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借地権の地代・権利金・評価方法―相場,税務及び借地非訟(AIリライト)

第1 借地権の金額は目的ごとに分けて考える

借地権に関する金額には,賃貸借契約上の地代,権利金,更新料,名義変更承諾料,増改築承諾料,税務上の相当の地代,財産評価上の借地権割合及び不動産鑑定評価額がある。

これらは算定目的,基準時及び根拠資料が異なるため,路線価図の借地権割合又は税務上の相当の地代を,民事上の地代・承諾料又は市場価格へそのまま用いることはできない。

まず,①契約条件を決める場面,②賃料増減額請求の場面,③法人税又は相続税・贈与税の場面,④売買又は担保評価の場面,⑤借地非訟事件の場面のどれであるかを特定する必要がある。

第2 契約上の地代と税務上の相当の地代

1 民事上の地代

契約上の地代は,土地の所在,面積,用途,契約期間,公租公課,従前の地代,近隣の賃料,権利金その他の一時金及び改定条項を踏まえて定められる。

借地借家法11条による地代等増減額請求が問題となる場合は,土地に対する租税その他の負担の増減,土地価格の上昇・低下その他の経済事情の変動及び近傍類似の土地の地代等との比較を検討する。

最高裁判所第三小法廷平成16年6月29日判決(平成15年(受)第751号)は,消費者物価指数が下降しても地代を減額しない旨の特約がある場合でも,借地借家法11条1項に基づく地代減額請求権の行使は妨げられないとした。他方,特約の存在,締結経緯及び賃料額決定の前提は,減額請求の当否及び相当地代額を判断する重要な事情となる。

地代・家賃の増減額請求では,不減額特約,自動改定条項,定期建物賃貸借の特則,争いの間の支払及び調停前置を分けて検討する必要がある。詳しくは,地代・家賃の増減額請求―不減額特約,自動改定条項,調停前置と立証資料(AI作成)を参照されたい。

親族間などで相場より安い地代しか授受していない場合には,増額請求の前提として,その関係が賃貸借に当たるか使用貸借にとどまるかも問題となり,この区別は使用貸借と賃貸借の区別-固定資産税程度の支払,相場より安い地代・家賃は賃料かで扱っている。

2 法人税上の相当の地代

法人が借地権の設定により土地を使用させる場合,権利金を収受する取引上の慣行があるのに権利金を収受しなければ,法人税上,権利金の認定課税が問題となる。

国税庁タックスアンサーNo.5732は,権利金に代えて相当の地代を収受するとき,その額を原則として土地の更地価額のおおむね年6%程度としている。

法人税基本通達13-1-2の本文は年8%程度と記載する一方,平成元年3月30日付け直法2-2が当分の間これを年6%と読み替える取扱いを定めているため,両資料を併せて確認する必要がある。

この6%は権利金の認定課税を回避するための税務上の取扱いであり,個別の借地契約における通常地代又は裁判所が相当と判断する地代を一律に示すものではない。

第3 権利金,無償返還届出及び借地権の税務

1 権利金の認定課税

法人税法施行令137条は,法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合において,通常収受すべき権利金を収受しないときの所得計算を定めている。

具体的な課税関係は,貸主・借主が個人か法人か,権利金の授受,地代の額,契約期間,地代改定方法及び無償返還に関する届出の有無によって異なる。

2 無償返還に関する届出

将来,借地人が土地を無償で返還することを契約で定め,所定の届出をする取扱いは,税務上の借地権認定と関係する。

もっとも,無償返還に関する届出があることだけで,建物収去,明渡し,契約解除又は借地権譲渡に関する民事上の問題がすべて解決するわけではない。

親族間で土地を使わせる場合の使用貸借,地代の水準及び相続税評価については,親族間で土地を使わせる場合の課税-使用貸借と相当の地代で説明している。

第4 更新料・承諾料等に一律の相場はない

借地契約では,更新料,名義変更承諾料,増改築承諾料,建替承諾料及び条件変更承諾料が問題となることがある。

これらについてウェブ上で「更地価格の何%」又は「借地権価格の何%」という目安が示されることがあるが,法令上の全国一律の率ではない。

個別の金額を検討するときは,契約書,借地権の種類と残存期間,建物の用途・構造,従前の支払経緯,地域の取引慣行,土地価格,地代及び当事者が得る利益を確認する必要がある。

