及び名古屋地方裁判所・名古屋簡易裁判所の刑事書記官室が作成した「令状事務処理の手引(七訂版)」(令和6年2月補訂)の記載例を基にしている。

手引は裁判所の内部の執務資料であり,法令の解釈を公式に示すものではない。
本記事で手引の記載例を紹介するのは,令状に実際にどのような文言が記載されるかを示すためであり,他の裁判所の運用が同じであるとは限らない。
手引の頁は本文下部に印字された頁で示し,PDFの頁を併記する。

これに対し,本人が捨てたごみ,管理者が回収したごみ又は使用済み紙コップから捜査機関がDNA型資料を取得する場面では,身体への直接的な侵襲ではなく,遺留物の領置,所持者の任意提出,錯誤を利用した占有取得及び個人識別情報を取得する強制処分性が問題となる。
両者は必要な令状と適法性の判断構造が異なるため,別記事で整理する。

第2 身体に関する令状の基本
1 身体検査令状
(1) 身体検査令状が必要な場合

捜査機関は,犯罪の捜査をするについて必要があるときは,裁判官の発する令状により,差押え,捜索,電磁的記録提供命令又は検証をすることができる(刑事訴訟法218条1項前段)。
同項後段は,「この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。」と定めている。
身体検査は,人の身体を対象とする検証であり,入れ墨,ほくろ,注射痕,傷等の身体の特徴や状態を調べる場合に用いられる(手引57頁,PDF66頁)。

(2) 条件と立会い

裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を付することができる(刑事訴訟法218条9項)。
身体の検査については,これを受ける者の性別,健康状態その他の事情を考慮し,特にその方法に注意し,その者の名誉を害しないように注意しなければならない(同法222条1項・131条1項)。
女子の身体を検査する場合には,医師又は成年の女子を立ち会わせなければならない(同法131条2項)。

(3) 拒否に対する制裁と直接強制

正当な理由がなく身体の検査を拒んだときは,10万円以下の過料に処せられ(刑事訴訟法137条1項),又は10万円以下の罰金若しくは拘留に処せられることがある(同法138条1項)。
これらの規定は,捜査機関がする検証としての身体検査にも準用され(同法222条1項),過料の処分は裁判所に請求して行う(同条7項)。
また,同法222条1項は,身体の検査を拒む者を過料に処し,又は刑を科しても,その効果がないと認めるときは,そのまま身体の検査を行うことができるとする同法139条も,捜査機関の検証に準用している。

2 鑑定処分許可状
(1) 鑑定受託者の処分

捜査機関から鑑定の嘱託を受けた者は,裁判官の許可を受けて,身体を検査し,死体を解剖し,墳墓を発掘し,又は物を破壊すること等ができる(刑事訴訟法225条1項・168条1項)。
許可状の請求は検察官,検察事務官又は司法警察員が行い(同法225条2項),裁判官は身体の検査に関し適当と認める条件を付することができる(同条4項・168条3項)。

(2) 鑑定処分としての身体検査の限界

鑑定処分としての身体検査には,身体検査の拒否に対する過料・罰金の規定(刑事訴訟法137条・138条)等は準用されているが(同法168条6項),そのまま身体の検査を行うことを定めた同法139条は準用されていない。
手引は,鑑定処分としての身体検査で直接強制が許されるかについて,身体検査令状と鑑定処分許可状の併用で可とするのが多数説であるとしている(手引64頁,PDF73頁)。

(続きを読む...)強制採尿・強制採血・毛髪採取の令状-令状の組合せ,条件の記載及び最高裁の判断(AI作成)

危険運転致死傷罪の令和8年改正――飲酒・高速度の数値基準,殊更滑走等類型,号の繰下げ及び酒酔い運転の変更(AI作成)

目次第1 本記事の対象と基準日第2 改正の全体像1 改正法の構成,施行日及び法定刑2 法務省が挙げる改正の理由第3 飲酒類型(2条1号)の数値基準1 改正後の2条1号2 数値基準を満たせば一律に対象となる3 数値基準に満たない場合4 「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」の判断枠組み5 3条1項(アルコール等影響運転致死傷)への波及第4 高速度類型の新設(2条4号)1 改正後の2条4号と数値基準2 数値基準に「準ずる」速度3 従前の「進行を制御することが困難な高速度」との関係第5 殊更滑走等類型の新設(2条6号)第6 2条の号の繰下げと引用条文の変更1 旧号と新号の対応2 6条1項及び施行令2条の引用号の変更第7 道路交通法の酒酔い運転・酒気帯び運転の改正1 酒酔い運転(117条の2第1項1号)への数値基準の導入2 酒気帯び運転(117条の2の2第1項3号)の範囲の限定3 呼気中アルコール濃度による区分第8 施行日前の行為と経過措置第9 被害者側・被疑者側それぞれの確認事項1 被害者及び遺族の立場から2 被疑者・被告人及びその家族の立場から第10 関連記事第11 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・資料
第1 本記事の対象と基準日

本記事は,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律(令和8年法律第52号。以下「改正法」という。)による改正の内容を,改正後の条文に沿って説明するものである。
以下,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律を「自動車運転死傷処罰法」といい,法令名を付さずに条番号だけを示すときは同法の条文を指す。
条文は,令和8年9月12日現在のe-Gov法令検索に掲載された現行条文と,同年7月20日時点の改正前の条文とを照合して確認した。

法務省は,改正の内容を「危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法)の法改正 Q&A」(以下「法務省Q&A」という。)で説明している。
もっとも,法務省Q&Aは危険運転致死傷罪の新しい類型を中心とする15問で構成されており,同じ改正法による道路交通法の酒酔い運転・酒気帯び運転の改正や,2条の号の繰下げには触れていない。
本記事は,これらの点を改正法の本文と法務省が公表する新旧対照条文によって補う。

危険運転致死傷罪の量刑の分布は,通常第一審における危険運転致死罪の量刑分布(地裁)及び通常第一審における危険運転致傷罪の量刑分布(地裁)で扱っており,本記事では扱わない。
運転免許の行政処分(違反点数及び欠格期間)も,本記事の対象外とする。

第2 改正の全体像
1 改正法の構成,施行日及び法定刑

改正法は,第1条で自動車運転死傷処罰法を,第2条で道路交通法を改正するものである。
法務省Q&Aによれば,改正法は令和8年6月25日に成立した。
e-Gov法令検索の改正履歴によれば,改正法の公布日は令和8年7月1日,施行日は同月21日である。
この施行日は,改正法附則1項の「この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。」との規定によるものである。

2条の柱書は改正されておらず,危険運転致死傷罪の法定刑は,人を負傷させた場合が「十五年以下の拘禁刑」,人を死亡させた場合が「一年以上の有期拘禁刑」のままである。
有期拘禁刑の上限は,刑法12条1項により20年である。
改正は法定刑を引き上げるものではなく,処罰の対象となる行為の範囲と要件を変えるものである。

2 法務省が挙げる改正の理由

法務省Q&A(A3)は,改正前の危険運転致死傷罪について,次の指摘がされていたと説明している。
①飲酒類型について,「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」との要件の認定が困難で,判断にばらつきが生じている
②高速度類型について,常識的に見て極めて危険性の高い高速度運転であっても,実際に進路を逸脱していない事案では適用が否定される場合がある
③車体を横滑りさせながらカーブを曲がったり,二輪車の前輪を浮かせて後輪だけで走行したりする危険・悪質な運転行為を直接捉える類型がなく,処罰できない場合がある

法務省Q&Aは,こうした状況を踏まえ,「危険・悪質な自動車運転による死傷事犯について、事案の実態に即したより厳正な対処を可能とするため」に改正が行われたとしている。
法務省は,これに先立ち,令和6年2月21日から同年11月27日まで11回にわたって自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会を開催し,その取りまとめ報告書を公表している。

第3 飲酒類型(2条1号)の数値基準
1 改正後の2条1号

改正後の2条1号は,次のとおりである。
「アルコール影響正常運転困難状態(身体に血液一ミリリットルにつき一・〇ミリグラム以上又は呼気一リットルにつき〇・五ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態をいう。次条第一項において同じ。)で自動車を走行させる行為」

(続きを読む...)危険運転致死傷罪の令和8年改正――飲酒・高速度の数値基準,殊更滑走等類型,号の繰下げ及び酒酔い運転の変更(AI作成)

刑事弁護の社会復帰支援計画の作り方-更生支援計画書の項目・受入確認・引継ぎ(AI作成)

第1 社会復帰支援計画で明らかにすること1 弁護人の計画と行政機関の計画を区別する2 生活支援の目的と刑事手続での使途を分ける第2 本人との面談と情報の集め方1 本人が望む生活と望まない支援を確認する2 情報の出所と確認日を残す第3 支援先を調整するときの確認事項1 相談窓口と利用条件を分けて調べる2 受入先の名前だけで「調整済み」としない3 専門職への依頼費用と生活費を別に確認する第4 更生支援計画書の項目と書き方1 基本情報と実施内容を一続きにする2 抽象的な約束を確認可能な記載に変える3 計画本文と添付資料を対応させる第5 保釈・情状弁護で使うときの留意点1 保釈の判断事項へ具体的に結び付ける2 裁判例は計画の存在と実効性を分けて読む3 支援の評価と証拠としての説明を混同しない第6 釈放当日とその後の支援につなぐ1 釈放当日に実行することを具体化する2 継続期間と引継ぎ先を確認する3 計画が続かなかった場合の対応を決める第7 主な出典1 法令・裁判例2 行政資料・実施主体の案内3 実務解説
第1 社会復帰支援計画で明らかにすること

社会復帰支援計画は,本人が地域で暮らすために必要な支援を,誰が,いつから,どの条件で行うのかを具体化するための書面である。
刑事弁護で作成する際には,本人の希望と生活上の課題を出発点に,受入先の確認,費用,釈放当日の移動,支援が続かなかった場合の対応までを結び付けることが重要である。
計画書を作成したことだけで,保釈,執行猶予又は再犯防止が保証されるわけではない。

1 弁護人の計画と行政機関の計画を区別する

本記事では,弁護人が本人や福祉専門職と協力して組み立てる社会復帰のための個別計画を扱い,実務上の「更生支援計画」という呼び方も用いる。
以下の記載項目や確認方法は実務上の提案であり,裁判所への提出に一律に必要となる法定様式を示すものではない。

厚生労働省の地域生活定着支援センターの事業及び運営に関する指針には,福祉サービス等調整計画通知書の様式がある。
その別紙5は,地域生活定着支援センター長から保護観察所長へ通知する被疑者等用の書式であり,弁護人が作る計画書とは作成主体も用途も異なる。
調査項目の参考にはなるが,そのまま弁護人の統一書式として紹介するのは適切でない。

2 生活支援の目的と刑事手続での使途を分ける

生活支援の目的は,本人が必要な支援につながり,地域生活を続けられるようにすることである。
一方,保釈の資料,量刑に関する資料,支援機関への引継ぎ資料では,説明すべき事項や共有する情報の範囲が異なる。
一つの計画を基礎にしつつ,提出先ごとに必要な説明と添付資料を選ぶという組み立てが考えられる。

本記事は,令和8年9月9日を基準に,日本の成人刑事事件の弁護を想定している。
少年事件の手続,医学的診断,個別事件の量刑予測及び仮釈放手続の詳細は扱わない。

第2 本人との面談と情報の集め方
1 本人が望む生活と望まない支援を確認する

最初に確認したいのは,本人がどこで,誰と,どのように暮らしたいかという希望である。
家族が望む生活と本人の希望は分けて聞き取り,本人が困っていること,これまで続けられたこと,避けたい環境も記録する。
読み書きや説明の理解に配慮が必要な場合は,短い説明や図を用い,本人の言葉で理解を確かめながら進める方法が考えられる。

支援を受けることへの了承と,病歴や生活歴を関係機関へ伝えること,裁判資料として提出することは,目的が異なる。
本人に相手先,情報の範囲,利用目的を説明し,それぞれについて意向を確認して記録することを勧める。
厚生労働省の地域生活定着促進事業実施要領も,情報取得時の説明と了承等を定めているが,これは弁護人による無制限の情報共有を認めるものではない。

否認事件では,生活上の困難を整理することと,争っている犯罪事実を認めることを混同しない配慮が必要である。
本人が争っている犯罪事実を,本人が認めた事実として記載しないようにする。
外部資料と本人の説明が異なる場合には,双方の出所と相違点を明示し,未確認の事項とも区別する。

2 情報の出所と確認日を残す

本人が話した内容,家族や支援者が説明した内容,書類で確認した内容,専門職が評価した内容は,区別して記載するのが有用である。
例えば「家族が毎日対応できる」と書く前に,誰が,何曜日の何時に,どの支援を行えると回答したのかを確認する。
本人と家族の説明が食い違う場合は,どちらかを推測で事実にせず,相違点と追加確認先を残す。

確認する資料には,住居の使用関係,収入と支出,福祉サービスの利用状況,通院先,手帳や受給者証の有無などがある。
前記指針の別紙5にも,住民票,手帳,受給者証,要介護度,年金,生活保護,医療等の確認欄が設けられており,「要確認」の状態を残せる。
手帳や診断名の有無だけで,必要な支援,利用資格又は事件への影響まで決めないことが重要である。

