第1 津修習の全体像
津修習とは,津を実務修習地として,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の分野別実務修習等を受けることである。主な修習基盤は,津地方・家庭・簡易裁判所,津地方検察庁及び三重弁護士会である。
本記事は,令和8年8月15日現在の公表資料及び司法行政文書に基づき,第79期の日程,第72期から第78期までの配属現員,第77期に津で実施された修習内容,主な修習先,事件統計,住居,修習給付金及び県内就職情報を整理するものである。班ごとの集合場所,個別指導の日程及び選択型実務修習のプログラムは期ごとに変更され得るため,配属後は司法研修所及び各実務修習庁会から交付される最新資料を確認する必要がある。
津の配属現員は近年15人から20人で推移しており,第77期は20人を4班に分けていた。大規模修習地とは異なる規模で四分野を巡回する一方,裁判所管内には複数の支部があり,令和7年の事件統計にも相当数の民事,刑事及び家事事件が計上されている。
第2 津の配属人数と実務修習地の希望
1 第72期から第78期までの配属現員
最高裁判所の司法行政文書として開示された「司法修習生配属現員表」によれば,津の配属現員は次のとおりである。ここでいう現員は各基準日現在の実人数であり,配属定員,第一希望者数又は競争倍率ではない。
| 期 | 基準日 | 津の配属現員 | 現員表の全国合計 |
|---|---|---|---|
| 第72期 | 平成30年11月27日 | 17人 | 1482人 |
| 第73期 | 令和元年11月27日 | 17人 | 1473人 |
| 第74期 | 令和3年3月31日 | 16人 | 1456人 |
| 第75期 | 令和3年11月12日 | 15人 | 1329人 |
| 第76期 | 令和4年11月27日 | 16人 | 1394人 |
| 第77期 | 令和6年3月21日 | 20人 | 1830人 |
| 第78期 | 令和7年3月19日 | 18人 | 1556人 |
第72期から第78期までの津は15人から20人の範囲で推移している。第79期の津配属現員表は,令和8年8月15日までに確認できた公表資料には含まれていない。
2 実務修習地の決定方法
最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の平成29年度(最情)答申第1号には,実務修習地は「司法修習生の希望を基本として,各人の諸般の事情を考慮している」とする最高裁判所の説明が記録されている。希望地への配属を約束する仕組みではなく,受入可能人数及び全体の配属調整が介在するため,津を第一希望としても必ず津に配属されるとは限らない。
3 過去の希望倍率を現在の人気指標にできない理由
平成29年度(最情)答申第1号によれば,希望順位別人数を記載した「実務修習希望地調査表」は第69期までは作成されることがあったが,第70期から事務合理化のため作成されていない。第69期以前の資料に基づく希望倍率は歴史的な参考値にとどまり,第79期の人気又は配属可能性を示すデータではない。
したがって,津の配属可能性を検討するときは,古い倍率だけで判断せず,最新の採用選考手引,配属現員表及び司法研修所から示される希望地の記載要領を優先すべきである。過去の区分又は順位付けを現行制度へそのまま当てはめることはできない。
第3 第79期津修習の日程
1 導入修習から分野別実務修習まで
第79期は,令和8年3月19日から同年4月10日まで導入修習を行い,同月14日から11月20日まで四つのクールに分かれて分野別実務修習を行う。各修習生は,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の四分野を一クールずつ巡回する。
| 課程 | 期間 |
|---|---|
| 導入修習 | 令和8年3月19日~4月10日 |
| 第1クール | 令和8年4月14日~6月9日 |
| 第2クール | 令和8年6月10日~8月2日 |
| 第3クール | 令和8年8月3日~9月28日 |
| 第4クール | 令和8年9月29日~11月20日 |
分野別実務修習の開始日及び終了日は全国日程であるが,津における班別の巡回順序,庁会ごとの集合時刻及び個別行事は,津の実務修習担当者から交付される日程によって確定する。
2 津では選択型実務修習の後に集合修習を行うこと
第79期は,分野別実務修習後の順序によって二つの区分に分かれる。東京,立川,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,奈良,大津及び和歌山は集合修習を先に行い,津を含むそれ以外の修習地は選択型実務修習を先に行う。
津を含む区分では,選択型実務修習が令和8年11月24日から令和9年1月8日まで,集合修習が令和9年1月13日から同年2月25日まで予定されている。全国日程及び関連資料は,第79期司法修習の日程にも掲載されている。