第5 借地権の鑑定評価

国土交通省の不動産鑑定評価基準は,借地権の取引慣行の有無及び成熟の程度によって評価方法を分けている。

取引慣行が成熟した地域では,借地権等の取引事例に基づく比準価格及び土地残余法による収益価格を関連付け,賃料差額の還元額及び地域の借地権割合による価格を比較考量する。

取引慣行の成熟度が低い地域では,土地残余法による収益価格,賃料差額の還元額及び更地又は建付地価格から底地価格を控除した価格を比較考量する。

したがって,路線価図の借地権割合だけで個別借地権の鑑定評価額が決まるわけではない。

借地人による底地取得では,底地の取引価格,更地としての価格及び取得後の土地・建物全体の価格を区別する。
不動産鑑定評価基準は,借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合を,限定価格を求める例として挙げている。
その取得代金を,更地の正常価格又は取得後の貸家と敷地全体の正常価格と同一視すべきではない。

取得後の土地の利益を既に反映した全体の収益価格に,同じ底地の購入代金をさらに加算すると,価値を重ねて数えることになる。
取得前の収支から取得後へ補正する場合は,取得部分に対応してなくなる地代と,新たに負担する土地の税金等を区別する。
一部の敷地だけを取得したときは,残る借地や他人地の利用条件まで当然に解消したと扱わない。
具体的な収支の照合手順は,相続・遺産分割で収益不動産の査定書を読むを参照されたい。

第6 借地非訟事件の類型と書式

借地非訟事件には,借地条件変更,増改築許可,更新後の建物再築許可,土地賃借権譲渡・土地転貸許可及び競売・公売に伴う土地賃借権譲受許可等がある。

大阪地方裁判所の借地非訟事件案内及び東京地方裁判所の書式例には,事件類型に対応する申立書等が掲載されている。

申立てに当たっては,土地・建物の登記事項証明書,公図,地積測量図,契約書,固定資産評価証明書,建築計画,譲渡条件及び当事者間の交渉経過を事件類型に応じて準備する必要がある。

借地非訟事件の申立てをしようとする人は,所有者の委任がなくても,申立ての目的である土地・建物の固定資産評価証明書を請求できる(地方税法施行令52条の15の表第4号,民事訴訟費用等に関する法律別表第一の13の項)。弁護士が代理人として申請するときは,日本弁護士連合会の統一様式(使用目的「借地非訟の申立て」)を用いる。対価を支払っている借地人は,借地人としても,借地の評価証明書を請求できる(同表第1号)。詳しくは,固定資産評価証明書を所有者以外が取得できる場合を参照されたい。

借地上建物の共有持分を売買する際の承諾手続と建物買取請求権については,共有持分買取業者の目的とトラブル対応―共有物分割と建物買取請求権(AI作成)を参照されたい。

借地上の建物を他人に貸すことが土地の転貸に当たるか,承諾なく第三者に使わせた場合に解除されるかについては,借りた土地・建物を他人に使わせたら解除されるか―民法612条の無断転貸・無断譲渡と信頼関係破壊の法理を参照されたい。

第7 関連記事

宅地建物取引業者による媒介,重要事項説明及び不動産取引の記事全体については,宅建業法・不動産取引の実務ガイドを参照されたい。

地代又は借地権価格を比較するための公的価格・取引情報については,家賃相場・土地価格相場等の調べ方を参照されたい。

借地が私道に接する場合の通行,掘削及び給排水設備については,私道をめぐる法律関係を参照されたい。

旧借地権から普通借地権又は定期借地権へ切り替える場合の制度比較と契約確認については,旧借地権から現行法上の借地権へ切り替えるメリット・デメリット(AI作成)を参照されたい。

第8 出典

① e-Gov法令検索「借地借家法」11条及び17条から20条まで

② e-Gov法令検索「法人税法施行令」137条

③ 国税庁「No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂」

④ 国税庁「第13章 借地権の設定等に伴う所得の計算」及び「法人税の借地権課税における相当の地代の取扱いについて」

⑤ 国土交通省「不動産鑑定評価基準」

⑥ 大阪地方裁判所「第4 借地非訟事件」

⑦ e-Gov法令検索「地方税法施行令」52条の15

⑧ 最高裁判所第三小法廷平成16年6月29日判決(平成15年(受)第751号,裁判所ウェブサイト)

⑨ e-Gov法令検索「民事調停法」24条の2