医療に関する記載は,確認できた診療情報や専門家の評価に即した範囲にとどめる。
弁護人や家族の印象から診断を確定したり,治療を受ければ再犯しないと断定したりせず,未評価の事項は専門家に確認する課題として示す。

第3 支援先を調整するときの確認事項
1 相談窓口と利用条件を分けて調べる

本人の課題に応じ,社会福祉士等,自治体の福祉担当,地域の相談支援機関,地域生活定着支援センターなどへの相談を検討する。
ただし,どの機関でも同じ対象者を同じ手続で受け付けるわけではないため,身柄拘束の有無,年齢,障害に関する状況,居住地,刑事手続の段階を伝え,担当範囲を確認することが出発点となる。

例えば,よりそいネットおおさかの被疑者等支援業務の案内は,高齢又は障害等に関する条件に加え,身体拘束中であることなどを掲げ,在宅事件を対象外としている。
これは同案内の対象業務についての説明であり,在宅事件の本人は一切の福祉支援を利用できないという意味ではない。
厚生労働省の平成27年12月24日事務連絡も,違法行為をしたことだけを理由に必要な福祉支援を受けられなくしないよう求めている。

保護観察所が関わる支援でも,勾留中の被疑者に対する生活環境調整と,更生緊急保護は別の制度である。
更生保護法83条の2の調整は,検察官が罪を犯したと認めた勾留中の被疑者について,必要性の判断,本人の同意及び検察官の意見聴取等を伴う制度である。
検察官が捜査への支障を理由に相当でない旨の意見を述べた場合には,同条による調整はできないとされている。
更生緊急保護の開始には,同法86条の本人の申出と保護観察所長の必要性の認定を要する。
弁護人が計画書を作成したことや相談したことを,制度利用の決定と取り違えないようにする。

2 受入先の名前だけで「調整済み」としない

候補施設が見つかった段階では,利用できる支援内容,受入可能日,空き状況,費用,必要書類,夜間の対応などを確認する必要がある。
法務省の更生保護施設・自立準備ホームの案内は制度の理解に役立つが,特定の施設が特定の日に本人を受け入れることまで保証する資料ではない。

計画書では,「相談開始」「申請・審査中」「条件付きの内諾」「利用開始が確定」という状態を分ける方法が考えられる。
これは記録のための区分例であり,各制度が共通して採用する正式な分類ではない。
回答した担当者,確認日,条件,裏付け資料を併記し,満たしていない条件があれば未確定のまま示す。

3 専門職への依頼費用と生活費を別に確認する

社会福祉士等への依頼では,面談,計画作成,同行,継続支援のうち何を依頼するかを決め,費用と支払者を確認する。
所属弁護士会等の援助制度を検討する場合も,現在の対象,申請時期,対象経費,上限,決定までの負担を依頼前に確認するのが安全である。
通常の国選弁護報酬・費用と,福祉専門職に関する費用援助を同じものとして扱わず,国選事件であれば全額支給されると約束しないようにする。

計画作成費用とは別に,住居費,食費,交通費,通信費,通院費がいつから必要になるかを整理する。
給付や収入が始まるまでの資金が未確保であれば,その期間の支払方法と確認担当者を計画上の課題として残す。
本記事では,全国共通の現行援助額や特定の申請期限を示すものではない。

第4 更生支援計画書の項目と書き方

(続きを読む...)刑事弁護の社会復帰支援計画の作り方-更生支援計画書の項目・受入確認・引継ぎ(AI作成)

警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針-令和5年の依命通達,リソース再配分の実際及び令和8年4月の廃止(AI作成)

目次

第1 この記事が扱う文書1 中心となる2つの依命通達2 令和5年の依命通達は警察庁ウェブサイトから削除されている3 この記事の射程第2 令和5年7月3日の依命通達の全文第3 指針が何を求めたか1 「警戒の空白」の意味2 4つの柱3 推進体制第4 「当面取り組むべき組織運営上の重点」1 通達本文は公表されていない2 警察白書の図表で確認できる全項目3 「業務上過失事件等の捜査の加速化」の位置第5 3年間で実際に動いたもの1 集中取組期間2 法令・規則の改正として現れたもの(1) 保管場所標章の廃止(2) 地域警察運営規則の改正(3) 高速道路交通警察隊の編制の柔軟化3 都道府県警察における実装-福島県警察の例第6 令和8年4月2日の依命通達による廃止1 廃止の事実と時期2 令和5年の枠組みへの評価3 2つの課題第7 4本柱の構造改革と3本柱の人材確保1 4本柱の構造改革2 3本柱の人材確保3 推進体制の組替え第8 着眼点通達が置いた期限1 期限付きで決まっているもの2 継続的に実施とされたもの第9 リソースの実数1 警察官定員と警察署数2 採用試験の受験者数と競争倍率3 年齢構成と人口推計第10 弁護士の実務に現れる場面第11 この記事で確認できなかった事項出典法令警察庁の通達(行政組織の内部規範)都道府県警察の例規統計・白書

第1 この記事が扱う文書

1 中心となる2つの依命通達

この記事は,警察庁が令和5年7月3日付けで発出した「警戒の空白を生じさせないための組織運営について(依命通達)」(警察庁乙官発第4号ほか)と,これを廃止した令和8年4月2日付け「将来を見据えた警察組織の構造改革及び優秀な警察官の確保に向けた取組について(依命通達)」(警察庁乙官発第6号ほか)を扱う。
前者に添付された「警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針」が,警察庁が「リソースの再配分」という言葉で警察組織の見直しを進める枠組みの出発点である。
この記事は,人工知能を用いて作成したものであり,調査の基準日は令和8年9月9日である。

2 令和5年の依命通達は警察庁ウェブサイトから削除されている

令和5年の依命通達のPDFは,かつて警察庁ウェブサイトのlaws/notification/0703sisin.pdfというパスに置かれていたが,令和8年9月9日現在,同URLは404を返す。
警察庁ウェブサイトの「警察庁の施策を示す通達」の一覧は,長官官房,生活安全局,刑事局,組織犯罪対策部,交通局,警備局,外事情報部,警備運用部及びサイバー警察局の9ページに分かれているが,その全部を検索しても,「警戒の空白」を含む通達は1件も掲げられていない。
令和5年の依命通達は,長官官房のほか生活安全局,刑事局,交通局,警備局及びサイバー警察局にも発番されているから,いずれかの一覧に残っていてもおかしくないが,そうなっていない。
一覧の構成,「全文」欄と「概要」欄の意味及び掲載されていない通達へ到達する経路については,別の記事である警察庁の通達の調べ方で扱っている。
この記事は,インターネット・アーカイブ(Wayback Machine)に令和6年5月30日付けで保存された同PDF(4頁)により全文を確認した。

これに対し,令和8年の依命通達及び後記の着眼点通達は,警察庁ウェブサイトの通達一覧と政策のページの双方に掲載されている。
なお,通達は,著作権法(昭和45年法律第48号)13条2号により,同章の規定による権利の目的となることができない著作物である。

3 この記事の射程

この記事は,①令和5年の依命通達と指針の全文,②公表されていない「重点」の内容を警察白書の図表から確認できる限度,③3年間の集中取組期間に実際に動いた法令・規則の改正,④令和8年4月2日の廃止と後継の枠組み,⑤警察官定員等の実数,を扱う。
個別の治安施策の当否は扱わない。
知能犯罪の告訴・告発に関する令和6年1月5日通達がこの枠組みの中に位置付けられている点については,別の記事である知能犯罪に関する告訴・告発の令和6年1月5日通達で扱っている。

第2 令和5年7月3日の依命通達の全文

以下は,Wayback Machineに保存された警察庁のPDFによる全文である。

(続きを読む...)警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針-令和5年の依命通達,リソース再配分の実際及び令和8年4月の廃止(AI作成)

知能犯罪に関する告訴・告発の令和6年1月5日通達-全文,3か月の目途及び援用上の限定(AI作成)

目次

第1 この記事が扱う通達1 通達の書誌2 警察庁ウェブサイトの掲載は概要1頁である3 この記事の射程第2 通達の全文第3 発出の経緯と位置付け1 廃止された旧通達2 発出の理由3 平成14年までの統計に見る長期未処理4 上位方針との関係第4 基本的な考え方(記1)第5 迅速かつ適正な取扱いの推進(記2)1 相談段階の対応2 最初の相談日から3か月以内(1) 概要と全文の差(2) 起算点(3) 努力義務であること3 受理後の処理第6 警察本部による指導・管理の強化(記3)1 捜査の進捗状況等の把握・管理2 警察署に対する指導の強化3 柔軟な捜査応援4 その他業務の合理化・効率化に資する取組第7 警察署における対応(記4)第8 警察庁及び検察庁との連携(記5・記6)1 警察庁との緊密な連携2 検察庁との連携第9 適時適切な評価と士気の高揚(記7)第10 令和6年3月26日通達との関係第11 都道府県警察の例規に見る「3か月」第12 この通達を援用する際の限定1 課長通達であること2 対象が知能犯罪に限られること3 努力義務であること4 私人に受理を求める権利を与えるものではないこと5 不受理をめぐる裁判例第13 この記事で確認できなかった事項出典法令裁判例警察庁の通達(行政組織の内部規範)都道府県警察の例規等統計・白書

第1 この記事が扱う通達

1 通達の書誌

この記事が対象とするのは,令和6年1月5日付け警察庁丁捜二発第2号「知能犯罪に関する告訴・告発の適正かつ合理的な取扱いの推進について(通達)」である。
警察庁刑事局捜査第二課長から,警視庁刑事部長及び各道府県警察本部長に宛てて発出された課長通達であり,警察大学校教務部長並びに各管区警察局広域調整部(総務監察・広域調整部)長に参考送付されている。
原議保存期間は5年(令和11年3月31日まで),有効期間は一種(令和11年3月31日まで)である。
本文は4頁で,「1 基本的な考え方」から「7 適時適切な評価と士気の高揚」までの7項からなる。

2 警察庁ウェブサイトの掲載は概要1頁である

警察庁ウェブサイトの「警察庁の施策を示す通達(刑事局)」に掲げられている本通達のPDFは,「(概要)」と題する1頁の文書であり,全文ではない。
この記事は,全文4頁に基づいて内容を示す。
全文4頁のPDFは,このブログに「知能犯罪に関する告訴・告発の適正かつ合理的な取扱いの推進について(令和6年1月5日付の警察庁刑事局捜査第二課長の通達)」として掲載している。

掲載の様式は,同じ刑事局の通達であっても発出した課によって異なる。
刑事企画課の通達を収める刑事企画課用のフォルダには,令和6年3月26日通達,令和6年3月22日通達及び平成31年3月27日付けの2通達のいずれについても全文が掲載されている。
これに対し,捜査第二課の通達を収める捜査第二課用のフォルダには,本通達のほか,令和7年3月17日付け丁捜二発第14号「経済的不正の追及の強化について(通達)」及び令和7年3月18日付け丁捜二発第16号「構造的知能暴力事件をはじめとする構造的不正に対する取組の強化等について(通達)」が掲げられているが,いずれも概要1頁だけである。
この記事では,捜査第二課の課長通達については全文を公表しない取扱いになっていると整理する。
なお,警察庁の通達の一覧表には「全文」欄と「概要」欄があり,令和8年9月9日現在,捜査第二課の通達は3件がいずれも「概要」欄に〇の付いたものである。
警察庁の通達全体の掲載構造と,概要しか掲げられていないときに原文へ到達する経路は,別の記事である警察庁の通達の調べ方で扱っている。

通達は,著作権法(昭和45年法律第48号)13条2号により,同章の規定による権利の目的となることができない著作物である。
同号は「国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人……又は地方独立行政法人……が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの」と定めている。

3 この記事の射程

この記事は,人工知能を用いて作成したものであり,本通達の全文,発出の経緯,令和6年3月26日通達との関係,都道府県警察の例規に現れた「3か月」の取扱い及び本通達を援用する際の限定を扱う。

(続きを読む...)知能犯罪に関する告訴・告発の令和6年1月5日通達-全文,3か月の目途及び援用上の限定(AI作成)

司法面接・代表者聴取とは-刑訴法321条の3の証拠能力と供述の信用性(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

2 先に結論

第2 司法面接と代表者聴取

1 司法面接とは

2 代表者聴取とは

3 両者の関係

第3 刑事訴訟法321条の3の要件

1 対象者

(1) 列挙された犯罪の被害者

(2) 精神の平穏を著しく害されるおそれがある者

(続きを読む...)司法面接・代表者聴取とは-刑訴法321条の3の証拠能力と供述の信用性(AI作成)

刑事裁判の書証の証拠能力-伝聞法則・供述調書・同意書面の判断順序(AI作成)

