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最高裁判所が開発しているmints,RoootS及びTreeeS(AIリライト)

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※以下はAIが生成した要約です。内容の正確性は保証されません。本文をあわせてご確認ください。

この記事は,mints,RoootS及びTreeeSの役割と開発・導入の経緯を,資料の時点ごとに整理する。現在の導入準備の総合案内と,個々の操作・登録の案内は関連記事で扱う。

令和8年10月3日に確認した裁判所の案内では,民事訴訟の電子申立て等にはmintsが案内されている。TreeeSの研修環境にも,研修用であること,一般の方は利用できないこと及び電子申立てにはmintsを使うことが表示されている。研修画面の公開と本番導入を区別する。

RoootSは裁判所職員向けの事件管理システムであり,TreeeSのe提出・e記録管理と連携する。TreeeSは令和9年1月の名古屋地区での先行導入と令和9年度中の全庁導入が予定されているが,資料上の予定を実施済みの事実として扱わない。

mintsと同じメールアドレスを用いること,アカウント・設定・データの引継ぎ,係属事件の使用システム及びmintsの終了・並行運用の時期は別々に確認する。過去の資料は歴史的な計画として読み,実際の提出・送達・登録にはその時点の正式案内を確認する。

本記事は,mints,RoootS及びTreeeSの開発・導入の経緯を資料の時点ごとに整理する記事である。令和8年10月3日に確認した裁判所の案内では,民事訴訟の電子申立て等にはmintsが案内され,TreeeS研修環境にも同旨の注意がある。導入済みの機能とTreeeSの将来計画を区別して読む必要がある。

最新の制度・導入準備の総合案内は,TreeeS(ツリーズ)とはを,公式入口と研修画面の注意は,TreeeSのログインと研修環境を参照されたい。

第1 民事裁判手続のデジタル化の全体像

1 「3つのe」とは何か

民事裁判手続のデジタル化(IT化)は,「3つのe」と呼ばれる3つの要素から構成される。すなわち,e提出(e-Filing。書類をオンラインで提出すること),e法廷(e-Court。ウェブ会議等を利用して期日に参加すること)及びe事件管理(e-Case Management。事件記録・事件情報をオンラインで管理・閲覧すること)の3つである。

この枠組みは,内閣官房に設置された「裁判手続等のIT化検討会」が平成30年3月30日に取りまとめた「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて-」において示されたものである。同取りまとめは,「3つのe」を互いに独立したものではなく,相互に連携することでより効果的なIT化が実現するものと位置づけている。後述するmints(e提出),RoootS(e事件管理)及びTreeeS(3つのeの全面実現)という役割分担は,いずれもこの「3つのe」を原典として具体化されたものである。

2 3つのフェーズ

「3つのe」の実現は,3つのフェーズに分けて段階的に進められている。前記取りまとめ20頁は,次のとおり整理している。

区分内容対応するe
フェーズ1現行法の下でのウェブ会議・テレビ会議等の運用(法改正を要しない)e法廷
フェーズ2新法に基づく弁論・争点整理等の運用e法廷
フェーズ3オンラインでの申立て等の運用e提出・e事件管理

mintsはe提出の一部を先行して実施するシステムとして開発され,令和8年5月21日以後は,新法適用事件の電子申立て,システム送達及び電磁的訴訟記録の閲覧等にも用いられている。TreeeSは,将来フェーズ3を全面的に実現するシステムであり,令和9年1月から名古屋高裁管内で先行導入される予定である。

3 mints・RoootS・TreeeSの関係

3つのシステムは,それぞれ役割が異なる別個のシステムである。その関係は,次のとおり整理できる。

システム対象役割(3つのe)位置づけ
mints当事者等(訴訟代理人を含む。)向けe提出・e事件管理令和8年5月21日以後の新法適用事件について,電子申立て,システム送達及び電磁的訴訟記録の閲覧等に用いられる。旧法適用事件では,経過措置の要件を満たす場合に旧mints規則等に基づく電子提出が可能である。
RoootS裁判所職員向けe事件管理法改正を要しない第1次開発部分。既存の事件管理システムを統合する。TreeeSの基本・根幹をなし,フェーズ3でTreeeSと連携する。
TreeeS国民及び裁判所職員向けe提出・e法廷・e事件管理(全面)将来の全面システム(第2次開発)。令和9年1月に名古屋高裁管内で先行導入し,令和9年度中の全庁導入を目指す。RoootSと連携(疎結合)する。

すなわち,RoootSとTreeeSは別のシステムであって,RoootSは裁判所職員が用いる事件管理システムであり,TreeeSは当事者も用いる全面システムである。RoootSはTreeeSの一部(e事件管理の基本部分)をなす関係にある。

第2 「3つのe」の導入経緯と法的根拠

1 政策上の経緯

ア 平成29年6月9日,未来投資戦略2017(成長戦略)及び骨太の方針2017において,裁判手続等のIT化を推進することとされた。

イ 平成30年3月30日,前記検討会において前記取りまとめが公表された。続いて平成30年6月15日,未来投資戦略2018において,民事訴訟に関する裁判手続等の全面IT化の実現を目指すとされた。

ウ 行政手続の原則オンライン化等を定めたデジタル手続法(令和元年5月31日法律第16号)は,令和元年12月16日に施行された(地方自治研究機構(RILG)HPの「デジタル手続法の概要(令和元年12月)」参照)。

