第1 GビズIDは必須か
1 結論
弁護士は,GビズIDを使わずに,TreeeSの独自のユーザIDを取得して士業者アカウントを登録することができる。
ただし,最高裁判所の暫定版の操作マニュアルは,士業者がGビズIDを使わずにユーザIDを取得した後は,GビズIDを利用する方法に切り替えることはできないと説明している。
したがって,登録前に,事務職員に任せたい操作を,書面の提出,事件記録の閲覧・ダウンロード及びシステム送達の受領に分けて整理し,どちらの方式で登録するかを決めておく必要がある。
本記事は,令和8年11月8日に確認した裁判所の「TreeeSについて」のページと,同ページに掲載された操作マニュアル,総合案内及び利用規約並びにデジタル庁のGビズIDの公開資料を基に,二つの登録方式の違いを整理する。
裁判所の同ページは,操作マニュアルの内容は暫定版であり,先行導入開始までに修正が予定されているとし,ユーザ登録時に必要な書類や登録方法も含めて別途案内するとしている。
2 二つの登録経路と切替えの制限
TreeeS操作マニュアル 当事者用Ver.2.0(2026年8月31日発行,暫定版)資料上24~25頁は,士業者アカウントの登録について,[GビズIDを利用して新規登録]と[GビズIDを使わないで新規登録]の二つの経路を示している。
同25頁の注意点は,アカウント種別で士業者を選択した場合,GビズIDを使わないでユーザIDを取得した後,GビズIDを利用する方法に切り替えることはできないとしている。
これに先立つ令和8年4月3日付調達仕様書35頁にも,同じ趣旨の注意文言をユーザ登録画面に付記する改修方針が記載されていた。
説明されているのは,士業者がGビズIDの非利用から利用へ切り替える場面である。
既に独自のユーザIDを取得した場合の個別の対応や事件情報の扱いは,裁判所の今後の案内で確認する必要がある。
デジタル庁のGビズIDの行政サービス一覧は,TreeeSで利用可能なアカウント種別としてプライム及びメンバーを掲げており,エントリーは掲げていない。
弁護士本人が個人事業主としてGビズIDを用いる場合はプライムを,所属する事務職員が法人/士業事務員アカウントを登録する場合はメンバーを準備することになる。
弁護士法人の弁護士と個人事業主の弁護士が混在する事務所では,誰がプライムの利用者となるかも先に確認する。
第2 弁護士本人がすべて操作する場合
提出,記録の閲覧及び送達の確認を弁護士本人が行うのであれば,GビズIDを使わない方式も選択肢となる。
この方式では,GビズIDの申請や有効期限の更新を管理する必要がない。
他方,暫定マニュアル資料上31頁は,法人/士業事務員アカウントはGビズIDメンバーのみ登録可能なアカウントであり,GビズIDを利用しない者は利用できないとしている。
どちらの方式でも,TreeeSでの本人・資格確認は必要である。
暫定マニュアル資料上29~31頁は,資格証明書類をアップロードする方法と,mintsアカウントと同一のメールアドレスを利用する方法を示しており,いずれも本人確認手続等を終えて本登録が完了すると,システム本登録完了通知メールが送信される流れになっている。
メールアドレスを一致させることについて,mintsの事件や補助者の設定がTreeeSへ引き継がれるとは説明されていない。
登録の手順は,TreeeSのアカウント登録―GビズID,mintsと同じメールアドレス及び本人・資格確認(AI作成)で説明している。
第3 事務職員に書面の提出を手伝ってもらう場合
1 サポーターとして提出を補助する
最高裁判所の令和7年7月2日付調達資料の別紙6「アクタ一覧表」は,外部ユーザのうちサポーターの例として司法書士及び法律事務所事務員等を挙げ,サポーターにはオンライン提出ができる必要がある一方,事件記録の閲覧はできず,サポーターであることから直ちに受送達者となるものではないと注記している。
これは家事事件手続等のデジタル化に伴う改修等業務の調達資料であり,システム対応の観点による整理である。
暫定マニュアル資料上99頁は,訴状フォームの添付資料の欄について,サポータが提出する場合は本人の承諾書をアップロードするよう案内している。
職員にサポーターとして提出を依頼する場合は,対象の事件と書面,必要な承諾書及び送信前に内容を承認する弁護士を決めておく。
事件との関連付けや担当終了時の点検は,TreeeSのサポーターとは―登録・提出権限,事件記録の閲覧及び送達受取人との違い(AI作成)を参照されたい。
2 弁護士と職員でフォームを引き継ぐ
