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弁護士が懲戒請求を受けたときの初動と綱紀委員会への答弁書の書き方(AI作成)

弁護士が懲戒請求を受けた場合,最初にすることは,請求者への反論ではなく,所属弁護士会から届いた通知,回答期限及び請求書の対象事実を正確に固定することである。

綱紀委員会への答弁書又は弁明書は,懲戒請求者を説得する文書ではなく,綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求めることを相当とするかを判断するための資料である。主位的には懲戒事由がないことを,予備的には,仮に形式的な問題があっても懲戒を要しない事情を,証拠と結び付けて簡潔に示す必要がある。

本記事は一般的な実務整理である。提出期限,書面の名称・部数,請求者への送付又は閲覧,事情聴取,調査依頼及び期限延長の取扱いは単位弁護士会によって異なり得るため,届いた通知と所属会の現行規則を必ず優先する。

第1 通知を受けた直後の初動

最初に,通知書,懲戒請求書,添付資料,封筒又は送信記録を一式保存し,受領日,回答期限,事件番号,提出先,必要部数及び提出方法を一覧にする。期限の起算点が到達日か発送日か,休日の場合の扱いがどうなるかを推測で決めてはならない。

次に,対象事件の委任契約書,利益相反確認,面談記録,電子メール,チャット,電話記録,訴訟記録,入出金記録及び業務日誌を保全する。都合の悪い資料を除外せず,当時作成された資料と後日作成した説明資料を区別する。

共同受任者,事務職員又は関係者への聞取りをする場合は,誰が,いつ,何を直接見聞きしたかを分けて記録する。請求者へ直接連絡するかは,紛争の激化,証拠保全及び代理人選任の有無を踏まえて慎重に判断する。

第2 答弁書の目的と読み手

弁護士法58条によれば,弁護士会は懲戒請求があったとき,綱紀委員会に事案を調査させる。綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求めることを相当と認めるかどうかを議決し,弁護士会はその議決に基づいて手続を進める。

したがって,答弁書の読み手は綱紀委員会である。請求者の感情又は人物評価に反論することより,問題とされた行為,根拠規範,証拠及び結論の関係を明確にすることが重要である。

結論は冒頭で示す。例えば,①請求対象事実が証拠上認められない,②認められる事実はあるが懲戒事由に該当しない,③仮に形式的問題があっても事案の軽重その他の情状から懲戒を要しない,という層を混同しない。

第3 争点・証拠対応表の作り方

本文を書く前に,次の項目を1行ずつ対応させた表を作ると,請求理由の見落としと証拠の重複を防ぎやすい。

  • 請求書の該当頁・項目
  • 問題とされた具体的行為,日時及び関係者
  • 請求者が主張する事実
  • 認否と,認める範囲・否認する範囲
  • 対象弁護士等が主張する事実
  • 双方の主張を裏付ける資料
  • 問題となる弁護士法,会則又は職務基本規程の条文
  • 要件への当てはめ
  • 予備的に主張する被害回復,説明,謝罪,再発防止その他の情状

証拠は,後日の説明書よりも,受任時の契約書,当時のメール,預り金台帳,裁判記録などの同時資料を先に置く。メールは都合のよい一文だけを切り取らず,前後関係が分かる範囲を提出する。

第4 答弁書の基本構成

事案により調整を要するが,基本構成は次のとおりである。

  1. 表示 事件番号,対象弁護士等,提出日及び書面名を記載する。
  2. 結論 審査不相当を求めるのか,請求の一部について事実を認めるのかを明示する。
  3. 答弁の要旨 結論に至る理由を数項目で示す。
  4. 前提事実 受任経緯と時系列を,評価語を減らして記載する。
  5. 請求理由ごとの認否・反論 請求書の順序と対応させる。
  6. 規範と当てはめ 引用する条文と,要件に該当しない理由を分ける。
  7. 証拠 本文の記載と証拠番号を一対一で結び付ける。
  8. 予備的な情状 被害回復,示談,謝罪,改善措置及び再発防止を,必要な範囲で示す。
  9. 手続上の申出 事情聴取,追加調査,期限延長又は秘密性への配慮を求める場合に記載する。
  10. 添付資料一覧 提出物と原本の保管場所を照合できるようにする。

第5 主位的主張と予備的な情状主張

「懲戒事由はない」という主位的主張と,「仮に一部に問題があっても懲戒を要しない」という予備的主張は両立し得る。ただし,同じ事実について否認と無条件の謝罪を同時に述べるなど,論理的に矛盾する書き方は避ける。

予備的主張では,行為の態様・期間・反復性,依頼者その他の関係者への影響,実害,発覚後の対応,被害回復,示談又は取下げ,謝罪,内部手続の改善,再発防止及び過去の処分歴の有無等を,証拠のある範囲で整理する。

請求者への人格攻撃,無関係な私生活の記載又は裏付けのない動機の断定は,委員会が判断すべき争点を見えにくくする。反論に必要な範囲を超えて紛争を拡大しないことが重要である。

第6 弁護士職務基本規程82条との関係

日弁連が公表する現行の弁護士職務基本規程82条2項は,第1章,20条から22条まで,26条,33条,37条2項,46条から48条まで,50条,55条,59条,61条,68条,70条,73条及び74条を,行動指針又は努力目標として解釈し適用すべき規定として列挙する。

