第1 主な事件と裁判の結果を一覧で見る
国際刑事裁判所(ICC)が扱った事件には,第一審の有罪が上訴審で維持されたものも,上訴審で無罪となったものもある。
公判が始まってから判決に至らず終結した事件や,本人不在で訴因を確認した事件もある。
代表例を取り上げ,裁判部がどの段階で何を判断したのかを,事件番号と公開裁判文書から整理する。
| 事件・事件番号 | 確認できる主な判断 |
|---|---|
| ルバンガ(ICC-01/04-01/06) | 15歳未満の児童の徴募・編入・使用で有罪。上訴審で有罪と刑を維持 |
| ンタガンダ(ICC-01/04-02/06) | 戦争犯罪及び人道に対する犯罪で有罪。上訴審で有罪と刑を維持 |
| アル・マフディ(ICC-01/12-01/15) | 宗教・歴史的建造物への攻撃で有罪 |
| ベンバ(ICC-01/05-01/08) | 第一審で有罪。上訴審で有罪判決を取り消して無罪 |
| ベンバほか(ICC-01/05-01/13) | 第70条の別事件。上訴審で一部無罪とし,残る有罪判断を維持 |
| ルト・サング(ICC-01/09-01/11) | 公判開始後に訴因を取り消して終結。将来の再訴追を妨げない |
| サイド(ICC-01/14-01/21) | 第一審で人道に対する犯罪につき有罪。戦争犯罪の訴因については無罪 |
| コニー(ICC-02/04-01/05) | 公判前に本人不在で訴因を確認。引渡しと出席を条件とする送致の決定 |
第2 ルバンガ・ンタガンダ事件―戦争犯罪等で有罪
コンゴ民主共和国のルバンガ事件では,第一審裁判部が2012年3月14日,15歳未満の児童を徴募・編入し,敵対行為に積極的に参加させるために使用した戦争犯罪について有罪とした。
同年7月10日に14年の拘禁刑が言い渡され,2014年12月1日に上訴裁判部が有罪判断と刑を維持した。
第一審判決の主文とICCの事件ページを参照されたい。
同じコンゴ民主共和国のンタガンダ事件は別の事件番号である。
第一審裁判部は2019年7月8日,戦争犯罪及び人道に対する犯罪の18訴因について有罪とし,同年11月7日に30年の拘禁刑を言い渡した。
2021年3月30日,上訴裁判部は有罪判断と刑を維持した。
第一審判決,有罪判断に対する上訴判決及びICCの事件ページを参照されたい。
第3 アル・マフディ事件―宗教・歴史的建造物への攻撃で有罪
マリのアル・マフディ事件では,トンブクトゥの宗教的・歴史的建造物に対し意図的に攻撃を行った戦争犯罪が問われた。
アル・マフディは公判開始時に罪を認め,第一審裁判部は2016年9月27日に有罪とし,9年の拘禁刑を言い渡した。
2021年11月25日,刑の見直しにより2年減軽された。
判決・刑の言渡しと刑の見直しに関するICCの公式発表を参照されたい。
第4 ベンバ事件―上訴審で無罪,別事件では一部有罪が維持
ベンバの中核犯罪事件では,中央アフリカ共和国で部隊が行ったとされた戦争犯罪と人道に対する犯罪について,指揮官としての責任が争われた。
第一審では有罪となったが,2018年6月8日,上訴裁判部は多数意見で有罪判決を取り消し,ベンバを無罪とした。
上訴判決第197〜199段落を参照されたい。
同じベンバが関わった第70条の事件は別の事件番号であり,証人への不正な働きかけなど,裁判所の司法運営を害する犯罪が争われた。
2018年3月8日の上訴判決は,一部の訴因について無罪とし,残る有罪判断を維持した。
第70条事件の上訴判決とICCの公式発表を参照されたい。
第5 ルト・サング事件―公判の途中で手続が終結
ケニアのルト・サング事件は2013年9月10日に公判が始まった。
2016年4月5日,第一審裁判部は多数で訴因を取り消して両名を解放し,将来改めて訴追することを妨げないとした。
主文は無罪判決とは異なる処理であり,多数を構成した裁判官の理由も分かれた。
手続終結の決定の主文とFremr判事の理由第4段落を参照されたい。
第6 サイド事件―第一審で有罪と無罪が分かれた
中央アフリカ共和国のマハマト・サイド事件では,第一審裁判部が2026年9月23日,拘禁,拷問,迫害及びその他の非人道的行為について,人道に対する犯罪の有罪判断を示した。
戦争犯罪として問われた拷問,残虐な取扱い及び個人の尊厳に対する侵害については,有罪に必要な証明がないとして無罪とした。
ここで示したのは同日の第一審の評決であり,言渡し刑や確定の有無とは区別する。
公開版の第一審判決の主文とICCの事件一覧にある同事件の説明を参照されたい。
第7 コニー事件―本人不在で訴因を確認
ウガンダのジョゼフ・コニー事件では,予審裁判部が本人不在で訴因確認の審理を行った。
2025年11月6日,予審裁判部は訴因を確認し,本人のICCへの引渡しと出席を条件として,公判のため第一審裁判部へ送致すると決定した。
この決定が扱ったのは公判前の訴因確認である。
予審裁判部の決定の主文とICCの公式発表を参照されたい。
第8 裁判の結果を調べるときの確認点
報道などでICCの事件を知ったときは,まず対象者と事件番号を照合し,その裁判文書が逮捕状,訴因確認の決定,第一審判決,上訴判決のどれかを確認するとよい。
訴因確認では各犯罪を行ったと信じるに足りる実質的な理由を示す十分な証拠があるかが審査され,有罪判決には合理的な疑いを超える証明が求められる。
ローマ規程第61条・第66条を参照されたい。
同じ人物でも事件番号が異なる場合があり,同じ事件でも評決,刑の言渡し,上訴の結論は別々の文書に記録される。
対象犯罪や管轄権は国際刑事裁判所(ICC)とは,逮捕状の発付と身柄確保の違いは国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状の効力で説明している。