第1 書証の証拠能力を判断する順序

1 最初に立証趣旨を確定する
2 証拠能力と証明力等を区別する

第2 伝聞法則と伝聞例外の全体像

1 刑事訴訟法320条の原則
2 供述書と供述録取書
3 伝聞例外の分類

第3 被告人以外の者の供述書等-刑事訴訟法321条1項

1 裁判官面前調書
2 検察官面前調書
3 それ以外の供述書等
4 私的な日記・メモを提出された場合

第4 検証調書,鑑定書及び特に信用すべき書面

1 公判調書等及び裁判官の検証調書
2 捜査官の検証調書等
3 鑑定書等
4 刑事訴訟法323条の書面
5 写真付き捜査報告書を分解して検討する

(続きを読む...)刑事裁判の書証の証拠能力-伝聞法則・供述調書・同意書面の判断順序(AI作成)

国選弁護人の報酬・費用―接見,身柄釈放,保釈,謄写,交通費,通訳及び14営業日の請求期限

第1 国選弁護人の報酬及び費用の根拠1 法テラスと国選契約弁護士との契約2 被告人の訴訟費用負担とは別の問題であること第2 算定基準と弁護活動の関係1 客観的な指標による類型的な算定2 支給対象外であることと活動が不要であることは同じでないこと第3 被疑者国選弁護事件の接見等1 接見等合計と基準接見回数2 通常報酬の算定3 接見資料第4 勾留に関する準抗告等と身柄釈放1 5万円の特別成果加算2 早期釈放と接見報酬との関係第5 被告人国選弁護事件と保釈1 被告人国選弁護報酬の構造2 保釈等の加算第6 記録謄写費用1 原則2 200枚以下でも費用が算定される場合第7 遠距離接見等加算報酬と交通費1 加算報酬と費用償還の区別2 実額方式と証拠資料第8 通訳人費用1 国選弁護人と通訳人との契約2 通訳料基準の主な金額第9 診断書,私的鑑定及び福祉専門職との連携費用1 訴訟準備費用の対象と上限2 福祉専門職に依頼する前の費用確認3 計画作成費用と釈放後の生活費を分けること第10 事件終了から14営業日以内の報告及び請求1 事件終了日2 営業日の数え方と期限徒過3 支払日第11 算定結果に対する不服申立て第12 釈放後の復路交通費を支給対象外とした裁判例第13 実務家記事から得られる問題提起とその限界第14 報酬・費用請求の確認事項第14の2 意思疎通に困難がある被疑者・被告人との接見第15 出典

第1 国選弁護人の報酬及び費用の根拠

1 法テラスと国選契約弁護士との契約

日本司法支援センター(法テラス)は,国の委託に基づき,国選弁護人候補の指名及び裁判所への通知を行い,選任された国選契約弁護士に国選弁護人の事務を取り扱わせる(総合法律支援法30条1項6号)。
国選弁護人に支給される報酬及び費用は,法務大臣の認可を受けた契約約款及びその一部をなす報酬・費用の算定基準により定まる(同法36条)。

本記事は,令和8年9月7日現在の制度を対象とし,法テラスの国選弁護関連業務の解説及びFAQ(令和8年8月改訂版),国選弁護報酬基準一覧表(令和6年4月1日改定)及び国選弁護人契約約款を基礎資料とする。
令和8年8月改訂版の解説及びFAQは,令和8年3月までに認可された契約約款の変更に対応した資料である。

2 被告人の訴訟費用負担とは別の問題であること

法テラスが国選弁護人へ支給する報酬及び費用の算定と,刑の言渡しを受けた被告人が刑事訴訟法181条等により訴訟費用を負担するかどうかは,別の問題である。
本記事は前者,すなわち国選契約弁護士が法テラスへ報告及び請求をする場合の算定を扱う。

法テラスからの支払いとは別に,国選弁護事件で被告人その他の関係者から報酬等を受領することと,同じ事件の私選弁護人に選任するように働きかけることには,弁護士職務基本規程49条の制約がある。家族からの謝礼,実費,示談金の預り及び別事件の報酬の区別は,国選弁護人は依頼者から金品を受け取れるか―49条と私選への切替で整理しています。

第2 算定基準と弁護活動の関係

1 客観的な指標による類型的な算定

法テラスのFAQは,国選弁護報酬について,国選弁護活動の自主性及び独立性と財政規律の双方を確保するため,報酬算定者の裁量をできる限り排除し,客観的な指標に基づく類型的かつ画一的な算定を行う仕組みであると説明している。
そのため,実際に必要であった活動のすべてが個別の報酬項目又は費用項目として評価されるわけではなく,算定基準に明記されていない活動を柔軟な解釈又は類推によって支給対象へ加えることも予定されていない。

2 支給対象外であることと活動が不要であることは同じでないこと

法律事務取扱規程4条14号は,国選契約弁護士に対し,被疑者及び被告人等の権利及び利益を擁護するため最善の弁護活動に努めることを求め,同条15号は,身体拘束を受けている被疑者及び被告人等について,必要な接見等の機会の確保及び身体拘束からの解放に努めることを求めている。
したがって,ある活動が独立の報酬項目又は費用項目になっていないことから,直ちにその活動が弁護人の職務として不要であるとはいえない。

(続きを読む...)国選弁護人の報酬・費用―接見,身柄釈放,保釈,謄写,交通費,通訳及び14営業日の請求期限

匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)対策の警察組織――情報分析室,匿流ターゲット取締りチーム,TAIT及び仮装身分捜査(AI作成)

第1 匿名・流動型犯罪グループとは何か

1 警察庁による説明
2 従来の組織犯罪対策との関係

第2 司令塔と部門横断の体制

1 警察庁及び都道府県警察の司令塔
2 特殊詐欺連合捜査班(TAIT)

第3 令和7年10月に新設された組織

1 警察庁「匿名・流動型犯罪グループ情報分析室」
2 警視庁「匿名・流動型犯罪グループ対策本部」及び「匿流ターゲット取締りチーム(T3)」
3 「国際組織犯罪対策官」の設置

第4 新たな捜査手法――仮装身分捜査

1 制度の内容
2 実施件数
3 最高裁判例と弁護実務上の確認

第5 検挙の実情――令和7年の統計

(続きを読む...)匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)対策の警察組織――情報分析室,匿流ターゲット取締りチーム,TAIT及び仮装身分捜査(AI作成)

令和7年のストーカー規制法・配偶者暴力防止法改正――紛失防止タグ,職権警告及び相手方情報の提供の禁止(AI作成)

第1 改正の全体像

1 同時に成立した二本の改正法
2 施行日

第2 なぜ改正されたか

1 紛失防止タグとは何か
2 相談等件数の推移

第3 ストーカー規制法の改正内容

1 位置情報無承諾取得等の対象拡大(第2条第3項)
2 職権による警告の創設(第4条)
3 相手方情報の提供の禁止等(第6条)
4 援助に係る努力義務の主体の追加(第9条第3項)
5 禁止命令等・警告を行う機関の管轄の拡大(第14条)

第4 配偶者暴力防止法の改正内容
第5 令和7年の運用状況

1 ストーカー事案
2 配偶者からの暴力事案等

(続きを読む...)令和7年のストーカー規制法・配偶者暴力防止法改正――紛失防止タグ,職権警告及び相手方情報の提供の禁止(AI作成)

被疑者の実名報道と無罪の推定-匿名報道・捜査情報の公表・名誉回復(AI作成)

目次

第1 問題の整理第2 無罪の推定第3 実名報道と匿名報道1 実名を公表する法的効果2 匿名報道の判断第4 捜査情報の公表と報道第5 名誉回復と記事の削除第6 刑事手続の結論後に確認する事項第7 関連記事出典第1 問題の整理

被疑者の実名報道を検討するときは,①捜査機関が逮捕等の事実を公表すること,②報道機関が氏名を報道すること,③不起訴又は無罪となった後も記事や検索結果が残ることを区別する必要がある。
逮捕された事実は有罪が確定したことを意味せず,実名が報道されたことも犯罪事実の証明にはならない。

第2 無罪の推定

市民的及び政治的権利に関する国際規約14条2項は,刑事上の罪に問われている者が法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定される権利を定めている。
無罪の推定は裁判所の証明基準だけの問題ではなく,公的機関が有罪との結論を先取りしないこと及び報道が逮捕と有罪を混同しないことを考える際の基本となる。

被疑者は捜査の対象となった者であり,被告人は起訴された者である。
不起訴処分には嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予その他の理由があり,無罪判決とも異なるため,「逮捕されたが処罰されなかった」という一括りの説明は正確でない。

第3 実名報道と匿名報道1 実名を公表する法的効果

捜査機関の発表又は報道機関の記事に氏名が記載されても,その氏名公表自体に有罪を確定する効力はない。
他方,氏名,勤務先,顔写真その他の情報が結び付くと,刑事手続の結論前から社会的評価,家族関係及び就業に大きな影響が生じ得る。

2 匿名報道の判断

事件を実名で報道するか匿名で報道するかは,事件の公共性,被疑者の地位,嫌疑の内容,取材の確度,被害者の保護及び将来の不利益等を踏まえた報道機関の判断となる。
逮捕された事件は必ず実名で報道しなければならない,または不起訴の可能性がある事件は必ず匿名にしなければならない,という一律の法令上の基準があるわけではない。

第4 捜査情報の公表と報道

警察又は検察の発表は,捜査段階で把握した被疑事実や処分を説明するものであり,裁判所による有罪認定ではない。
報道では,「逮捕されたこと」,「捜査機関が被疑事実を発表したこと」,「本人が認めた又は否認したと捜査関係者が説明したこと」を分けて記載する必要がある。

捜査関係者の説明だけを根拠に本人の有罪を断定すると,無罪の推定との緊張が生じる。
本人又は弁護人の説明を取材できない場合でも,嫌疑が争われている可能性及び刑事手続が未確定であることを読者に分かる形で示すことが重要である。

捜査に関して報道機関に発表を行うのは,警察本部長若しくは警察署長又はその指定する者とされている(犯罪捜査規範25条)。
捜査に当たっては,被疑者その他の者の名誉を害しないように注意しなければならない(刑事訴訟法196条,犯罪捜査規範9条1項)。

捜査機関の記者発表や記者への情報提供で名誉を害されたとして国家賠償を求めた事件では,名誉毀損の一般的な判断枠組み(公共の利害・公益目的・真実性又は相当性)が当てはめられている(横浜地裁平成8年5月8日判決,東京高裁平成14年5月22日判決)。
他方,否認している被疑者について,容疑を認めているとの印象を与える回答をした不正確な広報を違法とし,国家賠償を認めた裁判例もある(神戸地裁平成14年10月29日判決)。
判断枠組みと裁判例の詳細は,警察・検察が報道機関に捜査情報を伝えたら違法か―記者発表・情報提供と名誉毀損,国家賠償の裁判例(AI作成)で整理している。

第5 名誉回復と記事の削除

不起訴処分又は無罪判決となっても,過去の逮捕報道が自動的に削除される制度はない。
まず,不起訴又は無罪という後続事情の追記,見出しの修正,検索結果に表示される説明の更新,匿名化又は記事削除のいずれを求めるのかを区別する必要がある。

最高裁令和4年6月24日第二小法廷判決(令和2年(受)第1442号,投稿記事削除請求事件)は,逮捕歴に関する投稿の削除請求を認めた事例である。
もっとも,同判決から,逮捕歴を含む全ての実名記事が一定期間後に当然削除されるという一般規則を導くことはできず,公表されない利益と投稿を一般の閲覧に供し続ける理由に関する個別事情の比較が必要である。

第6 刑事手続の結論後に確認する事項

① 不起訴処分告知書,判決書その他の結論を示す公的資料を確保すること。
② 逮捕報道,起訴報道及び結論報道の掲載先,見出し,本文及び掲載日を記録すること。
③ 事実の訂正,後続事情の追記,匿名化又は削除のうち,求める対応を整理すること。
④ 検索結果だけでなく,元記事,転載記事及びSNS投稿を分けて確認すること。
⑤ 時効,証拠保全及び申入れの相手方について弁護士に相談すること。

第7 関連記事

司法修習生の実名報道事例及び被疑者補償等を含む従来記事として,司法修習生の逮捕及び実名報道(AIリライト)がある。
被疑者補償の制度については,被疑者補償規程とは-補償要件・金額・申出・刑事補償法との違い(AI作成)を参照されたい。
刑事記録については,刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧を参照されたい。

出典

① 外務省「市民的及び政治的権利に関する国際規約」14条2項。
② 最高裁令和4年6月24日第二小法廷判決(令和2年(受)第1442号,投稿記事削除請求事件)「判決全文」。
③ 法務省「刑事事件フローチャート」。
④ 東京弁護士会「座談会 続・司法記者は語る」東弁リブラ2015年9月号2頁~20頁。
⑤ e-Gov法令検索「刑事訴訟法」196条,「犯罪捜査規範」9条1項・25条。
⑥ 横浜地裁平成8年5月8日判決(平成元年(ワ)第2867号,判例秘書の判例番号 L05150234)。裁判所HP未掲載。
⑦ 東京高裁平成14年5月22日判決(平成14年(ネ)第112号)「判決全文」。
⑧ 神戸地裁平成14年10月29日判決(平成11年(ワ)第1826号)「判決全文」。

被疑者補償規程とは-補償要件・金額・申出・刑事補償法との違い(AI作成)