エ 令和2年7月17日,成長戦略フォローアップにおいて,「2025年度中に当事者等による電子提出等の本格的な利用を可能とすることを目指し,一部について先行した運用開始の検討」等を司法府に期待するとされた。さらに,令和4年6月7日に閣議決定された規制改革実施計画及び令和5年6月16日に閣議決定された規制改革実施計画においては,「民事訴訟手続のデジタル化について,遅くとも令和7年度に本格的な運用を円滑に開始する」こととされた。

オ 令和4年5月,最高裁判所事務総局デジタル推進室は,「裁判所のデジタル化について(裁判所DXのグランドデザイン)(Ver1.0)」を作成し,事件管理機能(RoootS)を令和5年度に,その余の機能を令和7年度に導入し,新法の下での訴状も含めたオンライン提出と記録の電子化を令和7年度に実現するという工程を示した(同資料8頁)。実際には,RoootSの全庁導入は令和7年1月,改正法の全面施行は令和8年5月21日(改修後のmints)となり,TreeeSの全庁導入は令和9年度中を目指すとされている。計画と実績の照合は,裁判所DXのグランドデザイン(令和4年5月)の計画と実績―フェーズ3,RoootS・TreeeS,家事・刑事のデジタル化はどこまで予定どおりかを参照されたい。

2 2つの改正法

「3つのe」のうちフェーズ2及びフェーズ3を実現するためには,法改正が必要であった。これは,次の2つの法律によって行われた。

(1) 民事訴訟法等の一部を改正する法律

令和4年5月25日,民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)が公布された。同法は,民事訴訟手続を全面的にIT化するもので,①訴状等のオンライン提出を一律に可能とし(民事訴訟法132条の10),弁護士等の訴訟代理人にはオンラインによる提出・受取を義務付け(民事訴訟法132条の11),②ウェブ会議により参加できる期日を拡充し(民事訴訟法87条の2),③訴訟記録を原則として電子化し,当事者がインターネットで閲覧できるものとした(民事訴訟法132条の12,91条の2)。改正の概要は,法務省HPの「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」に「改正の概要」として掲載されている。

同法は,公布の日から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとされ(附則1条),令和8年5月21日に全面施行された。

(2) 民事関係手続等IT化法

民事訴訟以外の民事関係手続(民事執行・倒産・家事・非訟)及び公正証書については,令和5年6月14日に公布された民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和5年法律第53号)によって,別途デジタル化されることとなった。改正の概要は,法務省HPの「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律について」に「改正の概要」として掲載されている。

3 「3つのe」の導入状況

(1) e法廷の導入経緯

ア フェーズ1としてのTeamsを利用したe法廷は,令和2年2月3日に東京地裁及び大阪地裁等で開始し,令和4年11月7日にすべての下級裁判所で開始した(裁判所HPの「全国の高等裁判所及び地方裁判所でウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の運用を開始しました。」参照)。

イ フェーズ2としてのTeamsを利用したe法廷は,弁論準備手続期日及び和解期日については令和5年3月1日に開始し,弁論期日については令和6年3月1日に開始した。

ウ 証人尋問及び当事者尋問をウェブ会議で行う制度は,令和8年5月21日に開始した。裁判所は,民事訴訟法204条各号のいずれかの事由があり,かつ相当と認めるときは,ウェブ会議の方法で証人尋問をすることができ,当事者本人の尋問についても同条が準用される(民事訴訟法210条)。

(2) e提出の導入経緯

ア e提出の一部先行実施であるmintsは,令和4年2月15日に甲府地裁本庁及び大津地裁本庁で試行運用が開始し,令和5年11月28日にすべての裁判所で本格運用が開始した(裁判所HPの「民事裁判書類電子提出システム(mints)について」参照)。

イ フェーズ3としてのe提出は,本来TreeeSを利用したものとして実施する計画であったが,令和8年5月21日の全面施行時から,改修後のmintsで運用されている。

(3) e事件管理の導入経緯

ア 裁判所職員向けのe事件管理はRoootSを利用したものであり,令和6年7月16日に先行導入が開始した。

イ フェーズ3としての(当事者も利用する)e事件管理は,令和8年5月21日の全面施行時から,改修後のmintsによって電磁的訴訟記録を管理し,当事者がオンラインで閲覧等をする仕組みとして運用されている。TreeeSへの移行は後記第6のとおりである。

第3 mints(民事裁判書類電子提出システム)

1 mintsの総論

(1) mintsは,令和8年5月21日以後に訴えが提起されるなどして開始した新法適用事件について,訴状その他の申立書,準備書面,書証の画像情報,電磁的記録の複製等を電子提出するために用いられる。弁護士等の訴訟代理人は,原則として,民事訴訟法132条の11第1項により,その委任を受けた事件の申立て等を電子的にしなければならない。対象事件及び提出義務者の範囲については,mintsを利用できる裁判所と対象事件及びmintsの義務化はいつからかを参照されたい。

(2) 令和8年5月20日以前に訴えが提起されるなどして開始した旧法適用事件では,紙の訴訟記録が維持される。そのうち,当事者双方に委任を受けた訴訟代理人があるなどの要件を満たす事件については,経過措置により,廃止されたmints規則及びmints細則に基づく書類の電子提出をすることができる。この場合,電子提出した書類は印刷され,紙の訴訟記録に編成される。