裁判所のTreeeSの総合案内(士業者用)ver.2.1の40頁は,各フォームの末尾の「下書き保存」ボタンで作成途中のフォームを保存書面一覧画面に保存できるとした上で,GビズIDを利用すると,士業者が保存したフォームをメンバ(事務員)が確認・提出したり,メンバ(事務員)が作成したフォームを士業者が確認したりすることなどができると説明している。
例えば,職員がフォームを作成し,弁護士が内容を確認してから提出するという分担を予定しているなら,GビズID方式を選ぶ具体的な理由になる。
GビズID方式で職員の事務員アカウントを用意するには,①GビズIDプライムの利用者等による職員のGビズIDメンバーの作成,②そのメンバーの利用できるサービスの選択・保存(GビズIDメンバー編9~11頁),③TreeeS側での法人/士業事務員アカウントの登録(暫定マニュアル資料上31~33頁)を順に確認する。
暫定マニュアル資料上34頁によれば,GビズIDを利用している者は,ユーザ情報管理の画面の[メンバアカウント情報の確認]から事務員のアカウント情報を確認することができる。
第4 記録の閲覧・送達の受領まで任せる場合
1 記録の閲覧・ダウンロード
フォームを共同で扱えることと,職員が事件記録を閲覧・ダウンロードできることは,別の機能である。
前記の調達資料のアクタ一覧表は,外部用画面での事件記録の閲覧について,当事者・代理人等を「○(身分と手続によっては許可制)」とし,サポーター及び送達受取人を「×」としている。
公開資料からは,GビズIDメンバーの職員がどの事件の記録をどこまで閲覧・ダウンロードできるかは判断できない。
記録の閲覧・ダウンロードを職員に任せる予定であれば,対象の事件,必要な書類の範囲及び職員が利用する画面を,裁判所の本番の案内と画面で確認する必要がある。
2 システム送達の受領
システム送達を職員に受け取ってもらう場合は,送達受取人の届出と,通知先の電子メールアドレスを確認する。
民事訴訟規則45条の3第2項は,システム送達を受ける旨の届出をする場合には連絡先として送達を受ける者の電子メールアドレスを届け出なければならず,送達受取人を届け出るときは,その当事者等識別符号を併せて届け出なければならないとしている。
暫定マニュアル資料上181頁は,システム送達受取人の届出をする場合は[送達受取人の届出]にチェックを入れ,[当事者等識別符号]に送達受取人のログインIDを入力するよう案内している。
前記のアクタ一覧表でも,送達受取人はシステム送達の受領が「○」とされる一方,外部用画面での事件記録の閲覧は「×」とされている。
送達の対象となった書面を確認できることと,事件記録全体を閲覧できることは,分けて確認する。
システム送達受取人の役割は,TreeeSで事務職員ができること-GビズIDメンバー,サポーター及びシステム送達受取人の違い(AI作成)で説明している。
第5 共同事務所で1人の職員が複数の弁護士を補助する場合
TreeeS利用規約5条7号は,システム利用者が複数のアカウントを所持することを禁止事項としつつ,GビズIDメンバーのアカウントと連携したアカウントについては,複数のアカウントを所持することができるとしている。
他方,GビズID利用規約3条3項は,GビズIDメンバーの利用者を,GビズIDプライムの利用者たる法人等に所属する職員に限っている。
例えば,経費を別々に負担するA弁護士とB弁護士を同じ職員が補助している場合は,その職員が各弁護士の所属職員に当たるか,どのプライムからメンバーを発行するか,登録済みのメールアドレス及びTreeeSで必要な役割を順に確認する。
TreeeS利用規約6条3項は,システム利用者が,利用者登録の結果作成されたアカウントを,いかなる場合にも第三者に利用させ,又は貸与等をしてはならないとしている。
弁護士のIDやパスワードを職員に渡して操作させる運用は,この規定に反する。
職員が異動・退職するときは,GビズID側の利用サービス・メンバーの処理と,TreeeS側の担当事件・送達受取人等の変更を,別々に点検するとよい。
メンバーの運用は,TreeeSでGビズIDメンバーを使う方法―法律事務所職員のアカウント,権限設定及びメールアドレス(AI作成)で説明している。
第6 GビズID方式を選んだ後の確認
1 プライムの取得と住所
個人事業主がGビズIDプライムを新規に取得する場合は,オンライン申請と書類郵送申請がある。
GビズIDのよくある質問によれば,オンライン申請では,マイナンバーカードの券面事項入力補助用暗証番号を用いて氏名・住所・生年月日・性別の情報を取得し,書類郵送申請では,「所在地」欄に印鑑登録証明書に記載されている住所を入力する。
事務所の住所がこれと異なる場合は,「アカウント利用者情報」の「連絡先住所」欄にその住所を入力する。