目次

第1 被疑者補償規程とは第2 補償の要件第3 補償金額第4 申出と手続第5 刑事補償法との違い第6 確認事項第7 関連記事出典第1 被疑者補償規程とは

被疑者補償規程は,被疑者として抑留又は拘禁を受けた者について,公訴を提起しない処分があり,その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある場合の補償を定めた法務省訓令である。
不起訴になった者全員に自動的な補償請求権を与える制度ではなく,身体拘束,不起訴処分及び無実を認めるに足りる事情が要件となる。

第2 補償の要件

被疑者補償規程2条は,①被疑者として抑留又は拘禁を受けたこと,②公訴を提起しない処分があったこと,③罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があることを基本的要件としている。
単に証拠が十分でないという嫌疑不十分の不起訴であれば常に補償される,という規定ではない。

同規程4条は,「罪とならず」又は「嫌疑なし」の不起訴裁定主文による場合のほか,罪を犯さなかったと認めるに足りる事由がある場合及び本人から補償の申出があった場合に立件手続を行うとしている。
不起訴理由の表示と被疑者補償の要件は完全に同じではないため,処分通知だけで結論を決めず,担当検察庁に確認する必要がある。

第3 補償金額

補償金は,抑留又は拘禁の日数に応じ,1日1,000円以上1万2,500円以下の割合で算定される。
具体的な金額を定める際には,拘束の種類と期間,財産上の損失,得られたはずの利益の喪失,精神上の苦痛その他一切の事情が考慮される。

日数に上限額を掛けた金額が当然に支給されるわけではない。
また,規程4条の3は,本人の一定の行為等がある場合に補償の一部又は全部をしないことができると定めている。

第4 申出と手続

規程上,検察官が立件手続を行う場合の一つとして本人の補償の申出が明記されている。
申出を検討する場合は,不起訴処分をした検察庁に対し,対象事件,不起訴処分,身体拘束の期間及び申出方法を確認することになる。

被疑者補償規程は裁判所に対する定型の申立手続を定めた法律ではない。
全国共通の公開申出書式が常に用意されているとは限らないため,提出先,必要資料及び期限を担当検察庁へ確認すべきである。

第5 刑事補償法との違い

刑事補償法は,原則として無罪の裁判を受けた者が未決の抑留又は拘禁を受けた場合等に,裁判所へ補償を請求する制度を定める法律である。
これに対し,被疑者補償規程は,起訴されずに被疑者段階で終わった一定の事件について,検察官が行う補償を定めた法務省訓令である。

したがって,不起訴と無罪判決,検察官による裁定と裁判所による決定,訓令上の制度と法律上の請求手続を区別する必要がある。
憲法40条が定める刑事補償と被疑者補償規程に基づく補償も,同一の根拠を持つ制度ではない。

無罪判決確定後の費用補償,身体拘束に対する刑事補償及び国家賠償との違いについては,刑事事件の費用補償と刑事補償で説明している。
少年事件で家庭裁判所が非行事実を認めずに審判不開始又は不処分とした場合の身体拘束については,少年の保護事件に係る補償に関する法律が補償を定めており,少年の保護事件に係る補償で説明している。

第6 確認事項

① 逮捕・勾留された事件と不起訴になった事件の対応関係を確認すること。
② 不起訴処分告知書及び不起訴理由の告知内容を確認すること。
③ 身体拘束の開始日,終了日及び拘束の種類を確認すること。
④ 財産上の損失,逸失利益及び精神的苦痛に関する資料を保存すること。
⑤ 申出先,提出方法及び必要資料を担当検察庁へ確認すること。

第7 関連記事

被疑者補償を含む従来記事として,司法修習生の逮捕及び実名報道(AIリライト)がある。
同記事には,被疑者補償規程の運用通達及び過去の立件事例へのリンクも掲載している。
刑事手続全体については,刑事事件に関する記事の一覧も参照されたい。

出典

① 検察庁「被疑者補償規程(法務省訓令)」。
② 検察庁「関係法令等」。
③ e-Gov法令検索「刑事補償法」。
④ e-Gov法令検索「日本国憲法」40条。

スマートフォンのロック解除と捜索・差押え-暗証番号・生体認証・黙秘権(AI作成)

目次

第1 問題の全体像第2 端末の差押えとデータの探索1 端末の差押え,必要な処分及び協力の求め2 被疑事実との関連性と探索範囲3 媒体自体の差押えと記録の複写を分ける第3 暗証番号と黙秘権1 暗証番号を質問された場合2 電磁的記録提供命令との区別第4 指紋・顔による生体認証第5 端末内データとクラウド上のデータ第6 データ保全と操作記録第7 捜索を受ける側の確認事項第8 関連記事第9 出典
第1 問題の全体像

スマートフォンの捜索を考えるときは,①端末を差し押さえること,②端末内の電磁的記録を探索・複写すること,③暗証番号を質問すること,④暗証番号を入力させること,⑤指紋又は顔で生体認証を解除すること,⑥クラウド上の電磁的記録を取得することを区別する必要がある。
令状により端末を差し押さえることができる場合でも,そのことから直ちに暗証番号の供述,生体認証による解除又は端末と接続する全てのクラウドデータの取得まで無制限に強制できるとはいえない。

本記事は,令和8年9月6日現在の法令,裁判例,国会審議及び公開資料に基づく一般的な整理である。
具体的な捜索・差押えでは,令状の種類及び記載内容,対象者の地位,求められた行為,強制の態様並びに取得対象となるデータの範囲を個別に確認する必要がある。

第2 端末の差押えとデータの探索
1 端末の差押え,必要な処分及び協力の求め

刑事訴訟法218条及び219条は,捜査機関による捜索・差押えに原則として裁判官の令状を要求し,令状に記載すべき対象等を定めている。
また,同法222条1項が準用する同法111条1項は,差押状又は捜索状の執行について,錠を外すことその他の必要な処分をすることができると定めている。

もっとも,端末のロック解除が常に同法111条1項の「必要な処分」に含まれるか,含まれるとしてどの方法まで許されるかについて,一般的基準を示した最高裁判例が公表されているわけではない。
同法111条の2は,差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるとき,電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができると定めているが,この規定自体は処分を受ける者に罰則付きの協力義務を課すものではない。

2 被疑事実との関連性と探索範囲

スマートフォンは私生活に関する大量の情報を保存し得るため,端末の差押えの可否だけでなく,被疑事実との関連性,探索対象,期間及びデータの範囲が問題となる。
令状に記載された対象又は被疑事実と無関係なデータまで一般探索的に調べてよいということにはならない。

最高裁令和3年2月1日第二小法廷決定(平成30年(あ)第1381号)は,リモートアクセスによる複写の対象となる電磁的記録に被疑事実と関連する情報が記録されている蓋然性があり,現場での内容確認の困難性や確認中の情報毀損のおそれ等があるという事案で,個々の電磁的記録の内容を確認せずに複写することを許容した。
これは同決定が認定した事情の下での判断であり,スマートフォン内の全データについて無限定の探索を認めたものではない。

3 媒体自体の差押えと記録の複写を分ける

物理的なスマートフォン,USBメモリ又は外付けディスク自体を差し押さえることと,媒体内の電磁的記録を複写し,又はリモートアクセスで別の記録媒体から複写することは,処分の対象と根拠条文が異なる。最高裁令和3年2月1日決定は後者のリモートアクセス・複写を扱ったものであり,物理的なUSBメモリの差押えを直接判断したものではない。

裁判例対象実務上の位置付け

最高裁平成10年5月1日決定内容未確認のフロッピーディスク関連情報がある蓋然性,現場確認の困難性及び消去・改変のおそれ等を踏まえ,無確認差押えを許容した事例
大阪高裁平成30年9月11日判決電磁的記録媒体自体の差押え媒体が差押対象であり,無関係データが混在するだけで関連性が直ちに否定されないこと,複写等の代替処分の選択が常に義務ではないことを示した事例
岐阜地裁の国家賠償事件判決使用中17枚と未開封新品3枚のフロッピーディスク使用中媒体の無確認差押えは適法とする一方,関連性が明らかにない未開封新品の差押えを違法とした下級審例

電子媒体の差押えは,後の解析でデータが空であったかだけでなく,執行時の令状文言,発見場所,使用状況,関連性の蓋然性,現場選別可能性,情報毀損リスク,複写等の代替手段及び持帰り後の迅速な選別・還付を時系列で評価する。詳しくは,USBメモリを内容確認せず差し押さえられるか-関連性,現場選別,情報毀損及び還付(AI作成)を参照されたい。

第3 暗証番号と黙秘権
1 暗証番号を質問された場合

日本国憲法38条1項及び刑事訴訟法198条2項は,自己に不利益な供述を強要されない権利と被疑者の供述拒否権を定めている。
暗証番号を記憶から述べる行為は言語による情報の表出であるため,端末そのものの提出とは別に黙秘権との関係を検討する必要がある。

東京高裁平成31年2月19日判決は,捜索・差押えの現場で警察官が黙秘権を告知せずに携帯電話の暗証番号を聞き出した事案について,当該事案の状況の下では違法とはいえないと判断した。
同判決は裁判所ウェブサイト未掲載であり,あらゆる場面で黙秘権告知が不要であること,又は暗証番号の供述を強制できることまで判示したものではない。

2 電磁的記録提供命令との区別

令和7年法律第39号による刑事訴訟法改正のうち,電磁的記録提供命令等に関する規定は令和8年5月21日に施行された。
刑事訴訟法218条1項は,捜査機関が裁判官の令状により,証拠となる電磁的記録を保管し,又は利用する権限を有する者に対し,提供させるべき電磁的記録及び提供の方法を特定して提供を命ずる電磁的記録提供命令を定めており,令状にはこれらの事項が記載される(同法219条1項)。
裁判所も同法102条の2により電磁的記録提供命令をすることができるが,これは裁判所の決定として行われるものであり,裁判官の令状によるものではない。
また,捜査機関は,裁判官の許可を受けて,命令を受ける者に対し,1年を超えない期間を定めて,命令を受けたこと等を漏らしてはならない旨を命ずることができる(同法218条3項)。

令和7年の国会審議では,法務大臣が,ロックの解除方法やパスワードを供述することを義務付けることは自己負罪拒否特権と抵触し,許されない旨を答弁し(衆議院本会議令和7年3月27日),電磁的記録提供命令は既に存在している電磁的記録の提供を命ずるにとどまり,パスワード等の供述を強要するものではない旨も答弁している(衆議院法務委員会同年4月9日)。
他方,法務省刑事局長(政府参考人)は,パスワードを解除して中身が分かる状態で電磁的記録を提供させることを命ずることもでき,被処分者がパスワードを入力して解除した状態で提供することによりパスワードを認識していることが意味され得るとしても,電磁的記録提供命令が供述を得ようとするものとはいえない旨を説明している(同日の衆議院法務委員会,参議院法務委員会同年5月15日)。
したがって,暗証番号そのものの供述,押収済み端末の解除及び電磁的記録提供命令に基づく記録の提供を同じ問題として扱うべきではない。

捜査機関がした電磁的記録提供命令又は同法218条3項の命令に正当な理由なく違反した者は,同法222条の2により,1年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処せられることがある(裁判所がした電磁的記録提供命令の違反は同法124条の2)。
もっとも,同命令は提供させるべき電磁的記録,名宛人及び提供方法を特定して発せられる別個の強制処分であり,通常の捜索差押許可状だけから同条の罰則が生じるものではない。

(続きを読む...)スマートフォンのロック解除と捜索・差押え-暗証番号・生体認証・黙秘権(AI作成)

未決拘禁者及び受刑者の運転免許更新・失効後の再取得(AI作成)

目次

第1 結論と手続の全体像

1 「更新」と「失効後の再取得」は別の手続である
2 失効時期ごとの基本的な分岐

第2 免許が有効な間に検討する手続

1 通常の更新
2 更新期間前の特例更新

第3 失効後の試験免除

1 失効後6か月以内
2 失効後6か月を超え3年以内
3 失効後3年を経過した場合

第4 令和8年通知による施設内試験

1 未決拘禁者が対象に加えられたこと
2 対象要件
3 主な除外要件
4 実施時期,場所及び接触防止措置
5 対象となる免許と実施される試験等

第5 必要書類,費用及び免許証の住所

1 必要書類と費用

(続きを読む...)未決拘禁者及び受刑者の運転免許更新・失効後の再取得(AI作成)

刑事事件の法定合議事件を単独事件として取り扱った判決の是正方法(AI作成)

第1 記事の対象と結論

1 対象とする裁判体構成の誤り
2 段階ごとに異なる是正方法

第2 法定合議事件と裁判体構成違反

1 裁判所法26条が合議体を要求する事件
2 当然無効ではなく訴訟手続の法令違反であること
3 判決前に合議体が審理を更新した場合

第3 控訴審における是正方法

1 控訴期間は14日であること
2 刑事訴訟法377条1号の控訴理由
3 控訴審による職権調査
4 破棄後は原則として差戻しとなること

第4 上告審における是正方法

1 構成違反だけでは常に上告理由になるわけではないこと
2 判例違反と上告受理申立て
3 刑事訴訟法411条1号による職権破棄
4 破棄後の差戻し先

(続きを読む...)刑事事件の法定合議事件を単独事件として取り扱った判決の是正方法(AI作成)