(3) mintsは,令和4年2月15日に甲府地裁本庁及び大津地裁本庁で試行運用が開始し,令和5年11月28日にすべての裁判所で本格運用が開始した。

(4) 各月末時点でのmints利用事件数(令和5年6月から同年10月までの分)を掲載している。これによれば,利用事件数は令和5年6月の合計2,771件から同年10月の合計4,077件へと推移している。

2 mintsの名称の由来

(1) 民事訴訟手続における裁判書類の電子提出に係るアプリケーションの主な機能等について(令和3年6月17日付の最高裁判所情報政策課参事官,民事局総括参事官の事務連絡)には,以下の記載がある。

「mints」とは,「MINji saibansyorui denshi Teisyutsu System」の略称である。本システムの利用により,一層,裁判手続のIT化(デジタル化)が促進され,裁判手続の新しい時代を迎えることを示すものとして,「mint(ミント)」のさわやかな語感も意識し,命名したものである。

(2) かなやま総合法律事務所HPの「mintsについて(裁判のweb化)について」には,「『電子』が略語に入っていないと書記官が自嘲気味に仰っていましたが電子化が重要ですからそのご指摘は仰る通りかと思います。」と記載されている。

3 mintsの操作関係

(1) ファイル形式

ア 申立書,準備書面その他の書面をmintsで提出する場合,提出データは,原則として,出力時の用紙サイズをA4又はA3としたPDF形式とする必要がある(民事事件等に関する手続における電子情報処理組織の使用に関する細則2条及び3条)。ただし,電磁的記録に記録された情報を証拠として提出する場合,その複製にはPDF,JPEG,PNG,MP4又はMP3形式を利用できる(同細則5条)。なお,Word,Excel又はPowerPointの元データ等は,「記録一覧」ではなく「記録外一覧」に提出する取扱いがある(同細則4条及び前記準備の手引参照)。

イ A3サイズのPDFをアップロードできるようになったのは令和5年4月1日である(裁判所HPの「mints機能改修の概要~mintsに5つの機能が増えます~」(令和5年3月の最高裁判所事務総局の文書)参照)。

(2) 押印の不要

電子申立て等に際しては,原則として,識別符号(mintsに登録したメールアドレス)及び暗証符号(パスワード)を入力してサインインする(民事訴訟規則52条の9第2項及び前記細則3条2項)。民事訴訟法132条の10第4項により,電子申立てには氏名又は名称を明らかにする措置をもって署名等に代えるため,提出書面への押印は不要である。

(3) 秘匿との関係

ア 住所,氏名等の秘匿の申立て(民事訴訟法133条1項)についても,弁護士等の訴訟代理人は,原則としてmintsで電子申立てをしなければならない。訴えの提起と同時にする場合は新規申立てフォームの「添付書類」から,訴訟係属中にする場合は記録一覧の「関連事件の申立て」から提出する。

イ これに対し,秘匿事項の届出(民事訴訟法133条2項)は,秘匿事項届出書面を紙媒体で提出しなければならず,提出後も紙媒体で保管される。秘匿事項届出書面又は秘匿情報を記載した文書をmintsへ誤ってアップロードすると,相手方が閲覧できる状態になることがあるため,提出前に,秘匿情報がマスキングによって完全に削除されていることを確認する必要がある。誤ってアップロードした場合は,直ちに担当部の裁判所書記官へ連絡して消去を申し出る必要がある(民事訴訟規則33条の5第2項)。

(4) 操作マニュアル等

mints(民事裁判書類電子提出システム)HPに「操作マニュアル」等が掲載されている。

4 mintsの位置づけ

(1) mintsは,e提出の一部先行実施として,令和4年改正前の民事訴訟法132条の10に基づく準備書面等の電子提出を可能とするために開発されたシステムであり(裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)32頁参照),令和2年度から令和3年度にかけてクラウド上で開発された(前記令和4年度概算要求書(説明資料)438頁)。

(2) 東弁リブラ2024年4月号の「民事裁判手続のIT化の現在とこれから(前編)」には,「mintsの導入段階について,mintsがオンライン申立ての機能の一部を実施するものであることから『フェーズ3の先行実施』とするものもあるが,改正前民訴132条の10第1項に基づく最高裁規則の制定により始まったmintsは改正民訴法を前提とするフェーズ3とは異なる側面もあることから,本稿では『フェーズ1におけるe提出実施段階』と捉えることとする。」と記載されている(リンク先のPDF7頁)。

5 改修後のmintsと簡易裁判所への導入

(1) 後記第6のとおり,改正民事訴訟法の全面施行当初のe提出・e記録は,改修後のmintsで対応することとされた。これを受け,令和7年10月25日,改正民事訴訟法に対応するための新たな機能(新規申立て機能)が,稼働中のmintsに実装された。その後,令和8年2月21日に電子納付機能が実装され,同年3月20日には1回のアップロード上限が50MBから200MBに引き上げられた。同年5月21日の全面施行後は,これらの機能を新法適用事件で利用することができる(裁判所HPの「フェーズ3に向けたmints改修作業完了のお知らせ」参照)。

