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文書提出命令とは?認められる要件,申立ての書き方と不提出の効果(AI作成)

第1 文書提出命令とは

文書提出命令は,民事裁判で証拠として調べる文書を相手方や第三者が持っているときに,当事者の申立てを受け,裁判所が決定でその所持者に提出を命じる手続である(民事訴訟法219条,223条1項)。
手元の書類だけでは争点を立証しにくいときは,まず,証明したい事実,それを裏付ける特定の文書,文書を持つ者を整理する。
本記事は,2026年11月8日時点の民事訴訟法及び民事訴訟規則に基づいて説明する。

申立てが認められて文書が提出されても,その文書から何を認定できるかは,文書の成立,記載内容,他の証拠との関係などを踏まえて判断される。

第2 文書提出命令が認められる要件

1 取り調べる必要性と提出義務

その文書が争点とどう関係し,なぜ取り調べる必要があるかを具体的に示す(民事訴訟法181条1項)。
そのうえで,所持者にどの根拠で提出義務があるかを検討する(同法220条)。
同条4号を根拠とするときは,書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合に限られる(同法221条2項)。

2 民事訴訟法220条の4つの根拠

提出義務の根拠は,次の4つである。
① 引用文書(1号)。当事者が訴訟で引用した文書を自ら所持している場合である。
② 引渡し又は閲覧を請求できる文書(2号)。申立人が所持者に対し,文書の引渡し又は閲覧を求めることができる場合である。
③ 利益文書・法律関係文書(3号)。申立人の利益のために作成された文書又は申立人と所持者との間の法律関係について作成された文書である。
④ これらのほかに提出義務を負う文書(4号)。同号イからホまでの除外事由のいずれにも該当しないことが前提となる。

3 社内資料や秘密を含む文書

4号の除外事由には,所持者等が刑事訴追を受けるおそれ等のある事項が記載された文書(イ),公務員の職務上の秘密に関する文書で一定のおそれがあるもの(ロ),医師・弁護士等が職務上知った事実又は技術・職業の秘密で黙秘の義務が免除されていないものが記載された文書(ハ),自己利用文書(ニ),刑事事件に係る訴訟に関する書類等(ホ)がある。
自己利用文書に当たるかは,社内資料という名称だけで決まらず,作成目的,外部の者による利用が予定されていたか,開示によってどのような不利益が生じるかなどが問題になる。
国又は地方公共団体が所持し,公務員が組織的に用いる文書は,4号ニの自己利用文書の除外に含まれない。

最高裁平成12年3月10日決定(平成11年(許)第20号,民集54巻3号1073頁)は,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある場合には,特段の事情がない限り自己利用文書に当たるという最高裁の判例を前提とした(当時の4号ハ。現行の4号ニ)。
その上で,外部の者に見せることを予定していないことだけから直ちに自己利用文書に当たるとした原決定は,開示による不利益を具体的に判断していないとして破棄した。
個別の文書については,どの号を根拠に申し立てるかと,その文書の具体的な性質を分けて検討する。

第3 申立書の書き方と5項目の記載例

文書提出命令は,書面で申し立てる(民事訴訟規則140条1項)。
電子提出の利用方法や要否は,事件に適用される手続に従う。

例えば,機器の引渡しの有無が争点で,被告が自分の準備書面で特定の受領書の記載を援用し,その原本を保管しているとする。
この架空例では,原告は,民事訴訟法221条1項の各事項を次のように整理できる。
① 文書の表示。甲型機器1台(製造番号X100)につき,令和8年6月10日付で作成された受領書の原本1通。
② 文書の趣旨。同機器の受領日,受領者及び受領者の署名が記載されている受領書。
③ 文書の所持者。被告。被告は第2準備書面第3項で原本を保管していると述べている。
④ 証明すべき事実。原告が令和8年6月10日に製造番号X100の機器を被告に引き渡したこと。
⑤ 文書の提出義務の原因。被告が第2準備書面第3項で当該受領書の記載を自らの主張の根拠として引用し,その文書を自ら所持していること(同法220条1号)。

申立てでは,5項目に加え,受領書のどの記載が引渡しの有無の判断に関係するかを説明する。
所持や引用が争われることに備え,文書への言及がある準備書面の箇所など,文書の存在と所持を裏付ける手掛かりも示す。