「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義―直接証拠と間接証拠(AI作成)

第1 有罪認定の証明度を示す基準
第2 刑事訴訟法上の位置付け

1 犯罪の証明がなければ無罪となる
2 自由心証主義は恣意的な判断を認めるものではない

第3 抽象的な可能性と合理的な疑いの違い

1 反対事実の可能性を全く残さないことまでは必要でない
2 証明度を数値で示す基準ではない
3 「常識」という言葉だけで疑いを退けることはできない

第4 直接証拠と間接証拠

1 必要な証明の程度は同じである
2 間接事実の推認力と反対仮説を検討する
3 最高裁平成22年4月27日判決
4 下級審の適用例―メタノール中毒事件

第5 関連する山中弁護士ブログの記事
第6 出典・参考資料

1 法令
2 裁判例
3 公的資料

(続きを読む...)「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義―直接証拠と間接証拠(AI作成)

刑事裁判における判決の宣告と訓戒―判決書との不一致及び控訴期間(AI作成)

第1 判決宣告と訓戒の対象範囲
第2 判決宣告の方式と効果

1 主文は朗読し,理由は朗読又は要旨の告知をする
2 宣告によって判決が外部的に成立する
3 宣告時に裁判官が交代しても公判手続の更新を要しない

第3 口頭の宣告内容と判決書が食い違う場合

1 公判廷で宣告された刑が判決内容となる
2 宣告内容の確認には公判調書等が問題となる

第4 有罪判決宣告時の上訴期間の告知
第5 判決宣告後の訓戒

1 訓戒は任意的な付随処置である
2 審理及び判決に関与していない裁判官も訓戒できる
3 訓戒中に刑を言い誤っても主文は変わらない

第6 関連する山中弁護士ブログの記事
第7 出典・参考資料

1 法令・規則
2 裁判例
3 公的資料

(続きを読む...)刑事裁判における判決の宣告と訓戒―判決書との不一致及び控訴期間(AI作成)

証拠書類の朗読又は要旨の告知―刑事訴訟法305条と刑事訴訟規則203条の2(AI作成)

第1 証拠書類の取調べ方式としての朗読と要旨の告知
第2 証拠書類は朗読するのが原則である

1 請求者,裁判長等が朗読する
2 被害者特定事項等を明らかにしない朗読

第3 朗読を要旨の告知へ代えられる場合

1 訴訟関係人の意見聴取と裁判長の相当性判断が必要である
2 要旨の告知は朗読を合目的に簡易化したものである

第4 要旨として何を告げる必要があるか

1 要旨と立証趣旨は役割が異なる
2 立証趣旨だけを告げても通常は足りない
3 適切な要旨は争点と書類の内容によって変わる

第5 関連する山中弁護士ブログの記事
第6 出典・参考資料

1 法令・規則
2 裁判例
3 公的資料
4 文献

(続きを読む...)証拠書類の朗読又は要旨の告知―刑事訴訟法305条と刑事訴訟規則203条の2(AI作成)

令和8年の再審制度改正――証拠開示,検察官抗告,施行日及び残された論点(AI作成)

目次第1 令和8年改正の対象と現在地1 刑事訴訟法の一部を改正する法律2 改正法は段階的に施行されること第2 改正法が成立するまでの経過1 法制審議会の審議と多数決による答申2 政府案,衆議院修正及び議員提出法案3 衆参の附帯決議第3 令和8年8月13日に施行された改正1 再審開始決定に対する検察官の不服申立て2 不服申立期間の14日化と審理期間の目標3 死刑の執行停止と拘置停止4 確定後の訴訟記録を含む書類の取扱い第4 本体施行日後の再審請求手続1 調査手続と審判手続の二段階化2 検察官に対する証拠提出命令3 裁判所限りの証拠及び一覧表の提示4 証拠の管理,目的外使用禁止及び刑罰5 裁判官の除斥6 審理終結,決定日,手続受継及び費用補償第5 施行日前から係属する事件の経過措置1 再審請求日と決定日による適用法の違い第6 改正法と従来の最高裁判例1 再審開始の「明白性」判断は変更されていないこと2 原判決に関与した裁判官の取扱い3 再審請求人が死亡した場合の手続終了4 再審請求前の裁判所不提出記録第7 成立法をめぐる対立と残された制度課題1 証拠提出命令は証拠の全件開示ではないこと2 検察官抗告を残したこと3 証拠の目的外使用禁止4 今回の改正で制度化されなかった事項第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献
第1 令和8年改正の対象と現在地
1 刑事訴訟法の一部を改正する法律

令和8年の再審制度改正は,刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和8年法律第67号)によるものである。同法は令和8年5月15日に政府から国会へ提出され,同年6月16日に衆議院で修正議決され,同年7月17日に参議院で可決され,同月24日に公布された。本記事は,令和8年10月7日現在の成立法,現行条文,経過措置,法制審議会資料及び国会会議録を基礎として,改正の内容と未解決の論点を整理するものである。

この改正は,確定判決の有罪認定が正しいかを個別事件ごとに評価する基準を全面的に変更したものではなく,再審請求審の手続を中心に規律を新設したものである。個別の再審事件と最高裁判例については刑事の再審事件,日弁連支援事件の決定及び無罪判決の時系列については刑事の再審事件の各種決定及び無罪判決で整理しているため,本記事では制度改正との関係が深い判例だけを取り上げる。

2 改正法は段階的に施行されること

改正法は一括して施行されるのではなく,次のとおり段階的に施行される。令和8年8月13日に施行された部分と,今後の政令指定日まで施行されない部分を区別する必要がある。

施行時期主な内容令和8年10月7日現在令和8年7月24日迅速化に関する附則等施行済み令和8年8月13日検察官の不服申立ての制限及び理由公表,抗告期間の14日化,死刑執行停止時の拘置停止,確定記録を含む訴訟書類の取扱い施行済み令和8年10月20日再審請求手続に要した費用の補償施行予定公布後1年以内の政令指定日調査手続と審判手続,証拠提出命令,証拠一覧表,除斥,手続受継その他の本体部分具体的施行日は未確認

現行条文は,e-Gov法令検索の刑事訴訟法で確認できる。
費用補償部分の施行日は,法務省の掲載では令和8年10月20日とされている。
公布後1年以内に施行される本体部分については,令和8年10月7日確認の同掲載では具体的施行日が示されていない。
公布後1年以内という期限は施行日の最終限度であり,期限自体を具体的な施行日と取り違えてはならない。

第2 改正法が成立するまでの経過
1 法制審議会の審議と多数決による答申

法務大臣は令和7年3月,法制審議会に対し,誤判からの確実かつ迅速な救済を図るための再審制度の見直しを諮問した。法制審議会刑事法(再審関係)部会は,同年4月21日から令和8年2月2日まで18回開催され,証拠開示,検察官の不服申立て,裁判官の除斥,再審事由,弁護人による援助,証拠保全,刑の執行停止及び費用補償等を検討した。

部会の答申案は,部会長を除く出席委員13名のうち賛成10名,反対3名で取りまとめられた。法制審議会総会でも,議長及び部会長を除く出席委員17名のうち賛成12名,反対4名で可決されており,全会一致の答申ではない。証拠開示の範囲,検察官の不服申立て及び証拠の目的外使用禁止は,最後まで意見が分かれた論点であった。

法制審議会の委員・部会の仕組み,諮問から答申・法律成立までの一般的な流れについては,法制審議会とは-委員・部会の仕組み,諮問から答申・法律成立までの流れで整理している。

2 政府案,衆議院修正及び議員提出法案

政府提出法案に対し,衆議院は,①施行後5年ごとの検討対象として証拠の目的外使用禁止制度及び証拠一覧表制度を明示し,②従来の運用上の措置である裁判所の勧告並びに検察官の任意提出及び任意開示を事案に応じて適切に行う旨を追加した。成立法の附則2条及び4条2項は,この修正によるものである。

国会には,衆法第9号も提出されていた。同法案は,より広い証拠開示,請求人側が利用できる証拠一覧表,検察官による再審開始決定への不服申立て禁止等を内容としていたが,衆議院で否決された。したがって,成立法は政府案を基本として限定的な衆議院修正を加えたものであり,証拠開示と検察官抗告について衆法第9号の仕組みを採用したものではない。

3 衆参の附帯決議

衆議院法務委員会の附帯決議は7項目,参議院法務委員会の附帯決議は9項目である。
参議院第1項は,任意開示の運用でも,適切な場合には裁判所が検察官保管証拠一覧表の提出・交付を勧告することを求める。
第2項は,検察官の主張に誤りが判明した場合の撤回・訂正,経緯等の説明及び関係証拠の開示を,第3項は,警察等の保管証拠も含む適切な開示・保管・送致を求めている。

附帯決議は刑事訴訟法の条文ではなく,それ自体が再審請求人に一覧表の交付請求権や国選弁護人選任請求権を与えるものではない。
新445条の3の裁判所限りの証拠・一覧表提示と,任意開示における一覧表の提出・交付も区別する必要がある。
警察保管証拠の所在確認,通常審の最高裁決定との関係及び申入れの具体例は,再審で警察保管証拠の開示を求める実務で説明している。

第3 令和8年8月13日に施行された改正
1 再審開始決定に対する検察官の不服申立て

刑事訴訟法450条の2第1項は,再審開始決定に対する即時抗告を,「当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合」に限定した。同条2項は,再審開始決定を維持した抗告審決定等に対する刑事訴訟法433条1項の抗告についても,同じ制限を置いている。

(続きを読む...)令和8年の再審制度改正――証拠開示,検察官抗告,施行日及び残された論点(AI作成)

逮捕状を持った警察に居留守を使うとどうなるか-自宅への立入り,ドアの開扉及び不在の場合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

第2 逮捕状で自宅に立ち入る法的根拠

1 刑事訴訟法220条1項1号による被疑者の捜索

2 被疑者が現在する高度の蓋然性

3 本人の自宅以外の住居への立入り

第3 施錠されたドアを開けられる場合

1 錠を外すなどの必要な処分

2 マスターキー解錠及びドア破壊に関する裁判例の射程

3 居留守と実力による妨害は別である

第4 逮捕状はいつ誰に示されるか

1 逮捕される被疑者への呈示

2 住居の捜索を受ける人への呈示

(続きを読む...)逮捕状を持った警察に居留守を使うとどうなるか-自宅への立入り,ドアの開扉及び不在の場合(AI作成)

逮捕されたら会社にばれるか-職場での逮捕,欠勤,懲戒及び解雇(AI作成)

第1 この記事の対象と先に確認すべき結論

1 勤務先への一律の自動通知はない
2 逮捕,欠勤,懲戒及び解雇は別々に判断する

第2 逮捕が会社に知られる主な経路

1 職場で逮捕される場合
2 勤務先の捜索又は関係者聴取から知られる場合
3 欠勤連絡,報道その他の経路

第3 逮捕・勾留中の欠勤と賃金

1 逮捕から勾留までの時間
2 身体拘束による欠勤と無断欠勤は同じではない
3 欠勤中の賃金,年次有給休暇及び休職

第4 逮捕だけを理由に懲戒できるか

1 就業規則上の根拠と懲戒権濫用
2 逮捕と具体的な非違行為の認定
3 私生活上の犯罪と会社の企業秩序
4 本人の説明と懲戒手続

(続きを読む...)逮捕されたら会社にばれるか-職場での逮捕,欠勤,懲戒及び解雇(AI作成)

おはよう逮捕とは何か-早朝の自宅逮捕と逮捕状のルール(AI作成)

第1 「おはよう逮捕」の意味と本記事の範囲

1 法令上の用語ではないこと

2 通常逮捕,任意同行及び家宅捜索の区別

第2 早朝の逮捕と夜間捜索の違い

1 逮捕状の執行に固定の禁止時間帯はないこと

2 日出前・日没後の制限は捜索差押許可状の問題であること

第3 逮捕状の呈示と緊急執行

1 逮捕状を示すのが原則であること

2 「逮捕状の緊急執行」と「緊急逮捕」の違い

3 緊急執行における告知の程度

4 被害者等の個人特定事項を保護する例外

(続きを読む...)おはよう逮捕とは何か-早朝の自宅逮捕と逮捕状のルール(AI作成)

共犯者を同じ弁護士が弁護する場合の利益相反――国選・私選の違いと対応(AI作成)