(2) 改正民事訴訟法は簡易裁判所にも令和8年5月21日に全面施行され,現在は,簡易裁判所の通常訴訟,少額訴訟及び支払督促等についてもmintsを利用することができる。対象事件の詳細は,mintsを利用できる裁判所と対象事件を参照されたい。

(3) また,フェーズ3に向け,令和8年2月1日から,法廷・弁論準備手続室・和解室等に,電磁的訴訟記録の閲覧やウェブ会議への参加等のためのインターネット接続環境(courts Wi-Fi)が整備される予定である。

6 mintsに関する論文

52期の橋爪信最高裁民事局参事官及び56期の内田哲也最高裁総務局参事官は,他の2人との連名で,NBL1212号(2022年2月15日号)に「民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用開始について」を寄稿し,金融法務事情2191号(2022年8月10日号)に「民事裁判書類電子提出システム(mints)の概要と運用状況」を寄稿している。

第4 RoootS(裁判所職員向けのe事件管理システム)

1 RoootSの総論

RoootSは,法改正を経ることなく実現可能な裁判所職員向けのe事件管理システムであり,令和4年4月からクラウド(Microsoft Azure)上で開発が行われた。RoootSは,フェーズ3向けの新システムであるTreeeSの基本・根幹となる事件管理システムとして位置づけられている。

2 RoootSが統合する既存システム

RoootSは,高地裁の民事だけではなく,MINTASを利用している家裁の家事・人訴,NAVIUSを利用している簡裁の民事,最高裁事件管理システムを利用している最高裁の民事も対象とし,これらの既存システムを統合して全審級を一本化することにより,審級間での二重入力などの既存業務を効率化するものとして開発されている(全国司法労働組合の機関紙である全司法新聞2381号(2022年7月)参照)。

令和6年7月16日,RoootSの裁判所での導入が開始した(前記RoootSの概要・フェーズ3に向けたスケジュール(令和6年6月25日開催の最高裁判所事務総局会議資料第1)のほか,裁判所HPの「民事・家事分野の裁判手続における文字の取扱いについて」参照)。

3 RoootSの導入の遅れ

(1) RoootSは,令和5年8月当時,令和6年1月までに一部の裁判所(最高裁の裁判部,広島及び札幌の高地家裁(本庁)及び簡裁)での運用を開始する予定であった(前記裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)33頁参照)。また,RoootSは,MINTAS(民事裁判事務支援システム)に代わる事件管理システムであり,令和5年8月当時,令和6年度前半に全国の家裁に導入される見込みであった(同35頁)。

(2) 令和5年11月16日の最高裁判所事務総局会議において,令和6年1月までのRoootSの先行導入を同年5月以降とすることが報告された。同日の会議資料には,「本年6月の導入計画の見直し後の経過」として以下の記載がある。

・ 実務の安定的運用のためのシステムの品質確保を最も重視し,本年6月に導入計画を見直して,お伝えした態勢強化等の対策は全て実施した上で,受注業者に対し全てのテスト工程のやり直しを指示し,最高裁と工程監理業者とで毎日監理してきました。単体テスト(機能・画面ごとのテスト)及び結合テスト(機能間・画面間のテスト)を再実施し,これらのテスト工程については,概ね順調に進んできました。

・ 本年8月頃より,再度,総合テスト(受注業者が開発工程の仕上げとして行う総合的なテスト)を実施し始めたところ,同月末頃から,テストが予定どおり進まないケースが見られるようになりました。具体的には,総合テストのシナリオ(業務に沿ったテストケース)の実施・完了を阻害するバグが多く発生し,そのバグの解消に時間を要したり,バグを解消してシナリオを進めると更に別のバグが発生してシナリオの実施が中断したりし,総合テスト全体の進捗状況が悪化しました。

・ 総合テストは本年9月末に完了する予定でしたが,現在まで完了せず,その後の最高裁による受入テストを実施するに至っていません。システムの品質を確保し,その上で,運用開始までの各庁における準備や習熟に十分な時間を確保する観点から,令和6年1月までの先行導入は断念し,先行導入時期を延伸すべきものと判断しました。

4 RoootSの先行導入と全庁導入

(1) RoootSは,令和6年5月に受入テストを完了し,令和6年7月16日,先行導入庁(最高裁,広島の高地家簡裁,札幌の高地家簡裁)において運用が開始された。先行導入庁では,並行稼働の期間を設けず,導入日からRoootSのみを用いて業務を行うこととされ,既存システムからのデータ移行(1庁当たり7日から10日程度の作業量)を伴う準備が進められた。

(2) その後,RoootSの全庁導入について(令和6年11月19日の最高裁判所事務総局会議の資料)により,令和7年1月6日から,先行導入庁以外の全庁にRoootSが導入されることとなった(導入予備日は同年2月12日)。

(3) 令和7年6月11日の最高裁判所長官挨拶は,RoootSの全庁導入までに「計画変更をはじめとした様々な課題」が生じ,関係職員が一体となって取り組んだ旨を述べている。これは,導入までに課題があったことを最高裁判所側の資料で確認できることを意味する。他方,この挨拶は,運用開始後の障害件数,個別の不具合の内容又は全国的な発生頻度までは明らかにしていない。