第4 第77期の資料から分かる津の実務修習
1 4班による4分野の巡回
司法行政文書として開示された「第77期津修習の実務修習日程」によれば,第77期の津修習生20人は4班に分かれ,民事裁判,刑事裁判,検察及び弁護の四分野を次の四クールで巡回した。
| クール | 期間 |
|---|---|
| 第1クール | 令和6年4月16日~6月10日 |
| 第2クール | 令和6年6月11日~8月1日 |
| 第3クール | 令和6年8月2日~9月26日 |
| 第4クール | 令和6年9月27日~11月20日 |
4班が四分野を一度ずつ担当する構造であり,同じ時期に各分野へ配属される人数は原則として5人であったと確認できる。もっとも,この人数は第77期の現員と班編成から分かるものであり,第79期の班人数を示すものではない。
2 津の裁判修習で実施された内容
第77期の裁判修習では,開始式及びオリエンテーションのほか,民事裁判と刑事裁判の問研起案,講評,修習指導担当者との面談,家庭裁判所修習,簡易裁判所裁判官による講義及びミニ模擬裁判が予定されていた。事件記録を用いる起案と講評だけでなく,地裁,家裁及び簡裁の実務を横断する構成であった。
さらに,税理士,社会保険労務士,不動産鑑定士及び司法書士による講義並びに自由研究日も組み込まれていた。津の裁判修習は,裁判手続だけでなく,隣接専門職との関係及び地域の法律実務を学ぶ機会を含んでいたと整理できる。
3 第78期以降へ読み替える際の限界
第77期資料から確認できるのは,同期に津で実施された日程及びプログラムである。第78期及び第79期について,同じ講義,面談,模擬裁判又は自由研究日が同じ形で実施されるとは限らない。
また,津地方検察庁の検察修習,三重弁護士会の弁護修習及び津で提供される選択型実務修習について,第79期の詳細プログラムを示す公開資料は確認できなかった。これらの内容は,配属後に交付される当該期の資料で確認する必要がある。
第5 主な修習先と庁舎へのアクセス
1 津地方・家庭・簡易裁判所,津地方検察庁及び三重弁護士会
津の主な修習関係機関は,津市中央及び丸之内養正町に所在する。所在地は次のとおりである。
| 機関 | 所在地 | 公表されたアクセス等 |
|---|---|---|
| 津地方・家庭・簡易裁判所 | 〒514-8526 津市中央3番1号 | 津駅から三重会館前まで路線バスを利用し,停留所から徒歩4分~5分。津新町駅から徒歩約15分 |
| 津地方検察庁 | 〒514-8512 津市中央3番12号 | 代表電話059-228-4121 |
| 三重弁護士会 | 〒514-0036 津市丸之内養正町1番1号 | 令和8年4月1日現在の会員数201人 |
裁判所の公式案内に掲載された電話番号は,津地方裁判所の民事訴訟及び刑事訴訟に関する総合窓口が059-226-4172,津家庭裁判所の家事事件に関する総合窓口が059-226-4171である。問い合わせ先は事件又は用務によって異なるため,担当部署は公式案内で確認する必要がある。
2 津地裁本庁の事件処理体制
令和8年4月1日現在の担当裁判官一覧によれば,津地裁本庁には民事事件を担当する4人の単独係と二つの合議体,刑事事件を担当する4人の単独係と二つの合議体が掲げられている。津地裁管内には四日市,松阪,伊賀,伊勢及び熊野の各支部があるため,管内統計と津市内の本庁だけの事件数を混同してはならない。
三重県内の裁判員裁判は津地裁本庁で取り扱われ,裁判員裁判用法廷として201号法廷及び202号法廷が案内されている。令和7年に津地裁で裁判員裁判により終局した総人員は11人である。
第6 令和7年の事件統計からみた津の実務基盤
1 民事・行政,刑事及び家事事件の件数
最高裁判所事務総局の令和7年司法統計年報によれば,津地裁又は津家裁について次の件数が計上されている。民事・行政及び刑事の数値は支部を含む津地裁管内の事件数であり,修習生一人当たりの担当件数ではない。
| 分野・事件類型 | 新受 | 既済 | 未済 |
|---|---|---|---|
| 民事・行政事件総数 | 7795件 | 7650件 | 3674件 |
| 民事事件 | 7749件 | 7610件 | 3654件 |
| 第一審通常訴訟 | 1297件 | 1311件 | 912件 |
| 行政事件 | 46件 | 40件 | 20件 |
| 刑事訴訟事件のうち略式命令を除く事件 | 1070人 | 980人 | 373人 |
| 略式命令事件 | 2184人 | 2188人 | 29人 |
| 刑事非訟事件 | 8837人 | 8836人 | 18人 |
| 家事事件総数 | 1万7701件 | 1万7840件 | 1909件 |
| 家事審判事件総数 | 1万5322件 | 1万5483件 | 815件 |