目次第1 同じ弁護士が共犯者双方を弁護できるか1 この記事の対象2 先に示す結論第2 利益相反を規律する法令と会規1 弁護人選任権と同一弁護人の問題は別であること2 国選弁護人には刑事訴訟規則29条5項が直接適用されること3 私選弁護人には弁護士職務基本規程が重要であること4 会規違反と訴訟法上の効果を分けること第3 利益相反が生じる具体的な場面1 認否だけでなく量刑と処分の利害まで確認すること2 認否の一致と本人の同意だけでは足りないこと3 協議・合意制度と企業事件では対立が早く表面化すること第4 同一国選弁護人に関する主要裁判例1 福岡高裁昭和25年11月21日判決2 名古屋高裁平成9年9月29日判決3 裁判例から直ちに一般化できないこと第5 受任前と受任直後の確認手順1 各人から独立して事情を聴くこと2 低負担の資料で対立の有無を更新すること3 別弁護人による共同防御の範囲を限定すること第6 受任後に利益相反が顕在化した場合の対応1 共同活動を止めて各依頼者へ説明すること2 一方だけの辞任で解消するとは限らないこと3 判断経過を記録し,再評価すること第7 私選共犯弁護に関する近時の懲戒例1 令和6年7月10日効力発生の戒告2 この懲戒例の射程第8 出典・参考資料1 法令・会規2 裁判例・懲戒公告3 文献
第1 同じ弁護士が共犯者双方を弁護できるか
1 この記事の対象

本記事は,日本法上の共犯事件において,1人の弁護士が複数の被疑者又は被告人を同時に弁護するときの利益相反を扱う。主な問題は,同一弁護が許される条件,認否が一致している場合の扱い,国選弁護と私選弁護の違い,受任後に対立が判明した場合の対応である。

利益相反の有無は,単に全員が同じ罪名で捜査又は起訴されているかではなく,一方に有利な弁護活動が他方に不利となるかによって判断する。本記事は一般的な制度及び実務上の判断要素を説明するものであり,特定の事件について受任の可否又は採るべき弁護方針を示すものではない。

2 先に示す結論

共犯者間に重要な事実又は処分上の利害の対立があるときは,同じ弁護士が双方を十分に弁護することはできない。否認と自白が対立する場合だけでなく,犯行の発案,主導性,実行行為,取得利益等の量刑事情が対立する場合も含まれる。

他方,共犯事件であることだけから直ちに利益相反が確定するわけではない。ただし,捜査の進展,証拠開示,処分交渉又は公判準備によって対立が生じやすいため,将来の重要な対立を合理的に排除できない場合は,最初から各人に別の弁護士を付けることが安全な原則である。

第2 利益相反を規律する法令と会規
1 弁護人選任権と同一弁護人の問題は別であること

日本国憲法37条3項は刑事被告人が資格を有する弁護人を依頼する権利を保障し,刑事訴訟法30条1項は被告人又は被疑者がいつでも弁護人を選任できると定める。しかし,弁護人を選任できることと,利害の対立する複数人が同じ弁護人を選べることは別問題である。弁護人の選任と権限を考えるときも,各依頼者に対する忠実な弁護が同時に可能かを先に確認する必要がある。

利益相反を避ける目的は,弁護人が一方を守るために必要な主張,反対尋問,証拠請求又は交渉を,他方への不利益を理由に控える事態を防ぐことにある。形式上弁護人が付いていても,このような自己抑制が生じれば,各被疑者又は被告人が独立した弁護を受ける利益は損なわれる。

2 国選弁護人には刑事訴訟規則29条5項が直接適用されること

刑事訴訟規則29条5項は,「被告人又は被疑者の利害が相反しないときは,同一の弁護人に数人の弁護をさせることができる。」と定める。同項は国選弁護人の選任に関する規定であり,同一の国選弁護人を付けられるのは,利害が相反しない場合に限られる。

したがって,裁判所は選任時の資料だけでなく,選任後に判明した供述の食い違い,争点及び量刑事情にも目を向ける必要がある。本人らが同じ弁護人を希望し,又は異議を述べないことは考慮事情になり得るが,客観的に生じた重大な対立を当然に解消するものではない。

3 私選弁護人には弁護士職務基本規程が重要であること

弁護士職務基本規程28条3号は,依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件を,原則として弁護士が職務を行い得ない事件に含める。同号には双方の同意による例外があるが,32条は受任時に辞任の可能性その他の不利益を説明することを求め,42条は受任後に現実の利害対立が生じたときに各依頼者へ事情を告げ,辞任その他の適切な措置を採ることを求めている。刑事弁護については,46条の最善弁護義務も問題となる。

同意を得たという一事だけで,その後の確認が不要になるわけではない。対立の内容が受任時に具体化していなかった場合や,後から協力供述,責任転嫁又は量刑上の競合が生じた場合には,当初の同意を根拠として双方弁護を続けることはできない。

また,弁護士法23条は弁護士に職務上知り得た秘密を保持する権利と義務を課している。一方から得た秘密を他方の弁護に利用できず,かといって利用しなければ他方の最善の弁護ができないという状態は,弁護士の守秘義務と忠実な弁護の双方に関わる。

4 会規違反と訴訟法上の効果を分けること

弁護士職務基本規程に反するかという問題と,行われた訴訟行為が無効になるか,又は判決が破棄されるかという問題は区別しなければならない。前者は受任,辞任及び懲戒に関する職業倫理上の問題であり,後者は適用される訴訟規則,防御権の侵害,裁判所による是正の要否及び判決への影響を検討する問題である。

最高裁令和3年4月14日第二小法廷決定は,共同事務所の利益相反を扱った民事事件であり,共犯弁護を直接判断したものではない。同決定は,弁護士職務基本規程違反が懲戒原因となり得ることと,その違反だけで訴訟行為の効力が左右されることを分けており,両者を同一視しないための参考になる。

第3 利益相反が生じる具体的な場面
1 認否だけでなく量刑と処分の利害まで確認すること

利益相反の確認では,次の対応関係が特に重要である。

場面
対立の例

(続きを読む...)共犯者を同じ弁護士が弁護する場合の利益相反――国選・私選の違いと対応(AI作成)

不同意性交等罪(刑法177条)の法定刑はなぜ「5年以上」なのか――強盗罪との量刑均衡という立法事実(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点
2 法改正の経過

第2 不同意性交等罪の法定刑

1 条文の構造
2 拘禁刑・執行猶予・公訴時効の基本ルール

第3 他の重大犯罪との法定刑比較
第4 法定刑「5年以上」はどのように定まったか

1 平成16年改正まで――強盗罪の半分以下だった時代
2 平成29年改正――強盗罪との量刑均衡という立法事実
3 令和5年改正――構成要件の明確化と法定刑の維持

第5 量刑の実際の分布

1 不同意性交等罪単体の科刑状況
2 他の重大犯罪との比較

第6 法定刑の合理性が争われた2件の高裁判決

(続きを読む...)不同意性交等罪(刑法177条)の法定刑はなぜ「5年以上」なのか――強盗罪との量刑均衡という立法事実(AI作成)

不同意性交等罪(刑法177条)の国際比較――強制要件・不同意要件・積極的同意の三つのモデル(AI作成)

第1 この記事が扱う対象と比較の枠組み

1 対象と時点
2 三つの構成要件モデル

第2 日本の不同意性交等罪の構成要件

1 刑法177条の条文と八つの列挙事由
2 法定刑,年齢に関する規定及び関連条文

第3 立法過程で参照された諸外国法と,採用されなかった選択肢

1 法務省が示した九法域の条文仮訳
2 「Yes means Yes」型をめぐる議論
3 採用された構成要件の性格

第4 不同意を独立の要件とする国

1 ドイツ
2 イギリス(イングランド及びウェールズ)
3 カナダ及びオーストラリア

第5 積極的同意を要件とする国

(続きを読む...)不同意性交等罪(刑法177条)の国際比較――強制要件・不同意要件・積極的同意の三つのモデル(AI作成)

大川原化工機事件の身体拘束を判断した裁判官44名――最高検察庁文書の仮名J1〜J27との対応(AI作成)

【2026年9月29日訂正】
本記事は当初,最高検察庁文書の「J1」を平出喜一裁判官としていました。しかし,CALL4に公開された令和2年4月27日付「第1事件公判前整理手続決定」及び同年6月23日付「第2事件公判前整理手続決定」の各謄本には,いずれも東京地方裁判所刑事第13部の裁判官として渡邉一昭裁判官の氏名が記載されています。最高検察庁文書の日付・部・手続との一致から,J1は渡邉一昭裁判官に対応すると推定するのが相当です。当初の記事は,公判前整理手続に関する決定をした裁判官と,後に公訴棄却決定をした合議体の裁判長を混同していました。該当箇所を訂正するとともに,J1~J27の対応は,不開示となった対応表を直接確認した結果ではなく,公開資料の突合による推定であることを明記しました。

第1 この記事が扱う範囲と資料

1 対象とする判断と時期
2 実名の出典となる公開資料

第2 最高検察庁文書の仮名J1〜J27

1 仮名の付け方
2 仮名と実名の対応
3 J7を特定できない理由と検討できる範囲

第3 身体拘束に関する判断と担当裁判官の時系列
第4 資料の間で食い違う点

(1)J1と公訴棄却決定時の裁判体
(2)第2事件の勾留に対する準抗告の日付
(3)勾留更新の日付
(4)令和3年2月4日の保釈許可決定の対象
(5)各資料の収録範囲

第5 各裁判官のその後の補職

(続きを読む...)大川原化工機事件の身体拘束を判断した裁判官44名――最高検察庁文書の仮名J1〜J27との対応(AI作成)

大阪地裁,京都地裁及び神戸地裁の事務分配規程から見る共犯事件の配点(AI作成)

目次

第1 三地裁の違い

1 結論の比較
2 規程の比較だけでは実際の頻度は分からない

第2 事務分配と関連事件の法的な位置付け

1 配点は裁判所内部の司法行政事務である
2 「相関連する事件」は刑事訴訟法9条に接続する

第3 三地裁の規程の内容

1 大阪地裁は許容規定と内部準則を置く
2 京都地裁は同一被告人の集中と関連事件の事後集約を分ける
3 神戸地裁規程は関連事件の同一部配付を義務形で定める

第4 別起訴の共犯事件に規程を適用するときの問題

1 受付時に関連性を把握できることが前提となる
2 同じ庁でも別部係属が生じ得る理由は一つではない

第5 最初の配付,部間移動及び弁論の併合・分離

1 三つの段階は法的性質が異なる

(続きを読む...)大阪地裁,京都地裁及び神戸地裁の事務分配規程から見る共犯事件の配点(AI作成)

交通事故事件における検察審査会への審査申立て――申立適格,申立書の記載事項,公訴時効及び裁判例(AI作成)

第1 本記事の対象と,交通事故が検察審査会に占める位置

1 本記事の射程

2 交通事故は検察審査会の中心的な類型であること

第2 申立適格,申立先及び審査の対象

1 申立てをすることができる者

2 申立先の検察審査会及び移送

3 対象から除かれる事件

4 審査の対象は不起訴裁定の主文であること

第3 申立てに先立つ準備

1 不起訴処分及びその理由を知る方法

2 不起訴事件記録の閲覧・謄写

(続きを読む...)交通事故事件における検察審査会への審査申立て――申立適格,申立書の記載事項,公訴時効及び裁判例(AI作成)

令和6年警察庁通達に基づく告訴・告発の取扱い――告訴・告発センターの体制,受理・不受理の判断及び都道府県警察の例規(AI作成)

第1 本記事が扱う通達と記事の射程

1 通達の書誌
2 同時期に発出された被害の届出に関する通達

第2 通達の内容

1 告訴等への適切な対応(通達第1)
2 告訴・告発センターの設置と体制(通達第2の1・2)
3 告訴・告発センターの事務(通達第2の3)
4 警察本部事件主管課の事務(通達第3)

第3 告訴・告発センター体制の沿革

1 平成24年12月6日通達による創設
2 平成31年3月27日の2通達
3 令和6年通達による変更点

第4 知能犯罪に関する令和6年1月5日通達
第5 告訴・告発の取扱いに関する法令上の根拠

1 告訴権者,告発及び告訴期間
2 受理義務と管轄
3 口頭による告訴と書面の補充
4 受理後の処理と告訴人への通知

(続きを読む...)令和6年警察庁通達に基づく告訴・告発の取扱い――告訴・告発センターの体制,受理・不受理の判断及び都道府県警察の例規(AI作成)

検察官側の上告があり,最高裁が検察官に有利に原判決を破棄した刑事判決41件(平成元年以降)(AI作成)

◯平成元年以降,検察官側の上告があり,最高裁判所が検察官に有利に原判決を破棄した刑事判決41件を整理した。内訳は,検察官側のみ32件,双方上告9件である。各判決に裁判所公式リンクを付した。
◯「被告人側の上告があり,最高裁が被告人に有利に原判決を破棄した刑事判決56件(平成元年以降)(AIリライト)」も参照されたい。

目次

第1 収録範囲と一覧の読み方

1 検索条件と164件の再分類
2 「検察官側のみ」と「検察官に有利」の意味
3 各項目の意味と件数

第2 検察官側のみの上告事件32件

1 令和の判決(6件)

2 平成20年から平成30年までの判決(9件)
3 平成10年から平成19年までの判決(10件)
4 平成元年から平成9年までの判決(7件)

第3 双方上告のうち検察官に有利な破棄判決9件
第4 検察官上告と最高裁判所による破棄

1 検察官の上訴権

(続きを読む...)検察官側の上告があり,最高裁が検察官に有利に原判決を破棄した刑事判決41件(平成元年以降)(AI作成)