5 最高裁の財務省に対する説明内容

(1) 前記令和4年度概算要求書(説明資料)436頁には,以下の記載がある。

「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―『3つのe』の実現に向けて― 」における内閣官房の取りまとめ結果によると,「3つのeの検討・準備にいずれも着手した上で,そのうち実現可能なものから速やかに,段階的に導入していき,柔軟な見直しを図りつつ,IT化の全面実現に向けた環境整備を順次,かつ確実に進めていくのが相当」との提言があるところ,このうち,職員向けのe事件管理システムの大部分については,法改正を経ることなく実現することが可能であり,法改正後のフェーズ3への対応を意識し,IT化の全面実現に向けた環境整備を進めていくためにも,クラウド環境への移行を前提としたe事件管理システムを速やかに設計・開発して段階的に導入していくことが相当である。また,このように,e事件管理部分について先行開発を行って段階的に導入していくことは,法改正後のフェーズ3への円滑な移行に資するものであることから,本システムの開発等に係る経費を要求する。

(2) 最高裁判所の令和5年度概算要求書(説明資料)380頁には,本システム(RoootSを指す。)が,民事訴訟手続のデジタル化を実現するシステム(TreeeSを指す。)のうち,令和5年度中のリリースを目指して開発するe事件管理部分(第1次開発部分)のシステムである旨の記載がある。

(3) 最高裁判所の令和6年度概算要求書(説明資料)399頁には,本システム(RoootSを指す。)が,民事訴訟手続のデジタル化を実現するシステム(TreeeSを指す。)のうち,職員向けのe事件管理部分(第1次開発部分)のシステムである旨の記載がある。

6 全庁導入後に公表された不具合

(1) 令和7年5月22日の参議院法務委員会において,最高裁判所事務総局民事局長は,RoootSについて,統計システムとの連携の不具合など一定程度の不具合が生じていることを把握しており,最高裁判所として重く受け止めている旨を答弁した。

(2) 同委員会では,統計事務に関して既済事件数等を改めて確認する必要が生じたことが質問者から指摘されている。したがって,全庁導入後にも,少なくとも統計システムとの連携を含む不具合が公的に認識されていたことが分かる。

(3) もっとも,この答弁及び現在の公開資料からは,個別の不具合の全件数,庁別の発生頻度,各不具合の継続時間,事件処理への具体的影響又は恒久対応の完了状況までは確認できない。不具合が存在したことと,全国的又は継続的な重大障害が生じたこととは区別する必要がある。

7 令和8年度以降の改修及び対象拡張

(1) 最高裁判所の令和8年4月3日付け調達仕様書は,RoootSを,国民から提出された申立書等に記載された情報その他の事件情報を裁判所職員が管理するクラウド上のシステムと説明している。管理情報として,事件番号,事件名,担当部,担当裁判官・書記官,当事者及び期日情報等が挙げられている。

(2) 同仕様書によれば,令和5年12月からTreeeSと連携するためのRoootS改修が進められ,令和8年度には裁判統計データ処理システムとの連携及び非訟事件への対応を含む複数の追加改修が予定されていた。

(3) 最高裁判所の令和8年6月9日付け調達仕様書は,成年後見制度に関する民法等の改正及びその他非訟手続への対応のため,TreeeS及びRoootSを改修し,令和10年3月の本番リリースを想定している。

(4) 最高裁判所の令和8年9月7日付け調達仕様書は,次期裁判統計データ処理システムについて,RoootSのその他非訟事件管理部分との連携インターフェースを開発又は改修する計画を示している。

(5) 以上によれば,RoootSは,令和7年1月の全庁導入後も完成状態のまま固定されたシステムではなく,TreeeSとの連携,手続分野の拡張及び裁判統計基盤との接続に応じて継続的に改修される事件管理基盤である。ただし,調達仕様書に記載された開発又はリリースの予定は将来計画を含むものであり,その記載だけから,全機能が予定どおり本番環境で稼働したと判断することはできない。

8 弁護士実務との関係

(1) RoootSは,裁判所職員が事件情報を管理する内部システムであり,弁護士又は本人当事者が書面提出,電子納付,送達書類の受領又は電子記録の閲覧のために直接ログインする利用者向けポータルではない。

(2) 弁護士等が直接利用する側は,調査基準日現在のmints及び将来のTreeeSであり,RoootSは,その背後で事件情報を管理し,TreeeSその他の関連システムと連携する位置付けである。

(3) したがって,弁護士側で提出,事件表示,期日情報又は納付に問題が生じた場合でも,その原因がRoootSにあると直ちに断定せず,①利用者向けシステム,②RoootSとの連携,③裁判所内の運用又は④他の関連システムのどこで問題が生じたかを区別する必要がある。

(4) また,RoootS及びTreeeSはシステム名であり,提出,到達,送達,記録閲覧その他の法的効果は,各システムの名称そのものではなく,関係法令及び裁判所規則に基づいて判断する必要がある。

9 公開資料から確認できない事項

(1) 令和8年9月22日現在,公開資料だけでは,RoootSの障害及び不具合の全国的な件数,発生率,平均復旧時間,未解消件数又は内部インシデント台帳を確認できない。

(2) 個々の事件における処理の遅れ又は表示の不整合がRoootSに由来するかどうかは,当該事件の裁判所からの説明,障害告知,操作時刻その他の具体的記録により確認する必要がある。

第5 TreeeS(国民及び裁判所職員向けの全面システム)