第4 文書名や内容を特定しにくいとき

文書の表示又は趣旨を明らかにすることが著しく困難なときは,申立時に,所持者が対象の文書を識別できる事項を示して,裁判所に,所持者に文書の表示又は趣旨を明らかにするよう求めてもらう申出をする(民事訴訟法222条1項)。
第3の例で受領書の正式名や記載内容が分からないときは,製造番号X100,6月10日前後,被告の受領担当部署などを組み合わせ,どの受領記録を指すかを示す。
所持者,証明すべき事実,提出義務の原因は,引き続き明らかにする。

裁判所は,申立てに理由がないことが明らかな場合を除き,所持者に文書の表示又は趣旨を明らかにするよう求めることができる(同条2項)。
所持者が複数の取引を扱っている場合は,その中から対象を見分けられる情報が必要になる。

第5 提出を求められたときと不提出の効果

1 申立てに対する意見と決定への不服

提出義務や証拠としての必要性に争いがあれば,申立てに対する意見として,文書の存否・所持,根拠条項,秘密の内容や保護が必要な範囲を具体的に示す。
相手方は,申立てについて意見があるときは,意見を記載した書面を裁判所に提出する(民事訴訟規則140条2項)。
裁判所が第三者に提出を命じようとする場合は,その第三者を審尋しなければならない(民事訴訟法223条2項)。

裁判所は,取り調べる必要がないと認める部分や提出の義務があると認めることができない部分を除いて,提出を命じることができる(同条1項)。
同法220条4号イからニまでの該当性を判断するため必要なときは,所持者に文書を提示させることができ,この場合,何人も提示された文書の開示を求めることができない(同法223条6項)。
文書提出命令の申立てについての決定に対しては,即時抗告ができる(同条7項)。
ただし,証拠調べの必要性を欠くとして申立てが却下された場合に,その必要性があることを理由として独立に不服を申し立てることはできない(前記最高裁平成12年3月10日決定)。

2 当事者と第三者で異なる不提出の効果

当事者が命令に従わない場合,裁判所は,文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる(民事訴訟法224条1項)。
当事者が相手方の使用を妨げる目的で,提出の義務がある文書を滅失させるなどして使用できなくした場合も,同様である(同条2項)。

これらの場合に,相手方が文書の記載について具体的な主張をすること及びその文書で証明すべき事実を他の証拠で証明することが著しく困難なときは,裁判所はその事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる(同条3項)。
第三者が命令に従わないときは,裁判所は決定で20万円以下の過料に処する(同法225条1項)。
この過料の決定にも,即時抗告ができる(同条2項)。

第6 文書送付嘱託や電子データに関する質問

1 文書送付嘱託との違いは何か

文書送付嘱託は,裁判所から所持者に既存文書の送付を依頼する手続である(民事訴訟法226条)。
当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は,利用できない(同条ただし書)。
送付の協力が見込める場面では嘱託を検討し,裁判所の命令による提出を求める場合は,提出義務の根拠と必要性を確認する。
所持者が第三者である場合にも,文書提出命令を申し立てることができる。
文書送付嘱託の申立書の記載例と,資料が届いた後の手続は,文書送付嘱託とは―申立書の書き方・拒否への対応・届いた後の手続(AI作成)で説明している。

2 電子メールやログも対象になるか

電子メールやログなどの電磁的記録に記録された情報については,電磁的記録提出命令を申し立てることができる(民事訴訟法231条の2第1項,231条の3第1項)。
この場合は,文書の「所持者」に代えて,その電磁的記録を利用する権限を有する者を特定する。
対象期間,送受信者,システム名など,対象の記録を識別できる事項を整理する。
施行日である令和8年5月21日より前に提起された事件等では,提出の方法が記録媒体によるものに限られる(民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)附則16条)。

第7 出典・関連記事

① 民事訴訟法(e-Gov法令検索)(181条,219条~226条,231条の2・231条の3)
② 民事訴訟規則(裁判所公表の令和8年5月21日施行版)(140条)
③ 民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号。衆議院・制定法律)(附則5条・16条)
④ 最高裁平成12年3月10日決定(平成11年(許)第20号,民集54巻3号1073頁)
⑤ 改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要(裁判所)

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