過失運転致死傷罪の起訴状における過失の記載方法(AI作成)

目次

第1 過失を記載する際の結論

1 過失の記載は4層で組み立てる

(1) 注意義務発生事実から結果までを一続きにすること
(2) 事故の物語と訴因とを区別すること

2 本稿の前提

(1) 一般的な検討枠組みであること
(2) 法令の基準日

第2 法的枠組み

1 過失運転致死傷罪の構成

(1) 自動車運転処罰法5条
(2) 結果回避可能性と因果関係

2 刑事訴訟法256条3項による訴因の特定

(続きを読む...)過失運転致死傷罪の起訴状における過失の記載方法(AI作成)

知床遊覧船事故に関する釧路地裁令和8年6月17日判決のAI専門家の論評(AI作成)

◯本記事は,生成AIが,釧路地方裁判所令和8年6月17日判決(令和6年(わ)第73号・業務上過失致死被告事件)(担当裁判官は59期の水越壮夫,72期の小倉広太郎及び73期の高見澤昌史)の全文を精読し,複数の専門分野の視点を統合して論評したものです。判決の存在及び内容は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索(事件番号・裁判年月日・全文PDF)で確認しています。判決は関係者を匿名化していますが,事案は公知の知床遊覧船「KAZU 1」沈没事故(令和4年4月23日)に対応します。以下は,判決の匿名表記に即して論じます。

本記事は一般的な情報提供であり,個別の法的助言ではありません。また,本件では乗員・乗客26名という多数の尊い命が失われています。被害者及び御遺族に深く哀悼の意を表するとともに,本記事は,判決の法的・技術的な当否を冷静に検討することを目的とし,特定の個人を非難する意図を持つものではありません。

目次

第1 本判決の概要と全体像

1 事案の特定と主文

(1) 事件の実在確認と匿名の対応関係
(2) 主文・法定刑・争点

2 全体評価の要旨

(1) 妥当性が高いと評価できる点
(2) なお議論の余地がある点

第2 前提となる法令・基準・先例

1 海上運送法上の運航管理者制度

(続きを読む...)知床遊覧船事故に関する釧路地裁令和8年6月17日判決のAI専門家の論評(AI作成)

大阪府警察の留置管理業務(AI作成)

◯本ブログ記事は,留置管理業務の手引き(令和6年2月の大阪府警察本部総務部留置管理課作成の執務資料)及び刑事訴訟法等の関係法令に基づき,専らAIで作成したものです。

警察留置場で勾留中に運転免許が失効した場合の取扱い,刑事施設内試験の対象要件及び出所後の再取得手続については,未決拘禁者及び受刑者の運転免許更新・失効後の再取得(AI作成)を参照してください。

目次

第1 総則と組織の基本原則
1 捜査と留置の分離の重要性
2 留置業務の三原則と任務
3 組織体制と各職位の責務

第2 留置開始時の適正な手続
1 新規留置前の審査と判断
2 身体検査と金属探知機の運用
3 所持金品の厳格な管理
4 告知書の提示と権利の保障

第3 被留置者の日常生活と処遇
1 標準的な日課時限の運用
2 給食,入浴,運動の実施
3 自弁物品の購入基準

第4 外部交通の管理と制限
1 弁護人等との面会
2 一般面会の実施要領
3 信書の発受と検査
4 接見等禁止決定への対応

第5 健康管理と医療上の配慮
1 健康状態の把握と診療
2 特筆すべき疾患への対策
3 薬務管理と誤投薬の防止

第6 保安管理と事故防止策
1 見張り勤務と動静監視
2 戒具の使用と留置保護室
3 問題被留置者への組織的対応

(続きを読む...)大阪府警察の留置管理業務(AI作成)

大川原化工機事件に関する最高検報告書・3通知の内容と刑事弁護実務(AI作成)

第1 この記事が扱う資料と結論

1 対象と基準日

2 報告書と3通知の法的性質

第2 事件経過と確定判決

1 刑事事件の終了

2 東京高裁令和7年5月28日判決

3 拘置所医療に関する別件国賠

第3 最高検報告書が示した問題点と留保

1 行政法規の解釈

2 消極証拠と技術的検証

3 公判対応と決裁に関する評価

4 保釈対応,病状及び死亡

(続きを読む...)大川原化工機事件に関する最高検報告書・3通知の内容と刑事弁護実務(AI作成)

刑事手続及び少年審判における被害者の権利(AIリライト)

目次

第1 被害者等通知制度
第2 告訴及び告発
第3 不起訴処分に対する被害者側の手段
第4 最高検察庁の通達と刑事記録へのアクセス
第5 被害者参加制度と弁護士費用の援助
第6 心情等の意見陳述と被害者論告・証言の違い
第7 少年審判における被害者の権利
第8 捜査・起訴を求める利益と国家賠償請求の限界
第9 犯罪被害者等給付金の支給制度
第10 氏名等の秘匿と損害回復の制度1 公開法廷での秘匿と被疑者・被告人に対する秘匿2 刑事手続における和解3 損害賠償命令4 債務名義取得後の賠償金回収
第11 刑の執行・保護観察段階における心情等の聴取・伝達
第12 関連記事及び出典

会社の金銭又は物が従業員の窃盗・横領により直接被害を受けた場合,会社は法人であることだけを理由に通知や記録取得の制度から一括して除外されるわけではない。ただし,通常の窃盗・横領又は業務上横領だけの事件は,刑訴法316条の33の被害者参加対象犯罪及び犯罪被害者等保護法24条の損害賠償命令対象犯罪には含まれない。会社の担当者が情報を得るための案内は,従業員の窃盗・横領被害を受けた会社が捜査・刑事裁判の情報を確認する方法(AI作成)を参照されたい。

第1 被害者等通知制度

少年事件の被害者の方は,第7「少年審判における被害者の権利」で,記録の閲覧・謄写,意見聴取,傍聴,審判状況の説明及び結果通知を確認できる。一般的な手続の流れは少年事件の流れと保護者の対応を参照されたい。刑事裁判の被害者参加制度と少年審判の制度は区別する必要がある。

起訴・不起訴などの処分結果を確認したい場合は,まず自分の立場と確認したい内容を整理する。結果の告知・通知と,事件記録を閲覧・謄写する手続は異なる。

立場・目的主な根拠・確認方法詳しい説明被疑者が不起訴の処分を知りたい刑事訴訟法259条は,被疑者から請求があれば,速やかな告知を求める。取調べ記事の第10告訴人・告発人等が処分を知りたい刑事訴訟法260条の通知を確認する。不起訴理由は同261条の請求による告知を区別する。本記事の告訴・告発の節被害者等・参考人が通知を希望する被害者等通知制度の対象・通知内容・希望の伝え方を確認する。告訴人等の法定通知とは区別する。本記事の被害者等通知制度記録そのものを入手したい事件の段階,保管先,申請者の立場によって利用できる制度を確認する。刑事記録の入手方法

処分結果等の確認先が分からない場合は,取扱庁の担当者に照会方法を尋ねる。通知・開示の範囲が全て同じとは限らない。検察庁の役割と連絡先の確認方法も参照されたい。

1 本記事で扱う制度

本記事は,令和8年8月31日を基準として,犯罪被害者が刑事手続及び少年審判で利用できる主な制度を説明するものである。

被害者等通知制度,告訴・告発,不起訴処分後の対応,被害者参加,心情等の意見陳述及び少年事件の被害者保護は,それぞれ対象者,申出先及び要件が異なる。

弁護士費用の援助,損害賠償及び犯罪被害給付も別の制度であり,一つの制度の利用要件を満たすことが,他の制度の利用を当然に意味するわけではない。

以下では,刑事訴訟法を「刑訴法」,犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律を「犯罪被害者等保護法」と表記する。

2 通知の対象者と内容

法務省の被害者等通知制度実施要領は,令和7年5月29日最終改正,同年6月1日施行のものが公開されている。

同要領第2は,被害者,その親族若しくはこれに準ずる者又は弁護士であるその代理人のほか,目撃者その他の参考人等を通知の対象者としている。

(続きを読む...)刑事手続及び少年審判における被害者の権利(AIリライト)

刑事事件の略式手続(AIリライト)

目次

第1 略式命令の請求から発令まで

1 略式命令の請求まで
2 略式命令の請求後の取扱い

第2 正式裁判の請求
第3 交通切符の略式手続(=三者即日処理方式)

1 総論
2 交通事件即決裁判

第4 略式手続の沿革
第5 関連記事その他

略式手続は,検察官が起訴と同時に請求し,簡易裁判所が書面審理で100万円以下の罰金又は科料を科すことのできる手続である。略式命令請求も起訴であり,不起訴や単なる行政上の処分ではない。

一般の略式命令は請求から発令まで,命令を受けた後は正式裁判の請求を確認する。正式裁判の請求は告知を受けた日から14日以内であり,通知の受領日を記録して書面と請求先を確認する。交通違反の三者即日処理については第3を読み,一般の略式手続のすべてが同じ日に処理されるとは考えない。

来庁前の確認は検察庁から呼び出されたら,記録の利用は刑事記録の入手方法を参照されたい。

刑事事件全体の分岐と,立場別の確認事項は,刑事事件とは―民事事件との違い,手続の流れと立場別の対応を参照されたい。

第1 略式命令の請求から発令まで
1 略式命令の請求まで

①略式命令の請求は,簡易裁判所に対し,公訴の提起と同時に,書面でしなければならない(刑訴法462条1項)。実務上は,起訴状の冒頭に「下記被告事件につき公訴を提起し,略式命令を請求する。」と記載され(事件事務規程67条1項),この起訴状が「略式命令請求書」と呼ばれている。

②略式手続によることについて異議がないことを被疑者が書面で明らかにしない限り,略式手続とはならない(刑訴法461条の2第2項,462条2項,刑訴規則288条)。そのため,略式手続で処理されることに不服がある被疑者は,通常の刑事裁判を受けることができる。

③略式手続によることについて異議がない旨を被疑者が明らかにした書面は,実務上「略式請書」(略請)と呼ばれる。略式請書は,略式手続について説明・告知をし,異議の有無を確認した旨の検察官作成に係る告知手続書と,略式手続によることに異議がない旨の被疑者作成に係る申述書によって構成されている。

④略式命令の請求をする場合,実務上,検察官は科刑意見(没収その他付随処分を含む。)を裁判所に申し出ることになっており,略式命令請求書とは別個に科刑意見書を作成して提出している(事件事務規程67条3項)。検察官の科刑意見どおりに略式命令が発付された場合であっても,その後累犯前科を含む多数の同種前科の存在が判明するに至ったなどの事情の下では,検察官がした正式裁判の請求は適法であるとされている(最高裁平成16年2月16日決定・刑集58巻2号124頁)。

(続きを読む...)刑事事件の略式手続(AIリライト)

刑事事件の費用補償と刑事補償-請求期間,補償額及び令和8年再審制度改正(AI作成)

目次第1 費用補償・刑事補償・被疑者補償・国家賠償の違い1 この記事の対象と基準日2 主な制度の比較3 最初に確認する請求期間第2 無罪判決が確定した場合の費用補償1 補償の要件と例外2 補償対象となる費用と金額3 請求先,裁判及び不服申立て4 検察官だけが上訴した場合第3 再審請求手続の費用補償に関する令和8年改正1 令和8年10月19日までの制度2 令和8年10月20日からの制度3 経過措置第4 身体拘束又は刑の執行に対する刑事補償1 刑事補償を請求できる場合2 拘禁補償の金額3 補償の全部又は一部が認められない場合4 請求先,不服申立て,払渡し及び公示第5 拘禁期間をめぐる主な最高裁判例1 不起訴事実に基づく拘禁2 本刑に算入された未決勾留日数3 執行猶予期間が満了していた場合の例外第6 免訴・公訴棄却,被疑者補償,国家賠償及び少年補償1 免訴又は公訴棄却の場合2 被疑者補償3 国家賠償は自動的な差額補償ではない4 少年の保護事件に係る補償第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 立法・制度資料4 文献5 関連記事
第1 費用補償・刑事補償・被疑者補償・国家賠償の違い
1 この記事の対象と基準日

費用補償は無罪となった刑事裁判に要した一定の費用を補償する制度であり,刑事補償は無罪となった者が受けた抑留,拘禁又は刑の執行等を補償する制度である。
名称は似ているが,根拠法令,補償対象及び請求期間が異なる。

再審請求手続の費用補償については,令和8年10月7日確認の法務省の施行日掲載に基づき,同年10月20日施行の改正として説明する。
個別の請求では,無罪判決等が確定した日,身体拘束の根拠となった被疑事実,未決勾留日数の本刑算入及び実際に負担した費用を確認する必要がある。

2 主な制度の比較
制度主な根拠主な対象主な成立場面費用補償刑事訴訟法188条の2以下旅費・日当・宿泊料及び弁護人報酬無罪判決が確定した場合刑事補償日本国憲法40条,刑事補償法未決の抑留・拘禁,刑の執行又は拘置身体拘束後に無罪判決を受けた場合等被疑者補償被疑者補償規程不起訴となった被疑者の抑留・拘禁その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある場合等国家賠償国家賠償法1条1項違法な公権力の行使によって生じた損害公務員の職務行為に違法性及び故意・過失等がある場合少年補償少年の保護事件に係る補償に関する法律同行・観護措置・逮捕・勾留等の身体の自由の拘束及び没取審判事由の存在が認められず,審判不開始・不処分等の決定が確定した場合