1 TreeeSの総論と名称の由来

(1) TreeeSは,「Trial e-filing e-case management e-court Systems」の略称であり(日弁連法務研究財団HPに掲載されている「民事訴訟のIT化と今後の課題」(2024年3月13日付)7頁参照),国民及び裁判所職員向けのe提出・e法廷・e事件管理システムである(前記裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)33頁参照)。

(2) TreeeSのうち,RoootS以外の民事訴訟手続のデジタル化に係るシステム開発については,令和4年度に法改正の内容を踏まえた要件定義を行った後,令和5年4月から開発が行われている(同33頁)。

2 TreeeSとRoootSの関係

TreeeSは,第1次開発部分であるRoootS(e事件管理)と疎結合することで,全体として民事訴訟手続のデジタル化を実現するシステムである。すなわち,RoootSはTreeeSの基本・根幹をなし,フェーズ3においてTreeeSと連携することが予定されている。両者は別個のシステムであり,現在,TreeeSの開発とともに,両者の連携のための改修が進められている。

3 最高裁の財務省に対する説明内容

(1) 前記令和5年度概算要求書(説明資料)380頁には,以下の趣旨の記載がある。すなわち,第208回通常国会で成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律は公布の日から起算して4年を超えない範囲内において施行されるところ,本改正内容を実現するためのシステムを開発(第2次開発)する必要があり,本システムは別途開発を行うe事件管理システム(第1次開発部分=RoootS)と疎結合することで,全体として民事デジタル化を実現するシステムとなる,というものである。なお,本件は複数年度にわたる契約を締結する必要があるため,3箇年の国庫債務負担行為によることが要求されている。

(2) 前記令和6年度概算要求書(説明資料)399頁にも,同趣旨の記載があり,令和6年度はその国庫債務負担行為の2年目である旨が記載されている。

4 TreeeSの先行導入と全庁導入

(1) TreeeSについては,民事裁判手続等のデジタル化に伴い利用する最高裁判所の新システム(TreeeS)の先行導入に関する日弁連宛の通知(令和8年2月27日付)により,名古屋高裁本庁,同地裁(支部を含む。)及び同地裁管内に所在する各簡裁において,令和9年1月から先行導入を実施することとされた。

(2) 全庁導入の時期については,令和9年度中を目指すとされている。

第6 mintsからTreeeSへの移行

1 移行の方針

前記令和4年度概算要求書(説明資料)437頁には,以下の記載がある。すなわち,令和7年度のフェーズ3実現時に,e法廷(現在Teamsを活用して運用しているもの),e提出(クラウド上に開発しているもの=mintsを指す。)及びe事件管理(先行開発するシステム=RoootSを指す。並びにNAVIUS及びMINTAS等の既存システム)からのスムーズな移行及び将来的な運用方針を立てるための経費を要求する,というものである。これにより,mintsは,最終的にはTreeeSへ移行することが予定されている。

2 施行当初は改修後のmintsで対応するという決定

(1) もっとも,当初の計画ではフェーズ3をTreeeSで施行する予定であったところ,TreeeSの完成が改正法の施行に間に合わない可能性が生じた。そこで,最高裁判所は,令和8年5月21日に全面施行された改正民事訴訟法の下でe提出・e記録管理に対応するシステムを,TreeeSではなく,改修後のmintsとすることを決定した。

(2) その理由は,①TreeeSはRoootSとの連携といった難度の高い課題があり,実務に耐えられるシステムの完成までには相応の時間がかかる可能性があるのに対し,②mintsは安定的に運用されており,その改修も既存システムを前提とするもので相対的に低リスクである,という点にある。

(3) 最高裁判所は,令和7年3月10日付で,日本弁護士連合会,日本司法書士会連合会及び日本弁理士会に対し,改正民事訴訟法等が定める電子申立て・事件記録の電子化等に対応するシステムを改修後のmintsとすること,並びに開発中のTreeeSは完成後に導入する予定であり,その時期は追って検討することを通知した。

(4) したがって,令和8年5月21日以後に訴えが提起されるなどして開始した新法適用事件では,改修後のmintsによってe提出・e記録管理が行われている。他方,同月20日以前に開始した旧法適用事件では紙の訴訟記録が維持され,経過措置の要件を満たす事件については,旧mints規則等による電子提出が続いている。TreeeSは,令和9年1月に名古屋高裁管内で先行導入し,令和9年度中の全庁導入を目指す予定である。

3 移行について確認できる範囲

(1) 令和8年4月3日付け「e提出・e記録管理システム及びe事件管理システムの追加機能改修業務」の別添資料には,TreeeSの士業者ユーザ登録画面について,「mintsアカウントと同一メールアドレスを利用する」との選択肢を設ける改修案が記載されている。もっとも,これは調達段階の改修案であり,最終的な運用案内ではない。

(2) 令和8年9月13日の公開資料の確認では,自動移行の有無・範囲を確定できなかった。その後の最高裁判所提供資料に基づく引継ぎの説明は,TreeeS総合案内のmintsとの比較で扱っている。アカウント・設定・データの引継ぎ,係属事件の使用システム及びmints終了・並行運用の時期は別の問題であり,各時点の正式案内を確認する必要がある。