暫定マニュアル資料上83頁・88頁は,GビズIDの個人事業主のアカウントでログインし,訴状フォームで[登録ユーザ情報を反映する]をクリックすると,詳細情報の「住所」欄にGビズIDで登録した「連絡先住所」が反映されると説明している。
同83頁は,画面上で確認できない生年月日も反映されて帳票に表示されるので,不要な場合は手動で削除するよう注意している。
総合案内41頁は,提出前確認画面で,作成した訴状の内容(PDF化された帳票)を確認できるとしており,提出前に帳票を開いて氏名・住所等を照合する。
2 有効期限の管理
デジタル庁のアカウントの有効期限の案内によれば,GビズIDプライム及びメンバーの有効期間は2年3か月であり,有効期限の確認と更新はGビズIDマイページで行う。
プライムの有効期限が切れると,それに紐づくメンバーは,自身の有効期限内であっても,行政サービスへのログイン等について有効期限が切れた場合と同様の制限を受ける。
更新には本人確認を含む場合があり,最大1か月ほどかかることがあるとされているため,更新の担当者と完了の確認方法を事務所で決めておくと,提出や送達の確認を担当する者が認証できるかを把握しやすい。
住所の入力,申請及び期限の管理は,TreeeSの登録前にGビズIDを準備する方法―住所入力,申請・有効化と期限管理(AI作成)で説明している。
第7 先行導入と確認の範囲
令和8年11月8日に確認した裁判所の「TreeeSについて」のページによれば,令和9年1月4日から,名古屋地方裁判所(支部を含む。)及びその管内の簡易裁判所,名古屋高等裁判所本庁並びに最高裁判所において,TreeeSが先行導入される。
同日以降,これらの先行導入庁に対し,システムを用いて新たな訴えの提起等の申立てをする場合にはTreeeSを用い,先行導入時点でmintsで取り扱われている事件に対する上訴の申立ては,引き続きmintsで行う。
本記事の登録手順は暫定マニュアル,フォームの分担は総合案内,役割の整理は調達資料,アカウントの管理条件は各利用規約に基づくものである。
利用者登録の受付開始日・必要書類,事件ごとの職員の権限及び既に取得したアカウントの扱いは,裁判所の追加の案内で確認する必要がある。
TreeeSの全体像は,TreeeS(ツリーズ)とは―mintsとの違い,導入時期,アカウント及び法律事務所の準備(AI作成)で説明している。
第8 出典
1 裁判所の資料
① 裁判所「TreeeSについて」(令和8年11月8日確認)
② 最高裁判所「TreeeS操作マニュアル 当事者用」Ver.2.0(2026年8月31日発行,暫定版)資料上2頁・24~34頁・83頁・88頁・99頁・181頁(PDFの頁は資料上の頁に4を加えた数)
③ 裁判所「TreeeSの総合案内(士業者用)」ver.2.1 40頁・41頁
④ 裁判所「TreeeS利用規約」5条7号・6条3項
⑤ 最高裁判所事務総局経理局長「家事事件手続等のデジタル化に伴うe事件管理システム・e提出・e記録管理システムの改修等業務一式 公募公告及び調達仕様書」(令和7年7月2日付)別紙6「アクタ一覧表」(PDF62頁)
⑥ 最高裁判所事務総局経理局長「e提出・e記録管理システム及びe事件管理システムの追加機能改修業務 公募公告及び調達仕様書」(令和8年4月3日付)PDF35頁
⑦ 裁判所「民事訴訟規則」45条の3
2 デジタル庁のGビズIDの資料
① デジタル庁「行政サービス一覧」のTreeeSの欄(令和8年11月8日確認)
② デジタル庁「GビズID利用規約」3条
③ デジタル庁「よくある質問」の所在地・連絡先住所,オンライン申請の暗証番号及び有効期限の項目
④ デジタル庁「アカウントの有効期限」
⑤ デジタル庁「GビズIDクイックマニュアル GビズIDメンバー編」ver4.6(2026年9月)9~11頁
3 関連記事
① TreeeS(ツリーズ)とは―mintsとの違い,導入時期,アカウント及び法律事務所の準備(AI作成)
② TreeeSのアカウント登録―GビズID,mintsと同じメールアドレス及び本人・資格確認(AI作成)
③ TreeeSの登録前にGビズIDを準備する方法―住所入力,申請・有効化と期限管理(AI作成)
④ TreeeSで事務職員ができること-GビズIDメンバー,サポーター及びシステム送達受取人の違い(AI作成)
⑤ TreeeSでGビズIDメンバーを使う方法―法律事務所職員のアカウント,権限設定及びメールアドレス(AI作成)
⑥ TreeeSのサポーターとは―登録・提出権限,事件記録の閲覧及び送達受取人との違い(AI作成)