刑事補償は,捜査機関又は裁判所の違法性を成立要件としていない。
これに対し,国家賠償は,無罪判決が確定したという事実だけでは足りず,国家賠償法上の違法性等を別に立証する必要がある。

3 最初に確認する請求期間

通常の費用補償は無罪判決確定後6か月以内,検察官だけが上訴した場合の上訴審費用の補償は上訴棄却,取下げ又は上訴権放棄の日から2か月以内,刑事補償は無罪判決確定後3年以内に請求する必要がある。
刑事補償決定の公示を求める場合は,補償決定確定後2か月以内に別の申立てをする必要がある。
少年の保護事件に係る補償は,本人の請求を待たずに家庭裁判所が補償の要否及び内容を決定で判断する(後記第6の4)。

第2 無罪判決が確定した場合の費用補償
1 補償の要件と例外

刑事訴訟法188条の2は,無罪判決が確定したとき,国が元被告人に対してその裁判に要した費用を補償すると定めている。
ただし,元被告人の責めに帰すべき事由によって生じた費用については補償されないことがあり,捜査又は審判を誤らせる目的で虚偽の自白をし,又は有罪の証拠を作った場合にも,補償の全部又は一部が認められないことがある。

一個の裁判で一部無罪,一部有罪となった場合は,無罪部分と有罪部分の双方を含む費用の全部が当然に補償されるわけではない。
どの公訴事実について生じた費用であるか,費用の発生原因が元被告人に帰責できるかが区別される。

2 補償対象となる費用と金額

刑事訴訟法188条の6による補償対象は,元被告人及び弁護人が公判準備又は公判期日に出頭するために要した旅費,日当及び宿泊料並びに弁護人報酬に限られる。
実際に支出した費用の全額や,私選弁護人との報酬約定額がそのまま補償される制度ではなく,刑事訴訟費用等に関する法律の関係規定を準用して額が定められる。

弁護人が複数いるときは,事件の性質,審理の状況その他の事情により,旅費,日当及び宿泊料を主任弁護人その他一部の弁護人に係るものに限ることができる。
費用を裏付ける資料として,弁護人選任関係書類,期日一覧,交通経路,領収書及び弁護士報酬の支払資料を整理しておくことが考えられる。

3 請求先,裁判及び不服申立て

費用補償は,無罪判決をした裁判所に対し,元被告人が請求する。
請求期間は無罪判決確定後6か月であり,裁判所は決定によって補償の可否及び額を判断する。

費用補償の決定に対しては即時抗告をすることができる。

(続きを読む...)刑事事件の費用補償と刑事補償-請求期間,補償額及び令和8年再審制度改正(AI作成)

刑事事件の裁判の執行―拘禁刑・財産刑・労役場留置・執行異議(AIリライト)

目次

第1 裁判の執行とは何か

1 裁判の内容を国家の強制力で実現する手続
2 原則は裁判の確定後に執行する

第2 誰がどのように執行するか

1 執行指揮をする検察官
2 執行指揮の方式
3 確定裁判の内容と2以上の刑の執行順序

第3 死刑の執行

1 法務大臣の命令と執行時期
2 立会い,執行始末書及び執行停止
3 死刑の執行方法に関する裁判例

第4 拘禁刑等の自由刑の執行

1 懲役・禁錮から拘禁刑への移行
2 呼出し,収容状及び刑期の計算
3 自由刑の執行停止と執行延期
4 判決確定者等の出国制限

(続きを読む...)刑事事件の裁判の執行―拘禁刑・財産刑・労役場留置・執行異議(AIリライト)

刑事事件の上訴及び不服申立て-控訴・上告・抗告等の期間と手続(AI作成)

第1 この記事の対象と上訴・不服申立ての全体像1 この記事の対象2 判決に対する上訴と決定等に対する不服申立て第2 上訴に共通する規則1 上訴することができる者2 上訴申立書の方式3 期間の計算4 上訴の放棄と取下げ5 上訴権の回復と在監者の提出6 控訴申立て後の原審弁護人と保釈請求第3 控訴1 控訴申立てと控訴趣意書2 控訴理由3 事実誤認の審査方法4 控訴審における事実の取調べ5 控訴審の裁判と不利益変更禁止6 令和7年の控訴審統計7 控訴申立後の記録完全性確認第4 上告及び上告受理申立て1 上告理由と職権破棄2 上告受理申立てと上告審の審理3 上告棄却判決の訂正と上告棄却決定への異議4 令和7年の上告審統計第5 抗告,異議申立て,準抗告及び特別抗告1 通常抗告と即時抗告2 高等裁判所の決定に対する異議申立て3 裁判官又は捜査機関の処分に対する準抗告4 特別抗告5 準抗告及び特別抗告に関する近時の最高裁決定第6 非常上告1 非常上告の目的と申立権者2 事実誤認と法令違反の区別第7 刑事手続のデジタル化と上訴手続第8 関連する手続と記事第9 出典・参考資料1 法令・規則2 裁判例3 統計・データ4 文献
第1 この記事の対象と上訴・不服申立ての全体像
1 この記事の対象

この記事は,刑事訴訟法第三編及び第四編に定められた控訴,上告,抗告,異議申立て,準抗告,特別抗告及び非常上告を中心に,申立権者,期間,審理方法及び裁判の種類を説明するものである。
略式命令に対する正式裁判請求,刑の執行に関する異議,少年事件の抗告及び再審手続の詳細は,それぞれ別の制度であるため,必要な範囲に限って触れる。

法令,裁判例及び統計の基準日は令和8年9月27日である。
情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律には未施行部分があるため,現在の手続と将来施行される制度を区別する。

2 判決に対する上訴と決定等に対する不服申立て

判決に対する上訴は,第一審判決に対する控訴と,控訴審判決に対する上告に分かれる。
これに対し,決定又は命令に対する不服申立てには抗告及び異議申立てがあり,裁判官又は捜査機関の一定の処分に対しては準抗告がある。

対象と主な不服申立て原則的な申立先又は審級一般的な期間第一審判決(控訴)高等裁判所判決宣告日から14日高等裁判所の第一審又は第二審判決(上告)最高裁判所判決宣告日から14日裁判所の決定(通常抗告・即時抗告)直近上級裁判所通常抗告は一般期間なし,即時抗告は3日高等裁判所の決定(異議申立て)決定をした高等裁判所即時抗告の規定が準用される場合は3日裁判官の一定の裁判(準抗告)簡裁裁判官は管轄地裁,その他は裁判官所属の裁判所一般期間なし。429条1項4号・5号の裁判のみ3日検察官・司法警察職員等の一定の処分(準抗告)管轄裁判所法定の一般期間なし抗告裁判所等の決定(特別抗告)最高裁判所5日確定判決(非常上告)最高裁判所検事総長のみが申立て,期間の定めなし

即時抗告及び特別抗告の期間には再審関係の例外がある。
再審請求について刑事訴訟法447条1項又は448条1項によりされた決定に対する即時抗告と,その抗告裁判所の決定に対する特別抗告は,同法450条の3により,いずれも14日である。

第2 上訴に共通する規則
1 上訴することができる者

検察官及び被告人は,上訴することができる(刑事訴訟法351条)。
被告人以外の者で裁判を受けた者も,自己に関する裁判について上訴することができ,法定代理人又は保佐人は被告人のため独立して上訴することができる(同法352条・353条)。

勾留理由の開示があったときは,その開示を請求した者も,被告人のため勾留に対して上訴することができる(刑事訴訟法354条)。
原審における代理人又は弁護人も,被告人のため上訴することができるが,被告人の明示した意思に反して上訴することはできない(同法355条・356条)。

2 上訴申立書の方式―本人作成書面は署名押印まで原本確認

上訴期間内に書面を提出しただけで、常に有効な上訴申立てになるとは限りません。刑事訴訟規則60条は、公務員でない者が作成する訴訟書類について、年月日を記載し、署名押印することを求めています。

最高裁令和元年12月10日決定(平成30年(あ)第1409号)は、被告人が作成した控訴申立書に氏名の印字しかなく、署名も押印もなかった事案について、封筒には被告人の署名があったとしても控訴申立てを無効としました(裁判所公式PDF及び判例秘書L07410106で確認)。また、最高裁昭和50年11月18日決定は、記名代印による上告申立書を有効な署名押印とは認めていません(判例秘書L03010203で確認。今回の検討では裁判所公式PDF未確認)。

したがって、本人作成の申立書は、表題だけでなく、提出者、提出権限、対象裁判、提出先、日付、本人の署名、押印及び提出期限を原本で確認する必要があります。特に、収容中の被告人が施設を通じて提出する場合は、申立書本体と封筒を区別して確認します。

3 期間の計算

上訴期間は裁判の告知を受けた日から進行するが,日を単位とする期間では初日を算入しないのが原則である(刑事訴訟法55条・358条)。
末日が日曜日,土曜日,国民の祝日又は年末年始の法定除外日に当たる場合は,時効期間を除き,その日を期間に算入しない。

法定期間は,所在地間の距離又は交通事情を理由として当然に延びるものではない。
特に,判決宣告によって進行する上訴期間には,刑事訴訟法56条の距離による延長が適用されない。

4 上訴の放棄と取下げ

検察官又は被告人は,上訴を放棄し,又は取り下げることができる(刑事訴訟法359条)。

(続きを読む...)刑事事件の上訴及び不服申立て-控訴・上告・抗告等の期間と手続(AI作成)

弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通権(AIリライト)

目次第1 弁護人制度の位置付け1 弁護人と弁護人依頼権2 本記事の対象時点第2 私選弁護人の選任1 弁護人を選任できる者2 弁護人となる者3 弁護人選任届の提出先と効力4 弁護人の数と主任弁護人第3 国選弁護人1 被告人国選弁護人2 被疑者国選弁護人3 候補者の指名と裁判所による選任4 国選弁護人の費用5 国選弁護人に支給される報酬及び費用6 資力基準と当番・72時間援助・私選から国選への移行第4 弁護人との接見交通1 接見交通権の内容2 公訴提起前の接見指定3 保護室収容中の未決拘禁者との面会第5 利益相反と国選弁護人の解任1 複数の被疑者又は被告人を弁護する場合2 国選弁護人の解任事由第6 関連する刑事手続の記事第7 出典・参考資料1 法令2 最高裁判所規則及び制度運用資料3 裁判例

弁護士への相談と選任を手続段階から探す

現在の状況読む箇所と確認する事項逮捕直後・まだ勾留前当番・72時間援助・私選から国選への移行。当番接見,援助,私選の契約を区別し,利用条件・費用を弁護士会等に確認する。被疑者に勾留状が発せられた被疑者国選弁護人。請求先,資力申告等の条件を確認する。逮捕直後に当然に選任される制度ではない。起訴された被告人国選弁護人と国選弁護人の費用を確認する。家族から選任したい・面会したい弁護人を選任できる者と弁護人との接見交通を確認する。家族の面会と弁護士の接見は別である。

在宅で捜査を受けている場合も,私選弁護人の選任を検討できる。利用する制度と契約・選任の状態を確認し,弁護士への相談と弁護人としての選任を混同しない。

刑事事件全体の分岐と,立場別の確認事項は,刑事事件とは―民事事件との違い,手続の流れと立場別の対応を参照されたい。

第1 弁護人制度の位置付け

1 弁護人と弁護人依頼権

弁護人は,被疑者又は被告人の防御権を具体的に行使し,刑事手続において法律上の援助をする者である。
日本国憲法34条は,身体を拘束される者に直ちに弁護人へ依頼する権利を保障し,同法37条3項は,刑事被告人が資格を有する弁護人へ依頼でき,自ら依頼できないときは国が弁護人を付することを定めている。

刑事訴訟法は,公訴提起前の者を主として被疑者,公訴提起後の者を被告人として,弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通の仕組みを定めている。
私費で選任する私選弁護人と裁判所又は裁判官が付する国選弁護人は,選任の経路が異なるが,いずれも刑事訴訟法上の弁護人である。

2 本記事の対象時点

本記事の調査基準日は令和8年9月7日であり,同日施行中の法令を対象とする。
被疑者国選弁護制度の対象が勾留状の発せられた事件全般へ拡大された後の制度及び令和7年6月1日に施行された拘禁刑の用語を反映している。
第2の3の弁護人選任届に関する方式・効力は,令和8年10月11日時点の施行中の刑事訴訟法及び刑事訴訟規則を確認して補足した。

第2 私選弁護人の選任

1 弁護人を選任できる者

被疑者又は被告人は,いつでも弁護人を選任できる。
法定代理人,保佐人,配偶者,直系の親族及び兄弟姉妹も,本人とは独立して弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条)。

2 弁護人となる者

(続きを読む...)弁護人の選任,国選弁護人及び接見交通権(AIリライト)