第1 借地権の金額は目的ごとに分けて考える
借地権に関する金額には,賃貸借契約上の地代,権利金,更新料,名義変更承諾料,増改築承諾料,税務上の相当の地代,財産評価上の借地権割合及び不動産鑑定評価額がある。
これらは算定目的,基準時及び根拠資料が異なるため,路線価図の借地権割合又は税務上の相当の地代を,民事上の地代・承諾料又は市場価格へそのまま用いることはできない。
まず,①契約条件を決める場面,②賃料増減額請求の場面,③法人税又は相続税・贈与税の場面,④売買又は担保評価の場面,⑤借地非訟事件の場面のどれであるかを特定する必要がある。
第2 契約上の地代と税務上の相当の地代
1 民事上の地代
契約上の地代は,土地の所在,面積,用途,契約期間,公租公課,従前の地代,近隣の賃料,権利金その他の一時金及び改定条項を踏まえて定められる。
借地借家法11条による地代等増減額請求が問題となる場合は,土地に対する租税その他の負担の増減,土地価格の上昇・低下その他の経済事情の変動及び近傍類似の土地の地代等との比較を検討する。
2 法人税上の相当の地代
法人が借地権の設定により土地を使用させる場合,権利金を収受する取引上の慣行があるのに権利金を収受しなければ,法人税上,権利金の認定課税が問題となる。
国税庁タックスアンサーNo.5732は,権利金に代えて相当の地代を収受するとき,その額を原則として土地の更地価額のおおむね年6%程度としている。
法人税基本通達13-1-2の本文は年8%程度と記載する一方,平成元年3月30日付け直法2-2が当分の間これを年6%と読み替える取扱いを定めているため,両資料を併せて確認する必要がある。
この6%は権利金の認定課税を回避するための税務上の取扱いであり,個別の借地契約における通常地代又は裁判所が相当と判断する地代を一律に示すものではない。
第3 権利金,無償返還届出及び借地権の税務
1 権利金の認定課税
法人税法施行令137条は,法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合において,通常収受すべき権利金を収受しないときの所得計算を定めている。
具体的な課税関係は,貸主・借主が個人か法人か,権利金の授受,地代の額,契約期間,地代改定方法及び無償返還に関する届出の有無によって異なる。
2 無償返還に関する届出
将来,借地人が土地を無償で返還することを契約で定め,所定の届出をする取扱いは,税務上の借地権認定と関係する。
もっとも,無償返還に関する届出があることだけで,建物収去,明渡し,契約解除又は借地権譲渡に関する民事上の問題がすべて解決するわけではない。
第4 更新料・承諾料等に一律の相場はない
借地契約では,更新料,名義変更承諾料,増改築承諾料,建替承諾料及び条件変更承諾料が問題となることがある。
これらについてウェブ上で「更地価格の何%」又は「借地権価格の何%」という目安が示されることがあるが,法令上の全国一律の率ではない。
個別の金額を検討するときは,契約書,借地権の種類と残存期間,建物の用途・構造,従前の支払経緯,地域の取引慣行,土地価格,地代及び当事者が得る利益を確認する必要がある。
第5 借地権の鑑定評価
国土交通省の不動産鑑定評価基準は,借地権の取引慣行の有無及び成熟の程度によって評価方法を分けている。
取引慣行が成熟した地域では,借地権等の取引事例に基づく比準価格及び土地残余法による収益価格を関連付け,賃料差額の還元額及び地域の借地権割合による価格を比較考量する。
取引慣行の成熟度が低い地域では,土地残余法による収益価格,賃料差額の還元額及び更地又は建付地価格から底地価格を控除した価格を比較考量する。
したがって,路線価図の借地権割合だけで個別借地権の鑑定評価額が決まるわけではない。
第6 借地非訟事件の類型と書式
借地非訟事件には,借地条件変更,増改築許可,更新後の建物再築許可,土地賃借権譲渡・土地転貸許可及び競売・公売に伴う土地賃借権譲受許可等がある。
大阪地方裁判所の借地非訟事件案内及び東京地方裁判所の書式例には,事件類型に対応する申立書等が掲載されている。
申立てに当たっては,土地・建物の登記事項証明書,公図,地積測量図,契約書,固定資産評価証明書,建築計画,譲渡条件及び当事者間の交渉経過を事件類型に応じて準備する必要がある。
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第8 出典
① e-Gov法令検索「借地借家法」11条及び17条から20条まで
② e-Gov法令検索「法人税法施行令」137条
③ 国税庁「No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂」
④ 国税庁「第13章 借地権の設定等に伴う所得の計算」及び「法人税の借地権課税における相当の地代の取扱いについて」
⑤ 国土交通省「不動産鑑定評価基準」
⑥ 大阪地方裁判所「第4 借地非訟事件」