したがって,これらの条文への形式的な抵触だけから直ちに懲戒処分の結論を導くべきではない。他方,行動指針又は努力目標であるという理由だけで,重大な違反が懲戒判断から除外されるわけでもない。弁護士法56条1項の懲戒事由と具体的事実に即して実質的に検討する必要がある。

82条の条文と対象規定の詳細は,弁護士職務基本規程82条の行動指針・努力目標-対象条文と懲戒判断(AIリライト)を参照されたい。

第7 守秘義務,第三者情報及び請求者への開示

答弁のために依頼者又は第三者の情報を用いる場合も,必要な範囲を超えて開示しない。対象事実を説明するために必要な情報と,単に相手を非難するための情報を分け,マスキング,抜粋又は別添の方法を検討する。

もっとも,過度のマスキングによって資料の意味が失われたり,反証ができなくなったりすることもある。守秘義務,自己防御の必要性,弁護士会の調査権限及び第三者の利益を個別に検討する。

提出した答弁書や資料が請求者に送付されるか,閲覧又は謄写の対象になるか,秘密性の高い別添を提出できるかは,単位弁護士会の規則と個別の通知を確認する。開示され得ることを想定し,節度ある表現を用いるのが安全である。

第8 期限延長,事情聴取及び調査の申出

期限までに十分な答弁ができないときは,放置せず,必要な期間と理由を具体的に示して期限延長の可否を問い合わせる。延長が当然に認められるとは限らないため,期限内に暫定的答弁を出し,追完の可否を確認する方法も検討する。

弁護士法70条の7は,綱紀委員会が必要と認めるときに,関係人等へ陳述,説明又は資料提出を求める権限を定める。対象弁護士等から事情聴取や調査を申し出る場合は,何を確認すればどの争点が明らかになるかを示す。

出頭,口頭説明,反論の追加,証拠調べ又は第三者照会がどのように扱われるかは一律ではない。希望する手続と,それが必要な理由を分けて記載し,所属会の現行規則と委員会の指示に従う。

第9 示談,取下げ及び事後的な改善

懲戒請求者が取下げをしても,懲戒手続が当然に終了するとは限らない。懲戒制度は弁護士自治の下で職業規律を維持するための制度であり,懲戒請求は手続開始の端緒だからである。

ただし,被害回復,示談,謝罪,取下げ及び再発防止などの事後的事情は,懲戒の要否又は処分の程度を考える事情となり得る。交渉の内容と懲戒手続上の効果を混同せず,取下げを条件に不当な圧力を加えない。

第10 不当な懲戒請求への損害賠償との切分け

最高裁平成19年4月24日第三小法廷判決(平成17年(受)第2126号)は,懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠き,請求者がそれを知り,又は通常人であれば普通の注意により知り得たのにあえて請求するなど,制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くときは,不法行為を構成するとした。

もっとも,懲戒請求が認められなかったことだけで損害賠償責任が生じるわけではない。答弁書では懲戒事由の有無と情状に集中し,損害賠償請求を検討する場合は,懲戒請求書,答弁作成時間,調査費用,業務への具体的影響,公表又は拡散の状況及び関連する連絡を別の記録として保存する。

詳細は,不当な懲戒請求と不法行為責任(AI作成)を参照されたい。

第11 提出前チェックリスト

  • 通知,請求書,添付資料及び受領日の記録を保存したか。
  • 回答期限,提出方法,部数,証拠番号及び書面名を通知と照合したか。
  • 請求理由の全項目に認否又は回答があるか。
  • 主張した事実ごとに裏付け資料があるか。
  • 主位的主張と予備的な情状主張が矛盾していないか。
  • 請求者への人格攻撃や無関係な事情が混じっていないか。
  • 守秘情報と第三者情報の開示が必要最小限か。
  • 引用した法令,会則及び規程が現行版か。
  • 提出書面の送付・閲覧範囲を確認したか。
  • 提出版と証拠一式の写し,提出日及び到達記録を保存したか。

第12 資料の裏付け状況と出典

1 一次資料で確認した事項

弁護士法56条,58条及び70条の7の現行条文,日弁連が公表する懲戒制度の全体像,日弁連の現行弁護士職務基本規程82条2項が33条を列挙すること,並びに最高裁平成19年4月24日判決の不法行為成立基準は,一次資料で確認した。

2 実務上の整理として参照した事項

答弁書の読み手,争点・証拠対応表,主位的主張と予備的な情状主張の分離,節度ある表現及び提出前チェックリストは,法令そのものに様式が定められているものではなく,実務上の整理である。北周士弁護士の「綱紀委員会に提出する答弁書の書き方」も参考にしたが,個別の期限又は単位会の運用の一次資料とは扱っていない。

3 今回確認できていない事項

東京弁護士会その他の単位会ごとの提出期限,答弁書の送付範囲,事情聴取又は調査申出の具体的運用は,今回,最新の各会規則を網羅確認していない。判例秘書はログイン画面までで,検索実行0件,ヒット0件,本文確認0件であり,不当懲戒請求に関する下級審の賠償額相場又は事案類型は本記事の根拠としていない。

4 出典

① e-Gov法令検索「弁護士法」

② 日本弁護士連合会「懲戒制度」

③ 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」

④ 最高裁平成19年4月24日第三小法廷判決(平成17年(受)第2126号,民集61巻3号1102頁)