第1 公判前整理手続で何を決めるのか
刑事事件が起訴された後,初回公判までに何が進んでいるのかを知りたいことがある。
公判前整理手続に同席したい場合,公開の公判を傍聴したい場合,被害者参加人として公判に出席したい場合で,根拠と申出先が異なる。
公判前整理手続は,初回公判に先立ち,事件の争点と証拠を整理して審理計画を立てる手続である。
裁判所は,必要と認めるときに,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により,又は職権で,決定により事件をこの手続に付することができる(刑事訴訟法316条の2)。
裁判所は公判で取り調べる証拠や取調べの順序などを決める。
同法は,整理手続期日の通知先や出頭について定めている(316条の6~9)。
被害者等やその代理人弁護士がこの期日に参加・傍聴する一般的な権利を定めた規定はない。
他方,裁判所から被害者参加を許可された人や委託を受けた弁護士には,公判準備において裁判所が行う証人尋問又は検証への出席に関する規定がある(同法316条の34)。
第2 同席希望や経過の説明は担当検察官に相談する
まず,公判前整理手続の経過や結果について,担当検察官に説明を求める方法がある。
知りたいことが審理予定なのか,整理手続の進捗なのかを具体的に伝えると,説明を受けられる範囲を確認しやすい。
本人や代理人弁護士が在席を特に希望する場合,第5次犯罪被害者等基本計画は,希望の理由,在席による支障の有無・程度,弁護人の意見等を踏まえ,検察官が相当と認めるときに係属裁判所へ希望を伝える取扱いを説明している。
検察官に希望を伝えても,裁判所での在席が確定するわけではない。
本人が公判で証人になる可能性があるときは,証言前の在席や,争点・証拠の具体的な説明が難しい場合がある。
証人として呼ばれる可能性を担当検察官に確認し,その事情を踏まえて,どの情報をいつ受け取れるかを相談する。
第3 公開公判の優先傍聴と被害者参加の違い
公開公判の傍聴については,犯罪被害者等保護法2条が,裁判長に配慮を求めている。
同条が裁判長に配慮を義務付ける申出人は,その事件の被害者,被害者が死亡した場合又は心身に重大な故障がある場合の配偶者・直系親族・兄弟姉妹,及び被害者の法定代理人である。
裁判長は,傍聴席や希望者数などを考慮し,申出人が傍聴できるよう配慮する。
法務省の調査では,この範囲に入らない交際相手,委託を受けた弁護士,被害者支援員に配慮された事例がある。交際相手への配慮がなかった事例も報告されている。
傍聴券が必要になりそうなときも,事件を担当する裁判所に早めに申し出て,当日の案内を確認するとよい。
被害者参加制度は,刑事訴訟法316条の33が掲げる犯罪について,所定の被害者等,法定代理人又はこれらの者の委託を受けた弁護士が,あらかじめ検察官を経由して申し出る制度である。
裁判所が許可した被害者参加人やその委託を受けた弁護士は,審理の状況等による制約の下で公判期日に出席できる(同法316条の34)。
優先傍聴の配慮を申し出る際に,被害者参加の許可を受けていることは要件とされていない。
第4 申出前に整理しておく事項
相談時には,起訴の有無,担当検察庁と係属裁判所,分かれば事件番号や公判期日,申出人と被害者との関係を整理しておく。
その上で,経過の説明,在席希望,公開公判の傍聴席,被害者参加のどれを求めるのかを伝える。
例えば,初回公判までの進み具合を知りたい遺族は,まず担当検察官に進捗と次の説明時期を聞く方法がある。
一方,公開公判の日に傍聴席の確保を相談したい遺族は,事件を担当する裁判所に連絡する。
被告人との接触や周囲から見られることが不安な場合は,その事情と希望する配慮を具体的に伝え,事件ごとの取扱いを確認する。
第5 令和8年の法制審議会で検討されていること
令和8年3月17日閣議決定の第5次犯罪被害者等基本計画は,公判前整理手続への関与と,プライバシーに配慮した公判傍聴の方法を検討課題に挙げている。
整理手続への関与について,計画は,争点や証拠の整理に対して意見を述べる参加と,手続に在席することを区別している。
法制審議会の刑事法(犯罪被害者関係)部会は,令和8年9月10日の第2回会議で4名から意見を聴いた。公判前整理手続への同席を求める意見や,手続に参加しない被害者への説明を重視する意見が出された。
匿名の参考人は,整理手続の段階で出席を申し入れたわけではなく,何が重要だったかは公判が始まってから気付いたと説明した。
同年10月23日の第3回会議では,公判前整理手続への関与と公判手続等の傍聴を審議した。論点整理(案)は,関与の程度や期日の通知,傍聴時の遮蔽やビデオリンクなどを検討項目に挙げる。田岡委員からは,罪責認定と量刑を分け,量刑手続で被害者参加を許可できる制度を検討に加える提案があった。
法務省が全国の地方検察庁に令和8年2月から7月までの事例を照会した結果では,公判前整理手続・期日間整理手続や打合せへの参加・傍聴の要望について回答事例は0件だった。窓口に伝わらなかった希望などはこの件数から分からない。公判傍聴時の遮蔽・ビデオリンクの要望は14件,法定の対象者以外の人の優先傍聴を求める要望の回答事例は57件だった。
57件は,被害者等,法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士が,法定対象外の人のために寄せた要望に関する事例である。
うち45件では,検察官が裁判所に希望を伝え,配慮がなされた。
第6 出典と関連記事
刑事訴訟法316条の2以下,316条の33・34
犯罪被害者等保護法2条
裁判所「刑事手続における犯罪被害者のための制度」
第5次犯罪被害者等基本計画印刷42~44頁・施策3-20,3-24,3-25(施策一覧の3-20は印刷50頁)
法務省「刑事法(犯罪被害者関係)部会第2回会議」 議事録・提出資料
法務省「論点整理(案)」 PDF2頁
法務省「被害者等からの刑事手続等への関与に関する要望についての調査結果」 PDF2~5頁
法務省「田岡委員提出資料」 PDF1~2頁
法務省「刑事法(犯罪被害者関係)部会第3回会議」
刑事手続及び少年審判における被害者の権利
裁判所の傍聴方法