家事審判事件の内訳は,別表第一審判事件が新受1万5019件,既済1万5159件,未済693件であり,別表第二審判事件が新受303件,既済324件,未済122件である。
2 統計からは分からないこと
司法統計年報は,津の実務基盤の規模及び事件類型の幅を把握する資料になる。しかし,各修習生が接する事件数,起案の本数,指導担当者との面談回数又は選択型実務修習の内容は示していないため,事件数だけから指導密度又は修習満足度を評価することはできない。
また,民事・行政及び刑事統計には支部の事件が含まれる。津地裁本庁に配属された修習生が,各支部の事件又は手続をどの範囲で体験するかは,統計ではなく当該期の修習日程によって決まる。
第7 住居及び修習給付金
1 実務修習地の住居は各自で確保すること
最高裁判所の第79期採用選考申込手続の手引は,実務修習地における住居を司法修習生自身で確保する前提を示している。津の平均家賃,短期賃貸物件の供給又は敷金・礼金を同一時点・同一条件で比較できる公的統計は確認できないため,本記事では特定の家賃相場を示していない。
住居を決める際は,裁判所だけでなく,津地方検察庁及び弁護士修習先への移動も生じることを前提に検討する必要がある。分野別実務修習の集合場所,弁護修習先及び自動車利用の可否は公開資料だけでは確定できないため,契約前に当該期の案内を確認するのが安全である。
2 第79期の修習給付金
裁判所法67条の2は,基本給付金,住居給付金及び移転給付金を定めている。第79期の金額及び取扱いは次のとおりである。
| 種類 | 第79期の金額・取扱い |
|---|---|
| 基本給付金 | 一給付期間につき13万5000円 |
| 住居給付金 | 要件を満たす場合,一給付期間につき3万5000円 |
| 移転給付金 | 最高裁判所が定める路程に応じ,4万6500円から14万1000円まで |
移転給付金は,原則として修習又は移転の開始から7日を経過した後に届出をしても支給されない。住居給付金にも届出期限と疎明資料の提出要件があるため,賃貸借契約書,住民票その他の必要書類は,最高裁判所の第79期修習給付金案内28頁~31頁で確認する必要がある。
第8 三重県内の就職情報
三重弁護士会の公式ページによれば,令和8年4月1日現在の会員数は201人である。同会の第78期向け採用予定先一覧には7件が掲載され,法律事務所のほか企業1社が含まれていた。
もっとも,この一覧は第78期向けに公表された情報であり,第79期の採用件数又は現在の募集継続を示すものではない。就職活動では,三重弁護士会の新着情報及び各募集主体の最新情報を確認し,県外での面接を予定する場合は,分野別実務修習の日程と移動時間を早い段階で照合する必要がある。
第9 津修習の開始前に確認すべき資料
津配属が決まった後は,公開記事の一般情報よりも,当該期について交付される資料が優先する。少なくとも,①班別の分野別実務修習日程,②各庁会の集合場所及び集合時刻,③弁護士修習先,④住居給付金及び移転給付金の届出期限,⑤選択型実務修習のプログラム一覧,⑥就職説明会及び採用情報を確認する必要がある。
特に,第77期の津固有日程は修習内容を具体的に示す資料であるが,第79期の実施内容を保証しない。配属現員,希望倍率,家賃及び採用予定先についても基準時点が異なるため,過去の数値と現在の予定を区別して利用すべきである。
第10 出典・参考資料
1 法令及び最高裁判所資料
①裁判所法(昭和22年法律第59号),66条,67条及び67条の2。
②最高裁判所「令和7年度司法修習生採用選考申込手続の手引き」(令和7年9月4日現在),2頁。
③最高裁判所「司法修習の概要」。
④最高裁判所「修習給付金案内(第79期)」,28頁~31頁。
2 津の裁判所,検察庁及び弁護士会
①津地方裁判所「津地方裁判所・津家庭裁判所・津簡易裁判所」。
②津地方裁判所「担当裁判官一覧」(令和8年4月1日現在)。
③津地方裁判所「裁判員制度関連情報」。
④津地方検察庁「津地方検察庁」。
⑤三重弁護士会「三重弁護士会について」(令和8年4月1日現在)。
⑥三重弁護士会「三重県下における弁護士(第78期)を採用する予定がある法律事務所について」。
⑦最高裁判所(司法行政文書開示)「第77期津修習の実務修習日程」(令和6年)。
3 統計及び司法行政文書
①最高裁判所事務総局『令和7年司法統計年報1民事・行政編』第4表,資料上28頁。
②最高裁判所事務総局『令和7年司法統計年報2刑事編』第20表及び第45表,資料上81頁。
③最高裁判所事務総局『令和7年司法統計年報3家事編』第8表,資料上29頁。
④最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会「平成29年度(最情)答申第1号」(平成29年4月28日),2頁~3頁。
⑤最高裁判所「司法修習生配属現員表」第72期~第78期。各資料は,司法修習生配属現員表(48期以降)に掲載されている。