(3) 令和8年9月19日に確認したところ,最高裁判所は,TreeeSの研修環境で「TreeeS操作マニュアル 当事者用」(2026年7月2日発行,全134頁)を配布している。研修環境のトップ画面には,研修環境であり一般の方は利用できないこと,民事訴訟の電子申立てはmintsを利用することが表示されている。同マニュアルの「ユーザ登録」の章は令和8年10月頃に追加される予定とされ,mintsからの移行の方法は記載されていない。マニュアルの読み方は,TreeeS操作マニュアル(当事者用)の読み方―提出の入口,30日で消える一覧,手数料の納付及び送達の確認(AI作成)を参照されたい。

TreeeSとmintsの違い,導入時期,アカウント,GビズID及び法律事務所の準備は,TreeeS(ツリーズ)とは―mintsとの違い,導入時期,アカウント及び法律事務所の準備(AI作成)を参照されたい。

第7 民事訴訟以外の手続のデジタル化

1 民事非訟・家事事件等

民事非訟・家事事件等については,民事訴訟のシステム(TreeeS)を改修するなどして,これらの事件にも対応するシステムとすることが予定されている(民事訴訟と同時に導入する方針)。これは,民事非訟・家事事件等のシステム開発の状況(令和6年2月時点)(令和6年2月13日の最高裁判所事務総局会議の資料)に記載されている。

2 民事執行・倒産・過料

民事執行,倒産及び過料の手続については,民事訴訟等のシステムとは別に,新たなシステムを開発する予定とされている(執行,倒産及び過料手続のデジタル化に伴うシステム開発について(令和6年11月19日の最高裁判所事務総局会議の資料)参照)。

3 刑事手続(少年手続を含む)

刑事手続(少年手続を含む。)のデジタル化については,情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和7年法律第39号)が令和7年5月16日に成立し,同月23日に公布された。書類の電子化,電子令状及びオンラインによる書類・証拠の授受等の主要規定は,令和9年3月31日までの間において政令で定める日に施行される。

最高裁判所の令和8年9月7日付け公募資料は,新事件管理システムを「リンケージ(LinKage)」「RoootS」「新執行倒産等システム」の三つの総称とし,そのうちリンケージを,最高裁判所,高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所の刑事事件及び少年事件の事件処理を支援するシステムであって,令和9年度中の導入を予定するものと記載している。同資料は,「リンケージ(刑事公判)」が令和10年度中に導入されるため,その導入時に,前身である刑事裁判事務支援システム(KEITAS)からインターフェースを切り替える機能が必要になるとし,RoootSが令和9年4月から,新執行倒産等システムが令和10年4月から,それぞれ次期裁判統計データ処理システムと連携する予定であるとしている。リンケージは刑事公判に限られるものではなく,少年事件も対象とする事件処理システムであり,「リンケージ(刑事公判)」はその一部として後から導入される。公募資料はリンケージ,RoootS及び新執行倒産等システムを併せて新事件管理システムと呼ぶが,民事分野を担うRoootS及びTreeeSと,刑事・少年事件を担うリンケージとは別のシステムである。

もっとも,公募資料の開発・連携工程は,法令上の施行日又は個別事件での利用開始日そのものではない。法施行,対象事件及びシステム展開を分けた説明は,刑事手続のデジタル化とは―令和7年法律第39号の施行日,電子令状,オンライン証拠開示及びLinKage(AI作成)を参照されたい。従前の段階的開発計画については,令和6年1月16日の最高裁判所事務総局会議資料に記載されている。

第8 令和6年3月の登記・供託オンライン申請システムの障害

1 登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと 供託ねっと)は,平成23年2月14日,法務省オンライン申請システムとは別のシステムとして運用を開始した(同HPの「登記・供託オンライン申請システムとは」参照)。

2 令和6年3月に生じた登記・供託オンライン申請システムの障害に関し,法務省に対し,国民の信頼に足るシステムの改善及び適正運用等を強く求める会長声明(令和6年4月5日付の東京司法書士会の会長声明)には,以下の記載がある。

令和6年3月25日(月)及び同月29日(金),法務省の登記・供託オンライン申請システム(以下「本システム」という。)に障害が生じ,長時間にわたり,インターネットによる登記申請(以下「オンライン登記申請」という。)ができない状態となった。とりわけ3月29日の障害の程度は非常に重く,午前,午後ともに障害が生じ,午後の障害では,午後2時30分頃から午後7時30分頃までオンライン登記申請ができない状態であった。

第9 ロータス・ノーツを基盤とした裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)

1 最高裁判所総務局制度調査室は,稼働状況等を踏まえ,円滑にシステム導入を進めるという観点から,専門業者によるシステム監査を行わせたところ,平成15年12月末,当時の裁判所のシステムの基盤となっていたロータス・ノーツは,大量かつ複雑なデータ処理が要求される裁判事務処理と適合しない面があり,ユーザ数やデータ量の増加に伴ってレスポンスがさらに低下することが予想されるため,現行のシステム基盤を維持したまま,特大規模庁を含む全国展開を進めることは再考すべきであるとの報告書が提出された。また,平成16年4月,システム運用業者から,ノーツのバージョンアップを実施したとしても,コストに比較して微小な改善効果しか見込まれないことから,対策として推奨しない旨の調査結果の報告があった。

そのため,最高裁判所は,平成16年4月下旬,ロータス・ノーツを基盤として開発されていた従前のシステム(主たるものは民事裁判事務処理システム及び刑事裁判事務処理システム)のまま全国に展開を進めることを中止した(全国裁判所書記官協議会会報第167号35頁及び36頁参照)。

