目次
第1 この記事の対象と結論1 米国のICC制裁で何が起きたのか2 現時点で確認できる三つの到達点第2 米国制裁の法的根拠と現在の対象1 大統領令14203号とOFAC規則2 個人の指定人数とICC本体の追加指定3 例外,一般許可及び事実上の域外効果第3 ICCは非締約国の国民を裁けるか1 非加盟国の米国にICCの管轄権は及ぶのか2 アフガニスタンとパレスチナ3 米国とICCの関係の変化第4 米国国内法上の争点と連邦訴訟1 修正第1条,IEEPA及び適正手続2 2026年8月20日時点の関連9訴訟3 各調査時点の裁判例から分かること第5 国際法上の適法性1 ICCの独立と特権免除2 国連特別報告者の免除3 ローマ規程70条の射程第6 EU,日本及び企業への影響1 EU Blocking Statuteの対象と限界2 日本政府とICC協力法3 日本企業が確認すべき順序第7 制度・判決を読む際の限界第8 出典・参考資料1 米国の法令・公的資料2 条約・ICC裁判文書3 米国裁判例・訴訟資料4 EU及び日本の公的資料5 文献
第1 この記事の対象と結論
1 米国のICC制裁で何が起きたのか
ICCは,ローマ規程に基づいて重大な国際犯罪について個人の刑事責任を追及する裁判所である。
裁判所そのものの役割,4種類の犯罪,管轄権,補完性及び日本との関係は,国際刑事裁判所(ICC)とは―役割・管轄権・加盟国と日本との関係で整理している。
本記事は,この制度をめぐる米国の経済制裁を主題とする。
米国は,国際刑事裁判所(ICC)による米国人やイスラエル政府関係者等への捜査・訴追が主権及び国家安全保障を脅かすとする立場から,大統領令14203号に基づく制裁を実施している。
指定対象者の財産凍結,取引禁止及び所定の入国制限が主な措置である。
一方,ICCの属地的管轄権や独立性との関係,米国国内法上の言論の自由などが争点となる。
2026年10月9日には,裁判官・検察関係者等の個別指定に加え,ICC本体が指定され,一般許可13号から16号が発行された。
本記事はこの指定と許可及び日本政府の10月の対応を追記した総論である。
個人の指定人数,関連訴訟及びその他の既存の法的分析は,特に別の日付を示す箇所を除き,2026年8月20日の調査時点に基づく。
各日付を区別して読む必要がある。
よくある疑問答えと確認する時点米国はなぜICCに制裁するのか大統領令14203号は,米国人や一定の同盟国人に対するICCの捜査・訴追等を主権・安全保障への脅威とする米国政府の立場を示す。これは米国側の理由であり,ICCの管轄権についての裁判所の確定判断とは区別する米国が非加盟なら,米国人を裁くことはできないのか非加盟であることだけでは結論は出ない。締約国領域内の犯罪等について,ローマ規程12条の管轄権の条件を確認する。協力義務の根拠は,管轄権とは別に検討するICC本体にも制裁が及んだのかOFACは2026年10月9日にICC本体を指定し,一般許可13号から16号を発行した。個人の指定と本体の指定,一般許可による例外を分ける日本はどう対応したのか外務省は2026年10月9日の外務大臣メッセージ,翌10日の8か国外相共同声明及び赤根ICC所長との電話会談を公表した。8月までの記載と10月の対応を区別する
この表の10月の動きと,本文で明示した2026年8月20日時点の人数・訴訟一覧とは,資料の基準日が異なる。
後者を10月時点の最新の全件数として読むことはできない。
本記事は,パレスチナ又はアフガニスタンで主張されている個々の国際犯罪の成否を判断するものではない。
また,特定の指定対象者について制裁解除の見通しを予測するものでもない。
31 C.F.R. Part 528による資産凍結,OFAC 50%ルール及びカード・送金・クラウド等への具体的影響は,米国のICC関係制裁による生活・事業上の不利益とOFAC 50%ルールで扱う。OFACへの指定再検討,個別ライセンス及び米国連邦訴訟などの救済手段は,ICC関係者が米国制裁を法的に争う方法で扱う。米国接点のない外国人による支援について,Part 528の直接違反,外国支援者自身の追加指定及び違反惹起を区別した検討は,米国接点のない外国人がICC制裁対象者を支援する場合の米国法上の取扱いで扱う。
ICC本体の指定と個人指定との違い,通信・クラウド,支払及び年金に関する一般許可の詳細は,ICC本体への米国制裁と一般許可13号から16号で説明している。テロ制裁との違いは,ICC関係制裁とテロリスト制裁の比較を参照されたい。
赤根智子氏の所長としての職務,日本人裁判官の歴代一覧及び選出方法は,国際刑事裁判所(ICC)の日本人裁判官と所長で説明している。
所長の選出と,米国政府による制裁指定は別の制度上の判断である。
2 現時点で確認できる三つの到達点