2 会報書記官第8号29頁には,「裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)」と記載されている。なお,「裁判所の情報化の流れ」には,平成17年1月1日以降の裁判所の情報化の流れが記載されているにとどまるため,平成16年5月の全国展開の中止については記載されていない。

第10 システム開発の失敗の原因とその裁判例

1 システム開発の失敗の原因

Qiitaの「こんなシステム開発はもうイヤだ!ありがち失敗事例10連発 ~ あるいはユーザーが本当にホントーに欲しかったものは何か」によれば,システム開発の失敗の原因として,以下のものが挙げられている。

① 現場が,アレが欲しいコレが欲しいと言うだけ/② IT部門が,要件をまとめられない/③ 経営者が,やれと言うだけで調整しない/④ 新規事業企画で,市場検証せずにシステム開発を始める/⑤ 要件定義があいまいなまま,開発会社にマル投げする/⑥ 必要な機能か見極められず,無駄な機能を作り込む/⑦ 開発スケジュールが間に合わず,開発者が疲弊する/⑧ 開発プロジェクトの人手不足/⑨ 開発スケジュールを厳守するため,品質にしわ寄せ/⑩ 技術力不足。

2 システム開発の失敗の裁判例

(1)前提 弁護士法人モノリス法律事務所HPの「システム開発と関係のある法律上の『責任』とは」には,システム開発に関し,業務を受注するベンダーの「プロジェクトマネジメント義務」と,業務を発注するユーザーの「協力義務」という2つの責任があると指摘されている。また,IT・システム判例メモ(筆者は弁護士伊藤雅浩)の「判例一覧」及び「【争点別】システム開発をめぐる紛争インデックス」に,システム開発紛争に関する裁判例が掲載されている。

(1) スルガ銀行対日本IBM事件

東京高裁平成25年9月26日判決(担当裁判官は29期の小池裕,38期の大久保正道及び44期の西森政一)(判例秘書掲載)は,ユーザーである甲とベンダーである乙との間で締結されたシステム開発契約に基づくプロジェクトがシステムの開発に至らずに頓挫した責任は,いわゆる「プロジェクト・マネジメント義務」に違反した乙にあるとして,甲が乙に対して115億8,000万円の損害賠償を求めた請求を74億1,366万6,128円の賠償を求める限度で認容した第1審判決を,控訴審において変更し,41億7,210万3,169円の賠償を求める限度で認容した事例である(ユーザー勝訴)。ウエストロージャパンの「第15号 勘定系システム開発失敗で約42億円の支払を命じる判決 ~システム開発トラブルで起きる諸問題(スルガ銀行vs日本IBM事件)」は,同判決の判例評釈である。

(2) 旭川医大対NTT東日本事件

札幌高裁平成29年8月31日判決(担当裁判官は33期の竹内純一,47期の高木勝己及び48期の小原一人)(判例秘書掲載)は,病院情報管理システムの構築と同システムのリースを目的とする契約に関し,一審原告(ユーザー)には本件契約上の協力義務違反がある一方,一審被告(ベンダー)にはプロジェクトマネジメント義務違反があったとは認められず,一審被告には債務不履行(履行遅滞)について帰責性はないとして,一審原告の請求を棄却し,一審被告の請求のうち,元金ベースで14億1,501万9,523円を認容した事例である(ベンダー勝訴)。イノベンティアHPの「システム開発において仕様確定後の大量の追加要望等がユーザの協力義務違反に当たるとした札幌高裁判決(旭川医大対NTT東日本事件)について」は,同判決の判例評釈である。
TreeeSのユーザID取得とGビズIDの関係及び法律事務所の移行準備は,TreeeS(ツリーズ)とは―mintsとの違い,導入時期,アカウント及び法律事務所の準備で説明している。

第11 関連記事その他

1 改正法の概要

令和4年5月公布の民事訴訟法の改正については,法務省HPの「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」に「改正の概要」等が掲載されている。また,令和5年6月公布の民事執行手続等の改正については,法務省HPの「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律について」に「改正の概要」等が掲載されている。さらに,東弁リブラ2024年4月号に「民事裁判手続のIT化の現在とこれから(前編)」が,同年5月号に「民事裁判手続のIT化の現在とこれから(後編)」が掲載されている。令和8年5月21日の全面施行後の制度,現行の規則・細則,準備の手引及び書式は,裁判所HPの「民事裁判手続のデジタル化」及び「改正民訴法等に関する参考資料」に掲載されている。

2 参考文献等

(1) 内閣官房HPの「これまでの成長戦略について」に,「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-(2013年)」から「戦略(2021年)」までが掲載されている。

(2) 全司法新聞2391号(2022年12月)には,「当事者サポートの方策として,TreeeSにおけるAIチャットボット機能の活用を検討していることを明らかにしました。」と記載されている。

(3) 新版 システム開発紛争ハンドブック 第2訂 ―発注から運用までの実務対応―(2023年3月8日出版)はシステム開発に係る「紛争」にフォーカスした書籍であり,条項解説 事例から学ぶシステム開発契約書作成の実務(2023年12月1日出版)には,「紛争を想定した契約条項の作り方」が掲載されている。

3 関連記事

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